JP5477009B2 - 含銅鉄硫化物からの銅の分離回収方法 - Google Patents

含銅鉄硫化物からの銅の分離回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、銅と共に鉄などの不純物を含有する含銅鉄硫化物から湿式法により銅を分離回収する方法、特に工程全体で使用する硫酸及び中和剤の使用量を削減することが可能な方法に関する。
銅精鉱や銅鉱石などの硫化銅鉱物あるいは銅製錬工程の中間原料などの銅や鉄などを含む硫化物から、湿式法により銅を製錬する湿式銅製錬プロセスは、硫化物中の銅を溶液に浸出する際に用いる液の種類によって、塩化系と硫酸系の2つのプロセスに大別することができる。
即ち、塩化系のプロセスは、塩化物その他のハロゲン化合物などを含有する溶液を用い、塩素ガスなどの酸化剤を併用して銅を溶液中へ浸出するものである。一方、硫酸系のプロセスは、硫酸や硫酸塩の溶液を用い、酸素や空気などの酸化剤を併用して銅を溶液中へ浸出するものである。尚、いずれのプロセスを用いた場合でも、得られた浸出液中の銅は、溶媒抽出工程で浸出液中の鉄やヒ素などの不純物を分離して除去し、逆抽出を経た後、逆浸出液中の銅を電解採取などの方法を用いて電気銅として回収する。
上記硫酸系のプロセスは、浸出反応の機構の観点から、更に2つの方法に区別できる。第1の方法は、例えば特許文献1に記載されるように、硫酸を含有する水溶液中で酸素又は空気を導入し、硫化物中の銅を硫酸により酸化浸出する方法である。具体的には、特許文献1には、115℃〜175℃において銅硫化物を加圧酸化すると共に硫酸溶液を用いて銅を浸出し、得られた硫酸銅溶液のpHを1.5〜3.0の範囲に調整して溶媒抽出し、最終的に電解採取して銅を回収する方法が示されている。
この方法においては、例えば黄銅鉱を酸化浸出する際には、下記化学式1に示すように、黄銅鉱に含有される銅1モルに対して2モルの硫酸を添加して浸出する。浸出により黄銅鉱中の銅は、硫酸銅の形態、即ち2価の銅イオンとして硫酸溶液中に溶解する。
[化学式1]
CuFeS+O+2HSO→CuSO+FeSO+2HO+2S
また、黄銅鉱中の鉄も硫酸鉄の形態、即ち2価及び一部は3価の鉄イオンとして硫酸溶液中に溶解するが、大部分の2価の鉄イオンは、下記化学式2に示すように、加水分解を受けて難溶性の三酸化二鉄(ヘマタイト)を生成すると共に硫酸を副生する。つまり、化学式1及び2の浸出反応全体を考えると、黄銅鉱1モルを浸出するには1モルの硫酸が必要となる。
「化学式2」
FeSO+1/4O+2HO→1/2Fe+HSO
上記した酸化浸出で得られた2価の銅イオンを含有する硫酸溶液(浸出液)は、難溶性の三酸化二鉄を固液分離した後、有機抽出剤を用いた溶媒抽出によって2価の銅イオンを有機抽出剤中へ抽出することにより不純物と分離する。銅を含む有機抽出剤(抽出有機)は、電解採取に適した高銅濃度の液を得るため逆抽出などの処理が行なわれる。
一般に、有機抽出剤は塩基性の低い元素ほど抽出しやすいという性質がある。従って、上述した黄銅鉱を硫酸で浸出した場合のように、2価の銅イオンと2価及び3価の鉄イオンが共存するような浸出液を対象とする場合には、目的とする2価の銅イオンよりも3価の鉄イオンを優先的に抽出し、銅イオンの分離が阻害される傾向がある。
そのため、黄銅鉱を硫酸で浸出した浸出液から銅イオンを優先的に浸出する場合には、2価の銅イオンと安定なキレートを形成することにより、3価の鉄イオンよりも優先的に銅イオンを抽出することができるオキシム系のような酸性抽出剤が用いられることが多かった。オキシム系の酸性抽出剤の場合、下記化学式3に示す反応により、銅が抽出される。
[化学式3]
CuSO+2HA→CuA+HSO
(但し、HAはオキシム系抽出剤Aに水素Hが付加された状態を意味する。)
上記化学式3に示すように、オキシム系抽出剤では銅が抽出されるに伴って硫酸が1モル副生する。この硫酸を上記化学式1〜2の浸出に繰り返せば、新たな硫酸の添加なしに銅を浸出できることになる。しかしながら、溶媒抽出における抽出挙動は液のpHによる影響を受け、特にオキシム系抽出剤の抽出性能は高pH側の方が良好なため、抽出時には予め浸出液にアルカリなどを添加してpHを上昇させておき、副生する硫酸を中和する必要がある。
また、オキシム系の抽出剤の場合、抽出後の抽出剤(抽出有機)から逆抽出により銅イオンを分離する際には、上記抽出時とは逆に低pH側の方が有利である。例えば抽出後の有機抽出剤(抽出有機)に硫酸溶液を添加して混合すると、下記化学式4に示すように、オキシム系抽出剤中の銅イオンが硫酸溶液中に逆抽出されて逆抽出後液が得られる。
[化学式4]
CuA+HSO→CuSO+2HA
上記の逆抽出後液を電解液として、電解採取により銅を回収する。電解採取では下記化学式5に示すように、カソード上に1モルの銅が電析すると電解液中に1モルの硫酸が副生する。副生した硫酸は、上記化学式4の逆抽出で再び使用することができる。
[化学式5]
CuSO+2e+2H→Cu+HSO
即ち、上記特許文献1の方法で1モルの黄銅鉱を処理する場合には、浸出工程では上記化学式1〜2により1モルの硫酸が消費され、抽出工程では上記化学式3に示す溶媒抽出の反応により硫酸が1モル過剰に生じる。そのため、浸出工程での硫酸の添加と、抽出工程での硫酸の中和処理とが必要となっていた。
硫酸系のプロセスでの他の1つの方法として、特許文献2には、銅の硫化鉱物に反応触媒として塩化物を添加し、200℃〜220℃の温度域で酸素もしくは空気を吹き込んで酸化しながら加熱し、硫化鉱物に含有される硫黄を酸化して硫酸を生成させ、下記化学式6により銅を、及び上記化学式2と同様の反応により鉄を、それぞれ硫酸溶液中に溶解させる浸出方法が示されている。
[化学式6]
CuFeS+4O→CuSO+FeSO
この方法によれば、上記化学式6に示すように、浸出工程での硫酸添加は不要である。しかしながら、上記化学式2に示すように、浸出液中の硫酸鉄から酸化鉄が生じる際に硫酸が副生する。更に、得られた浸出液から溶媒抽出によって銅と不純物とを分離する必要があるので、上述の化学式3に示したように抽出工程において硫酸が副生し、浸出から電解採取までを通しては1モルの銅を処理するに伴って2モルの硫酸が副生する。
上述した硫酸系のプロセスから分るように、特許文献1及び特許文献2のいずれの方法においても、銅の溶媒抽出工程では、上記化学式3に示すように銅1モルの抽出に対して1モルの硫酸が副生する。従って、この硫酸を中和して高い抽出性能を維持するため、銅抽出時には中和剤が必要であった。
一般に、銅の抽出剤としては、良好な銅の逆抽出特性が得られることを重視して、オキシム系の1種で弱酸性のケトキシム型抽出剤が選択されることが多かった。しかし、弱酸性のケトキシム型抽出剤は、抽出反応の進行に伴い、上記化学式3の反応で生成する硫酸により逆抽出反応が進行し、銅の抽出率が著しく低下するなどの弊害があった。
そこで、同じくオキシム系の1種である強酸性のアルドキシム型抽出剤に対し、酸性を弱める目的で、ケトキシム型抽出剤、あるいは高級アルコール類又は高級フェノール類などを添加して用いることが行なわれ、そのための抽出剤も市販されている。しかしながら、このような酸性を弱めたアルドキシム型抽出剤を用いた場合にも、銅を逆抽出することは容易であるが、溶媒抽出工程においては中和剤を添加して過剰な硫酸を中和することによって、逆抽出反応が進むことを防止する必要があった。
その場合の中和剤としては、例えば、銅の酸化鉱を代用することもある。酸化鉱を添加すると硫酸が硫酸銅になり、中和と同じ効果が得られる。同時に酸化鉱中の銅も浸出される効果がある。しかし、酸化鉱が常に利用できるとは限らず、利用できない時には水酸化ナトリウムや消石灰などのアルカリを中和剤として用いることが必要になる。
このような事情から、銅硫化物を硫酸系プロセスにより処理する際には、銅硫化物からの銅の浸出工程で大量の硫酸を使用するうえ、その浸出液からの銅の抽出工程では生成する硫酸の中和に使用する中和剤が大量に必要であるため、硫酸を無駄に消費すると共に多くの費用を要し、コスト競争力を低下させる原因となっていた。
尚、特許文献3には、硫酸系プロセスにより処理する際に、170℃〜235℃で硫化銅鉱物を硫酸浸出した後、過剰な酸を水で希釈し、浸出液のpHを1.2〜2.0の範囲に調整する方法が開示されている。しかしながら、浸出液を希釈することで酸濃度を低下させてpHを調整するためには、膨大な希釈水の添加が必要となるため、設備容量や水バランス、廃水処理の手間とコストなどを考慮すると、実用的な方法とは言い難い。
特表平10−510585号公報 特表平11−506166号公報 特開2007−297717号公報
本発明は、上記した硫酸系プロセスによる硫化物からの銅の分離回収方法における問題点に鑑みてなされたものであり、硫化物の浸出から銅の電解採取までの全工程で消費する硫酸の量を低減すると共に、抽出及び逆抽出工程で中和剤を使用する必要がなく、従来に比べて大幅にコストの低減を図ることが可能な銅の分離回収方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは、硫酸系プロセスにより硫化物から銅を分離回収する際の条件について詳細な検討を行った結果、浸出時の温度を特定の範囲に維持すると、硫黄の酸化が抑制されるだけでなく、鉄イオンと遊離硫酸がH型鉄明礬石を生成して沈殿することを見出した。また、浸出液からの銅の抽出時には、オキシム系抽出剤の1種であるアルドキシム型抽出剤の組成を最適化することによって、優れた抽出性能と同時に良好な逆抽出性能が得られることが分り、これらの知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、本発明が提供する含銅鉄硫化物からの銅の分離回収方法は、該硫化物と硫酸溶液とを混合したスラリーを反応容器に入れ、酸素又は空気を吹き込みながら銅と鉄を浸出する浸出工程と、得られた浸出液を有機抽出剤と混合して銅を抽出する抽出工程と、得られた抽出有機を逆抽出始液と混合し、逆抽出後液に銅を逆抽出する逆抽出工程と、得られた逆抽出後液を電解始液として電気銅を電解採取する電解工程とを含み、
上記浸出工程での温度を102℃以上112℃以下の範囲に維持すると共に、上記抽出工程での有機抽出剤としてアルドキシム型抽出剤を用い、該アルドキシム型抽出剤が5−アルキルサリチルアルドキシムを主成分とし、且つアルコール類又はフェノール類の含有量が5重量%未満であることを特徴とする。
上記本発明による含銅鉄硫化物からの銅の分離回収方法においては、前記アルドキシム型抽出剤中の5−アルキルサリチルアルドキシム濃度を25重量%以上35重量%以下とすることが好ましい。また、前記抽出工程での抽残液は、前記浸出工程に繰り返して、銅と鉄を浸出するための硫酸溶液として使用することができる。
本発明によれば、中和剤を一切使用せずに抽出工程及び逆抽出工程を操業することができる。しかも、その抽出工程での抽残液を浸出工程に再利用することができるため、全工程をとおして硫酸の添加量を削減することができる。従って、本発明の含銅鉄硫化物からの銅の分離回収方法を使用することによって、従来の方法に比べて大幅にコストを低減することができる。
本発明の含銅鉄硫化物からの銅の分離回収方法における各工程を示すフロー図である。
本発明では、図1に示すように、まず浸出工程において、含銅鉄硫化物と硫酸溶液(浸出始液)とを混合したスラリーを反応容器に入れ、酸素又は空気を吹き込むことによって、含銅鉄硫化物から銅と鉄、鉛などを浸出液中に浸出する。得られた浸出液は、浸出残渣と分離して、次の抽出工程に送られる。
しかしながら、含銅鉄硫化物から銅と鉄を硫酸溶液で抽出する場合、上述したように従来の浸出方法では上記化学式2により硫酸が生成する。そして、次の抽出工程でも、オキシム系抽出剤を用いることで上記化学式3により硫酸が副生する。これらの過剰な硫酸によってオキシム系抽出剤の抽出性能が低下するため、その性能低下を抑える目的で、アルカリなどを添加して硫酸を中和することが行われてきた。
この過剰な硫酸が生成する問題に対して、本発明では、浸出の際に温度を102℃以上112℃以下の範囲に維持することにより、硫黄の酸化を抑制できるうえ、浸出液中の遊離硫酸を鉄イオンと反応させてH型鉄明礬石(Jarosite−Hydronium;HFe(SO(OH))として沈殿させることができる。また、遊離硫酸濃度が低くなる、例えば20g/l以下のように低くなり、且つ硫酸/鉄のモル比率が理論的な必要量の3分の2を越えると、鉄イオンは針鉄鉱(Goethite;FeOOH)を生成するため、遊離硫酸には影響を及ぼさないことが分った。
上記浸出工程において含鉄銅硫化物から銅を浸出し、同時に鉄を加水分解して固定する場合、102℃未満の温度では浸出時間が非常に遅くなる。一方、浸出時の温度が112℃を超えると、共存する硫化鉄鉱の酸化が優先的に進行し、抑制可能なレベルを超える遊離硫酸が発生する。従って、浸出温度の範囲は、102℃以上112℃以下とする必要がある。
このように、本発明の浸出工程においては、浸出温度を102℃以上112℃以下の範囲に制御する、即ちH型鉄明礬石を生成させる条件で操業することによって、共存する鉄イオンを利用して過剰な硫酸を浸出液から分離することができる。その結果、従来の硫酸溶液での浸出のように浸出液中に過剰な硫酸が蓄積しなくなり、後述するように浸出工程から抽出工程において硫酸濃度を一定に維持することが可能となる。
次の抽出工では、上記浸出工程で得られた浸出液を有機抽出剤と混合して銅を抽出するが、有機抽出剤としてオキシム系抽出剤の1種であるアルドキシム(aldoxime)型抽出剤を使用する。アルドキシム型抽出剤は、銅を抽出剤中に抽出しやすい性質を有するが、抽出後の抽出剤(抽出有機)からの銅の逆抽出が不完全となり易いことが知られている。
そのため、現在市販されているアルドキシム型抽出剤の多くは、主成分としての5−アルキルサリチルアルドキシムのほかに、アルコール類又はフェノール類を含有させて酸性を弱めることで逆抽出性能を向上させている。しかし、アルコール類やフェノール類の添加によって酸性を弱めると、上述したように抽出反応の進行に伴って生成する硫酸により逆抽出反応が進行して、銅の抽出率が著しく低下するという欠点があった。
このようなアルドキシム型抽出剤が有する問題に対し、本発明では、アルドキシム型抽出剤の組成を最適化すること、即ち、アルコール類又はフェノール類の濃度を5重量%未満に抑制することによって、優れた抽出性能を維持しながら、同時に良好な逆抽出性能を得ることが可能となった。尚、アルコール類又はフェノール類の濃度が上記範囲となるように組成を最適化するには、例えば市販のアルドキシム型抽出剤を希釈剤で希釈すればよい。
また、上記アルドキシム型抽出剤の組成の最適化に際しては、例えば希釈剤で希釈することにより、5−アルキルサリチルアルドキシムの濃度が25重量%以上35重量%以下とすることが好ましい。5−アルキルサリチルアルドキシムの濃度が35重量%を超えると、粘性が増加して相分離時間が著しく増加するため好ましくない。一方、5−アルキルサリチルアルドキシムの濃度が25重量%未満になると、抽出容量が不足するため好ましくない。
本発明で用いるアルドキシム型抽出剤としては、例えばCognis社製のLIX860N−IC(商品名)などがあり、その組成を希釈によって最適化すればよい。また、アルドキシム型抽出剤の組成を最適化するために使用する希釈剤としては、抽出剤の溶解度及び沸点、引火点が高く、水への溶解度が低い炭化水素系の溶媒が好適であり、例えばテクリーンN−20(商品名、新日本石油(株)製)などを用いることができる。
上記のごとく希釈により組成を最適化したアルドキシウム型抽出剤を用いて浸出液から銅を抽出した場合、上記浸出工程での温度制御により過剰な硫酸を除去できることと相まって、抽出の際に浸出液中の過剰な硫酸を中和する必要がなくなる。従って、図1に示すように、抽残液は上記浸出工程に繰り返して、含銅鉄硫化物を浸出する浸出始液(硫酸溶液)として再び使用することができる。
上記抽出工程で得られた抽出有機(抽出後の有機抽出剤)は、次の逆抽出工程において逆抽出始液と混合することによって、銅イオンが逆抽出された逆抽出後液が得られる。銅イオンが逆抽出された後のアルドキシム型抽出剤(逆抽出後有機)は、上記抽出工程に繰り返され、浸出液からの銅の抽出に再利用することができる。
尚、実操業において、上記抽出工程は、希釈により組成を最適化したアルドキシウム型抽出剤と浸出液とを、アルドキシウム型抽出剤:浸出液の体積比が4:1の割合となるように混合し、2段もしくは3段の混合槽を経て銅を抽出することが好ましい。一方、逆抽出工程では、抽出有機と逆抽出始液(硫酸濃度200〜250g/l)とを、抽出有機:逆抽出始液の体積比が2:1の割合となるように混合し、2段もしくは3段の混合槽を用いて抽出有機中の銅を逆抽出することが好ましい。
上記逆抽出工程で得られた銅を含む逆抽出後液は、電解工程に送られ、従来と同様に電解採取などの方法を用いて銅を電気銅として回収する。得られる電解廃液は硫酸溶液でるため、上記逆抽出工程に繰り返し、逆抽出始液として再利用することができる。
上記したように、本発明によれば、中和剤を使用することなく、抽出工程と逆抽出工程のサイクルを実施することが可能である。また、抽残液を浸出工程に浸出始液として繰り返し、電解廃液を逆抽出工程に逆抽出始液として繰り返すことができるため、全工程をとおして硫酸の添加量を削減することができる。尚、本発明は、銅精鉱や黄銅鉱のような硫化銅鉱物に限定されず、銅と鉄を含有する硫化物であれば適用することができる。
[実施例1]
含銅鉄硫化物として、黄銅鉱と黄鉄鉱の混合物からなり、銅20.6重量%、鉄25.7重量%、硫黄24.6重量%を含有する銅精鉱を用いた。この銅精鉱を湿式粉砕し、粒径10μm以下の粒子が全体の80%以上を占めるように粒度を調製した。粉砕した銅精鉱を、乾燥重量に換算して200g相当になるように分取した。
分取した銅精鉱200gを、銅濃度1.3g/l、2価鉄濃度45.3g/l、硫黄濃度64.2g/l、及び遊離硫酸濃度95g/lの硫酸水溶液1000ml中に懸濁し、更に界面活性剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムを0.5g/lの濃度となるように添加して、スラリーとした。
上記スラリーを圧力容器中に装入して密閉し、混合しながら105℃まで昇温した。昇温後の内圧は0.1MPaであった。次に、酸素ガスを圧力容器内に吹き込み、内圧を1.5MPaまで上昇させた。更に、105℃の温度を維持しながら撹拌を2時間継続し、その間に圧力が低下した分は酸素ガスを吹き込んで一定の圧力に維持した。
反応後のスラリーをヌッチェと濾瓶を用いて濾過し、浸出液と浸出残渣とに分けた。浸出液と浸出残渣中の銅、鉄、硫黄の濃度を、それぞれICPを用いて分析した。また、浸出液中の遊離硫酸濃度は中和滴定によって求めた。その結果、浸出液中の銅濃度は48.3g/lであり、銅の浸出率は81.0%であった。また、遊離硫酸濃度は2g/lであり、硫黄の酸化率(銅精鉱に含有される硫黄の中で浸出液中に溶出した割合)は7.6%であった。
次に、得られた浸出液を有機抽出剤と混合して銅を抽出した。使用した有機抽出剤は、85重量%の5−ノニルサリチルアルドキシムと5重量%の2−ノニルフェノールとからなるアルドキシム型有機抽出剤LIX860N−IC(商品名;Cognis社製)に、希釈剤としてテクリーンN−20(商品名;新日本石油製)を体積比で3:7に混合し、2−ノニルフェノールの含有量を1.5重量%に調整したものである。
尚、上記の組成を調整した有機抽出剤中の5−ノニルサリチルアルドキシムの濃度は26重量%である。また、抽出操作に先だって、プロセスとして循環使用され平衡状態を維持した状態を想定し、上記有機抽出剤と硫酸銅溶液とを混合することにより、予め有機抽出剤中の銅イオン濃度を23g/lに調整した。
上記有機抽出剤4に対して浸出液1の割合、即ち有機抽出剤と浸出液の液量の体積比(O/A比)は4:1とした。抽出段数を3段とし、有機抽出剤と浸出液とが向流となるように通液して混合し、浸出液中に含有される銅を有機抽出剤中に抽出した。
抽出後の浸出液(抽残液)を上記と同様に分析したところ、抽残液中の銅濃度は8.3g/lまで低下し、浸出液に含有された銅イオンの83%を有機抽出剤中に抽出することができた。一方、抽残液中の遊離硫酸濃度は、硫酸の副生により78g/lとなった。また、抽出槽から有機抽出剤と浸出液の混合溶液をサンプリングし、静置させて抽出剤と浸出液が分離するまでの相分離時間を測定したところ25秒であった。
また、上記抽出により得られた抽残液を用いて、新たな硫酸を添加することなく、その他の条件は同じに設定して、再び上記と同一の銅精鉱の浸出を行った。その結果、得られた浸出液中の銅濃度は上記の場合と同じく48g/lであり、一方で遊離硫酸濃度は2g/lまで低下した。このことから、抽残液を次の浸出工程に繰り返して、浸出始液として使用できることが確かめられた。
次に、上記抽出後の有機抽出剤(抽出有機)から銅の逆抽出を行った。逆抽出始液として、予め試薬硫酸銅と硫酸とを用いて銅濃度36g/l及び遊離硫酸濃度231g/lに調製した溶液を使用した。O/A比を2とし且つ抽出段数を4段として、ミキサーセトラーに向流に通液して混合し、抽出有機から銅を硫酸溶液中に逆抽出して逆抽出後液を得た。
得られた逆抽出後液を上記と同様に分析したところ、銅濃度は56g/l、遊離硫酸濃度は200g/lであった。また、逆抽出後の有機抽出剤(逆抽出後有機)中の銅濃度は23g/lとなり、抽出前の有機抽出剤に含有させた銅濃度まで低下した。従って、抽出した銅に対して逆抽出率はほぼ100%となり、逆抽出後有機が有機抽出剤として再生され、抽出工程に繰り返して使用できることが確認された。
上記逆抽出で得られた逆抽出後液を電解始液とし、液温度を57℃から62℃の範囲に維持しながら、鉛製のアノードとステンレス製のカソードを電極として電流密度300A/mとなる電流で通電して、銅をカソード上に電析させた。電解液中の銅濃度が36g/lになった時点で通電を止め、カソードを引揚げ、電着した銅を剥ぎ取って洗浄した。
上記電解終了後の電解液を上記と同様に分析した結果、電解液中の遊離硫酸濃度は上記逆抽出に使用した逆抽出始液と同じ231g/lであった。この結果から、逆抽出後液が電解採取によって再生され、逆抽出工程に繰り返して逆抽出始液として使用できることが確認された。
[比較例1]
上記実施例1と同様に実施したが、銅精鉱の浸出温度を100℃、120℃、140℃にそれぞれ変化させた以外は上記と同一条件の下で浸出を行い、上記と同様にして硫黄酸化率を求めた。得られた硫黄の酸化率は、浸出温度100℃では2%、浸出温度120℃では39%、浸出温度140℃では46%となり、浸出温度が高いほど硫黄の酸化率は高くなり、遊離硫酸の副生量が増加した。尚、浸出温度が100℃の場合、浸出時間が極めて遅くなった。
上記の各浸出温度での浸出液を上記実施例1と同じ条件で抽出処理し、抽残液を浸出工程に循環することを3回繰り返した場合、浸出温度100℃の条件では発生する硫酸イオンが不足し、硫酸の添加が必要となった。一方、浸出温度120℃と140℃での条件では、硫酸イオンが過剰となり、中和剤の添加が必要となった。
[比較例2]
上記実施例1と同様に実施したが、有機抽出剤として50重量%の5−ドデシルサリチルアルドキシムと50重量%の2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムとからなるアルドキシム型有機抽出剤LIX984(商品名;Cognis社製)を、希釈せずにそのまま用いた以外は上記と同じ条件で抽出を行った。その結果、抽出工程における銅の抽出率は45%であり、上記実施例1よりもはるかに低い結果しか得られなかった。
[参考例1]
上記実施例1と同様に実施したが、組成を調整した有機抽出剤中の5−ノニルサリチルアルドキシムの濃度を40重量%に増加させた場合、銅の抽出率は80%前後と上記実施例1と変わらなかったが、相分離時間は234秒に増加した。また、上記濃度を50重量%にまで増加した場合、相分離時間は343秒にまで増加し、著しく相分離性が悪化することが確認された。
一方、有機抽出剤の濃度を20重量%に低下させたところ、相分離時間は23秒と短くなったが、銅の抽出率は55%にまで低下した。
[参考例2]
上記実施例1と同様に実施したが、抽出工程において相比をO/A=2/1として多段向流にて5段階の抽出を行ったところ、銅の抽出率は46%と非実用的な低い抽出率しか得られなかった。
また、上記実施例1と同様に実施したが、抽出工程で生成した銅抽出有機について、銅濃度36g/l、遊離硫酸の濃度231g/lの組成の水溶液でO/A=4/1として多段向流にて3段階の逆抽出を行ったところ、抽出した銅に対する逆抽出率は48%までしか得られず、不完全であった。

Claims (3)

  1. 銅と鉄を含有する含銅鉄硫化物から湿式法により銅を分離回収する方法であって、該硫化物と硫酸溶液とを混合したスラリーを反応容器に入れ、酸素又は空気を吹き込みながら銅と鉄を浸出する浸出工程と、得られた浸出液を有機抽出剤と混合して銅を抽出する抽出工程と、得られた抽出有機を逆抽出始液と混合し、逆抽出後液に銅を逆抽出する逆抽出工程と、得られた逆抽出後液を電解始液として電気銅を電解採取する電解工程とを含み、
    上記浸出工程での温度を102℃以上112℃以下の範囲に維持することにより、硫黄の酸化を抑制し且つ浸出液中の遊離硫酸を鉄イオンと反応させてH型鉄明礬石として沈殿させると共に、上記抽出工程での有機抽出剤としてアルドキシム型抽出剤を用い、該アルドキシム型抽出剤が5−アルキルサリチルアルドキシムを主成分とし、且つアルコール類又はフェノール類の含有量が5重量%未満であることを特徴とする含銅鉄硫化物からの銅の分離回収方法。
  2. 前記アルドキシム型抽出剤中の5−アルキルサリチルアルドキシム濃度を25重量%以上35重量%以下とすることを特徴とする、請求項1に記載の含銅鉄硫化物からの銅の分離回収方法。
  3. 前記抽出工程での抽残液を前記浸出工程に繰り返し、銅と鉄を浸出するための硫酸溶液として使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の含銅鉄硫化物からの銅の分離回収方法。
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