JP5479774B2 - 固体絶縁ケーブルの品質試験方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の試験方法は、工場出荷試験や現地竣工時の耐電圧試験等において、まず裁断過程の第1ステップで、直流電圧を印加後に課電端を短絡させ、次のステップで、逆端側を直流電圧発生装置に接続して同様の操作を行って、有害欠陥部から電気トリーを発生させる。この裁断過程を経た後に所定の直流電圧を所定時間連続課電して、前記裁断過程において発生させた電気トリーを進展破壊させる過程を行なうことで、長尺の固体絶縁ケーブルの全長にわたる品質保証試験を行なう。
しかし、特許文献1に記載のものでは、印加した直流電圧を短絡させる操作をケーブル両端側からそれぞれ同様に行わなければならないため、試験の手順が煩雑化するという問題点を抱えていた。
また、このような取り扱いを行うと、ケーブルの両端部近傍においては必要とする極性反転波は都合1回しか与えられないのに対して、その他の部分は2回の極性反転波履歴が与えられることとなり、従って全長均一な極性反転波の振幅条件での試験を行うことができない、と言う問題点も伴うこととなる。
第一のステップにおいて、固体絶縁ケーブルの一端側に直流電圧発生装置を接続し、導体と遮蔽層間に所定の直流電圧を印加し、当該直流電圧課電端側において高電圧部と接地間を短絡させることによって印加電圧を裁断させて電気トリーの誘発をさせる操作を1回以上実施し、該操作が終了した以後に、第二のステップとして、ケーブルの導体と遮蔽層の間に所定の直流電圧を所定時間連続して印加し、電気トリーが前記裁断過程において発生した場合に、これを進展・破壊させる長尺固体絶縁ケーブルの全長にわたる品質試験方法において、上記第一のステップにおいて前記固体絶縁ケーブルに課電リードケーブル(以下、「リードケーブル」と言うことがある)を接続し、これを介して直流電圧発生装置を接続して直流電圧を印加する。
このように、直流電圧発生装置を接続する短絡端側に予め準備した課電リードケーブルを接続し、短絡端側の有効な極性反転波が生じない部分がこの課電リードケーブル部分内となるようにすれば、試験に供される固体絶縁ケーブルには全長に渡って有効な極性反転波が生じることになる。この結果、固体絶縁ケーブルの一端側で短絡操作するだけで、固体絶縁ケーブルの全長を試験できる。
課電リードケーブルを用いずに固体絶縁ケーブルの一端側で短絡操作するだけとし、有効な極性反転波が印加されなかった短絡端側の一定長部分を廃却する方法も考えられるが、このような方法では、不経済である。このような方法に比較して、本発明の方法は経済的である。
このため、片端側からの直流電圧印加・裁断操作のみで、品質試験を行うことが可能となり、直流電圧の裁断操作を被試験ケーブルの両側で順次行わずとも、同等の結果を得ることでき、試験手順の簡素化・合理化を図ることができる。また、全長均一な極性反転波の振幅条件での試験を行うことが可能となる。
特に、直流電圧発生装置と当該試験ケーブルの間を500m以上とし、かつ、特性インピーダンスの差が10%以内である課電リードケーブルを用いて接続することで、試験の対象である固体絶縁ケーブルに有効な極性反転波を生じさせることができ、さらに、不必要な進行波の反射と透過現象が生じることがなく、期待する極性反転波で試験を行うことができる。
実験を行うに際して、被試験ケーブルとして、絶縁厚3mmの架橋ポリエチレンを絶縁体に持つ固体絶縁ケーブルを準備した。導体サイズは22mm2 として、一連で3000mのものを1本試作した。このケーブルを用いて欠陥の検出を目的とした直流極性反転波形発生の状況について、種々比較を実施した。
前記3000mのケーブルに対して、従来技術の方法によって、直流電圧印加後にケーブルの課電端を短絡させることによって極性反転波形を発生させてみた。
試験回路構成は図1に示すとおりであり、被試験ケーブル1の一方端部側の高電圧部1aと接地間に直流電圧発生装置2から所定電圧の直流電圧を印加したのち、一方端部側の高電圧部1aと接地間を短絡用球ギャップ3で短絡させることで、直流印加電圧を裁断させ極性反転波形を発生させる操作を行った。これにより発生した裁断波が、一方端部側1aからケーブル1の他方端部1b側に進行波として進行する。この裁断波は他方端部1b側で開放端反射して極性反転波が発生し、この極性反転波は一方端部1a側に向かって逆方向に進行する。
オシロスコープ4とプローブ5により各部の波形を測定した結果、試験ケーブル1の各部においては図2に示すような波形が観測された。図2において、横軸は時刻(msec)、縦軸は導体−遮蔽間電圧であり、印加電圧に対する割合(印加電圧の大きさを100としたときの割合(%))を示しており、試験ケーブルの短絡端側(一方端部側1a)からの距離が0m(細線)、200m(実線)、500m(太実線)、750m(細線)、1000m(実線)、1500m(点線)、3000m(太実線)の場合の導体−遮蔽間電圧をそれぞれ示している。同図に示すように上記距離が大きいほど振幅が大きくなっている。
これより、ケーブルの短絡端部分1aから概ね500mを超える距離より開放端1b側には、開放端1bに生じる電圧振幅の80%以上の有効な振幅を有する極性反転波が生じていることが確認される。
試験の信頼性を確保するためには、安全を見て前記200mの2倍以上である500m程度部分は有効な試験が行われていないと考えることが確実である。そこで、簡便にはこの箇所は試験後に除去することで目的を達することはできるが、500mものケーブルを試験の都度廃却することはあまりに不経済である。
そこで、上記500mに相当する箇所を予め課電リードケーブルとして繰り返し使用することを前提として準備することを想定して、同仕様のケーブルによる500mのリードケーブルを介して、同様の極性反転波発生時の電圧波形を測定した。その状況を図3に示す。被試験ケーブル1の一方端部1aにリードケーブル6の一方端を接続し、リードケーブル6の他方端部1cの高電圧部と接地間に、直流電圧発生装置2から所定電圧の直流電圧を印加した。その後、他方端部1cの高電圧部と接地間を短絡用球ギャップ3で短絡させることで直流印加電圧を裁断させ極性反転波形を発生させる操作を行い、前記したようにオシロスコープ4とプローブ5により各部の波形を測定した。
被試験ケーブル1は(1)項との対比を容易にするため、500m分のリードケーブル6を切り分けた残りの2500mの長さとした。
図4は図2の0m地点の波形と、図6は図2と3000m地点の波形とほぼ同一であることがわかった。一方、図5は図2の短絡端より500m地点の波形とほぼ同一である。 従って、この方法によって、被試験ケーブルの両端よりそれぞれ直流電圧の短絡操作を行わなくても、被試験ケーブルの全長にわたって開放端側に生じる振幅の80%以上を有する極性反転波を発生させることが可能であることがわかった。
しかしながら、電力ケーブルの特性インピーダンスはケーブル構造によって異なるため、違うサイズのケーブケーブル同士を接続する場合には、接続点において特性インピーダンスの不連続が生じる。従って、このインピーダンス不連続に起因する反射波、透過波の発生が生じ、発生する極性反転波形を乱す原因となる。
試しに、同じ絶縁厚3mmでも導体サイズが2000mm2 と極端に大きいケーブル500mを課電リードケーブルとして用い、被試験ケーブルは(2)項記載の絶縁厚3mm、導体サイズ22mm2 のケーブル2500mとした場合の発生波形を実測してみた。
試験構成は図7に示すとおりである。同図に示すように被試験ケーブル1の一方端部1aに、上記絶縁厚3mm、導体サイズ22mm2 のリードケーブル6の一方端を接続し、前記したように、直流電圧発生装置2から直流電圧を印加したのち、短絡用球ギャップ3で短絡させることで直流印加電圧を裁断させ極性反転波形を発生させる操作を行い、前記したようにオシロスコープ4とプローブ5により各部の波形を測定した。
これよりわかる様に、リードケーブルの短絡端波形(図8)、リードケーブルと被試験ケーブルの接続点波形(図9)、被試験ケーブルの開放端に発生する波形(図10)は、それぞれ図4,図5,図6と波形及び振幅は著しく異なっており、同じ電圧変化幅で変動する極性反転波形とは言えない事がわかる。22mm2 ケーブルの特性インピーダンスは39.4Ω、2000mm2 ケーブルの特性インピーダンスは6.4Ωであることより、その差が大きい場合は不都合が生じることがわかる。
そこで、リードケーブルとして、絶縁厚6mm、導体サイズ38mm2 のケーブルを同じく500m用意して同様の試験を行ってみた。被試験ケーブルは(2)項記載の絶縁厚3mm、導体サイズ22mm2 のケーブル2500mとした。試験構成は図11に示すとおりである。同図に示すように被試験ケーブル1の一方端部1aに、上記絶縁厚3mm、導体サイズ22mm2 のリードケーブル6の一方端を接続した。その他は、図7と同じである。
図12、図13、図14にその結果を示す。図12はリードケーブル6の短絡端1cに発生する波形、図13はリードケーブル6と被試験ケーブル1の接続点1aに発生する波形、図14は被試験ケーブル1の開放端1bに発生する波形であり、前記したように横軸は時刻(msec)、縦軸は導体−遮蔽間電圧であり、印加電圧に対する割合(印加電圧の大きさを100としたときの割合(%))を示している。
そこで、実地にこの効果を検証するため、上記(4)項記載と同一の試験試料を準備して、以下の実験を行った。ケーブルは絶縁厚3mm、導体サイズ22mm2 のCVケーブル2500mを複数本用意した。
これらにおいて、一方の端末のごく近傍に人工欠陥として金属針をケーブルの外部半導電層側から1mm、絶縁体内部に突き刺すことにより、模擬突起を形成させた。本発明におけるリードケーブルの仕様は、(4)項記載の通りのものである。
なお、予め同一の別試料により当該欠陥の耐電圧試験を10試料実施したが、いずれも直流140kV×24時間の課電では絶縁破壊は生じなかったことが確認されている。
図15に示すように被試験ケーブル1の模擬突起Aの形成部側の端末1a側を、リードケーブル6を介して直流電源2及び短絡用球ギャップ3に接続した事例をケース1として、図16に示す様に、被試験ケーブル1の模擬突起Aの形成部側の端末1aを開放端として、被試験ケーブル1の端末1bをリードケーブル6並びに直流電源2に接続した事例をケース2として、それぞれについて実験を行った。
図17はケース1における模擬突起Aの作成部近傍付近の実測電圧波形であり、図18はケース2における模擬突起Aの作成部近傍付近の実測電圧波形であり、横軸は時刻(msec)、縦軸は導体−遮蔽間電圧(kV)である。
そこで、第二のステップとして、前記特許文献1に記載されるように、所定の直流電圧を所定時間連続課電し、前記裁断過程において発生させた電気トリーを進展破壊させた。 すなわち、上記短絡操作後に、直流電圧を被試験ケーブル1に80kV印加させたところ、ケース1については印加開始から約13分後に、ケース2については印加開始から約25分後に、それぞれ絶縁破壊が生じたことが確認された。
このような試験をケース1条件、ケース2条件それぞれについておのおの合計5試料ずつ、同一電圧条件(第一のステップ直流140kV印加後に短絡する操作を10回実施後に、直流80kV一定課電)で実施した結果、いずれも第一の直流電圧裁断ステップでは破壊が起きることはなかったが、第二の直流課電ステップでは、下表に示す様な時間でいずれも破壊を生じることが確認された。
以上、各種実施例により、直流電圧裁断時に発生する極性反転波形の変化を調べてみた結果、課電リードケーブルの長さを500m以上とし、課電リードケーブルと被試験ケーブルの特性インピーダンス差を10%以内にすれば、特許文献1に記載の実施例と等価な極性反転波形を十分発生させることが可能であることが明らかになった。
この場合、特許文献1における欠陥検出試験と等価な試験結果を得られることも確認された。
2 直流電圧発生装置
3 短絡用球ギャップ
4 オシロスコープ
5 プローブ
6 リードケーブル
Claims (1)
- 第一のステップにおいて、固体絶縁ケーブルの一端側に直流電圧発生装置を接続し、導体と遮蔽層間に所定の直流電圧を印加し、当該直流電圧課電端側において高電圧部と接地間を短絡させることによって印加電圧を裁断させて電気トリーの誘発をさせる操作を1回以上実施し、該操作が終了した以後に、第二のステップとして、ケーブルの導体と遮蔽層の間に所定の直流電圧を所定時間連続して印加する固体絶縁ケーブルの品質試験方法において、
上記第一のステップにおいて前記固体絶縁ケーブルに、長さが500m以上であって、前記固体絶縁ケーブルとの特性インピーダンス差が10%以内の課電リードケーブルを接続し、これを介して直流電圧発生装置を接続して直流電圧を印加し、短絡端側の有効な極性反転波が生じない部分が上記課電リードケーブル部分内となるようにする
ことを特徴とする固体絶縁ケーブルの品質試験方法。
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