以下、本発明の第1〜3実施形態を図面に基づいて順次説明する。
<第1実施形態>
<画像表示装置の機能的な構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置1の機能的な構成を示す図である。具体的には、図1は、有機ELパネル3の駆動を制御する機能について説明するための図である。
画像表示装置1は、主に、制御部2、有機ELパネル3、電流値取得部4、Xドライバ5X、専用ドライバ5Y、および電源部としての電源回路6を備えている。なお、ここでは、画像信号が赤(R),緑(G),青(B)の3原色に係る信号によって構成されるものとする。そして、有機ELパネル3が、赤色の光を発する発光素子、緑色の光を発する発光素子、青色の光を発する発光素子を備えて構成されているものとする。
制御部2は、画像表示装置1の動作を統括制御する部分であり、CPU、ROM、およびRAM等を備えて構成される。例えば、ROM内には、プログラムおよび各種データ等が格納され、ROM内のプロクラムをCPUが読み込んで実行することで、制御部2における各種制御および機能が実現される。
この制御部2では、外部から入力される入力画像信号から有機ELパネル3で消費されると予測される電流(以下「予測消費電流」と称する)を時間で積分した値(以下「予測電流積分値」と称する)を算出する。そして、制御部2は、この予測電流積分値と、入力画像信号に応じた発光により有機ELパネル3で実際に消費される電流(以下「実測消費電流」と称する)を時間で積分した値(以下「実測電流積分値」とも称する)とを比較して、予測電流積分値と実測電流積分値とが略一致するように有機ELパネル3における発光時間を調節する。なお、本実施形態においては、予測電流積分値が本発明の予測積分値に相当し、実測電流積分値が本発明の実測積分値に相当する。
図1で示されるように、制御部2でプログラムが実行されることで、指数演算部21R,21G,21B、積算部22R,22G,22B、予測値取得部23、電流積分部24、比較部25、デューティ制御部26、ドライバ制御部27、γ変換部28R,28G,28B、およびタイミングジェネレータ(TG)29が機能的な構成として実現される。
指数演算部21R,21G,21Bは、各画素に対応する各色の値(すなわち階調値)がDr,Dg,Dbである入力画像信号を受け付ける。そして、指数演算部21R,21G,21Bは、各色の階調値Dr,Dg,Dbを底とし、所定値(ここでは、2.2)を指数とする指数関数の演算を行う。
ここで、画像の階調の応答特性を表わすときに「ガンマ(γ)」という数値が使われる。例えば、ディスプレイの場合、表面の明るさは入力画像データに正比例せずに、指数関数的な変化をする。入力画像データが小さいときは、該入力画像データの変化に対する明るさの変化は緩やかで、入力画像データが大きくなると、該入力画像データの変化に対する明るさの変化が急激に増大する。この関係が、例えば2.2乗のカーブを描くとき、γは2.2であるという。このγは、画質の硬調・軟調を決める指数であり、γが比較的大きい場合には画質が硬調となり、γが比較的小さい場合には画質が軟調となる。
そして、有機ELパネルの場合には、γ=2.2が一般に使用されるため、入力画像信号の階調値Xを2.2乗することで、各発光素子の発光輝度に対応する出力画像信号の階調値が求まる。また、この階調値は、各色の画素で消費される電流に略比例する。
したがって、指数演算部21R,21G,21Bでは、各色の階調値Dr,Dg,Dbを底とし、2.2を指数とする指数関数の演算がそれぞれ行われる。その結果、各色の画素で消費される電流が間接的に算出される。
具体的には、指数演算部21Rが、入力画像信号(例えば、6ビットの画像信号)のうち、R色の階調値Dr(例えば、0〜63)を2.2乗した値iRを算出する。また、指数演算部21Gが、入力画像信号(例えば、6ビットの画像信号)のうち、G色の階調値Dg(例えば、0〜63)を2.2乗した値iGを算出する。また、指数演算部21Bが、入力画像信号(例えば、6ビットの画像信号)のうち、B色の階調値Db(例えば、0〜63)を2.2乗した値iBを算出する。
例えば、6ビットで表現される階調値Xが、0/63,1/63,2/63,・・・,63/63であり、且つ0≦X≦(63/63)である場合には、下式(1)を用いることで、階調値Xを2.2乗した値が近似的に求められる。すなわち、階調値Xの2.2乗の近似値が求められる。
X2.2≒(3/4)×X2+(1/4)×X3=(1/4)×(3X+1)×X2・・・(1)。
積算部22R,22G,22Bは、指数演算部21R,21G,21Bでそれぞれ得られた値(階調値を2.2乗した値)を、R,G,Bの色毎に、有機ELパネル3の画素数(例えば、横1280個×縦960個の合計約1228800個分)分だけ累積加算する。
詳細には、積算部22Rが、階調値Drを2.2乗した値iRを有機ELパネル3のR色の画素数分だけ累積加算した値SumRを算出する。また、積算部22Gが、階調値Dgを2.2乗した値iGを有機ELパネル3のG色の画素数分だけ累積加算した値SumGを算出する。また、積算部22Bが、階調値Dbを2.2乗した値iBを有機ELパネル3のB色の画素数分だけ累積加算した値SumBを算出する。
取得部としての予測値取得部23は、積算部22R,22G,22Bでそれぞれ算出された値SumR,SumG,SumBから、各色の階調値がDr,Dg,Dbである入力画像信号に対応して有機ELパネル3で消費されると予測される電流の予測値(予測消費電流)Ipを算出する。そして、予測値取得部23は、予測消費電流Ipに、有機ELパネル3の1回の発光における基準発光時間Tsemitを乗じることで、有機ELパネル3の1回の発光で消費されると予測される電流を時間で積分した値(予測電流積分値)Qpを算出する。
つまり、本実施形態では、指数演算部21R,21G,21B、積算部22R,22G,22B、および予測値取得部23が、入力画像信号に基づき、画素回路31の駆動に係るパラメータである電流を時間で積分した予測電流積分値Qpを認識する認識部として機能する。
なお、基準発光時間Tsemitは、動画において1フレームの表示開始から次のフレームの表示開始までの期間(例えば、1/60秒)、すなわち1フレーム分の表示期間(1フレーム表示期間)において1回の発光時間が占める比率(デューティ)の基準値(例えば0.5)を、該1フレーム表示期間に乗じて予め設定されているものとする。
ここで、有機ELパネル3では、RGBの3色の発光素子において消費される電流の最大値は、有機ELパネル3のホワイトバランスの設定によって異なる。このため、予め設計上決められるRGBの間で異なる係数Cr,Cg,Cbを、値SumR,値SumG,値SumBに乗じて加算することで、予測消費電流Ipが算出される。具体的には、下式(2)を用いることで、予測消費電流Ipが算出される。
Ip=Cr×ΣiR+Cg×ΣiG+Cb×ΣiB
=Cr×SumR+Cg×SumG+Cb×SumB・・・(2)。
更に、下式(3)で示されるように、予測消費電流Ipに基準発光時間Tsemitを乗じることで、予測電流積分値Qpが算出される。
Qp=Ip×Tsemit・・・(3)。
γ変換部28R,28G,28Bは、各色の階調値がDr,Dg,Dbである入力画像信号を受け付けて、いわゆるガンマ補正を行う。ここでは、各色の階調値Dr,Dg,Dbが約2.2乗された値に変換される。
詳細には、γ変換部28Rは、階調値Drから階調値Drを約2.2乗した階調値に変換する。また、γ変換部28Gは、階調値Dgから階調値Dgを約2.2乗した階調値に変換する。また、γ変換部28Bは、階調値Dbから階調値Dbを約2.2乗した階調値に変換する。この変換により、入力画像信号は、10ビットの出力画像信号(すなわち、階調値が0〜1023の画像信号)に変換される。そして、変換後の出力画像信号は、Xドライバ5Xに入力される。
なお、γ変換部28R,28G,28Bにおける変換処理については、変換前の値と変換後の値とを関連付けたテーブルを予め準備しておき、このテーブルが参照されて行われても良いし、逐一演算によって行われても良い。
TG29は、Xドライバ5Xおよび専用ドライバ5Yに対して、Xドライバ5Xおよび専用ドライバ5Yの動作を制御するための信号を出力する。
電流積分部24は、有機ELパネル3の画面全体で実際に消費され、且つ電流値取得部4で取得される電流値(実測消費電流)Irを、有機ELパネル3の1回分の発光期間において積分した値(実測電流積分値)Qrを算出する。つまり、本実施形態では、電流積分部24は、電流値取得部4で取得される実測消費電流Irを時間で積分した実測電流積分値Qrを得る部分となっている。
比較部25は、予測値取得部23において取得される予測電流積分値Qpと、電流積分部24から入力される実測電流積分値Qrとを比較して、比較結果に応じた制御信号をデューティ制御部26に対して出力する。
デューティ制御部26は、比較部25による比較結果に応じて、有機ELパネル3に配列された各画素回路31に含まれる有機EL素子11(図2参照)に電圧を供給する時間(電圧供給時間)を制御する。具体的には、ドライバ制御部27に対して、デューティに応じた信号を出力する。
ドライバ制御部27は、デューティ制御部26から入力される信号に応じて、専用ドライバ5Yに対して制御信号を出力する。
有機ELパネル3は、略長方形の輪郭を有する有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display)であり、有機材料に電流を流すことで材料自らが発光する自発光型の発光素子を有する。つまり、有機ELパネル3は、自発光型の発光素子を備えた表示部(自発光型表示部)を構成している。
この表示部としての有機ELパネル3には、多数の画素回路31が配列され、各画素回路31には、発光素子(ここでは、有機EL素子)が含まれる。そして、多数の発光素子は、例えば、格子状に配列されている。換言すれば、有機ELパネル3には、第1方向(ここでは、水平方向)に沿って複数の画素回路31がそれぞれ配列されている複数の画素のライン(画素ライン、以下「水平ライン」とも称する)が、第1方向とは異なる第2方向(ここでは、垂直方向)に沿って配列されている。
また、有機ELパネル3は、発光輝度に対応する出力画像信号を各画素回路31に供給するための画像信号線Lis(図2参照)と、当該画像信号線Lisに対して略直交するように設けられ、各画素回路31に走査信号を供給するための走査信号線Lss(図2参照)とを有している。なお、走査信号は、各画素回路31に画像信号線Lisを介して出力画像信号を供給するタイミングを制御する信号である。また、有機ELパネル3は、各画素回路31に含まれる有機EL素子11の両極間に発光に必要な電圧を供給する電源線Lvd,Lvs(図2参照)を有している。
Xドライバ5Xは、画像信号線Lisに対して電気的に接続され、出力画像信号を画像信号線Lisに供給するタイミングを制御する回路(画像信号線駆動回路)である。
専用ドライバ5Yは、走査信号を走査信号線Lssに供給するタイミング、および電圧を電源線Lvd,Lvsに供給するタイミングを制御する回路(走査信号線駆動回路)である。
なお、画像表示装置1では、例えば、Xドライバ5Xが、有機ELパネル3の一辺(例えば、短辺または長辺)に沿って配置され、専用ドライバ5Yが、有機ELパネル3の一辺と略直交する他辺(例えば、長辺または短辺)に沿って配置されている。
電流値取得部4は、出力画像信号に応じて各有機EL素子11が発光している際に、電源回路6から供給され、有機ELパネル3で消費される電流(電源電流)を実測することで、有機ELパネル3における消費電流の実測値(実測消費電流)Irを取得する。つまり、本実施形態では、電流値取得部4は、入力画像信号に応じた有機EL素子11の発光に対して、画素回路31の駆動に係るパラメータ(ここでは、電流)の実測値(ここでは、実測消費電流Ir)を取得する取得部に相当する。
この電流値取得部4は、電流計等を備えて構成され、例えば、電源回路6から有機ELパネル3に至る回路上に抵抗を設け、その抵抗の両端に電流計が接続されている。
電源回路6は、電源(例えば、バッテリー)から供給される電力を、専用ドライバ5Yを介して有機ELパネル3の各画素に対して供給するものである。詳細には、電源回路6は、各画素回路31に対して電気的に接続されるとともに、各画素回路に含まれる発光素子の発光に必要な電圧を供給する。
なお、ここでは、制御部2の各種機能が、CPUでプログラムが実行されることで実現されたが、これに限られない。例えば、制御部2の全て又は一部の構成が、専用の電子回路等のハードウェア構成によって実現されても良い。
<画素回路の構成>
図2は、画像表示装置1を構成する1画素分の画素回路(駆動回路)31の構成例を示す図である。
画素回路31は、有機EL素子(OLED)11、駆動トランジスタ12、閾値(Vth)補償用トランジスタ13、およびコンデンサ14を備えている。
有機EL素子11は、発光層を流れる電流によって発光輝度が変化する発光素子である。この有機EL素子11は、アノード電極11aとカソード電極11bとを有している。
アノード電極11aは、有機EL素子11の発光時に高電位側となる電源線としてのVDD線Lvdに対して電気的に接続されている。また、カソード電極11bは、有機EL素子11の発光時に低電位側となる電源線としてのVSS線Lvsに対して駆動トランジスタ12を介して電気的に接続される。更に、カソード電極11bは、Vth補償用トランジスタ13の第4電極13dsに対して電気的に接続されている。
駆動トランジスタ12は、有機EL素子11に対して電気的に直列に接続され、有機EL素子11における電流を調整することで有機EL素子11の発光輝度を制御するトランジスタである。ここでは、駆動トランジスタ12は、キャリアが電子であるタイプ(n型)のMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造を採用した電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)の一種である薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)、すなわちn−MISFETTFTによって構成されている。そして、駆動トランジスタ12は、第1から第3電極12ds,12sd,12gを有している。
第1電極12dsは、有機EL素子11のカソード電極11bに対して電気的に接続されている。そして、第1電極12dsは、アノード電極11aからカソード電極11bに向けた方向(順方向)に電流が流れて有機EL素子11が発光する際にドレインとして機能する。また、有機EL素子11に対して逆方向に電圧が印加される際には、第1電極12dsはソースとして機能する。更に、第1電極12dsは、Vth補償用トランジスタ13の第4電極13dsに対して電気的に接続されている。
第2電極12sdは、VSS線Lvsに対して電気的に接続されている。そして、第2電極12sdは、有機EL素子11に対して順方向の電流が流れる際にソースとして機能する。また、有機EL素子11に対して逆方向に電圧が印加される際には、第2電極12sdはドレインとして機能する。更に、第3電極12gは、いわゆるゲートであり、Vth補償用トランジスタ13の第5電極13sd、およびコンデンサ14の一方電極14aに対してそれぞれ電気的に接続されている。
また、駆動トランジスタ12では、第3電極12gに付与される電位、より詳細には第1電極12dsまたは第2電極12sdと第3電極12gとの間(すなわちゲートとソースとの間)に印加される電圧値が調整されることで、第1電極12dsと第2電極12sdとの間(以下「第1−2電極間」とも称する)において流れる電流が調整される。そして、この第3電極(ゲート)12gに印加される電位により、駆動トランジスタ12は、第1−2電極間(すなわちドレインとソースとの間)において電流が流れ得る状態(導通状態)と、電流が流れ得ない状態(非導通状態)とに選択的に設定される。
Vth補償用トランジスタ13は、駆動トランジスタ12が導通状態となる場合の、第2電極12sdに対する第3電極12gの電位の下限値(所定の閾値電圧Vth)を検出するとともに、駆動トランジスタ12のゲート電圧を、閾値電圧Vth(以下「閾値Vth」と略称する)に調整するトランジスタである。つまり、「閾値Vth」は、駆動トランジスタ12がオフ状態(いわゆるドレイン電流が流れない状態)からオン状態(ドレイン電流が流れる状態)に移り変わるときの、境界となるゲート電圧のことを言う。なお、ここでは、Vth補償用トランジスタ13も、駆動トランジスタ12と同様にn−MISFETTFTによって構成されている。そして、Vth補償用トランジスタ13は、第4から第6電極13ds,13sd,13gを有している。
第4電極13dsは、有機EL素子11のカソード電極11bおよび駆動トランジスタ12の第1電極12dsに対してそれぞれ電気的に接続されている。また、第5電極13sdは、駆動トランジスタ12の第3電極12gおよびコンデンサ14の一方電極14aに対してそれぞれ電気的に接続されている。また、第6電極13gは、走査信号線Lssに対して電気的に接続されている。
また、Vth補償用トランジスタ13では、第6電極13gに付与される電位、より詳細には第4電極13dsまたは第5電極13sdと第6電極13gとの間(すなわちゲートとソースとの間)に印加される電圧値が調整されることで、第4電極13dsと第5電極13sdとの間(第4−5電極間)において流れる電流の量(電流量)が調整される。そして、この第6電極(ゲート)13gに付与される電位により、Vth補償用トランジスタ13は、第4−5電極間(すなわちドレインとソースとの間)において電流が流れ得る状態(導通状態)と、電流が流れ得ない状態(非導通状態)とに選択的に設定される。
ところで、有機EL素子11は、電流によって発光輝度が制御されるため、発光時における駆動トランジスタ12のゲート電圧のゆらぎに対して、発光輝度が敏感に変動する。特に、駆動トランジスタ12がアモルファスシリコンを用いて構成された場合には、駆動トランジスタ12毎に閾値Vthが異なる傾向にある。よって、画素毎に異なる閾値Vthを補償する機能(Vth補償機能)を持たせなければ、所望の発光輝度と実際の発光輝度との間に若干の乖離が生じ、結果として画素間で発光輝度のムラが生じてしまう。
そこで、Vth補償用トランジスタ13は、発光前において画素毎に駆動トランジスタ12のゲート電圧を閾値Vthに合わせることで、駆動トランジスタ12における閾値Vthのばらつきを補償するVth補償機能を実現する。
コンデンサ14は、一方電極14aおよび他方電極14bを備えて構成されている。そして、一方電極14aは、駆動トランジスタ12の第3電極12gおよびVth補償用トランジスタ13の第5電極13sdに対してそれぞれ電気的に接続されている。また、他方電極14bは、画像信号線Lisに対して電気的に接続されている。なお、ここでは、コンデンサ14の保持容量を所定値Csとする。
ところで、有機EL素子11は、発光時と逆の電圧が印加されるとコンデンサとして機能し、この容量(EL素子容量)を所定値Coとする。また、駆動トランジスタ12は、第2電極12sdと第3電極12gとの間(第2−3電極間)の寄生容量CgsTdと、第1電極12dsと第3電極12gとの間(第1−3電極間)の寄生容量CgdTdとを有する。更に、Vth補償用トランジスタ13は、第5電極13sdと第6電極13gとの間(第5−6電極間)の寄生容量CgsTthと、第4電極13dsと第6電極13gとの間(第4−6電極間)の寄生容量CgdTthとを有する。なお、寄生容量CgsTd,CgdTd,CgsTth,CgdTthは、それぞれ駆動トランジスタ12およびVth補償用トランジスタ13の構成によって決定される所定値の容量である。
図3は、図2で示した画素回路31の回路構成に対して、寄生容量CgsTth,CgdTth,CgsTd,CgdTdとEL素子容量Coとに係る回路構成(図中破線で記載)を加えた模式図である。
図3で示されるように、画素回路31では、有機EL素子11の両電極間にはEL素子容量Coを有するコンデンサ(素子コンデンサ)Colが存在し、駆動トランジスタ12の第2−3電極間には寄生容量CgsTdを有するコンデンサ12gsが存在する。そして、駆動トランジスタ12の第1−3電極間には寄生容量CgdTdを有するコンデンサ12gdが存在する。更に、Vth補償用トランジスタ13の第5−6電極間には寄生容量CgsTthを有するコンデンサ13gsが存在する。また、Vth補償用トランジスタ13の第4−6電極間には寄生容量CgdTthを有するコンデンサ13gdが存在している。
なお、ここでは、1つの画素回路31に着目して説明したが、有機ELパネル3の全体では、画素回路31が多数存在する。このため、走査信号線Lssも多数存在する。そこで、以下では、多数の走査信号線Lssを、適宜「第N走査信号線(Nは自然数)Lss」と称する。
<有機EL素子の発光に関する駆動方法>
図4は、有機EL素子11を発光させる際の信号波形(駆動波形)を示すタイミングチャートである。図4では、横軸が時刻を示し、上から順に、(a) VDD線Lvdに付与される電位(電位Vdd)、(b) VSS線Lvsに付与される電位(電位VSS)、(c)第1走査信号線LSSに付与される信号の電位(電位Vls1)、(d)第2走査信号線LSSに付与される信号の電位(電位Vls2)、(e)画像信号線Lisに付与される信号の電位(電位Vlis)、の波形が示されている。
また、図4では、有機EL素子11を1回発光させるための駆動波形が示されており、1回の発光に係る期間は、時間順次に、Cs初期化期間P1(時刻t1〜t2)、準備期間P2(時刻t2〜t3)、Vth補償期間P3(時刻t3〜t4)、書込期間P4(時刻t4〜t5)、素子初期化期間P5(時刻t5〜t6)、および発光期間P6(時刻t6〜)を備えて構成される。なお、書込期間P4における電位Vlisは、各有機EL素子11の発光輝度によって決まる任意の値であるため、図4では、当該電位が存在し得る範囲に斜線ハッチングが便宜的に付されている。
図5から図9は、第1実施形態に係る画像表示装置1を駆動させる際に、各期間において発生する画素回路31の電流の流れを黒塗りの矢印で例示する図である。図5から図9では、画素回路31のうち、電流の流れに寄与する回路は太線で示され、電流の流れにほとんど寄与しない回路は細線で示されている。以下、図4および図5から図9を適宜参照しつつ、第1実施形態に係る画像表示装置1の駆動方法について説明する。
○Cs初期化期間P1:
図5では、Cs初期化期間P1(以下適宜「期間P1」と略する)での画素回路31における電流の流れが例示されている。
期間P1では、VDD線LvdおよびVSS線Lvsにそれぞれ所定の正の高電位VDD(例えば15V)が印加される。また、全走査信号線Lssに所定の正の高電位VgH(例えば15V)が印加される。更に、画像信号線Lisに所定の基準電位(ここでは0V)が印加される。
このとき、走査信号線Lssにおける高電位VgHの印加により、第6電極(ゲート)13gに高電位VgHに応じた正電位が印加され、Vth補償用トランジスタ13が導通状態となる。一方、VDD線LvdとVSS線Lvsとが略同電位であり、駆動トランジスタ12が非導通状態となる。したがって、期間P1では、図5で示されるように、VDD線LvdからVth補償用トランジスタ13の第4および第5電極13ds,13sdを介してコンデンサ14に向けて電流が流れ、コンデンサ14に所定量の電荷(例えば、15Vに応じた電荷量)が蓄積される。
なお、期間P1における時間経過とともにコンデンサ14に蓄積される電荷量が高まり、第3電極(ゲート)12gに所定値を超える正電位が付与され、駆動トランジスタ12が導通状態となることもあり得る。しかし、VDD線LvdとVSS線Lvsとがともに同電位VDDに設定されているため、駆動トランジスタ12の第1−2電極間には電流が流れない。
○準備期間P2:
図6では、準備期間P2(以下適宜「期間P2」と略する)での画素回路31における電流の流れが例示されている。
期間P2では、VDD線Lvdに負の所定電位−Vp(例えば−7V)が付与される。また、VSS線Lvsに所定の基準電位(ここでは0V)が付与される。また、全走査信号線Lssに所定の低電位VgL(例えば−10V)が付与される。更に、画像信号線Lisに所定の高電位VdH(例えば10V)が印加される。
このとき、走査信号線Lssにおける低電位VgLの付与により、第6電極(ゲート)13gにはほとんど正の電位が付与されないため、Vth補償用トランジスタ13が非導通状態となる。また、画像信号線Lisにおける高電位VdHの付与により、第3電極(ゲート)12gに高電位VdHに応じた正電位(例えば15+10=25V)が付与され、駆動トランジスタ12が導通状態となる。
そして、VDD線LvdよりもVSS線Lvsの方が電位がVp高いため、図6で示されるように、VSS線Lvsから駆動トランジスタ12の第2および第1電極12sd,12dsを順次に介して、有機EL素子11に向けて電流が流れる。このとき、有機EL素子11すなわち素子コンデンサColにVDD線LvdとVSS線Lvsとの間の電位差に応じた所定量の電荷(例えば7Vに応じた電荷)が蓄積される。
○Vth補償期間P3:
図7では、Vth補償期間P3(以下適宜「期間P3」と略する)での画素回路31における電流の流れが例示されている。
期間P3では、VDD線LvdおよびVSS線Lvsにそれぞれ所定の基準電位(ここでは0V)が付与される。また、全走査信号線Lssに高電位VgHが付与される。更に、画像信号線Lisに高電位VdH(例えば10V)が付与される。
このとき、走査信号線Lssにおける高電位VgHの付与により、第6電極(ゲート)13gに高電位VgHに応じた正電位が付与され、Vth補償用トランジスタ13が導通状態となる。また、期間P3の初期では、コンデンサ14に蓄積された電荷と画像信号線Lisに付与された電位VdHにより、駆動トランジスタ12が導通状態となる。
したがって、期間P3の初期では、図7で示されるように、コンデンサ14に蓄積された電荷に伴う電流が、コンデンサ14からVth補償用トランジスタ13の第5および第4電極13sd,13ds、更には駆動トランジスタ12の第1および第2電極12ds,12sdを順次に介してVSS線Lvsに向けて流れる。また、素子コンデンサColに蓄積された電荷に伴う電流が、駆動トランジスタ12の第1および第2電極12ds,12sdを順次に介してVSS線Lvsに向けて流れる。
ところが、コンデンサ14に蓄積された電荷に伴う電流が、コンデンサ14からVSS線Lvsに向けて流れていくにつれて、コンデンサ14に蓄積されている電荷が減少する。そして、駆動トランジスタ12の第2電極12sdに対する第3電極12gの電位(ゲート電圧)Vgが実質的に閾値Vthまで減少すると、駆動トランジスタ12が非導通状態となる。このとき、コンデンサ14には、閾値Vthに応じた電荷が蓄積された状態となる。このように、期間P3では、閾値Vthに応じた電荷がコンデンサ14に蓄積されて、画素毎に異なる閾値Vthのばらつきが補償される。
○書込期間P4:
図8では、書込期間P4(以下適宜「期間P4」と略する)での画素回路31における電流の流れが例示されている。
期間P4では、VDD線LvdおよびVSS線Lvsにそれぞれ基準電位0Vが印加されるとともに、出力画像信号に応じた電荷の蓄積を行う処理(データ書込処理)の実施対象画素において、走査信号線Lssに高電位VgHが付与され、画像信号線Lisに電位(VdH−Vdata)が付与される。なお、電位Vdataは、出力画像信号の電位であり、画像を構成する画素の輝度の階調に対応する値に応じた電位である。
このとき、走査信号線Lssにおける高電位VgHの付与により、第6電極(ゲート)13gに高電位VgHに応じた正電位が付与され、Vth補償用トランジスタ13が導通状態となる。一方、画像信号線Lisに対して、期間P3における電位VdH以下の電位(VdH−Vdata)が付与され、駆動トランジスタ12のゲート電圧Vgが閾値Vth以下となるため、駆動トランジスタ12が非導通状態となる。
したがって、期間P4では、図8で示されるように、有機EL素子11(すなわち素子コンデンサCol)からVth補償用トランジスタ13の第4および第5電極13ds,13sdを順次に介してコンデンサ14に向けて電流が流れる。その結果、コンデンサ14に既に蓄積された閾値Vthに応じた電荷の上に電位Vdataに応じた電荷が加算されて蓄積される。すなわち、期間P4においては、コンデンサ14に有機EL素子11の発光輝度に応じた電荷が蓄積される。換言すれば、期間P4では、画素回路31において出力画素信号に応じた電荷がコンデンサ14に蓄積される。
なお、コンデンサ14の一方電極14aの電位(すなわち駆動トランジスタ12のゲート電位)の変化量は、画像信号線Lisの電位の変化量と、コンデンサ14の保持容量Csと素子コンデンサColのEL素子容量Coとの比(容量比)との積に依拠する。すなわち、本実施形態においては、画像信号線Lisの電位がVdHからVdataに変化する場合、駆動トランジスタ12のゲート電位が、(Vdata−VdH)×Cs/(Cs+Co)変化する。例えば、VdH=10V,Vdata=5V、Cs:Co=1:2である場合には、画像信号線Lisの電位が−5V変化し、駆動トランジスタ12のゲート電位Vgは、有機EL素子11からコンデンサ14に対する電荷の移動により、(5−10)×1/(1+2)=−5/3V変化する。このようにコンデンサ14に蓄積される電荷の移動により、画像信号線Lisの電位の変化が駆動トランジスタ12のゲート電位に反映される。
○素子初期化期間P5:
素子初期化期間P5(以下適宜「期間P5」と略する)においては、VDD線LvdおよびVSS線Lvsにそれぞれ所定の負電位−Vpが付与される。また、全走査信号線Lssに低電位VgLが付与される。更に、画像信号線Lisに高電位VdHが付与される。このとき、Vth補償用トランジスタ13が非導通状態となり、駆動トランジスタ12が導通状態となる。そして、VDD線LvdとVSS線Lvsとの間に電位差がなく、VSS線Lvsが負電位−Vpに設定されているため、有機EL素子11(すなわち素子コンデンサCol)に蓄積された電荷が、VSS線Lvsに抜けて、有機EL素子11に蓄積された電荷が一掃される。
○発光期間P6:
図9では、発光期間P6(以下適宜「期間P6」と略する)での画素回路31における電流の流れが例示されている。
期間P6では、VDD線Lvdに正の高電位VDDが付与される。また、VSS線Lvsに基準電位0Vが付与される。また、走査信号線Lssに低電位VgLが付与される。更に、画像信号線Lisに高電位VdHが付与される。
このとき、走査信号線Lssにおける低電位VgLの付与により、Vth補償用トランジスタ13が非導通状態となる。一方、画像信号線Lisに対して高電位VdHが付与されるため、期間P4においてコンデンサ14に蓄積された電荷量(電位Vdataに応じた電荷量)に応じた電位分、ゲート電圧Vgが閾値Vthよりも高くなり、駆動トランジスタ12が導通状態となる。
例えば、Vdata=5V、Cs:Co=1:2である場合には、期間P4においてコンデンサ14に蓄積される電荷が、閾値Vthよりも5/3V低い電位([Vth−5/3]V)に対応する。そして、期間P6では、期間P4よりもVdata(=5V)分高い電位が画像信号線Lisに対して付与され、第3電極(ゲート)12gに対して、閾値Vthよりも10/3V高い電位([Vth+10/3]V=[Vth−(5/3)+5]V)が付与される。
そして、VDD線LvdがVSS線Lvsよりも電位VDD分、高電位であり、駆動トランジスタ12が電位Vdataに応じて第1−2電極間で電流が流れる導通状態となる。このため、図9で示されるように、有機EL素子11に対して電位Vdataに応じた電流が流れる。その結果、有機EL素子11が電位Vdataに応じた輝度で発光する。つまり、期間P6では、各画素から出力画像信号に応じた輝度の光が出射される。
このような期間P1〜P6が繰り返されることで、各有機EL素子11の発光が繰り返され、有機ELパネル3において出力画像信号に応じた動画像が表示される。
図10は、有機ELパネル3が順次に発光する際における発光輝度の経時的な変化を模式的に示す図である。図10では、横軸が時刻を示し、縦軸が発光輝度を示している。
図10で示されるように、期間P1〜P5に相当する有機EL素子11が発光していない期間(発光準備期間)Ppreと、期間P6に相当する有機EL素子11が発光している期間(発光期間)Pemitとが繰り返される。なお、発光期間Pemitにおける発光輝度は、出力画像信号によって決まる任意の値であるため、図10では、当該発光輝度が存在し得る範囲に斜線ハッチングが便宜的に付されている。また、動画において1フレームの表示開始から次のフレームの表示開始までの期間(例えば、1/60秒)、すなわち1フレーム分の表示期間を、以下「1フレーム期間Prd」と称する。なお、1フレーム期間Prdは、発光期間Pemitと、その直後の発光準備期間Ppreとによって構成される。
次に、デューティ制御部26によって、1フレーム期間Prdにおいて発光期間Pemitが占める比率(デューティ)を制御する方法(デューティ制御方法)について説明する。
<デューティ制御方法>
図11は、デューティの制御例を説明するための図である。図11では、横軸が時刻を示し、縦軸が実測電流積分値Qrを示し、太線Lqが実測電流積分値Qrの経時的な変化を示している。
ここでは、各フレーム期間Prdについて、予測値取得部23によって、ある1フレームの入力画像信号に基づいて予測電流積分値Qpが得られ、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpと略一致するように、該1フレームのデューティが制御される。
詳細には、図11で示されるように、比較部25において電流積分部24によって得られる実測電流積分値Qrが予測値取得部23によって得られた予測電流積分値Qpまで到達した時点(時刻tend)で、デューティ制御部26およびドライバ制御部27による制御によって、有機EL素子11に対する電圧の供給が完了される。
具体的には、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpまで到達した時点で、デューティ制御部26およびドライバ制御部27の制御によって、専用ドライバ5Yから電源線Lvdに印加される電位Vddが、高電位VDDから基準電位(ここでは0V)に変更される。この電源線Lvdの電位Vddの変更によって、2つの電源線Lvd,Lvsに付与される電位Vdd,Vssが同電位となり、有機EL素子11の両電極間に印加される電位差が略0となる。つまり、有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給が停止される。そして、このとき、有機EL素子11の発光が停止する。
なお、実際には、有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給が停止されてから、有機EL素子11の発光が完全に終了するまで、有機EL素子11に若干の電流が流れるとともに、有機EL素子11が若干発光する。但し、有機EL素子11の消灯時に若干流れる電流は、発光期間Pemitにおいて有機EL素子11に流れる電流と比較して、ほとんど無視できるような極微量なものである。
したがって、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpまで到達したことに応答して、有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給が停止されれば、画素回路31の駆動に係る実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした所定の範囲(基準範囲)に含まれることになる。なお、この基準範囲としては、例えば、予測電流積分値Qpの±1%以内の範囲等が考えられる。
このように、デューティ制御部26によって、有機EL素子11に対する電圧の供給が開始されるタイミングは維持されつつ、有機EL素子11に対する電圧の供給を完了するタイミングが変更される。その結果、デューティ制御部26によって、有機EL素子11に対して電圧を供給する時間(電圧供給時間)が制御され、デューティが制御される。
<デューティ制御動作>
図12および図13は、画像表示装置1におけるデューティの制御動作フローを示すフローチャートである。本動作フローは、制御部2で所定のプログラムが実行されることで実現され、例えば、入力画像信号が制御部2に入力されると開始される。
まず、ステップS1では、指数演算部21R,21G,21B、積算部22R,22G,22B、および予測値取得部23により、予測値(ここでは、予測電流積分値Qp)が取得される。
詳細には、図13で示されるように、まず、指数演算部21R,21G,21Bにより、各色の6ビットの画像信号を2.2乗した値iR,iG,iBが算出される(ステップS11)。次に、積算部22R,22G,22Bにより、各色について、値iR,iG,iBを有機ELパネル3の各色の画素数分だけ累積加算した値SumR,SumG,SumBが算出される(ステップS12)。その次に、予測値取得部23により、値SumR,SumG,SumBから、予測消費電流Ipが算出される(ステップS13)。更に、予測値取得部23により、予測消費電流Ipに基準発光時間Tsemitを乗じることで、予測電流積分値Qpが算出される。
ステップS2では、電流値取得部4および電流積分部24により、ステップS1で予測電流積分値Qpの算出対象となった入力画像信号に対応する出力画像信号に応じて有機EL素子11が発光させられつつ、該有機EL素子11を流れる電流の実測値(実測消費電流)Irが検出される。そして、該実測消費電流Irが時間で積分されることで実測電流積分値Qrが取得される処理が開始される。なお、入力画像信号が制御部2に入力されて、ステップS1で予測電流積分値Qpが算出されるタイミングと、該入力画像信号に対応する出力画像信号に応じて有機EL素子11が発光するタイミングとは、所定時間ずれるため、この所定時間のずれが考慮されて、ステップS2の処理が開始される。
ステップS3では、比較部25により、ステップS2で取得され始めた実測電流積分値Qrが、ステップS1で算出された予測電流積分値Qpに到達したか否か、つまりQp≦Qrの関係が成立するか否か判定される。ここでは、Qp≦Qrの関係が成立するまでステップS3の判定が繰り返され、Qp≦Qrの関係が成立すれば、ステップS4に進む。
ステップS4では、デューティ制御部26により、ドライバ制御部27および専用ドライバ5Yを介して、2つの電源線Lvd,Lvsに付与される電位Vdd,Vssが同電位に設定され、各有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給が停止されて、本動作フローが終了される。ここでは、各有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給の停止により、各フレーム毎にデューティが制御される。
そして、このようなステップS1〜S4の処理が、動画を構成する各フレームについて行われる。
以上のように、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置1では、画素回路31の駆動に係る実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした所定の基準範囲に含まれるように、有機EL素子11に対して電圧を供給する時間(電圧供給時間)が制御される。このため、画像表示装置1の発光輝度を安定化させることができる。詳細には、ある1フレームに係る実測電流積分値Qrが該1フレームに係る予測電流積分値Qpまで到達した時点で、有機EL素子11に対する電圧の供給が完了される。つまり、実測消費電流Irの測定対象となっているフレームの発光時間、すなわちデューティが制御される。したがって、画像表示装置1の発光輝度をより迅速に安定化させることができる。
また、有機ELパネル3における画像表示に係る発光の開始のタイミングが固定され、発光の終了のタイミングが変更されることで、デューティが増減される。このため、ユーザが画面のちらつきを感じてしまうような画質の劣化を招くことなく、画像表示装置の発光輝度を安定化させることができる。
また、比較的簡単な構成で測定可能な電流の実測値とその予測値とを用いて、有機EL素子11に対する電圧供給時間が制御される。このため、構成の複雑化を招くことなく、画像表示装置1の発光輝度を安定化させることができる。
更に、ここでは、デューティの制御によって画像表示装置1の発光輝度が安定化されるため、RGBの3色のカラーバランスがほぼ崩れることがない。つまり、カラーバランスの崩れ等といった画質の劣化を招くことなく、画像表示装置1の発光輝度を安定化させることができる。
<第2実施形態>
上記第1実施形態に係る画像表示装置1では、ある1フレームに係る実測電流積分値Qrが該1フレームに係る予測電流積分値Qpまで到達した時点で、有機EL素子11に対する電圧の供給が完了された。
これに対して、第2実施形態に係る画像表示装置1Aでは、予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとを比較して、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを基準とした許容範囲から外れた場合には、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを基準とした基準範囲に入るまで、デューティを段階的に増減させる。
<画像表示装置の機能的な構成>
図1で示されるように、第2実施形態に係る画像表示装置1Aは、第1実施形態に係る画像表示装置1と比較して、比較部25、デューティ制御部26、およびドライバ制御部27が、機能の異なる比較部25A、デューティ制御部26A、およびドライバ制御部27Aにそれぞれ変更され、該変更により、制御部2が実現される機能が異なる制御部2Aに変更されたものとなっている。以下、第2実施形態に係る画像表示装置1Aについて、第1実施形態に係る画像表示装置1と異なる点について主に説明する。但し、第1実施形態に係る画像表示装置1と同様な部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
比較部25Aは、予測値取得部23において取得される予測電流積分値Qpと、電流積分部24から入力される実測電流積分値Qrとを比較する。具体的には、比較部25Aは、実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした第1基準範囲R1から外れているか否か判定する。そして、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から一旦外れた場合には、実測電流積分値Qrと予測電流積分値Qpとの大小関係を判定する。また、比較部25Aは、実測電流積分値Qrが、第1基準範囲R1よりも狭く且つ予測電流積分値Qpを基準とした基準範囲としての第2基準範囲R2に含まれているか否か判定する。そして、比較部25Aは、判定結果に応じた制御信号をデューティ制御部26Aに対して出力する。
デューティ制御部26Aは、比較部25Aによる比較結果に応じて、有機ELパネル3に配列された各画素回路31に含まれる有機EL素子11に対して電圧を供給する時間(電圧供給時間)を制御する。
具体的には、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から一旦外れた場合には、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも小さければ、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に入るまで有機EL素子11に対する電圧供給時間、すなわちデューティが所定量ずつ増加される。一方、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも大きければ、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に入るまで有機EL素子11に対する電圧供給時間、すなわちデューティが所定量ずつ低減される。
ここで、デューティの1回の増減量である所定量としては、例えば、デューティの基準値(例えば、0.5)の1%分の量等が挙げられる。また、第1基準範囲R1としては、例えば予測電流積分値Qpを中心とした該予測電流積分値Qpの±5%の範囲等が挙げられる。更に、第2基準範囲R2としては、例えば予測電流積分値Qpを中心とした該予測電流積分値Qpの±2.5%の範囲等が挙げられる。
また、ここでは、現在設定されているデューティに応じた有機EL素子11の発光時に得られる実測電流積分値Qrと、予測電流積分値Qpとを比較した後に、デューティを増減させる。このため、次のフレームから、増減されたデューティに応じた有機EL素子11の発光が行われる。
このように、デューティ制御部26Aによって、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に含まれるように有機EL素子11に対する電圧供給時間の設定値が変更される。そして、デューティ制御部26Aによって、実測電流積分値Qrに係る実測消費電流Irの測定が行われた有機EL素子11において、次回発光するときに、変更後の電圧供給時間の設定値に応じて有機EL素子11に対する電圧供給時間が制御される。
なお、ドライバ制御部27Aは、デューティ制御部26Aで再設定された電圧供給時間、すなわちデューティに応じてデューティ制御部26Aから入力される信号に応じて、専用ドライバ5Yに対して制御信号を出力する。
<デューティ制御方法>
図14および図15は、第2実施形態に係るデューティの制御例を説明するための図である。ここでは、ある程度の期間(時刻t21〜t26)において、予測電流積分値Qpが一定である場合を例にとって説明する。
図14では、実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした第1基準範囲R1から外れ、且つ実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも低いものと、比較部25Aによって認識された場合のデューティの制御例が示されている。また、図15では、実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした第1基準範囲R1から外れ、且つ実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも高いものと、比較部25によって認識された場合のデューティの制御例が示されている。具体的には、図14および図15では、横軸が時刻、縦軸が実測電流積分値Qrを示すとともに、実測電流積分値Qr(黒丸および実線)の経時的な変化が示されている。
まず、図14で示されるように、実測電流積分値Qrが、第1基準範囲R1内になく、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qp(図14中の一点鎖線)よりも低い場合(時刻t21)、デューティ制御部26Aにより、ドライバ制御部27Aおよび専用ドライバ5Yを介して、デューティの増加が開始される。
ここでは、経時的な特性の変化又は温度変化により、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも低くなっているため、実測電流積分値Qrが上昇するように、デューティが増加される。そして、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを基準とした第2基準範囲R2に到達するまで、デューティが段階的に増加される(時刻t21〜t26)。そして、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に含まれるようになれば、デューティの増加が停止される(時刻t26)。
一方、図15で示されるように、実測電流積分値Qrが、第1基準範囲R1内になく、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qp(図15中の一点鎖線)よりも高い場合(時刻t21)、デューティ制御部26Aにより、ドライバ制御部27Aおよび専用ドライバ5Yを介して、デューティの低減が開始される。
ここでは、経時的な特性の変化又は温度変化により、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも高くなっているため、実測電流積分値Qrが低下するように、デューティが低減される。そして、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを基準とした第2基準範囲R2に到達するまで、デューティが低減される(時刻t21〜t26)。そして、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に含まれるようになれば、デューティの低減が停止される(時刻t26)。
<デューティ制御動作>
図16は、第2実施形態に係るデューティの制御動作フローを示すフローチャートである。本動作フローは、制御部2Aで所定のプログラムが実行されることで実現され、例えば、入力画像信号が制御部2Aに入力されると開始される。
まず、ステップST1では、図12のステップS1と同様に、図13で示された処理によって、予測電流積分値Qpが取得される。
ステップST2では、電流値取得部4および電流積分部24により、ステップST1で予測電流積分値Qpの算出対象となった入力画像信号に対応する出力画像信号に応じて有機EL素子11が発光させられつつ、該有機EL素子11を流れる電流の実測値(実測消費電流)Irが検出されるとともに、該実測消費電流Irが時間で積分されて実測電流積分値Qrが取得される。このとき、有機EL素子11に対する電圧供給時間は、既に設定されているデューティに応じた時間となっている。また、ここでは、制御部2Aへの入力画像信号の入力に応じて、ステップST1で予測電流積分値Qpが算出されるタイミングと、該入力画像信号に対応する出力画像信号に応じて有機EL素子11が発光するタイミングとの所定時間のずれが考慮されて、ステップST2の処理が行われる。
ステップST3では、比較部25Aにより、ステップST2で取得された実測電流積分値Qrが、ステップST1で取得された予測電流積分値Qpを基準とした所定の第1基準範囲R1から外れているか否か判定される。ここで、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から外れていれば、ステップST4に進み、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から外れていなければ、本動作フローが終了される。
ステップST4では、比較部25Aにより、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも大きいか否か、すなわちQp<Qrの関係が成立するか否か判定される。ここで、Qp<Qrの関係が成立すれば、ステップST5に進み、Qp<Qrの関係が成立しなければ、ステップST6に進む。
ステップST5では、デューティ制御部26Aにより、デューティの設定値が所定量低減される。
ステップST6では、デューティ制御部26Aにより、デューティの設定値が所定量増加される。
ステップST7では、ステップST1と同様に、図13で示された処理によって、予測電流積分値Qpが取得される。なお、ステップST7において予測電流積分値Qpの算出対象となる入力画像信号は、ステップST1またはステップST7において前回得られた予測電流積分値Qpの算出対象となったフレームに係る入力画像信号の次のフレームに係る入力画像信号となる。
ステップST8では、ステップST2と同様に、電流値取得部4および電流積分部24により、ステップST7で予測電流積分値Qpの算出対象となった入力画像信号に対応する出力画像信号に応じて有機EL素子11が発光させられつつ、該有機EL素子11を流れる電流の実測値(実測消費電流)Irが検出されるとともに、該実測消費電流Irが時間で積分されて実測電流積分値Qrが取得される。
ステップST9では、比較部25Aにより、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを基準とした所定の第2基準範囲R2に含まれるか否か判定される。ここで、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に含まれていなければ、ステップST4に戻り、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に含まれていれば、本動作フローが終了される。つまり、実測電流積分値Qrが、第2基準範囲R2内に到達するまで、ステップST4〜ST9の処理が繰り返される。
そして、このような動作フローが実行されることで、例えば、各フレームの入力画像信号について、予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとが取得され、その比較結果に応じて、デューティ制御部26Aにより、フレーム毎にデューティが適宜変更される。すなわち、デューティ制御部26Aにより、有機EL素子11に対する電圧供給時間が制御される。
詳細には、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを基準とした第1基準範囲R1から外れれば、デューティ制御部26Aにより、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも幅が狭い第2基準範囲R2に含まれるように、有機EL素子11に対する電圧供給時間が増減される。一方、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1に含まれている限りは、デューティ制御部26Aにより、有機EL素子11に対する電圧供給時間が維持される。
以上のように、第2実施形態に係る画像表示装置1Aでは、上記第1実施形態に係る画像表示装置1と同様に、画素回路31の駆動に係る実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした所定の基準範囲に含まれるように、有機EL素子11に電圧が供給される時間(電圧供給時間)が制御される。このため、画像表示装置1Aの発光輝度を安定化させることができる。また、比較的簡単な構成で測定可能な電流の実測値とその予測値とに基づいて、有機EL素子11に対する電圧供給時間が制御されるため、構成の複雑化を招くことなく、画像表示装置1Aの発光輝度を安定化させることができる。
更に、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から外れれば、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも幅が狭い第2基準範囲R2に含まれるように、有機EL素子11に対する電圧供給時間が増減される。また、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1に含まれている限りは、有機EL素子11に対する電圧供給時間が維持される。したがって、ある程度の発光輝度の変動が許容されるため、頻繁に発光時間が変更されて、ユーザが視覚的に違和感を感じる等と言った不具合の発生を抑制することができる。
<第3実施形態>
上記第1および第2実施形態に係る画像表示装置1,1Aでは、有機ELパネル3に配列された全ての有機EL素子11が同時に点灯する方式(同時点灯方式)が採用されていた。
これに対して、第3実施形態に係る画像表示装置1Bでは、有機ELパネル3に配列された複数の有機EL素子11が、一端側の水平ラインから順次に水平ライン毎に発光を開始および終了する方式(具体的には、プログレッシブ方式)が採用されている。そして、プログレッシブ方式の採用に伴って、第3実施形態に係る画像表示装置1Bでは、上記第1および第2実施形態に係る画像表示装置1,1Aと比較して、予測電流積分値Qpの取得方法、および実測電流積分値Qrと予測電流積分値Qpとの比較方法が異なる。
<画像表示装置の機能的な構成>
図17は、本発明の第3実施形態に係る画像表示装置1Bの機能的な構成を示す図である。図17で示されるように、第3実施形態に係る画像表示装置1Bは、上記第1および第2実施形態に係る画像表示装置1,1Aと比較して、積算部22R,22G,22B、予測値取得部23、電流積分部24、比較部25,25A、デューティ制御部26,26A、およびドライバ制御部27,27Aが、機能の異なる積算部22RB,22GB,22BB、予測値取得部23B、電流積分部24B、比較部25B、デューティ制御部26B、およびドライバ制御部27Bにそれぞれ変更され、該変更により、制御部2が実現される機能が異なる制御部2Bに変更されたものとなっている。
以下、図17を参照しつつ、第3実施形態に係る画像表示装置1Bについて、第1および第2実施形態に係る画像表示装置1,1Aと異なる点について主に説明する。但し、第1および第2実施形態に係る画像表示装置1,1Aと同様な部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
積算部22RB,22GB,22BBは、指数演算部21R,21G,21Bで得られた値(階調値を2.2乗した値)を、R,G,Bの色毎に、有機ELパネル3の水平ライン毎に累積加算する。例えば、有機ELパネル3において、1つの水平ラインに1280個の同色の画素が配列され、且つ960本の水平ラインが配列されている場合には、各色に対し、960本の水平ラインについて水平ライン毎に1280画素分の階調値がそれぞれ累積加算される。
詳細には、積算部22RBが、階調値Drが2.2乗された値iRを有機ELパネル3の各水平ラインについてR色の画素数分だけ累積加算した値LSumRn(nは、有機ELパネル3の一端側からの水平ラインの順番を示す自然数)をそれぞれ算出する。また、積算部22GBが、階調値Dgが2.2乗された値iGを有機ELパネル3の各水平ラインについてG色の画素数分だけ累積加算した値LSumGn(nは、水平ラインの順番を示す自然数)をそれぞれ算出する。また、積算部22BBが、階調値Dbが2.2乗された値iBを有機ELパネル3の各水平ラインについてB色の画素数分だけ累積加算した値LSumBn(nは、水平ラインの順番を示す自然数)をそれぞれ算出する。
予測値取得部23Bは、予測電流演算部231、遅延回路232、および流れ加算部233を有している。
予測電流演算部231は、積算部22RB,22GB,22BBでそれぞれ算出された各水平ラインについての値SumRn,SumGn,SumBnから、各色の階調値がDr,Dg,Dbである各水平ラインの入力画像信号に対応して有機ELパネル3でそれぞれ消費されると予測される電流の予測値(第n予測消費電流)Ipnを算出する。ここでは、第n予測消費電流Ipnは、n番目の水平ラインにおいて消費される電流の予測値を示す。
ここで、有機ELパネル3では、RGBの3色の有機EL素子11において消費される電流の最大値は、有機ELパネル3のホワイトバランスの設定によって異なる。このため、予め設計上決められるRGBの間で異なる係数Cr,Cg,Cbを、値SumRn,値SumGn,値SumBnに乗じて加算することで、第n予測消費電流Ipnが算出される。具体的には、下式(4)を用いることで、第n予測消費電流Ipnが算出される。
Ipn=Cr×SumRn+Cg×SumGn+Cb×SumBn・・・(4)。
そして、予測電流演算部231で算出された第n予測消費電流Ipnは、遅延回路232を介して、流れ加算部233に対して順次出力される。
流れ加算部233は、第n予測消費電流Ipnを用いて、1フレーム分の入力画像信号に応じた有機ELパネル3の発光において有機ELパネル3で消費されると予測される電流を時間で積分した値(予測電流積分値)Qpを算出する。
ここで、プログレッシブ方式が採用された画像表示装置1Bにおける発光動作、および流れ加算部233における予測電流積分値Qpの算出方法について順次説明する。
プログレッシブ方式が採用された画像表示装置1Bでは、1フレーム分の入力画像信号に対して、例えば、有機ELパネル3の上方側の1番目の水平ラインから順に点灯し始め、その後、デューティに応じたN本の水平ラインが同時に点灯する。例えば、デューティが0.4の場合には、有機ELパネル3の水平ラインの本数が480本であれば、Nは192(=480×0.4)となる。そして、N本の水平ラインのうちの最も上方の1本の水平ラインが消灯するタイミングで、N本の水平ラインの直ぐ下方の1本の水平ラインが点灯する。このため、点灯しているN本の水平ラインの帯が上方から下方に向かってシフトしていくとともに、最終的に有機ELパネル3の最も下方側の水平ラインが消灯する。
このような1フレーム分の入力画像信号に応じた発光動作が順次に繰り返されることで、動画を構成する複数フレーム分の入力画像信号に応じた発光動作が実現される。そして、複数フレーム分の入力画像信号に応じた発光動作では、動画を構成するm(mは自然数)番目のフレーム(以下「第mフレーム」と称する)の入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の下方の複数の水平ラインで行われている状態で、第mフレームの次の(m+1)番目のフレーム(以下「第(m+1)フレーム」と称する)の入力画像信号に応じた発光動作が有機ELパネル3の上方の水平ラインで開始される。
例えば、フレーム間にM(2または3)本のいわゆるブランクラインが存在している場合、デューティの変更がなければ、第mフレームの入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の最も下方の(N−M)本の水平ラインで行われている状態から、有機ELパネル3の最も下方の(N−M−1)本の水平ラインで行われている状態へ移行する際に、第(m+1)フレームの入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の最も上方の1本目の水平ラインで開始される。その後、第mフレームの入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の最も下方の水平ラインで終了される際に、第(m+1)フレームの入力画像信号に応じた発光動作が有機ELパネル3の上方の(N−M)本の水平ラインで行われる。
なお、各フレームの入力画像信号に応じて有機ELパネル3の発光が開始されるタイミングの間隔は、入力画像信号のフレーム間隔、すなわちフレームレートFr(例えば、1/60秒)で一定となっている。
流れ加算部233では、第mフレームの入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の上方のN本の水平ラインで行われ始めた時点から、第mフレームの入力画像信号に応じた有機ELパネル3の発光が完全に終了する時点までに有機ELパネル3で消費されるものと予測される電流の予測値(予測消費電流)を時間で積分した値(予測電流積分値)Qpを算出する。以下、流れ加算部233において予測電流積分値Qpを算出する処理を「流れ加算処理」と称する。
なお、ここでは、例えば、第mフレームの入力画像信号が制御部2Bに入力されて、予測電流演算部231において200番目の水平ラインに係る予測消費電流Ipnが算出されるタイミングで、所定本Np(ここでは8本)の水平ライン分遅れて、192番目の水平ラインにおいて発光が行われる。つまり、予測消費電流Ipnの算出対象となっている水平ラインと、実際に有機ELパネル3で発光している水平ラインとは、所定本Np(ここでは8本)分のずれが生じる。この所定本Np分のずれは、各画素回路31に対する出力画像信号の書き込みに係る動作に起因して生じる。
なお、ここで言う所定本Np分に相当するずれの時間(ずれ時間)をTsfとすれば、ずれ時間Tsfは、有機ELパネル3に配列されている全水平ラインの数Ltotal、ブランクラインの本数M、およびフレームレートFrを用いて、下式(5)によって求められる。
Tsf=Np/(Ltotal+M)×Fr ・・・(5)。
遅延回路232は、所定の記憶容量のメモリ等によって構成され、上記所定本Np分のずれ時間Tsfに応じて、第n予測消費電流Ipnを示す信号の出力タイミングを調整する。具体的には、予測電流演算部231から入力される第n予測消費電流Ipnを、上記所定本Np分のずれに応じた時間Tsf分遅延させて、流れ加算部233に与える。
例えば、Np=8である場合を想定すると、予測電流演算部231で200番目の水平ラインに係る予測消費電流Ipn(n=200)が算出される際に、1〜192番目の水平ラインが発光する。このとき、流れ加算部233では、1〜192番目の水平ラインに係る予測消費電流Ipn(ここでは、n=1〜192)が加算され、時間で積分される。
また、予測電流演算部231で201番目の水平ラインに係る予測消費電流Ipn(n=201)が算出される際に、2〜193番目の水平ラインが発光する。このとき、流れ加算部233では、2〜193番目の水平ラインに係る予測消費電流Ipn(ここでは、n=2〜193)が加算され、時間で積分される。
更に、予測電流演算部231で202番目の水平ラインに係る予測消費電流Ipn(n=202)が算出される際に、3〜194番目の水平ラインが発光する。このとき、流れ加算部233では、3〜194番目の水平ラインに係る予測消費電流Ipn(ここでは、n=3〜194)が加算され、時間で積分される。
ここで、予測消費電流Ipnの加算対象となるN本の水平ラインの帯が切り替わる時間間隔TSFは、下式(6)によって求められる。
TSF=1/(Ltotal+M)×Fr ・・・(6)。
なお、流れ加算部233では、TG29からの信号に応じて、予測消費電流Ipnの加算対象となるN本の水平ラインの帯が切り替えられる。但し、上式(6)に基づいて予め設定されたタイミングで予測消費電流Ipnの加算対象となるN本の水平ラインの帯が切り替えられても良い。そして、第mフレームの入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の上方のN本の水平ラインで行われ始めるタイミング、および第mフレームの入力画像信号に応じた有機ELパネル3の発光が完全に終了するタイミングは、デューティ制御部26Bで設定されるデューティと、TG29からの信号とによって制御される。
このようにして、遅延回路232の働きにより、流れ加算部233において、有機ELパネル3で発光している全ての水平ラインに対応する予測消費電流Ipnが時間について順次に積分され、予測電流積分値Qpが取得される。つまり、本実施形態では、指数演算部21R,21G,21B、積算部22RB,22GB,22BB、および予測値取得部23Bが、入力画像信号に基づき、画素回路31の駆動に係るパラメータである電流を時間で積分した予測電流積分値Qpを認識する認識部として機能する。
なお、第mフレームの入力画像信号に応じた有機ELパネル3の発光が完全に終了する時点では、第(m+1)フレームの入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の上方から(N−M)本の水平ラインで行われている。つまり、流れ加算部233で取得される予測電流積分値Qpは、第mフレームの入力画像信号に応じた電流を時間で積分した値と、第mフレームの入力画像信号と第(m+1)フレームの入力画像信号とが混合した入力画像信号に応じた電流を時間で積分した値とが合算されたものとなる。
図17に戻って説明を続ける。
電流積分部24Bは、有機ELパネル3の画面全体で実際に消費され、且つ電流値取得部4で取得される電流値(実測消費電流)Irを、第mフレームの入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の上方のN本の水平ラインで行われ始めた時点から、第mフレームの入力画像信号に応じた有機ELパネル3の発光が完全に終了する時点まで積分することで、実測電流積分値Qrを算出する。
この実測電流積分値Qrは、第mフレームの入力画像信号に応じて有機ELパネル3が発光する際に有機EL素子11で流れる電流を時間で積分した値となっている。したがって、本実施形態では、電流積分部24Bは、電流値取得部4で取得される実測消費電流Irを時間で積分した実測電流積分値Qrを得る部分となっている。
なお、第mフレームの入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の上方のN本の水平ラインで行われ始めるタイミング、および第mフレームの入力画像信号に応じた有機ELパネル3の発光が完全に終了するタイミングは、デューティ制御部26Bで設定されるデューティと、TG29からの信号とによって制御される。
比較部25Bは、第2実施形態に係る比較部25Aと同様に、予測値取得部23Bにおいて取得される予測電流積分値Qpと、電流積分部24Bから入力される実測電流積分値Qrとを比較する。具体的には、比較部25Bは、実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした第1基準範囲R1から外れているか否か判定する。そして、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から一旦外れた場合には、実測電流積分値Qrと予測電流積分値Qpとの大小関係を判定する。また、比較部25Bは、実測電流積分値Qrが、第1基準範囲R1よりも狭く且つ予測電流積分値Qpを基準とした第2基準範囲R2に含まれているか否か判定する。そして、比較部25Bは、判定結果に応じた制御信号をデューティ制御部26Bに対して出力する。
デューティ制御部26Bは、第2実施形態に係るデューティ制御部26Aと同様に、比較部25Bによる比較結果に応じて、有機ELパネル3に配列された各画素回路31に含まれる有機EL素子11に電圧を供給する時間(電圧供給時間)を制御する。
具体的には、第2実施形態と同様に、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から一旦外れた場合には、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも小さければ、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に入るまで、有機EL素子11に対する電圧供給時間、すなわちデューティが所定量ずつ増加される。一方、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも大きければ、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に入るまで、有機EL素子11に対する電圧供給時間、すなわちデューティが所定量ずつ低減される。但し、デューティの1回の増減量である所定量としては、例えば、同時に点灯する水平ラインの本数、すなわちNを1本増減させる量等が挙げられる。
また、第1基準範囲R1としては、第2実施形態と同様に、例えば、予測電流積分値Qpを中心とした該予測電流積分値Qpの±5%等の範囲が挙げられる。更に、第2基準範囲R2としては、第2実施形態と同様に、例えば、予測電流積分値Qpを中心とした該予測電流積分値Qpの±2.5%等の範囲が挙げられる。
更に、第mフレームに係る実測電流積分値Qrと予測電流積分値Qpとの比較に応じて
デューティ制御部26Bによってデューティが増減されるタイミングは、第(m+1)フレームの入力画像信号に応じた発光が有機ELパネル3の上方の(N−M)本の水平ラインで行われているタイミングとなる。そして、デューティの増減により、同時に点灯する水平ラインの本数Nが増減する。
したがって、デューティ制御部26Bによって、有機EL素子11に対する電圧の供給が開始されるタイミングが維持されつつ、有機EL素子11に対する電圧の供給を完了するタイミングが変更される。その結果、デューティ制御部26Bによって、有機EL素子11に対して電圧を供給する時間(電圧供給時間)が制御される。
そして、デューティ制御部26Bによって、有機ELパネル3において、各水平ラインに含まれる複数の有機EL素子11を垂直方向に上方から順次に発光させつつ、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に含まれるように、各水平ラインに含まれている有機EL素子11に対する電圧供給時間の設定値が変更される。そして、デューティ制御部26Bによって、実測電流積分値Qrに係る実測消費電流Irの測定が行われた有機EL素子11の発光タイミングの後の該有機EL素子11の発光タイミングにおいて、変更後の電圧供給時間の設定値に応じて有機EL素子11に対する電圧供給時間が制御される。
ドライバ制御部27Bは、デューティ制御部26Bで再設定された電圧供給時間、すなわちデューティに応じてデューティ制御部26Bから入力される信号に応じて、専用ドライバ5Yに対して制御信号を出力する。
<デューティ制御動作>
図18および図19は、本発明の第3実施形態に係る画像表示装置1Bにおけるデューティの制御動作フローを示すフローチャートである。本動作フローは、制御部2Bで所定のプログラムが実行されることで実現され、例えば、入力画像信号が制御部2Bに入力され始めると開始される。
まず、図18のステップSP1では、予測電流演算部231によって水平ライン毎に第n予測消費電流Ipnが算出される処理が開始される。
ステップSP2では、遅延回路232によってステップSP1で順次に取得される予測消費電流Ipnを流れ加算部233に出力するタイミングを遅らせる処理(遅延処理)が開始される。
ステップSP3では、流れ加算部233によって遅延回路232から入力される予測消費電流Ipnを用いて予測電流積分値Qpを算出する流れ加算処理が開始される。
ステップSP4では、ステップSP3における流れ加算処理の開始とともに、電流積分部24Bによる実測電流積分値Qrの取得が開始される。
ステップSP5では、流れ加算部233および電流積分部24Bにおいて、1フレーム分の発光が終了したか否か判定される。具体的には、第mフレームの入力画像信号に応じた有機ELパネル3の発光が完全に終了したか否か判定される。ここでは、1フレーム分の発光が終了するまでステップSP5の判定が繰り返され、1フレーム分の発光が終了すればステップSP6に進む。ステップSP6に進むタイミングで、流れ加算部233から予測電流積分値Qpが比較部25Bに出力され、電流積分部24Bから実測電流積分値Qrが比較部25Bに出力される。
ステップSP6では、比較部25Bにより、実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした所定の第1基準範囲R1から外れているか否か判定される。ここで、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から外れていれば、ステップSP7に進み、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から外れていなければ、本動作フローが終了される。
ステップSP7では、比較部25Bにより、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも大きいか否か、すなわちQp<Qrの関係が成立するか否か判定される。ここで、Qp<Qrの関係が成立すれば、ステップSP8に進み、Qp<Qrの関係が成立しなければ、ステップSP9に進む。
ステップSP8では、デューティ制御部26Bにより、デューティの設定値が所定量低減され、図19のステップSP11に進む。
ステップSP9では、デューティ制御部26Bにより、デューティの設定値が所定量増加され、図19のステップSP11に進む。
図19のステップSP11では、次のフレームについて、図18のステップSP5と同様に、流れ加算部233および電流積分部24Bにおいて、1フレーム分の発光が終了したか否か判定される。ここでは、1フレーム分の発光が終了するまでステップSP11の判定が繰り返され、1フレーム分の発光が終了すればステップSP12に進む。ステップSP12に進むタイミングで、流れ加算部233から予測電流積分値Qpが比較部25Bに出力され、電流積分部24Bから実測電流積分値Qrが比較部25Bに出力される。
ステップSP12では、比較部25Bにより、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを基準とした所定の第2基準範囲R2に含まれるか否か判定される。ここで、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に含まれていなければ、図18のステップSP7に戻り、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に含まれていれば、本動作フローが終了される。つまり、実測電流積分値Qrが、第2基準範囲R2内に到達するまで、ステップSP7〜SP12の処理が繰り返される。
そして、このような動作フローが実行されることで、例えば、各フレームの入力画像信号について、予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとが順次に取得され、その比較結果に応じて、デューティ制御部26Bにより、フレーム毎にデューティが適宜変更される。つまり、デューティ制御部26Bにより、有機EL素子11に対する電圧供給時間が制御される。
詳細には、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを基準とした第1基準範囲R1から外れれば、デューティ制御部26Bにより、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも幅が狭い第2基準範囲R2に含まれるように、有機EL素子11に対する電圧供給時間が増減される。一方、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1に含まれている限りは、デューティ制御部26Bにより、有機EL素子11に対する電圧供給時間が維持される。
以上のように、プログレッシブ方式が採用された第3実施形態に係る画像表示装置1Bでは、上記第1および第2実施形態に係る画像表示装置1,1Aと同様に、画素回路31の駆動に係る実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした所定の基準範囲に含まれるように、有機EL素子11に電圧を供給する時間(電圧供給時間)が制御される。このため、画像表示装置1Bの発光輝度を安定化させることができる。また、比較的簡単な構成で測定可能な電流の実測値とその予測値とに基づいて、有機EL素子11に対する電圧供給時間が制御されるため、構成の複雑化を招くことなく、画像表示装置1Bの発光輝度を安定化させることができる。
また、上記第2実施形態に係る画像表示装置1Aと同様に、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から外れれば、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも幅が狭い第2基準範囲R2に含まれるように、有機EL素子11に対する電圧供給時間が増減される。一方、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1に含まれている限りは、有機EL素子11に対する電圧供給時間が維持される。このように、ある程度の発光輝度の変動が許容されるため、頻繁に発光時間が変更されて、ユーザが視覚的に違和感を感じる等と言った不具合の発生を抑制することができる。
なお、本発明は上述の第1〜3実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
<変形例1>
◎上記第1〜3実施形態では、画素回路31の駆動に係るパラメータとして電流が採用され、有機ELパネル3における実測電流積分値Qrと予測電流積分値Qpとの比較結果に応じて、有機ELパネル3に係るデューティが制御されたが、これに限られない。例えば、有機ELパネル3の複数の画素回路31に含まれる複数の発光素子から発せられる光の輝度を、画素回路31の駆動に係るパラメータとしても良い。
具体的には、まず、1フレームの入力画像信号に対して、予め定められたルールに基づき、有機ELパネル3から発せられる光の輝度の予測値(輝度予測値)Lpを認識して、該輝度予測値Lpを時間で積分した値(予測輝度積分値)QLpを取得する。このとき、同じ1フレームの入力画像信号に応じて有機ELパネル3から発せられる光の輝度の実測値(輝度実測値)Lrを取得して、該輝度実測値Lrを時間で積分した値(実測輝度積分値)QLrを取得する。そして、予測輝度積分値QLpと実測輝度積分値QLrとの比較結果に応じて、有機ELパネル3に係るデューティを制御するようにしても良い。なお、本変形例においては、予測輝度積分値が本発明の予測積分値に相当し、実測輝度積分値が本発明の実測積分値に相当する。
このような構成によれば、実際の画面の見え方と直結する輝度に合わせて、有機EL素子11に電圧を供給する時間が制御されるため、画像表示装置の発光輝度をより確実に安定化させることができる。
以下、輝度を利用して有機ELパネル3に係るデューティを制御する具体例を挙げて説明する。
図20は、本発明の変形例1に係る画像表示装置1Cの機能的な構成を示すブロック図である。ここでは、上記第1実施形態と同様な構成について同じ符号を付して説明を省略する。
画像表示装置1Cは、制御部2C、有機ELパネル3、輝度取得部200、Xドライバ5X、専用ドライバ5Y、電源回路6、および記憶部500Cを備えている。
記憶部500Cには、階調値Dr,Dg,Dbと輝度との関係を示すテーブル501Cが格納されている。テーブル501C内には、例えば、階調値Dr,Dg,Dbに対応させて、輝度計による実測等によって得られた輝度値が初期値として予め格納されている。
制御部2Cでは、ROM内等に格納される所定のプログラムが実行されることで、各種機能および動作が実行される。
具体的には、輝度認識部21RC,21GC,21BCが、各画素に対応する各色の値(すなわち階調値)がDr,Dg,Dbである入力画像信号を受け付けて、テーブル501Cを参照し、対応する輝度値Pr,Pg,Pbをそれぞれ認識する。詳細には、輝度認識部21RCが、R色の階調値Drに対応する輝度値Prを認識する。輝度認識部21GCが、G色の階調値Dgに対応する輝度値Pgを認識する。輝度認識部21BCが、B色の階調値Dbに対応する輝度値Pbを認識する。
積算部22RC,22GC,22BCが、輝度認識部21RC,21GC,21BCで認識された輝度値Pr,Pg,Pbを、色毎に有機ELパネル3の画素数分だけ累積加算する。詳細には、積算部22RCが、R色に係る輝度値Prの積算値SumPrを算出する。積算部22GCが、G色に係る輝度値Pgの積算値SumPgを算出する。積算部22BCが、B色に係る輝度値Pbの積算値SumPbを算出する。
予測値取得部23Cは、積算部22RC,22GC,22BCで算出された値SumPr,SumPg,SumPbから、各色の階調値がDr,Dg,Dbである入力画像信号に対応して有機ELパネル3から発せられると予測される光の輝度の予測値(輝度予測値)Lpを算出する。そして、予測値取得部23Cは、輝度予測値Lpに、有機ELパネル3の1回の発光における基準発光時間Tsemit(例えば、1/60秒)を乗じることで、有機ELパネル3の1回の発光時における輝度を時間で積分した値(予測輝度積分値)QLpを算出する。
ここで、有機ELパネル3では、RGBの3色の有機EL素子11に係る輝度の最大値は、有機ELパネル3のホワイトバランスの設定によって異なる。このため、予め設計上決められるRGBの間で異なる係数Clr,Clg,Clbを、値SumPr,値SumPg,値SumPbに乗じて加算することで、輝度予測値Lpが算出される。具体的には、下式(7)を用いることで、輝度予測値Lpが算出される。
Lp=Clr×SumPr+Clg×SumPg+Clb×SumPb・・・(7)。
更に、下式(8)で示されるように、輝度予測値Lpに基準発光時間Tsemitを乗じることで、予測輝度積分値QLpが算出される。
QLp=Lp×Tsemit・・・(8)。
したがって、本変形例では、輝度認識部21RC,21GC,21BC、積算部22RC,22GC,22BC、および予測値取得部23Cが、入力画像信号に基づき、画素回路31の駆動に係るパラメータである輝度を時間で積分した予測輝度積分値QLpを認識する認識部として機能する。
輝度取得部200は、輝度計等を備えて構成される。この輝度計としては、例えば、各画素回路31において、各種トランジスタ12,13および有機EL素子11等が形成されているシリコン基板上に、ダイオードも形成されて輝度計として機能させるような構成が考えられる。そして、本変形例では、輝度取得部200は、入力画像信号に応じた有機EL素子11の発光に対して、画素回路31の駆動に係るパラメータである輝度の実測値(輝度実測値Lr)を取得する取得部に相当する。
なお、例えば、図21で示されるように、有機ELパネル3の前面側ではなく、側面側に輝度取得部200が配置されても良い。図21では、輝度取得部200が、有機ELパネル3の前面側に設けられた保護ガラスの側方に出射される光(横向きの光)の輝度を取得する例が示されている。また、図21では、上方が有機ELパネル3の前面側であり、また、矢印が有機ELパネル3から出射される光の進行方向を示している。但し、このような態様では、輝度取得部200によって、有機ELパネル3の画面全体から出射される光の輝度を測定することが難しいため、測定される光の輝度に対応する輝度予測値を認識した上で、予測輝度積分値QLpを得る必要性がある。
輝度積分部24Cは、有機ELパネル3の画面全体から実際に発せられ、且つ輝度取得部200で取得される輝度値(輝度実測値)Lrを、有機ELパネル3の1回分の発光期間において積分した値(実測輝度積分値)QLrを算出する。つまり、本変形例では、輝度積分部24Cは、入力画像信号に応じた有機EL素子11の発光に対して、画素回路31の駆動に係るパラメータである輝度を時間で積分した実測輝度積分値QLrを取得する部分として機能する。
比較部25Cは、予測値取得部23Cにおいて取得される予測輝度積分値QLpと、輝度積分部24Cから入力される実測輝度積分値QLrとを比較して、比較結果に応じた制御信号をデューティ制御部26に対して出力する。
デューティの制御方法については、上記第1実施形態の予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとが、予測輝度積分値QLpと実測輝度積分値QLrとに変更されているが、予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとの関係に応じたデューティの制御と同様に、予測輝度積分値QLpと実測輝度積分値QLrとの関係に応じたデューティの制御が行われる。
<その他の変形例>
◎例えば、上記第1実施形態では、図11で示されたように、実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpに到達した時点で、各有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給が停止されたが、これに限られない。例えば、図22で示されるように、実測電流積分値Qrが、予測電流積分値Qpを基準とした所定の第2基準範囲R2に到達した時点で、各有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給が停止されても良い。
◎また、上記第2実施形態では、図14および図15で示されたように、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から一旦外れた場合には、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも小さければ、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に入るまでデューティが所定量ずつ増加された。一方、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも大きければ、実測電流積分値Qrが第2基準範囲R2に入るまでデューティが所定量ずつ低減された。しかしながら、これに限られない。
例えば、図23および図24で示されるように、実測電流積分値Qrが第1基準範囲R1から一旦外れた場合には、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも小さければ、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを超えるまでデューティが所定量ずつ増加され、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpよりも大きければ、実測電流積分値Qrが予測電流積分値Qpを下回るまでデューティが所定量ずつ低減されても良い。
◎また、上記第1〜3実施形態では、指数演算部21R,21G,21Bが、指数関数に階調値Dr,Dg,Dbを代入することで、各色の階調値Dr,Dg,Dbを2.2乗した値iR,iG,iBを逐一算出したが、これに限られない。例えば、入力される階調値Dr,Dg,Dbとその階調値Dr,Dg,Dbを2.2乗した値iR,iG,iBとをそれぞれ関連付けたテーブルを記憶部等に格納しておき、そのテーブルを参照することで、各色の階調値を2.2乗した値を取得するようにしても良い。
◎また、上記第2,3実施形態では、予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとの比較が行われた第mフレームの次の第(m+1)フレームに係るデューティが、第mフレームに係る予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとの比較結果に応じて制御されたが、これに限られない。例えば、予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとの比較対象となった第mフレームの次以降のフレーム(例えば、第(m+2)フレーム等)に係るデューティが、第mフレームに係る予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとの比較結果に応じて制御されても良い。
◎また、上記第1〜3実施形態では、予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとの比較結果に応じて、2つの電源線Lvd,Lvsに付与される電位Vdd,Vssが同電位に設定されることで、各有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給が停止されたが、これに限られない。例えば、駆動トランジスタ12のゲート12gに付与される電位が基準電位(例えば0V)に設定されることで、各有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給が停止されても良い。
◎また、上記第1〜3実施形態では、各画素回路31に含まれる発光素子が、有機EL素子11であったが、これに限られず、例えば、無機材料で構成される発光ダイオード等といったその他の発光素子であっても構わない。
◎また、上記第3実施形態では、全水平ラインに係る第n予測消費電流Ipnを用いた流れ加算処理により、有機ELパネル3の全体について予測電流積分値Qpが得られ、該予測電流積分値Qpと実測電流積分値Qrとの比較に応じたデューティの制御が行われたが、これに限られない。例えば、水平ライン毎に流れる電流を検出するための電流計を設け、水平ライン毎に、1フレームの入力画像信号に応じて実際に消費される電流の積分値が、消費されると予測される電流の積分値に到達した時点で、各有機EL素子11の両極間に対する電圧の供給を停止しても良い。
◎なお、上記第1〜3実施形態、変形例1、およびその他の変形例については、矛盾しない限り、その一部の構成を適宜組合せても良い。