JP5472414B2 - 新規カルボン酸化合物、その用途及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンの中間体として有用な新
規カルボン酸又はその塩、その製造方法、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキ
プロパンの製造方法に関する。
化学式:(CF3)2CH(OCH3)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパ
ンは、麻酔薬セボフルランの原料として有用な物質である(下記特許文献1、2等参照)。セボフルランを安価に製造することは重要な課題であり、これまでに種々の方法が検討されている。
例えば、下記特許文献1には、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)をメチル化して得られる1,1,1,3,3,3,-ヘキサフルオロ-2-プロピルメチルエーテルを塩素ガスと反応させて1,1,1,3,3,3,-ヘキサフルオロ-2-プロピルクロロメチルエーテルとした後、有機溶媒中でKFと反応させてセボフルランとする方法、1,1,1,3,3,3,-ヘキサフルオロ-2-プロピルメチルエーテルをBrF3と反応させる方法、HFIPをフッ化水素及びホルムアルデヒドと反応させる方法等が記載されている。
しかしながら、上記したクロロメチルエーテルをKFでフッ素化する反応は、高温と長時間の反応を要するという欠点があり、工業的に実施するには問題がある。また、メチルエーテルをBrF3と反応させる方法は、危険性の高いBrF3を取り扱う必要があり、大量生産には適した方法ではない。また、HFIPを、フッ化水素及びホルムアルデヒドと反応させる方法は、ポリエーテルが副生するために収率が低いという問題がある。
これらの問題点を解決する方法として、例えば、下記特許文献3には、フッ化水素とパラホルムアルデヒドを硫酸存在下にHFIPと反応させる方法が開示されている。また、下記特許文献2には、HFIPのメチルエーテルを塩素ガスと反応させて1,1,1,3,3,3,-ヘキサ
フルオロ-2-プロピルクロロメチルエーテルとした後、フッ化水素およびアミンと反応さ
せる方法が開示されている。
また、硫酸存在下にHFIPをフッ化水素及びパラホルムアルデヒドと反応させる方法については、収率を改善する方法として、さらに次のような発明がなされている。
例えば、下記特許文献4には、反応で副生したポリエーテル化合物をフッ化水素と硫酸などの反応促進剤と反応させてセボフルランを得る方法が開示されている。下記特許文献5には、フッ化水素とパラホルムアルデヒドを硫酸存在下にHFIPと反応させ、生成するセボフルランを蒸留あるいは抽出によって平衡混合物から抜き出し、収率を高める方法が開示されている。
この他、特許文献6には、HFIPとビス(フルオロメチル)エーテルを酸存在下に反応させる方法が開示されている。
セボフルランの製造方法としては、上述した方法以外にも数多くの方法が知られているが、その殆どはHFIPを原料とする方法である。HFIPの製造方法としてはヘキサフルオロアセトン又はその水和物を、触媒存在下に水素還元する方法が知られている(下記特許文献7,8等参照)。また、ヘキサフルオロアセトンの製造方法としてはヘキサフルオロプロピレンオキサイドを触媒存在下に転位させる方法(特許文献9)やヘキサクロロアセト
ンをフッ化水素でフッ素化する方法(特許文献10)等が知られている。しかしながら、前者の製法は、原料のヘキサフルオロプロピレンオキサイドが高価であるという問題がある。また、後者の方法は、生成したヘキサフルオロアセトンと塩酸との分離や、副生成物であるクロロフルオロアセトンの分離等の精製方法が複雑であり、コストが高いという問題がある。
このような背景から、ヘキサフルオロアセトンを安価に製造する為の検討がなされている。特にフッ素樹脂のモノマーとして大量に生産されるヘキサフルオロプロペンの副生成物であるオクタフルオロイソブテンをメタノールと反応させた(CF32CHCF2OCH3(2
H−オクタフルオロイソブチルメチルエーテル、以下OIMEと略称する)や、OIMEを脱HFして得られる(CF3)2C=CFOCH3(ヘプタフルオロイソブテニルメチルエーテル、以下HIMEと略記する)を原料とする方法が注目される。
例えば、特許文献11には、HIMEを光照射下に酸素と反応させてヘキサフルオロアセトン水和物を製造する方法が開示されている。
特許文献12には、OIME又はHIMEを活性炭触媒下、酸素と反応させてヘキサフルオロアセトンまたはその水和物を得る方法が開示されている。
さらに、特許文献13には、OIMEをトリエチルアミンと反応させてヘキサフルオロアセトンオキシムとし、これを酸で加水分解してヘキサフルオロアセトンを得る方法が開示されている。
また、特許文献14には、(CF32C(OH)CO2CH3(3,3,3-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-2-ヒドロキシプロピオン酸メチル)(以下MTTHPと略記する。)を加水分解し、ハロゲン化剤と反応させて脱炭酸し、ヘキサフルオロアセトン水和物を製造する方法が開示されている。
しかしながら、HIMEの光酸化を利用する方法は、工業的に光照射を行うことが困難である上に、収率が低いという問題がある。また、活性炭触媒を使用する酸化方法は、触媒の劣化が著しく、長期的な運転が出来ないことや、ヘキサフルオロアセトンの選択率が低いこと等の問題がある。トリエチルアミンと反応させてオキシムとする方法は、副原料であるトリエチルアミンが高価であるという問題がある。MTTHPを加水分解、ハロゲン化脱
炭酸する方法は副原料が安価でかつ収率が高いものの、工程数が長いという欠点を有している。
HFIPをヘキサフルオロアセトンを経由することなく安価に製造する方法については次のような検討がなされている。
例えば、特許文献15には、HIMEを酸化してMTTHPを合成し、これを加水分解して、
プロトン性溶媒存在下に脱炭酸させてHFIPを得る方法が開示されている。しかしながら、本発明者らが追試した結果、この方法では脱炭酸の際にCF3(HCF2)C=O(ペンタフルオロアセトン)が副生し、収率が低いことが判明した。
このように、ヘキサフルオロアセトンやHFIPを安価に製造することは重要な課題であるが、未だに満足の行く結果が得られていない。
従って、セボフルランを安価に製造する為に、ヘキサフルオロアセトンやHFIPを安価に製造する方法の開発、あるいはこれらを経由しないセボフルランの製造方法の開発等が強く望まれている。
米国特許第3,683,092号 特開平11-116521号公報 米国特許第4,250,334号 国際公開WO97/30961 米国特許第6,469,21号 米国特許第5,990,359号 特公昭61-25694号公報 特開平6-184025号公報 米国特許第3,321,515号 米国特許第3,544,633号 特開昭61-277645号公報 特開平1-203339号公報 米国特許第5,466,879号 特開2005-306747号公報 特開2002-234860号公報
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、麻酔薬セボフルランの原料として有用な一般式:(CF3)2CH(OCH3)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンを効率的且つ安価に製造できる方法、及び該化合物
の製造に有用な新規化合物を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、公知化合物である3,3,3-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-2-ヒドロキシプロピオン酸エステルを原料として用い、このヒドロキシ基をメチル化剤と反応させた後、加水分解する方法、或いは、上記原料を加水分解した後、メチル化剤と反応させる方法によれば、新規なカルボン酸又はその塩を高収率で得ることができることを見出した。そして、該カルボン酸又はその塩を加熱脱炭酸することによって、目的とする1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メ
トシキプロパンを、比較的簡単な方法によって収率良く製造することが可能となることを見出した。更に、上記脱炭酸反応の副生成物であるオレフィンについても、特定のフッ素化剤と反応させることによって目的とする1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロ
パンとすることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
即ち、本発明は、下記の新規カルボン酸化合物及びその製造方法、並びに、該カルボン酸化合物からの1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンの製造方法を提供するものである。
1. 化学式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸又はその塩。
2. 化学式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸又はその塩を脱炭酸することを特徴とする、化学式(2):(CF3)2CH(OCH3)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパンの製造方法。
3. 有機溶媒の存在下に脱炭酸反応を行う上記項2に記載の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパンの製造方法。
4. 化学式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸又はその塩に対して等モル以上の水と有機溶媒の存在下に脱炭酸反応を行う上記項2に記載の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパンの製造方法。
5. 有機溶媒が、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、ケトン系溶媒、スルホン系溶媒及びスルホキシド系溶媒からなる群から選ばれた少なくとも一種である上記項3又は4に記載の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパンの製造方法。
6. 更に、化学式:MF・(HF)(式中、Mは、H,Na,K又はCsであり、nは0〜2の整数である。)で表される一種又は二種以上のフッ素化剤の存在下に脱炭酸反応を行う上記項2〜5のいずれか1項に記載の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパンの製造方法。
7. 化学式(4):CF2=C(CF3)(OCH3)で表される1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-メトキシプロペンを、化学式:MF・(HF)n(式中、Mは、H,Na,K又はCsであり、nは0〜2の整数である。)で表される一種又は二種以上のフッ素化剤と反応させることを特徴とする化学式(2):(CF3)2CH(OCH3)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパンの製造方法。
8. 一般式(3):
(CF3)2C(OH)COOR
(式中、Rは炭化水素基であり、該炭化水素基は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれた少なくとも一種の原子を有しても良い。)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを、メチル化剤と反応させた後、加水分解することを特徴とする、化学式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸又はその塩の製造方法。
9. メチル化剤が、ジメチル硫酸、クロロメタン、ブロモメタン及びヨードメタンからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である上記項8に記載の方法。
10. 一般式(3):
(CF3)2C(OH)COOR
(式中、Rは炭化水素基であり、該炭化水素基は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれた少なくとも一種の原子を有しても良い。)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを加水分解して、化学式:(CF3)2C(OH)CO2Hで表される1,1,1−トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-2-ヒドロキシプロピオン酸又はその塩とした後、メチル化剤と反応させることを特徴とする、化学式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸又はその塩の製造方法。
11. メチル化剤が、ジメチル硫酸、クロロメタン、ブロモメタン及びヨードメタンからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である上記項10に記載の方法。
以下、まず、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンの中間体として有用
な新規カルボン酸化合物及びその製造方法について記載し、次いで、該カルボン酸化合物から1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンを製造する方法について記載する
新規カルボン酸化合物及びその製造方法
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンの中間体として有用な新規カルボン
酸又はその塩は、一般式(3):(CF3)2C(OH)COOR(式中、Rは炭化水素基であり、該炭化水
素基は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれた少なくとも一種の原子を有しても良い。)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを原料として製造することができる。一般式(3)で表される化合物は公知物質であり、例えば、特開2002-234860号公報等に記載されている。
上記一般式(3)において、Rで表される炭化水素基としては、炭素数1〜10のアル
キル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ヘキシル基が好ましい。アリール基としてはフェ
ニル基、ナフチル基、ピリジル基、クロロフェニル基等が好ましい。アラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基等が好ましい。これらの内で、製造コストが安価であることからメチル基が特に好ましい。
(i)本発明では、第一の方法として、上記一般式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを、メチル化剤と反応させた後、加水分解することによって、化学式(1):(CF3)2C(OCH)COOHで表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸又はその塩を得ることができる。
上記化学式(1)で表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸又はその塩は、文献未記載の新規化合物であり、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンの中間体として有用な物質である。
上記化学式(1)で表されるカルボン酸の塩としては、各種の金属塩、アンモニウム塩等を例示できる。例えば、Li+,Na+,K+,NH4 +,H+,Ag+等の1価のカチオンの塩、1/2Mg2+、1/2Ca2+、1/2Ba2+、1/2Pb2+、1/2Cu2+、等の2価のカチオンの塩、1/3Al3+、1/3Fe3+等の3価のカチオンの塩等が挙げられる。これらの内で、Li+、Na+、K+、1/2Mg2+、1/2Ca2+等の塩は、エステルの加水分解により容易に得ることが出来るため、特に好ましい。
一般式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルのメチル化は、アルカリ性化合物の存在下に、該ヒドロキシカルボン酸エステルとメチル化剤とを反応させることによって行うことができる。この反応は、溶媒の存在下又は非存在下に行うことができる。
メチル化剤としては、一般的なアルコールのメチル化剤として知られている化合物を用いることができる。メチル化剤の具体例としては、クロロメタン(CH3Cl)、ブロモメタ
ン(CH3Br)、ヨードメタン(CH3I)等のハロゲン化メタンの他、ジメチル硫酸やジメチル
カーボネート等を挙げることができる。
メチル化剤の使用量は、一般式(3) で表されるヒドロキシカルボン酸エステル1
当量に対して、0.2当量〜10当量程度、好ましくは1〜2当量程度、より好ましくは1当量〜1.5当量程度とすればよい。
メチル化に際しては、水酸基をアルコキシドとする為に、アルカリ性化合物の添加が必要である。添加するアルカリ性化合物としては、アルカリ金属(Li,K,Na等)又はアル
カリ土類金属(Mg,Ca,Ba等)の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物等が好適に使用できる。アルカリ性化合物の使用量は、一般式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸エステル1当量に対して、0.2当量〜10当量程度、好ましくは1当量〜2当量程度、さらに好ましくは1当量〜1.5当量程度とすればよい。
反応温度は、使用するメチル化剤の種類によっても異なるが、通常、0〜200℃程度、好ましくは20〜120℃程度、より好ましくは30〜100℃程度とすればよい。反応時間は、通常10分〜24時間程度、好ましくは1〜10時間程度とすればよい。
上記工程で得られたメチル化されたエステル化合物は、アルカリ性化合物又は酸触媒の存在下に、水と反応させて加水分解を行うことによって、化学式(1)で表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸又はその塩とすることができる。アルカリ性化合物としては、アルカリ金属(Li,K,Na等)又はアルカリ土類金属
(Mg,Ca,Ba等)の水酸化物、酸化物、炭酸塩等を好適に使用できる。酸触媒としては硫酸、塩酸、硝酸、燐酸等が好適に使用できる。アルカリ性化合物の使用量は、上記メチル化されたエステル化物1当量に対して0.2当量〜10当量程度、好ましくは1当量〜2当
量程度、より好ましくは1当量〜1.5当量程度とすればよく、酸触媒の使用量は、上記メチル化されたエステル化物1当量に対して、0.01当量〜10当量程度、好ましくは0.1当量〜1当量程度とすればよい。
反応温度は、使用するアルカリ性化合物又は酸触媒の種類によって異なるので一概に規定できないが、通常、0〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度、より好ましくは30〜60℃程度とすればよい。
反応時間は、通常、10分〜24時間程度とすればよく、好ましくは1〜10時間程度とすればよい。
上記した化学式(1)で表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸は、酸触媒の存在下に加水分解を行うことによって得ることができる。また、該カルボン酸の塩の内で、Li、K、Na、Mg、Ca等の塩は、これらの金属成分を含む
アルカリ性化合物の存在下に加水分解を行うことによって得ることができる。Mがその他の金属原子である塩、アンモニウム塩等は、加水分解によって得られた一般式(1)で表される酸又は塩から、塩交換反応又は塩形成反応によって得ることができる。
(ii)本発明では、第二の方法として、上記一般式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを加水分解して、化学式:(CF3)2C(OH)CO2Hで表される1,1,1−トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-2-ヒドロキシプロピオン酸又はその塩とした後、これをメチル化剤と反応させることによっても、一般式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表されるカルボン酸
又はその塩を得ることができる。
一般式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルの加水分解は、上記した第一方法におけるメチル化されたエステル化合物の加水分解と同様の方法で行うことができる。MがLi、K、Na、Mg、Ca等である化合物は、これらの金属成分を含むアルカリ性化合物
の存在下に加水分解を行うことによって得ることができる。Mがその他の金属原子である塩、アンモニウム塩等は、加水分解によって得られた化学式:(CF3)2C(OH)CO2Hで表され
る1,1,1−トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-2-ヒドロキシプロピオン酸又はその塩か
ら、塩交換反応又は塩形成反応によって得ることができる。
次いで、1,1,1−トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-2-ヒドロキシプロピオン酸又は
その塩をメチル化剤と反応させることによって、一般式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表
されるカルボン酸又はその塩を得ることができる。
メチル化剤との反応は、上記した第一方法におけるヒドロキシカルボン酸エステルと、メチル化剤との反応と同様の条件で行うことができる。
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンの製造方法
(i)脱炭酸反応:
本発明では、上記第一方法又は第二方法で得られた化学式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで
表される2-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピオン酸又はその塩を加熱脱炭酸することによって、化学式(2):(CF3)2CH(OCH3)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンを得ることができる。
脱炭酸反応は、化学式(1)で表されるカルボン酸又はその塩を、加熱することによって行うことができる。化学式(1)で表されるカルボン酸を用いる場合には、固体状態で加熱しても良いが、化学式(1)で表されるカルボン酸の塩を用いる場合には、水の存在下に脱炭酸反応を行うことが必要である。この場合、水の使用量は、化合物(1)で表されるカルボン酸の塩に対して等モル以上とすることが必要である。また、水を溶媒として
、水溶液の状態で加熱してもよい。水溶液として脱炭酸反応を行う場合、化学式(1)で表されるカルボン酸又はその塩の濃度は特に限定的ではないが、通常、0.1〜60mass%程度とすることができ、飽和濃度を超える量のカルボン酸又はその塩を含んでいても良い。特に、高度度とすることによって、効率良く反応を行うことができる。
また、有機溶媒の存在下に、上記した脱炭酸反応を行うことによって、脱炭酸反応の際に生じる副生成物である化学式(4):CF2=C(CF3)(OCH3)で表されるオレフィン化合物、
化学式(5):CF3CH(OCH3)(COONa)で表される加水分解物などの生成を抑制して、目的
物である一般式(2):(CF3)2CH(OCH3)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メト
シキプロパンの収率を向上させることができる。
有機溶媒としては、誘電率の高い溶媒を用いることが好ましく、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルスルホキシド等にスルホキシド系溶媒、スルホラン等のスルホン系溶媒などを好適に用いることができる。これらの有機溶媒は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
有機溶媒中における化学式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表されるカルボン酸又はその塩
の濃度は、特に限定的ではないが、通常、0.01〜1mol/L程度とすればよい。
有機溶媒中で脱炭酸反応を行う場合には、水を添加して、混合溶媒中で反応を行っても良い。混合溶媒とする場合の有機溶媒と水の比率については特に限定的ではないが、例えば、容量比で100:1〜1:100程度とすることができる。
特に、化学式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表されるカルボン酸の塩の脱炭酸反応を有機
溶媒中で行う場合には、上記した通り、該塩に対して等モル以上の水を添加することが必要である。水を添加しない場合には、オレフィン化合物の選択率が高くなり、目的物の選択率が低下する。特に、上記カルボン酸塩1モルに対して1〜30モル程度の水を添加することが好ましく、5〜15モル程度の水を添加することがより好ましい。
化学式(1)で表されるカルボン酸又はその塩を単離した後、脱炭酸反応を行ってもよく、或いは、化学式(1)で表されるカルボン酸又はその塩を単離することなくそのまま脱炭酸反応を行っても良い。化学式(1)で表されるカルボン酸又はその塩を単離しない場合には、原料とする一般式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルから、ワンポットで脱炭酸を行うことができる。
但し、ワンポットで脱炭酸反応を行う場合には、加水分解生成物であるROHで表される
アルコールと、目的物である化学式(2)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メ
トシキプロパンとの混合物が生成する。ROHで表されるアルコールは水洗することによっ
て目的物であるフルオロアルキルエーテルと分離することが出来るが、アルコールを含む排水が発生してコストが高くなる。このため、化学式(1)で表されるカルボン酸又はその
塩とROHで表されるアルコールとを蒸留によって分離した後に、加熱脱炭酸反応を行うこ
とが好ましい。
脱炭酸反応の反応温度は、通常、60〜200℃程度とすればよく、80〜150℃程度が好ましく、80〜120℃程度がより好ましい。反応温度が低過ぎると反応速度が遅くなり、一方高
すぎると望ましくない副生成物の量が多くなるので好ましくない。
反応速度を上げる為に、(ポリ)エチレングリコール及びそのアルキルエーテルからな
る群から選ばれた少なくとも一種の成分の添加が効果がある。好ましい添加剤としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、これらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル等のモノアルキルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のジアルキルエーテル等が挙げられる。
(ポリ)エチレングリコール及びそのアルキルエーテルの添加量としては、化学式(1)で
表されるカルボン酸又はその塩 1重量部に対して0〜100重量部程度、好ましくは0.001
〜10重量部程度である。上記添加剤を使用しない場合、反応時間が長くなるが反応は問題なく進行する。
反応時間は反応温度、添加剤の使用量にもよるが、添加剤を使用した場合、80℃で2-5
時間程度あれば十分である。
上記した脱炭酸反応を行う際に、更に、化学式:MF・(HF)n(式中、Mは、H,Na,K又はCsであり、nは0〜2の整数である。)で表される一種又は二種以上のフッ素化剤を添加することによって、目的物である化学式(2)の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシ
キプロパンの収率をより向上させることができる。
化学式:MF・(HF)nで表されるフッ素化剤の具体例としては、フッ化水素、フッ化ナト
リウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、酸性フッ化カリウム(KHF2)、酸性フッ化ナトリウム(NaHF2)等を挙げることができる。これらのフッ素化剤は、一種単独又は二種
以上混合して用いることができる。
化学式:MF・(HF)nで表されるフッ素化剤の使用量は、化学式(1)で表されるカルボ
ン酸又はその塩1当量に対して、0.01〜3当量程度とすることが好ましく、0.5〜1.2当量程度とすることがより好ましい。
フッ素化剤は、固体状態で脱炭酸反応する方法、及び溶液状態で脱炭酸反応する方法のいずれの場合にも使用できるが、フッ素化剤が、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム又はフッ化セシウムである場合には、該フッ素化剤に対して等モル程度以上の水の存在下に反応を行うことが必要である。
尚、上記した通り、特許文献15(特開2002-234860号公報)には、一般式(3)で表
される化合物を脱炭酸してHFIPを製造する方法が開示されているが、この方法では、酸性条件で脱炭酸を行ってもHCF2COCF3で表されるペンタフルオロアセトンが大量に副生して
収率が低下する。一方、本発明方法では、反応液のpHは目的物の収率に影響することがなく、酸の添加の有無にかかわらず、このようなCF3基がCF2H基となった副生成物を生じる
ことなく、高収率で脱炭酸を行うことが可能である。
(ii) オレフィンのHF付加反応:
一般式(2)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンは、化学式(4):CF2=C(CF3)(OCH3)で表される1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-メトキシプロペン(以下、「オレフィン化合物」という)を、上記した化学式:MF・(HF)n(式中、Mは、H,N a,K又はCsであり、nは0〜2の整数である。)で表される一種又は二種以上のフッ素化剤と反応させる方法によっても製造することができる。
前述した通り、化学式(1):(CF3)2C(OCH3)COOHで表されるカルボン酸又はその塩の
脱炭酸反応によって一般式(2)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプ
ロパンを製造する際に、副生成物として化学式(4):CF2=C(CF3)(OCH3)のオレフィン化
合物が生成する。このオレフィン化合物を化学式:MF・(HF)n(式中、Mは、H,Na,K又はCsであり、nは0〜2の整数である。)で表される一種又は二種以上のフッ素化剤と反応
させる場合には、化学式(1)で表されるカルボン酸又はその塩を原料として、トータルでの一般式(2)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンの収率を大
きく向上させることができる。
化学式(4):CF2=C(CF3)(OCH3)で表されるオレフィン化合物と化学式:MF・(HF)nで表されるフッ素化剤との反応は、例えば、上記した有機溶媒、水、又は上記有機溶媒と水との混合溶媒等を溶媒として行うことができる。溶液中での化学式(4):CF2=C(CF3)(OCH3)で表されるオレフィン化合物の濃度は、通常、0.1〜8mol/L程度とすればよい。特に
、有機溶媒として、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルスルホキシド等にスルホキシド系溶媒、スルホラン等のスルホン系溶媒などを用いる場合には、目的とする一般式(2)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルエーテル化合物を高収率で得ることができる。
尚、フッ素化剤が、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム又はフッ化セシウムである場合には、該フッ素化剤に対して等モル程度以上の水の存在下に反応を行うことが必要である。
化学式:MF・(HF)nで表されるフッ素化剤の使用量は、化学式(4):CF2=C(CF3)(OCH3)で表されるオレフィン化合物1当量に対して、1〜2当量程度とすることが好ましい。
化学式(4):CF2=C(CF3)(OCH3)で表されるオレフィン化合物と化学式:MF・(HF)nで表されるフッ素化剤との反応は、通常、60〜120℃程度の温度範囲で行うことができる。この際の反応雰囲気は特に限定はないが、N等の不活性ガス雰囲気の密閉系で反応を行うことが好ましい。
反応時間は、反応温度、添加剤の使用量等にもよるが、通常、1〜10時間程度である。
上記した脱炭酸反応又はHF付加反応で得られる化学式(2)の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンは、公知の方法で分離精製することが可能である。例えば、蒸
留、抽出などの方法で精製することができる。
本発明によれば、公知物質である一般式(3)で表されるヒドロキシカルボン酸エステルを原料として、麻酔性を有する化合物又はその原料として有用な1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンを、効率的且つ安価に製造することができる。
また、本発明によれば、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトシキプロパンの中間体等
として有用な、新規物質である化学式(1)で表されるカルボン酸又はその塩を高収率で得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
(i) 滴下ロート、温度計および撹拌子を有する1 L四ツ口フラスコ中に(CF3)2C(OH)CO2CH3 300 g(1.33 mol)とアセトン 300gを仕込み、氷浴下で撹拌しながらK2CO3183 g(1.33 mol)を加えた。氷浴から水浴に換え、(CH3O)2SO2 176 g(1.39 mol)を内温が30 ℃
以下となるように滴下した。1時間撹拌後、滴下ロートを冷却管に換え、還流温度まで昇
温して3時間反応させた。ガスクロマトグラフィーで分析し、(CF3)2C(OH)CO2CH3が完全に消費されていることを確認した。H2Oを加え、分液漏斗により下層の有機層を分取した後
、H2Oで2回洗浄した。得られた有機層を減圧蒸留(150 mmHg、86-88 ℃)することで、(CF3)2C(O CH3)CO2 CH3を247 g(1.03 mol)、単離収率78%で得た。
(ii) 次いで、滴下ロート、冷却管、温度計および撹拌子を有する100 mL四ツ口フラス
コ中に、(CF3)2C(O CH3)CO2 CH3 10 g(41.7 mmol)を仕込み、60 ℃で撹拌しながら、20wt% NaOH 水溶液8.34 g(41.7 mol)を滴下した。滴下終了後、60 ℃で3時間反応させた
19F NMRで分析し、(CF3)2C(OCH3)CO2CH3が完全に消費されていることを確認した。得られた反応溶液をエバポレーションし、白色固体である(CF3)2C(O CH3)CO2Naを10.3 g得た
。得られた化合物のスペクトルデータは次の通りである。19F-NMR:-70.98ppm(CF3
実施例2
滴下ロート、温度計および撹拌子を有する100 mL四ツ口フラスコ中に、実施例1の(i)工程で得た(CF3)2C(OCH3)CO2CH3 10 g(41.7 mmol)を仕込み、水浴下で撹拌しながら、20wt% KOH 11.7 g(41.7 mmol)を滴下した。滴下終了後、水浴下で18時間反応させた。19F NMRで分析し、(CF3)2C(O CH3)CO2CH3が完全に消費されていることを確認した。得られ
た反応溶液をエバポレーションし、白色固体である(CF3)2C(OCH3)CO2Kを11.0 g得た。得
られた化合物のスペクトルデータは次の通りである。19F-NMR:-70.64ppm(CF3
実施例3
滴下ロート、温度計および撹拌子を有する100 mL四ツ口フラスコ中に(CF3)2C(OH)CO2CH3 51.3g(0.227mol)を仕込み、水50ml及びメタノール50mlを加えた後、40℃の温浴で加熱・撹拌下、25%KOH水溶液51g(0.227mol)をゆっくりと滴下した。水層を分取後、エバポ
レーターで濃縮してメタノール除去し、79gの (CF3)2C(OH)CO2K 水溶液を得た。
100mlの4つ口フラスコに、上記で得たカリウム塩水溶液10g(0.029mol)及び25%KOH水溶液9.0g(0.04mol)を加えた後、水冷・撹拌下、ジメチル硫酸 5.0g(0.04mol)を内温45℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、内温上昇が止まっているのを確認した後、湯浴により加温し、内温45〜50℃で3時間加熱撹拌した。反応液を分析した結果、(CF3)2C(OH)CO2Kの転化率66%、選択率100%で(CF3)2C(OCH3)CO2Kが得られた。19F-NMR:-70.64ppm(CF3
実施例4
オートクレーブ中に、予め調製しておいた(CF3)2C(OCH3)CO2K 1.5mmol / g水溶液 2.0 g(3.0 mmol)およびテトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)1.7
gを仕込み、80 ℃で2時間反応させたところ、反応圧力は大気圧から 0.35MPa まで上昇
した。放冷後、残圧を放出し、トリフルオロエタノールを用いた19F NMR内部標準法で分
析したところ、(CF3)2C(OCH3)CO2K転化率は99%以上で、(CF3)2CH(OCH3)が選択率88%で得
られた。
実施例5
オートクレーブ中に、予め調製しておいた(CF3)2C(OCH3)CO2Na 1.5mmol / g水溶液 2.0
g(3.0 mmol)を仕込み、pH 1となるまで5wt% H2SO4水溶液を加えた。次いで、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム) 1.7 gを仕込み、100 ℃で2時間
反応させたところ、反応圧力は大気圧から 0.42MPa まで上昇した。放冷後、残圧を放出
し、トリフルオロエタノールを用いた19F NMR内部標準法で分析したところ、(CF3)2C(OCH3)CO2Na転化率は99%以上で、(CF3)2CH(OCH3)が選択率90%で得られた。
実施例6
10mLオートクレーブに、(CF3)2C(OCH3)CO2Na:0.79g(3.18mmol)、水0.86ml(原料に
対して15当量)、及び下記表1に示す溶媒4.14mlを加え、150℃で、3時間加熱攪拌した。冷却後、適量のペンゾトリフロリドを添加し19F-NMRにて反応収率を決定した。結果
を下記表1に示す。
表1では、目的物である(CF3)2CH(OCH3)をHFMOPで表し、副生成物であるCF2=C(CF3)(OCH3)をオレフィン、CF3CH(OCH3)(COONa)を加水分解体と記載する。また、溶媒は、NMP(N-メチルピロリドン)、MeCN(アセトニトリル)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMAc(N,N-ジメチルアセトアミド)の各記号で示す。
Figure 0005472414
実施例7
Figure 0005472414
容量1リットルのSUS製オートクレーブに、48.2mass%(CF3)2C(OCH3)CO2Na水溶液:150.5g(純分:292.5mmol)、と溶媒であるNMP:300mlを仕込んだ。その後、密閉し、約130℃
で5.5時間脱炭酸反応を行った。
次いで、反応器にPFAチューブで、氷浴、ドライアイス/アセトントラップ(2連結)を
取り付けた。その後、攪拌しながら、オートクレーブ内圧力を大気圧まで開放した。
大気圧に戻った時点で、オートクレーブを段階的に約110℃まで加熱し、内容物を抜き
出した(水の流出が起きるまで)。
ドライアイス/アセトン、氷浴に溜まった液を混ぜ合わせ、GC及びNMR測定を行い、定性・定量分析を行った。オートクレーブ内の残液(溶媒)についてもNMR測定を行い、副生
成物の分析を行った。結果を下記表2に示す。表2では、生成物を表1と同様の略号で表す。
Figure 0005472414
以上の結果をまとめると下記の通りである。
HFMOP収率 :223.1mmol/292.5mmol×100 =76.3%
留分選択率(HFMOP:オレフィン) =99.8% : 0.2%
HFMOP :(オレフィン+加水分解体) = 88.0% : 12.0%
マテリアルバランス:253.6mmol/292.5mmol×100=86.7%
実施例8
Figure 0005472414
300mLSUSオートクレーブに(CF32C(OCH3)CO2Na:25.0g(100.8mmol)、KF:HF=11.4g(146.2mmol)及び水:25gを仕込み、約50mass%の水溶液を作製した。次にオートクレーブを減圧にし、NMP:100mlを吸引仕込みした。その後、約130〜150℃で約6時間脱炭酸反応を行った。
次いで、反応器にPFAチューブで、氷浴、ドライアイス/アセトントラップを取り付けた。その後、室温で攪拌しながら、オートクレーブ内圧力を大気圧まで開放した。
大気圧に戻った時点で、オートクレーブを段階的に約110℃まで加熱し、内容物を抜き
出した(水の流出が起きるまで)。
ドライアイス/アセトン、氷浴に溜まった液を混ぜ合わせ、GC及びNMR測定を行い、定性・定量分析を行った。オートクレーブ内の残液(溶媒)についてもNMR測定を行い、副生
成物の分析を行った。結果を下記表3に示す。
Figure 0005472414
以上の結果をまとめると下記の通りである。
HFMOP収率 :92.6mmol/100.8mmol×100 =91.9%
留分選択率(HFMOP:オレフィン) =99.9%up : N.D.
HFMOP :(オレフィン+加水分解体) = 99.1% : 0.9%
マテリアルバランス:93.5mmol/100.8mmol×100=92.8%
実施例9
オレフィンのHF付加反応
Figure 0005472414
10mLオートクレーブに、CF3C(OCH3)=CF2:0.52g(3.18mmol)、水0.86ml、フッ化カリ
ウム0.28g(4.77mmol)、及び下記表4に示す溶媒4.14mlを加え、150℃で3時間加熱攪拌し
た。冷却後、適量のペンゾトリフロリドを添加し19F-NMRにて反応収率を決定した。結
果を下記表4に示す。
表4では、生成物は、表1と同様の記号で示す。また、溶媒の項目では、NMP(N-メチ
ルピロリドン)、MeCN(アセトニトリル)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMAc(N,N-ジメチルアセトアミド)、及びDMF(ジメチルホルムアミド)の各略号を用いる。
Figure 0005472414
実施例10
Figure 0005472414
10mLオートクレーブに、CF3C(OCH3)=CF2:0.52g(3.18mmol)、水0.86ml及びNMP4.14mlと、下記表5に示すフッ素化剤をCF3C(OCH3)=CF2に対して1.5倍当量加え、150℃で3時間
加熱攪拌した。冷却後、適量のペンゾトリフロリドを添加し19F-NMRにて反応収率を決
定した。結果を下記表5に示す。
Figure 0005472414

Claims (1)

  1. 化学式(4):CF2=C(CF3)(OCH3)で表される1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-メトキシプロペンを、化学式:MF・(HF)n(式中、Mは、H,Na,K又はCsであり、nは0〜2の整数である。)で表される一種又は二種以上のフッ素化剤と反応させることを特徴とする化学式(2):(CF3)2CH(OCH3)で表される1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパンの製造方法。
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