本発明の第一の実施の形態による電動工具について図1乃至図5に基づき説明する。図1に示される打撃工具であるハンマドリル1は、ハウジング2と、モータ3と、往復運動変換機構4と、打撃機構5とを主に備え、ドリルビット等の先端工具1Aを装着可能に構成されており、打撃による穿孔及び回転切削による穿孔が可能な工具である。
ハウジング2は、ハンドル部21と、モータハウジング22と、支持部材23と、ギアハウジング24とから主に構成されている。以下の説明においては、モータハウジング22からハンドル部21が延出される方向を下方向として上下方向を定義し、モータハウジング22からギアハウジング24へと向かう方向を前方向として前後方向を定義する。
ハンドル部21には電源ケーブル11が取付けられると共に、スイッチ機構(図示せず)が内蔵されている。図示せぬスイッチ機構には使用者により操作可能なトリガ12が機械的に接続されている。電源ケーブル11はスイッチ機構を外部電源(図示せず)に接続し、トリガ12を操作することにより、スイッチ機構と電源との接続と断続とが切換えられる。
モータハウジング22は、ハンドル部21の上部に設けられており、内部にモータ3を内蔵している。ハンドル部21とモータハウジング22とは、硬質樹脂成型品で一体成型されている。
支持部材23は、モータハウジング22の前側に配置されてモータハウジング22とギアハウジング24とを接続しており、基部23Aと、シリンダ部支持部23Bと、軸保持部23Cとから主に構成されている。
基部23Aは、モータ3の前側に配置されてモータ3が収容されるモータハウジング22を閉止しており、モータ3の後述の出力軸部31が挿通されて貫通する貫通孔23aが穿設されている。貫通孔23a内には、後述の出力軸部31を軸支するベアリング23Dと後述の第二ハウジング26を軸支するベアリング23Eとが配置されている。これらベアリング23D、23Eは、それぞれの中心軸が同軸になるように配置されている。
シリンダ部支持部23Bは、基部23Aの上方位置から前側に向けて延出されて構成されており、前後方向と直交する断面が半円弧と該半円弧の両端から略平行に延出される一対の辺から規定される略U字状を成し、下側へ向けて開口する空間23bが形成されている。またシリンダ部支持部23Bの前端位置には、前後方向を中心軸方向とする環状のメタル軸受23Fが配置されており、メタル軸受23Fで打撃機構5を前後方向かつ軸周りに回転可能に支持している。
軸保持部23Cは、基部23Aの前方であって、シリンダ部支持部23B前端位置の下側に配置されており、後述の中間ギア保持部45を回転可能に支持するメタル軸受23Gがベアリング23D、23Eと同軸になるように配置されている。
ギアハウジング24は、第一ハウジング25と第二ハウジング26とから主に構成されている。第一ハウジング25は、円筒状に構成されて第二ハウジング26と往復運動変換機構4と打撃機構5とを内蔵している。第一ハウジング25の先端部分には打撃機構5を回転可能に支持するベアリング24Bが装着されており、後端位置は支持部材23を介してモータハウジング22に接続されている。第一ハウジング25の下側には、第二ハウジング26を貫通して後述のクラッチレバー42Dと係合しクラッチレバー42Dを操作するチェンジレバー24Aが設けられている。また第一ハウジング25のチェンジレバー24A後方位置には、第二ハウジング26に設けられた後述のピン26Gが貫通して延出される貫通孔が形成されている。また第一ハウジング25において、ベアリング24Bの近傍位置には、第二ハウジング26を軸支する軸受25Bがベアリング23Eと同軸上に配置されている。
第二ハウジング26は、前側に位置する第一形成部26Aと後側に位置する第二形成部26Bとが組合されて構成され、内部に往復運動変換機構4を収容する収容空間26aが形成されたバスタブ形状を成しており、バスタブ形状の上端縁部分であって第一形成部26Aの前端位置と第二形成部26Bの後端位置とにそれぞれ前側回動軸部26Cと後側回動軸部26Dとを有している。前側回動軸部26Cは軸受25Bに軸支されており、後側回動軸部26Dはベアリング23Eに軸支されている。よって第二ハウジング26は、前後方向と直交する断面において、軸受25B及びベアリング23Eの軸心を回動中心として回動することができる。ベアリング23Eの軸心は後述の出力軸部31を軸支するベアリング23Dの軸心と同軸であるため、第二ハウジング26は後述の出力軸部31の軸心と同軸で回動することができる。また後側回動軸部26Dには貫通孔26bが形成されている。貫通孔26bは後側回動軸部26Dの軸心を通り後側回動軸部26Dの前後に貫通し、貫通孔23aに連通している。
第二ハウジング26において、収容空間26a内面の前側に位置する第一形成部26A及び後側に位置する第二形成部26Bには、それぞれ軸受26E及びベアリング26Fが前後方向を軸方向として同軸上に設置されている。第二ハウジング26において第一形成部26Aの底壁部分には、後述のクラッチレバー42Dを第二ハウジング26外に突出させるための開孔が形成されている。
また第二ハウジング26の底壁部分において、第一形成部26Aの後端と第二形成部26Bの前端とが上下に重なる位置には、第一ハウジング25外に突出するピン26Gが下方に向けて突出している。このピン26Gは、第一形成部26Aと第二形成部26Bとのそれぞれに係合して、第一形成部26Aと第二形成部26Bとを接続している。上述のように第二ハウジング26を、第一形成部26Aと第二形成部26Bとを前後から組合せてバスタブ状に構成することにより、バスタブ内である収容空間26aへの往復運動変換機構4の収容、特に後述の中間軸部41の軸受26E及びベアリング26Fへの装着が容易になる。
モータ3は回転運動を出力する出力軸部31を有し、出力軸部31が貫通孔23a内に位置して貫通孔26bを貫通するようにモータハウジング22内に配置されている。出力軸部31の貫通孔26bから突出した部分には、ピニオンギア31Aが設けられており、出力軸部31の基端部分には出力軸部31と同軸一体回転してモータ3を冷却するファン32が設けられている。
往復運動変換機構4は、主に第二ハウジング26の収容空間26a内に配置されており、中間軸部41と、クラッチ部42と、球形カム部43と、運動変換部44と中間ギア保持部45とから主に構成されている。
中間軸部41は、前後端をそれぞれ軸受26E及びベアリング26Fに軸支されて第二ハウジング26内に軸受26E及びベアリング26Fの軸心周りに回転可能に配置されており、後端位置及び前端位置にそれぞれ第一ギア41A及び第二ギア41Bが同軸一体回転するように設けられている。第一ギア41Aは、ピニオンギア31Aと噛合して、モータ3の回転力を中間軸部41に伝達している。第二ギア41Bは中間ギア保持部45にモータ3の回転力を伝達している。
中間軸部41を支持する第二ハウジング26は、上述のように出力軸部31の軸心と同軸で回動するため、中間軸部41(第一ギア41A)と出力軸部31(ピニオンギア31A)との間の距離は常に一定である。故に第一ギア41Aとピニオンギア31Aとは、第二ハウジング26の回動状態にかかわらず、常に安定した噛合状態を保つことができる。
また中間軸部41において第一ギア41Aと第二ギア41Bとの間には、前後方向を溝方向とするスプライン部41Cが設けられている。
クラッチ部42は、摩擦摺動部42Aと、付勢部42Bと、バネ42Cと、クラッチレバー42Dとから主に構成されている。摩擦摺動部42Aは、後端面が球形カム部43と当接可能に構成されており、スプライン部41Cにスプライン係合している。よって摩擦摺動部42Aは、中間軸部41に対して前後方向に移動可能であると共に、中間軸部41と同軸一体回転する。付勢部42Bは摩擦摺動部42Aの前方に位置し中間軸部41に装着されて中間軸部41に対して前後動可能に構成されている。バネ42Cは摩擦摺動部42Aと付勢部42Bとの間に介在している。よって付勢部42Bが後方に移動することにより、バネ42Cにより弾発的に摩擦摺動部42Aを後方(球形カム部43側)に付勢することが可能になる。クラッチレバー42Dは、一端が付勢部42Bに係合すると共に他端がチェンジレバー24Aに固定されている。よってクラッチレバー42Dは、チェンジレバー24Aの操作に応じて前後動することができる。
球形カム部43は略真球状に構成された球形カムであって中間軸部41に対して回転可能であり、摩擦摺動部42Aの後方に位置するように中間軸部41に装着されている。故に摩擦摺動部42Aと当接しない限り球形カム部43は中間軸部41と同軸一体回転することは無い。また球形カム部43の真球を成す部分の表面には、中間軸部41の軸と直交しないように交差し球面外周全周に亘る溝が形成されている。
運動変換部44は、環状部44Aとボール44Bとアーム44Cとから主に構成されている。環状部44Aは環状に構成されて球形カム部43に環装されており、環状の内周面に一連となる溝が形成されている。
ボール44Bは、球形カム部43の溝と環状部44Aの溝とに入り込むように、球形カム部43と環状部44Aとの間に介在している。よって球形カム部43の回転が環状部44Aに伝達されることは抑制される。
アーム44Cは、環状部44Aの外周から環状部44Aの半径方向に延びるように延出されており、表面が滑らかな円柱状に構成されている。上述のように環状部44Aはボール44Bにより回転することは抑制されるが、ボール44Bが球形カム部43の溝に挿入されているため、環状部44A及びアーム44Cは、球形カム部43の溝の形状に応じて、球形カム部43回転時に前後方向に揺動することができる。このアーム44Cの揺動は、球形カム部43の溝の形状に依存してその揺動角度が規定されるため、球形カム部43の回転数とアーム44Cの揺動角度との間には比例関係等は存在しない。また、球形カム部43の形状に依存してアーム44Cの揺動が行われるため、この揺動の中心は球形カム部43の中心(中間軸部41の中心軸上)と一致する。このような構成及び動作の運動変換部44により、回転運動を往復運動(揺動運動)に変換することができる。
中間ギア保持部45は、ピン45Aと中間ギア45Bとから主に構成されている。ピン45Aは、前端が第二ハウジング26において出力軸部31の軸心延長線上に固定され、後端がメタル軸受23Gに軸支されている。中間ギア45Bは、ピン45Aに回転可能に軸支され、第二ギア41Bに噛合すると共に打撃機構5に噛合している。
打撃機構5は、シリンダ51と、ピストン52と、打撃子53と、中間子54とから主に構成されている。シリンダ51は、第一ハウジング25内であって、第二ハウジング26の上側近傍位置に配置され、メタル軸受23F及びベアリング24Bによりハウジング2に回転可能に支持されている。シリンダ51の外周であって中間ギア45B近傍には、図2に示されるように中間ギア45Bと噛合するシリンダギア51Aがシリンダ51と同軸回転可能に固定されている。中間ギア45Bとシリンダギア51Aとの噛合により、シリンダ51はその軸心を中心としてハウジング2に対して回転することができる。またシリンダギア51Aの前端面は凹凸状に形成されている。
図1に示されるようにシリンダギア51Aとシリンダ51との間には、遮断機構が介在している。遮断機構は、シリンダギア51Aの前面と当接するようにシリンダ51外周上に設けられた鍔部51Bと、シリンダギア51Aを挟んで鍔部51Bの反対側に設けられシリンダギア51Aを鍔部51Bに付勢するバネ51Cとから構成されている。鍔部51Bのシリンダギア51A前面と当接する位置には凹凸形状が形成されている。通常回転時では、バネ51Cによりシリンダギア51Aを鍔部51Bに付勢し、シリンダギア51A前面の凹凸形状と鍔部51Bの凹凸形状とが係合してシリンダ51とを一体に回転させる。先端工具1Aが被削材に食い込む等の急激な回転の変化があった場合には、バネ51Cの付勢力に抗ってシリンダギア51A前面の凹凸形状と鍔部51Bの凹凸形状とが外れ、シリンダ51がシリンダギア51Aに対して空転し、急激な回転の変化の伝達を遮断することができる。
シリンダ51は、内部に空間51aが画成されており、空間51aはシリンダ51の前側及び後側でそれぞれ開口している。シリンダ51の前側には先端工具1Aの装着箇所となる工具保持部15が設けられている。工具保持部15は、シリンダ51の前側の開口から空間51a内に先端工具1Aを挿入可能となっており空間51a内に挿入された先端工具を固定可能となっている。
ピストン52は、シリンダ51後端の開口部分から空間51a内に前後方向及びシリンダ51の周方向に往復摺動可能に配置され、筒部52Aと接続部52Bとから一体に構成されている。前後方向に延びる筒状のシリンダ51内にピストン52が配置されているため、ピストン52は、シリンダ51に対して前後方向と交差する方向へ移動することはない。筒部52Aは前側が開口し後側が閉塞された略円筒状に構成されており、内部に空気室52aが画成されている。空気室52aを画成する壁部分であってピストン52の側面部分には、複数の空気孔52bが形成されている。また筒部52Aの外径は、空間51aの後端側の内径と略同一に構成されている。接続部52Bは筒部52Aの後端側に設けられており、図3に示されるように、アダプタ52Cを介してアーム44Cに接続されている。アダプタ52Cは、前後方向と直交する軸を回動軸として接続部52Bに回動可能に支持されると共に、この回動軸と直交するように穿設されてアーム44Cが隙間嵌めされる孔52cを備えている。よってアーム44Cが往復揺動した際に、アーム44Cとアダプタ52Cとの間には滑りが生じるため、アーム44Cからピストン52には前後方向の運動のみが伝達される。ピストン52の前後方向における移動量は、上述の運動変換部44におけるアーム44Cの揺動角度を2θ、アーム44Cが最も揺動した状態における揺動中心からアダプタ52Cまでの距離をLと規定すると、L×2sinθで与えられる。図3に示されるようにピストン52の中心、出力軸部31の中心、及び中間軸部41の中心が、上下方向に延びる同軸上に配置された状態で、アーム44Cの揺動中心からアダプタ52Cまでの距離Lは、L1になり、この状態でのピストン52の移動量はL1×2sinθになる。
図1に示される打撃子53は、ピストン52の空気室52a内に往復摺動可能に配置されている。打撃子53は、ピストン52が後側から前側へと移動した際に、空気室52a内の圧縮された空気の圧力(空気バネ)により、前側へと移動可能に構成されている。
中間子54は、シリンダ51の空間51a内において、ピストン52と工具保持部15との間の部分に、打撃子53と先端工具1Aとのそれぞれに接触するように摺動可能に配置されている。よって打撃子53が中間子54を打撃した際に、その打撃力は中間子54を介して先端工具1Aに加えられる。
ハンマドリル1で作業を行う際には、トリガ12を引くことによりモータ3に通電されて、往復運動変換機構4が駆動されることにより、ピストン52が前後動する。ピストン52の後方から前方への移動により空気バネが発生し、この空気バネにより打撃子53が前側へと付勢されて中間子54を打撃し、中間子54の前側に位置する先端工具1Aに打撃力を付加している。この打撃力は空気バネの圧縮量に応じているが、空気バネの圧縮量はピストン52の往復移動量に応じている。即ち打撃力はピストン52の往復移動量に応じている。
ピストン52は、上述のようにアーム44Cの往復揺動に基づき前後動され、その往復移動量はL×2sinθで与えられる。しかしアーム44Cの往復揺動する角度はモータ3の回転数に関わらず一定であるため、ピストン52の往復移動量を変化させるには、アーム44Cの揺動中心からアダプタ52Cまでの距離:Lを変更すればよい。具体的には、ピン26Gを操作して、図4に示されるように第一ハウジング25に対して第二ハウジング26を回動させる。第二ハウジング26は、出力軸部31と同軸のベアリング23E及び軸受25Bにより軸支され出力軸部31を通る軸周りに回動しているため、第二ハウジング26に軸支されている中間軸部41から出力軸部31までの距離は変化しない。しかしこの回動により中間軸部41からアダプタ52Cまでの距離は短くなり、故にアーム44Cの揺動中心からアダプタ52Cまでの距離:LがL2になり、この距離に基づきピストン52の往復移動量はL2×2sinθとなる。L2<L1であるので、第二ハウジング26を回動させることにより、ピストン52の往復移動量を小さくすることができ、これにより先端工具1Aによる打撃力を小さくすることができる。
また中間ギア45Bが軸支されているピン45Aは第二ハウジング26の回動中心である出力軸部31の軸心と同軸上に配置されているため、図5に示されるように第二ハウジング26が回動したとしても第二ハウジング26に保持されている中間軸部41(第二ギア41B)と中間ギア45Bとの間の距離は常に一定である。故に第二ギア41Bと中間ギア45Bとは、第二ハウジング26の回動状態にかかわらず、常に安定した噛合状態を保つことができ、出力軸部31からシリンダギア51Aまでの駆動力の伝達を効率よく行うことができる。
第一の実施の形態では、第一ハウジング25と第二ハウジング26とから機構間距離変換機構を構成しており、第一ハウジング25に対して第二ハウジング26を回動させることにより打撃機構5に対する往復運動変換機構4の位置を変え、確実かつ容易に打撃機構5から往復運動変換機構4までの距離を変更して打撃力を変化させることができる。
また往復運動変換機構4は、主に中間軸部41により第二ハウジング26に保持されているが、中間軸部41は、軸受26E及びベアリング26Fを介して、第一形成部26A及び第二形成部26Bに保持されている。よって往復運動変換機構4を第二ハウジング26に装着するには、第二ハウジング26を第一形成部26Aと第二形成部26Bとに分解した状態で往復運動変換機構4を装着すればよく、容易に第二ハウジング26に往復運動変換機構4を装着することができる。
次に本発明の第二の実施の形態に係る電動工具について図6乃至図8に基づき説明する。図6に示される電動工具であるハンマ101は、ハウジング102と、モータ103と、クランク機構104と、打撃機構105とを主に備え、ビット等の先端工具101Aを装着可能に構成されており、打撃による穿孔が可能な工具である。
ハウジング102は、ハンドル部121と、モータハウジング122と、クランクハウジング123と、シリンダハウジング124と、スリーブ125とから主に構成されている。以下の説明においては、ハンドル部121からモータハウジング122及びクランクハウジング123へと向かう方向を前方として前後方向を定義し、モータハウジング122からクランクハウジング123へと向かう方向を上方向として上下方向を定義する。
ハンドル部121は、ハンマ101の最後端に位置しており、電源ケーブル111が取付けられると共に、スイッチ機構(図示せず)が内蔵されている。図示せぬスイッチ機構には使用者により操作可能なトリガ112が機械的に接続されている。電源ケーブル111はスイッチ機構を外部電源(図示せず)に接続し、トリガ112を操作することにより、スイッチ機構と電源との接続と断続とが切換えられる。
モータハウジング122は、ハンドル部121の前方に設けられており、内部にモータ103を内蔵している。またモータハウジング122には、図7に示されるように、後述の出力軸部131を軸支するベアリング122Aと、後述のクランク軸部141の下端141Bを軸支する軸受122Bが設けられている。軸受122Bは、後述の下端141Bを回転可能に軸支すると共に、軸受122Bに対する下端141Bの上下動を許容している。
図6に示されるようにクランクハウジング123は、ハンドル部121の前側であってモータハウジング122の上側に設けられており、クランク機構104を内蔵している。またクランクハウジング123内部には、図7に示されるように、上下方向を軸方向とし、スリーブ125を挿入可能な雌ネジ部123Aが設けられている。またクランクハウジング123において、ハンドル部121と対向する壁には、後述の調整ノブ125Cが挿通される貫通孔123aが形成されている。
図6に示されるように、シリンダハウジング124は、クランクハウジング123の前側に設けられており、打撃機構105が内蔵されている。またシリンダハウジング124の前端位置には、先端工具101Aが装着されるフロントカバー124Aが設けられており、フロントカバー124Aの前端には、先端工具101Aを保持する工具保持部115が設けられている。
図7に示されるようにスリーブ125は、略筒状に形成され、筒状の外周に雌ネジ部123Aと螺合する雄ネジ部125Aが設けられている。スリーブ125の略筒状の内部には、上下方向を回転軸方向としてクランク機構104を回転可能に支持するベアリング125Bが埋設されている。またスリーブ125の下端位置には、貫通孔123aを貫通してクランクハウジング123外に突出する調整ノブ125Cが設けられている。調整ノブ125Cを操作することによって、スリーブ125がクランクハウジング123に対して回動して螺進退する。上述のハンドル部121、モータハウジング122、クランクハウジング123、シリンダハウジング124が第一ハウジングに該当し、スリーブ125が第二ハウジングに該当し、第一ハウジングと第二ハウジングとから偏心量変更機構が構成される。
図6に示されるように、モータ103は回転運動を出力する出力軸部131を有し、出力軸部131の先端がスリーブ125の下端近傍に位置すると共に出力軸部131の軸方向が上下方向と一致するようにモータハウジング122内に配置されている。出力軸部31の先端(上端)には、ピニオンギア131Aが設けられており、出力軸部131の基端部分には出力軸部131と同軸一体回転してモータ103を冷却するファン132が設けられている。またピニオンギア131Aは、平ギア形状を成しており、上下方向において略長尺上に構成されている。
クランク機構104は、図7に示されるように、クランク軸部141と、クランクギア142とクランクピン143とから主に構成されている。クランク軸部141は、ベアリング125Bによりスリーブ125に対して回転可能かつ上下方向に移動不能に保持されている。クランク軸部141の上端部には、上下方向と直交する平面を有してクランク軸部141の中心軸Gと同軸の中心軸を有するクランクテーブル141Aが設けられている。またクランク軸部141には下端141Bが規定され、下端141Bは軸受122Bに上下動可能、かつ回動可能に軸支されている。
クランクギア142は、平ギア形状を成しており、クランク軸部141と同軸一体回転するようにクランク軸部141の下端141B近傍に設けられ、ピニオンギア131Aと噛合している。
クランクピン143は、クランク軸部141の中心軸Gから偏心した位置に設けられており、クランクテーブル141Aの上面から、半径方向外周側に向かって斜め上方に向けて延出されている。
上述のようにスリーブ125は、クランクハウジング123等に対して上下動可能であるため、スリーブ125に支持されるクランク機構104も同様にクランクハウジング123等に対して上下動することができる。
打撃機構105は、シリンダ151と、ピストン部152と、打撃子153と、中間子154とから主に構成されている。シリンダ151は筒状に構成され、シリンダハウジング124内に移動不能に固定されており、筒状の内部に後端側からピストン部152、打撃子153、中間子154が、この順に並んで配置されている。またシリンダ151内空間において、ピストン部152と打撃子153との間には空気室151aが規定されている。
ピストン部152は、ピストン152Aと、ピストンピン152Bと、コンロッド152Cとから主に構成されている。ピストン152Aは、シリンダ151内に前後への摺動のみ可能に配置され、ピストン152Aの前後でシリンダ151内を気密的に隔離している。またピストン152Aには、後端から前側に向けて穿設される開口152aが形成されている。ピストンピン152Bは、開口152a内に露出し、かつ上下方向を軸方向としてピストン152Aに設けられている。
コンロッド152Cは、前端が開口152a内に挿入されてピストンピン152Bに接続され、後端がクランクピン143に接続されている。コンロッド152Cにおいて開口152a内に挿入される部分は、開口152aを画成する壁に対し、上下方向における隙間がほとんど無いように構成されている。よってコンロッド152Cは、ピストンピン152Bを介してピストン152Aに接続された状態でピストン152Aに対して上下動が不能になる。ピストン152Aはシリンダ151及びシリンダ151を保持するシリンダハウジング124に対して上下動不能であるため、コンロッド152Cはシリンダハウジング124及びシリンダハウジング124に接続されるクランクハウジング123に対して上下動不能である。
コンロッド152Cの後端には、クランクピン143と接続される球体滑り軸受152Dが設けられている。球体滑り軸受152Dは、略球形状に構成されると共にその球形の直径方向に貫通する貫通孔152dを有しており、コンロッド152Cの後端に隙間嵌めされコンロッド152Cに対して回転可能に保持されると共に貫通孔152d内にクランクピン143が隙間嵌めされている。貫通孔152d内にクランクピン143が挿入されて球体滑り軸受152Dがクランクピン143に接続される位置を接続位置Sと定義する。
クランクピン143の軸方向とコンロッド152Cが動作する方向(ピストン152Aが動作する方向で前後方向)とは直交しないため、クランクピン143にコンロッド152Cを直接回動可能に接続しても、クランク機構104の回転運動をピストン部152の往復運動に変換することはできない。しかし、クランクピン143とコンロッド152Cとの間には上述のように球体滑り軸受152Dが介在しているため、クランク機構104の回転力をコンロッド152Cの前後運動に変換することができる。コンロッド152Cにおける前後方向の移動量は、球体滑り軸受152Dが接続されるクランクピン143の接続位置Sにおける回動直径L1で規定されるため、ピストン152Aの往復移動量Lは、L1の値になる。尚、球体滑り軸受152Dは、クランクピン143が貫通孔152d内に隙間嵌めされているため、クランクピン143に対してクランクピン143の軸方向に移動可能である。即ちクランクピン143と打撃機構5と接続される接続位置Sは可変に設けられている。
図6に示される打撃子153は、シリンダ151内に、空気室151aを挟んでピストン152Aの前側に往復摺動可能に配置され、打撃子153の前後でシリンダ151内を気密的に隔離している。よって打撃子153は、ピストン152Aが後側から前側へと移動した際に、空気室151a内の圧縮された空気の圧力(空気バネ)により、前側へと移動することができる。
中間子154は、シリンダ151内において、ピストン部152と工具保持部115との間の部分に、打撃子153と先端工具101Aとのそれぞれに接触するように摺動可能に配置されている。よって打撃子153が中間子154を打撃した際に、その打撃力は中間子154を介して先端工具101Aに加えられる。
第二の実施の形態に係るハンマ101では、クランクハウジング123とスリーブ125との螺合により、クランクハウジング123に対してスリーブ125が上下動する構成である。よって図8のようにクランクハウジング123に対してスリーブ125を下側に移動させると、スリーブ125に支持されているクランク機構104も下側へと移動する。クランクピン143と球体滑り軸受152Dを介して接続されているコンロッド152Cは、クランクハウジング123に対して上下動不能であるため、上述の接続位置Sは、クランクピン143に対して上側へと移動する。クランクピン143は、上述のように半径方向外側へと向けて斜めに構成されているため、接続位置Sにおける回転直径は、L2の値になり、ピストン152Aの往復移動量Lも、L2の値になる。L2>L1であるため、図8に示されるようにスリーブ125を下側に移動させることによりピストン152Aの往復移動量を大きくして打撃力を大きくすることができる。即ち、クランクハウジング123に対してスリーブ125を任意の位置に移動させることにより、打撃力を変更することができる。尚、クランクハウジング123に対してスリーブ125が移動した際のピニオンギア131Aとクランクギア142との噛合については、予めピニオンギア131Aの上下長をクランクギア142の上下方向への移動量に対応した長さにすることにより、クランクハウジング123に対してスリーブ125がいずれの位置に移動しても好適な噛合状態を得ることができる。
第二の実施の形態では、クランクハウジング123等とスリーブ125とから偏心量変更機構を構成しており、クランクハウジング123に対してスリーブ125を螺進退させることによりクランク軸部141の中心軸から接続位置Sの偏心量を変化させ、ピストン152Aの往復運動量を変更して、打撃力を変化させることができる。またハンマ101を組立てる際に、スリーブ125のクランクハウジング123への装着は螺合により行われるため、その組立は容易になる。