JP5478715B2 - 冷凍サイクル装置及びその運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は、冷凍サイクル装置およびその運転方法に関するものであり、特に超臨界状態に遷移する冷媒を用い、圧縮機と膨張機とを同軸で連結し、冷媒の膨張時に発生する膨張動力を回収し、その膨張動力を用いて冷媒の圧縮に利用するようにした冷凍サイクル装置及びその運転に関するものである。
オゾン破壊係数がゼロであり、かつ地球温暖化係数もフロン類に比べれば格段に小さい二酸化炭素(以下、CO2 という)を冷媒として用いる冷凍サイクル装置が近年着目されている。CO2 冷媒は、臨界温度が31.06℃と低く、この温度よりも高い温度を利用する場合には、冷凍サイクル装置の高圧側(圧縮機出口〜放熱器〜減圧器入口)では凝縮が生じない超臨界状態となり、従来の冷媒に比べて、冷凍サイクル装置の運転効率(COP)が低下する。したがって、CO2 冷媒を用いた冷凍サイクル装置にあっては、COPを向上させる手段が重要である。
このような手段として、減圧器の代わりに膨張機を設け、膨張時の圧力エネルギーを回収して動力とする冷凍サイクルが提案されている。ここで、容積式の圧縮機と膨張機を一軸に連結した構成の冷凍サイクル装置では、圧縮機の行程容積をVC、膨張機の行程容積をVEとすると、VC/VE(設計容積比)により圧縮機および膨張機のそれぞれを流れる体積循環量の比が決定される。蒸発器出口の冷媒(圧縮機に流入する冷媒)の密度をDC、放熱器出口の冷媒(膨張機に流入する冷媒)の密度をDEとすると、圧縮機、膨張機のそれぞれを流れる質量循環量は等しいことから、「VC×DC=VE×DE」、すなわち、「VC/VE=DE/DC」の関係が成立する。VC/VE(設計容積比)は機器の設計時に定まる定数であるので、DE/DC(密度比)が常に一定となるように冷凍サイクルはバランスしようとする。(以下、このことを「密度比一定の制約」と呼ぶ。)
しかしながら、冷凍サイクル装置の使用条件は必ずしも一定ではないので、設計時に想定した設計容積比と実際の運転状態での密度比とが異なる場合には、「密度比一定の制約」のために、最良な高圧側圧力に調整することが困難となる。
そこで、膨張機をバイパスするバイパス流路を設け、膨張機に流入する冷媒量を制御することで、最良な高圧側圧力に調整する構成や制御方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
また、主圧縮機での圧縮過程の中間から圧縮過程完了後までをバイパスする圧縮バイパス流路と、前記圧縮バイパス流路上に設けられた副圧縮機を設け、前期副圧縮機に流入する冷媒量を制御することで、最良な高圧側圧力に調整する構成や制御方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
特許第3708536号公報(請求項1、第1図等) 特開2009―162438号公報(請求項1、第1図等)
ところが、上記特許文献1には、実際の運転状態での密度比が設計容積比より小さい場合には、膨張機をバイパスするバイパス流路に冷媒を流すことで、最良な高圧側圧力に調整できる構成や制御方法が記載されているが、バイパス弁を流れる冷媒は絞り損失によって等エンタルピ変化をすることになる。すると、膨張機で膨張エネルギーを回収しつつ、等エントロピ変化をすることによって得られる冷凍効果が増加する効果が減少してしまうという課題があった。
また、膨張機をバイパスする量が大きい場合は、膨張機回転数が低く摺動部での潤滑状態が悪化し、膨張機の回転数が極端に小さくなると膨張機の経路内に油が滞留し圧縮機内の油枯渇や、再起動時の冷媒寝込み起動などにより信頼性が低下するという課題があった。
さらに、上記特許文献2では、膨張機をバイパスしないことにより上記の課題を解決しようとしているが、副圧縮機の入口にバイパス弁を設けているため、圧力損失により副圧縮機入口の圧力が低下してその分圧縮動力が増加するため、運転効率が向上する効果が減少してしまうという課題があった。
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、密度比一定の制約により最良な高圧側圧力に調整することが困難である場合でも、広い運転範囲において動力回収を常に行ない、高効率な運転が実現可能な冷凍サイクル装置およびその運転方法を提供することを目的としている。
本発明に係る冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する主圧縮機と、前記主圧縮機で圧縮された冷媒の熱を放散する放熱器と、前記放熱器を通過した冷媒を減圧する膨張機と、
前記膨張機で減圧された冷媒が蒸発する蒸発器と、吐出側が前記主圧縮機での圧縮工程の中間となる位置に接続され、前記膨張機での冷媒の減圧時の動力を用いて前記蒸発器を通過した冷媒の一部を中間圧力まで圧縮する副圧縮機と、前記副圧縮機の冷媒流出側と前記主圧縮機の冷媒流入側とを接続する中間圧バイパス流路と、前記中間圧バイパス流路に設けられ、前記中間圧バイパス流路を流れる冷媒の流量を調整する中間圧バイパス弁と、前記放熱器の冷媒流出側と前記膨張機の冷媒流入側との間に設けられ、前記膨張機に流入する冷媒を減圧する予膨張弁と、前記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の動作を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の一方または双方の開度を変更し、もって高圧側圧力を調整するものである。
本発明に係る冷凍サイクルの運転方法は、主圧縮機で冷媒を圧縮し、前記主圧縮機で圧縮された冷媒の熱を放熱器で放散し、前記放熱器を通過した冷媒を膨張機で減圧し、前記膨張機で減圧された冷媒を蒸発器で蒸発し、前記膨張機での冷媒の減圧時の動力を用いて前記蒸発器を通過した冷媒の一部を副圧縮機で中間圧力まで圧縮し、前記副圧縮機で中間圧力まで圧縮された冷媒を前記主圧縮機での圧縮工程の中間となる位置にインジェクションし、前記副圧縮機の冷媒流出側と前記主圧縮機の冷媒流入側とを中間圧バイパス流路で接続し、前記中間圧バイパス流路を流れる冷媒の流量を中間圧バイパス弁で調整し、前記放熱器の冷媒流出側と前記膨張機の冷媒流入側との間で前記膨張機に流入する冷媒を予膨張弁で減圧し、実際の運転状態での前記膨張機の流入冷媒密度と前記副圧縮機の流入冷媒密度から求めた密度比、及び、設計時に想定した前記副圧縮機の行程容積と前記膨張機の行程容積と前記副圧縮機へ流れる冷媒流量の割合から求めた設計容積比に基づいて、前記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の一方または双方の開度を変更し、もって高圧側圧力を調整していることを特徴とする。
本発明に係る冷凍サイクル装置及び冷凍サイクルの運転方法によれば、密度比一定の制約により最良な高圧側圧力に調整することが困難である場合であっても、広い運転範囲において動力回収を行ない、中間圧バイパス弁と予膨張弁の制御によって高圧側圧力を調整するので、効率の良い運転が実現できる。
本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路構成を模式的に表す回路構成図である。 主圧縮機の断面構成を示す概略縦断面図である。 本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置の冷房運転時における冷媒の変遷を示すP−h線図である。 本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置の暖房運転時における冷媒の変遷を示すP−h線図である。 制御装置が行な制御処理の流れを示すフローチャートである。 中間圧バイパス弁と予膨張弁との連携制御時における動作を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置が実行する冷房運転時に予膨張弁6を閉じる動作をさせた場合における冷媒の変遷を示すP−h線図である。 本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置が実行する冷房運転時に中間圧バイパス弁を開く動作をさせた場合における冷媒の変遷を示すP−h線図である。 二酸化炭素冷媒の変遷の一部を示すP−h線図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置100の冷媒回路構成を模式的に表す回路構成図である。図2は、主圧縮機1の断面構成を示す概略縦断面図である。図3は、冷凍サイクル装置100の冷房運転時における冷媒の変遷を示すP−h線図である。図4は、冷凍サイクル装置100の暖房運転時における冷媒の変遷を示すP−h線図である。図5は、制御装置83が行なう制御処理の流れを示すフローチャートである。図6は、中間圧バイパス弁9と予膨張弁6との連携制御時における動作を示す説明図である。図1〜図6に基づいて、冷凍サイクル装置100の回路構成及び動作について説明する
実施の形態に係る冷凍サイクル装置100は、冷媒を循環させる冷凍サイクルを備えた装置、たとえば冷蔵庫や冷凍庫、自動販売機、空気調和装置(たとえば、家庭用や業務用、車両用等)、冷凍装置、給湯装置等として利用される。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。さらに、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
冷凍サイクル装置100は、広い運転範囲において動力回収を常に行い、効率の良い運転が可能なものであり、特に、二酸化炭素を冷媒として高圧側が超臨界状態となるような冷媒を用いた場合に効果が大きい。
冷凍サイクル装置100は、主圧縮機1と、室外熱交換器4と、膨張機7と、室内熱交換器21と、副圧縮機2と、を少なくとも有している。また、冷凍サイクル装置100は、冷媒流路切替装置である第1四方弁3、冷媒流路切替装置である第2四方弁5、予膨張弁6、アキュムレーター8、中間圧バイパス弁9、逆止弁10を有している。さらに、冷凍サイクル装置100は、冷凍サイクル装置100の全体の制御を統制する制御装置83を有している。
主圧縮機1は、電気モーター102と電気モーター102によって駆動されるシャフト103によって吸入した冷媒を圧縮して高温・高圧の状態にするものである。この主圧縮機1は、たとえば容量制御可能なインバータ圧縮機などで構成するとよい。なお、主圧縮機1の詳細については図2に基づいて後述するものとする。
室外熱交換器4は、冷房運転時には内部の冷媒が熱を放熱する放熱器として、暖房運転時には内部の冷媒が蒸発する蒸発器として機能するものである。室外熱交換器4は、たとえば図示省略の送風機から供給される空気と冷媒との間で熱交換を行なうようになっている。
この室外熱交換器4は、たとえば冷媒を通過させる伝熱管及びその伝熱管を流れる冷媒と外気との間の伝熱面積を大きくするためのフィンを有し、冷媒と空気(外気)との間で熱交換を行なうように構成されている。室外熱交換器4は、暖房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させてガス(気体)化させる。一方、室外熱交換器4は、冷房運転時においては凝縮器またはガスクーラ(以下では凝縮器とする)として機能する。場合によっては、室外熱交換器4は、冷媒を完全にガス化、気化させず、液体とガスとの二相混合(気液二相冷媒)の状態にすることもある。
室内熱交換器21は、冷房運転時には内部の冷媒が蒸発する蒸発器として、暖房運転時には内部の冷媒が熱を放散する放熱器として機能するものである。室内熱交換器21は、たとえば図示省略の送風機から供給される空気と冷媒との間で熱交換を行なうようになっている。
この室内熱交換器21は、たとえば冷媒を通過させる伝熱管及び伝熱管を流れる冷媒と空気との間の伝熱面積を大きくするためのフィンを有し、冷媒と室内空気と間での熱交換を行なうように構成されている。室内熱交換器21は、冷房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させてガス(気体)化させる。一方、室内熱交換器21は、暖房運転時においては凝縮器またはガスクーラ(以下では凝縮器とする)として機能する。
膨張機7は、内部を通過する冷媒を減圧するものである。冷媒が減圧されたときに発生する動力は、駆動軸43を介して副圧縮機2に伝達されるようになっている。副圧縮機2は、膨張機7と駆動軸43で接続されており、膨張機7によって冷媒が減圧される際に発生する動力によって駆動して冷媒を圧縮するものである。この副圧縮機2は、低圧側において主圧縮機1と並列に接続されている。
膨張機7及び副圧縮機2は、膨張機7での冷媒の膨張(減圧)時に発生する膨張動力を駆動軸43で回収し、回収した膨張動力を用いて副圧縮機2で冷媒を圧縮するようになっている。膨張機7及び副圧縮機2は、容積式であり、たとえばスクロール式等の形態をとる。副圧縮機2及び膨張機7は、密閉容器84に収容されている。副圧縮機2は、駆動軸43を介して膨張機7に接続されており、膨張機7で発生した動力が、駆動軸43によって回収されて、副圧縮機2へ伝達される。よって、副圧縮機2でも冷媒が圧縮される。
第1四方弁3は、主圧縮機1の吐出配管35に設けられており、運転モードによって冷媒の流れの方向を切り換える機能を有している。第1四方弁3は、切り換えられることで室外熱交換器4と主圧縮機1、室内熱交換器21とアキュムレーター8を接続したり、室内熱交換器21と主圧縮機1、室外熱交換器4とアキュムレーター8を接続したりするようになっている。すなわち、第1四方弁3は、制御装置83の指示に基づいて、冷暖房に係る運転モードに対応した切り替えを行なって冷媒の流路を切り替えるようにしている。
第2四方弁5は、運転モードによって膨張機7を、室外熱交換器4や室内熱交換器21に接続させるものである。第2四方弁5は、切り換えられることで室外熱交換器4と予膨張弁6、室内熱交換器21と膨張機7を接続したり、室内熱交換器21と予膨張弁6、室外熱交換器4と膨張機7を接続したりするようになっている。すなわち、第2四方弁5は、制御装置83の指示に基づいて、冷暖房に係る運転モードに対応した切り替えを行なって冷媒の流路を切り替えるようにしている。
冷房運転時には、第1四方弁3は、主圧縮機1から室外熱交換器4へ冷媒が流れ、室内熱交換器21からアキュムレーター8へ冷媒が流れるように切り替えられ、第2四方弁5は、室外熱交換器4から予膨張弁6、膨張機7を通って室内熱交換器21へ冷媒が流れるように切り替えられる。一方、暖房運転時には、第1四方弁3は、主圧縮機1から室内熱交換器21へ冷媒が流れ、室外熱交換器4からアキュムレーター8へ冷媒が流れるように切り替えられ、第2四方弁5は、室内熱交換器21から予膨張弁6、膨張機7を通って室外熱交換器4へ冷媒が流れるように切り替えられる。第2四方弁5により、膨張機7を通過する冷媒の方向は、冷房運転時、暖房運転時によらず、同一方向になる。
予膨張弁6は、膨張機7の上流側に設けられ、冷媒を減圧して膨張させるものであり、開度が可変に制御可能なもの、たとえば電子式膨張弁等で構成するとよい。この予膨張弁6は、具体的には第2四方弁5と膨張機7の入口との間の冷媒流路34(つまり、放熱器(室外熱交換器4又は室外熱交換器21)の冷媒流出側と膨張機7の冷媒流入側の間)に設けられ、膨張機7に流入する冷媒の圧力を調整するようになっている。
アキュムレーター8は、主圧縮機1の吸入側に設けられ、冷凍サイクル装置100に異常が発生した時や運転制御の変更の際に伴う運転状態の過渡応答時において、液冷媒を貯留して主圧縮機1への液バックを防ぐ機能を有している。つまり、アキュムレーター8は、冷凍サイクル装置100の冷媒回路中の過剰な冷媒を貯留したり、主圧縮機1及び副圧縮機2に冷媒液が多量に戻って主圧縮機1が破損したりするのを防止する働きがある。
中間圧バイパス弁9は、副圧縮機2の吐出配管31から主圧縮機1の吸入配管32に冷媒をバイパスさせる中間圧バイパス配管(中間圧バイパス流路)33に設けられ、中間圧バイパス配管33を流れる冷媒流量を調整するものである。中間圧バイパス弁9は、開度が可変に制御可能なもの、たとえば電子式膨張弁等で構成するとよい。この中間圧バイパス弁9の開度を調整することで、副圧縮機2の吐出圧力である中間圧力を調整することができる。
逆止弁10は、副圧縮機2の吐出配管31に設けられ、主圧縮機1に流入する冷媒の流れる方向を一方向(副圧縮機2から主圧縮機1に向かっての方向)に整えるものである。この逆止弁10を設けることにより、副圧縮機2の吐出圧力が主圧縮機1の圧縮室108の圧力より低くなったときに、冷媒が逆流することを防止できる。
制御装置83は、主圧縮機1の駆動周波数、室外熱交換器4及び室内熱交換器21近傍に設けられる図示省略の送風機の回転数、第1四方弁3の切り替え、第2四方弁5の切り替え、膨張機7の開度、予膨張弁6の開度、中間圧バイパス弁9の開度等を制御する。
なお、実施の形態では、冷凍サイクル装置100が冷媒として二酸化炭素(CO2 )を用いているものとして説明する。二酸化炭素は、従来のフロン系冷媒と比較して、オゾン層破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数が小さいという特性を有している。ただし、冷媒を二酸化炭素に限定するものではなく、超臨界状態に遷移する他の単一冷媒や混合冷媒(たとえば二酸化炭素とジエチルエーテルの混合冷媒)等を冷媒として用いてもよい。
冷凍サイクル装置100では、主圧縮機1、副圧縮機2、第1四方弁3、第2四方弁5、室外熱交換器4、予膨張弁6、膨張機7、アキュムレーター8、中間圧バイパス弁9、及び、逆止弁10が室外機81に収容されている。また、冷凍サイクル装置100では、制御装置83も室外機81に収容されている。さらに、冷凍サイクル装置100では、室内熱交換器21が室内機82に収容されている。図1では、1台の室外機81(室外熱交換器4)に1台の室内機82(室内熱交換器21)を液管36及びガス管37で接続した状態を例に示しているが、室外機81及び室内機82の接続台数を特に限定するものではない。
また、冷凍サイクル装置100には温度センサー(温度センサー51、温度センサー52、温度センサー53)が設けられている。これらの温度センサーで検出された温度情報は、制御装置83に送られ、冷凍サイクル装置100の構成機器の制御に利用されることになる。
温度センサー51は、主圧縮機1の吐出配管35に設けられ、主圧縮機1の吐出温度を検知するものであり、たとえばサーミスター等で構成するとよい。温度センサー52は、室外熱交換器4の近傍(たとえば外表面)に設けられ、室外熱交換器4に流入する空気の温度を検知するものであり、たとえばサーミスター等で構成するとよい。温度センサー53は、室内熱交換器21の近傍(たとえば外表面)に設けられ、室内熱交換器21に流入する空気の温度を検知するものであり、たとえばサーミスター等で構成するとよい。
なお、温度センサー51、温度センサー52、温度センサー53の設置位置を図1に示す位置に限定するものではない。たとえば、温度センサー51であれば、主圧縮機1から吐出された冷媒の温度を検知できる位置に設置すればよく、温度センサー52であれば、室外熱交換器4に流入する空気の温度を検知できる位置に設置すればよく、温度センサー53であれば、室内熱交換器21に流入する空気の温度を検知できる位置に設置すればよい。
図2に基づいて、主圧縮機1の構成及び動作について説明する。主圧縮機1は、主圧縮機1の外郭を構成するシェル101の内部に、駆動源である電気モーター102や、電気モーター102によって回転駆動される駆動軸であるシャフト103、シャフト103に先端部に取り付けられ、シャフト103とともに回転駆動する揺動スクロール104、揺動スクロール104の上側に配置され、揺動スクロール104の渦巻体と噛み合う渦巻体が形成されている固定スクロール105等が収納され、構成されている。また、シェル101には、吸入配管32に接続される流入配管106、吐出配管35に接続される流出配管112、及び、吐出配管31に接続されるインジェクション配管114が連接されている。
シェル101の内部であって、揺動スクロール104及び固定スクロール105の渦巻体の最外周部には、流入配管106と導通している低圧空間107が形成されている。シェル101の内部上方には、流出配管112と導通している高圧空間111が形成されている。揺動スクロール104の渦巻体と固定スクロールの渦巻体との間には、相対的に容積が変化する圧縮室が複数形成される(たとえば、図1に示す圧縮室108、圧縮室109)。圧縮室109は、揺動スクロール104及び固定スクロール105の略中央部に形成される圧縮室を示している。圧縮室108は、圧縮室109より外側の圧縮過程中間に形成される圧縮室を示している。
固定スクロール105の略中央部には、圧縮室109と高圧空間111とを導通する流出ポート110が設けられている。固定スクロール105の圧縮過程中間部には、圧縮室108とインジェクション配管114とを導通するインジェクションポート113が設けられている。また、シェル101内には、揺動スクロール104の偏心旋回運動中における自転運動を阻止するための図示省略のオルダムリングが配設されている。このオルダムリングは、揺動スクロール104の自転運動を阻止するとともに、公転運動を可能とする機能を果たすようになっている。
なお、固定スクロール105は、シェル101内に固定されている。また、揺動スクロール104は、固定スクロール105に対して自転することなく公転運動を行なうようになっている。さらに、電気モーター102は、シェル101内部に固着保持された固定子と、固定子の内周面側に回転可能に配設され、シャフト103に固定された回転子と、で少なくとも構成されている。固定子は、通電されることによって回転子を回転駆動させる機能を有している。回転子は、固定子に通電がされることにより回転駆動し、シャフト103を回転させる機能を有している。
主圧縮機1の動作について簡単に説明する。
電気モーター102に通電されると、電気モーター102を構成している固定子と回転子とにトルクが発生し、シャフト103が回転する。シャフト103の先端部には揺動スクロール104が装着されており、揺動スクロール104が公転運動を行なう。揺動スクロール104の旋回運動とともに圧縮室が中心に向かって容積を減少させながら移動し、冷媒が圧縮される。
副圧縮機2で圧縮され吐出された冷媒は、吐出配管31、逆止弁10を通る。この冷媒は、その後、インジェクション配管114から主圧縮機1に流入する。一方、吸入配管32を通る冷媒は、流入配管106から主圧縮機1に流入する。流入配管106から流入した冷媒は、低圧空間107に流入し、圧縮室に閉じ込められ、漸次圧縮される。そして、圧縮室が圧縮過程の中間位置である圧縮室108に至ると、インジェクションポート113から圧縮室108に冷媒が流入する。
すなわち、インジェクション配管114から流入した冷媒と、流入配管106から流入した冷媒とが、圧縮室108で混合されることになる。その後、混合された冷媒は漸次圧縮されて圧縮室109に至る。圧縮室109に至った冷媒は、流出ポート110及び高圧空間111を経由した後、流出配管112を介してシェル101外へ吐出され、吐出配管35を導通することになる。
冷凍サイクル装置100の運転動作について説明する。
<冷房運転モード>
冷凍サイクル装置100が実行する冷房運転時の動作について図1及び図3を参照しながら説明する。なお、図1で示す記号A〜Gは、図3で示す記号A〜Gに対応している。また、冷房運転モードでは、第1四方弁3及び第2四方弁5が図1に「実線」で示されている状態に制御される。ここで、冷凍サイクル装置100の冷媒回路等における圧力の高低については、基準となる圧力との関係により定まるものではなく、主圧縮機1や副圧縮機2での昇圧、予膨張弁6や膨張機7の減圧等によりできる相対的な圧力を高圧、低圧として表わすものとする。また、温度の高低についても同様であるものとする。
冷房運転時では、まず、主圧縮機1及び副圧縮機2に吸入された低圧の冷媒が吸入される。副圧縮機2に吸入された低圧の冷媒は、副圧縮機2で圧縮されて中圧の冷媒になる(状態Aから状態B)。副圧縮機2で圧縮された中圧の冷媒は、副圧縮機2から吐出され、吐出配管31及びインジェクション配管114を介して主圧縮機1に導入される。中圧の冷媒は、主圧縮機1に吸入された冷媒と混合し、主圧縮機1でさらに圧縮され高温高圧の冷媒になる(状態Bから状態C)。主圧縮機1で圧縮された高温高圧の冷媒は、主圧縮機1から吐出され、第1四方弁3を通過して、室外熱交換器4に流入する。
室外熱交換器4に流入した冷媒は、室外熱交換器4に供給される室外空気と熱交換することで熱を放散し、室外空気に熱を伝達して低温高圧の冷媒となる(状態Cから状態D)。この低温高圧の冷媒は、室外熱交換器4から流出し、第2四方弁5を通過して、予膨張弁6を通過する。低温高圧の冷媒は、予膨張弁6を通過する際に減圧される(状態Dから状態E)。予膨張弁6で減圧された冷媒は、膨張機7に吸入される。膨張機7に吸入された冷媒は、減圧されて低温となり、乾き度が低い状態の冷媒になる(状態Eから状態F)。
このとき、膨張機7では、冷媒の減圧に伴って動力が発生することになる。この動力は、駆動軸43によって回収されて、副圧縮機2に伝達され、副圧縮機2による冷媒の圧縮に使用される。膨張機7で減圧された冷媒は、膨張機7から吐出され、第2四方弁5を通過した後、室外機81から流出する。室外機81から流出した冷媒は、液管36を流れて、室内機82に流入する。
室内機82に流入した冷媒は、室内熱交換器21に流入し、室内熱交換器21に供給される室内空気から吸熱して蒸発し、低圧のまま、乾き度が高い状態の冷媒になる(状態Fから状態G)。これにより、室内空気が冷却されることになる。この冷媒は、室内熱交換器21から流出し、さらに室内機82からも流出し、ガス管37を流れて、室外機81に流入する。室外機81に流入した冷媒は、第1四方弁3を通過して、アキュムレーター8に流入した後、再び主圧縮機1及び副圧縮機2に吸入される。
冷凍サイクル装置100は、上述した動作を繰り返すことで、室内の空気の熱が室外の空気へ伝達されて、室内を冷房することになる。
<暖房運転モード>
冷凍サイクル装置100が実行する暖房運転時の動作について図1及び図4を参照しながら説明する。なお、図1で示す記号A〜Gは、図4で示す記号A〜Gに対応している。また、暖房運転モードでは、第1四方弁3及び第2四方弁5が図1に「破線」で示されている状態に制御される。ここで、冷凍サイクル装置100の冷媒回路等における圧力の高低については、基準となる圧力との関係により定まるものではなく、主圧縮機1や副圧縮機2での昇圧、予膨張弁6や膨張機7の減圧等によりできる相対的な圧力を高圧、低圧として表わすものとする。また、温度の高低についても同様であるものとする。
暖房運転時では、まず、主圧縮機1及び副圧縮機2に吸入された低圧の冷媒が吸入される。副圧縮機2に吸入された低圧の冷媒は、副圧縮機2で圧縮されて中圧の冷媒になる(状態Aから状態B)。副圧縮機2で圧縮された中圧の冷媒は、副圧縮機2から吐出され、吐出配管31及びインジェクション配管114を介して主圧縮機1に導入される。中圧の冷媒は、主圧縮機1に吸入された冷媒と混合し、主圧縮機1でさらに圧縮され高温高圧の冷媒になる(状態Bから状態G)。主圧縮機1で圧縮された高温高圧の冷媒は、主圧縮機1から吐出され、第1四方弁3を通過して、室外機81から流出する。
室外機81から流出した冷媒は、ガス管37を流れて室内機82に流入する。室内機82に流入した冷媒は、室内熱交換器21に流入し、室内熱交換器21に供給される室内空気と熱交換することで熱を放散し、室内空気に熱を伝達して低温高圧の冷媒となる(状態Gから状態F)。これにより、室内空気が加熱されることになる。この低温高圧の冷媒は、室内熱交換器21から流出し、さらに室内機82を流出し、液管36を流れて室外機81に流入する。室外機81に流入した冷媒は、第2四方弁5を通過して、予膨張弁6を通過する。低温高圧の冷媒は、予膨張弁6を通過する際に減圧される(状態Fから状態E)。
予膨張弁6で減圧された冷媒は、膨張機7に吸入される。膨張機7に吸入された冷媒は、減圧されて低温となり、乾き度が低い状態の冷媒になる(状態Eから状態D)。このとき、膨張機7では、冷媒の減圧に伴って動力が発生することになる。この動力は、駆動軸43によって回収されて、副圧縮機2に伝達され、副圧縮機2による冷媒の圧縮に使用される。膨張機7で減圧された冷媒は、膨張機7から吐出され、第2四方弁5を通過した後、室外熱交換器4に流入する。室外熱交換器4に流入した冷媒は、室外熱交換器4に供給される室外空気から吸熱して蒸発し、低圧のまま、乾き度が高い状態の冷媒になる(状態Dから状態C)。
この冷媒は、室外熱交換器4から流出し、第1四方弁3を通過して、アキュムレーター8に流入した後、再び主圧縮機1及び副圧縮機2に吸入される。
冷凍サイクル装置100は、上述した動作を繰り返すことで、室外の空気の熱が室内の空気へ伝達されて、室内を暖房することになる。
ここで、副圧縮機2と膨張機7の冷媒流量について説明する。
膨張機7を流れる冷媒流量をGE、副圧縮機2を流れる冷媒流量をGCとする。また、主圧縮機1と副圧縮機2を流れる合計の冷媒流量のうち、副圧縮機2へ流れる冷媒流量の割合(分流比とする)をWとすると、GEとGCの関係は下記式(1)のようになる。
式(1) GC=W×GE
よって、副圧縮機2の行程容積をVC、膨張機7の行程容積をVE、副圧縮機2の流入冷媒密度をDC、膨張機7の流入冷媒密度をDEとして、密度比一定の制約は下記式(2)のように表わされる。
式(2) VC/VE/W=DE/DC
また、分流比Wは、膨張機7での回収動力と、副圧縮機2での圧縮動力がおよそ等しくなるように定めればよい。すなわち、膨張機7の入口比エンタルピをhE、出口比エンタルピをhF、副圧縮機2の入口比エンタルピをhA、出口比エンタルピをhBとすれば、下記式(3)を満たすように分流比Wを定めればよい。
式(3) hE−hF=W×(hB−hA)
冷凍サイクル装置100は、低圧の冷媒の一部を副圧縮機2で中間圧まで圧縮してから主圧縮機1にインジェクションしているので、副圧縮機2の圧縮動力分だけ主圧縮機1の電気入力を低減することができる。
次に、実際の運転状態での密度比(DE/DC)が、設計時に想定した設計容積比(VC/VE/W)と異なる場合の冷房運転について説明する。
<(DE/DC)>(VC/VE/W)での冷房運転>
実際の運転状態での密度比(DE/DC)が、設計時に想定した設計容積比(VC/VE/W)より大きい冷房運転の場合について説明する。この場合には、密度比一定の制約のため、膨張機7の入口冷媒密度(DE)が小さくなるように、冷凍サイクルは高圧側圧力を低下させた状態でバランスしようとする。ところが、高圧側圧力が望ましい圧力より低下した状態では運転効率が低下してしまう。
このため、中間圧バイパス弁9が全閉状態でなければ、中間圧バイパス弁9を閉方向に操作し、中間圧力を上昇させて副圧縮機2の必要圧縮動力を増加させる。そうすると、膨張機7の回転数が減少しようとするので、膨張機7の入口密度が増加する方向に冷凍サイクルがバランスしようとする。
あるいは、中間圧バイパス弁9が全閉状態であれば、予膨張弁6を閉方向に操作し、図7に示すように膨張機7に流入する冷媒を膨張させ(状態Dから状態E2)、冷媒密度を低下させる。そうすると、膨張機7の入口密度が増加する方向に冷凍サイクルがバランスしようとする。なお、図7には、冷凍サイクル装置100が実行する冷房運転時に予膨張弁6を閉じる動作をさせた場合における冷媒の変遷を示すP−h線図を示している。
すなわち、(DE/DC)>(VC/VE/W)での冷房運転の場合、冷凍サイクル装置100では、中間圧バイパス弁9を閉めるもしくは予膨張弁6を閉めるように制御することにより、高圧側圧力を上昇させる方向に冷凍サイクルをバランスさせるようにしている。そのため、冷凍サイクル装置100においては、高圧側圧力を上昇させ、望ましい圧力に調整でき、なおかつ膨張機7をバイパスする冷媒がないため、効率の良い運転が実現することになる。なお、高圧側圧力は、主圧縮機1の流出口から予膨張弁6までの圧力を意味し、この位置における圧力であれば任意である。
<(DE/DC)<(VC/VE/W)での冷房運転>
実際の運転状態での密度比(DE/EC)が、設計時に想定した設計容積比(VC/VE/W)より小さい冷房運転の場合について説明する。この場合には、密度比一定の制約のため、膨張機7の入口冷媒密度(DE)が大きくなるように、冷凍サイクルは高圧側圧力を上昇させた状態でバランスしようとする。ところが、高圧側圧力が望ましい圧力より上昇した状態では運転効率が低下してしまう。
このため、予膨張弁6が全開状態でなければ、予膨張弁6を開方向に操作し、膨張機7に流入する冷媒を膨張しないようにさせ、冷媒密度を上昇させる。そうすると、膨張機7の入口密度が減少する方向に冷凍サイクルがバランスしようとする。
あるいは、予膨張弁6が全開状態であれば、中間圧バイパス弁9を開方向に操作する。このときの冷凍サイクルの動きを図8で説明する。なお、図8は、冷凍サイクル装置100が実行する冷房運転時に中間圧バイパス弁9を開く動作をさせた場合における冷媒の変遷を示すP−h線図を示している。
副圧縮機2ではアキュムレーター8から流出した冷媒を中間圧まで圧縮する(状態Gから状態B)。副圧縮機2から吐出した冷媒の一部は逆止弁10を通って主圧縮機1にインジェクションされる。また、副圧縮機2から吐出した冷媒の残りは、中間圧バイパス弁9を通り、主圧縮機1の吸入配管32を流れる冷媒と合流する(状態A2)。主圧縮機1に吸入された状態A2の冷媒は、中間圧まで圧縮されインジェクションされた冷媒と混合し、さらに圧縮される(状態C2)。そうすると、中間圧力を低下させて副圧縮機2の必要圧縮動力が減少し、膨張機7の回転数が増加しようとするので、膨張機7の入口密度が減少する方向に冷凍サイクルがバランスしようとする。
すなわち、(DE/DC)<(VC/VE/W)での冷房運転の場合、冷凍サイクル装置100では、予膨張弁6を開くもしくは中間圧バイパス弁9を開くように制御することにより、高圧側圧力を低下させる方向に冷凍サイクルをバランスさせるようにしている。そのため、冷凍サイクル装置100においては、高圧側圧力を低下させ、望ましい圧力に調整でき、なおかつ膨張機7をバイパスする冷媒がないため、効率の良い運転が実現することになる。
<(DE/DC)≠(VC/VE/W)での暖房運転>
実際の運転状態での密度比(DE/DC)が、設計時に想定した設計容積比(VC/VE/W)と異なる暖房運転の場合があるが、冷房運転時と同様に副圧縮機2及び膨張機7の動作を制御するようになっているため説明を省略する。
次に、中間圧バイパス弁9と予膨張弁6の具体的な操作方法として、制御装置83が実行する制御の処理の流れについて図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
冷凍サイクル装置100は、高圧側圧力と吐出温度との相関関係を利用して、計測するには高コストなセンサーが必要な高圧側圧力によらず、比較的安価に計測が可能な吐出温度により中間圧バイパス弁9及び予膨張弁6の制御を実行することを特徴としている。
冷凍サイクル装置100の運転時において、最適な高圧側圧力は、常に一定ではない。そこで、冷凍サイクル装置100では、温度センサー52で検知する外気温度や、温度センサー53で検知する室内温度等のデータを予めテーブルとして制御装置83に搭載されているROM等の記憶手段に記憶している。そして、制御装置83は、記憶手段に記憶されているデータから目標吐出温度を決定する(ステップ201)。次に、制御装置83には、温度センサー51からの検出値(吐出温度)が取り込まれる(ステップ202)。制御装置83は、ステップ201で決定した目標吐出温度とステップ202で取り込んだ吐出温度とを比較する(ステップ203)。
吐出温度が目標吐出温度より低い場合には(ステップ203;Yes)、高圧側圧力が最適な高圧側圧力より低い傾向にあるため、制御装置83は、まず、中間圧バイパス弁9が全閉となっているか否かを判定する(ステップ204)。中間圧バイパス弁9が全閉である場合には(ステップ204;yes)、制御装置83は、予膨張弁6を閉方向に操作し(ステップ205)、膨張機7に流入する冷媒を減圧し、冷媒密度を低下させ、高圧側圧力及び吐出温度を上昇させる。また、中間圧バイパス弁9が全閉でない場合には(ステップ204;No)、制御装置83は、中間圧バイパス弁9を閉方向に操作し(ステップ206)、中間圧力を上昇させて副圧縮機2の必要圧縮動力を増加させ、高圧側圧力及び吐出温度を上昇させる。
逆に、吐出温度が目標吐出温度より高い場合には(ステップ203;No)、高圧側圧力が最適な圧力より高い傾向にあるため、制御装置83は、まず、予膨張弁6が全開となっているか否かを判定する(ステップ207)。予膨張弁6が全開である場合には(ステップ207;yes)、制御装置83は、中間圧バイパス弁9を開方向に操作し(ステップ208)、中間圧力を低下させて副圧縮機2の必要圧縮動力を減少させ、高圧側圧力及び吐出温度を低下させる。また、予膨張弁6が全開でない場合には(ステップ207;No)、制御装置83は、予膨張弁6を開方向に操作し(ステップ209)、膨張機7に流入する冷媒を減圧しないようにすることで、高圧側圧力及び吐出温度を低下させる。
以上のステップの後、ステップ201に戻り、以降ステップ201からステップ209まで繰り返す。このような制御を実行することにより、図6に示すような中間圧バイパス弁9と予膨張弁6とを連携させた制御が実現することになる。具体的には、制御装置83は、高圧側圧力が低く中間圧バイパス弁の開度が最低開度であるときは予膨張弁6を操作し、高圧側圧力が高く予膨張弁6の開度が最高開度であるときは中間圧バイパス弁9を操作することをもって、高圧側圧力を調整している。なお、図6では、横軸が高圧側圧力の高低を、縦軸上方が予膨張弁6の開度を、縦軸下方が中間圧バイパス弁9の開度を、それぞれ示している。
以上説明したように、冷凍サイクル装置100は、密度比一定の制約のために最適な高圧側圧力を維持することが困難である膨張機7を用いたものであるが、実際の運転状態での密度比(DE/DC)が、設計時に想定していた設計容積比(VC/VE/W)よりも小さい場合でも、大きい場合でも、中間圧バイパス弁9と予膨張弁6の開度操作により、望ましい高圧側圧力に調整し、なおかつ膨張機7をバイパスさせることなく動力回収を確実に行なうようになっている。そのため、冷凍サイクル装置100では、運転効率や運転能力を低下させない運転が実現でき、さらには膨張機7や主圧縮機1の信頼性が確保できるようになっている。
また、冷凍サイクル装置100によれば、中間圧バイパス弁9と予膨張弁6の開度操作の目標値を主圧縮機1の吐出温度としているが、主圧縮機1の吐出配管35に圧力センサーを設け、吐出圧力により制御してもよい。
冷凍サイクル装置100によれば、中間圧バイパス弁9と予膨張弁6の開度操作の目標値を主圧縮機1の吐出温度としているが、冷房運転時に蒸発器として機能する室内熱交換器21の冷媒出口の過熱度を目標値にしてもよい。この場合は、膨張機7の出口から、主圧縮機1または副圧縮機2の間の冷媒配管上に設置する低圧側圧力を検知する圧力センサーからの情報と、室内熱交換器21の冷媒出口温度を検知する温度センサーからの情報と、を基に、制御装置83にあらかじめROM等にテーブルとして記憶しておき、目標過熱度を決定するとよい。
また、室内機82に制御装置を設けて目標過熱度を設定してもよい。この場合、室内機82と室外機81との通信により目標過熱度を制御装置83に無線又は有線で送信するようにするとよい。
さらに、高圧側圧力と蒸発器との過熱度の関係は、高圧側圧力が高いほど過熱度も大きくなり、高圧側圧力が低いほど過熱度も小さくなるため、図5のフローチャートにおいてステップ203の吐出温度を過熱度に置き換えた制御とすればよい。
また、冷凍サイクル装置100によれば、中間圧バイパス弁9と予膨張弁6の開度操作の目標値を主圧縮機1の吐出温度としているが、暖房運転時に凝縮器として機能する室内熱交換器21の冷媒出口の過冷却度を目標値にしてもよい。
実施の形態では、冷凍サイクル装置100の冷媒としてCO2 を用いている場合を例に示しており、このような冷媒を用いた場合、凝縮器の空気温度が高いとき、従来のフロン系冷媒のように高圧側で凝縮を伴わず超臨界サイクルとなるため飽和圧力と温度から過冷却度を算出することができない。そこで、図9に示すように、臨界点でのエンタルピを基準に擬似飽和圧力と擬似飽和温度Tcを設定し、冷媒の温度Tcoとの差を擬似過冷却度Tscとして用いればよい(下記式(4)参照)。
式(4) Tsc=Tc−Tco
また、高圧側圧力と凝縮器の過熱度との関係は、高圧側圧力が高いほど過冷却度も大きくなり、高圧側圧力が低いほど過冷却度も小さくなるため、図5のフローチャートにおいてステップ203の吐出温度を過冷却度に置き換えた制御とすればよい。
冷凍サイクル装置100によれば、膨張機7をバイパスする量が大きい場合に懸念される、膨張機7の回転数が低く、摺動部での潤滑状態悪化、膨張さらには膨張機7の経路内に油が滞留することによる圧縮機内の油枯渇、再起動時の冷媒寝込み起動など、といった信頼性低下に繋がる現象を低減することもできる。
冷凍サイクル装置100によれば、膨張機バイパス弁が不要であるため、膨張機バイパス弁で冷媒を膨張させる際に発生する絞り損失がないため、蒸発器での冷凍効果の減少を小さくすることができる。
冷凍サイクル装置100によれば、副圧縮機2が冷媒の圧縮をほとんどできないような場合でも、循環している冷媒の一部を副圧縮機2に流入させるようにしている。そのため、冷凍サイクル装置100では、循環している冷媒の全量を流入させている場合と比較しても、副圧縮機2が冷媒の流路抵抗となって性能を低下させることがない。副圧縮機2が冷媒の圧縮をほとんどできないような場合とは、たとえば、外気温度が低い冷房運転や、室内温度が低い暖房運転など、高圧側圧力と低圧側圧力の差が小さく、膨張機7の回収動力が極端に小さくなる場合である。
冷凍サイクル装置100は、駆動源のある主圧縮機1と、膨張機7の動力により駆動する副圧縮機2と、に圧縮機能が分割されて構成されている。したがって、冷凍サイクル装置100によれば、構造設計や機能設計も分割できるため、駆動源・膨張機・圧縮機一体集約機と比較して設計上または製造上の課題が少ない。
また、冷凍サイクル装置100によれば、副圧縮機2で圧縮された冷媒を主圧縮機1の圧縮室108にインジェクションするようにしているが、たとえば主圧縮機1の圧縮機構を二段圧縮として、低段側圧縮室と後段側圧縮室をつなぐ経路にインジェクションするようにしてもよい。さらに、主圧縮機1を複数の圧縮機で二段圧縮する構成としてもよい。
冷凍サイクル装置100によれば、室外熱交換器4及び室内熱交換器21は、空気と熱交換する熱交換器とした場合を例に説明したが、これに限定するものではなく、水やブラインなど、他の熱媒体と熱交換をする熱交換器としてもよい。
また、冷凍サイクル装置100によれば、冷暖房に係る運転モードに対応した冷媒流路の切り替えを、第1四方弁3及び第2四方弁5によって行なっている場合を例に説明したが、これに限定するものではなく、たとえば二方弁、三方弁または逆止弁などによって、冷媒流路の切り替えを行う構成としてもよい。
1 主圧縮機、2 副圧縮機、3 第1四方弁、4 室外熱交換器、5 第2四方弁、6 予膨張弁、7 膨張機、8 アキュムレーター、9 中間圧バイパス弁、10 逆止弁、21 室内熱交換器、31 吐出配管、32 吸入配管、33 中間圧バイパス配管、34 冷媒流路、35 吐出配管、36 液管、37 ガス管、43 駆動軸、51 温度センサー、52 温度センサー、53 温度センサー、81 室外機、82 室内機、83 制御装置、84 密閉容器、100 冷凍サイクル装置、101 シェル、102 電気モーター、103 シャフト、104 揺動スクロール、105 固定スクロール、106 流入配管、107 低圧空間、108 圧縮室、109 圧縮室、110 流出ポート、111 高圧空間、112 流出配管、113 インジェクションポート、114 インジェクション配管。

Claims (11)

  1. 冷媒を圧縮する主圧縮機と、
    前記主圧縮機で圧縮された冷媒の熱を放散する放熱器と、
    前記放熱器を通過した冷媒を減圧する膨張機と、
    前記膨張機で減圧された冷媒が蒸発する蒸発器と、
    吐出側が前記主圧縮機での圧縮工程の中間となる位置に接続され、前記膨張機での冷媒の減圧時の動力を用いて前記蒸発器を通過した冷媒の一部を中間圧力まで圧縮する副圧縮機と、
    前記副圧縮機の冷媒流出側と前記主圧縮機の冷媒流入側とを接続する中間圧バイパス流路と、
    前記中間圧バイパス流路に設けられ、前記中間圧バイパス流路を流れる冷媒の流量を調整する中間圧バイパス弁と、
    前記放熱器の冷媒流出側と前記膨張機の冷媒流入側との間に設けられ、前記膨張機に流入する冷媒を減圧する予膨張弁と、
    前記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の動作を制御する制御装置と、を有し、
    前記制御装置は、
    記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の一方または双方の開度を変更し、もって高圧側圧力を調整する
    ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
  2. 前記制御装置は、
    実際の運転状態での前記膨張機の流入冷媒密度と前記副圧縮機の流入冷媒密度から求めた密度比が、設計時に想定した前記副圧縮機の行程容積と前記膨張機の行程容積と前記副圧縮機へ流れる冷媒流量の割合から求めた設計容積比より大きいとき、
    前記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の一方または双方の開度を変更し、もって高圧側圧力を上昇させ、
    一方、前記実際の運転状態での密度比が、前記設計時に想定した設計容積比より小さいとき、
    前記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の一方または双方の開度を変更し、もって高圧側圧力を低下させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
  3. 前記制御装置は、
    前記中間圧バイパス弁の開度が最低開度であるときは前記予膨張弁を操作し、
    前記予膨張弁の開度が最高開度であるときは前記中間圧バイパス弁を操作することをもって、前記高圧側圧力を調整する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍サイクル装置。
  4. 前記制御装置は、
    前記主圧縮機の冷媒流出側で検知される吐出温度との相関によって高圧側圧力を調整する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
  5. 前記制御装置は、
    前記蒸発器を流出する冷媒の過熱度との相関によって高圧側圧力を調整する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
  6. 前記制御装置は、
    前記放熱器を流出する冷媒の過冷却度との相関によって高圧側圧力を調整する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
  7. 前記副圧縮機は二段圧縮機であり、
    前記副圧縮機からの吐出冷媒を、
    低段側圧縮室と後段側圧縮室をつなぐ経路にインジェクションする
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
  8. 冷媒として高圧側において超臨界状態となるものを用いている
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
  9. 主圧縮機で冷媒を圧縮し、
    前記主圧縮機で圧縮された冷媒の熱を放熱器で放散し、
    前記放熱器を通過した冷媒を膨張機で減圧し、
    前記膨張機で減圧された冷媒を蒸発器で蒸発し、
    前記膨張機での冷媒の減圧時の動力を用いて前記蒸発器を通過した冷媒の一部を副圧縮機で中間圧力まで圧縮し、
    前記副圧縮機で中間圧力まで圧縮された冷媒を前記主圧縮機での圧縮工程の中間となる位置にインジェクションし、
    前記副圧縮機の冷媒流出側と前記主圧縮機の冷媒流入側とを中間圧バイパス流路で接続し、
    前記中間圧バイパス流路を流れる冷媒の流量を中間圧バイパス弁で調整し、
    前記放熱器の冷媒流出側と前記膨張機の冷媒流入側との間で前記膨張機に流入する冷媒を予膨張弁で減圧し、
    実際の運転状態での前記膨張機の流入冷媒密度と前記副圧縮機の流入冷媒密度から求めた密度比、及び、設計時に想定した前記副圧縮機の行程容積と前記膨張機の行程容積と前記副圧縮機へ流れる冷媒流量の割合から求めた設計容積比に基づいて、前記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の一方または双方の開度を変更し、もって高圧側圧力を調整している
    ことを特徴とする冷凍サイクル装置の運転方法。
  10. 実際の運転状態での密度比が、設計時に想定した設計容積比より大きいとき、
    前記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の一方または双方の開度を変更し、もって高圧側圧力を上昇させるようにしている
    ことを特徴とする請求項9に記載の冷凍サイクル装置の運転方法。
  11. 実際の運転状態での密度比が、設計時に想定した設計容積比より小さいとき、
    前記中間圧バイパス弁及び前記予膨張弁の一方または双方の開度を変更し、もって高圧側圧力を低下させるようにしている
    ことを特徴とする請求項9に記載の冷凍サイクル装置の運転方法。
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