JP5481621B2 - 卓上型水素ガス発生装置 - Google Patents

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Description

本発明は、卓上型水素ガス発生装置に係り、特に、イオン交換膜の両面を一対の電極板で挟持してなる電気分解板により純水を電気分解する際に好適に利用できる循環ポンプ不要で小型の卓上型水素ガス発生装置に関する。
従来のガス発生装置の一例としての電気分解システムは、イオン交換膜と、イオン交換膜の両面に密着する一対の電極板、とにより構成された電気分解板と、電気分解板により仕切られた水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽と、を有する電解槽と、電解槽への純水の供給及び電気分解板から発生した水素ガス及び酸素ガスの循環排出を行う給水ポンプと、水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽から溢れ出る純水をそれぞれ受け取る取水タンクと、を備える(特許文献1の段落0020及び図1を参照)。
特開2011−177659号公報
しかしながら、従来の電気分解システムにおいては、純水の電気分解時に生じる電気泳動により水素ガス発生槽から純水が溢れ出してしまうという問題があった。
また、従来の電気分解システムにおいては、水素ガス発生及び循環のために給水ポンプ及び取水タンクを備える必要があるため、小型化及び携帯化が困難であるという問題があった。
また、従来の電気分解システムにおいては、電気分解板から水素ガスを効率よく分離させることができないことや、イオン交換膜に電極板を固定する大きなボルトやナットが水素ガスを吸着してしまうことなど、卓上型水素ガス発生装置として用いるためには適さない上記以外の種々の不具合も多数存在するという問題があった。
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、小型化や携帯性の問題などの従来技術における種々の不具合を改善した新規の卓上型水素ガス発生装置を提供することを本発明の目的としている。
(1)前述した目的を達成するため、本発明の卓上型水素ガス発生装置は、液体及び気体の通過孔を有しないイオン交換膜と、イオン交換膜の両面にそれぞれ密着する一対の電極板と、イオン交換膜の両面に一対の電極板をそれぞれ密着させる固定部と、を有する電気分解板と、電気分解板を仕切板として電気分解板に仕切られると共に電気分解の対象となる純水をそれぞれ貯蔵する水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽を有する電解槽と、水素ガス発生槽に貯蔵された純水の水位が所定以上に上昇することを抑える圧力で水素ガス発生槽から発生する水素ガスを加圧しながら取り出す水素ガス加圧部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、電気分解板が水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽を空間分離する電解槽の仕切板になるので、電気分解板に通電したときに水素ガス及び酸素ガスを混合させることなく、それらを分離発生させることができる。また、電気分解の際の電気泳動により純水が酸素ガス発生槽から水素ガス発生槽に移動しても、水素ガス加圧部が水素ガス発生槽から発生する水素ガスを加圧するので、電気泳動により水素ガス発生槽に移動した純水が水素ガス発生槽から溢れ出してしまうことを防止することができる。
(2)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置は、純水を貯蔵すると共に、水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽の各下部にそれぞれ接続されるサージタンクと、を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、サージタンクが水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽の各下部にそれぞれ接続されているので、サージタンクが水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽に純水を供給しつつ、水素ガス発生槽又は酸素ガス発生槽の一方に偏った純水を他方に移動させることができる。また、サージタンクが水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽の各下部にそれぞれ接続されているので、刻々と変化する電解槽の水位や水素ガス及び酸素ガスの圧力差をサージタンクにより緩衝することができる。
(3)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置は、酸素ガス発生槽に貯蔵された純水の水位が所定以上に上昇することを抑える圧力で酸素ガス発生槽から発生する酸素ガスを加圧しながら排出する酸素ガス加圧弁と、を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、酸素ガス加圧弁が閉じているときに酸素ガス発生槽内の純水が大気圧以上の気圧で押圧されるので、水素ガス発生槽から発生する水素ガスが水素ガス加圧部によって加圧される反作用によって酸素ガス排出口から純水が溢れ出すことを抑えることができる。また、酸素ガスが所定圧以上になったときに排出するので、酸素ガス発生槽内が過剰気圧になって酸素ガス発生槽や電気分解板が破損することを防止することができる。
(4)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置において、水素ガス加圧部は、所定水位の水を貯蔵する水素ガス貯留部と、水素ガス発生槽の上部に設けられた水素ガス排出口から水素ガス貯留部の下部までの間を中継する水素ガス中継部と、水素ガス貯留部の上部から水素ガスを取り出す水素ガス取出部と、を有しており、水素ガス貯留部に貯蔵された純水により生じる所定の水圧により水素ガスを加圧することが好ましい。
本発明によれば、水素ガス加圧部に貯蔵された水の水圧により水素ガス発生槽から発生する水素ガスが加圧されるので、加圧構造及び加圧調整を容易にすることができる。また、水素ガスは水素ガス貯留部の水の中を通過するので、水素ガスの発生を気泡として確認することができる。また、水素ガス中継部と水素ガス取出部との間に水素ガス貯留部が介在しているので、水素ガス取出部から取り出された水素ガスが引火しても、水素ガス貯留部に貯蔵された水がその引火を消火し、水素ガス発生槽から発生する水素ガスに引火することを防止することができる。
(5)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置において、一対の電極板は、その上方に内角45度以下の頂角を有する複数の通過孔をそれぞれ有することが好ましい。
本発明によれば、頂角が45度以上の通過孔や上部形状が半円形又は半楕円形の通過孔と比較して電気分解板による電解効率を約10〜15%向上させることができる。これにより、電解槽に循環ポンプを取り付けなくても水素ガス発生槽から水素ガスを取り出すことができる。
(6)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置において、イオン交換膜は、一対の電極板がそれぞれ有する通過孔の同軸上に設けられ、かつ、通過孔よりも小さな複数のリベット穴を電極板の接触面に均等に有しており、固定部は、通過孔の内径よりも小さくかつリベット穴の内径よりも大きな外径を有すると共に通過孔及びリベット穴に挿入されるリベット軸と、リベット軸の両端に形成されると共に少なくともその一方がリベット軸を通過孔及びリベット穴に挿入された後に超音波又は加熱金型の押しつけにより溶融・冷却形成されることにより一対の電極板をイオン交換膜の両面にそれぞれ密着させる2個のリベット頭部と、を有していると共に、液体を吸収したときに膨張する熱可塑性プラスチック製のリベットであることが好ましい。
本発明によれば、リベット穴が均等配置されていると共に2個のリベット頭部が一対の電極板をイオン交換膜の両面にそれぞれ密着させているので、一対の電極板とイオン交換膜とを全面で均等に密着させることができる。また、リベット軸の外径がリベット穴の内径よりも大きくなっているので、電解槽の純水や電気分解板から発生したガスがリベット穴を介して水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽を相互に通過することを防止することができる。
(7)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置において、酸素ガス加圧弁は、酸素ガス発生槽の上部に設けられた酸素ガス排出口の上方に延在する筒部と、筒部に内包されており所定圧で酸素ガス排出口を塞ぐ金属ボールと、を有することが好ましい。
本発明によれば、金属ボールの重量や個数を変更することによって酸素ガス排出口を塞ぐ圧力を容易に変更することができるので、酸素ガスの排気圧を容易かつ微細に制御することができる。
(8)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置において、電解槽は、閉じた容器を上下方向に分割して得た形状の2個の分割ケースと、一対の電極板よりも大きなイオン交換膜の周縁部を2個の分割ケースの周縁部が挟んだ状態で2個の分割ケースを一体に締結する締結部と、を有することが好ましい。
本発明によれば、電解槽の構造を簡素化することができる。また、2個の分割ケースの周縁部にソフトガスケットを用いずとも、電解槽の密封性を確保することができる。
(9)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置は、電気分解板による電気分解停止時に水素ガス発生槽で発生する負圧を利用して水素ガス発生槽を大気開放する逆流防止弁と、を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、電気分解の停止時に逆流防止弁が水素ガス発生槽を大気開放するので、水素ガス貯留部に貯蔵された水が水素ガス中継部を通じて水素ガス発生槽に逆流することを防止することができる。
(10)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置において、逆流防止弁は、大気開放口と、大気開放口を所定圧で塞ぐ金属ボールと、を有すると共に、水素ガス排出口又は水素ガス中継部に取り付けられていることが好ましい。
本発明によれば、金属ボールが大気開放口を塞いでいるので、スプリング式逆流防止弁と比較して、開放負圧を容易かつ微細に調整することができる。
(11)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置において、電気分解板は、純水の電気分解時において、水素ガスの発生量が最大10ml/min、かつ、電気分解板から発生する水素ガスの発生圧力が150〜500Paとなるように電流制御されており、水素ガス加圧部は、水素ガス発生槽から発生する水素ガスを100〜400Paで加圧し、酸素ガス加圧弁は、酸素ガス発生槽から発生する酸素ガスを50〜150Paで加圧し、逆流防止弁は、水素ガス発生槽の負圧が−100〜200Paのときに水素ガス発生槽を大気開放することが好ましい。
本発明によれば、水素ガス及び酸素ガスの発生圧を詳細に制御することにより、電解槽の内部の圧力が急上昇してイオン交換膜のリベット穴から水素ガス及び酸素ガスが強制通過してしまうことを防止することができる。また、各圧力を詳細に制御しながらサージタンクが電解槽に水を供給するので、電解槽の水位が±5mmに維持され、水素ガス発生漕部及び酸素ガス発生漕部から純水が溢れ出すことを防止することができると共に、水素ガス及び酸素ガスの発生効率を維持することができる。また、開放負圧が0Paに近似しているため、電解槽の水位と発生ガスの圧力関係を維持したまま、逆流を防止することができる。
(12)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置において、水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽の各上部又は各上部に接続された部材は、サージタンクへの給水時に水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽の各上部に封入された気体を抜く気体抜き部を有することが好ましい。
本発明によれば、サージタンクへの給水時に気体抜き部から電解槽内の気体が給水分だけ抜けるので、電解槽の圧力関係を維持することができる。
(13)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置は、卓上型水素ガス発生装置を覆う保護筐体を更に備えており、保護筐体は、水素ガス加圧部内の純水を通過する水素ガスの気泡を視認するための確認窓を有することが好ましい。
本発明によれば、確認窓から水素ガスの気泡を視認することにより、目に見えない水素ガスの発生を目視で確認することができる。
(14)また、本発明の卓上型水素ガス発生装置は、電気分解板に印加された電流値に応じて水素ガスの発生量を表示する水素ガス発生量メータと、を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、水素ガス発生量メータを確認しながら、水素ガスの発生量を制御することができる。
本発明の卓上型水素ガス発生装置によれば、小型化や携帯性の問題などの従来技術における種々の不具合を改善した新規の卓上型水素ガス発生装置を提供することができるという効果を奏する。
図1は、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置を示す斜視図である。 図2は、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置を示す構成図である。 図3は、本実施形態の電解槽を正面から見た断面図である。 図4は、本実施形態の電解槽を水素ガス発生槽側から見た部分断面図である。 図5は、本実施形態の電極板に形成された通過孔が円形の場合における水素ガスの発生状態を示す概念図である。 図6は、本実施形態の電極板に形成された通過孔の頂角が約120度の場合における水素ガスの発生状態を示す概念図である。 図7は、本実施形態の電極板に形成された通過孔の頂角が約30度の場合における水素ガスの発生状態を示す概念図である。 図8は、通過孔の頂角と水素ガス発生量との関係を示すグラフである。 図9は、本実施形態の固定部としてのリベットにおける一方の頭部が未だ形成されていない場合におけるリベットの挿入発生状態を示す概念図である。 図10は、本実施形態の固定部としてのリベットにおける一方の頭部が形成された場合におけるリベットの挿入発生状態を示す概念図である。
以下、本発明の卓上型水素ガス発生装置をその一実施形態により説明する。
[卓上型水素ガス発生装置の概要]
本実施形態の卓上型水素ガス発生装置は、一般家庭内等における活性酸素除去や成人病予防などのための吸引用、理化学実験用、臨床実験用等を目的として、少量(最大約10ml/min)かつ高純度(約99%)の水素ガスを長時間(例えば約50時間)かつ低圧(最大約500Pa(1mm水柱≒10Paにて換算した。))で発生させるための装置である。そのため、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置には、小型、軽量、携帯性、操作容易性、低価格など、水素ガスを吸引する患者が場所や時間を問わず、気軽かつ安全に使用できることが要求される。
本実施形態の卓上型水素ガス発生装置は、純水を電気分解することにより水素ガスを発生させる。ここで、イオン交換樹脂による精製後に慮過して得た純水には電気伝導度がないため、純水を電気分解するには、一般的に、(A)硫酸などの酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリワムなどのアルカリを純水に添加した電解液に隔膜を介して電気分解させる方法、又は、(B)イオン交換膜に陽極と陰極の通電電極を密着させた電気分解板を電解槽内の中央に配置し、循環ポンプにて純水を注入しながら電気分解を行う方法、を採用することが多い。本実施形態の卓上型水素ガス発生装置は、上記(B)の電気分解法における電気分解板を用いて、純水に添加物を添加することなく純水を直接的に電気分解する。ただし、小型、軽量、携帯性、価格等の観点から、従来の電気分解システムに一般的に必須とされてきた、循環ポンプ、圧力センサ、水位センサ、電磁弁などを必要としない。
また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置は、高純度の水素ガスを得るため、発生する水素ガス及び酸素ガスを完全に分離し、かつ、他の不純物が混入しないようにする必要がある。そのため、卓上型水素ガス発生装置の内部において、水素ガス発生源と酸素ガス発生源とを完全に空間分離し、かつ、純水以外の添加物が混入しないような構造が必要である。
[全体構成]
図1は、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1を示す構成図である。なお、図2においては、電気分解板3の一部のみを示している。
本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、図1に示すように、小型及び軽量化により卓上使用や携帯使用を可能にするため、幅120mm×高さ200mm×奥行280mm及び重量約1200gに設定されている。
この卓上型水素ガス発生装置1は、図1及び図2に示すように、保護筐体2の内部に、定電流制御回路3、水素ガス発生量メータ4、電気分解板5、電解槽6、水素ガス加圧部7、サージタンク8、酸素ガス加圧弁9、逆流防止弁10及び気体抜き部11を備える。
[保護筐体2]
保護筐体2は、図1に示すように、卓上型水素ガス発生装置1を覆う金属製の箱である。この保護筐体2は、全体として略直方体形状に形成されており、下面パネル201、正面パネル202及び背面パネル203からなる本体支持部200と、左側面パネル211、右側面パネル212及び上面パネル213からなるカバー部210とにより構成される。これら本体支持部200及びカバー部210は、卓上型水素ガス発生装置1の内部メンテナンスや純水13の給水等の際に、ネジ220の着脱に応じて分離可能に形成されている。
また、保護筐体2は、その正面パネル202の左下付近に、確認窓230を有する。この確認窓230は、所定幅をもって上下方向に延在する略長方形の切り欠きであり、水素ガス加圧部7内に貯蔵される水14を通過する水素ガスの気泡15を視認することができる。
また、保護筐体2は、上面パネル213の中央付近にハンドル240を有する。このハンドル240は、卓上型水素ガス発生装置1の運搬時に使用される。
また、保護筐体2は、左側面パネル211の左上付近及び背面パネル203の上方に通気口250を有する。この通気口250は、電解槽6から排気された酸素ガスや、卓上型水素ガス発生装置1の内部発熱源から排出された熱を、卓上型水素ガス発生装置1の内部から外部に通過させる。必要に応じて、通気口250の内側には、冷却用ファンが取り付けられていることが好ましい。
[定電流制御回路3]
定電流制御回路3は、図2に示すように、電源301から得た電力を所定の定電流に制御し、電気分解板5にその所定の定電流を供給する回路である。電源電圧はDC6〜9Vに設定されており、その消費電流は0〜2Aに設定されている。
上記の電源301としては、コンセントに接続されたACアダプタや、アルカリ乾電池などの乾電池、リチウムイオン電池などの二次電池がその一例として挙げられる。上記の電源301としてACアダプタを利用する場合、ACアダプタを接続する電源入力端子は、背面パネル203の下方に設置される。一方、上記の電源301として乾電池や二次電池などの電池を利用する場合、その電池は保護筐体2に内蔵される。
また、上記の所定の定電流は、卓上型水素ガス発生装置1から排出される水素ガスが爆発しない程度の排出量(例:最大10ml/min程度)及び排気圧(150〜500Pa)を最大値の基準として設定されている。所定の定電流の値は、図2に示すように、定電流制御回路3に接続された設定用ボリューム302により制御することが可能である。
設定用ボリューム302は、図1に示すように、正面パネル202の中央付近に配置されている。また、定電流制御回路3の電源スイッチ303は、図1に示すように、正面パネル202の右下に配置されている。また、定電流制御回路3のオン・オフを確認する確認ランプ304は、図1に示すように、正面パネル202の右下であって上記の電源スイッチ303の上方周辺に配置されている。
[水素ガス発生量メータ4]
水素ガス発生量メータ4は、図1に示すように、正面パネル202の上方に配置されている。この水素ガス発生量メータ4は、電気分解板5に供給される電流値に応じて水素ガスの発生量を表示する。卓上型水素ガス発生装置1を人体への吸入治療や理化学実験などに用いる場合、卓上型水素ガス発生装置1を安全に利用するため、水素ガス発生量メータ4の設置は必要不可欠である。
水素ガス発生量メータ4としては、複雑かつ高価になりやすい水素量測定器を排除するため、電流計の目盛を水素ガス発生量(ml/min)に対応させた電流計改造メータであることが好ましい。純水13の電気分解により発生する水素ガスの発生量は、電気分解板5に通電する電流値に比例する。
ここで、室温20℃及び1気圧(≒101kPa)において、本実施形態の電気分解板5に供給された電流値及びその電流に応じて発生した水素ガス発生量の実測値を、以下の表1に示す。
Figure 0005481621
表1に示す通り、水素ガスの発生量は、電気分解板5に通電する電流値に比例することがわかる。このことから、上記の電流計改造メータは、水素ガス発生量メータ4として要求される実用レベルを十分に兼ね備えている。
水素ガス発生量メータ4が電流計改造メータである場合、水素ガス発生量メータ4は、図2に示すように、定電流制御回路3と電気分解板5との間に接続されている。
[電気分解板5]
図3は、本実施形態の電解槽6を正面から見た断面図である。また、図4は、本実施形態の電解槽6を水素ガス発生槽602側から見た部分断面図である。
電気分解板5は、図2〜図4に示すように、一対の電極板500、イオン交換膜510及び固定部520を有する。一対の電極板500は、図3に示すように、イオン交換膜510の両面に配置されている。また、固定部520は、図2〜図4に示すように、一対の電極板500及びイオン交換膜510を互いに密着させる。
(電極板500)
一対の電極板500は、陽極板501及び陰極板502により構成される。電気分解板5により純水13を電気分解した場合、陽極板501側から酸素ガス(O)が発生し、陰極板502側から水素ガス(2H)が発生する。
陽極板501としては、イリジウム(Ir)又は白金(Pt)メッキしたチタニウム製のエキスパンドメタルを用いることが好ましい。また、陰極板5022としては、白金(Pt)メッキしたチタニウム製のエキスパンドメタルを用いることが好ましい。
陽極板501及び陰極板502として用いるエキスパンドメタルは、イオン交換膜510との密着性を高めるため、平滑処理されていることが好ましい。また、上記のエキスパンドメタルは、固定部520による固定性を高めるため、同一のメッシュ形状及びメッシュ寸法に設定されており、それらのメッシュ位置が一致するように配置されることが好ましい。
また、本実施形態における上記のエキスパンドメタルは、高さ80mm×幅40mm×厚さ0.3〜0.5mmに設定されている。また、本実施形態における上記のメッシュの開口部表面積は、2mmに設定されている。
(電極板500の通過孔503)
次に、一対の電極板500に設けられる複数の通過孔503を説明する。
図5は、本実施形態の電極板500に形成された通過孔503が円形の場合における水素ガスの発生状態を示す概念図である。図6は、本実施形態の電極板500に形成された通過孔503の頂角504が約120度の場合における水素ガスの発生状態を示す概念図である。図7は、本実施形態の電極板500に形成された通過孔503の頂角504が約30度の場合における水素ガスの発生状態を示す概念図である。
一対の電極板500は、図4に示すように、複数の通過孔503をそれぞれ有することが好ましい。通過孔503は、図5に示す円形状、図6に示す頂角504が約120度の横長の菱形形状、図7に示す頂角504が約30度の縦長の菱形形状など、種々の形状を採用することができる。そのなかでも、通過孔503は、図7に示すように、その上方に内角45度以下の頂角504を有する形状に形成されていることが好ましい。
本実施形態における一対の電極板500は、上記したエキスパンドメタルである。そのため、本実施形態においては、エキスパンドメタルの各メッシュを複数の通過孔503として採用している。
次に、通過孔503の形状が、図7に示すように、その上方に内角45度以下の頂角504を有する形状であることが好ましい理由を説明する。
電気分解板5によって純水13が電気分解される場合、水素ガスは陰極板502とイオン交換膜510との接触面で発生し、酸素ガスは陽極板501とイオン交換膜510との接触面で発生する。そして、水素ガス及び酸素ガスは、それぞれ、気泡15となって発生する。
ここで、水素ガス及び酸素ガスの各気泡径は、それらの接触面付近においてナノレベルである。そのサイズの気泡15は、電極板500の通過孔503内において接触面側から各電極板500の外側に移動される際にマイクロレベルの気泡径にまで成長する。
ここで、気泡15がマイクロレベルからミリレベルの気泡径にまで成長する前に電極板500の通過孔503から気泡15を排出しないと、大きなサイズ(≧ミリレベルの気泡径)の気泡15が電極板500の通過孔503に滞留してしまい、電極板500とイオン交換膜510との間にも大きなサイズの気泡15が侵入する。気泡15は絶縁性であるため、大きな気泡15が接触面に侵入すると電極板500とイオン交換膜510との間に生じる電解電流が妨害され、電圧上昇や温度上昇を引き起こすので、電気分解板5による電解効率が低下する原因になる。
上記の電解効率の低下は、低電力で駆動する卓上型水素ガス発生装置1にとって深刻な問題になる。また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、純水13を供給する給水ポンプや、電解槽6内の純水13を循環させる循環ポンプなど、通過孔503内に生じる気泡15を強制的に循環させる手段を有しない。そのため、気泡15がミリレベルの気泡径にまで成長させないための通過孔503が極めて重要になる。
気泡15がミリレベルの気泡径にまで成長する前に気泡15を通過孔503から排出させるために好適な通過孔503の形状を比較するため、図5に示すような円形の通過孔503、図6に示すような頂角504が約120度の通過孔503、及び、図7に示すような頂角504が約30度の通過孔503など、上部形状が異なる通過孔503に対して比較実験を行ったところ、図5〜図7に示すように、通過孔503の上部形状の違いに応じて水素ガス発生量に顕著な差を確認することができた。
以下の表2は、上記の実験結果を示している。表2内の水素ガス発生量は、電気分解板5に電流1Aが供給されたときに水素ガスが7.0ml/min発生した実測値に基づいて換算している。
Figure 0005481621
通過孔503が円形の場合、表2に示すように、電気分解板5に6Vの定電圧を印加すると、電気分解板5における複数の通過孔503から約4.9ml/minの水素ガスが発生する。また、通過孔503が45〜180度の場合、電気分解板5に6Vの定電圧を印加すると、電気分解板5における複数の通過孔503から約5.6ml/minの水素ガスが発生する。また、通過孔503が30〜45度の場合、電気分解板5に6Vの定電圧を印加すると、電気分解板5における複数の通過孔503から約7.7〜8.4ml/minの水素ガスが発生する。
図8は、表2から得られた通過孔503の頂角504と水素ガス発生量との関係を示すグラフである。表2及び図8に示す通り、通過孔503の頂角504が60度から45度に変化する過程において、水素ガス発生量が急激に上昇することが明らかである。これは、通過孔503の頂角504が45度以下になると、通過孔503内の気泡15が通過孔503の上部に滞留し難くなって通過孔503から気泡15が離脱することによるものと考えられる。
上記の実験により得られたデータから上記の電気分解板5の電解効率を計算してみると、図5及び図6に示すような通過孔503が円形状又は通過孔503の頂角504が45度以上の電気分解板5の電解効率は約65〜70%であった。それに対し、図7に示すような通過孔503の頂角504が45度以下の電気分解板5の電解効率は、それらの電解効率から10〜15ポイントアップの約80%であった。
上記の結果は、気泡発生の目視確認からも明らかである。通過孔503が円形の場合や、通過孔503の頂角504が約120度の場合、図5及び図6に示すように、通過孔503から発生する気泡15はミリレベルの気泡径であることを確認することができる。それに対し、通過孔503の頂角504が約30度の場合、図7に示すように、通過孔503から発生する気泡15はマイクロレベルの気泡径であることを確認することができる。
すなわち、通過孔503の形状は、図7に示すように、その上方に内角45度以下の頂角504を有する形状であることが好ましいことがわかる。
(電極板500の厚さ)
また、気泡15は、上記の通り、電極板500の通過孔503内において電極板500とイオン交換膜510との接触面側から各電極板500の外側に移動する。そのため、電極板500の厚さが薄くなるほど、気泡15が通過孔503内に滞留し難くなるので、通過孔503から気泡15が発生しやすくなることが容易に理解できる。これは、従来の電気分解板において、イオン交換膜510との密着性を向上させるため、厚手の電極板を用いていた従来の考え方とは大きく異なる革新的な考え方である。
そこで、本実施形態の電極板500の厚さは、上記を考慮し、0.3〜0.5mmに設定されている。
(イオン交換膜510)
イオン交換膜510は、図3に示すように、純水13の吸収により膨張する平滑な弾性膜である。イオン交換膜510としては種々の市販品を利用することができる。本実施形態のイオン交換膜510は、デュポン社製イオン交換膜「Nafion N−117CS」である。この場合、イオン交換膜510は、純水13の吸収により約12〜15%膨張する。また、本実施形態のイオン交換膜510は、一対の電極板500よりも一回り大きく、高さ110mm×幅70mm×厚さ0.17mmに設定されている。
また、イオン交換膜510は、図4に示すように、8個のリベット穴511を有することが好ましい。これら8個のリベット穴511は、一対の電極板500(エキスパンドメタル)がそれぞれ有する通過孔503(メッシュ)の同軸上に設けられ、かつ、通過孔503よりも小さな複数のリベット穴511を電極板500の接触面に均等に形成されている。本実施形態のリベット穴511の内径は、1.8〜1.9mmに設定されている。
また、イオン交換膜510は、液体及び気体の通過孔を有しない。詳細は後述するが、上記の8個のリベット穴511は、液体及び気体を通過させない構造なので、上記した液体及び気体の通過孔に含まれない。
(固定部520)
固定部520は、イオン交換膜510の両面に一対の電極板500をそれぞれ密着させる。一対の電極板500及びイオン交換膜510が密着していないと、一対の電極板500とイオン交換膜510との間の通電抵抗が大きくなり、電気分解板5の電解効率が低下するため、固定部520による密着性能は重要になる。
一対の電極板500及びイオン交換膜510の密着方法としては、従来と同様、湾曲し難い厚めの電極板500でイオン交換膜510を挟み込み、電極板500の周囲4か所及び中央1箇所の合計五か所でボルト止めする方法も考えられる。しかし、電気分解板5にボルト等の大きな突起物が多数存在すると、電極板500から発生する水素ガスや酸素ガスの気泡15がその突起物に吸着し、気泡15の上昇を妨げることになる。また、突起物の体積が大きくなるほど、電解槽6に貯蔵する純水13の容量が減少する。その結果、水素ガスの発生量が低下する。
なお、突起物への気泡15の吸着に関しては、電解槽6に循環ポンプを接続することによってその吸着を減らすことも可能である。しかし、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、小型化、携帯性向上及び安価性を考慮し、循環ポンプを備えていない。
そのため、本実施形態の固定部520は、図2〜図4に示すように、小さなリベットであることが好ましい。
(リベット)
本実施形態の固定部520としてのリベットは、密着性を高めるため、図4に示すように、電極板500の周囲に沿って長方形状に4個配置されていると共に、電極板500の中央部において縦長の菱形形状に4個配置されている。また、固定部520としてのリベットは、密着性を高めるため、液体を吸収したときに膨張することが好ましい。
これらのリベットは、熱可塑性プラスチック製であり、図3に示すように、リベット軸521と、2個のリベット頭部522と、により構成されている。
また、熱可塑性プラスチックスは、耐水性及び数十度の温度に耐えられる耐熱性を有する。熱可塑性プラスチックスとしては、例えば、耐熱塩化ビニール(PVC)、ポリカーボネー卜(PC)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。
(リベット軸521)
リベット軸521は、図3に示すように、電極板500の通過孔503及びリベット穴511に挿入される。このリベット軸521は、通過孔503の内径よりも小さく、かつ、リベット穴511の内径よりも大きな外径に設定されている。本実施形態のリベット軸521の外径は、イオン交換膜510のリベット穴511よりも約10%大きな、2mmに設定されている。
(リベット頭部522)
2個のリベット頭部522は、図3に示すように、リベット軸521の両端に形成されている。
図9は、本実施形態の固定部520としてのリベットにおける一方のリベット頭部522が未だ形成されていない場合におけるリベットの挿入発生状態を示す概念図である。図10は、本実施形態の固定部520としてのリベットにおける一方のリベット頭部522が形成された場合におけるリベットの挿入発生状態を示す概念図である。
これら2個のリベット頭部522のうち、一方のリベット頭部522は、図9に示すように、通過孔503及びリベット穴511にリベット軸521を挿入する前に、リベット軸521の一端を超音波又は加熱金型により溶融及び冷却して傘状に形成されている。そして、一方のリベット頭部522のみが形成された未完成のリベットのリベット軸521がリベット穴511に挿入された後、図10に示すように、リベット軸521の他端を超音波又は加熱金型により溶融及び冷却して他方のリベット頭部522を傘状に形成する。
上記の完成したリベット及びイオン交換膜510は、電解槽6に供給された純水13によって膨張する。この膨張により、リベット穴511とリベット軸521との間の空隙がなくなり、リベット穴511が完全に封口される。これにより、イオン交換膜510のリベット穴511から液体及び気体の移動が一切なくなる。
[電解槽6]
本実施形態の電解槽6は、図3に示すように、電気分解板5を仕切板として、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の2室に仕切られている。水素ガス発生槽602は、水素ガスが発生する陰極板502側に形成される槽である。また、酸素ガス発生槽601は、酸素ガスが発生する陽極板501側に形成される槽である。これら水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601は、所定の水位に保たれた純水13をそれぞれ貯蔵している。
本実施形態の電解槽6は、縦長に伸びる中空直方体形状に形成されており、その寸法は、図3に示すように、電解槽6の正面から見て、高さ110mm×幅70mm×奥行き43mmに設定されている。この場合、電解槽6の容量は約192mlとなる。
また、本実施形態の電解槽6における理想的な水位は、電気分解板5による電解効率の向上と純水13の溢出防止を考慮し、約70%(約60mm)に設定されている。この場合、純水13の容量は約144mlとなる。
また、本実施形態における電解槽6の水位(水素ガス発生槽602の水位及び酸素ガス発生槽601の水位)の変化は、約±5%(約±5mm)の範囲に設定されている。この場合、上限水位と下限水位との水位差10mm分の純水13の容量は、約24mlとなる。
なお、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、純水131.0mlから約1200mlの水素ガスを発生させることができる。つまり、電解槽6へ給水が一切ない状態であっても、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、上限水位と下限水位との水位差10mm分の純水13の容量約24mlから28800mlの水素ガスを発生させることができる。これは、水素ガスの発生量が最大の毎分10mlの場合であっても、卓上型水素ガス発生装置1は水素ガスを約48時間も発生させ続けることができる。
また、本実施形態の電解槽6は、図2〜図4に示すように、2個の分割ケース611及び締結部612により構成されていることが好ましい。
(分割ケース611)
2個の分割ケース611は、図2〜図4に示すように、縦長に伸びる中空直方体形状の容器を上下方向に分割して得た形状に形成されている。この分割ケース611は、アクリル樹脂等の透明プラスチック製であり、電気分解板5から水素ガス及び酸素ガスの発生、電解槽6内の純水13の水位等が確認可能になっている。
(締結部612)
また、締結部612は、図3に示すように、一対の電極板500よりも大きく形成されたイオン交換膜510の周縁部を2個の分割ケース611の周縁部で挟んだ状態にした後、図4に示すように、2個の分割ケース611を一体に締結する。締結部612としては、図4及び図3に示すように、水素ガス発生槽602又は酸素ガス発生槽601を正面から見たときの分割ケース611の周縁において2個の分割ケース611を貫通する複数のネジ又はボルト・ナットであることが好ましい
電気分解板5を構成する乾燥したイオン交換膜510を2個の分割ケース611で挟み、その2個の分割ケース611を締結部612で締結することにより電解槽6を形成した後、この電解槽6に純水13を給水し、電解槽6の漏れ実験を行った。電解槽6への給水から長時間(約50時間)経過後であっても、電解槽6から純水13の漏れを確認することができなかった。そのため、供給された純水13で膨張したイオン交換膜510の周縁部は、2個の分割ケース611の合わせ面におけるソフトガスケットの役割を十分に果たしているといえる。
[水素ガス加圧部7]
水素ガス加圧部7は、図2に示すように、水素ガス発生槽602から発生する水素ガスを所定の圧力で加圧しながら取り出すように構成されている。水素ガス加圧部7による所定の圧力とは、水素ガス発生槽602に貯蔵された純水13の水位が所定(基準水位70%(約60mm)+5%(約±5mm)の範囲)以上に上昇することを抑える圧力である。本実施形態において、水素ガス加圧部7による所定の圧力は、100〜400Paに設定されている。
また、本実施形態の水素ガス加圧部7は、水素ガス貯留部710と、水素ガス中継部720と、水素ガス取出部730と、を有することが好ましい。
(水素ガス貯留部710)
水素ガス貯留部710は、図2に示すように、所定水位の水14を貯蔵する。本実施形態の水素ガス貯留部710は、透明ガラス製の容器711と、貯留部用ゴム栓712と、により構成されている。容器711は、高さ約50mmに設定されている。また、貯留部用ゴム栓712は、容器711の蓋であり、水素ガス中継部720及び水素ガス取出部730がそれぞれ通過する2個の通過孔を有する。
水素ガス貯留部710に貯蔵される水14は、電気分解のための純水13ではなく、水素ガス発生を視認するための水14、及び、水素ガス取出し部から取り出された水素ガスが引火した時の消火水として使用するための水14である。そのため、水素ガス貯留部710に貯蔵される水14としては、純水13が好ましいが、水道水であってもよい。
水素ガス貯留部710の水位は、約30〜40mmに設定されることが好ましい。これは、水素ガス発生槽602から発生する水素ガスに所定の圧力で加圧するため、及び、水素ガス発生槽602から水素ガス中継部720を経由して水素ガス貯留部710に中継された水素ガスを気泡15として視認するため、である。
(水素ガス中継部720)
水素ガス中継部720は、図2に示すように、水素ガス発生槽602の上部に設けられた水素ガス排出口622から水素ガス貯留部710の下部までの間を、中継する。本実施形態の水素ガス中継部720は、水素ガス排出口622から貯留部用ゴム栓712を介して水素ガス貯留部710の容器711の下部までの間を接続する中継用接続パイプである。
水素ガス中継部720は、水素ガス発生槽602から水素ガス貯留部710の下部に水素ガスを中継する。また、水素ガス中継部720は、水素ガス貯留部710に貯蔵された所定水位の水14の水圧により水素ガス発生槽602から発生する水素ガスを加圧する。
(水素ガス取出部730)
水素ガス取出部730は、図2に示すように、水素ガス貯留部710の上部から水素ガスを取り出す。本実施形態の水素ガス取出部730は、取出用接続パイプ731と、水素ガス取出口732と、により構成されている。取出用接続パイプ731は、水素ガス貯留部710の上部から貯留部用ゴム栓712を介して水素ガス取出口732までを接続する。水素ガス取出口732は、図1に示すように、正面パネル202の中央左側に配置されている。この水素ガス取出口732は、気管カニューレや実験用チューブなどの外部器具との接続手段となる。
[サージタンク8]
サージタンク8は、純水13を貯蔵すると共に、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の各下部にそれぞれ接続される。本実施形態のサージタンク8は、透明プラスチック又は透明ガラス製のタンク本体801と、タンク用ゴム栓802と、排水コック803と、2本のタンク用接続チューブ804と、により構成されている。
タンク本体801は、電解槽6に供給する純水13を貯蔵する容器であり、高さ約100mmに設定されている。また、タンク用ゴム栓802は、タンク本体801の蓋であり、タンク本体801に純水13を供給するときに開閉される。排水コック803は、サージタンク8から純水13を排水する場合に使用される。
2本のタンク用接続チューブ804は、タンク本体801の下部と水素ガス発生槽602の下部との間、及び、タンク本体801の下部と酸素ガス発生槽601の下部との間を、それぞれ接続する。水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の各下部で接続する理由は、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601からサージタンク8に水素ガス及び酸素ガスを移動させないためである。
[酸素ガス加圧弁9]
酸素ガス加圧弁9は、図2〜図4に示すように、酸素ガス発生槽601から発生する酸素ガスを所定の圧力で加圧しながら排出する。酸素ガス加圧弁9による所定の圧力とは、酸素ガス発生槽601に貯蔵された純水13の水位が所定以上に上昇することを抑える圧力である。本実施形態の酸素ガス加圧弁9による所定の圧力としては、50〜150Paである。
また、酸素ガス加圧弁9は、図4に示すように、酸素ガス加圧用筒部901と、酸素ガス加圧用金属ボール902と、穴あきゴムキャップ903と、により構成されていることが好ましい。
酸素ガス加圧用筒部901は、酸素ガス発生槽601の上部に設けられた内径2〜3mmの酸素ガス排出口621の上方に延在する。酸素ガス加圧用筒部901の内径は、酸素ガス加圧用金属ボール902の直径の1.2〜1.8倍の大きさに設定されている。酸素ガス加圧用筒部901は、酸素ガス排出口621と一体形成されていてもよいし、別体形成されていてもよい。
酸素ガス加圧用金属ボール902は、酸素ガス加圧用筒部901に内包されており、所定圧で酸素ガス排出口621を塞いでいる。酸素ガス加圧用金属ボール902の直径は、酸素ガス排出口621の内径よりも大きく、酸素ガス加圧用筒部901の内径よりも小さく設定されている。また、酸素ガス加圧用金属ボール902の重量は、上記した酸素ガス加圧弁9による所定の圧力を満たすように設定されている。本実施形態の酸素ガス加圧用金属ボール902は、直径4〜5mmの2個のステンレス球であり、酸素ガス加圧用筒部901の内部で上下に積み重ねられている。
穴あきゴムキャップ903は、酸素ガス加圧用筒部901にごみが入らないように酸素ガス加圧用筒部901の上端口を覆いつつ、酸素ガス加圧用金属ボール902が所定圧以上で押し上げられて酸素ガス排出口621から酸素ガスが排出されたときにその酸素ガスを大気開放する。
[逆流防止弁10]
逆流防止弁10は、定電流制御回路3の電源スイッチ303をオフにして電気分解板5による電気分解を停止させたときに水素ガス発生槽602で発生する負圧を利用して、水素ガス発生槽602を大気開放する。本実施形態の逆流防止弁10による開放負圧としては、−100〜200Paに設定されている。
また、逆流防止弁10は、水素ガス排出口622、又は、水素ガス中継部720のいずれか一方に設けられている。本実施形態の逆流防止弁10は、感応度を高めるため、水素ガス排出口622の側方において、水素ガス排出口622に接続されている。
また、逆流防止弁10は、逆流防止弁用筒部101と、逆流防止弁用金属ボール102と、を有することが好ましい。逆流防止弁用筒部101は、その下方に大気開放口103を有している。この大気開放口103の内径は、逆流防止弁用金属ボール102の直径よりも小さく設定されている。
逆流防止弁用金属ボール102は、逆流防止弁用筒部101に内包されており、所定圧で大気開放口103を塞いでいる。逆流防止弁用金属ボール102の直径は、大気開放口103の内径よりも大きく、逆流防止弁用筒部101の内径よりも小さく設定されている。また、逆流防止弁用金属ボール102の重量は、上記した開放負圧で大気開放口103から逆流防止弁用金属ボール102が離れて浮き上がり、水素ガス発生槽602が負圧から正圧(>0Pa)に切り替わったときに逆流防止弁用金属ボール102が大気開放口103をすばやく塞ぐように、設定されている。本実施形態の逆流防止弁用金属ボール102は、直径2〜3mmの2個のステンレス球であり、逆流防止弁用筒部101の内部で上下に積み重ねられている。
[気体抜き部11]
気体抜き部11は、サージタンク8への給水時に、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の各上部に封入された気体を抜く。この気体抜き部11は、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の各上部や、その各上部に接続された部材などに、配置される。
本実施形態の気体抜き部11は、気体抜き用ゴム栓111と、気体抜き用ゴムキャップ112と、により構成されている。気体抜き用ゴム栓111は、水素ガス発生槽602の気体抜き用に設けられており、水素ガス排出口622の上部開口を覆う。また、気体抜き用ゴムキャップ112は、酸素ガス発生槽601の気体抜き用に設けられており、酸素ガス発生槽601の上部から上方に延在する気体抜き用筒部の上部開口を覆う。
次に、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1における動作フローを説明する。
[水素ガスの発生開始]
図1に示すように、電源スイッチ303をオンにすると、確認ランプ304が点灯し、図2に示すように、定電流制御回路3から所定の定電流が水素ガス発生量メータ4を経由して電気分解板5に供給される。また、水素ガス発生量メータ4は、図1に示すように、表1に示した電流値と水素ガス発生量との関係に基づいて水素ガス発生量を示す。定電流制御回路3から供給される所定の定電流の変更は、図1及び図2に示すように、設定用ボリューム302の操作によって可能になっている。
定電流制御回路3から供給される電流は、電気分解板5の陽極板501及び陰極板502にそれぞれ供給される。また、陽極板501及び陰極板502からなる一対の電極板500は、固定部520によってイオン交換膜510の両面に密着している。そのため、電解槽6に供給された純水13に酸やアルカリなどの電解促進物を添加することなく、純水13が電気分解する。その結果、陰極板502及びイオン交換膜510の接触面から水素ガスが発生すると共に、陽極板501及びイオン交換膜510の接触面から酸素ガスが発生する。
(水素ガスの早期離脱)
ここで、一対の電極板500は、頂角504504が45度以下に設定された複数の通過孔(メッシュ)503を有するエキスパンドメタルにより構成しているため、発生初期における気泡径ナノレベルの水素ガス及び酸素ガスの気泡15が、図7に示すように、気泡径ミリレベルの気泡15に成長する前に、気泡径マイクロレベルの気泡15の状態で一対の電極板500から離脱する。
(水素ガスの加圧)
また、電気泳動の影響により、電気分解の開始時から時間の経過とともに、酸素ガス発生槽601に貯蔵された純水13が水素ガス発生槽602に移動する。そのため、水素ガス発生槽602から発生する水素ガスを何ら加圧することなく排出してしまうと、水素ガス発生槽602から純水13が溢れ出すと共に、酸素ガス発生槽601に貯蔵される純水13が不足する。そのため、水素ガス加圧部7は、図2に示すように、水素ガス発生槽602から発生する水素ガスを加圧しながら取り出す。この加圧原理は次の通りである。
水素ガス発生槽602の水素ガス排出口622から排出された水素ガスは、水素ガス中継部720を中継して、水素ガス貯留部710の下部までたどり着く。水素ガス貯留部710は所定水位の水14を貯蔵しているため、水素ガスが水素ガス中継部720から水素ガス貯留部710に移動するには、水素ガスの排気圧(150〜500Pa)がその移動の際に水素ガス貯留部710から受ける水圧(約100〜250Pa)よりも高くなければならない。この水圧が水素ガス発生槽602から発生する水素ガスに加圧する所定の圧力となる。
(電解槽6の自動水位調整)
上記した水圧の調整は、水素ガス貯留部710に貯蔵される水14の水位を調整することにより行う。ただし、水素ガス貯留部710における水位が好適な水位(例えば30mm)よりも高くなり、水圧が好適な圧力よりも高くなると、水素ガス発生槽602に与える高い水圧の影響により、水素ガス発生槽602から酸素ガス発生槽601に純水13が移動してしまう。そして、その結果、酸素ガス発生槽601から純水13が溢れ出てしまう。このことから、電解槽6の水位(水素ガス発生槽602の水位及び酸素ガス発生槽601の水位)を一定かつ容易に調整するため、水素ガス加圧部7の他にも電解槽6への加圧調整手段を備えていることが好ましい。
本願の発明者が多くの実験を行った結果、電解槽6の水位を基準水位から±5mm(基準水位の±約5%)の範囲に保つためには、卓上型水素ガス発生装置1にサージタンク8及び酸素ガス加圧弁9を設置することが有効であることが明らかとなった。
サージタンク8は、図2に示すように、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601に接続するだけで、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601に過剰に流入した純水13を一時的に蓄える。これにより、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601における急激な流入量の増減を緩和し、電解槽6の水位が平準化する。
また、酸素ガス加圧弁9は、酸素ガス発生槽601から発生する酸素ガスを加圧しながら排出する。上記の酸素ガス加圧弁9による所定の圧力の微調整を行う場合、図3及び図4に示すように、穴あきゴムキャップ903を取り外し、酸素ガス加圧弁用金属ボール902の大きさや個数等を変更して酸素ガス加圧弁用金属ボール902の総重量を調整し、穴あきゴムキャップ903を元の位置に取り付ければよいだけなので、従来のばね式加圧弁と比較して、その微調整が容易である。
そして、水素ガス加圧部7、サージタンク8及び酸素ガス加圧弁9の相乗効果により、電解槽6の水位が容易に安定しながら水素ガスの発生が継続する。
(水素ガスの目視確認)
水素ガス発生槽602から発生した水素ガスが水素ガス加圧部7の水素ガス中継部720を中継して水素ガス貯留部710に侵入すると、図2に示すように、その水素ガスは気泡15となって水素ガス貯留部710に貯蔵された水14の中を移動する。図1に示す保護筐体2の確認窓230から水素ガス貯留部710をのぞくとこの水素ガスの気泡15を見ることができるので、目に見えない水素ガスが発生しているか否かを目視確認することができる。
(水素ガスの供給)
水素ガス貯留部710の上方に貯留された水素ガスは、図2に示すように、水素ガス取出部730の水素ガス取出口732に接続された気管カニューレや実験用チューブなどの外部器具を介して、吸引用や実験用などに供給される。
[水素ガスの発生停止]
卓上水素ガス発生装置からの水素ガスの発生を停止させる場合、図1に示すように、電源スイッチ303をオフにし、確認ランプ304が消灯することを確認する。
(逆流防止)
電源スイッチ303をオフにしてしばらくすると、電解槽6の純水13が冷却されることにより電解槽6内が減圧状態になり、水素ガス貯留部710の水14が水素ガス中継部720を介して電解槽6に逆流しようとする。その際、図4に示すように、逆流防止弁10の逆流防止弁用金属ボール102が電解槽6のわずかな負圧(−100〜200Pa)に迅速に反応して浮き上がり、水素ガス発生槽602を大気開放する。これにより、水素ガス貯留部710の水14は逆流せず、水素ガス貯留部710に留まる。また、水素ガス発生槽602が大気開放されてその圧力が0Paになると、逆流防止弁用金属ボール102が大気開放口103を塞ぐので、電解槽6内の水位及び圧力関係が維持される。
[純水13の供給]
図2に示すように、サージタンク8の排水コック80342が閉じていることを確認してから、タンク用ゴム栓802を取り外す。また、電解槽6に取り付けられた気体抜き用ゴムキャップ112及び気体抜き用ゴム栓111も取り外す。タンク用ゴム栓802、気体抜き用ゴムキャップ112及び気体抜き用ゴム栓111が取り外されたら、電解槽6の水位が電解槽6の容量の約70%±5%(基準水位付近)となるように、かつ、サージタンク8の水位が約70〜80%となるように、純水13をサージタンク8に供給する。供給を容易にするため、電解槽6及びサージタンク8に予めマーキングしておくとよい。
純水13の供給が完了したら、タンク用ゴム栓802、気体抜き用ゴムキャップ112及び気体抜き用ゴム栓111を取り付ける。タンク用ゴム栓802、気体抜き用ゴムキャップ112及び気体抜き用ゴム栓111で密閉することにより、電解槽6及びサージタンク8の圧力関係は保たれ、サージタンク8は電解槽6の内部に生じる微妙な圧力変化を吸収する。
次に、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1の効果を説明する。
(1)本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、液体及び気体の通過孔503を有しないイオン交換膜510と、イオン交換膜510の両面にそれぞれ密着する一対の電極板500と、イオン交換膜510の両面に一対の電極板500をそれぞれ密着させる固定部520と、を有する電気分解板5と、電気分解板5を仕切板として電気分解板5に仕切られると共に電気分解の対象となる純水13をそれぞれ貯蔵する水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601を有する電解槽6と、水素ガス発生槽602に貯蔵された純水13の水位が所定以上に上昇することを抑える圧力で水素ガス発生槽602から発生する水素ガスを加圧しながら取り出す水素ガス加圧部7と、を備えることを特徴とする。
本実施形態によれば、電気分解板5が水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601を空間分離する電解槽6の仕切板になるので、電気分解板5に通電したときに水素ガス及び酸素ガスを混合させることなく、それらを分離発生させることができる。また、電気分解の際の電気泳動により純水13が酸素ガス発生槽601から水素ガス発生槽602に移動しても、水素ガス加圧部7が水素ガス発生槽602から発生する水素ガスを加圧するので、電気泳動により水素ガス発生槽602に移動した純水13が水素ガス発生槽602から溢れ出してしまうことを防止することができる。
(2)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、純水13を貯蔵すると共に、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の各下部にそれぞれ接続されるサージタンク8と、を更に備えることが好ましい。
本実施形態によれば、サージタンク8が水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の各下部にそれぞれ接続されているので、サージタンク8が水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601に純水13を供給しつつ、水素ガス発生槽602又は酸素ガス発生槽601の一方に偏った純水13を他方に移動させることができる。また、サージタンク8が水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の各下部にそれぞれ接続されているので、刻々と変化する電解槽6の水位や水素ガス及び酸素ガスの圧力差をサージタンク8により緩衝することができる。
(3)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、酸素ガス発生槽601に貯蔵された純水13の水位が所定以上に上昇することを抑える圧力で酸素ガス発生槽601から発生する酸素ガスを加圧しながら排出する酸素ガス加圧弁9と、を更に備えることが好ましい。
本実施形態によれば、酸素ガス加圧弁9が閉じているときに酸素ガス発生槽601内の純水13が大気圧以上の気圧で押圧されるので、水素ガス発生槽602から発生する水素ガスが水素ガス加圧部7によって加圧される反作用によって酸素ガス排出口621から純水13が溢れ出すことを抑えることができる。また、酸素ガスが所定圧以上になったときに排出するので、酸素ガス発生槽601内が過剰気圧になって酸素ガス発生槽601や電気分解板5が破損することを防止することができる。
(4)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1において、水素ガス加圧部7は、所定水位の水14を貯蔵する水素ガス貯留部710と、水素ガス発生槽602の上部に設けられた水素ガス排出口622から水素ガス貯留部710の下部までの間を中継する水素ガス中継部720と、水素ガス貯留部710の上部から水素ガスを取り出す水素ガス取出部730と、を有しており、水素ガス貯留部710に貯蔵された純水13により生じる所定の水圧により水素ガスを加圧することが好ましい。
本実施形態によれば、水素ガス加圧部7に貯蔵された水14の水圧により水素ガス発生槽602から発生する水素ガスが加圧されるので、加圧構造及び加圧調整を容易にすることができる。また、水素ガスは水素ガス貯留部710の水14の中を通過するので、水素ガスの発生を気泡15として確認することができる。また、水素ガス中継部720と水素ガス取出部730との間に水素ガス貯留部710の水14が介在しているので、水素ガス取出部730から取り出された水素ガスが引火しても、水素ガス貯留部710に貯蔵された水14がその引火を消火し、水素ガス発生槽602から発生する水素ガスに引火することを防止することができる。
(5)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1において、一対の電極板500は、その上方に内角45度以下の頂角504504を有する複数の通過孔503をそれぞれ有することが好ましい。
本実施形態によれば、頂角504504が45度以上の通過孔503や上部形状が半円形又は半楕円形の通過孔503と比較して電気分解板5による電解効率を約10〜15%向上させることができる。これにより、電解槽6に循環ポンプを取り付けなくても水素ガス発生槽602から水素ガスを取り出すことができる。
(6)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1において、イオン交換膜510は、一対の電極板500がそれぞれ有する通過孔503の同軸上に設けられ、かつ、通過孔503よりも小さな複数のリベット穴511を電極板500の接触面に均等に有しており、固定部520は、通過孔503の内径よりも小さくかつリベット穴511の内径よりも大きな外径を有すると共に通過孔503及びリベット穴511に挿入されるリベット軸521と、リベット軸521の両端に形成されると共に少なくともその一方がリベット軸521を通過孔503及びリベット穴511に挿入された後に超音波又は加熱金型の押しつけにより溶融・冷却形成されることにより一対の電極板500をイオン交換膜510の両面にそれぞれ密着させる2個のリベット頭部522と、を有していると共に、液体を吸収したときに膨張する熱可塑性プラスチック製のリベットであることが好ましい。
本実施形態によれば、リベット穴511が均等配置されていると共に2個のリベット頭部522が一対の電極板500をイオン交換膜510の両面にそれぞれ密着させているので、一対の電極板500とイオン交換膜510とを全面で均等に密着させることができる。また、リベット軸521の外径がリベット穴511の内径よりも大きくなっているので、電解槽6の純水13や電気分解板5から発生したガスがリベット穴511を介して水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601を相互に通過することを防止することができる。
(7)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1において、酸素ガス加圧弁9は、酸素ガス発生槽601の上部に設けられた酸素ガス排出口621の上方に延在する筒部と、筒部に内包されており所定圧で酸素ガス排出口621を塞ぐ金属ボールと、を有することが好ましい。
本実施形態によれば、金属ボールの重量や個数を変更することによって酸素ガス排出口621を塞ぐ圧力を容易に変更することができるので、酸素ガスの排気圧を容易かつ微細に制御することができる。
(8)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1において、電解槽6は、閉じた容器を上下方向に分割して得た形状の2個の分割ケース611と、一対の電極板500よりも大きなイオン交換膜510の周縁部を2個の分割ケース611の周縁部が挟んだ状態で2個の分割ケース611を一体に締結する締結部612と、を有することが好ましい。
本実施形態によれば、電解槽6の構造を簡素化することができる。また、2個の分割ケース611の周縁部にソフトガスケットを用いずとも、電解槽6の密封性を確保することができる。
(9)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、電気分解板5による電気分解停止時に水素ガス発生槽602で発生する負圧を利用して水素ガス発生槽602を大気開放する逆流防止弁10と、を更に備えることが好ましい。
本実施形態によれば、電気分解の停止時に逆流防止弁10が水素ガス発生槽602を大気開放するので、水素ガス貯留部710に貯蔵された水14が水素ガス中継部720を通じて水素ガス発生槽602に逆流することを防止することができる。
(10)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1において、逆流防止弁10は、大気開放口103と、大気開放口103を所定圧で塞ぐ金属ボールと、を有すると共に、水素ガス排出口622又は水素ガス中継部720に取り付けられていることが好ましい。
本実施形態によれば、金属ボールが大気開放口103を塞いでいるので、スプリング式逆流防止弁10と比較して、開放負圧を容易かつ微細に調整することができる。
(11)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1において、電気分解板5は、純水13の電気分解時において、水素ガスの発生量が最大10ml/min、かつ、電気分解板5から発生する水素ガスの発生圧力が150〜500Paとなるように電流制御されており、水素ガス加圧部7は、水素ガス発生槽602から発生する水素ガスを100〜400Paで加圧し、酸素ガス加圧弁9は、酸素ガス発生槽601から発生する酸素ガスを50〜150Paで加圧し、逆流防止弁10は、水素ガス発生槽602の負圧が−100〜200Paのときに水素ガス発生槽602を大気開放することが好ましい。
本実施形態によれば、水素ガス及び酸素ガスの発生圧を詳細に制御することにより、電解槽6の内部の圧力が急上昇してイオン交換膜510のリベット穴511から水素ガス及び酸素ガスが強制通過してしまうことを防止することができる。また、各圧力を詳細に制御しながらサージタンク8が電解槽6に純水13を供給するので、電解槽6の水位が±5mmに維持され、水素ガス発生漕部及び酸素ガス発生漕部から純水13が溢れ出すことを防止することができると共に、水素ガス及び酸素ガスの発生効率を維持することができる。また、開放負圧が0Paに近似しているため、電解槽6の水位と発生ガスの圧力関係を維持したまま、逆流を防止することができる。
(12)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1において、水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の各上部又は各上部に接続された部材は、サージタンク8への給水時に水素ガス発生槽602及び酸素ガス発生槽601の各上部に封入された気体を抜く気体抜き部11を有することが好ましい。
本実施形態によれば、サージタンク8への給水時に気体抜き部11から電解槽6内の気体が給水分だけ抜けるので、電解槽6の圧力関係を維持することができる。
(13)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、卓上型水素ガス発生装置1を覆う保護筐体2を更に備えており、保護筐体2は、水素ガス加圧部7内の純水13を通過する水素ガスの気泡15を視認するための確認窓230を有することが好ましい。
本実施形態によれば、確認窓230から水素ガスの気泡15を視認することにより、目に見えない水素ガスの発生を目視で確認することができる。
(14)また、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1は、電気分解板5に印加された電流値に応じて水素ガスの発生量を表示する水素ガス発生量メータ4と、を更に備えることが好ましい。
本実施形態によれば、水素ガス発生量メータ4を確認しながら、水素ガスの発生量を制御することができる。
すなわち、本実施形態の卓上型水素ガス発生装置1によれば、小型化や携帯性の問題などの従来技術における種々の不具合を改善した新規の卓上型水素ガス発生装置1を提供することができるという効果を奏する。
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
1 卓上型水素ガス発生装置
2 保護筐体
3 定電流制御回路
4 水素ガス発生量メータ
5 電気分解板
6 電解槽
7 水素ガス加圧部
8 サージタンク
9 酸素ガス加圧弁
10 逆流防止弁
11 気体抜き部
13 純水
14 水
15 気泡
101 逆流防止弁用筒部
102 逆流防止弁用金属ボール
103 大気開放口
111 気体抜き用ゴム栓
112 気体抜き用ゴムキャップ
200 本体支持部
201 下面パネル
202 正面パネル
203 背面パネル
210 カバー部
211 左側面パネル
212 右側面パネル
213 上面パネル
220 ネジ
230 確認窓
240 ハンドル
250 通気口
301 電源
302 設定用ボリューム
303 電源スイッチ
304 確認ランプ
500 一対の電極板
501 陽極板
502 陰極板
503 通過孔
504 頂角
510 イオン交換膜
511 リベット穴
520 固定部
521 リベット軸
522 リベット頭部
601 酸素ガス発生槽
602 水素ガス発生槽
611 分割ケース
612 締結部
621 酸素ガス排出口
622 水素ガス排出口
710 水素ガス貯留部
711 容器
712 貯留部用ゴム栓
720 水素ガス中継部
730 水素ガス取出部
731 取出用接続パイプ
732 水素ガス取出口
801 タンク本体
802 タンク用ゴム栓
803 排水コック
804 タンク用接続チューブ
901 酸素ガス加圧用筒部
902 酸素ガス加圧用金属ボール
903 穴あきゴムキャップ

Claims (1)

  1. 液体及び気体の通過孔を有しないイオン交換膜と、前記イオン交換膜の両面にそれぞれ密着する一対の電極板と、前記イオン交換膜の両面に前記一対の電極板をそれぞれ密着させる固定部と、を有する電気分解板と、
    前記電気分解板を仕切板として前記電気分解板に仕切られると共に電気分解の対象となる純水をそれぞれ貯蔵する水素ガス発生槽及び酸素ガス発生槽を有する電解槽と
    備えており、
    前記一対の電極板は、その上方に内角45度以下の頂角を有する複数の通過孔をそれぞれ有する
    ことを特徴とする卓上型水素ガス発生装置。
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