JP5458124B2 - 電磁波イメージング装置及び電磁波イメージング方法 - Google Patents

電磁波イメージング装置及び電磁波イメージング方法 Download PDF

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Description

本発明は、電磁波を用いた構造物非破壊検査技術に関し、特に装置を構造物に近接して運用し、リアルタイムかつ非破壊で構造物の欠陥や劣化を画像として可視化する技術に関する。
インフラ設備、建築物などの多くはコンクリート構造物である。コンクリート構造物は、製造過程や置かれた環境によって老朽化・劣化の進行度が様々であり、歳月の経過とともに鉄筋の腐食、コンリートのひび割れや剥離・剥落といった劣化現象が生じる。
このような劣化現象を早期に発見し、補強・補修することによってコンクリート構造物を延命することが図られている。特にコンクリートひび割れは、劣化初期に現れることから、コンクリート構造物の劣化診断項目の1つとなっている。
このコンクリート表面付近に生じるひび割れを検知するには、サブミリメートルからミリメートルオーダの解像度が必要となる。また、室内・屋外において使用でき、リアルタイムで可視化することが必要である。これらを満たす技術として、構造物に近接して撮像するミリ波イメージング技術が特許文献1に開示されている。
しかしながら、その開示された電磁波イメージングシステムは、可搬かつ小型な装置であるため、広大な領域を検査するには膨大な時間を要するという課題がある。
そこで、広大な領域を高速に撮像するための方法として、電子的に放射パターンを制御するビームステアリング技術が非特許文献1に開示され、ミラーを用いた電子走査技術が非特許文献2に開示されている。
しかしながら、これらの技術は遠方領域を対象としており、送受信機の近傍領域は対象とされていない。また、これらの技術を近傍領域に適用することは技術的に難しい。
このことから、近傍領域を対象として高速に撮像する方法として、2次元センサアレイ又は1次元センサアレイの数を増やすことが期待される。先の特許文献1によれば、単一の照射アンテナを有する送信機と複数の受信機とを1次元にアレイ化したアレイ受信機のバイスタティック計測方式を採用し、その送受信機を走査しながらリアルタイムで2次元データを取得していることから、センサアレイである受信アンテナの数を多くすることにより、2次元データの幅が広くなるため、単位面積あたりの撮像速度の高速化に寄与することになる。
しかしながら、照射領域を広くするほど照射領域の単位面積あたりの照射信号強度が小さくなり、対象物から反射する信号強度Sが小さくなる。また、照射領域が広くなることにより、周辺からの散乱信号強度Nが大きくなる。よって、上記構成で照射領域を広くすると対象物からの反射信号のSN比が劣化する。また、信号強度Sが受信機の持つ雑音よりも小さいと対象物を検知できなくなる。信号強度Sを向上させる方法として、照射する信号を大きくする方法が考えられるが、電波法により最大の信号出力値が制限されているため、信号強度Sの一定以上の改善は難しい。
したがって、単一照射アンテナの送信機で照射領域を広げるには限界があり、照射領域拡大による高速化が難しいという課題がある。また、単一照射アンテナの送信機で照射できない死角領域が生じるような表面形状である場合、たとえば、平面的でない対象物の場合、従来技術を利用することは困難であった。
また、非特許文献3によれば、対象物と受信アンテナの距離を10波長以下に近づけることにより、対象物形状の微細な変化に伴う散乱信号強度の変化を捉えることができる。これにより、遠方領域を対象とした電磁波イメージングでは得られない高分解能な撮像結果を得ることができる。
特許第4369915号公報
A.R.Harvey、外4名、「Electronic beam-steering for passive millimeter-wave imaging」、Part of the 4th International Conference on Millimeter and Submillimeter Wavesand Applications、1998年7月、Proc. SPIE Vol.3465、p.415-424 中田淳、外12名、「背景上端温度を利用したミリ波画像のリアルタイム校正法」、2009年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会、C-02-115、IEICE、p.143 S.Oka、外2名、「LATEST TRENDS IN MILLIMETER-WAVE IMAGING TECHNOLOGY」、Progress In Electromagnetics Research Letters、2008年、p.197-204
しかしながら、波長程度のアンテナ開口を有する受信アンテナを用いた従来の受信機による撮像結果は、アンテナ開口上で平均化されたデータとなるため、撮像結果の像はボケてしまう。また、先述の従来技術によれば、送信機と受信機とを分離したバイスタティック計測方式を採用しているため、送信側のアンテナと受信側のアンテナとを一定以上対象物に近接させることができない。
以上より、このようなアンテナ開口上での散乱信号の平均化や、送受信アンテナの物理的寸法のために、捉えることができる微細な形状変化には限界があるという課題があった。
すなわち、これ以上の高分解能な撮像ができないという課題がある。また、バイスタティック計測方式では送信側の照射領域と受信側の観測領域との交点が焦点となるため被写界深度が浅い。そのため、対象物との距離が変化するごとに送信機と受信機との配置調整が必要となることから、撮像環境が変わるたびに調整時間を要するという課題がある。特に、隠蔽された対象物を撮像する場合、対象物までの距離が未知なために調整が困難となるという課題がある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、撮像の高速化を図り、近接イメージングにおける分解能の向上を図ることにある。
請求項1記載の電磁波イメージング装置は、アレイ状に配置され、撮像対象に電磁波を送信し、当該撮像対象で反射した反射信号を受信する複数の送受信モジュールと、前記反射信号の同相信号及び直交信号を取得するベースバンド回路と、前記同相信号及び前記直交信号を測定データに用いて前記撮像対象をイメージング処理する画像処理部と、を備え、前記送受信モジュールは、送受信アンテナと、前記送受信アンテナに前記電磁波による送信信号を給電する信号発生器と、前記送受信アンテナで受信した反射信号の位相を変化させる移相器と、前記送信信号と前記反射信号とを乗算する第1のミキサと、前記送信信号と前記位相変化後の反射信号とを乗算する第2のミキサと、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、アレイ状に配置され、撮像対象に電磁波を送信し、当該撮像対象で反射した反射信号を受信する複数の送受信モジュールを備えるため、モノスタティック計測方式が実現されることから、単一照射器と複数受信器を用いたバイスタティック計測方式のような受信器の制約を受けることがなく、広大な領域に対して十分な送受信モジュールを用意することによって、容易に広大な領域をまとめて撮像でき、撮像時間の短縮や撮像の高速化を実現できる。
また、本発明によれば、その送受信モジュールは、送受信アンテナと、送受信アンテナに電磁波による送信信号を給電する信号発生器と、送受信アンテナで受信した反射信号の位相を変化させる移相器と、送信信号と反射信号とを乗算する第1のミキサと、送信信号と位相変化後の反射信号とを乗算する第2のミキサと、を備えるため、直交検波方式が実現されることから、対象物からの反射信号の強度と位相情報を取得することができ、特許文献1のような強度信号のみの情報では適用することができなかったレーダ信号処理の利用が可能となり、送受信アンテナと撮像対象間の距離を送信信号の10波長以下に近づける近接イメージングにおける分解能の向上や被写界深度の改善を実現できる。
請求項2記載の電磁波イメージング装置は、請求項1記載の電磁波イメージング装置において、変調信号を生成する変調信号生成器と、前記複数の送受信モジュールのうちいずれか1つを選択する切換器と、を更に備え、前記送受信モジュールは、前記変調信号により前記送信信号を強度変調し、前記変調信号が入力されない場合に前記送信信号を前記送受信アンテナに出力しない変調器を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、複数の送受信モジュールのうちいずれか1つを選択するため、各送受信モジュールから出力される送信信号の干渉を防止できる。
請求項3記載の電磁波イメージング装置は、請求項1又は2記載の電磁波イメージング装置において、前記送受信モジュールの受信特性歪を補正する歪補正係数を記憶する歪補正係数データ記憶部を更に備え、前記画像処理部は、前記イメージング処理する前に、前記測定データに前記歪補正係数を演算させる歪補正部を備えることを特徴とする。
本発明によれば、イメージング処理する前に、測定データに歪補正係数を演算させるため、各送受信モジュールでの受信特性のばらつきを補償できる。
請求項4記載の電磁波イメージング装置は、請求項3記載の電磁波イメージング装置において、前記歪補正係数データ記憶部は、前記歪補正係数を測定温度に対応付けて記憶し、前記歪補正部は、測定時の温度に対応する歪補正係数を用いて前記演算を行うことを特徴とする。
本発明によれば、測定時の温度に対応する歪補正係数を用いるため、各送受信モジュールでの受信特性のばらつきをより適切に補償できる。
請求項5記載の電磁波イメージング装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁波イメージング装置において、前記画像処理部は、走査距離に対する前記測定データを取得して、前記取得した全ての測定データを所定の走査距離区間で分割し、前記分割後の測定データから走査距離に対する測定データの大きな変化を表す低周波成分信号と一致する近似関数を導出して、前記分割後の全ての測定データの各データ点について前記近似関数の値を差分するアレイ補正部を備えることを特徴とする。
本発明によれば、走査距離に対する測定データを取得して、取得した全ての測定データを所定の走査距離区間で分割し、分割後の測定データから走査距離に対する測定データの大きな変化を表す低周波成分信号と一致する近似関数を導出して、分割後の全ての測定データの各データ点について近似関数の値を差分するため、走査距離に対する測定データの大きな変化を取り除くことができ、高周波信号の微細な変化を捉えることが可能となり、撮像対象での微細形状変化の認識度を大幅に向上できる。
請求項6記載の電磁波イメージング装置は、請求項2記載の電磁波イメージング装置において、前記変調器は、ショットキーバリアダイオードを用いて構成されることを特徴とする。
本発明によれば、変調器は、ショットキーバリアダイオードを用いて構成されるため、送受信モジュールからの出力制御を高速かつ安定に動作させることができる。
請求項7記載の電磁波イメージング装置は、請求項3又は4記載の電磁波イメージング装置において、前記歪補正係数は、平板状又は円錐状の反射体と送受信アンテナとの間の距離を変化させながら取得した測定データを用いて事前計算されることを特徴とする。
本発明によれば、歪補正係数は、平板状又は円錐状の反射体と送受信アンテナとの間の距離を変化させながら取得した測定データを用いて事前計算されるため、一度にかつ短時間でまとめて送受信モジュールの受信特性を取得できる。
請求項8記載の電磁波イメージング方法は、アレイ状に配置され、撮像対象に電磁波を送信し、当該撮像対象で反射した反射信号を受信する複数の送受信モジュールと、前記反射信号の同相信号及び直交信号を取得するベースバンド回路と、前記同相信号及び前記直交信号を測定データに用いて前記撮像対象をイメージング処理する画像処理部と、を備え、前記送受信モジュールは、送受信アンテナと、前記送受信アンテナに前記電磁波による送信信号を給電する信号発生器と、前記送受信アンテナで受信した反射信号の位相を変化させる移相器と、前記送信信号と前記反射信号とを乗算する第1のミキサと、前記送信信号と前記位相変化後の反射信号とを乗算する第2のミキサと、を備えた電磁波イメージング装置で行う電磁波イメージング方法において、前記画像処理部は、前記取得した全ての測定データを所定の走査距離区間で分割するデータ分割ステップと、前記分割後の測定データから走査距離に対する測定データの大きな変化を表す低周波成分信号と一致する近似関数を導出する近似関数導出ステップと、前記分割後の全ての測定データの各データ点について前記近似関数の値を差分するオフセット除去ステップと、を有することを特徴とする。
本発明によれば、アレイ状に配置され、撮像対象に電磁波を送信し、当該撮像対象で反射した反射信号を受信する複数の送受信モジュールを備えるため、モノスタティック計測方式が実現されることから、単一照射器と複数受信器を用いたバイスタティック計測方式のような受信器の制約を受けることがなく、広大な領域に対して十分な送受信モジュールを用意することによって、容易に広大な領域をまとめて撮像でき、撮像時間の短縮や撮像の高速化を実現できる。
また、本発明によれば、その送受信モジュールは、送受信アンテナと、送受信アンテナに電磁波による送信信号を給電する信号発生器と、送受信アンテナで受信した反射信号の位相を変化させる移相器と、送信信号と反射信号とを乗算する第1のミキサと、送信信号と位相変化後の反射信号とを乗算する第2のミキサと、を備えるため、直交検波方式が実現されることから、対象物からの反射信号の強度と位相情報を取得することができ、特許文献1のような強度信号のみの情報では適用することができなかったレーダ信号処理の利用が可能となり、送受信アンテナと撮像対象間の距離を送信信号の10波長以下に近づける近接イメージングにおける分解能の向上や被写界深度の改善を実現できる。
本発明によれば、走査距離に対する測定データを取得して、取得した全ての測定データを所定の走査距離区間で分割し、分割後の測定データから走査距離に対する測定データの大きな変化を表す低周波成分信号と一致する近似関数を導出して、分割後の全ての測定データの各データ点について近似関数の値を差分するため、走査距離に対する測定データの大きな変化を取り除くことができ、高周波信号の微細な変化を捉えることが可能となり、撮像対象での微細形状変化の認識度を大幅に向上できる。
本発明によれば、撮像の高速化を図り、近接イメージングにおける分解能の向上を図ることができる。
電磁波イメージング装置の構成例を示す図である。 RFモジュールセンサの選択制御によるRF信号出力タイミングチャート例を示す図である。 歪補正係数の算出手法例を説明する図である。 歪補正係数の他の算出手法例を説明する図である。 歪補正係数の他の算出手法例を説明する図である。 歪補正係数の算出処理フロー例及びそれを使用して行う歪補正処理フロー例を示す図である。 RFモジュールセンサの受信特性歪を説明する図である。 受信特性歪補正前・後の処理結果例を示す図である。 アレイ補正処理フローを説明する図である。 被覆前の撮像対象物の撮影写真と、被覆後の対象物を電磁波イメージング装置で撮像した測定結果を記載した図である。 測定結果とそれに対してレーダ信号処理適用後、アレイ補正処理後、および特徴量を抽出後の結果を画像化した図である。
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
本発明は、電磁波イメージング装置において、従来のバイスタティック計測方式に代えて、送受回路及び受信回路並びに送信アンテナ及び受信アンテナを一体化したモノスタティック計測方式を採用し、更に、撮像対象で反射した反射信号の検波方式を強度検波方式に代えて直交検波方式を採用したことを主たる特徴とする。以下、本実施の形態に係る電磁波イメージング装置について説明する。
〔電磁波イメージング装置の構成について〕
図1は、本実施の形態に係る電磁波イメージング装置の構成を示す図である。本電磁波イメージング装置1は、撮像対象である対象物3に電磁波(以下、RF信号)を送受信するアレイ状に配置された複数のRFモジュールセンサ100と、その複数のRFモジュールセンサ100のうちいずれか1つのRFモジュールセンサ100を選択するRFモジュールセンサ切換回路200と、その選択に用いる選択信号を生成するRFモジュールセンサ選択信号生成器300と、上記RF信号に重畳される変調信号を生成する変調信号生成器400と、対象物3で反射した反射信号の強度及びその位相情報の元になる同相信号と直交信号を取得するベースバンド回路500と、その同相信号、直交信号、強度や位相情報等の各種データを一時記憶するメモリ600と、測定時の温度を計測する温度計700と、測定時に電磁波イメージング装置1を走査させた際の距離を計測する走査距離計800と、メモリ600内の各種データを測定データに用いて対象物3の像を再構成(イメージング処理)するCPU900と、その像を画面に表示する表示器1000と、その再構成時に用いる歪補正係数等を記憶しておくデータベース1100とで主に構成される。
特に、CPU900は、レーダ信号処理部92の前段で各RFモジュールセンサ100によるその受信特性の歪を補正する歪補正部91と、その補正後の強度・位相情報から近傍界後方散乱理論に基づくレーダ信号処理を行うレーダ信号処理部92と、そのレーダ信号処理後のデータをアレイ補正(後述)して、その補正後のデータから特徴量を抽出する画像処理部93とで構成される。
また、データベース1100は、RFモジュールセンサ100の選択順が記載された選択順番データを記憶する選択順番データ記憶部1101と、各RFモジュールセンサ100の受信特性の歪補正係数が記載された歪補正係数データを記憶する歪補正係数データ記憶部1102と、対象物3の上記特徴量データを記憶する対象物特徴量データ記憶部1103とで構成される。
なお、選択順番データは、ユーザにより事前定義されている。また、歪補正係数は、測定を開始する前に事前に計算されている。また、特徴量は事前に定義されている。
〔RFモジュールセンサについて〕
最初に、RFモジュールセンサ100について説明する。RFモジュールセンサ100は、モノスタティック計測方式を実現するため、RF信号の送信回路及び受信回路と、その送受信に用いる送受信アンテナとを一体化した送受信モジュールで構成される。
また、直交検波方式を実現するため、そのRFモジュールセンサ100内の受信回路は、RF信号を発生させるRF信号発生器11と、対象物3で反射した反射信号を受信するアンテナ13と、その反射信号を増幅する増幅器14と、RF信号発生器11で発生したRF信号と受信した反射信号とを乗算する第1のミキサ15aと、そのRF信号と90度移相後の反射信号とを乗算する第2のミキサ15bと、反射信号の位相を90度移相するπ/2移相器16とで主に構成される。
また、RFモジュールセンサ100内の送信回路は、上記RF信号発生器11と、外部からの変調信号によりRF信号を強度変調する変調器12と、強度変調後のRF信号を外部出力して対象物3に照射する上記アンテナ13とで主に構成される。なお、変調器12は、変調信号が入力されない場合、当該変調器12からRF信号を出力しない仕組みを機能として具備している。
また、電磁波イメージング装置1内では、上記各回路等を具備する複数のRFモジュールセンサ100がアレイ状に配置され、1つのアレイセンサが形成されている。
次に、RFモジュールセンサ100の動作を説明する。RF信号発生器11で発生したRF信号は、変調器12と第1のミキサ15aと第2のミキサ15bとにそれぞれ分配出力され、外部の変調信号生成器400からの変調信号により変調器12で強度変調された後に、アンテナ13から対象物3に照射される。
そして、その対象物3で反射した反射信号は、同アンテナ13で受信され、増幅器14で増幅された後に、第1のミキサ15aと第2のミキサ15bとにそれぞれ入力される。
その後、第1のミキサ15aにより、RF信号発生器11からのRF信号と増幅後の反射信号とがミキシングされ、そのミキシングによる同相検波信号Iが外部出力される。また、第2のミキサ15bにより、そのRF信号と90度移相後の反射信号とがミキシングされ、そのミキシングによる直交検波信号Qが外部出力される。
なお、それらミキシングにより同相検波信号Iと直交検波信号Qとがそれぞれ生成される理由については、特許第3036093号で公知であることから、ここではその説明を省略する。
以上より、送信回路と受信回路と送信アンテナと受信アンテナとを一体化させたRFモジュールセンサ100によりモノスタティック計測方式を実現し、そのRFモジュールセンサ100をアレイ状に複数配置しているので、従来技術の課題であった単一照射アンテナによる撮像領域拡大の限界の課題を克服できる。すなわち、広大な領域をまとめて撮像でき、撮像時間の短縮や撮像の高速化を実現できる。
また、そのような送受信機能一体型のモジュール構造を採用しているので、RFモジュールセンサ100の数を必要に応じて容易に増減できる。
また、そのような送受信機能一体型のRFモジュールセンサ100を個々に配置できるので、従来の単一照射アンテナを利用した場合に死角となってしまうような複雑な表面形状を持つ対象物に対しても適用できる。
また、上記RF信号発生器11と、上記アンテナ13と、上記第1のミキサ15aと、上記第2のミキサ15bと、上記π/2移相器16とを受信回路として具備することにより直交検波方式を実現するので、対象物からの反射信号の強度と位相情報を取得することができ、特許文献1のような強度信号のみの情報では適用することができなかったレーダ信号処理の利用が可能となり、アンテナ10と対象物3間の距離をRF信号の10波長以下に近づける近接イメージングにおける分解能の向上や被写界深度の改善を実現できる。
〔RFモジュールセンサの選択制御について〕
次に、RFモジュールセンサ100の選択制御処理について説明する。先述したように、電磁波イメージング装置1からRF信号が外部出力される。
一方、RFモジュールセンサ100から外部への出力信号は、電波法の規制を順守するため、その法規規制値を超えないように制御される必要がある。また、各RFモジュールセンサ100からの各出力信号は、干渉しないように制御される必要がある。更に、対象物3をリアルタイムで撮像するため、RFモジュールセンサ100からの出力信号を高速に制御する必要がある。
しかし、特にミリ波帯においては、一般に、送信器の出力制御を高速かつ安定に動作させることは技術的に難しい。また、上記RFモジュールセンサ100内の受信回路は、参照信号として自センサ内のRF信号を必要とするが、そのRF信号の周波数及びその出力はRFモジュールセンサ100毎に異なっている。
そのため、各RF信号にそれぞれ一致する信号を生成する信号発生手段を構築することも考えられるが、その手段の実現は極めて困難であり、仮に実現できたとしても、その調整や評価に膨大な時間を要することになる。
そこで、まず、(1)各RFモジュールセンサ100からの各出力信号が干渉しないようにするため、RF信号を出力するRFモジュールセンサ100を選択制御する。すなわち、複数の切換器を備えたRFモジュールセンサ切換回路200とRFモジュールセンサ選択信号生成器300とにより、各RFモジュールセンサ100を独立制御して、RF信号を出力するRFモジュールセンサ100を選択する。
RFモジュールセンサ切換回路200は、先述したように複数のRFモジュールセンサ100のうちいずれか1つのRFモジュールセンサ100を選択する機能を有するが、具体的には、変調信号の出力先(すなわち、選択されるRFモジュールセンサ100)を切り換える第1の切換器21と、ベースバンド回路500への2つの反射信号出力元(すなわち、第2のミキサ15bと第1のミキサ15a)をそれぞれ切り換える第2の切換器22と第3の切換器23とで構成される。
RFモジュールセンサ選択信号生成器300は、選択順番データ記憶部1101に記憶されている選択順番データを用いて、そのデータ内に定義された順番でRFモジュールセンサ100を選択する選択信号を生成する。
続いて、各RFモジュールセンサ100の選択制御方法について説明する。まず、RFモジュールセンサ選択信号生成器300により、選択順番データに基づいて生成された選択信号がRFモジュールセンサ切換回路200に出力される。
次に、その選択信号に基づいて、第1の切換器21により、変調信号生成器400の接続先(=チャネル=RFモジュールセンサ100)が選択制御され、その制御状態が一定時間T継続される。
また、RFモジュールセンサ100は送信回路と受信回路とが一体であり変調信号が入力されている場合のみ反射信号を出力することから、第1の切換器21での選択制御動作に連動して、第2の切換器22及び第3の切換器23により、ベースバンド回路500への接続元が、上記チャネルと同じチャネルに選択制御され、上記一定時間Tと同じ一定時間Tでその制御状態が継続される。
そして、その一定時間Tの間、第1の切換器21により、選択信号に基づいて選択されたチャネル番号のRFモジュールセンサ100へ変調信号が伝達され、第2の切換器22及び第3の切換器23により、そのRFモジュールセンサ100から反射信号がベースバンド回路500に伝達される。
すなわち、実際には、選択信号のみならず変調信号もRFモジュールセンサ100を選択する手段として作用することから、選択されたRFモジュールセンサ100にのみ変調信号が伝達され、変調信号が入力されているRFモジュールセンサ100のみがRF信号を出力することになる。一方、変調信号が入力されていないRFモジュールセンサ100は、RF信号を出力しない。
図2は、RFモジュールセンサ100の選択制御によるRF信号出力タイミングチャートを示す図である。
各RFモジュールセンサ100内の全てのRF信号発生器11が全てオン状態であるとき、変調信号が割り当てられたRFモジュールセンサ100のみが上記一定時間Tの間でRF信号を外部出力し、それ以外のRFモジュールセンサ100は出力しない。
次に、変調信号の割り当てが他のチャネルに移ると、その新たなチャネルにおいてRF信号の出力が観測され、それ以外のRFモジュールセンサ100から観測されない。
このように、変調信号の割り当てを随時変更することにより、同時期に2つ以上のRFモジュールセンサ100からRF信号が出力されなくなるので、RFモジュールセンサ100間でのRF信号の混信を防止できる。
次に、(2)RFモジュールセンサ100からの出力制御を高速かつ安定に動作させるため、ショットキーバリアダイオードを用いたスイッチを変調器12として用いる。ショットキーバリアダイオードは、一般に高速かつ安定な動作が可能であることから、RFモジュールセンサ100からのRF信号の出力を高速かつ安定にオンオフ制御できる。
以上より、複数のRFモジュールセンサ100のうちからいずれか1つのRFモジュールセンサ100に切り換えるため、各RFモジュールセンサ100からの出力信号の干渉を防止できる。
また、変調器12としてショットキーバリアダイオードを用いるので、RFモジュールセンサ100からの出力制御を高速かつ安定に動作させることができる。
〔補正処理について〕
次に、歪補正部91で行う各RFモジュールセンサ100の受信特性の歪補正処理と、画像処理部93で行うアレイ補正処理について説明する。
これまで説明した電磁波イメージング装置は、1つのRFモジュールセンサ100に送受回路と受信回路とが一体化されることから小型化に向いている。その一方で、様々なデバイスを組み込む必要があるため、RFモジュールセンサ100の送信特性や受信特性にばらつきが生じる。
それゆえ、個々のRFモジュールセンサ100に起因する受信特性のばらつきを低減し、更に、全てのRFモジュールセンサ100の感度や測定のダイナミックレンジを均等化する較正(アレイ補正)が必要不可欠である。
(受信特性の歪補正について)
特にミリ波帯では、受信した反射信号の強度及び位相情報をRFモジュールセンサ100の個体差に関係なく取得することは技術的に難しく、個々のRFモジュールセンサ100において受信特性に歪が生じる。
そこで、各RFモジュールセンサ100における受信特性の歪を補正する歪補正係数を予め計算して歪補正係数データ記憶部1102に登録しておき、測定時に受信した反射信号をレーダ信号処理する前に、歪補正部91において当該反射信号の歪を補正する。
本発明は、各RFモジュールセンサ100の受信特性の歪補正係数を用いることに特徴があることから、その歪補正係数の計算方法については何ら限定されるべきではない。
例えば、先述した特許第3036093号には、RFモジュールセンサ100内の受信回路と同様の構成からなる受信回路の後段に様々な回路(DCオフセット補償回路、オフセット測定回路、振幅比移相測定回路、振幅移相補償回路(特許第3036093号で開示する図2参照))を追加し、その追加回路により、受信回路から出力された同相検波信号Iと直交検波信号Qとの2つの信号から振幅比と相関係数とを測定し、それら各測定値を基にして直交検波信号から相関成分を除去するとともに直交検波信号の振幅を同相検波信号に一致させる方法が記載されている。本実施の形態では、そのように除去・一致させる変換データを歪補正係数として事前登録しておく。
RFモジュールセンサ100の受信回路は、自センサから出力されたRF信号のみを利用して同相成分や直交成分を検波することから、受信特性を得る方法としては、例えば、図3〜図5のような反射体5からの反射波を利用する方法が利用できる。
ここで、RFモジュールセンサ100の受信特性を得るには、反射信号の位相を変化させる必要がある。位相を高精度に変化させる方法として、図3に示すように、RFモジュールセンサ100内のアンテナ13前方に平板状の反射体5aを配置し、アンテナ13又は反射体5aを高精度に移動させることにより、アンテナ13と反射体5a間の距離を変化させる。これにより、RF信号の位相を変化させた反射信号を受信できる。
このように、任意の反射体5aを用いてアンテナ13との間の距離を移動させることにより、特殊なRF信号発生器を用意・調整して疑似信号を反射信号として入力する必要なく、各RFモジュールセンサ100の受信特性を取得することができる。
その他の方法として、図4に示すように、走査方向に対して傾きαで傾斜させた反射体5aを配置し、RFモジュールセンサ100を当該走査方向に移動させる方法でも、その受信特性を同様に取得できる。
一方、図5(a)に示すように、RFモジュールセンサ100の配置状態が直線的でない場合(例えば、円弧上に配置されている場合)は、全てのアンテナ13に対して、反射体までの距離が一律に変化する形状の反射体5b(例えば、図5(b)に示すような部分円錐形状の反射体5b)を利用することにより、その受信特性を同様に取得できる。
以上の方法によれば、単一のRFモジュールセンサ100や複数のRFモジュールセンサ100でも、一度にかつ短時間でまとめてRFモジュールセンサ100の受信特性を取得できる。
このように取得した反射信号を元に各RFモジュールセンサ100の歪補正係数をそれぞれ算出し、歪補正係数データ記憶部1102に登録しておき、測定時にこれらを用いて測定時の反射信号内の歪を補正する。
なお、RFモジュールセンサ100の受信特性は温度ドリフトが生じるため、歪補正係数を動作温度毎に算出して歪補正係数データ記憶部1102に登録しておき、測定時における温度計700での計測温度に対応した歪補正係数を用いることも可能である。
また、温度ドリフトによる歪補正係数は、温度に対して滑らかに変化するため、各温度における歪補正係数の歪補正係数データ記憶部1102への登録は離散的でよく、実温度における歪補正係数は歪補正係数データ記憶部1102から内挿して求めてもよい。
ここで、図1、図3及び図6を参照しながら、これまで説明した歪補正係数算出処理動作を説明する。電磁波イメージング装置1は、歪補正係数を算出する較正モードと、対象物3を撮像する測定モードとの切り換えが可能であり、本動作時には較正モードに設定されている。
最初に、ステップS101において、現在のモードが較正モードか測定モードかが判定され、較正モードであることから、ステップS102において、歪補正係数用のデータが取得される。
具体的には、アレイ状に配置されたRFモジュールセンサ100のアンテナ13から反射体5aにRF信号が照射され、その反射体5aで反射した反射信号が受信される(ステップS102−1)。
次に、第1のミキサ15aでのミキシングにより同相検波信号Iがベースバンド回路500に出力されると共に、第2のミキサ15bでのミキシングにより直交検波信号Qが同ベースバンド回路500に出力される(ステップS102−2)。
次に、そのベースバンド回路500において、各フィルタ51a,51により変調信号の周波数帯のみ通過され、各位相検波器(Phase Sensitive Detector)PSD52a,52bにより、変調信号成分の同相検波信号I及び直交検波信号Qが抽出され、各A/D変換器53a,53bによりデジタル値に変換されて、メモリ600に記憶される(ステップS102−3)。
次に、ステップS103において、CPU900内の歪補正係数計算部(図1において不図示)により、その変換後のデジタルデータがメモリ600から読み取られ、その読み取られたデータには、図7に示すように、オフセットと強度差R及び位相歪みPとが存在することから、そのオフセットを除去し、強度差Rや位相歪みPを補償するような係数を求め、歪補正係数データ記憶部1102に記憶させる。具体的には、上述したように、直交検波信号から相関成分を除去するとともに直交検波信号の振幅を同相検波信号に一致させるような係数を計算する。
続いて、測定時における歪補正処理動作を説明する。本動作時には、測定モードに設定されている。
最初に、ステップS101において、現在のモードが較正モードか測定モードかが判定され、測定モードであることから、ステップS201において、先述したステップS102−1乃至ステップS102−3と同様の処理により、撮像対象である対象物3の反射信号に係る測定データが測定される。
次に、ステップS202において、CPU900内の歪補正部91により、歪補正係数データ記憶部1102から各RFモジュールセンサ100の歪補正係数が取得され、測定された各RFモジュールセンサ100での測定データに対して歪補正係数が演算される。
図8は、円弧上に配置されたRFモジュールセンサ100で受信した反射信号を一括で較正した例を示す図である。図5に示したような部分円錐の反射体5bを利用して、6つのアンテナ13を円弧上配置したRFモジュールセンサ100を走査しながら、各RFモジュールセンサ100での反射波を受信した結果である。
その走査時における各RFモジュールセンサ100での歪補正処理前の受信特性は、図8(a)に示すような歪を含んだ特性であった。一方、以上説明したアレイ状のRFモジュールセンサ100で一括取得した受信特性に対して歪補正処理を実施した結果、図8(b)に示す結果を得ることができ、オフセット除去及び歪補正の実現を確認できる。
以上より、RFモジュールセンサ100の受信特性を個々に取得せずに、アレイ上に並べた状態で個々の受信特性を一括で取得できる。これは、1つのRFモジュールセンサ100を1回走査することをアレイ数(N個)分繰り返し実施することに対して、RFモジュールセンサ100をN個並べた状態で1回の走査で各RFモジュールセンサ100の受信特性を取得するが可能であることを意味し、アレイセンサでの受信特性の一括取得により、取得時間を1/Nに短縮することが可能であることを示している。
また、RFモジュールセンサ100をアレイ化し、装置の筺体等に搭載した場合において、再度、個々のRFモジュールセンサ100の受信特性を取得しようとした場合、アレイセンサをセンサ筐体から取り外し、個々のRFモジュールセンサを取り外して、個々の受信特性データを再取得することになるので、多くの作業時間を要するという課題がある。しかし、本手法を用いることにより、センサ筐体内にアレイセンサを搭載したまま、かつ、一回の走査でRFモジュールセンサ100個々の受信特性データを取得することが可能となり、作業時間の短縮に貢献する。
(レーダ信号処理後のデータのアレイ補正について)
次に、レーダ信号処理後のデータのアレイ補正処理について説明する。本電磁波イメージング装置1において、近傍領域を対象とした撮像では、サブミリメートルからミリメートルオーダの微細な形状変化を捉えることが可能な受信感度があるため、対象物3の表面形状に大きな変化がある場合、アレイセンサの反射信号強度が大きく変化する。
仮に、対象物3の表面形状が変化し、かつ、微細な形状変化が含まれる場合には、その表面形状変化による信号変化と、その微細な形状変化による信号変化とが重畳して受信される。
このような場合、大きな表面形状変化による信号変化が濃度レンジ(ダイナミックレンジ)を支配するため、微細な形状変化による信号変化が埋もれてしまい、微細な形状変化を捉えることが困難となる。
また、アレイセンサのばらつきが要因でアレイセンサ間の反射信号のダイナミックレンジに差異が生じると撮像結果に著しい像劣化が生じてしまい、対象物3の微細な形状変化を認識することが難しくなる。
一方、遠方領域の撮像ではアレイセンサの性能が対象物3によらず一定であることから、非特許文献2で開示されたアレイばらつき低減方法が有効であるが、近傍領域ではアレイセンサの性能が撮像位置の対象物3に影響するため、同様の手法を適用することはできない。
従って、対象物3に生じている微細な形状変化を捉えるため、近傍領域でのセンサアレイのダイナミックレンジ均等化手法(アレイ補正)を導入する。反射信号には、走査距離に対して微小変化する高周波信号と、滑らかに変化する低周波信号とが含まれている。
そこで、微細な形状変化は高周波信号として表現されることから、微細な形状変化を捉えたい場合には、低周波信号を取り除けばよい。ただし、低周波信号はどのような波形になるのかを事前に把握できず、取得したデータを分析することによって低周波信号を知ることができる。
図9は、アレイ補正処理を説明する図である。本アレイ補正は、4つの処理手順で構成される。
最初に、画像処理部93は、図9(a)に示すデータ取得処理において、走査距離に対する、アレイセンサで受信した反射信号、その反射信号を歪補正した信号、又は、その補正した信号にレーダ信号処理部92でレーダ信号処理した信号をメモリ600から取得する。なお、どの信号を取得するかは任意である。
次に、図9(b)に示すデータ分割処理において、走査距離方向に沿って、信号データD(x,y)(x:走査距離、y:反射信号レベル)を、複数の小区分の信号データΔD(x,y)(k:分割数(0〜N)、i:k×n×0.5+1,…,k×n×0.5+n、n:小区分内のデータ数)に分割する。ここでは、分割された小区分内の領域がその小区分内のデータの半数分だけ重なるように領域を取っている。
次に、図9(c)に示すオフセット関数(近似関数)導出処理において、各小区分内の信号データΔDに対し、一般多項式関数の最小二乗近似などを利用して、走査距離に関する、低周波信号に一致する近似関数をオフセット関数(f(x)=Σj=0〜m)(a:係数、j:次数)として導出する。一般多項式の次数は低次から順に増やしていき、残差が一定の閾値よりも小さくなる次数を採用することで、複雑なオフセット信号波形に一致させることが可能となる。
最後に、図9(d)に示すオフセット除去処理において、分割された全ての各小区分内の信号データΔDから上記オフセット関数より求まるオフセット成分f(x)を取り除き(すなわち、低周波信号成分を除去)、補正データSとして出力する。具体的には、信号データΔDの各データ点についてオフセット関数f(x)の値を差分する。
以上より、低周波信号成分が取り除かれることから、アレイセンサ間で生じるダイナミックレンジの違いにより微細な形状変化の認識が劣化することを防止できる。
以下、被覆カバー、壁紙、タイルなどで隠匿された曲面状のコンクリートひび割れの原理実験結果について説明する。コンクリート表面には、図10左に示すように、アレイセンサで使用する波長よりも十分小さい幅のひび割れが生じている。具体的には、0.026波長、0.051波長、0.077波長のひび割れ幅を有している。
そのコンクリート表面を被覆し、ひび割れ方向の曲面状にRFモジュールセンサ100を並べ、ひび割れと直交する方向に走査させることによる、ひび割れを直接目視できない状態下での撮像実験を行った。
その走査による撮像結果が図10右に示す取得像である。縦縞は、RFモジュールセンサ100のダイナミックレンジの違いが濃淡として表現されたものである。また部分的に白く表示されている部分などは、表面形状が凹凸している箇所であり、RFモジュールセンサ100とコンクリート表面との距離が変化したことにより反射信号強度が大きく変動している。このような画像では、微小幅ひび割れが発生していることを把握することは困難である。
一方、その取得像に対して、ダイナミックレンジ均等化手法(アレイ補正)を適用した撮像結果を図11に示す。ダイナミックレンジ均等化手法(アレイ補正)の適用により、図10右に示した取得像からひび割れ像を抽出することが可能であることが把握できる。なお、図11には、上段より、歪補正部91での出力結果、レーダ信号処理部92での出力結果、画像処理部93でのダイナミックレンジ均等化手法(アレイ補正)および特徴量抽出(ひび割れ抽出)の出力結果を示している。なお、レーダ信号処理部92で行う具体的画像処理方法については、特開2011−39690号広報に開示されているため、ここでの説明は省略する。
以上より、本実施の形態に係る電磁波イメージング装置によれば、コンクリート構造物の表面付近に生じる微細な形状をリアルタイムかつ非破壊で、従来よりも高分解能に可視化することができる。
すなわち、本実施の形態によれば、アレイ状に配置され、撮像対象である対象物3にRF信号を送信し、その対象物3で反射した反射信号を受信する複数のRFモジュールセンサ100を備えるので、モノスタティック計測方式が実現されることから、広大な領域をまとめて撮像でき、撮像時間の短縮や撮像の高速化を実現できる。
また、本実施の形態によれば、そのようにRFモジュールセンサ100が送信回路と受信回路とを一体化しているので、RFモジュールを任意に配置する自由度を有し、様々な表面形状の対象物3に対応できる。また、RFモジュールセンサ100の数を必要に応じて容易に増減することや、RFモジュールセンサ100の小型・軽量化を実現できる。
また、本実施の形態によれば、そのRFモジュールセンサ100は、送受信用に用いるアンテナ13と、そのアンテナ13にRF信号を給電するRF信号発生器11と、そのアンテナ13で受信した反射信号の90度位相を変化させるπ/2移相器16と、送信信号と反射信号とをミキシングする第1のミキサ15aと、送信信号と位相変化後の反射信号とをミキシングする第2のミキサ15bと、を備えるので、直交検波方式が実現されることから、強度と位相情報を用いたレーダ信号処理を適用することができ、送受信アンテナと撮像対象間の距離を送信信号の10波長以下に近づける近接イメージングにおける分解能の向上や被写界深度の改善を実現できる。
また、本実施の形態によれば、複数のRFモジュールセンサ100のうちいずれか1つを選択するので、各RFモジュールセンサ100を間欠動作可能となることから、各RFモジュールセンサ100から出力される送信信号の干渉を防止し、安定した受信を確保できる。
また、本実施の形態によれば、イメージング処理する前に、測定データに歪補正係数を演算させるので、各RFモジュールセンサ100での受信特性のばらつきを補償(歪の低減)し、高精度な直交検波を実現できる。これにより、後段のレーダ信号処理部92による高分解能な像再構成が可能となり、従来よりも高解像度な像を表示できる。
また、本実施の形態によれば、歪補正係数を事前計算して歪補正係数データ記憶部1102に記憶しておき、それを利用するので、これまでに個々に実施しなければならなかった歪補正係数の取得を複数のRFモジュールセンサ100に対して適用できることから、一括で短時間に歪補正係数を取得できる。また、センサアレイの故障・不具合によりRFモジュールセンサ100数を交換する場合や高速化のためにRFモジュールセンサ100数を増加させる場合、又は、使用環境(例えば、温度や湿度)が大きく異なる場合等では、歪補正係数のデータベースを更新する必要があるが、本実施の形態で説明した較正方法を用いることによって容易に短時間で実施できる。
また、本実施の形態によれば、測定時の温度に対応する歪補正係数を用いるため、各RFモジュールセンサ100での受信特性のばらつきをより適切に補償できる。
また、本実施の形態によれば、走査距離に対する反射信号を取得し、取得した全ての測定データを所定の走査距離区間で分割し、分割後の測定データから走査距離に関する近似関数(オフセット関数)を導出して、分割後の全ての小区分の信号データの各データ点についてオフセット関数の値を差分するため各画素のダイナミックレンジが均等化され、表面形状による大きな信号変化に埋もれてしまい表現されにくかった微細な形状変化による微小信号変化を捉えることが可能になり、導入前よりも微細形状変化の認識度を大幅に向上できる。また、対象物の特徴量を用いた特徴抽出への負荷が小さくなり特徴抽出の精度が向上する。
また、本実施の形態によれば、変調器12は、ショットキーバリアダイオードを用いて構成されるため、数nS程度まで対応可能なことから、変調器でのオンオフ制御の高速動作が可能となり、それゆえ、RFモジュールセンサ100からの出力制御を高速かつ安定に動作させることができる。
また、本実施の形態によれば、歪補正係数は、平板状又は円錐状の反射体との間の距離を変化させながら取得した測定データを用いて事前計算されるので、一度にかつ短時間でまとめて送受信モジュールの受信特性を取得できる。
1…電磁波イメージング装置
3…対象物
5a、5b…反射体
100…RFモジュールセンサ
11…RF信号発生器
12…変調器
13…アンテナ
14…増幅器
15a…第1のミキサ
15b…第2のミキサ
16…π/2移相器
200…RFモジュールセンサ切換回路
21…第1の切換器
22…第2の切換器
23…第3の切換器
300…RFモジュールセンサ選択信号生成器
400…変調信号生成器
500…ベースバンド回路
51a、51b…フィルタ
52a、52b…PSD(位相検波器)
53a、53b…A/D変換器
600…メモリ
700…温度計
800…走査距離計
900…CPU
91…歪補正部
92…レーダ信号処理部
93…画像処理部
1000…表示器
1100…データベース
1101…選択順番データ記憶部
1102…歪補正係数データ記憶部
1101…対象物特徴量データ記憶部
S101〜S103、S201〜S202…処理ステップ

Claims (8)

  1. アレイ状に配置され、撮像対象に電磁波を送信し、当該撮像対象で反射した反射信号を受信する複数の送受信モジュールと、
    前記反射信号の同相信号及び直交信号を取得するベースバンド回路と、
    前記同相信号及び前記直交信号を測定データに用いて前記撮像対象をイメージング処理する画像処理部と、を備え、
    前記送受信モジュールは、
    送受信アンテナと、
    前記送受信アンテナに前記電磁波による送信信号を給電する信号発生器と、
    前記送受信アンテナで受信した反射信号の位相を変化させる移相器と、
    前記送信信号と前記反射信号とを乗算する第1のミキサと、
    前記送信信号と前記位相変化後の反射信号とを乗算する第2のミキサと、
    を備えることを特徴とする電磁波イメージング装置。
  2. 変調信号を生成する変調信号生成器と、
    前記複数の送受信モジュールのうちいずれか1つを選択する切換器と、を更に備え、
    前記送受信モジュールは、
    前記変調信号により前記送信信号を強度変調し、前記変調信号が入力されない場合に前記送信信号を前記送受信アンテナに出力しない変調器を更に備えることを特徴とする請求項1記載の電磁波イメージング装置。
  3. 前記送受信モジュールの受信特性歪を補正する歪補正係数を記憶する歪補正係数データ記憶部を更に備え、
    前記画像処理部は、
    前記イメージング処理する前に、前記測定データに前記歪補正係数を演算させる歪補正部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波イメージング装置。
  4. 前記歪補正係数データ記憶部は、前記歪補正係数を測定温度に対応付けて記憶し、
    前記歪補正部は、
    測定時の温度に対応する歪補正係数を用いて前記演算を行うことを特徴とする請求項3記載の電磁波イメージング装置。
  5. 前記画像処理部は、
    走査距離に対する前記測定データを取得して、前記取得した全ての測定データを所定の走査距離区間で分割し、前記分割後の測定データから走査距離に対する測定データの大きな変化を表す低周波成分信号と一致する近似関数を導出して、前記分割後の全ての測定データの各データ点について前記近似関数の値を差分するアレイ補正部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁波イメージング装置。
  6. 前記変調器は、
    ショットキーバリアダイオードを用いて構成されることを特徴とする請求項2記載の電磁波イメージング装置。
  7. 前記歪補正係数は、
    平板状又は円錐状の反射体と送受信アンテナとの間の距離を変化させながら取得した測定データを用いて事前計算されることを特徴とする請求項3又は4記載の電磁波イメージング装置。
  8. アレイ状に配置され、撮像対象に電磁波を送信し、当該撮像対象で反射した反射信号を受信する複数の送受信モジュールと、
    前記反射信号の同相信号及び直交信号を取得するベースバンド回路と、
    前記同相信号及び前記直交信号を測定データに用いて前記撮像対象をイメージング処理する画像処理部と、を備え、
    前記送受信モジュールは、
    送受信アンテナと、
    前記送受信アンテナに前記電磁波による送信信号を給電する信号発生器と、
    前記送受信アンテナで受信した反射信号の位相を変化させる移相器と、
    前記送信信号と前記反射信号とを乗算する第1のミキサと、
    前記送信信号と前記位相変化後の反射信号とを乗算する第2のミキサと、
    を備えた電磁波イメージング装置で行う電磁波イメージング方法において、
    前記画像処理部は、
    前記取得した全ての測定データを所定の走査距離区間で分割するデータ分割ステップと、
    前記分割後の測定データから走査距離に対する測定データの大きな変化を表す低周波成分信号と一致する近似関数を導出する近似関数導出ステップと、
    前記分割後の全ての測定データの各データ点について前記近似関数の値を差分するオフセット除去ステップと、
    を有することを特徴とする電磁波イメージング方法。
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