JP5455429B2 - シール付き軸受 - Google Patents
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Description
しかし、従来技術では潤滑油の影響やシール摺動面の状態によっては、シールの摩耗に時間を要する状況が考えられる。この場合、軸受内部に潤滑油が流れ込まないため、軸受に封入した初期潤滑用のグリースだけでは潤滑不足で軸受に不具合が生じることが懸念される。
前記シール部材は、基端がいずれか一方の軌道輪に固定され、シールリップ部が他方の軌道輪に接する接触シールであって、少なくともシールリップ部の先端の材質が、軸受を回転状態で使用することで、摩耗して非接触となり、前記シールリップ部の先端を摩耗させてラビリンスすきまを生成する高摩耗材であり、前記ラビリンスすきまは、潤滑油は通過させるが異物は通過できず、前記シールリップ部を先狭まりの断面形状に設定したことを特徴とする。
前記「高摩耗材」とは、平均的なゴムに比べて摩耗が生じ易い材質である。
(1)早期にシールトルクが低減される。
(2)従来品に対して、早期に軸受の自己昇温が下がる。
(3)早期に軸受の自己昇温が下がることで、従来用いていた潤滑油よりも更に低粘度の潤滑油を選択できる。
(4)トランスミッション全体の損失低減が見込める。
(5)早期に軸受内部に潤滑油を供給することができる。
この発明における第2の発明のシール付き軸受は、一対の軌道輪の対向する軌道面間に複数の転動体が介在し、前記一対の軌道輪間に形成される軸受空間を密封するシール部材を備えたシール付き軸受において、前記シール部材は、基端がいずれか一方の軌道輪に固定され、シールリップ部が他方の軌道輪に接する接触シールであって、少なくともシールリップ部の先端の材質が、軸受を回転状態で使用することで、摩耗して非接触となり、前記シールリップ部の先端を摩耗させてラビリンスすきまを生成する高摩耗材であり、前記ラビリンスすきまは、潤滑油は通過させるが異物は通過できず、前記シールリップ部の先端面を、軌道輪のシールリップ摺接面に対して片側へ傾いた傾斜面としたことを特徴とする。
前記高摩耗材をゴム材または樹脂材としても良い。
前記シール部材が、環状の芯金とこの芯金に一体に固着された弾性部材とでなり、この弾性部材は、前記芯金に固着されて芯金の表面を覆う覆い部と、前記芯金の先端よりも突出した厚肉部と、この厚肉部の先端から突出した前記シールリップ部とを有し、前記シールリップ部は、前記厚肉部に比べて薄肉としても良い。
前記シール部材を加硫成型しても良い。
前記シールリップ部を、対向する軌道輪に対してラジアル方向に接触する形状としても良い。
前記芯金7は、外径側から順次、円筒部7aと、立板部7bと、傾斜部7cとを有する。立板部7bが内外輪1,2の端面よりも軸受の軸方向内側(図2では左側)で同端面と略平行に配置される。この立板部7bの基端に、円筒部7aが繋がり、これら立板部7bと円筒部7aとで断面L字形状を成す。円筒部7aの主に外周面に設けられる弾性部材8の環状部9が、外輪2のシール取付溝2bに嵌合されて固定される。立板部7bの先端には、内径側に向かうに従って前記軸方向内側にやや傾斜する傾斜部7cが繋がっている。
傾斜覆い部11のうち傾斜部7cの内表面を覆う部分(「内面覆い部分」と称す)は、同内表面に沿って、内径側に向かうに従って前記軸方向内側にやや傾斜する。傾斜覆い部11のうち傾斜部7cの外表面を覆う部分(「外面覆い部分」と称す)は、前記覆い部10に段差なく同一面を成して繋がっている。傾斜覆い部11の内径側先端に、繋ぎ部12を介して芯金7の先端よりも突出した厚肉部14、及びシールリップ部15が設けられる。これら繋ぎ部12、厚肉部14、シールリップ部15も弾性部材8の一部を成す。
図2、図3に示すように、弾性部材8は、前記覆い部10と、厚肉部14と、この厚肉部14から突出したシールリップ部15とを有する。シールリップ部15は、厚肉部14に比べて薄肉とし、基端部分16と、中間部分17と、先端部分18とを有する。このシールリップ部15のうち少なくとも先端部分18を含む部分の材質が、軸受を回転状態で使用することで、摩耗して非接触となるか、または参考提案例として接触圧が零と見なせる程度の軽接触となる高摩耗材である。高摩耗材は、シールリップ部15の先端部分18のみ、または先端部分18及び中間部分17に設けても良いし、基端部分16、中間部分17および先端部分18全体にわたって設けても良い。この高摩耗材は、軸受使用温度や潤滑油との相性により特定の種類のものが選択される。前記高摩耗材を構成する摩耗し易い材料として高摩耗ゴム材を用いている。ただし、摩耗し易い材料の他の例として樹脂材を用いても良い。この高摩耗材を構成する材料としては、上記の他に固体潤滑材や、不織布、軟鋼等であっても良い。弾性部材8における他部は通常のゴム材からなる。
図4に示すように、シール部材5を成形するシール金型19(以下、単に金型19と称す)は、上型20と下型21とを有する。図4(A)に示すように上型20と下型21とを組合わせた状態で、シール部材5を成形するキャビティ13が形成され、このキャビティ13に弾性部材8の材料を注入するゲートが金型19に設けられる。
図4(B)に示すように、シールリップ部15の先端部分18は、金型19の合わせ面であるパーティングラインPLに配置されて成形される。
ところで、シールリップ部15のゴム合わせ位置は、寸法精度のばらつきがある場合があるが、軸受回転によりシールリップ部15のゴム合わせ位置を起点としたゴム摩耗を、促進することができる。したがって、規定のラビリンスすきまを形成し得る。それ故、金型19の少なくともシールリップ部15を成形するための精度を、高精度化する必要がなくなる。よって、金型19のコストおよび補修費用の低減を図ることができる。このため、製品の製作コスト低減を図ることが可能となる。
この金型19のパーティングラインPLを、シールリップ部15における先端部分18に設定することで、ゴム合わせ位置を起点としたゴム摩耗を促進することが可能となり、また金型19の割り位置や形状が簡素化できるため、シール部材5の生産効率も向上する。また、図4(C)に示すように上型20、下型21を開いた状態で、成形後のシール部材5を突出する図示外の突出機構等をこの金型19に設けても良い。
同図に示すように、従来品に比べて、実施形態のシール付き軸受では、回転トルクが大幅に低減されている。その理由は、回転トルクの要因の内訳として、従来品ではグリースによる抵抗、保持器せん断抵抗+転がり抵抗、およびシールトルクが挙げられているのに対して、実施形態のシール付き軸受ではシールトルクの要因が排除されることによる。
(1)早期にシールトルクが低減される。
(2)従来品に対して、早期に軸受の自己昇温が下がる。
(3)早期に軸受の自己昇温が下がることで、従来用いていた潤滑油よりも更に低粘度の潤滑油を選択できる。
(4)トランスミッション全体の損失低減が見込める。
(5)早期に軸受内部に潤滑油を供給することができる。
このシール付き軸受においても、軸受を回転状態で使用することで、シールリップ部15の先端を摩耗させ、微小なラビリンスすきまδ2(図9(B))を生成させ得る。このすきまδ2は異物よりも小さいため、潤滑油は通過させるが異物は通過できない。そのため、軸受内部への異物の侵入防止を図り、シールトルクを低減できる。
図7(A)は同軸受におけるシール部材の金型を型締めした状態の断面図、図7(B)は同金型の要部拡大断面図、図7(C)は同金型の上型、下型を開いた状態を表す断面図である。
金型19AのパーティングラインPLを、シールリップ部15における先端部分18に設定することで、ゴム合わせ位置を起点としたゴム摩耗を促進することが可能となり、また金型19Aの割り位置や形状が簡素化できるため、シール部材5の生産効率も向上する。
図6のラジアル方向に接触するシール付き軸受において、内輪外径面に図1と同様の内輪シール溝6を設け、この内輪シール溝6の外周面にシールリップ部15の先端部分18を接触させて摩耗させる構成にしても良い。
特に、シールリップ部15の先端面15aを前記のように傾斜面としたため、軸受内部への異物侵入を防止し、且つ、潤滑油やシール摺接面1sの状態に影響されず、安定してシールトルクを低減することができる。
上記各実施形態における厚肉部14およびシールリップ部15を無くし、芯金7における立板部7bの内外表面を覆う覆い部を設け、この覆い部を先端側に向かうに従って先狭まりとなる断面形状として、この先端部分をシールリップ部としても良い。
シール付き軸受において、球殻状部4aの外周面に凸条4bのない保持器を適用することも可能である。この場合にも、各実施形態と同様の作用効果を奏する。
シール付き軸受を外輪回転タイプとした場合、内輪の外周面にシール部材を嵌合固定し、本発明特有のシールリップ部を外輪シール溝に接触させて摩耗させ得る。この発明のシール付き軸受をスラスト軸受に適用しても良い。
シール付き軸受を、トランスミッション以外に用いても良い。
2…外輪
1a,2a…軌道面
3…転動体
5…シール部材
15…シールリップ部
18…先端部分
19…金型
PL…パーティングライン
Claims (11)
- 一対の軌道輪の対向する軌道面間に複数の転動体が介在し、前記一対の軌道輪間に形成される軸受空間を密封するシール部材を備えたシール付き軸受において、
前記シール部材は、基端がいずれか一方の軌道輪に固定され、シールリップ部が他方の軌道輪に接する接触シールであって、少なくともシールリップ部の先端の材質が、軸受を回転状態で使用することで、摩耗して非接触となり、前記シールリップ部の先端を摩耗させてラビリンスすきまを生成する高摩耗材であり、前記ラビリンスすきまは、潤滑油は通過させるが異物は通過できず、前記シールリップ部を先狭まりの断面形状に設定したことを特徴とするシール付き軸受。 - 請求項1において、前記シールリップ部の先端部分の断面形状を、このシールリップ部における中間部分よりも狭まり率が大きい先狭まり形状としたシール付き軸受。
- 一対の軌道輪の対向する軌道面間に複数の転動体が介在し、前記一対の軌道輪間に形成される軸受空間を密封するシール部材を備えたシール付き軸受において、
前記シール部材は、基端がいずれか一方の軌道輪に固定され、シールリップ部が他方の軌道輪に接する接触シールであって、少なくともシールリップ部の先端の材質が、軸受を回転状態で使用することで、摩耗して非接触となり、前記シールリップ部の先端を摩耗させてラビリンスすきまを生成する高摩耗材であり、前記ラビリンスすきまは、潤滑油は通過させるが異物は通過できず、前記シールリップ部の先端面を、軌道輪のシールリップ摺接面に対して片側へ傾いた傾斜面としたことを特徴とするシール付き軸受。 - 請求項3において、前記シールリップ部の先端面の最先端と、この先端面に隣接する面との間でなす角度を、鋭利な断面形状としたシール付き軸受。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記高摩耗材をゴム材または樹脂材としたシール付き軸受。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記シール部材が、環状の芯金とこの芯金に一体に固着された弾性部材とでなり、この弾性部材は、前記芯金に固着されて芯金の表面を覆う覆い部と、前記芯金の先端よりも突出した厚肉部と、この厚肉部の先端から突出した前記シールリップ部とを有し、前記シールリップ部は、前記厚肉部に比べて薄肉としたシール付き軸受。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記シール部材を加硫成型したシール付き軸受。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記シールリップ部を、対向する軌道輪に形成されたシール溝の内面に対してアキシアル方向に接触する形状としたシール付き軸受。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記シールリップ部を、対向する軌道輪に対してラジアル方向に接触する形状としたシール付き軸受。
- 請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記シール部材は金型により成形されるものであり、前記シールリップ部の先端部分が、前記金型の合わせ面であるパーティングラインに配置されて成形されるシール付き軸受。
- 請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、自動車のトランスミッションの歯車装置の駆動軸に用いられる転がり軸受であるシール付き軸受。
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