JP5475175B1 - 遮水層の位置判定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】遮水壁の構築に先行して遮水層の位置を判定する遮水層の位置判定方法において、地盤1を先行削孔する削孔機10の貫入深度における削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値とを設定時間経過毎に計測する段階と、前記設定時間経過毎の計測値を移動平均処理した後の前記削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値との関係をプロットする段階と、前記プロットした点を、複数層をなす各地層の種類に応じて経時的に異なる挙動を示す領域毎に大別し、各領域の境界に位置するプロット点における、経時的に最も遅い領域へ遷移するプロット点に対応する削孔機10の貫入深度を遮水層Sの位置と判定する段階とからなる。
【選択図】図1
Description
そこで、従来は、アースオーガー等の削孔機による削孔完了後にオーガーを引き抜き、オーガーの刃先に付着した土塊を目視確認するという漠然とした経験と勘に頼った方法により遮水層の位置を管理していた。
しかし、この手法によると、削孔機による削孔施工中にオーガーが遮水層へ到達したか否かを判断できず、これに伴い根入れ長の管理も正確に行えないという問題があった。
この発明によれば、削孔データとして削孔機の電流値及び吊荷重の解析値から直ちに基盤面を判定することができる旨の記載が認められる(同文献1の段落[0013]等参照)。
一方、遮水層(不透水層)とは、粘土層など、透水性が低い層であればよく、地層(地盤)の硬軟とは無関係である。
よって、特許文献1にかかる発明では、遮水層の位置を判定できなかった。
上層が未固結状の石灰岩で、下層が遮水層の上下二層構造からなる地盤を先行削孔する削孔機の貫入深度における削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値とを設定時間経過毎に計測する段階と、
前記設定時間経過毎の計測値を移動平均処理した後の前記削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値との関係をプロットする段階と、
前記プロットした点を、前記上層の未固結状の石灰岩にかかるプロットした点は、領域内全体で、おおよそ負の相関関係を形成するような挙動を示すことをもとに、経時的に異なる挙動を示す領域毎に大別し、各領域の境界に位置するプロット点における、経時的に最も遅い領域へ遷移するプロット点に対応する削孔機の貫入深度を遮水層の位置と判定する段階と、からなることを特徴とする。
請求項2に記載した発明に係る遮水層の位置判定方法は、遮水壁の構築に先行して遮水層の位置を判定する遮水層の位置判定方法において、
上層が未固結状の石灰岩で、中層が固結状の石灰岩で、下層が遮水層の上下三層構造からなる地盤を先行削孔する削孔機の貫入深度における削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値とを設定時間経過毎に計測する段階と、
前記設定時間経過毎の計測値を移動平均処理した後の前記削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値との関係をプロットする段階と、
前記プロットした点を、前記上層の未固結状の石灰岩にかかる前記プロットした点は、領域内全体で、おおよそ負の相関関係を形成するような挙動を示すことをもとに、経時的に異なる挙動を示す領域毎に大別し、各領域の境界に位置するプロット点における、経時的に最も遅い領域へ遷移するプロット点に対応する削孔機の貫入深度を遮水層の位置と判定する段階と、からなることを特徴とする。
よって、その後に行う遮水壁の構築にあたり、地盤改良処理機の攪拌掘削軸の先端が遮水層へ有効に到達しているか否かを確認するいわゆる着底管理に有効利用することができる。
また、本発明によれば、遮水層に限らず、中間層に位置する固結状の石灰岩等の位置や空洞部の位置も判定することができる。
要するに、この発明は、遮水壁の構築にあたり、改良処理する対象地盤(岩盤)1が硬質のため、地盤改良処理機では直接地盤改良できない又はラップ精度を保てない場合に、先ず、削孔機10でフレッシュな硬質地盤を砕く必要がある施工に好適に実施される。
具体的に、本発明は、アースオーガー等の削孔機10による削孔データを解析して遮水層Sの位置をリアルタイムに判定する。当該解析する削孔データは、削孔機10の貫入深度における削孔軸の吊荷重値と減速機(回転モータ)の負荷電流値とする。
前記削孔データは、削孔機10に搭載した各種計測器を介して計測室のコンピュータに画面表示される。前記貫入深度とは、GL(地盤高)を指す場合とEL(標高)を指す場合とがある。
前記所定の深度(ケーシング12の長さ寸法)、およびオーガー11の継ぎ足し寸法は、予め発注者から提供された地質調査(ボーリングデータ)等に基づいて設定する。ちなみに本実施例1、2では一例として、前記地質調査に基づき、遮水層Sの位置が深度20〜35mの範囲内にあると予測し、前記ケーシング12の長さ寸法を20mとし、前記オーガー11の継ぎ足し寸法を15mとした。削孔機10の貫入速度は約0.3m/毎分とした。
以下、本発明にかかる遮水層の位置判定方法の実施例について詳しく説明する。
前記遮水層Sの位置を判定する方法は、先ず、前記段落[0016]で説明した手順にしたがい、地盤1を先行削孔する削孔機10の貫入深度における削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値とを設定時間(本実施例では1秒)経過毎に計測する。
前記計測した削孔データ(生データ)を図3に示す。
図3Aは、時間(時刻)の経過(横軸)とオーガー11の削孔深度(縦軸)との関係を示したグラフである。
図3Bは、オーガー11の削孔深度(横軸)と削孔軸の吊荷重値(縦軸)との関係を示したグラフである。
図3Cは、オーガー11の削孔深度(横軸)と減速機の負荷電流値(縦軸)との関係を示したグラフである。
参考のため、図6Aは、この生データの段階で、削孔機10の貫入深度における削孔軸の吊荷重値(縦軸)と減速機の負荷電流値(横軸)との関係をプロットしたグラフである。
前記トリミング処理した後の削孔データを図4に示す。この図4A〜Cはそれぞれ、前記図3A〜Cに対応している。
参考のため、図6Bは、このトリミング処理した段階で、削孔機10の貫入深度における削孔軸の吊荷重値(縦軸)と減速機の負荷電流値(横軸)との関係をプロットしたグラフである。
前記移動平均処理した削孔データを図5に示す。
図5Aは、オーガー11の削孔深度(横軸)と削孔軸の吊荷重値(縦軸)との関係を示したグラフである。
図5Bは、オーガー11の削孔深度(横軸)と減速機の負荷電流値(縦軸)との関係を示したグラフである。
図5Cは、図5Aと図5Bとを合成したグラフである。
前記図6Cにかかるプロットした点の集合体(プロット群)は、前記図6A(生データ段階)や図6B(トリミング処理段階)にかかるプロット群と比し、明らかに、経時的に異なる挙動を示す2つの領域が現れていることがわかる。
前記2つの領域は、経時的に、おおよそ負の相関関係を形成するような挙動を示す領域Xと、おおよそ正の相関関係を形成するような挙動を示す領域Yとに大別される。
そこで本出願人は、前記領域Xが未固結状の石灰岩(未固結で砂礫状の琉球石灰岩)であり、領域Yが遮水層(島尻泥岩)Sであり、該2つの領域X、Yの境界に位置するプロット点Pが両者の境界点、すなわち遮水層Sの上面位置(位置)の可能性が高いと推定した。
その主な根拠として、遮水層(島尻泥岩)Sは、いわゆる粘土層であるため、前記未固結状の石灰岩と比し、オーガー12の刃先が滑り(踊り)やすくて噛み込みが安定しない場合が比較的多く、余分な負荷電流値がかかるので、これが両者の挙動が異なる要因の1つと考えられるからである。
図8のボーリングデータ中、実測値は3列目の24.121m(EL)である。他の列のデータは該実測値からの距離等を考慮した補整値である。
本実施例1は、前記実側値24.121m(EL)に対応する地盤について行った。その結果、図7のプロット点Pに対応する削孔機10の貫入深度は、24.06m(EL)であり、前記ボーリングデータとの誤差は6cm程度に過ぎない。
そこで、本出願人は、前記移動時間処理した後の前記吊荷重値と負荷電流値との関係をプロットした点(図7参照)を、複数層をなす各地層の種類(層数)に応じて経時的に異なる挙動を示す領域毎(本実施例1ではX、Y)に大別し、各領域(X、Y)の境界に位置するプロット点(本実施例1ではP)における、経時的に最も遅い領域(Y)へ遷移するプロット点(P)に対応する削孔機10の貫入深度を遮水層Sの位置として判定してよいと確信した。
より具体的には、前記プロットした点を、経時的に、おおよそ負の相関関係を形成するような挙動を示す第1領域(X)のプロット群と、他の第2領域(Y)のプロット群とに大別し、前記第1領域(X)のプロット群から第2領域(Y)のプロット群へ遷移する点(P)に対応する削孔機10の貫入深度を遮水層Sの位置として判定してよいと確信した。
このプロット点Pは、実際には、計測室のコンピュータに画面表示されるプロット群に基づき作業員が目視判定することになるが、経時的に画面表示されるプロット点の挙動を作業員がリアルタイムにチェックしつつ目視判定することが好ましい。
すなわち、実施例1にかかる図3〜図5に対応するグラフは省略するが、図9A、Bはそれぞれ、前記対象地盤1の異なる地点で、地盤1を先行削孔する削孔機10の貫入深度における削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値とを設定時間(1秒)経過毎に計測し、次にトリミング処理し、次に移動平均処理(30秒毎)した前記削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値との関係をプロットしたものである。
ちなみに、図9Aは、図8中の1列目のデータに対応し、図9Bは、同5列目のデータに対応する。
図9AのP1、図9BのP2はそれぞれ、おおよそ負の相関関係を形成するような挙動を示す第1領域のプロット群から他の第2領域のプロット群へ遷移する基点となるプロット点を示す。このプロット点P1、P2に対応する削孔機10の貫入深度はそれぞれ、24.23m(EL)、24.08m(EL)であり、これを図8中に記す。この値(EL値)と図8中のボーリングデータとを対比検討すると、その誤差は、図9Aについては20.2cm、また、図9Bについては1.7cmに過ぎず、非常に精度の高い結果を得ることができた。
したがって、本出願人は、前記プロット点P1、P2が、遮水層Sの位置(上面位置)と判定してよいと確信した。
すなわち、地盤1を先行削孔する削孔機10の貫入深度における削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値とを設定時間(1秒)経過毎に計測し、次にトリミング処理し、次に移動平均処理(30秒毎)した前記削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値との関係をプロットする。本実施例2では、図10A〜Cに示すように、3つの削孔地点にかかる削孔データを取得した。
前記Lの領域は、経時的に、おおよそ負の相関関係を形成するような挙動を示す特徴がある。前記Nの領域は、経時的に、おおよそ正(又は負)の相関関係を形成するような挙動を示す特徴がある。その間の前記Mの領域は、他層に比して層厚が薄いこともあり、経時的に短時間で、おおよそ弧状(カーブ)を形成するような挙動を示す特徴がある。
前記特徴点を踏まえ、作業員が目視判定する際には、通常、おおよそ負の相関関係を形成するような挙動を示す領域Lと、該領域Lから時間をあけて(タイムラグ)、おおよそ正(又は負)の相関関係を形成するような挙動を示す領域Nとを把握し、該領域Lと領域Nとの間の短時間で形成される領域Mを把握する。
なお、前記領域Lと領域Nには、前記図7、図9と同様に便宜上、おおよその傾向を示す直線をグラフに加筆している。
図11のボーリングデータ中、実測値は3列目の23.233m(EL)であり、他の列のデータは該実測値からの距離等を考慮した補整値である。
図10Aのプロット点Q1に対応する削孔機10の貫入深度は、23.16m(EL)であり、前記ボーリングデータ(23.296m)との誤差は13.6cm程度に過ぎない。
図10Bのプロット点Q2に対応する削孔機10の貫入深度は、23.63m(EL)であり、前記ボーリングデータ(23.373m)との誤差は25.7cm程度に過ぎない。
図10Cのプロット点Q3に対応する削孔機10の貫入深度は、23.43m(EL)であり、前記ボーリングデータ(23.420m)との誤差は1.0cm程度に過ぎない。
そこで、本出願人は、前記移動時間処理した後の前記吊荷重値と負荷電流値との関係をプロットした点(図10A〜C参照)を、複数層をなす各地層の種類(層数)に応じて経時的に異なる挙動を示す領域毎(図10AについてL、M、N)に大別し、各領域(L、M、N)の境界に位置するプロット点(図10AについてS1、Q1)における、経時的に最も遅い領域(N)へ遷移するプロット点(Q1)に対応する削孔機10の貫入深度を遮水層Sの(上面)位置として判定してよいと確信した。
このプロット点Q1(〜Q3)は、実際には、計測室のコンピュータに画面表示されるプロット群に基づき作業員が目視判定することになるが、経時的に画面表示されるプロット点の挙動を作業員がリアルタイムにチェックしつつ目視判定することが好ましい。
例えば、本実施例1、2では、前記削孔データを計測する設定時間を1秒で実施しているが、2秒以上でもよく、地盤性状等に応じて適宜設計変更可能である。
また、移動平均処理時間を30秒に設定して実施しているが地盤性状等に応じて適宜設計変更可能である。即ち、削孔データをプロットした点の挙動が領域毎に大別できる程度に現れるのであれば、適宜、移動平均処理間隔を設定できる。
さらに、トリミング処理は、削孔データが重複しない場合や、前記プロット点の挙動が判定可能に表れる場合は省略することもできる。
その他、前記ケーシング12の長さ寸法や前記オーガー11の継ぎ足し寸法は、事前に入手したボーリングデータに応じて適宜設計変更可能である。削孔機10の貫入速度も約0.3m/毎分に限定されるものではなく、地盤性状に応じて適宜設計変更可能である。
S 遮水層
10 削孔機
11 オーガー
12 ケーシング
Claims (4)
- 遮水壁の構築に先行して遮水層の位置を判定する遮水層の位置判定方法において、
上層が未固結状の石灰岩で、下層が遮水層の上下二層構造からなる地盤を先行削孔する削孔機の貫入深度における削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値とを設定時間経過毎に計測する段階と、
前記設定時間経過毎の計測値を移動平均処理した後の前記削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値との関係をプロットする段階と、
前記プロットした点を、前記上層の未固結状の石灰岩にかかるプロットした点は、領域内全体で、おおよそ負の相関関係を形成するような挙動を示すことをもとに、経時的に異なる挙動を示す領域毎に大別し、各領域の境界に位置するプロット点における、経時的に最も遅い領域へ遷移するプロット点に対応する削孔機の貫入深度を遮水層の位置と判定する段階と、からなることを特徴とする、遮水層の位置判定方法。 - 遮水壁の構築に先行して遮水層の位置を判定する遮水層の位置判定方法において、
上層が未固結状の石灰岩で、中層が固結状の石灰岩で、下層が遮水層の上下三層構造からなる地盤を先行削孔する削孔機の貫入深度における削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値とを設定時間経過毎に計測する段階と、
前記設定時間経過毎の計測値を移動平均処理した後の前記削孔軸の吊荷重値と減速機の負荷電流値との関係をプロットする段階と、
前記プロットした点を、前記上層の未固結状の石灰岩にかかる前記プロットした点は、領域内全体で、おおよそ負の相関関係を形成するような挙動を示すことをもとに、経時的に異なる挙動を示す領域毎に大別し、各領域の境界に位置するプロット点における、経時的に最も遅い領域へ遷移するプロット点に対応する削孔機の貫入深度を遮水層の位置と判定する段階と、からなることを特徴とする、遮水層の位置判定方法。 - 前記設定時間経過毎の計測値について、前記移動平均処理を行う前に、一時的な削孔軸の引き上げに伴う計測値を取り除き、削孔軸の削孔時のみの計測値を抽出するトリミング処理を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載した遮水層の位置判定方法。
- 前記地盤は空洞部を含み、該空洞部にかかる前記プロットした点は、領域内全体で、前記削孔軸の吊荷重値が、減速機の負荷電流値の大きさに拘わらずほぼ一定の挙動を示すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した遮水層の位置判定方法。
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