JP5463057B2 - 日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ - Google Patents

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本発明は、日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジに関するものである。
注射用水は、注射剤の溶解・希釈用液として広く用いられている。また、注射用水は、アンプル、バイアル、輸液、プレフィルドシリンジなどの形態で提供されている。予め薬剤とセットで添付されている添付溶解液は、小容量(20ml未満)のものが多く、ガラスアンプルに封入されているものが多い。しかし、ガラスアンプル製剤は、輸送・保管時の破損、使用後の廃棄の問題等が指摘されてきた。
そこで、本発明者等は、注射用水の充填用容器として、合成樹脂製容器を用いることを検討し、多くの合成樹脂製容器を用いて作製したところ、容器として用いる樹脂組成物としては、射出成形性、透明性、耐熱滅菌性に優れることよりポリプロピレン樹脂組成物が好適であることがわかった。
そして、特開2007−275255号公報(特許文献1)には、i)メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が10〜60g/10分、ii)メソペンタッド分率(mmmm)が0.920〜0.950、iii)分子量分布(Mw/Mn)が2.0〜5.6のプロピレン単独重合体からなり、iiii)過酸化物による分子量減量調整処理を施していない事を特徴とする医療用シリンジ用ポリプロピレン樹脂が開示されている。
しかし、ポリプロピレン製容器を用いて、注射用水を充填した後、オートクレーブ滅菌すると、日本薬局方注射用水の純度試験(5)亜硝酸性窒素の規格に不適合となることが判明した。これは、注射用水が精製水をさらに蒸留するなどして作られる純度の高い水であるがゆえに、ポリプロピレン樹脂組成物が含有する添加剤の影響によるものと思われる。
特開2007−275255号公報
本発明の目的は、ポリプロピレン系樹脂組成物からなるシリンジを用いて、注射用水を充填した後、オートクレーブ滅菌を行っても日本薬局方注射用水の純度試験(5)亜硝酸性窒素の規格に不適合となることがなく、長期の保管期間中においても、日本薬局方注射用水の全ての規格に適合するポリプロピレン系樹脂組成物製の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジを提供するものである。
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1)外筒と、該外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、該外筒の先端開口を封止するシールキャップと、前記外筒と前記ガスケットと前記シールキャップにより形成された空間に充填された注射用水とを備えるプレフィルドシリンジであって、前記外筒は、ハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン系樹脂組成物からなり、前記ガスケットは、ハイドロタルサイトを含有しない熱可塑性エラストマーからなり、前記注射用水が、日本薬局方注射用水であり、前記外筒と前記ガスケットと前記キャップで形成された空間内に前記注射用水が充填された状態にてオートクレーブ滅菌されており、かつ第十五改正日本薬局方注射用水の純度試験(5)亜硝酸性窒素の規格に従い、滅菌後の注射用水10mLをネスラー管にとり、これにスルファニルアミドの希塩酸溶液(1→100)1mL及びN,N−ジエチル−N'−1−ナフチルエチレンジアミンシュウ酸塩試液1mLを加えたとき、注射用水は、微赤色を呈しないものである日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ。
) 前記シールキャップは、ハイドロタルサイトを含有しない熱可塑性エラストマーからなる前記外筒の前記先端開口をシールするシール部を備えている上記()に記載の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ
) 前記プレフィルドシリンジに充填されている前記注射用水の液量は、0.5〜20mlである上記(または2に記載の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ
) 前記プレフィルドシリンジは、注射用水と接触する合成樹脂成形部の面積が1.5〜50cm2である上記(ないし(3)のいずれかに記載の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ
本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジは、外筒と、該外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、該外筒の先端開口を封止するシールキャップと、前記外筒と前記ガスケットと前記シールキャップにより形成された空間に充填された注射用水とを備えるプレフィルドシリンジであって、前記外筒は、ハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン系樹脂組成物からなり、前記ガスケットは、ハイドロタルサイトを含有しない熱可塑性エラストマーからなり、前記注射用水が、日本薬局方注射用水であり、前記外筒と前記ガスケットと前記キャップで形成された空間内に前記注射用水が充填された状態にてオートクレーブ滅菌されており、かつ第十五改正日本薬局方注射用水の純度試験(5)亜硝酸性窒素の規格に従い、滅菌後の注射用水10mLをネスラー管にとり、これにスルファニルアミドの希塩酸溶液(1→100)1mL及びN,N−ジエチル−N'−1−ナフチルエチレンジアミンシュウ酸塩試液1mLを加えたとき、注射用水は、微赤色を呈しないものである日本薬局方注射用水が充填されているプレフィルドシリンジ。
このため、本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ中の注射用水は、オートクレーブ滅菌後においても日本薬局方注射用水の純度試験(5)亜硝酸性窒素の規格に不適合となることがなく、かつ、長期の保管期間中においても、日本薬局方注射用水の全ての規格に適合する。
図1は、本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジの実施例の正面図である。 図2は、図1に示すプレフィルドシリンジの断面図である。 図3は、図1に示すプレフィルドシリンジに用いられる外筒の拡大正面図である。 図4は、図3に示す外筒の平面図である。 図5は、図1に示すプレフィルドシリンジの先端部分の拡大断面図である。
本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジを実施例を用いて説明する。
本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ1は、合成樹脂製医療用容器体2と、容器体2の内部空間内に充填された注射用水3とからなる。容器体は、ハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン系樹脂組成物からなる。注射用水3は、日本薬局方注射用水である。
そこで、本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジの実施例について図面を用いて説明する。
この実施例の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジでは、合成樹脂製医療用容器体は、ハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン系樹脂組成物製の外筒21と、外筒21内に収納されかつ外筒21内を液密に摺動可能なガスケット22と、外筒21の先端開口を封止するシールキャップ23とを備えるシリンジ本体2であり、内部空間は、外筒21とガスケット22とシールキャップ23により形成された空間である。
本発明のプレフィルドシリンジ1は、図2に示すように、容器体であるシリンジ本体2と、シリンジ本体2内に充填された注射用水3とからなる。
そして、シリンジ本体2は、図1に示すように、外筒21と、外筒内に摺動可能に収納されたガスケット22と、外筒21の注射針取付部31に取り付けられ液密に密封するためのシール部材32を内部に収納したシールキャップ23と、ガスケット22に取り付けられたプランジャー24とからなる。
そして、注射用水3は、外筒21とガスケット22とシールキャップ23内に収納されたシール部材32により形成される空間内に収納されている。
外筒21は、外筒本体部30と、外筒本体部30の先端部に設けられた注射針取付部31と、外筒本体部30の後端部に設けられたフランジ部34を備える。外筒21は、透明もしくは半透明である。外筒本体部30は、ガスケット22を液密かつ摺動可能に収納するほぼ筒状の部分である。また、外筒本体部30の先端部(肩部)は、注射針取付部31に向かってテーパー状に縮径している。
注射針取付部31は、図2に示すようにノズル部35と、カラー部36とを備える。ノズル部35は、図2に示すように、先端に向かって縮径する注射針装着用チップ部となっている。ノズル部35は、外筒21の先端に設けられており、先端に外筒内の薬液等を排出するための開口を備えるとともに先端に向かってテーパー状に縮径するように形成されている。カラー部内周面には、シールキャップ23のノズル部収納部の外周面に形成された螺旋状突出部53と螺合可能な螺旋状溝部37が形成されている。フランジ部34は、図1ないし図4に示すように、外筒21の後端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジ部34は、図1、図2、図3に示すように向かい合う幅広となった2つの把持部34a、34bを備える。
外筒21の形成材料としては、ハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン系樹脂組成物が用いられている。ヘパリン溶液などを内容液とする従来のプレフィルドシリンジに使用するポリプロピレンには、ハイドロタルサイトが添加されている。それは、プロピレンを重合する際の触媒由来の塩素系酸性成分やリン系酸化防止剤等の分解物の酸性成分があると成形金型が腐食する問題が発生する為、制酸剤としての必要な成分で、プレフィルドシリンジの用途に関しては、通常、添加されている成分である。
ハイドロタルサイトとは、マグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩であり、一般的に、下記一般式(1)で示されるものである。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO …(1)
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。]
本発明者等が検討したところ、ハイドロタルサイトが添加された通常のプレフィルドシリンジ等の医療用容器の原料として供給されているポリプロピレンを使用すると、日本薬局方注射用水の純度試験(5)亜硝酸性窒素の規格に不適合となることを知見した。なお、本発明における「ハイドロタルサイトを含有しない」とは、実質的にハイドロタルサイトが存在しない状態を意味し100ppm以下、好ましくは50ppm以下で、特に好ましくは10ppm以下の存在量を意味するものであり、望ましくは、0ppmである。
また、本発明に用いられるポリプロピレンは、原料樹脂に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常ポリプロピレンに使用される造核剤、滑剤、帯電防止剤、および酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、有機過酸化物等の添加剤を配合することができる。
ハイドロタルサイトを除き配合することのできる添加剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダーアミン系安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。また、ハイドロタルサイトの添加にかえて、その代用物を添加してもよい。ハイドロタルサイト代用物としては、中和剤として、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の酸化物、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、塩基性炭酸マグネシウム等の塩基性塩、アミン系物質等を用いることができる。
ガスケット22は、図1、図2に示すようにほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブ(この実施例では2つ、2つ以上であれば、液密性と摺動性を満足できれば適宜数としてもよい)を備え、これらリブが、外筒21の内面に液密に接触する。また、ガスケット22の先端面は、外筒21の先端内面に当接した時に、両者間に極力隙間を形成しないように、外筒21の先端内面形状に対応した形状となっている。
ガスケット22の形成材料としては、外筒成形材料と同様にハイドロタルサイトを含有しない樹脂組成物であることが好ましい。ここにおいても、「ハイドロタルサイトを含有しない」とは、実質的にハイドロタルサイトが存在しない状態を意味し100ppm以下、好ましくは50ppm以下で、特に好ましくは10ppm以下の存在量を意味するものであり、望ましくは、0ppmである。
具体的には、ガスケット22の形成材料としては、広く普及しているハイドロタルサイトを含有しない通常の熱可塑性エラストマーが好適である。そして、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーなどを主成分とするものが好ましい。スチレン系エラストマーとしてはSEBS、SBR、HSBR、SIS等が好ましく、オレフィン系エラストマーとしては、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等が好ましい。
そして、ガスケット22には、その後端部より内部に延びる凹部が設けられ、この凹部は、雌ねじ状となっており、プランジャー24の先端部に形成された突出部の外面に形成された雄ねじ部と螺合可能となっている。両者が螺合することにより、プランジャー24は、ガスケット22より離脱しない。なお、プランジャー24は取り付けられておらず、使用時に取り付けるようにしてもよい。
プランジャー24は、先端の円盤部に筒状に突出する突出部を備え、突出部の外面にはガスケット22の凹部と螺合する雄ねじが形成されている。また、プランジャー24は、断面十字状の軸方向に延びる本体部と、後端部に設けられた押圧用の円盤部を備えている。
シールキャップ23は、キャップ本体50と、キャップ本体内に収納されたシール部材32とからなる。キャップ本体50は、図1、図2、図5に示すように、キャップ状に作製されており、ノズル部収納部51、カラー部収納部52を有する。また、シール部材32は、キャップ本体50のノズル部収納部51内に収納されている。
ノズル部収納部51は、シールキャップ23の中央部に設けられ、一端が閉塞し、他端が開口した円筒状部である。ノズル部収納部51の内径は、一端から他端までほぼ同一径となっている。また、ノズル部収納部51の閉塞部56の中央部には、閉塞部56の内面より、開口端方向に突出する環状突出部56aが形成されている。そして、キャップ本体50に収納されるシール部材32は、図5に示すように、この環状突出部56aと外筒21のノズル部35の先端35a間により、狭圧される。言い換えれば、シール部材32は、図5に示すように、キャップ本体50の環状突出部56aにより、外筒21のノズル部35の先端35aに圧接され、ノズル部35の先端35aを液密状態に封止する。
また、ノズル部収納部51の外周面には、外筒21のカラー部36の内周面に形成された螺旋状溝部37と螺合可能な螺旋状突出部53が形成されている。これにより、注射針取付部31とシールキャップ23はノズル部収納部51の外周面と外筒21のカラー部36との間で螺合する。カラー部収納部52は、ノズル部収納部51を取り囲むように形成され、一端が閉塞し、他端が開口した円筒部である。また、図1に示すようにシールキャップ23の外側面(カラー部収納部52の外周面)には、シールキャップを回転させる時指等が滑らないようにするために縦方向に刻み加工が施されている。
シールキャップの形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
この実施例のプレフィルドシリンジでは、シール部材32は、円板状に形成されている。シール部材32の直径は、ノズル部収納部51の閉塞部の内径とほぼ同じもしくは若干小さいものとなっている。シール部材32としては、先端開口を液密に密封可能なように弾性部材であることが好ましい。
シール部材32の形成材料としては、外筒成形材料と同様にハイドロタルサイトを含有しない樹脂組成物であることが好ましい。ここにおいても、「ハイドロタルサイトを含有しない」とは、実質的にハイドロタルサイトが存在しない状態を意味し100ppm以下、好ましくは50ppm以下で、特に好ましくは10ppm以下の存在量を意味するものであり、望ましくは、0ppmである。
具体的には、シール部材32の形成材料としては、広く普及しているハイドロタルサイトを含有しない通常の熱可塑性エラストマーが好適である。そして、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーなどを主成分とするものが好ましい。スチレン系エラストマーとしてはSEBS、SBR、HSBR、SIS等が好ましく、オレフィン系エラストマーとしては、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等が好ましい。
そして、上述したように、シール部材32は、図5に示すように、キャップ本体50の環状突出部56aにより、外筒21のノズル部35の先端35aに圧接され、ノズル部35の先端35aを液密状態に封止する。
そして、本発明のプレフィルドシリンジ1は、図5に示すように、注射用水3を収納するとともに、螺旋状溝部37と螺旋状突出部53との螺合により、外筒21のノズル部35にシールキャップ23が装着され、ノズル部35の先端35aがシール部材32に圧接した密封状態となっている。なお、シール部材32を用いない場合等、シールキャップ23が収納された注射用水3と直接接触する場合には、シールキャップ23の形成材料として外筒21の形成材料と同じ材料を用いることが好ましい。
本発明のプレフィルドシリンジには、日本薬局方の注射用水が充填されている。具体的には、第十五改正日本薬局方「注射用水」に定義されている「本品は、常水又は精製水の蒸留、又は精製水の超ろ過(逆浸透膜、限外ろ過又はこれらの膜を組み合わせた製造システム)により製して注射剤の調製に用いるもの、又はこれを容器に入れて滅菌したものである。」、「本品を容器に入れて滅菌したものは、主として用時溶解又は懸濁して用いる注射剤の溶解剤に用いる。」及び純度試験に規定されている(1)酸又はアルカリ、(2)塩化物、(3)硫酸塩、(4)硝酸性窒素、(5)亜硝酸性窒素、(6)アンモニウム、(7)重金属、(8)過マンガン酸カリウム還元性物質、(9)蒸発残留物、の全ての項目に適合するものである。
そして、プレフィルドシリンジに充填されている注射用水の液量としては、0.5〜20mlであることが好ましい。本発明の医療用容器では、20ml以下という少量の注射用水を収納するものであっても上述した純度試験に不適合となることがない。また、0.5ml以上の液量を収納するものであれば、注射用希釈液として有効に利用できる。
また、プレフィルドシリンジとしては、注射用水と接触する合成樹脂成形部の面積が1.5〜50cm2であることが好ましい。50cm2以下の接液面積であれば、上述した純度試験に確実に適合するものとなり、1.5cm2以上であれば、注射用希釈液として有用な量を収納できる。
そして、この実施例のプレフィルドシリンジは、注射用水が充填された状態にてオートクレーブ滅菌されている。オートクレーブ滅菌は、注射用水が充填されたプレフィルドシリンジを、例えば、118〜122℃、0.8〜2.0kg/cm、15〜30分間程度さらすことにより行われる。
本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジの具体的に実施例について説明する。
(実験1)
JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレートが20g/10分であるホモポリプロピレン100重量部に対し、表1に示すように添加剤、制酸剤をスーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練し、ダイ出口部温度200℃でダイから押し出しポリプロピレン樹脂組成物ペレットを準備した。
使用した添加剤は、以下のものである。
リン系酸化防止剤:商品名アデカスタブ2112、株式会社ADEKA製
ヒンダードアミン系光安定剤:商品名TINUVIN622LD、チバ・ジャパン株式会社製
使用した制酸剤は、以下のものである。
ハイドロタルサイト系制酸剤:商品名DHT−4A、協和化学工業株式会社製
得られた各ペレットから結晶化温度(JIS K7121の「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して、示差走査型熱量計を用い結晶化温度ピーク値を測定)を測定した。その結果を表1に示す。
そして、得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度230℃、射出圧力600kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片を用い、ヘイズ値(厚さ1mmのシート片を用いて、JIS K7105に準拠して測定)、曲げ弾性率(JIS K7203の「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して測定)を測定した。その結果を表1に示す。
また、得られた試験片600cm(厚み約1mm)を硬質ガラス製容器に入れ、水100mlを加え、密栓した後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で20分加熱した後、硬質ガラス製容器を取り出して室温になるまで放冷し、この内容液を試験液とし、第十五改正日本薬局方「注射用水」に従って、純度試験の各項目について試験した。また試験液中の浮遊物の有無を目視で確認した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、例1は、第15改正日本薬局方「注射用水」純度試験に適合している事が確認された。また、ハイドロタルサイトを含有するポリプロピレン樹脂組成物である例2は、第15改正日本薬局方「注射用水」純度試験に適合しない事が確認された。
なお、上記[純度試験(5)亜硝酸性窒素]は第十五改正日本薬局方に以下のとおり規定されている。「本品10mlをネスラー管にとり、これにスルファニルアミドの希塩酸溶液(1→100)1ml及びN,N−ジエチル−N’−1−ナフチルエチレンジアミンシュウ酸塩試液1mlを加えるとき、液は微赤色を呈しない。」
Figure 0005463057
(実験2)
シクロオレフィンコポリマー(商品名APL6015T、三井化学株式会社製)およびポリエチレン(商品名 ノバテック(登録商標)HD、日本ポリエチレン株式会社製)を用いて作製した試験片約600cm(厚み約1mm)を硬質ガラス製容器に入れ,水100mlを加え、密栓した後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で20分加熱した後、硬質ガラス製容器を取り出して室温になるまで放冷し、この内容液を試験液とし、第十五改正日本薬局方「注射用水」に従って、純度試験の各項目について試験した。
その結果、いずれの部材も純度試験(5)亜硝酸性窒素以外の試験項目には適合していた。また、純度試験(5)亜硝酸性窒素については、いずれの部材も不適合であった。
(実験3)
スチレン系エラストマー[SEBS、商品名ラバロン(登録商標)、三菱化学株式会社製)]およびブチルゴム(商品名L104 、SRIハイブリッド株式会社製)を用いて作製した試験片約30g(5mm角)を硬質ガラス製容器に入れ,水100mlを加え、密栓した後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で20分加熱した後、硬質ガラス製容器を取り出して室温になるまで放冷し、この内容液を試験液とし、第十五改正日本薬局方「注射用水」に従って、純度試験の各項目について試験した。
その結果、いずれの試験片も純度試験(5)亜硝酸性窒素以外の試験項目には適合していた。また、純度試験(5)亜硝酸性窒素については、スチレン系エラストマー製の試験片は適合していたが、ブチルゴム製の試験片は適合していなかった。
(実施例1)
容量1mlのプレフィルドシリンジ用の外筒を上述の例1のハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン樹脂組成物を用いて成形した。なお、外筒接液部を構成する部分の表面積は6.5cmであった。
ガスケットは、スチレン系エラストマー[SEBS、商品名ラバロン(登録商標)、三菱化学株式会社製)]を用いて作製した。また、シールキャップは、上述の例1のハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン樹脂組成物を用いて成形した。また、シールキャップ内に挿入される外筒の先端部を封止するためのシール部材は、上記スチレン系エラストマーを用いて作製した。なお、シールキャップは、シール部材以外は、外筒内に充填される液剤に接触しない形態となっている。
そして、外筒にシールキャップを装着した後、外筒内に注射用水1mlを充填し、ガスケットを真空打栓することにより、プレフィルドシリンジを作製した後、121℃、20分間、オートクレーブ滅菌して、本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジを作製した。
(実施例2)
容量5mlのプレフィルドシリンジ用の外筒を上述の例1のハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン樹脂組成物を用いて成形した。なお、外筒接液部を構成する部分の表面積は23.3cmであった。
ガスケットは、スチレン系エラストマー[SEBS、商品名ラバロン(登録商標)、三菱化学株式会社製)]を用いて作製した。また、シールキャップは、上述の例1のハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン樹脂組成物を用いて成形した。また、シールキャップ内に挿入される外筒の先端部を封止するためのシール部材は、上記のスチレン系エラストマーを用いて作製した。なお、シールキャップは、シール部材以外は、外筒内に充填される液剤に接触しない形態となっている。
そして、外筒にシールキャップを装着した後、外筒内に注射用水5mlを充填し、ガスケットを真空打栓することにより、プレフィルドシリンジを作製した後、121℃、20分間、オートクレーブ滅菌して、本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジを作製した。
(実施例3)
容量10mlのプレフィルドシリンジ用の外筒を上述の例1のハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン樹脂組成物を用いて成形した。なお、外筒接液部を構成する部分の表面積は35.7cmであった。
ガスケットは、スチレン系エラストマー[SEBS、商品名ラバロン(登録商標)、三菱化学株式会社製)]を用いて作製した。また、シールキャップは、上述の例1のハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン樹脂組成物を用いて成形した。また、シールキャップ内に挿入される外筒の先端部を封止するためのシール部材は、上記のスチレン系エラストマーを用いて作製した。なお、シールキャップは、シール部材以外は、外筒内に充填される液剤に接触しない形態となっている。
そして、外筒にシールキャップを装着した後、外筒内に注射用水10mlを充填し、ガスケットを真空打栓することにより、プレフィルドシリンジを作製した後、121℃、20分間、オートクレーブ滅菌して、本発明の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジを作製した。
(実施例4)
容量20mlのプレフィルドシリンジ用の外筒を上述の例1のハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン樹脂組成物を用いて成形した。なお、外筒接液部を構成する部分の表面積は49.4cmであった。ガスケットは、スチレン系エラストマー[SEBS、商品名ラバロン(登録商標)、三菱化学株式会社製)]を用いて作製した。また、シールキャップは、上述の例1のハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン樹脂組成物を用いて成形した。また、シールキャップ内に挿入される外筒の先端部を封止するためのシール部材は、上記のスチレン系エラストマーを用いて作製した。なお、シールキャップは、シール部材以外は、外筒内に充填される液剤に接触しない形態となっている。
そして、外筒にシールキャップを装着した後、外筒内に注射用水20mlを充填し、ガスケットを真空打栓することにより、プレフィルドシリンジを作製した後、121℃、20分間、オートクレーブ滅菌して、本発明の(プレフィルドシリンジ)を作製した。
(比較例1)
プレフィルドシリンジ用の外筒の形成材料としてハイドロタルサイトを含有するポリプロピレン樹脂組成物(例2)を用いた以外は、実施例1と同様に行いレフィルドシリンジを作製した。
(比較例2)
容量1mlのプレフィルドシリンジ用の外筒をシクロオレフィンコポリマー(アペル:登録商標、三井化学株式会社製)を用いて成形した。なお、外筒接液部を構成する部分の表面積は6.5cmであった。
ガスケットは、ブチルゴム(商品名L104、SRIハイブリッド株式会社製)を用いて作製した。また、シールキャップは、上述の例2のポリプロピレン樹脂組成物を用いて成形した。また、シールキャップ内に挿入される外筒の先端部を封止するためのシール部材は、上述したブチルゴムを用いて作製した。なお、シールキャップは、シール部材以外は、外筒内に充填される液剤に接触しない形態となっている。
そして、外筒にシールキャップを装着した後、外筒内に注射用水1mlを充填し、ガスケットを真空打栓することにより、プレフィルドシリンジを作製した後、121℃、20分間、オートクレーブ滅菌して、プレフィルドシリンジを作製した。
(実験4)
上記の実施例1ないし4および比較例1および2のプレフィルドシリンジについて、滅菌後、40℃3ヶ月経過後のものについて、第15改正日本薬局方「注射用水」純度試験(5)亜硝酸性窒素についての試験を行ったところ、表2の通りであった。
Figure 0005463057
日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ
2 容器体
3 注射用水
21 外筒
22 ガスケット
23 シールキャップ

Claims (4)

  1. 外筒と、該外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、該外筒の先端開口を封止するシールキャップと、前記外筒と前記ガスケットと前記シールキャップにより形成された空間に充填された注射用水とを備えるプレフィルドシリンジであって、
    前記外筒は、ハイドロタルサイトを含有しないポリプロピレン系樹脂組成物からなり、前記ガスケットは、ハイドロタルサイトを含有しない熱可塑性エラストマーからなり、前記注射用水が、日本薬局方注射用水であり、前記外筒と前記ガスケットと前記キャップで形成された空間内に前記注射用水が充填された状態にてオートクレーブ滅菌されており、かつ第十五改正日本薬局方注射用水の純度試験(5)亜硝酸性窒素の規格に従い、滅菌後の注射用水10mLをネスラー管にとり、これにスルファニルアミドの希塩酸溶液(1→100)1mL及びN,N−ジエチル−N'−1−ナフチルエチレンジアミンシュウ酸塩試液1mLを加えたとき、注射用水は、微赤色を呈しないものであることを特徴とする日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ。
  2. 前記シールキャップは、ハイドロタルサイトを含有しない熱可塑性エラストマーからなる前記外筒の前記先端開口をシールするシール部を備えている請求項に記載の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ
  3. 前記プレフィルドシリンジに充填されている前記注射用水の液量は、0.5〜20mlである請求項1または2に記載の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ
  4. 前記プレフィルドシリンジは、注射用水と接触する合成樹脂成形部の面積が1.5〜50cm2である請求項1ないし3のいずれかに記載の日本薬局方注射用水が充填されてなるプレフィルドシリンジ
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