しかしながら、特許文献6の面状発熱体では、抵抗値を調整するために、適当な数の発熱回路をカットするため、カットされるつまり使用されない発熱回路をもともと基板に複数設ける必要がある。また、特許文献7のヒータでは、所望の抵抗値を得るために、ひとつの発熱抵抗体を選択して使用するが、所望の抵抗値ではないつまり選択されない発熱抵抗体を基板に複数設ける必要がある。このように、従来では、使用された場合には発熱用のメインの抵抗体となるが、使用されない場合もある抵抗体を絶縁基板に設けなければならない。そのため、絶縁基板のサイズが不必要に大型化してしまうといった課題がある。本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、抵抗体を設ける絶縁基板のサイズを不必要に大型化することなく、抵抗値を所望の値に調整可能なヒータ、及びこのヒータを用いた定着装置及び帯電装置、並びにこの定着装置あるいは帯電装置を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明のヒータは、上記課題を解決するために、絶縁基板上または絶縁基板内に通電により発熱する抵抗体と前記抵抗体に給電するための給電端子部とを備えたヒータにおいて、前記抵抗体は、主抵抗体と調整用抵抗体とを備え、前記主抵抗体は、少なくとも当該ヒータ使用時に前記給電端子部と電気的接続されるものであり、前記調整用抵抗体は、前記主抵抗体に任意に電気的接続が可能あるいは前記主抵抗体から任意に電気的切断が可能なものであることを特徴としている。
上記構成によると、抵抗体は、ヒータ使用時に前記給電端子部と電気的接続される主抵抗体とは別に、この主抵抗体に任意に電気的接続が可能あるいはこの主抵抗体から任意に電気的切断が可能な調整用抵抗体を備えている。よって、抵抗体の抵抗値を、主抵抗体に対する調整用抵抗体の電気的接続あるいは電気的切断を行うことで調整することができる。そのため、抵抗体の抵抗値のばらつきが所定値(許容範囲)を超えた場合は、調整用抵抗体の調整により、抵抗ばらつきを所定値以下(許容範囲内)に修正することができる。
ここで、従来では、使用された場合には発熱用のメインの抵抗体となるが、使用されない場合もある抵抗体を絶縁基板に設けなければならなかった。そのため、絶縁基板のサイズが不必要に大型化してしまっていた。しかし、本発明の上記構成によると、主抵抗体とは別に調整用抵抗体が設けられており、抵抗値の調整は調整用抵抗体で行われる。そして、主抵抗体は、少なくともヒータ使用時に前記給電端子部と電気的接続され、つまり、ヒータ使用時に主抵抗体は必ず使用される。よって、使用された場合には発熱用のメインの抵抗体となるが、使用されない場合もある抵抗体を設ける必要がなく、さらにこの抵抗体を設ける基板のスペースを確保する必要がない。よって、絶縁基板のサイズの大型化、引いてはヒータの大型化を抑制することができる。
本発明のヒータでは、上記構成に加え、前記調整用抵抗体は、各々抵抗値の異なる複数の帯状抵抗体を有し、これら複数の帯状抵抗体の任意の組み合わせにて前記主抵抗体に電気的接続あるいは前記主抵抗体から電気的切断可能に設けられていてもよい。
上記構成によると、各々抵抗値が異なる複数の帯状抵抗体の任意の組み合わせにて、主抵抗体に電気的接続あるいは主抵抗体から電気的切断することができる。よって、少ない数の抵抗体(帯状抵抗体)で精度の高い抵抗調整を行うことができる。
本発明のヒータでは、上記構成に加え、前記調整用抵抗体は前記主抵抗体に直列接続し、前記複数の帯状抵抗体はそれぞれが互いに並列接続して設けられていてもよい。
上記構成によると、それぞれが互いに並列接続して設けられた複数の帯状抵抗体から成る調整用抵抗体は、前記主抵抗体に直列接続しているため、ヒータ使用時には、複数の帯状抵抗体の少なくとも1つは主抵抗体に電気的接続されることになる。よって、常に帯状発熱体が使用されないということはなく、絶縁基板における無駄なスペースが発生しにくい構成とすることができる。
本発明のヒータでは、上記構成に加え、前記複数の帯状抵抗体は、いずれも前記発熱抵抗体と同じ材料から成り、かつ、いずれも前記発熱抵抗体の断面積以上の断面積を有してもよい。
帯状抵抗体を発熱抵抗体と同じ材料で構成し、更に発熱抵抗体の断面積より小さい断面積の帯状抵抗体がある場合、この帯状抵抗体のみを残すように抵抗調整すると、電流密度が大きくなりすぎて帯状抵抗体が断線してしまう危険性がある。そこで、上記構成により、いずれの帯状抵抗体についても、発熱抵抗体と同等以上の断面積に設定すれば、上記のような危険を回避することができる。よって、上記構成により安全なヒータを提供することができる。
本発明のヒータでは、上記構成に加え、前記絶縁基板は前記主抵抗体が形成される主発熱領域と前記調整用抵抗体が形成される従発熱領域とが分けられていてもよい。
上記構成によると、絶縁基板において主発熱領域と従発熱領域とが分けられていることで、従発熱領域をデットスペースに充てることができる。よって、元々使用されないデッドスペースに抵抗調整のための調整用抵抗体を設けることができる。そのため、ヒータの絶縁基板のサイズを不必要に大型化することなく、抵抗体の量産ばらつきを調整することができる。よって、ヒータの歩留まりが向上し、低コスト化が実現できる。
本発明のヒータでは、上記構成に加え、前記絶縁基板を複数備え、前記主発熱領域と前記従発熱領域とが相互に入れ替わった複数の前記絶縁基板が積層されて形成されていてもよい。
従発熱領域に形成した調整用抵抗体を用いて抵抗調整した場合、主発熱領域と従発熱領域の発熱量の比率が変わってしまうことがある。そこで、上記構成によると、主発熱領域と従発熱領域とが相互に入れ替わった複数の絶縁基板が積層されて形成されることで、抵抗調整による発熱量の比率変化を相殺することができる。
本発明のヒータは、上記構成に加え、前記絶縁基板を複数備え、これら複数の絶縁基板は積層して設けられており、前記主抵抗体及び調整用抵抗体は、前記複数の絶縁基板の層間に形成されていてもよい。
上記構成によると、絶縁基板を複数備えこれら複数の絶縁基板は積層している、つまり、絶縁基板は層構造に形成されていると、その層間に主抵抗体及び調整用抵抗体を形成することになる。よって、これら主抵抗体及び調整用抵抗体に別途コート等することなく、絶縁基板にて容易に電気的に絶縁することができる。これにより、簡易に安全なヒータを提供することができる。
本発明のヒータでは、上記構成に加え、上記絶縁基板には、調整用抵抗体を露出させる開口部が形成されていてもよい。
絶縁基板を複数備え、これら複数の絶縁基板は積層している、つまり、絶縁基板が層構造に形成されている場合、層間に形成された調整用抵抗体を接続或いは切断することが困難になる。しかし、上記構成では、調整用抵抗体を露出させる開口部が形成されているため、絶縁基板が積層構造に形成されていても、容易に抵抗調整が可能となる。
本発明のヒータでは、上記構成に加え、前記開口部は、前記主抵抗体に対する前記調整用抵抗体の電気的接続あるいは電気的切断が行われた後に、モールディングされてもよい。
調整用抵抗体の材料として銀・パラジウム等を用いた場合、高温高湿環境下でこれら金属がイオンとして溶出・還元し、短絡を起こすエレクトロケミカルマイグレーション(イオンマイグレーション)が発生することがある。しかし、上記構成によると、前記開口部をモールディングすることで、マイグレーションを抑制することができる。
本発明のヒータの抵抗調整方法は、上記課題を解決するために、絶縁基板上または絶縁基板内に通電により発熱する抵抗体と前記抵抗体に給電するための給電端子部とを備えたヒータの抵抗調整方法において、前記抵抗体は、主抵抗体と調整用抵抗体とを備え、前記主抵抗体は、少なくとも当該ヒータ使用時に前記給電端子部と電気的接続されるものであり、前記調整用抵抗体は、前記主抵抗体に任意に電気的接続が可能あるいは前記主抵抗体から任意に電気的切断が可能なものであり、前記ヒータの抵抗値を測定する測定ステップと、前記測定した抵抗値に基づいて、前記主抵抗体に対する前記調整用抵抗体の電気的接続あるいは電気的切断を行うことにより、前記ヒータの抵抗値が設定値に近づくよう調整する調整ステップと、含むことを特徴としている。
上記方法によると、本発明のヒータと同様の効果を奏し、ヒータが有する抵抗体の抵抗値を容易に所望の値に調整することができる。
本発明のヒータの抵抗調整方法では、上記方法に加え、前記調整用抵抗体は、各々抵抗値の異なる複数の帯状抵抗体を有し、前記調整ステップでは、前記複数の帯状抵抗体の任意の組み合わせにて、前記主抵抗体に電気的接続あるいは前記主抵抗体から電気的切断してもよい。
上記方法によると、各々抵抗値が異なる複数の帯状抵抗体の任意の組み合わせにて、主抵抗体に電気的接続あるいは発熱抵抗体から電気的切断することで、少ない数の抵抗体(帯状抵抗体)で、精度の高い抵抗調整を行うことができる。
本発明の定着装置は、上記課題を解決するために、定着ニップ部と、加熱手段とを有し、前記定着ニップ部に記録材を通過させ、当該記録材上の未定着画像を前記加熱手段からの熱により熱圧着することで定着させる定着装置であって、前記加熱手段は、本発明のいずれかのヒータを有する加熱部材と、前記ヒータの前記発熱抵抗体に電圧を印加する加熱用電源とを備えたことを特徴としている。
上記構成によると、本発明のヒータを定着装置に適用することができる。よって、抵抗体を設ける基板のサイズを不必要に大型化することなく、抵抗値を所望の値に調整可能なヒータを備えた定着装置を提供することができる。
本発明の定着装置では、上記構成に加え、前記ヒータは、前記絶縁基板を複数備え、かつ、前記ニップ部での所定サイズの記録材の通過領域に対応する第1絶縁基板における領域である第1主発熱領域に前記主抵抗体が設けられ、かつ、当該第1主発熱領域以外の第1絶縁基板における領域に前記調整用抵抗体が設けられた第1ヒータと、
前記ニップ部での前記所定サイズの記録材の通過しない領域に対応する第2絶縁基板における第2主発熱領域に、前記主抵抗体が設けられ、かつ、当該第2発熱領域以外の第2絶縁基板における領域に前記調整用抵抗体が設けられた第2ヒータと、を備えていてもよい。
上記構成によると、定着ニップ部を通過する記録材のサイズに応じて第1発熱領域及び第2発熱領域を設ければ、未定着画像に供給する熱量を効率よく制御することができる。ここで、第1絶縁基板において第1主発熱領域は、定着装置が備えられた画像形成装置において最も多く使用されると想定される記録材(以下汎用紙とする)の定着ニップ部における通過領域に対応する領域であることが好ましい。なぜなら、この汎用紙が通過する領域を第1ヒータにて効率よく加熱することができるからである。さらに、この汎用紙より大きなサイズの記録材については、第1ヒータと第2ヒータとにより加熱することができる。もちろん、第1主発熱領域の設けられる領域はこれに限定されない。
このように、上記構成の本発明の定着装置では、未定着画像を効率よく加熱し定着させることができる。
本発明の定着装置は、上記構成に加え、前記記録材における未定着画像が担持される面に、外周面において接触し、回転可能に設けられた無端状のベルト部材である定着ベルトと、前記記録材における未定着画像が担持される面の反対面と接触し、回転可能に設けられた加圧部材とを備え、前記定着ベルトと前記加圧部材との間に前記ニップ部が形成され、前記加熱部材は、前記定着ベルトの内周面に接して、前記定着ベルトを介して前記未定着画像を加熱するよう設けられていてもよい。
上記構成によると、加熱部材は、定着ベルトに接触して加熱し、定着ベルトを介して未定着画像を加熱するので、熱容量が大きいローラ状の定着ローラを内部に配置される熱源によって間接的に加熱する場合に比べて、ウォームアップ時間を短縮することができる。
本発明の定着装置は、上記構成に加え、前記定着ベルトの内周面に接触して設けられる定着部材を備え、前記加圧部材は、前記定着ベルトを介して前記定着部材に圧接して設置され、前記定着ニップ部は、前記定着ベルトを介して前記定着部材と上記加圧部材とが圧接される領域として設けられていてもよい。
上記構成によると、記録材上の未定着画像は、定着ベルトを介して定着部材と加圧部材とが圧接された領域を通過するときに定着される。そのため、記録材上の未定着画像は、定着ベルトを介して加熱部材によって加熱されるとともに、定着部材と加圧部材との間に発生する圧接力によって加圧されるので、安定した定着性能を確保することができる。
本発明の定着装置では、上記構成に加え、前記加圧部材は、前記加熱部材に対して前記定着ベルトを介して圧接するよう設けられ、前記定着ニップ部は、前記定着ベルトを介して前記加熱部材と前記加圧部材とが圧接される領域として設けられていてもよい。
上記構成によると、記録材上の未定着画像は、定着ニップ部である定着ベルトを介して加熱部材と加圧部材とが圧接される領域を通過するときに定着される。そのため、記録材上の未定着画像は、定着ベルトを介して加熱部材によって加熱されるとともに、加熱部材と加圧部材との間に発生する圧接力によって加圧される。よって、安定した定着性能を確保することができる。また、加熱部材と加圧部材とが定着ベルトを介して互いに圧接するように構成することで、加圧部材と圧接する定着部材などの他の部材を設けなくても、記録材上のトナー像に圧接力を付与することができ、定着装置の構成を簡略化することができる。
本発明の定着装置は、上記構成に加え、回転可能な定着部材と、前記定着部材に圧接する加圧部材と、内周面が前記加熱部材と接触し、かつ外周面が前記定着部材と接触して回転可能に設けられる無端状のベルト部材である加熱ベルトとを備え、前記定着ニップ部は、前記定着部材と前記加圧部材とが圧接される領域として設けられていてもよい。
上記構成によると、記録材上の未定着画像は、定着ニップ部である定着部材と加圧部材とが圧接される領域を通過するときに定着される。このとき、記録材上の未定着画像は、内周面が加熱部材と接触し、かつ外周面が定着部材と接触して回転可能に設けられる無端状のベルト部材である加熱ベルトを介して、加熱部材から加熱を受けるとともに、定着部材と加圧部材との間に発生する圧接力によって加圧されるので、安定した定着性能を確保することができる。
前記加熱用電源は、前記ヒータの前記発熱抵抗体に印加する電圧値を可変に制御されてもよい。
抵抗体(ヒータ全体)の抵抗値のばらつきが大きすぎると、調整用抵抗体による調整だけでは所望の抵抗値に合わせ切れない場合がある。そこで、上記構成により、加熱電源が、印加する電圧値を可変に制御されていると、調整用抵抗体で抵抗値を合わせ切れなかった場合に電源からの印加電圧を調整することで、所望の抵抗値を得ることができ、よって所定の電力を得ることができる。そのため、本発明の定着装置は、所望の電力で安定した定着を行える。
本発明の帯電装置は、上記課題を解決するために、沿面放電により被帯電物を帯電させる帯電装置であって、本発明のいずれかのヒータと、絶縁体を挟んで対向して設けられた放電電極及び誘導電極と、前記放電電極と前記誘導電極との間に電圧を印加する放電用電源と、前記ヒータの前記抵抗体に電圧を印加する加熱用電源と、を含むことを特徴としている。
上記構成によると、本発明のヒータを帯電装置に適用することができる。ヒータの抵抗体を設ける絶縁基板のサイズを不必要に大型化することなく、抵抗値を所望の値に調整可能なヒータを備えた帯電装置を提供することができる。また、ヒータを用いることで、吸湿による帯電性能の低下を抑制でき、帯電性能を向上させることができる。
本発明の帯電装置では、上記構成に加え、前記誘導電極と前記ヒータの前記主抵抗体とは兼用して設けられており、前記絶縁基板において前記放電電極と対向する領域以外の領域に、前記調整用抵抗体が備えられていてもよい。
上記構成によると、前記誘導電極と前記ヒータの前記主抵抗体とは兼用して設けられていることで、帯電装置のコストとサイズとを低下させることができる。また、記放電電極と対向する領域以外の領域、つまり、主抵抗体(誘導電極と兼用)が形成されない領域に、調整用抵抗体が備えられているため、絶縁基板における使用されないデットスペースを有効に活用できる。
本発明の帯電装置では、上記構成に加え、前記加熱用電源は、前記ヒータの前記発熱抵抗体に印加する電圧値を可変に制御されてもよい。
抵抗体(ヒータ全体)の抵抗値のばらつきが大きすぎると、調整用抵抗体による調整だけでは所望の抵抗値に合わせ切れない場合がある。そこで、上記構成により、加熱電源が、印加する電圧値を可変に制御されていると、調整用抵抗体で抵抗値を合わせ切れなかった場合に電源からの印加電圧を調整することで、所望の抵抗値を得ることができ、よって所定の電力を得ることができる。そのため、本発明の帯電装置は、所望の電力で安定した帯電を行える。
本発明の画像形成装置は、上記課題を解決するために、本発明のいずれかの定着装置、または、本発明のいずれかの帯電装置の少なくとも一方を備えたことを特徴としている。この構成により、抵抗体を設ける絶縁基板のサイズを不必要に大型化することなく、抵抗値を所望の値に調整可能なヒータを備えた定着装置または帯電装置を有する画像形成装置を提供することができる。
本発明に係るヒータは、以上のように、前記抵抗体は、主抵抗体と調整用抵抗体とを備え、前記主抵抗体は、少なくとも当該ヒータ使用時に前記給電端子部と電気的接続されるものであり、前記調整用抵抗体は、前記主抵抗体に任意に電気的接続が可能あるいは前記主抵抗体から任意に電気的切断が可能なものであることを特徴としている。
上記構成によると、抵抗体は、ヒータ使用時に前記給電端子部と電気的接続される主抵抗体とは別に、この主抵抗体に任意に電気的接続が可能あるいはこの主抵抗体から任意に電気的切断が可能な調整用抵抗体を備えている。よって、抵抗体の抵抗値を、主抵抗体に対する調整用抵抗体の電気的接続あるいは電気的切断を行うことで調整することができる。そのため、抵抗体の抵抗値のばらつきが所定値(許容範囲)を超えた場合は、調整用抵抗体の調整により、抵抗ばらつきを所定値以下(許容範囲内)に修正することができる。
このように本発明の上記構成によると、主抵抗体とは別に調整用抵抗体が設けられており、抵抗値の調整は調整用抵抗体で行われる。そして、主抵抗体は、少なくともヒータ使用時に前記給電端子部と電気的接続され、つまり、ヒータ使用時に主抵抗体は必ず使用される。よって、使用された場合には発熱用のメインの抵抗体となるが、使用されない場合もある抵抗体を設ける必要がなく、さらにこの抵抗体を設ける基板のスペースを確保する必要がない。よって、絶縁基板のサイズの大型化、引いてはヒータの大型化を抑制することができる。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図面に基づいて説明する。以下、本発明に係るヒータ、本発明に係る定着装置、本発明に係る画像形成装置についての一実施形態を、具体的に説明する。
(画像形成装置)
まず、本実施形態の画像形成装置の構成について説明する。図2は、本実施形態のヒータを備えた定着装置を備えた画像形成装置100の概略構成を示す断面図である。画像形成装置100は、いわゆるタンデム式で、かつ、中間転写方式のプリンタであり、フルカラー画像を形成できるカラー複合機である。本実施形態では、本発明に係る画像形成装置をカラー複合機/複写機及びカラープリンタに適用することを主体として説明するが、本発明に係る画像形成装置は、モノクロ複合機/複写機及びモノクロプリンタに対しても適用することが可能である。
画像形成装置100は、図2に示すように、光学系ユニットE、4組の可視画像形成ユニットpa、pb、pc、pd、中間転写ベルト11、二次転写ユニット14、定着装置(定着ユニット)15、内部給紙ユニット16及び手差し給紙ユニット17を備えている。
可視画像形成ユニットpaでは、像担持体となる感光体101aの周囲に、帯電装置103a、現像ユニット102a、クリーニングユニット104aが配置している。そして、一次転写ユニット13aが中間転写ベルト11を介して配置している。他の3組の可視画像形成ユニットpb、pc、pdも可視画像形成ユニットpaと同様の構成であり、同じ構成部材には、同じ数字の部材番号と、各可視画像形成ユニットに対応した英字(b,c,d)とを付すものとする。可視画像形成ユニットpa,pb,pc,pdには、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色トナーが収容されている。
光学系ユニットEは光源4からのビームが4つの感光体101a、101b、101c、101dに届くように配置されている。光学系ユニットEには、それぞれ画像データにおける黄色成分、マゼンタ成分、シアン成分及び黒色成分に対応する画素信号が入力されるようになっている。そして、この入力された画像信号に基づいて、光源4から各ビームが出射され、ミラー8にて折り返されて、帯電された感光体101a、101b、101c、101dを露光し、静電潜像を生成する。
中間転写ベルト11はテンションローラ11a、11bによりたわむことなく配置される。また、中間転写ベルト11のテンションローラ11b側に、中間転写ベルト上の残トナーを回収する廃トナーBOX12、テンションローラ11a側に二次転写ユニット14が、それぞれ中間転写ベルト11に当接して配置されている。
定着装置15は、定着ローラ30と加圧ローラ31とを備え、これらは図示しない加圧手段により所定の圧力で圧接され、二次転写ユニット14の下流に配置されている。本実施形態では、面状発熱ベルト定着方式の定着装置15を備えており、詳細については後述する。
画像形成装置100における画像形成の工程は以下のようになる。感光体101a表面を帯電装置103aで一様に帯電した後、光学系ユニットEにより感光体101a表面を画像情報に応じてレーザー露光し、静電潜像を形成する。本実施携帯の帯電装置103aとしては、感光体101a表面を一様に、またオゾンを極力発生させることなく帯電するために、帯電ローラ方式を採用している。その後、現像ユニット102aにより感光体101a上の静電潜像に対しトナー画像を現像し、この顕像化されたトナー画像をトナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された一次転写ユニット13aにより中間転写ベルト11上に転写する。
他の3組の可視画像形成ユニットpb、pc、pdも同様に動作し、順次中間転写ベルト11上にトナー画像を転写する。中間転写ベルト11上のトナー画像は二次転写ユニット14の直前で転写前帯電装置21によって帯電された後、中間転写ベルト11上のトナー画像は二次転写ユニット14まで搬送される。そして、別途、内部給紙ユニット16の給紙ローラ16a、または手差し給紙ユニット17の給紙ローラ17aから給紙された記録紙は搬送ローラr、19によって搬送され、二次転写ユニット14にてトナーとは逆極性のバイアス電圧が印加されて、トナー画像が転写される。記録紙P上のトナー画像は定着装置15に搬送され、定着装置15を通過するときに十分に加熱・加圧されて記録紙上に融着する。そして、定着装置15によってトナー画像の定着処理が行われた後の記録紙は、搬送ローラ18aにて画像形成装置100の外部に排出される。これにより、画像形成処理が終了する。
(定着装置)
次に、本実施形態の定着装置である定着装置15の構成について図3及び4を用いて説明する。図3は定着装置の構成を示す断面図、図4は加熱手段の構成を示す断面図である。
図3に示すように、定着装置15は、定着ローラ(定着部材)30と、加圧ローラ(加圧部材)31と、無端状の定着ベルト32と、定着ベルトを懸架し加熱するための加熱部材33と、加圧ローラ31を加熱するための熱源であるヒータランプ34と、定着ベルト32及び加圧ローラ31の各々の温度を検出する温度検出手段を構成する温度センサとして、サーミスタ35A,B,Cとを備えている。
定着装置15は、記録紙Pの表面に形成された未定着のトナー画像(トナーT)を、熱及び圧力によって記録紙P上に定着させるものである。本実施形態の定着装置15は、定着ベルト32が直接記録紙P上のトナー像を加熱し、加熱部材33が定着ニップ部Nには配置されていない定着方式である、面状発熱ベルト定着方式の定着装置である。未定着のトナー画像は、例えば、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、磁性現像剤(磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナー及びキャリア)に含まれるトナー等のトナーTによって形成される。
定着ローラ30及び加圧ローラ31は、所定の荷重(例えば、本実施形態では392N)で互いに圧接されて、両ローラ間に、定着ローラ30と加圧ローラ31とが互いに当接する部分である定着ニップ部Nを形成している。なお、本実施形態では、ニップ幅(定着ニップ部Nの記録紙搬送方向の幅)を7.5mmとしているが、この数値に限定されない。この定着ニップ部Nに未定着トナー画像を形成した記録紙Pを搬送し、定着ニップ部Nを通過させることで、トナー画像が加熱溶融されて記録紙Pにトナー画像が定着される。記録紙Pが定着ニップ部Nを通過するときには、定着ベルト32は記録紙Pのトナー画像形成面に当接する一方、加圧ローラ31は記録紙Pにおけるトナー画像形成面とは反対側の面に当接する。
定着ローラ30は、定着ベルト32を介して、加圧ローラ31に圧接することで定着ニップ部Nを形成すると同時に、定着ベルト32の外周面との摩擦抵抗によって回転駆動することにより定着ベルト32を搬送する。定着ローラ30としては、例えば、内側から順に芯金30a、弾性層30bが形成された2層構造のものを用いることができる。芯金30aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属或いはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層30bにはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有し、弾性変形可能なゴム材料が適している。なお、本実施形態では、定着ローラ30の直径は30mmであり、芯金30aに直径15mmの中空あるいは中実のステンレス鋼、弾性層30bに厚さ7.5mmのシリコンスポンジゴムを用いる。ただしこれらの数値に限定されない。
加圧ローラ31には、例えば、内側から順に芯金31a、弾性層31b、離型層31cが形成された3層構造のものを用いることができる。芯金31aには、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属或いはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層31bにはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有し、弾性変形可能なゴム材料が用いられる。また、離型層31cには、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が適している。なお、本実施形態では、加圧ローラ31の直径は30mmであり、芯金31aに直径28mmで肉厚1mmの鉄合金(STKM)、弾性層31bに厚さ1mmのシリコンソリッドゴム、離型層31cに厚さ30μmのPFAチューブを用いている。
また、加圧ローラ31の内部には、加圧ローラ31を内部から加熱するヒータランプ34が配置されている。制御手段(図示せず)が電源回路(図示せず)からヒータランプ34に電力を供給(通電)させることにより、ヒータランプ34が発光し、ヒータランプ34から赤外線が放射される。これにより、加圧ローラ31の内周面が赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ31全体が加熱される。なお、本実施形態では、定格電力400Wのヒータランプ34を使用している。また、加圧ローラ31の内面は、前記ヒータランプ34が放射する赤外線を吸収しやすくする為に、赤外線の波長域に良好な吸収特性を有する耐熱黒色塗装を施してもよい。
定着ベルト32は、加熱部材33が発生する熱によって所定の温度に加熱され、定着ニップ部Nを通過する未定着トナー画像が形成された記録紙Pを加熱するためのものである。本実施形態では、定着ベルト32は、直径45mmであり、加熱部材33と定着ローラ30とによって懸架され、定着ローラ30に所定の角度θ1で巻きかかっている。この角度θ1は、定着ベルト32が定着ローラ30と接触している部分の角度であり、定着ベルト32が定着ローラ30の表面から離れる両ポイントそれぞれに、定着ローラ30の回転中心より延ばした2本の線分の成す角度である。本実施形態では、θ1=185°である。
定着ベルト32は、定着ローラ30の回転時には、定着ローラ30に従動して回転するようになっている。定着ベルト32としては、例えば、特に図示してはいないが、ポリイミド、ポリアミド、及びアラミド樹脂等の耐熱樹脂或いはステンレスやニッケル等の圧延や電鋳によって製作された金属材料からなる中空円筒状の基材の表面に、弾性層として耐熱性及び弾性に優れたエラストマー材料(例えばシリコンゴム)が形成される。さらにその表面に離型層として耐熱性及び離型性に優れた樹脂材料(例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂)が形成される。このような3層構成のものを用いることができる。弾性層及び離型層は、定着ベルト32の外周側に形成される。なお、基材にポリイミド等の耐熱樹脂を用いる場合、フッ素樹脂を内添してもよい。内添することで、加熱部材33との摩擦抵抗をさらに低減することができる。なお、本実施例の定着ベルト32は、基材に厚さ50μmのポリイミド、弾性層に厚さ150μmのシリコンゴム、離型層に厚さ30μmのPFAチューブを用いている。離型層は、PFAチューブだけでなく、PFAやPTFEなどをコーティングしてもよい。
加熱部材33は、定着ベルト32と接して、定着ベルト32を所定の温度に加熱するものである。図4に示すように、加熱部材33には、加熱部材33に所定の電力を供給する電源53が接続されている。加熱部材33及び電源53から加熱手段が構成される。
加熱部材33は、保持部材40、ヒータ41、断熱シート50、及び押え部材51から成る。保持部材40は円弧状の断面形状からなり、保持部材40の定着ベルト32と接する面とは反対面にヒータ41が形成されている。このヒータ41の構成についての詳細は後述する。本実施形態では、保持部材40はヒータ41で発生した熱を定着ベルト32に効率よく伝達させるために、熱伝導率に優れるアルミ合金が用いられている。また、定着ベルト32との接触幅(加熱ニップ部Mの幅、加熱ニップ幅)は17mmに設定されている。また、保持部材40の定着ベルト32と摺動する面には、定着ベルトの摺動性を向上させるためにコート層40aが形成されている。本実施形態ではコート層40aは、厚さ20μmのPTFEコートとする。
ヒータ41は、保持部材40の定着ベルト32と接する面とは反対面に、断熱シート50を介して押え部材51によって加圧されることで固定されている。本実施形態では、押え部材は厚さ1mmのステンレス材からなり、たわみに対する強度を確保するため、図4に示すように断面がコの字形状をしている。断熱シート50は、ヒータ41で発生した熱が押え部材51に極力逃げないようにするためのものである。断熱シート50は、本実施形態では、厚さ1mmのフッ素ゴムから成る。
(ヒータの構造)
次に、本実施形態のヒータであるヒータ41の構成について図1及び5を用いて説明する。図1(a)〜(d)は、それぞれ、ヒータ41を構成するベース基板41a、サブヒータ基板41b、メインヒータ基板41c、及び保護基板41dの正面図である。図5はヒータ41の断面構成図である。なお、図1(d)に示す保護基板及び図1(a)メインヒータ基板は図5の矢印B方向から見た図、図1(b)に示すサブヒータ基板及び図1(a)に示すベース基板は図5の矢印A方向から見た図である。なお、ここでは保持部材40に接触する基板はベース基板41aである。
本実施形態では、ヒータ41は、定着装置15に用いるものとして説明し、各基板が積層された構造とするが、本発明のヒータは、サブヒータ基板41bあるいはメインヒータ基板41cのみのような構成であってもよく、つまり、基板が積層構造になっていなくてもよい。
ヒータ41は、本実施形態では、セラミック材料から成る基礎基板(絶縁基板)に抵抗体が形成された長尺板状のセラミックヒータであり、ヒータ41のサイズ(幅W、長さL、厚さH)は、W=12.3mm、L=360mm、H=0.8mmとなっている。
図1及び5に示すように、ヒータ41は、保護基板41d、メインヒータ基板41c、サブヒータ基板41b、ベース基板41aの4つがこの順番で積層されて貼り合わせた平板状に形成される。これら各基板のベースとなる基礎基板42a〜42dを構成するセラミック材料としては、純度の高いアルミナ、結晶化ガラス、フォルステライト及びステアタイト、ガラスとアルミナの複合材料である低温同時焼結セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramic:LTCC)などのセラミック材料を使用することができる。また、各基板の厚さはいずれも0.2mmであり、ヒータ41としてのトータルの厚さは0.8mmである。
図1(c)に示すように、メインヒータ基板41cの主発熱体(主抵抗体)49は基礎基板42cの長手方向(ヒータ41の長手方向と同じ)における中央部を発熱させるための抵抗体である。図1(c)に示すようにその発熱領域(主発熱領域E)は、本実施形態では幅200mmで、基礎基板(絶縁基板)42cの表面に基礎基板42cと一体化して形成される。主発熱体49を構成する材料としては、例えば金、タングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスなどのように、導電性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。ただし、通電・発熱によって溶融するなどの変形を起こさないものであることが条件となる。本実施形態では、主発熱体49は銀パラジウムから成る材料で構成される。本実施形態の主発熱体49の形状は、線幅が0.79mmであり、発熱領域で4回Uターンすることで平行した5本の帯状発熱体が形成された形となっている。また、メインヒータ基板41cの両端部の非発熱領域(従発熱領域D,F)には調整用抵抗体48が形成される。調整用抵抗体48は、各々線幅の異なる4本の帯状抵抗体48A〜48Dが並列回路を構成するように並行に形成され、その一端は主発熱体49に、また他端は後述の給電端子部47cに接続されている。左右の調整用抵抗体48は、本実施形態では全く同じ形状・仕様であり、帯状抵抗体48A〜48Dの線幅は、表1に示す通りである。なお、表1では、帯状抵抗体48A〜48Dは、簡略して抵抗体A〜Dと記載している。
調整用抵抗体48を構成する材料としては、たとえば金、タングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスなどのように、導電性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。ただし、通電・発熱によって溶融するなどの変形を起こさないものであることが条件となる。本実施形態では、調整用抵抗体48は主発熱体49と同じ銀パラジウムから成る材料で構成される。
さらにメインヒータ基板41cの両端部には給電端子部47cが形成されている。給電端子部47cを構成する材料としては、たとえば金、タングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスなどのように、導電性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。本実施形態では、給電端子部47cは主発熱体49と同じ銀パラジウムから成る材料で構成される。
サブヒータ基板41bの主発熱体46は基礎基板(絶縁基板)42bの長手方向(ヒータ41の長手方向と同じ)における両端部を発熱させるためのものであり、図5に示すようにその発熱領域(主発熱領域A,C)は、本実施形態では左右各60mmで、基礎基板42bの表面に基礎基板42bと一体化して形成される。サブヒータ基板41bの主発熱体46を構成する材料としては、メインヒータ基板41cの主発熱体49と同様に、例えばタングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスのように導電性を有するものであれば、特に制限なく使用することができる。ただし、通電・発熱によって溶融するなどの変形を起こさないものであることが条件となる。本実施形態では、サブヒータ基板41bの主発熱体46はメインヒータ基板41cの主発熱体49と同じ銀パラジウムから成る材料で構成される。サブヒータ基板41bの主発熱体46の形状は、本実施形態では、線幅が0.44mmであり、発熱領域で6回Uターンすることで平行した7本の帯状発熱体が形成された形となっている。
また、サブヒータ基板41bの中央部の非発熱領域(従発熱領域B)には調整用抵抗体45が形成される。調整用抵抗体45は、各々線幅の異なる4本の帯状抵抗体45A〜45Dが並列回路を構成するように並行に形成され、その一端は左側の主発熱体46に、また他端は右側の主発熱体46に接続されている。帯状抵抗体45A〜45Dの線幅は、表1に示す通りである。なお、表1では、帯状抵抗体45A〜45Dは、簡略して抵抗体A〜Dと記載している。
調整用抵抗体45を構成する材料としては、たとえば金、タングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスなどのように、導電性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。ただし、通電・発熱によって溶融するなどの変形を起こさないものであることが条件となる。本実施形態では、調整用抵抗体45は主発熱体46と同じ銀パラジウムから成る材料で構成される。さらにサブヒータ基板41bの両端部には給電端子部47bが形成され、主発熱体46と接続されている。給電端子部47bを構成する材料としては、たとえば金、タングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスなどのように、導電性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。本実施形態では、給電端子部47bは主発熱体46と同じ銀パラジウムから成る材料で構成される。
保護基板41d及びベース基板41aには、4種類の基板を積層した場合にメインヒータ基板41c及びサブヒータ基板41bの給電部が露出するよう給電用開口部(給電用キャビティ)が設けられている。また、メインヒータ基板41c及びサブヒータ基板41bの調整用抗体も露出するようにトリミング用開口部(トリミング用キャビティ)が設けられている。つまり、保護基板41dは、基礎基板42dに給電用開口部43dとトリミング用開口部44dとが設けられた構成である。同様に、ベース基板41aは、基礎基板42aに給電用開口部43aとトリミング用開口部44aとが設けられた構成である。
(ヒータの製造方法)
次にヒータ41の製造方法について、以下に説明する。ヒータの製造に際しては、最初に、本実施形態では、基礎基板42a〜42dとして、厚さ0.2mmのLTCCから成るグリーンシートを、例えば幅400mm×長さ400mmに切断する。そして、このグリーンシート(基礎基板42a〜42d)を用いて、厚さ0.2mmの4種類の基板(保護基板41d、メインヒータ基板41c、サブヒータ基板41b、ベース基板41a)を各々作成していく。具体的には、メインヒータ基板41cの場合は、銀パラジウムを主成分とする主発熱体49、調整用抵抗体48、並びに給電端子部47cをグリーンシートの上面にスクリーン印刷で形成し、主発熱体49、調整用抵抗体48、並びに給電端子部47cをグリーンシートと一体化させる。
同じくサブヒータ基板41bの場合は、銀パラジウムを主成分とする主発熱体46、調整用抵抗体45、並びに給電端子部47bをグリーンシートの上面にスクリーン印刷で形成し、主発熱体46、調整用抵抗体45、並びに給電端子部47bをグリーンシートと一体化させる。その後、打ち抜き型を用いて、保護基板用グリーンシート(基礎基板42d)及びベース基板用グリーンシート(基礎基板42a)の各々所定の位置に給電用開口部及びトリミング用開口部を形成する。ヒータ41の最終サイズは上述のように12.3mm×360mm×0.8mmであり、1枚のグリーンシート(400mm×400mm)の中に複数のヒータが形成されることになる。なお、本実施形態のサイズとすると、1枚のグリーンシートから9個のセラミック発熱体が得られる。
次に、上記4種類のグリーンシートを位置合わせし、下から保護基板41d、メインヒータ基板41c、サブヒータ基板41b、ベース基板41aの順番で重ね合わせた後、プレスジグを用いて圧着(温水等方圧プレス:WIP)を行う。
次に、積層されたグリーンシートに対し、複数のセラミック発熱体の外形に合わせた金型により、所定の大きさ(12.3mm×360mm)に切断する。その後これらを加熱炉に入れて、非酸化性雰囲気下で800〜900℃で焼成する。このようにして、4種類の基板が積層されたヒータを作成することができる。
(定着制御方法)
次に本実施形態の定着装置15の制御方法について、図3及び4を用いて詳細に説明する。図4に示すように、ヒータ41を加熱するための電源53はメイン用及びサブ用の2つの電圧可変電源53a,53bからなり、ヒータ41の両端部に形成された給電用開口部を通じて、メインヒータ基板41cの給電端子部47cにはメイン用の電圧可変電源53a、サブヒータ基板41bの給電端子部47bにはサブ用の電圧可変電源53bがそれぞれ接続され、メインヒータ基板41cの主発熱体49と調整用抵抗体48、及びサブヒータ基板41bの主発熱体46と調整用抵抗体45に対し、独立に所定の電力が供給されるよう構成されている。なお、本実施形態におけるヒータ41の定格出力は、メインヒータ基板750W、サブヒータ基板450Wのトータル1,200Wであり、2つの電圧可変電源53a,53bによりヒー41タに最大1,200Wが供給されてヒータ41が発熱する。そして、ヒータ41で発生した熱エネルギーは保持部材40を介して定着ベルト32に伝達する。
定着ベルト32の周面には温度検知手段としてのサーミスタ35A,B、加圧ローラ31の周面にはサーミスタ35Cが各々配設されており、それぞれの表面温度を検出するようになっている。なお、定着装置15の長手方向の位置に関して、サーミスタ35Aはメインヒータ基板41cの主発熱体49の発熱領域、サーミスタ35Bはサブヒータ基板41bの主発熱体46の発熱領域、サーミスタ35Cは中央部に配置されている。そして、各サーミスタ35A,B,Cにより検出された温度データに基づいて、温度制御手段としての制御回路(図示せず)が定着ベルト32、加圧ローラ31の表面温度を所定の温度にするように、ヒータ41のメインヒータ基板41c、サブヒータ基板41b及びヒータランプ34への供給電力(通電)を制御する。尚、本実施形態ではサーミスタ35A,Bは非接触式、サーミスタ35Cは接触式サーミスタを用いている。
ここで、本実施形態では、メインヒータ基板41cの主発熱領域E及びサブヒータ基板41bの従発熱領域BがA4サイズの横幅に合わせたサイズ(200mm)に形成されているので、上記のような制御を行うことで、次のように、適切に加熱することができる。例えば、A3縦送りやA4横送りなどの幅広の用紙を通紙した場合は、メインヒータ基板41cの主発熱体49及びサブヒータ基板41bの主発熱体46の両方を駆動し、幅広の用紙の通紙領域を全て加熱するようにする。また、A4縦送りやB5縦送りなどの幅狭の用紙を通紙する場合は、メインヒータ基板41cの主発熱体49のみを駆動させることで、メインヒータ基板41cの主発熱領域Eが加熱され、従発熱領域D,Fはほとんど加熱されない。よって非通紙部(従発熱領域D,F)の異常昇温が抑制される。
(ヒータの抵抗調整方法)
次に本実施形態のヒータ41の抵抗調整方法について、表1〜5を用いて詳細に説明する。なお、以下では具体的な数値を用いた例について説明するが、本発明は以下の数値に限定されない。
上記の表1は、メインヒータ基板41c及びサブヒータ基板41bの主発熱体並びに帯状抵抗体の仕様をまとめた表である。表1に示すようにメインヒータ基板では定格電力750W、サブヒータは定格電力450Wであり、許容される電力のばらつき幅としてはいずれも0%〜−6%である。また、メインヒータ基板41cの帯状抵抗体48A〜48D(表では、抵抗体A、B、C、Dと記載)、及びは、サブヒータ基板41bの帯状抵抗体45A〜45D(表1では、抵抗体A、B、C、D)それぞれ異なるライン幅とすることで、異なる抵抗値を持つよう設定している。なお、表1に示したように最もライン幅の狭い抵抗体D(帯状抵抗体48D及び帯状抵抗体45D)においても、主発熱体のライン幅と同等以上となるよう設計している。例えば、メインヒータ基板41cであれば主発熱体49の幅が0.79mmに対し抵抗体D(帯状抵抗体48D)の幅は0.80mm、サブヒータ基板41bであれば主発熱体46の幅が0.44mmに対し抵抗体D(帯状抵抗体45D)の幅は0.45mm)としている。
メインヒータ基板41cの4種類の帯状抵抗体48A〜48D(抵抗体A、B、C、D)に対して、保護基板41dのトリミング用開口部44dにより露出した部分を任意の抵抗体の組み合わせでレーザートリミングにより抵抗体のパターンを切断することでメインヒータ基板41cのトータル抵抗の調整を行う。同様にサブヒータ基板41bの4種類の帯状抵抗体45A〜45D(抵抗体A、B、C、D)に対して、ベース基板41aのトリミング用開口部44aにより露出した部分を任意の抵抗体の組み合わせでレーザートリミングにより抵抗体のパターンを切断することでサブヒータ基板41bのトータル抵抗の調整を行う。
なお、レーザートリミングによるトリミング幅としては本実施例の場合1mmである。この数値であると、銀のマイグレーションが効果的に防ぐことができる。なお、本実施形態では、帯状抵抗体45A〜45D,48A〜48Dをレーザートリミングで切断することでヒータの抵抗値を調整する方法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば帯状抵抗体を機械的な加工で切断してもよい。
次に示す表2は、本実施形態のメインヒータ基板41cにおける4種類の帯状抵抗体48A〜48D(表2では、A、B、C、D)による抵抗調整パターンを示した表である。また、表3は、本実施形態のサブヒータ基板41bにおける4種類の帯状抵抗体45A〜45D(表3では、A、B、C、D)による抵抗調整パターンを示した表である。
(表2において♯♯♯♯♯♯で表している欄はトリミングした抵抗体であることを示す。表3,4,5においても同様である。)
メインヒータ基板41cにおいて、4種類の帯状抵抗体は各々抵抗値が異なることから、メインヒータ基板41c全体として調整された抵抗値のパターンとしては表2に示すように計15パターンを実現することができる。同様に、サブヒータ基板41bにおいては、全体として調整された抵抗値のパターンとしては表3に示すように計15パターンを実現することができる。
よって、メインヒータ基板41c及びサブヒータ基板41bどちらにおいても、最大472.5%抵抗値を変動させることができる。本実施形態では、このように少ない帯状抵抗体の数でより多くの抵抗調整パターンが実現できることから、メインヒータ基板41c、サブヒータ基板41b、引いてはヒータ41を不必要に大型化することなく、精度の高い抵抗値の調整が可能となる。
なお、メインヒータ基板41cでは、帯状発熱体48A〜48Dが基板の長手方向の両端の領域に設けられているため、それぞれの領域で異なる帯状抵抗体を残すことも可能である。この場合、さらに異なる合成抵抗の値を増やすことができる。このように、複数の領域に帯状抵抗体が設けられている場合、残す帯状抵抗体を揃えても揃えなくてもよい。
次に、表4は、メインヒータ基板41cにおける帯状抵抗体48A〜48Dによる抵抗調整による効果を示した表である。表5は、サブヒータ基板41bにおける帯状抵抗体45A〜45Dによる抵抗調整の効果を示した表である。
上述したように主発熱体の抵抗値はレンジで15%変動することから、例えばメインヒータ基板41cの主発熱体49であれば表4に示すように最大13.85Ωから最小11.77Ωまで、サブヒータ基板41bの主発熱体46のであれば最大11.05Ωから最小9.39Ωまでばらつくことになる。
これに対し、メインヒータ基板41cの場合、表4に示したように、例えば、主発熱体49が、最大抵抗13.85Ωの場合はパターン1、平均抵抗112,81Ωの場合はパターン6、最小抵抗11.77Ωの場合はパターン15の抵抗調整パターンを適用するものとする。これにより、定格電力(所定の電力が入力されたときの電力)としては表4に示したようにいずれも0〜−6%の許容範囲内に収まることから、歩留まりとしては100%を実現することができる。なお、表5に示すようにサブヒータ基板41bの場合も全く同じであることから、ここでは説明を省略する。
ここで、メインヒータ基板41cの場合、例えば主発熱体49の抵抗が最小にばらついた場合、上述のように抵抗調整パターンとしては最も抵抗の大きくなるパターン15を適用することになる。パターン15は最もライン幅の狭い帯状抵抗体48D(抵抗体D)のみを使用するパターンであることから、帯状抵抗体48D(抵抗体D)には主発熱体49と同じ電流が流れることになる。そのため、帯状抵抗体48Dのライン幅が発熱体よりも狭いと、主発熱体49よりも電流密度が大きくなり、帯状抵抗体48Dが異状発熱して断線してしまう危険性が生じる。そこで、本実施形態では上述したように、いずれの帯状抵抗体48A〜48Dついても、主発熱体49と同等以上のライン幅に設定することで断線のようなトラブルを回避している。同様に、帯状抵抗体45A〜45Dは、主発熱体46と同等以上のライン幅に設定されている。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態のヒータについて、図10(a)〜(d)を用いて説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付しその説明を省略する。
図10(a)〜(d)は、それぞれ、本実施形態のヒータを構成するベース基板41a、サブヒータ基板41b’、メインヒータ基板41c’、及び保護基板41dの正面図である。本実施形態のヒータも実施の形態1のヒータ41と同様に、保護基板41d、メインヒータ基板41c’、サブヒータ基板41b’、ベース基板41aがこの順番で積層されて貼り合わせた平板状に形成される。本実施形態のヒータも、実施の形態1のヒータ41と同様に、定着装置15に用いるものとして説明し、各基板が積層された構造とするが、本発明のヒータは、サブヒータ基板41’bあるいはメインヒータ基板41c’のみのような構成であってもよく、つまり、基板が積層構造になっていなくてもよい。
実施の形態1のヒータ41では、帯状抵抗体45A〜45D,48A〜48Dのいずれかを切断することで抵抗値を調整するものとして説明した。それに対して、本実施形態のヒータでは、図10(c)及び(b)に示すように、メインヒータ基板41c’の帯状抵抗体48A’〜48D ’、及びサブヒータ基板41b’の帯状抵抗体45A’〜45D’のパターンを予めカットされた状態で形成しておき、必要な抵抗体のみをワイヤボンディング等で接続することで抵抗値を調整する。
図10(c)に示すように、メインヒータ基板41c’の帯状抵抗体48A’〜48D’は、保護基板41dの開口部44dから露出している部分の一部が予めカットされており、更に開口部44dから露出している部分の残りの部分に金メッキが施されている。そして、メインヒータ基板41c’の主発熱体49の抵抗値を測定し、その抵抗値から帯状抵抗体48A’〜48D’のうち必要な帯状抵抗体を選択し、ワイヤWを用いたワイヤボンディングにより接続する。例えば、主発熱体49の抵抗値が目的の所定値(許容範囲)よりも大きければ、帯状抵抗体48A’のような小さな抵抗値を持つ帯状抵抗体をワイヤWで主発熱体49に接続する。反対に、主発熱体49の抵抗値が目的の所定値よりも小さければ、帯状抵抗体Dのような大きな抵抗値を持つ帯状抵抗体を、ワイヤWで主発熱体49に接続する。サブヒータ基板41b’についても同様であるので、説明は省略する。
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態の定着装置について図6を用いて説明する。図6に示すように、本実施形態の定着装置15aは、フィルム定着方式の定着装置に本発明のヒータを用いた例であり、実施の形態1の定着装置15と共通する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
本実施の定着装置15aは、加圧ローラ31と、フィルム状の無端ベルト部材である定着ベルト32aと、加熱部材33を備えた加熱手段とを有している。
定着装置15aでは、定着ベルト32aが2つの懸架ローラと加熱部材33との間に張架され、加圧ローラ31が定着ベルト32aを介して保持部材40に対向するように配置されている。そして、加熱部材33が定着ベルト32aの内周面に接触して定着ベルト32aを加熱し、定着ベルト32aを介して互いに圧接する加熱部材33と加圧ローラ31との間に形成される定着ニップ部Nを記録紙Pが通過したとき、記録紙P上の未定着トナー像(トナーTが形成する像)を加熱加圧して、記録紙P上に定着させる。また、記録紙Pが定着ニップ部Nを通過するときに、定着ベルト32aは記録紙Pのトナー像担持面に当接し、加圧ローラ31は記録紙Pのトナー像担持面とは反対側の面に当接するようになっている。
定着ベルト32aは、前述した実施の形態1の定着装置15が備える定着ベルト32と同様に、基材の表面に弾性層と離型層とが形成された3層構造となっている。定着ベルト32aは、加圧ローラ31の図6における矢印の方向への回転に従動して回転する。
本実施形態では、加熱部材33が有する保持部材40は、加圧ローラ31の外周面に沿って湾曲した形状にされており、保持部材40の外周面が定着ベルト32aの幅方向全体に当接している。そして、ヒータ41は、保持部材40における定着ベルト32aと当接する面とは反対面に接触して配置されている。また、ヒータ41における保持部材40と当接する面とは反対面にはヒータ用のサーミスタ35A,35Bが接触配置されており、ヒータ41の表面温度を検出するようになっている。
本実施形態の加熱手段では、実施の形態1の定着装置15が備える加熱手段と同様に、メインヒータ基板41c用及びサブヒータ基板41b用の2つの電圧可変電源(図示せず)が給電部を介してそれぞれの主発熱体49及び主発熱体46に接続される。そして、制御手段(図示せず)がこの電圧可変電源による印加電圧値を、ヒータ41における投入電力値が一定となるように可変制御する。
以上のような構成の定着装置15aでは、記録紙P上の未定着トナー像は、定着ベルト32aを介して加熱部材33によって加熱されるとともに、加熱部材33と加圧ローラ31との間に発生する圧接力によって加圧される。よって、安定した定着性能を確保することができる。また、本実施形態の定着装置15aは、加熱部材33と加圧ローラ31とが定着ベルト32aを介して互いに圧接するように構成されているので、加圧ローラ31と圧接する他の部材を設けなくても、記録紙P上の未定着トナー像に圧接力を付与することができ、装置構成を簡略化することができる。
〔実施の形態4〕
本発明のさらに別の実施形態の定着装置について図7を用いて説明する。
図7に示すように、本実施形態の定着装置15bは、外部ベルト加熱定着方式定着方式の定着装置に本発明のヒータを用いた例であり、実施の形態1の定着装置15と共通する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
定着装置15bは、加熱部材33を備えた加熱手段と、回転可能な加熱ベルト32bと、定着ローラ30と、加圧ローラ31とを含んで構成される。
定着装置15bでは、定着ローラ30と加圧ローラ31とが対向するように配置され、加熱部材33が加熱ベルト32bを介して定着ローラ30に対向するように配置されている。また、定着装置15bでは、加熱部材33が加熱ベルト32bの内周面に接触して加熱ベルト32bを加熱する。そして、加熱ベルト32bに保持される熱は、定着ローラ30が加熱ベルト32bの外周面に接触して形成される加熱ニップ部Mにおいて、定着ローラに伝達される。定着装置15bは、互いに圧接する定着ローラ30と加圧ローラ31との間に形成される定着ニップ部Nを記録紙Pが通過したとき、記録紙P上の未定着トナー像(トナーTが形成する像)を加熱加圧して記録紙P上に定着させる。また、記録紙Pが定着ニップ部Nを通過するときに、定着ローラ30は記録紙Pのトナー像担持面に当接し、加圧ローラ31は記録紙Pのトナー像担持面とは反対側の面に当接するようになっている。
定着ローラ30は、駆動手段(図示せず)により回転軸線まわりに図7の矢印方向に回転して、加熱ベルト32bを搬送する。定着ローラ30は、その内側から順に芯金、弾性層、離型層が形成された3層構造からなっている。そして、定着ローラ30の内部には、ハロゲンヒータからなるヒータランプ51が配置されている。また、定着ローラ30の周面近傍には、温度検知手段としての定着ローラ用のサーミスタ35Dが配置されており、定着ローラ30の表面温度を検出するようになっている。
加圧ローラ31は、定着ローラ30に対向しかつ圧接し、回転軸線まわりに回転自在に設けられ、定着ローラ30の回転に従動して回転する。
本実施形態では、加熱部材33が有する保持部材40は、定着ローラ30の外周面に沿って湾曲した形状にされており、保持部材40の外周面が加熱ベルト32bの幅方向全体に当接している。そして、ヒータ41は、保持部材40における加熱ベルト32bと当接する面とは反対面に接触して配置されている。
加熱ベルト32bは、湾曲して形成される保持部材40の外周面に沿うように設けられる無端状のベルト部材であり、基材の表面に離型層が形成された2層構造となっている。また、加熱ベルト32bは、定着ローラ30の図7における矢印方向への回転に従動して回転する。また、ヒータ41における保持部材40と当接する面とは反対面にはヒータ用のサーミスタ35A,35Bが接触配置されており、ヒータ41の表面温度を検出するようになっている。
本実施形態の加熱手段では、実施の形態1の定着装置15が備える加熱手段と同様に、メインヒータ基板41c用及びサブヒータ基板41b用の2つの電圧可変電源(図示せず)が給電部を介してそれぞれの主発熱体49及び主発熱体46に接続される。そして、制御手段(図示せず)がこの電圧可変電源による印加電圧値を、ヒータ41における投入電力値が一定となるように可変制御する。
以上のような構成の定着装置15bでは、記録紙P上の未定着トナー像は、加熱ベルト32b及び定着ローラ30を介して加熱部材33によって加熱されるとともに、定着ローラ30と加圧ローラ31との間に発生する圧接力によって加圧される。よって、用紙剥離性に優れ、安定した定着性能を確保することができる。
〔実施の形態5〕
本発明の帯電装置について図8及び9を用いて説明する。本実形態の帯電装置は、実施の形態1の転写前帯電装置21(以降単に帯電装置21とする)に本発明のヒータを用いた例であり、実施の形態1の定着装置15のヒータ41と共通する構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。本実施形態の帯電装置21は、イオン発生素子22と、対向電極60と、放電用電源28及び加熱用電源29とを備えた構成であり、沿面放電により被帯電物を帯電させる帯電装置である。
イオン発生素子22は、トナーTを帯電させるイオンを発生させるためのものであり、放電基板22a、ヒータ基板22b、ベース基板22c、ベース基板22dの4つの基板がこの順番で積層されて貼り合わせた平板状に形成されている。各基板を構成するセラミック材料としては、純度の高いアルミナ、結晶化ガラス、フォルステライト及びステアタイト、ガラスとアルミナの複合材料である低温同時焼結セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramic:LTCC)などのセラミック材料を使用することができる。また、各基板の厚さはいずれも0.2mmであり、イオン発生素子22としてのトータルの厚さは0.8mmである。
次にイオン発生素子の4つの基板について、図9を用いて詳細に説明する。なお、図9は4つの基板をそれぞれ正面から見た図である。
放電電極24は、何も形成されていない基礎基板の表面に基礎基板と一体化して形成される。つまり、放電電極24と基礎基板とから放電基板22aが構成される。放電電極24を構成する材料としては、たとえばタングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスなどのように、導電性を有するものであれば、特に制限なく使用することができるが、放電によって溶融するなどの変形を起こさないものであることが条件となる。本実施形態では、放電電極24は、銀パラジウムから成る材料で構成されている。放電電極24の形状は、イオン発生素子22と対向電極60との間を移動して帯電されるトナーの移動方向に直交する方向に延びており、放電電極24の縁辺が複数の先鋭部を有する鋸歯状となるように形成されるのが好ましい。
主発熱体27は放電電極24に対する誘導電極として機能すると同時に、イオン発生素子22を加熱することでイオン発生素子22の吸湿を防ぎ、帯電(放電)性能の低下を抑制するためのものである。主発熱体27は、何も形成されていない基礎基板の表面に基礎基板と一体化して形成される。つまり、主発熱体27と基礎基板とからヒータ基板22bが構成される。主発熱体27を構成する材料としては、たとえば金、タングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスなどのように、導電性を有するものであれば特に制限なく使用することができるが、通電・発熱によって溶融するなどの変形を起こさないものであることが条件となる。本実施形態では、主発熱体27は銀パラジウムから成る材料で構成される。主発熱体27のパターン形状としては、図9(b)に示すように対向する放電電極24を1周分取り囲むような形に形成されている。
また、ヒータ基板22bにおいて非発熱領域Gには、調整用抵抗体26が設けられている。調整用抵抗体26は、各々線幅の異なる4本の帯状抵抗体26A〜26Dが並列回路を構成するように並行に形成され、このような調整用抵抗体26が、基板の長手方向の左右に並んで配置されている。調整用抵抗体26の一端は主発熱体27に、また他端は給電端子部25bに接続されている。また、左右の調整用抵抗体26は全く同じ形状・仕様である。調整用抵抗体26を構成する材料としては、たとえば金、タングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスなどのように、導電性を有するものであれば特に制限なく使用することができるが、通電・発熱によって溶融するなどの変形を起こさないものであることが条件となる。本実施形態では、調整用抵抗体26は発熱体と同じ銀パラジウムから成る材料で構成される。
さらに、ヒータ基板22bの両端部には給電端子部25bが形成されている。給電端子部25bを構成する材料としては、たとえば金、タングステン、銀、銀パラジウム、ステンレスなどのように、導電性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。本実施形態では、給電端子部25bは発熱体と同じ銀パラジウムから成る材料で構成される。
放電基板22aの両端部の給電端子部25aと重なる位置には、4つの基板を積層しても給電端子部25aが露出するように開口部(キャビティ)23aが設けられている。このイオン発生素子22の製造方法については、実施の形態1のヒータ41と同様であるので、ここでは説明は省略する。
なお、帯電装置21においてその長手方向に帯電領域が異なる複数の放電電極を形成してもよく、この場合紙サイズに対応して必要な箇所のみ放電させることができる。その結果、オゾン発生量の低減や放電電極の長寿命化、低電力化などを図ることができる。
イオン発生素子22の放電電極24の給電端子部25aには、放電電極24に電圧を印加するための放電用電源28が接続されており、放電用電源28によって放電電極24と主発熱体(誘導電極)27との間に高電圧を印加することで、イオンを発生させる。具体的には、主発熱体(誘導電極)27が接地された状態で、放電用電源28が放電電極24に電圧を印加すると、放電電極24と主発熱体(誘導電極)27との間の電位差に基づいて、放電電極24近傍で沿面放電が起こる。この沿面放電によって、放電電極24の周囲に存在する空気がイオン化されて、マイナスイオンが発生する。
またイオン発生素子22のヒータ基板22bの給電端子部25bには、ヒータ基板22bの主発熱体及び調整用抵抗体26に通電するための加熱用電源29が接続されており、加熱用電源29によってヒータ基板22bに通電されることで、主発熱体27及び、帯状抵抗体26A〜26Dのうち主発熱体27及びそれに電気的接続しているものが、ジュール熱によって発熱する。このように発熱することによって、イオン発生素子22が、例えば60℃に加熱される。
対向電極60は、イオン発生素子22の放電電極24と対向して配置され、イオン発生素子22によって発生したイオンの流れを制御する。対向電極60を構成する材料としては、たとえばステンレス、銅、アルミ合金などのように、導電性を有するものであれば、特に制限なく使用することができる。本実施形態では、対向電極60はステンレス製で板状に形成され、電気的に接地されている。このように対向電極60を構成することによって、イオン発生素子22の放電電極24近傍で発生したイオンが対向電極60に向けて流れ(図8の破線矢印方向)、トナーTを所定の電位に帯電させることができる。
なお、本実施形態の帯電装置は、実施の形態1の定着装置15を有する画像形成装置100において用いられるものとしたが、もちろん定着装置が実施の形態1の定着装置15ではない画像形成装置に用いることができる。つまり、本発明の画像形成装置は、本発明の定着装置または帯電装置のいずれか一方を備えていてもよいし、両方を備えていてもよい。また、本発明の帯電装置は、転写前帯電装置だけでなく、静電潜像担持体を帯電させる帯電装置にも用いることができる。
以上、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に開示した範囲で、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。