JP5462676B2 - 田植機のロータリー式植付け装置 - Google Patents

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Description

本発明は、田植機のロータリー式植付け装置に関するものである。
田植機は、おおまかには、前後車輪を有する走行機体に苗植装置を昇降自在に取り付けた構成になっている。そして、苗植装置は苗マットが載る苗載せ台と、苗マットから苗を1株ずつ掻き取って圃場に植え付ける植付け装置の複数個とを有しており、植付け装置は一般にロータリー式が使用されている。
このロータリー式植付け装置は、例えば特許文献1に開示されかつ図13に示すように、左右横長の軸心回りに回転する細長いロータリーケース80を有しており、ロータリーケース80の一端と他端とに分割爪81を有する植付け体82が取付けられている。ロータリーケース80の内部には、回動軸に固定された太陽歯車と、この太陽歯車に逆方向から噛み合った一対の中間歯車と、太陽歯車と反対側の方向から中間歯車に噛み合った一対の中間歯車とが配置されている。ロータリーケース80の両端部に植付け体82が遊星歯車の軸心回りに回動するように取付けられており、植付け体82に、分割爪81と遊星歯車の回転によって進退動する押し出し体83(プッシャー)とが取付けられている。
そして、ロータリーケース80が1回転することで植付け体82はロータリーケース80の回転軸心回りに公転するが、太陽歯車と中間歯車と遊星歯車とを回転軸心がずれた楕円状等の不等速ギア(非円形ギア)と成すことにより、公転と自転との組み合わせで分割爪81の先端が上下に長い閉ループの軌跡を描くように構成されており、これにより、分割爪81で掻き取られた苗はほぼ鉛直の姿勢で圃場に植付けられる。押し出し体83は植付け体82に内蔵したカムによって進退動するようになっており、苗マット84から苗を掻き取る状態では後退し切っており、苗を圃場に植付けたら速やかに前進して苗を分割爪から離す。
ロータリーケース80はかなりの高速で回転するものであり、また、苗マット84から苗を掻き取るに際してはロータリーケース80にかなり大きな負荷が掛かる。他方、ロータリーケース80に内蔵した歯車の噛み合い部には僅かながら遊び(ガタ)が存在しており、そこで、ロータリーケースのスムースな回転のためには、歯車群を滑らかな噛み合い状態に維持するバックラッシュ除去手段が必要である。
このバックラッシュ除去手段としては、例えば中間歯車と遊星歯車とを2枚重ね方式のシザーズギアに構成する場合と、特許文献2に記載されているように、遊星歯車に固定されている植付け軸にガタ取り用周面カムを固定し、このガタ取り用周面カムの外周面にレバーを当接させてばねで付勢する方式とがある。そして、シザーズギア方式は2枚の歯車の間にばねを組み込んだ複雑な構造であるためコストが嵩む欠点があるが、特許文献2のようなカムとレバーとばねの組み合わせ方式は構造が簡単であるため、コスト面で優れていると言える。
特開2006−211948号公報 特開平06−133614号公報
既述のように、ロータリーケースには分割爪で苗を掻き取るときに最も大きな負荷が掛かる。他方、カムとレバーとばねとの組み合わせのバックラッシュ除去方式は、レバーの押圧抵抗がロータリーケースの回転抵抗として作用するため、抵抗はバックラッシュを除去する範囲でできるだけ小さいのが好ましい。
そこで、特許文献2の図3,5,7に明示されているように、ガタ取り用周面カムの外周面は、レバーの押圧力が最も小さい状態から最も大きい状態まで変化するように軸心から距離を変化させており、苗マットから苗を掻き取るときにレバーの押圧力が最も小さくなるように設定することにより、ロータリーケースに作用する回転抵抗ができるだけ小さくなるように設定している。換言すると、ロータリーケースの回転トルクが苗の掻き取り時に最も大きくなるように設定してエネルギロスを抑制している。
そして、特許文献2では、カムの外周面のうちレバーの押圧力が最も弱くなる最弱部とレバーの押圧力が最も強くなる最強部とは軸心を非対称に位置している。すなわち、レバーの押圧力が徐々に強くなる抵抗増加領域とレバーの押圧力が徐々に弱くなる抵抗減少領域との範囲(角度)が相違している。正確には、抵抗増加領域の角度範囲は鈍角で抵抗減少領域の角度は夾角になっている。
さて、ロータリーケースには両端に植付け体が1個ずつ取付けられており、ロータリーケースの1回の回転によって2回の植付け体が1回転ずつ自転することにより、ロータリーケースの1回の回転によって2回の植付けが行われる。換言すると、ロータリーケースが180°回転するごとに苗の掻き取り・植付けが1回行われる。従って、一方の植付け体の分割爪が上死点にあるときには他方の分割爪は下死点にあり、一方の植付け体の分割爪で苗マットから苗を掻き取る状態にあるときには、他方の植付け体の分割爪は圃場から上昇し勝手の位置にある。
そして、特許文献2の場合、2つの植付け体におけるバックラッシュ除去用カムとレバーとの関係を見ると、カムに対する抵抗増加領域と抵抗減少領域との角度範囲が相違するため、2つの植付け体における回転抵抗の合力はロータリーケースの回転に伴って大きく変動することになり(換言すると、ロータリーケースの回転トルクが大きく変動することになり)、このためロータリーケースの回転のスムース性が阻害されるおそれが懸念される。特に、ロータリーケースの回転数が高くなるほど、ロータリーケースの回転のスムース性の悪化という問題が顕著に顕れる。
本発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
本願発明において、植付け装置は、水平状の軸心回りに回動するように支持アームに取付けられたロータリーケースの内部に、当該ロータリーケースの回動中心回りに回転する太陽歯車と、前記太陽歯車を挟んだ両側に配置されていると共に前記太陽歯車に噛み合った一対の中間歯車と、前記太陽歯車と反対側において前記中間歯車に噛み合った一対の遊星歯車とが配置されており、前記一対の遊星歯車に固定された植付け体にそれぞれ分割爪を設けており、ロータリーケースが回転すると一対の分割爪が非円形の閉ループ軌跡を描いて苗の掻き取りと植付けとを行うようになっている。
更に、植付け装置は、前記一対の遊星歯車には、外周面の1カ所が軸心から最も遠く離れたピークになっているガタ取り用周面カムを設けており、前記ガタ取り用周面カムの外周面にばねで付勢されたレバーを当接させることにより、前記歯車の群の間に生じたバックラッシュを除去するようになっている。そして、請求項1の発明では、前記両ガタ取り用周面カムの外周面は、少なくとも軸心を挟んで前記ピークと反対側の部分が軸心に最も近くなるカムプロフィールになっており、このため、前記レバーの押圧力が最も強くなる最強部である前記ピークと前記レバーの押圧力が最も弱くなる最弱部とは軸心を挟んでほぼ対称に位置している。そして、前記両ガタ取り用周面カムの外周面のうち前記ピークよりも回転方向上流側は、前記レバーの押圧力が徐々に高くなるなだらかな曲面になっている一方、前記ピークよりも回転方向下流側は、前記レバーの押圧力の減少率が大きくなるように前記ピークに連続した平坦面になっている。
本願発明によると、周面カムに対するレバーの押圧力が増加から減少に移行する抵抗最強部(ピークの部分)と抵抗が減少から増加に移行する抵抗最弱部とが周面カムの軸心を挟んだほぼ対称に位置しているため、一方の遊星歯車に対する回転抵抗が減少領域に移行するときには他方の遊星歯車に対する回転抵抗は増加領域に移行し、一方の遊星歯車に対する回転抵抗が増加領域に移行するときに他方の遊星歯車に対する回転抵抗は減少領域に移行することになり、両遊星歯車の回転抵抗は、減少領域と増加領域とがほぼ重なり合う。
そして、2つの遊星歯車の回転抵抗の合力がロータリーケースに回転抵抗として作用するが、両遊星歯車の回転抵抗の増加領域と減少領域とがほぼ重なり合うことにより、両遊星歯車の回転抵抗の合力はさほど変動がなくて平準化されるため、ロータリーケースの回転抵抗も平準化される。これにより、ロータリーケースの回転のスムース性が確保されて、円滑な植付けを確実化できる。特に、ロータリーケースが高速回転してもスムース性が維持されるため、高速の植付けをより確実に行える。
さて、特許文献2における周面カムのうちレバーの押圧力が減少する領域のプロフィールを見ると、側面視では、レバーが当たる方向を向いて最強部を超えると軸心側に凹む曲面となり、それからほぼ円弧に近い曲面に移行している。このため、レバーの押圧力は最強部を超えると急激に低下することになり、その結果、ロータリーケースの回転のスムース性が一層低下することが懸念される。
これに対して本願発明の構成では、周面カムのうちレバーの押圧力が減少する領域は、抵抗最強部から連続した平坦面を有しているため、レバーの押圧力は滑らかに減少することになり、その結果、ロータリーケースの回転のスムース性を一層向上できる。
実施形態を示す図で、一部の植付け装置を削除した状態での苗植装置の平面図である。 (A)は植付け装置の側面図、(B)は植付け装置の斜視図である。 (A)(B)とも植付け体をロータリーケースから取り外した状態での植付け装置の斜視図である。 植付け装置の分離斜視図である。 ロータリーケースを開いた状態の斜視図である。 ギア群をロータリーケースから分離した状態での分離斜視図である。 ロータリーケースを開いた状態での側面図である。 図7の VIII-VIII視部分断面図である。 図7と反対側から見た連動系統図である。 図7と同じ方向から見た連動系統図である。 図7の一部を表示した分離側面図である。 他の実施形態を示すもので、(A)は植付け装置の部分的な正断面図、(B)は部分的な断面図、(C)は(B)のC−C視断面図である。 従来技術を示す図である。
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前・後」「左・右」といった文言を使用するが、この文言は走行機体の前進方向を向いたオペレータの向きを基準にしている。
(1).概略
図1は乗用型田植機を構成する苗植装置1の平面図であり、この苗植装置1は、前後車輪を有する走行機体(図示せず)の後ろに配置されており、図示しないリンク機構によって走行機体に昇降自在に連結されている。苗植装置は4条植えのものであり、左右横長の下部フレームや上下長手のサイドフレーム(いずれも図示せず)などで枠組みが構成されており、この枠組みに4つの苗載せ台2が左右移動自在に取付けられている。苗植装置1は圃場に接地するフロート3を有している。
枠組みから左右2本の支持アーム(チェーンケース)4が後ろ向きに突出しており、支持アーム4の後端から駆動軸(主軸)5を左右両側に突出しており、左右の支持アーム4に左右一対のずつの植付け装置6を回転自在に取り付けている(図1では一対の植付け装置6しか表示していない。)。敢えて述べるまでもないが、苗植装置1には走行機体からPTO軸を介して動力が伝達される。この動力のうち一部は苗載せ台の駆動に使用され、他の一部は伝動機構を介して駆動軸5の回転に使用される。
植付け装置6は、支持アーム4に回転自在に取付けられた細長いロータリーケース7と、このロータリーケース7の両端に回転自在に取付けられた一対の植付け体8とを有しており、両植付け体8にはそれぞれ分割爪9が進退動自在に取付けられている。駆動軸5が左側面視で反時計回りに1回転すると、ロータリーケース7も駆動軸5軸心回りに反時計回り方向に1回転し、すると、植付け体8と公転しつつ駆動軸5と平行な軸心回りに自転し、これにより、苗載せ台2に載置した苗マット(図示せず)から苗が分割爪9によって1株だけ掻き取られ、圃場に植付けられる。
(2).ロータリーケースの内部構造
次に、図2以下の図面を参照して植付け装置の詳細を説明する。まず、ロータリーケース7の内部構造を説明する。図4,5に示すように、ロータリーケース7は、第1シェル10と第2シェル11とを重ね合わせてボルトで締結した中空構造になっている。第1シェル10は図1に表示した支持アーム4の近い側に位置しており、例えば図6に示すように、外向きの筒型ボス部13が外向きに突設されており、この筒型ボス部13が支持アーム4の軸受け部に回転自在に嵌合している。
ロータリーケース7の内部には、駆動軸5に固定された太陽歯車14と、太陽歯車14に対して互いに逆方向から噛み合った中間歯車15と、中間歯車15に太陽歯車14と反対の方向から噛み合った遊星歯車16とが回転自在に保持されている。敢えて述べるまでもないが、各歯車14〜16はロータリーケース7の長手方向に沿って直線状に配置されている。なお、両シェル10,11はアルミダイキャスト品又はアルミ鋳物である。
図4や図8に示すように、第2シェル11の長手中間部には略四角形で外向きに突出した膨らみ部17が形成されており、この膨らみ部17にセンター軸受け18を嵌め込み装着し、センター軸受け18に駆動軸5の先端部がOリング19を介して嵌まっている。駆動軸5の先端に切欠き20が形成されている一方、膨らみ部17とセンター軸受け18とには駆動軸5の切欠き20に係合するピン21(図8参照)が嵌まっており、このためロータリーケース7は駆動軸5と一緒に回転する。
太陽歯車14は駆動軸5に回転可能に嵌まっている。また、太陽歯車14にはセンターベアリング22を装着しており、センターベアリング22は第1シェル10に嵌まっている。更に、図示していないが、第1シェル10の筒型ボス部13には軸受け筒が回転自在に嵌まっており、軸受け筒に設けたフランジを支持アーム4の側面に固定している。中間歯車15は中間軸23に固定されており、中間軸23は左右の中間ベアリング24でシェル10,11に保持されている。なお、ロータリーケース7の内部にはグリスが充満している。
例えば図6から理解できるように、遊星歯車16には植付け軸25が相対回転自在に嵌まっている。植付け軸25の基端部は第1シェル10にエンドベアリング26を介して相対回転不能に保持されている。すなわち、植付け軸25はロータリーケース7に対しては回転しない。また、図7から推測できるように、遊星歯車16には第1シェル11に向けて突出する中間筒27が嵌まっており、この中間筒27に、請求項に記載した周面カムであるガタ取り用周面カム28が回転不能に取付けられている。
中間筒27は、例えばスプライン嵌合によって遊星歯車16に対しても相対回転不能に嵌まっている。従って、遊星歯車16と中間筒27と植付け体8と一緒に回転する。本実施形態では、中間筒27とガタ取り用周面カム28とをスプライン嵌合させて両者を相対回転不能に保持しているが、キー係合やねじ止め等の他の手段で固定してもよい。また、ガタ取り用周面カム28を遊星歯車16に一体に形成することも可能である。
例えば図7に示すように、第1シェル11の両端寄り部位には、ガタ取り用周面カム28の外周面に当接するレバー29がピン30によって回動自在に取付けられており、レバー29は第1ばね(圧縮コイルばね)でガタ取り用周面カム28に押圧されている。レバー29及び第1ばね31は、ロータリーケース7の回転方向(図7のA方向)を向いてガタ取り用周面カム28の後ろ側に配置されている。
また、ロータリーケース7は(すなわち両シェル10,11は)側面視で概ね長方形の形態をしているが、2つのコーナー部に第1ばね31の収容空間を取るために膨らみ部が突設されている。図7のうち下部に表示したレバー29とガタ取り用周面カム28との間に空間が空いているが、これはレバー29の最大戻り位置を表示したものであり、実際にはレバー29は常にガタ取り用周面カム28に当接している。
(3).植付け体
ガタ取り用周面カム28を詳述するに先立って植付け体8を説明する。植付け体8は中空状の植付けケース33を有している。この植付けケース33は、アルミダイキャスト又はアルミ鋳物より成る中空状の植付け本体ケース34と、この植付け本体ケース34の開口部を塞ぐ植付けカバーケース35とから成っており、両者はボルトで締結されている。
植付け本体ケース34は第2シェル11に向いて開口していると共に、植付け軸25の軸心と直交した方向に長く延びる筒部36を有しており、全体的にはL形に近い形態になっている。そして、例えば図4に示すように、遊星歯車16が相対回転不能に嵌まっている中間筒27は第1シェル11の外側に一部が露出しており、この露出端部に側面視六角形の台座37が固定されており、この台座37に植付け本体ケース34がボルト(図示せず)で固定されている。従って、植付け体8は遊星歯車16と一緒に回動する。
台座37の外周部の一部には外向きの切欠き38が形成されている一方、植付け本体ケース34には、切欠き38に嵌まる偏心ピン39を回転自在で外向き抜け不能に取付けている。偏心ピン39は植付け本体ケース34に設けた穴の中心から若干偏心している突起39aを有しており、突起39aが切欠き38に嵌まっている。偏心ピン39はドライバによって植付け本体ケース34の外側から回転させることができる。そして、植付け本体ケース34を台座37にボルトで締結するにおいて、締め込み前に偏心ピン39を回転することにより、台座37に対する植付け本体ケース34の相対姿勢を僅かに変える(微調整)ことができる。
植付け軸25は中間筒27に相対回転自在に嵌まっており、中間筒27から突出して植付けケース33の内部に入り込んでいる。例えば図10に示すように、植付け軸25の先端部には植付け用周面カム40が固定されており、この植付け用周面カム40の近傍には植付け軸25と平行な軸心回りに回動する駆動リンク41が左右横長の支軸42で軸支されている。
一方、植付け本体ケース34の筒部36には押し出し軸43が摺動自在に嵌まっており、この押し出し軸43の基端と駆動リンク41の先端とが中間リンク44を介して連結されている。敢えて述べるまでもないが、中間リンク44は植付け軸25と平行なピンで押し出し軸43と駆動リンク41に連結されている。
駆動リンク41は植付け用周面カム40の近傍位置において支軸42で植付け本体ケース34に連結されており、かつ、駆動リンク41の回動中心部には半径外向きの突起45を一体に設けている。植付け用周面カム40は、ほぼ円弧状に近い後退維持領域47と、後退維持領域47から半径が急激に低下する前進用段部48と、前進用段部48から半径が徐々に逓増して後退維持領域に滑らかに繋がる後退途中領域49とを有している。
図11に明示するように、植付け用周面カム40における後退途中領域49の概ね中間部には、半径外向きに突出した補助ピーク50を設けている。補助ピーク50はその前後の面に対して滑らかに連続している。従って、駆動リンク41の突起が植付け用周面カム40の後退途中領域に当接している状態では押し出し軸43は基本的には後退しているが、その後退する途中で、駆動リンク41の突起45が補助ピーク50を超えると若干前進し、それからまた後退に転じる。この押し出し軸43の動きにより、分割爪9に付着した泥等の異物を除去することができる。
例えば図10に示すように、押し出し軸43には、中間リンク44に近いものから順に金属製のブッシュ51、オイルシール52、スクレーパ53が嵌まっており、これらブッシュ51とオイルシール52とスクレーパ53とは植え付け本体ケース34の筒部36に内側から嵌着している。図3や図4に示すように、植付け本体ケース34の筒部36には分割爪9がボルト54(スタッドボルト)及びナット55で固定されている。分割爪9は断面コの字型であり、その内部に、押し出し軸43の先端に固定した押し出し体56がスライド自在に嵌まっている。
植付け軸25が回転すると駆動リンク41が回動し、この駆動リンク41の回動によって押し出し軸43が進退動する。そして、分割爪9が下死点から上死点に移行するときに駆動リンク41が植え付け用周面カム40の後退領域維持47から前進用段部48に移行するように設定しており、これにより、苗は圃場に差し込まれた状態に保持されて、分割爪9が逃げ上昇する。
例えば図10に示すように、駆動リンク41は第2ばね(圧縮コイルばね)57で植付け用周面カム40に付勢されている。従って、押し出し軸43は第2ばね57の弾性力によって後退する。植付けカバーケース35には第2ばね57の収容箇所を確保するための突部58(例えば図4参照)を設けている。既述のように、駆動リンク41の突起45が植付け用周面カム40の前進用段部48に移行すると、当該植付け用周面カム40は急激に回動して、植付け本体ケース34の内部に深く入り込む状態になる。そこで、植付け用周面カム40の急激な回動にる衝撃を吸収するため、植付け本体ケース34の内部には、駆動リンク41が当接するゴム製のクッショ体(図示せず)を装着している。
さて、駆動リンク41は左右横長の支軸42で植付け本体ケース34に保持されているが、支軸42は植付け本体ケース34に対して回転すると磨耗が生じて好ましくない。そこで、支軸42は植付け本体ケース34には回転不能に保持されているのが好ましい。また、支軸42は植付け本体ケース34の内部に位置しているので、植付け本体ケース34の外側から挿入する必要がある。そこで従来は支軸にボルトやビスを使用していたが、これでは取付け作業が面倒である等の問題である。
これに対して本実施形態では、図4に示すように、支軸42の一端部42aを植付け本体ケース34の外側に突出させて、この一端部42aに欠き59を形成する一方、台座37に支軸42の一端部42aが嵌まる長穴60を設けている。支軸42の切欠き59は長穴60の内周面に近接するようなっており、このため支軸42は回転不能に保持されている。そして、支軸42は台座37によって回転不能に保持されている。
(4).ガタ取り用周面カム・まとめ
図11に示すように、ガタ取り用周面カム28は軸心62から最も離れたピーク63を有しており、レバー29の押圧力はこのピーク63の箇所で最も高くなる。従って、ピーク63の頂点部分が、レバー29の押圧力が最も高い抵抗最強部64である。回転方向(A方向)を向いてピーク63の前方側には、レバー29の押圧力が徐々に高くなる抵抗増加領域65が広がっており、回転方向を向いてピーク63の後ろ側には、レバー29の押圧力が低くなる(逓減する)抵抗減少領域66が広がっている。
抵抗増加領域65はなだらかな曲面になっており、従って、レバー29の押圧力は逓増する。抵抗減少領域66は、ピーク63に連続した平坦面66aとその終端に連続した円弧状面66bとで構成されている。従って、レバー29の押圧力の減少率は平坦面66aの箇所にいて大きくなっている。
抵抗増加領域65の始端と抵抗減少領域6端とはいずれも軸心62とピーク63とを結ぶ仮想線67を挟んだ両側に位置している。そして、軸心62挟んでピーク63と反対側に位置した対称点68を含む部分は、軸心62からの距離がほぼ同じでレバー29の押圧力が最も弱くなっている抵抗最弱部69になっており、抵抗最弱部69は抵抗増加領域65と抵抗減少領域66とに滑らかに連続している。
従って、ガタ取り用周面カム28は、抵抗最強部64と抵抗最弱部69が軸心をはさんでほぼ反対側に位置している対称状のプロフィールになっている。なお、本実施形態では抵抗最弱部69がおおよそ90°程度の広がりを持っているが、抵抗最弱部69をおおむね対称点68のあたりの狭い範囲に位置させることも可能である。
以上の構成において、ロータリーケース7が1回転するごとに植付け体8による苗の掻き取り・植付けが行われ、このためロータリーケース7には回転抵抗が生じるが、一対のガタ取り用周面カム28は抵抗最強部64と抵抗最弱部69とが対称位置にあるプロフィールであるため、両ガタ取り用周面カム28に対する抵抗の合力は大きな変動がなく、このため、ロータリーケース7の回転のスムース性が確保される。
さて、苗の掻き取り及び植付けのタイミングとガタ取り用周面カム28に対する抵抗との関係を見ると、例えば図10と図13との比較から理解できるように、一方の植付け体8による苗の掻き取りと他方の植付け体8による苗の植付けとがほぼ同じタイミングで行われ、植付け体8の下降行程の大部分においてレバー29はガタ取り用周面カムの抵抗減少領域66に当接しており、上昇行程の大部分においてレバー29はガタ取り用周面カム28の抵抗増加領域65に当接している。植付け体8が下降から上昇に転じる下死点を含むある程度の範囲では、レバー29はガタ取り用周面カム28の抵抗最弱部69に当接している。
苗の掻き取り時にロータリーケース7には最も大きな負荷がかかるので、苗の掻き取り時には、レバー29はガタ取り用周面カム28の抵抗減少領域66に当接しており、これにより、歯車間のバックラッシュ(ガタ)を除去しつつ、ロータリーケース7に作用する回転抵抗をできるだけ小さくしている。そして、一方の植付け体8で苗を掻き取っている状態では、他方の植付け体8に対応したガタ取り用周面カム28にはその最弱部69にレバー29が当接している。これにより、ロータリーケース7に対する回転をできるだけ少なくかつ平準化しつつ、スムースな高速植付けが確実ならしめられる。
また、ガタ取り用周面カム28に対する抵抗が急激に低下した状態で苗の掻き取りが行われると、遊星歯車16及び他の歯車群に過大な衝撃がかかるおそれがあるが、本実施形態のように抵抗減少領域66に平坦面66aを設けると、抵抗の急激な低下がないため、苗の掻き取り時の衝撃を防止できる。
(5).植付け用周面カムの改良点
さて、分割爪9が下死点から上昇に移行する過程で押し出し体56が前進することにより、苗が分割爪9と一緒に上昇することを阻止して苗を圃場に保持するが、この場合、分割爪9に泥や藁屑などの異物が付着することがあり、異物が付着したままで次の苗の掻き取りが行われると、苗の姿勢が傾く等の不具合が生じるおそれがある。そこで、例えば実用新案登録第2585954号公報には、植付け用周面カムの外周面に同じ深さの2つの凹所を形成することにより、分割爪が上昇する行程で、後端し切った押し出し体56をいったん前進させ(補助前進させ)、これによって泥等の異物の除去を図ることが開示されている。
この点について本願発明者たちが研究し直したところ、実用2585954号公報の構成は押し出し体56の補助前進によって異物の除去は確実化できるものの、押し出し体56は最先端まで補助前進させるものであるため、押し出し体56を補助前進させることに起因した動力損失が大きくて、結果として、ロータリーケースの回転抵抗も大きくなるという問題が発見された。
本実施形態はこの点に関する改良が含んでおり、上記の問題を植付け用周面カム40のプロフィールの改良によって達成している。すなわち、植付け用周面カム40は、ほぼ円弧状に近い後退維持領域47と、後退維持領域47から半径が急激に低下する前進用段部48と、前進用段部48から半径が徐々に逓増して後退維持領域に滑らかに繋がる後退途中領域49とを有しているが、植付け用周面カム40における後退途中領域49の概ね中間部に補助ピーク50を設けることにより、押し出し体56を後退途中でいったん前進させている。
この構成は次のように一般化できる。「苗マットから1株分の苗を切り取って圃場に向けて下降してから再び上昇するというサイクルを繰り返す分割爪と、前記分割爪が下降から上昇に転じるときに苗を押し出す押し出し体とを備えており、前記押し出し体は、植付け用周面カムとその外周面に当接するレバーとこのレバーを付勢するばねとから成る往復動機構によって駆動されており、更に、前記押し出し体は、メインプッシュによって苗を分割爪より押し出してのち分割爪の上昇行程で補助プッシュされるようになっている、という構成において、前記押し出し体は、前進し切る位置よりも手前の位置まで補助プッシュされる。」
そして、分割爪は上昇行程では下向きの姿勢であることにより、押し出し体をある程度だけ補助プッシュさせることで異物を除去することができるため、異物除去のためのサブプッシュ時の抵抗を抑制して動力損失を減少しつつ、苗の正確な植付けを行える。
この場合は、押し出し体を後退途中で若干の寸法たけ前進させる手段として本実施形態のように植付け用周面カム40のうち後退途中領域49の中途部に補助ピーク50を設けると、押し出し体56や押し出し軸43の動きが滑らかになる利点がある。
(6).中間歯車の取付け構造の改良点
ロータリー式植付け装置は中間歯車を有するが、次に、この中間歯車の取付け構造の別例を図12に基づいて説明する。
さて、例えば特許第3691233号公報には、1枚の中間ギアを左右のケースでサンドイッチする構成が開示されている。また、特開2007−20461号公報には、中間ギアと中間シザーズギアとを重ね合わせて左右のケースでサンドイッチする点が開示されている。特許文献1も特開2007−20461号公報と同様の構成になっている。
各公報では中間歯車が嵌まっている中間軸の両端部をシェルに直接嵌め込むことが図示されているが、実際には、中間歯車をシェルで挟んだだけではスムースな回転を期待できず、現実にはブッシュや軸受けを設けてシェルと中間歯車との接触を回避すること(中間歯車が軸方向にずれることを防止すること)が必要である。このため低コストを実現できないといった問題があった。
これに対して図12に示す実施形態では、中間軸23の左右中間部にベアリング71を介して中間歯車15を取付け、ベアリング71のアウターレース71aと中間軸23とをリベット72で固定し、その状態で中間軸23をシェル10,11の保持穴73に挿入している。
より正確に述べると、アウターレース71aの外周面と中間歯車15の内周面とに、相対向した半円状の溝を形成し、2つの溝で構成された円形の穴74に円形のリベット72を挿入して、リベット72の両端を潰して広げている(すなわち、かしめている)。アウターレース71aは硬い素材で製造されているが、溝の加工は例えば研削盤を使用して比較的容易に行える。また、中間歯車15への溝の加工も、例えば内周穴の加工と同時に容易に行える(中間歯車15がプレス加工で製造される場合は、溝の形成は一層容易になる。)。
中間軸23とインナーレース71bとは締まり嵌めによってずれ不能に保持されており、また、ベアリング71のインナーレース71bとアウターレース71aとはボールの群によって左右ずれ不能に保持されている。シェル10,11の保持穴73にはライニング75を嵌着しているが、このライニング75は無くてもよい。
このように構成すると、中間歯車15は中間軸23にずれ不能に保持されているため、中間軸23をシェル10,11にきっちり嵌め込むだけで、中間歯車15を安定した状態に保持できる。このためコストダウンに貢献できる。また、中間歯車15は軸心が偏心した不等速歯車になっており、このため中間歯車15には内周面の外側に大きく広がった幅広部76が存在しており、リベット72をこの幅広部76の縁に設けている。このため中間歯車15の強度低下を招来することなくリベット72で固定できる。
アウターレース71aと中間歯車15との固定手段としては、リベット72に代えてビスや溶接を採用することも可能である。ピンを強制嵌入してもよい。或いは、両者の端面に1枚のリングを重ねてこれを両者に溶接してもよい。中間歯車15の片面に、アウターレース71aの端面に重なる内向きフランジを形成して、この内向きフランジをアウターレース71aに固定することも可能である。
(7).その他
本願発明の具体例は上記実施形態に限定されるものではなく、他にも様々に具体化できる。例えばロータリーケースや植付け体の外観形状は必要に応じて任意に変更できる。また、分割爪の形状や押し出し軸、押し出し体の形状も様々の形状を選択可能である。
本願発明は田植機に適用して有用性を発揮する。従って、産業上の利用可能性を有する。
1 苗植装置
2 苗載せ台
4 支持アーム
5 駆動軸
6 植付け装置
7 ロータリーケース
8 植付け体
9 分割爪
14 太陽歯車
15 中間歯車
16 遊星歯車
28 ガタ取り用周面カム
29 レバー
30 第1ばね
62 ガタ取り用周面カムの軸心
63 ガタ取り用周面カムのピーク
64 ガタ取り用周面カムの抵抗最強部
65 ガタ取り用周面カムの抵抗増加領域
66 ガタ取り用周面カムの抵抗減少領域
66a 平坦面

Claims (1)

  1. 水平状の軸心回りに回動するように支持アームに取付けられたロータリーケースの内部に、当該ロータリーケースの回動中心回りに回転する太陽歯車と、前記太陽歯車を挟んだ両側に配置されていると共に前記太陽歯車に噛み合った一対の中間歯車と、前記太陽歯車と反対側において前記中間歯車に噛み合った一対の遊星歯車とが配置されており、前記一対の遊星歯車に固定された植付け体にそれぞれ分割爪を設けており、ロータリーケースが回転すると一対の分割爪が非円形の閉ループ軌跡を描いて苗の掻き取りと植付けとを行うようになっており、
    かつ、前記一対の遊星歯車には、外周面の1カ所が軸心から最も遠く離れたピークになっているガタ取り用周面カムを設けており、前記ガタ取り用周面カムの外周面にばねで付勢されたレバーを当接させることにより、前記歯車の群の間に生じたバックラッシュを除去するようになっている植付け装置であって、
    前記両ガタ取り用周面カムの外周面は、少なくとも軸心を挟んで前記ピークと反対側の部分が軸心に最も近くなるカムプロフィールになっており、このため、前記レバーの押圧力が最も強くなる最強部である前記ピークと前記レバーの押圧力が最も弱くなる最弱部とは軸心を挟んでほぼ対称に位置しており、
    前記両ガタ取り用周面カムの外周面のうち前記ピークよりも回転方向上流側は、前記レバーの押圧力が徐々に高くなるなだらかな曲面になっている一方、前記ピークよりも回転方向下流側は、前記レバーの押圧力の減少率が大きくなるように前記ピークに連続した平坦面になっている、
    田植機のロータリー式植付け装置。
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