本発明の集塵装置は、放電によって粉塵を帯電する帯電部を前段に備え、異なる電圧が印加される極板Aと極板Bとを空間を設けながら交互に積層した集塵部を後段に備える集塵装置において、極板Aおよび極板Bの少なくともどちらか一方が、中心層、表側の表層、裏側の表層の3層で構成され、表側の表層および裏側の表層が10の7〜12乗Ω/□オーダーの表面抵抗率を有する樹脂板で構成されることを特徴とする。極板Aと極板Bの間に電場を設けるためには、印加される電圧に相当する電荷が極板Aおよび極板Bの表面に存在すればよい。すなわち極板全体を導電性ないし半導電性にする必要はなく、表層のみに導電性ないし半導電性を与えればよい。
ここで極板の表層の表面抵抗率が10の12乗Ω/□オーダー以下であれば電場を設けることが可能である。なぜならば極板Aと極板Bは空気を介してお互いが接触しない構造であるため、基本的に極板Aと極板Bとの間で電荷の移動が起こらないためである。したがって高圧電源の端子から極板の表面に速やかに電荷を与えられる表面抵抗率、すなわち10の12乗Ω/□オーダー以下の表面抵抗率を極板の表層が有していれば極板Aおよび極板Bの間に電場を設けることが可能である。また、例えば極板の表面に繊維状の埃が付着するなどして極板Aと極板Bとの距離が局部的に小さくなった場合などにスパークを引き起こす場合がある。これは極板に与えられた電荷が空気というギャップを飛び越えて反対側の極板に急激に移動することによって引き起こされる。
ここで極板の表層の表面抵抗率が10の7乗Ω/□以上であれば、極板の表層全体において電荷の移動を制限することが可能となり、スパークを防止することが可能となる。したがって極板Aおよび極板Bの表側の表層および裏側の表層を10の7〜12乗オーダーの範囲とすることで、電場を設けて帯電した粉塵を捕集すると同時にスパークを防止することが可能となる。ここで、極板Aおよび極板Bのどちらか一方のみが10の7〜12乗オーダーの表面抵抗率とする場合はもう一方の極板は金属板などの導電体で構成する必要がある。これは、極板Aおよび極板Bのうち少なくともどちらか一方が上記範囲の表面抵抗率とすればもう一方の極板がどのような表面抵抗率であってもスパークを防止することが可能であるが、電場を設けるためにはもう一方の極板の表面が絶縁性ではなく導電性である必要があるためである。
電場を設けながらスパークを防止する機能は極板の表側の表層および裏側の表層が担い、極板全体に剛性を与える機能は絶縁性を有する極板の中心層が担う。絶縁性を有する材料として例えば絶縁性の樹脂やセラミックで中心層を形成することで高い剛性を有する中心層を得ることが可能である。表層を支える中心層の剛性を高めることによって高剛性の極板が得られ、撓みによって極板Aおよび極板Bの間隔が不均一になったり、また極板Aおよび極板Bが接触したりすることを防ぐことが可能となり、均一な電場を得ることが可能となる。したがって高い集塵効率を有する集塵装置が得られることになる。
また、前記表側の表層および裏側の表層の厚さは、樹脂板の総厚さに対して1/20〜1/3であることを特徴とする。10の7〜12乗Ω/□の表面抵抗率が得られるのであれば表側および裏側の表層を必要以上に厚くする必要はないが、薄すぎると表面を引っ掻いたりした際に剥がれてしまうという不具合が生じる。また、表層が厚すぎる、すなわち中心層が薄すぎると極板の剛性が低下してしまうという課題がある。したがって剛性が得られる極板の厚さにおいて、表側の表層および裏側の表層の厚さを樹脂板の総厚さに対して1/20〜1/3とすることで表層の機械的強度を確保ながら極板の剛性を得ることが可能となる。例えば極板の厚さが0.5mmとして、表側の表層および裏側の表層の厚さを25μm〜160μm、中心層の厚さを450〜180μmとすることによって表層の機械的強度を確保し、極板の剛性を得ることが可能となる。
また、前記樹脂板の表側の表層および裏側の表層は半導電材料を練り込んだ樹脂であり、かつ中心層は半導電材料を練り込まない樹脂であることを特徴とする。半導電材料を練り込んだ樹脂で表層を形成することで10の7〜12乗Ω/□オーダーの表面抵抗率が得られる。また、半導電性材料を練り込まない樹脂で中心層を形成することで樹脂の機械的性質を損なわない樹脂層を得ることができ、高い剛性を確保することが可能となる。
また、前記半導電材料が酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体粒子であることを特徴とする。酸化スズは内部に酸素欠陥を有する構造において特に導電性を得ることが可能であるが、その時の導電機構は酸化スズ結晶中に余った電子が酸素欠陥部分を伝わるように移動することによって発現する。すなわち金属原子中の自由電子全てが結晶格子間をある程度自由に移動するのとは異なり一部の電子の移動によるものであるため、樹脂の中に分散させることによって10の7〜12乗Ω/□オーダーの表面抵抗率を容易に得ることができる。酸素欠陥によって導電性を得る他の材料として酸化亜鉛などがあるが、酸化亜鉛は酸およびアルカリに対する溶解度が大きいため使用可能なpHが6〜11と実用範囲が制限される。
一方酸化スズは酸やアルカリに対する耐久性が高いため様々な環境において適用範囲が広いという特徴を有する。また、酸化スズと酸化アンチモンの固溶体は高い導電性を有する。これは酸化スズの結晶中にアンチモンをドープすることによって単位結晶の共有結合の中において電子が一つ余り、この電子が結晶を伝わって移動するためである。酸化スズ単体の場合と同様に酸化アンチモンと酸化スズの固溶体を用いる場合においても金属における電子の自由移動と異なり、共有結合から余った電子が結晶格子中を移動する原理で導電性が得られるため、樹脂の中に分散させることによって10の7〜12乗Ω/□オーダーの表面抵抗率を容易に得ることができるが、酸化スズ単体と比べて樹脂中の含有率を低減することが可能であるという利点を有する。酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体を半導電材料として樹脂に練り込んだものを表層とし、中心層は半導電材料を練り込まずに樹脂のみとすることで、10の7〜12乗Ω/□オーダーの表面抵抗率を有しながら合成の高い極板を得ることができる。
前記半導電材料が、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体粒子より大きい粒子に酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体を添着したものであることを特徴とする。酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体は粒子状の物質であり、樹脂中において粒子同士が接触してネットワークを形成することによって半導電性が得られる。すなわち粒子同士が接触してさえいれば半導電性を得ることが可能であり、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体粒子よりも大きい粒子の表面に添着し、大きい粒子同士を接触させることによって半導電性が得られる。
例えばの粒子径が20nmの酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体粒子を粒子径が200nmの酸化チタン粒子に添着することによって、酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体粒子の使用量を低減することが可能となる。酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体粒子といった半導電性材料は比較的高価であり、空間を充填しながら酸化スズ、もしくは酸化スズと酸化アンチモンの固溶体粒子同士の接触を補助するフィラー効果を粒子径のより大きい酸化チタン粒子が担うことで半導電性材料のコストを低減することが可能となる。
また、前記半導電材料が、練り込むベース樹脂と同じ種類の樹脂ブロックと親水性樹脂ブロックとのブロックコポリマーであることを特徴とする。例えばポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィン樹脂を練り込み先のベース樹脂として用いる場合、ポリオレフィン樹脂ブロックと親水性樹脂ブロックとが交互に繰り返される配列を有するブロックコポリマーを半導電性材料として用いることにより、ベース樹脂との相溶性を確保してベース樹脂中に均一に配向させることが可能である。他のベース樹脂に対して相溶性を確保する場合、例えばベース樹脂をポリアミド樹脂とする場合はポリオレフィン樹脂ブロックをポリアミド樹脂ブロックに置き換えればよい。ここで半導電性を与えるのは親水性樹脂ブロックであり、カルボキシル基やアミノ基、水酸基といった親水基を有する。
親水基に結合した水分が乖離してOH−とH+になり、電荷を有するこれらのイオンが親水性樹脂ブロックを伝わることで10の7〜12乗Ω/□オーダーの表面抵抗率となるような半導電性を得る。ここでベース樹脂であるポリオレフィン樹脂ブロックには半導電性がないが、鎖状のブロックコポリマー同士がベース樹脂中で接触しているため、あるブロックコポリマー中の親水性樹脂ブロックを伝わる電荷が接触する隣のブロックコポリマー中の親水性樹脂ブロックに伝わることで樹脂の中を移動し、樹脂全体を半導電性とすることが可能となる。ここで、親水性樹脂ブロックとしてポリエチレングリコールやポリアセタールといったポリエーテル樹脂を用いると、低湿度といった水分が少ない環境においても半導電性が得られるという特徴を有する。ポリエーテル樹脂は樹脂骨格の主鎖に炭素と酸素の結合、すなわちポリエチレングリコールであれば(−C−C−O−)n、ポリアセタールであれば(−C−O−)nといったエーテル結合を規則的かつ連続的に有する構造となっている。
エーテル結合は炭素と酸素の電気陰性度の差により電気的な配向を有しており、2個の酸素原子によって正の電荷を引き寄せ、また、2個の炭素原子によって負の電荷を引き寄せる性質を持つ。このような特徴によって同様に電気的配向を内部に有する水分子を引き寄せる性質を有するが、あくまで電気的引力によるものであり水分子と分子結合を形成しないため、電場の力によって横に簡単に移動するという特徴を有する。すなわちポリエーテル樹脂はエーテル結合が連続的に長く延びた主鎖が電荷の伝わる導電路となるため、電荷を容易に伝えることができる。したがって低湿度環境といった僅かな電荷しかない環境でも半導電性を得ることが可能となる。また、金属イオンなどその他の電荷も主鎖を伝わって移動させることが可能であり、湿度に依存せずに表面抵抗率が10の7〜12乗Ω/□オーダーの半導電性を得ることができる。
また、前記ブロックコポリマーはアルカリ金属成分もしくはアルカリ土類金属成分を含むことを特徴とする。前述のとおりポリエーテル樹脂は金属イオンを容易に伝えることが可能である。リチウムやナトリウム、カリウムといったアルカリ金属成分やマグネシウム、カルシウムといったアルカリ土類金属成分は金属において質量が小さい部類に入り、かつイオン化しやすい性質を有する。そのため樹脂中を移動させる電荷として有用であり、ベース樹脂中のブロックコポリマーの含有率を小さくしても容易に半導電性である10の7〜12乗Ω/□オーダーの表面抵抗率を得ることが可能となる。
また、前記樹脂板の中心層、表側の表層および裏側の表層のうち、少なくとも中心層に難燃剤を含有させることを特徴とする。集塵作用によりカーボン粒子など導電性の高い粉塵が高圧電源の端子との接触部分を含めて樹脂板に大量かつ高密度に付着した場合、表面抵抗率が低下してスパークが発生しうる。その時流れる電流によってカーボン粒子が加熱して樹脂板を損傷する可能性があるが、樹脂板に難燃剤を含有させることによって電極の発火燃焼を防ぐことができる。ここで中心層は樹脂板全体の1/3以上の厚みを占めており、中心層および表層、もしくは少なくとも中心層に難燃剤を含有させることで上記効果が得られる。
難燃剤には大きく分類してハロゲン系、リン化合物系、金属水酸化物系とがある。ハロゲン系であればペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカンなどが、リン化合物系であればトリフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル、また、無機系であれば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムといった金属水酸化物が使用可能である。また、ハロゲン化合物の難燃性を高める難燃助剤として三酸化アンチモンや五酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物が有用である。
また、前記樹脂板の中心層、表側の表層および裏側の表層のうち、少なくとも中心層にガラス繊維もしくはマイカを含有させることを特徴とする。少なくとも中心層にガラス繊維もしくはマイカを含有させることで、樹脂板の剛性をより高めることが可能となる。
また、前記樹脂板は、複数層を送出可能なダイを用いて多層押出し成形して得られることを特徴とする。これまで述べてきた3層で構成される樹脂板は複数層を送出可能なダイを用いた多層押し出し成型によって連続的かつ自動的に得ることができる。一例として中心層を送出する中心層送出口、表層を送出する表側の表層送出口および裏側の表層送出口の3個の送出口をダイが有しており、ダイを加熱することで溶融した樹脂がダイのそれぞれの口から送り出される。樹脂は平面もしくは円筒状のプレートの上に送り出されると同時に冷却され、樹脂板となる。ダイから送出された直後は中心層、表側の表層および裏側の表層は溶融状態であり、それぞれの層の界面が溶着した後に冷却して固まることで3層を有する一枚の樹脂板が作成される。上記樹脂板を作成するために使用するダイとしては、溶融した樹脂を直線のノズルで最初に送り出し、その後横に広がるようにT字状に樹脂の通路が広がった形を有するT型ダイが一般的である。
また、前記樹脂板に、極板Aどうしが接触するように前記極板Aにスペーサー突起を設け、また、極板Bどうしが接触するように前記極板Bにスペーサー突起を設け、前記極板Aに設けられたスペーサー突起が前記極板Bに接触しないように、また前記極板Bに設けられたスペーサー突起が前記極板Aと接触しないように前記樹脂板に穴を設けることを特徴とする。例えば極板Aに面に対して垂直方向に例えば円筒状や半球状のスペーサー突起を設ける。そしてスペーサー突起は極板Bを通り越して次に積層される極板Aと接触する。通り越す際に極板Bが遮らないよう極板Bにスペーサー突起よりも大きい穴を設ける。極板Aに設けられたスペーサー突起が積層する隣の極板Bに設けられた穴の中を非接触状態で通って次に積層される極板Aと接触する。同様に極板Bにおいても面に対して垂直方向にスペーサー突起を設けて次の順に積層される極板Bと接触し、スペーサー突起を遮らないように極板Aにはスペーサー突起よりも大きい穴を設ける。極板Bに設けられたスペーサー突起が積層する隣の極板Aに設けられた穴の中を非接触状態で通って次に積層される極板Bと接触する。こうすることで極板A群と極板B群とが接触せずに、空間を設けながら極板Aおよび極板Bを交互に積層することができる。
また、真空成型、もしくは加熱加圧プレス成型により樹脂板にスペーサー突起を設けることを特徴とする。熱可塑性樹脂で構成された平板上の樹脂板を窪みが設けられた金型の上に置いた状態で予備加熱し、樹脂板を半溶融状態にした状態で金型の窪みに設けられた空気穴から吸引する。こうすることで平板だった樹脂板に、下方向に飛び出した窪みを設けることができる。また別の方法として、突起が設けられた金型の下で樹脂板を予備加熱し、半溶融状態にした樹脂板に金型を押し当ててプレス成型する。こうすることで平板だった樹脂板に、下方向に飛び出した窪みを設けることができる。樹脂板を裏返すと上に飛び出した中空状のスペーサー突起が得られる。このように真空成型もしくは加熱加圧プレス成型を行うことによって容易にスペーサー突起を設けることができる。
また、前記スペーサー突起の中心に貫通穴を設け、シャフトを挿入することを特徴とする。樹脂板に設けたスペーサー突起の中心に貫通穴を開け、貫通穴にシャフトを挿入する。シャフトは例えば樹脂板の積層体を囲む絶縁性の外枠に固定される。こうすることで樹脂板の積層体を強固に固定し、極板Aおよび極板Bの間隔を維持することが容易に行える。
また、一定間隔にスリットを設けたL字シャフトにスリットを設けた樹脂板を差し込んで積層することを特徴とする。例えば金属の板に等間隔にスリットを設け、強度を確保するためにL字に曲げる。スリットの幅は樹脂板が差し込めるだけの大きさを有する。また、樹脂板にもスリットを設け、L字シャフトのスリットと樹脂板のスリットとを十字にかみ合うように合致させる。樹脂板のスリットの幅はL字シャフトとかみ合えるようにするためにL字シャフトの板厚以上の大きさを有する。ちなみにL字シャフトは極板A用、極板B用をそれぞれ用意する。そしてL字シャフトを例えば絶縁性の外枠に固定する。こうすることによって極板Aおよび極板Bが一定の間隔を設けながら積層されると同時に動かないように固定される。したがって一定間隔を設けながら極板Aおよび極板Bを積層すると同時に極板Aおよび極板Bが接触しないよう固定することが容易に行える。また、L字シャフトを金属のような導電体で構成すれば極板への給電端子にもなる。極板Aを支えるL字シャフトおよび極板Bを支えるL字シャフトに高圧電源の出力端子を接続してそれぞれに異なる電圧を印加すれば極板Aおよび極板Bにそれぞれ異なる電圧を印加することが可能である。
また、前記L字シャフトが、導電材料を練り込んだ樹脂部品であることを特徴とする。樹脂板の積層間隔が小さい場合、金属の板にスリットを設ける加工がしにくくなる。そこでカーボンブラックなどの導電材料を練り込んだ熱可塑性樹脂、例えばカーボンブラック混練ポリプロピレンを加熱溶融してL字シャフトの成型金型に射出する。その後金型を取り外すといういわゆる射出成型によってL字シャフトが得られる。L字シャフトを極板A用、極板B用としてそれぞれ用意する。得られたL字シャフトはカーボンブラックが練り込まれており導電性を有するため、極板Aおよび極板Bそれぞれに対する給電端子として用いることが可能である。小さい間隔でスリットを設けるといった微細な加工が必要な場合、射出成型による樹脂部品で構成することによりL字シャフトを容易に得ることができる。
また、極板Aおよび極板Bに振動を与え、極板Aもしくは極板Bに付着した粉塵を除去することを特徴とする。大気中の粉塵を捕集し続けた場合、極板Aもしくは極板Bの少なくともどちらか一方の表面に捕集された粉塵が堆積する。堆積した粉塵は粉塵自体の重力や通過する空気の力などを受けて剥がれ落ち、下流側へ飛散する可能性がある。また、粉塵がさらに堆積し続ければ極板Aおよび極板Bの間に設けられた空間を埋めるほどに極板上に堆積し、目詰まりして処理すべき空気が流せない状態になる。極板Aおよび極板Bに振動を与えることによって極板上に堆積した粉塵を剥がし、例えば集塵部の下に設けた粉塵回収トレイに回収することで捕集した粉塵の下流側への飛散や目詰まりによる処理風量の低下といった不具合を解消することが可能である。
また、極板Aおよび極板Bに高風速の空気を当てて極板Aもしくは極板Bに付着した粉塵を除去することを特徴とする。極板Aもしくは極板Bに堆積した粉塵は、振動以外にも空気の噴流によっても払い落とすことが可能である。送風手段にノズルを接続して吐出風速を高めた空気を極板Aおよび極板Bに当てることによって堆積した粉塵を払い落とすことが可能である。
また、極板Aもしくは極板Bに付着した粉塵を除去する際に送風を停止することを特徴とする。集塵装置に処理空気を送り込むための送風手段が動作している状態で堆積した捕集粉塵を極板から払い落とすと、払い落とした粉塵が集塵装置の下流側へそのまま流れてしまい、清浄空気として送り出されるべき下流側の空気が汚れてしまう。例えば制御回路によって、捕集した粉塵を極板から除去する手段を動作させる際に連動して送風手段を停止させるように制御することによって、下流側の空気を汚すのを防ぐことができる。
また、集塵装置の上流側および下流側の少なくともどちらか一方にシャッターを設け、粉塵を除去する際に前記シャッターを閉じることを特徴とする。例えば制御回路によって、捕集されて極板に付着した粉塵を除去する手段を動作させる際に集塵装置の上流側もしくは下流側に設けたシャッターが連動して閉じるように制御することで、集塵装置の下流側に汚れた空気を流さないようにすることが可能である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
中心層2と表側に設けられた表層3および裏側に設けられた表層3の3層からなる樹脂板1を図1に示す。中心層2はポリプロピレンやポリスチレンなどの樹脂で形成されており、基本的に絶縁性を有する。表および裏側に設けられた表層3はポリプロピレンやポリスチレンなどの樹脂に導電性材料を練り込んで形成されている。ここで半導電材料として酸化スズと酸化アンチモンの固溶体粒子(アンチモンドープ酸化スズ粒子、以下ATO粒子という)を用いて形成した表層の模式図を図2に示す。なお、樹脂板1の表側は樹脂板1の一方側であり、樹脂板1の裏側は樹脂板1の他方側である。
また、半導電材料の別の例として練り込む先の樹脂と同じ種類の樹脂成分およびポリエーテル骨格を有する樹脂成分とのブロックコポリマーを用いて形成した表層3の模式図を図3に示す。図2に示すように、ATO粒子5は熱可塑性のベース樹脂(ここでは例えとしてポリプロピレン樹脂4とする)を加熱溶融して混合することよってポリプロピレン樹脂4の中に分散しており、ATO粒子5どうしは数珠繋ぎの状態でつながっている。
ATO粒子5はポリプロピレン樹脂4によって固定化されているため粉落ちしたり、また、洗浄によって洗い流されたりすることがない。ATO粒子5どうしが適度につながることによって表層は10の7〜12乗Ω/□オーダーの表面抵抗率となる。また、図3にはベース樹脂であるポリプロピレン樹脂4と同じ種類のポリオレフィン樹脂ブロック6およびポリエーテル樹脂ブロック7(例えばポリエチレングリコールやポリアセタールなど)が交互に配列したポリオレフィン−ポリエーテルブロックコポリマー8をベース樹脂となるポリプロピレン樹脂4と一緒に加熱溶融して混合分散させた表層の内部を示している。ポリオレフィン−ポリエーテルブロックコポリマー8はポリプロピレン樹脂4の中に糸状に分散しており、電荷伝導性を有するポリエーテル樹脂ブロック7どうしが分子レベルの大きさで接触しているため、10の7〜12乗Ω/□オーダーの表面抵抗率を有した表層3となっている。
表層3は引っ掻きなどの物理的衝撃によって剥がれ落ちない程度かつ樹脂板の強度を確保できるだけの厚さを有していることが好ましく、樹脂板1の総厚さが例えば1mmであれば、表層3は25〜350μm程度が厚さとして好ましい。また、中心層2および表層3に必要に応じてハロゲン系、リン化合物系、金属水酸化物系の難燃剤を添加することで樹脂板に難燃性を付与することが可能である。同様に中心層2および表層3に必要に応じてガラス繊維やマイカを添加することで樹脂板1に更なる剛性を付与することが可能である。
(実施の形態2)
実施の形態1と同一部分は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1に示した樹脂板1を、異なる電圧が印加される極板A9および極板B13として用いた集塵部14を図6に示す。また、極板A9の模式図を図4に、極板B13の模式図を図5に示す。
図4および5に示すように極板A9および極板B13には極板A9どうしが接触するようにスペーサー突起10が設けられ、また、極板B13どうしが接触するようにスペーサー突起10が設けられ、極板A9に設けられたスペーサー突起10が極板A9の隣で積層する極板B13に接触しないように、また、極板B13に設けられたスペーサー突起10が極板B13の隣で積層する極板A9と接触しないように穴としてのスペーサー非接触孔12がそれぞれの極板に設けられ、スペーサー突起10が接触しないようにスペーサー非接触孔12の中を通っている。この極板A9および極板B13を積層することで図6に示すように極板A9と極板B13とが接触しない集塵部14を得ることが可能である。
極板A9および極板B13にはスペーサー突起10の中心を貫通するようにスペーサー貫通孔11が設けられており、スペーサー貫通孔11を貫通するように導電性シャフト15が設けられている。極板A9および極板B13それぞれに設けられたスペーサー貫通孔11を貫通するそれぞれの導電性シャフト15に高圧電源16を用いて異なる電圧を印加すると、導電性シャフト15を通じて極板A9および極板B13それぞれの表層3に電圧が印加される。異なる電圧が印加された極板A9および極板B13それぞれの表層3の間に設けられた空間には電場が形成され、帯電した粉塵はその電場によってクーロン力を受け、極板A9もしくは極板B13のどちらかの表層3に付着し、捕集される。
(実施の形態3)
実施の形態1または2と同一部分は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1に記載した樹脂板1を極板A9および極板B13として用い、極板スリット17を設けた極板Aを図7に、また、同様に極板スリット17を設けた極板B13を図8に示す。
極板B13は極板A9を左右もしくは上下をひっくり返した場合と同じ形状となっており、極板A9を固定するL字スペーサー18と極板B13とが接触しないよう、また、極板B13を固定するL字スペーサー18と極板A9とが接触しないように湾曲部を有する形状となっている。また、極板A9および極板B13を支えるL字スペーサー18を図9に示す。L字スペーサー18は一定の間隔でL字スペーサー用スリット19が設けられている。L字スペーサーは極板の保持だけでなく端子の役割も兼ねることが可能であるため、その場合金属など導電性を有するものであることが好ましい。もしくは樹脂にカーボンブラックなど導電性材料を添加した導電性プラスチックを材質として用いることも可能である。その場合、導電性プラスチックを射出成型機などで成型してL字スペーサーの形を得る。
極板Aおよび極板BおよびL字スペーサーを用いて組んだ集塵部14を図10に示す。図10に示すように極板A9およびL字スペーサー18どうしのスリットをかみ合わせ、L字スペーサー18をネジなどでフレーム20に取り付けることで極板A9が動かないように固定している。同様に極板B13も別途用意したL字スペーサー18で固定することで、図10に示すように一定の間隔を開けながら交互に積層された状態で極板Aおよび極板Bとが固定された集塵部14を形成している。
極板A9および極板B13それぞれの表層3とL字スペーサー18とはスリットどうしのかみ合わせによって接触しているため、L字スペーサー18に電圧を印加することで極板A9および極板B13に異なる電圧を印加することができる。したがって極板A9の表層3と極板B13の表層3の間に設けられた空間には電場が設けられており、帯電した粉塵を電場のクーロン力によって捕集することが可能な集塵部14となっている。ここで多層成型可能なT型ダイを有する押出し成型機によってポリプロピレン樹脂(略称PP)と耐衝撃性ポリスチレン樹脂(略称HIPS)とを50対50でブレンドしたものを加熱押出し成型してT型ダイから送り出して中心層2を形成し、同時にポリプロピレン樹脂および半導電性材料を適切な配合率でブレンドしたものを同様に加熱押出し成型して中心層2と同時に送出して表層3を形成する。
そして中心層2と表層3がともに溶融状態のうちに貼り合わせて自然冷却することで表側の表層3−中心層2−裏側の表層3の3層を有する樹脂板1を作成した。半導電材料はATO粒子5を添着した酸化チタン粒子(平均1次粒子径0.3μm)およびアルカリ金属を添加したポリオレフィン−ポリエーテルブロックコポリマー8の2種類を用いて樹脂板1の試作を行った。ATO粒子5を添着した酸化チタン粒子を半導電材料に用いたものを試作板C、アルカリ金属を添加したポリオレフィン−ポリエーテルブロックコポリマー8を半導電材料に用いたものを試作板Dとした。
比較対象としてアルカリ金属を添加したポリオレフィン−ポリエーテルブロックコポリマー8のみで押し出し成型を行った中心層2の一層のみを有する樹脂板1も作成した。これを試作板Eとした。試作した樹脂板1の表層3の厚さは25μmで、かつ樹脂板1の総厚さは全て1mmとした。試作板CおよびDを用いて図7および8に示した形状で極板A9および極板B13を作成し、図10と同様の集塵部14を試作板CおよびDそれぞれを用いて作成して集塵効率の評価を行った。この時に使用した帯電部25を図13に、放電極板22を図11に、アース極板24を図12に示す。図11に示すように放電極板22は金属板に複数の針電極23が溶接などで接合された構造となっている。放電極板22とアース極板24に異なる電圧を印加して高い電位差を与えることで針電極23の先端からコロナ放電が起こり、それに伴うイオンの発生によって通過する空気中に含まれる粉塵は帯電する。集塵部および帯電部の開口寸法を幅100mm×高さ80mmにして作成した。ちなみに評価の際には放電極板22の針電極23の針先とアース極板24との距離は20mmとした。
集塵効率を測定する際には図14に示すように上流側から帯電部25、集塵部14、送風機27の順で集塵装置を構成し、送風機を運転することによって集塵装置に空気を流した。そして風速2m/s、極板A9および放電極板22の印加電圧−6kV、極板B13およびアース極板24の印加電圧0kV、極板A9と極板B13との間隔5mm、極板A9および極板B13の通風方向26の寸法250mm、帯電部25の放電電流50μAの条件で空気中の0.3μm以上の粒子径を有する粉塵の個数濃度をレーザーパーティクルカウンターで測定し、以下の算出式を用いて算出した。
集塵効率(%)=(1−(帯電部上流側の粉塵濃度)/(集塵部下流側の粉塵濃度))×100
また、極板A9と極板B13とを接触させた場合にスパークが発生するかどうかを確認した。また、試作板C、DおよびEの強度を調べるためにそれぞれの試作板を幅80mm×奥行60mmに切り出して(厚さは全て1mm)、幅5mm×奥行60mmの梁を幅60mmの間隔で2つ設置してその上にそれぞれの試作板を置いて両持梁の状態とし、幅5mm×奥行60mmの面を有する金属板を樹脂板の中心に押し当てて2mm撓む時の荷重の測定を行った。結果を表1に示す。表1に本発明の実施の形態3の集塵効率の測定結果を示す。
この結果、試作板Cおよび試作板Dそれぞれを用いて作成した集塵装置はスパークが発生せず、かつ集塵効率は90%と十分に高い値を有することがわかった。また、アルカリ金属を添加したポリオレフィン−ポリエーテルブロックコポリマー8のみで押し出し成型を行った中心層2の一層のみを有する試作板Eと比較して、ポリプロピレン樹脂と耐衝撃性ポリスチレン樹脂を50:50でブレンドした樹脂を中心層2とし、半導電材料をポリプロピレン樹脂に混合分散した表層3を表裏に有する試作板CおよびDのたわみ荷重は3倍以上ある結果となり、高い剛性が得られることがわかった。
(実施の形態4)
実施の形態1乃至3のいずれかと同一部分は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。集塵部14で捕集して極板A9および極板B13に堆積した粉塵を掻き落とし爪28によってゴミトレイ21に回収する集塵部14を図16に示す。
極板A9および極板B13に接触する掻き落とし爪28を集塵部の上部に設け、爪移動ベルト29によって極板A9および極板B13に振動を与えるように掻き落とし爪28を移動させる。掻き落とし爪28は極板A9および極板B13に引っかかる位置に置かれており、爪移動ベルト29によって極板の積層方向と同じ方向に掻き落とし爪28を移動させることで極板A9と極板B13に振動を与え、堆積した粉塵を極板A9および極板B13から払い落とす。
払い落とされた粉塵は重力によって沈降し、集塵部14の下部に設けられたゴミトレイ21に回収される。ゴミトレイ21に溜まった粉塵は定期的に取り出して廃棄する。極板に粉塵が堆積することによって起こりうる通風量の低下、集塵部14から下流側への堆積粉塵の飛散、または極板どうしが堆積粉塵によって物理的につながってしまうことによる極板の表面電位差の低下による集塵効率の低下といった不具合を、粉塵を払い落とすことで防ぐことが可能となる。
(実施の形態5)
実施の形態1乃至4のいずれかと同一部分は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。集塵部14で捕集して極板A9および極板B13に堆積した粉塵を空気噴出装置30によってゴミトレイ21に回収する集塵部14を図17に示す。
図17に示すように空気噴出装置30は単一もしくは複数の空気噴出孔31を備える。そして図18に示すように空気噴出装置30は集塵部14の上部に設けられる。そして噴出装置移動ベルト32によって集塵部14の上部をくまなく移動し、空気噴出孔31から出される高風速の空気を極板A9および極板B13に吹き付ける。そして極板A9および極板B13に堆積した粉塵を払い落とす。
払い落とされた粉塵はしばらく空気中を漂うがそのうち重力によって沈降し、集塵部14の下部に設けられたゴミトレイ21に回収される。ゴミトレイ21に溜まった粉塵は定期的に取り出して廃棄する。極板に粉塵が堆積することによって起こりうる通風量の低下、集塵部14から下流側への堆積粉塵の飛散、または極板どうしが堆積粉塵によって物理的につながってしまうことによる極板の表面電位差の低下による集塵効率の低下といった不具合を、粉塵を払い落とすことで防ぐことが可能となる。
(実施の形態6)
実施の形態1乃至5のいずれかと同一部分は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。粉塵を極板から払い落とす粉塵回収機構33を動作させる粉塵回収ボタン35と、それに連動して送風機を停止させる制御装置34を備えた集塵装置を図19に示す。
粉塵回収ボタン35を押すと、実施の形態4および5に記載したような粉塵回収機構33が動作して粉塵を極板A9および極板B13から払い落とす。そして粉塵回収機構33が動作するのと同時に送風機27が停止する。そして、粉塵回収機構33が一定時間動作、粉塵を払い落とす時間、例えば3分程度動作した後に粉塵回収機構33が停止するのと同時に送風機27が運転を再開する。粉塵回収機構33が動作している時に送風機27が動いていると、極板から払い落とされた粉塵が重力によって沈降してゴミトレイ21にまで到達する前に送風機27によって下流側に搬送されてしまい、室内などに粉塵を撒き散らすことになる。そこで粉塵回収機構33を動作させている間は送風機27を停止させることで室内への粉塵の飛散を防ぐことが可能となる。
(実施の形態7)
実施の形態1乃至6のいずれかと同一部分は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。粉塵を極板から払い落とす粉塵回収機構33を動作させる粉塵回収ボタン35と、それに連動して送風機27を停止させ、かつ上流側および下流側に設けたシャッター36を閉める制御装置34を備えた集塵装置を図20に示す。
粉塵回収ボタン35を押すと、実施の形態4および5に記載したような粉塵回収機構33が動作して粉塵を極板A9および極板B13から払い落とす。そして粉塵回収機構33が動作するのと同時に送風機27が停止し、かつシャッター36が閉められる。そして、一定時間動作した後に粉塵回収機構33が停止するのと同時に送風機27が運転を開始し、シャッター36が開かれる。粉塵回収機構33が動作している時に集塵装置が通風できる状態であると、極板から払い落とされた粉塵が重力によって沈降してゴミトレイ21にまで到達する前に下流側に搬送されてしまい、室内などに粉塵を撒き散らすことになる。そこで粉塵回収機構33を動作させている間は送風機27を停止し、そして上流側および下流側に設けたシャッター36を閉めることで室内への粉塵の飛散を防ぐことが可能となる。