JP2008008408A - クリープ防止転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来のクリープ防止転がり軸受における急な加減速によるスピン回転にも対応し、シールリングが摩耗に強く、粘性潤滑剤の保持力にも優れ、よってクリープ防止性ばかりでなく、スピンによる摩耗耐久性にも優れており、シールリング間の粘性潤滑剤の保持性が長期間優れているクリープ防止転がり軸受とすることである。
【解決手段】転がり軸受の外輪1の外周面1aに、間隔を広く開けて2筋の周溝2を形成し、これら周溝2の内部に弾性シールリング3を嵌め合わせ、弾性シールリング3として2つのリング部3a、3bがそれぞれ独立したOリングを採用し、Oリング同士を並列に隣接させてOリング集合体として、2つのリング部の間に周溝4が形成されるようにする。
【選択図】図1

Description

この発明は、転がり軸受を隙間嵌めによって取り付ける使用状態においてクリープが防止されるクリープ防止転がり軸受に関する。
一般に、ハウジングに対し、転がり軸受の外輪の外周面または内輪の内周面に弾性シールリングを介して隙間嵌めによって取り付けるクリープ防止転がり軸受が知られている。
図4に示すように、軸受外輪10がハウジング(軸受箱)11に正の隙間で嵌め合わされているときに起こるクリープ現象について説明すると、軸受外輪10に回転荷重(図中、白抜きの太い矢印)が加わると、外輪外周面10aはハウジング内周面11aに内接しながら転がり運動する。
図4では、外輪上の点A1とハウジング上の点A2は接しているが、所定時間後にはB1点とB2点が接するようになり、1回転後には点A1と点A2は重ならず、外輪外周の長さとハウジング内周の長さの差だけ点A1は点A2より荷重の回転方向(図中、黒線の矢印)に対して遅れることになる。この現象は「クリープ」と称され、回転荷重1回転につきクリープする量は、外輪外径とハウジング内径の差をδとすれば−πδで表される。
このようなクリープ現象は、転がり現象とも解されるが、外輪とハウジングの弾性変形を考慮すると、局部的な滑りも生じており、その際に外輪外周面10aおよびハウジング内周面11aを摩耗して損傷するばかりでなく、摩耗粉が軸受内へ侵入して軌道面も摩耗損傷する場合がある。
このようなクリープの不利を防止するために、軸受外輪外周面または内輪内周面に少なくとも2筋の周溝を設け、その周溝にそれぞれリング状環を嵌め合わせ、2筋の周溝の間に粘性潤滑剤を付着させて軸受外輪または内輪を、ハウジングが流体薄膜を介したスクイーズ(squeeze)効果によって支えるようにし、クリープおよび摩耗損傷を防止する手段が知られている(特許文献1)。
因みに、スクイーズ(squeeze)効果によれば、上記の軸受が図4に示す状態でハウジングに組込まれているとき、外輪10はハウジング11に対して荷重の方向に偏心する。
しかし、外輪外周面10aとハウジング内周面11aおよびリング状弾性体で囲まれた部分に粘性潤滑剤が封入されていると、外輪外周面がハウジング内周面に急速に接近し始めても薄いフィルム状の粘性潤滑剤は速やかに流動できないため、大きな圧力を生じてスクイーズ(squeeze)効果を奏する。この圧力が軸受荷重とつりあえる条件であれば、外輪10はハウジング11と接触することなく、油膜によって支えられることになる。
実公昭52−8896号公報
しかし、上記した従来のクリープ防止転がり軸受では、ハウジングとの締め代が不足することなどにより、軸回転と逆方向の外輪回転によって起こるクリープおよびその摩耗損傷を防止するには効果があるが、それとは逆方向の急激な軸回転速度の増大により同じ方向に外輪が回転しようとする場合には、スクイーズ(squeeze)効果は得られない。
その場合は、軸の回転と外輪の回転は同一軸で同方向に回転(スピンまたは共回り)しようとするため、Oリングのハウジングとの摩擦力だけがスピンまたは共回りの抑止力として作用し、急な加減速によりスピンが繰り返し起こると、Oリングが摩耗して、粘性潤滑剤の保持力も弱まり、前記したクリープ防止機能さえ損なわれるという問題点がある。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、従来のクリープ防止転がり軸受における急な加減速によるスピン回転にも対応し、シールリングが摩耗に強く、粘性潤滑剤の保持力にも優れ、よってクリープ防止性ばかりでなく、スピンによる摩耗耐久性にも優れており、シールリング間の粘性潤滑剤の保持性が長期間優れているクリープ防止転がり軸受とすることである。
上記の課題を解決するために、この発明においては、転がり軸受の外輪の外周面または内輪の内周面に複数の周溝を形成し、これら周溝内にそれぞれ弾性シールリングを嵌め合わせて設けたクリープ防止転がり軸受からなり、前記弾性シールリングは同軸に複数のリング部を有し、これら複数のリング部の間に周溝を介在させた弾性シールリングであるクリープ防止転がり軸受としたのである。
上記したように構成されるこの発明に係るクリープ防止転がり軸受は、同一の軸に並列させて複数のリング部を有する弾性シールリングを設けたので、この弾性シールリングが外部のハウジングや軸受箱に対して摩擦接触する面積を必要に応じて効果的に増大させることができる。
そのため、弾性シールリングの接触面積を増大させると、急激な軸回転速度の増大により同方向に外輪が回転しようとする場合に、スピンまたは共回りの抑止力として接触面積の大きな弾性シールリングが効果的にその摩擦力を作用させる。
これによりOリングは全体として摩耗し難くなり、粘性潤滑剤すなわち油膜の保持力も高まり、軸受のクリープ防止機能も安定して維持できる。
また、弾性シールリングは複数のリング部からなるため、転がり軸受の外輪の外周面または内輪の内周面における複数の周溝の間に粘性潤滑剤を塗布した使用状態において、一つのリング部の一部が破損しても全てのシール機能が損なわれず、粘性潤滑剤の漏出が起こり難い耐久性に優れた軸受になる。
このような機能を有する弾性シールリングの構成としては、複数のシールリング部を構成する2以上のOリングを並列に隣接させたOリング集合体からなる弾性シールリングである構成を採用することができる。
この発明は、転がり軸受の外輪の外周面または内輪の内周面に形成した複数の周溝に、複数のリング部を有し、これら複数のリング部の間に周溝を介在させた弾性シールリングを嵌めたクリープ防止転がり軸受としたので、複数の周溝の間に粘性潤滑剤を塗布した使用状態において、スピンまたは共回りの抑止力として接触面積の大きな弾性シールリングが効果的にその摩擦力を作用させ、急な加減速によるスピン回転にも耐えて弾性シールリングが摩耗に強く、粘性潤滑剤の保持力にも優れるという利点がある。
また、そのようなクリープ防止転がり軸受は、弾性シールリングによってシールリング間の粘性潤滑剤の保持性が安定し、また長期間の耐久性にも優れており、スピンによる摩耗耐久性ばかりでなく、クリープの防止性も優れているという利点もある。
この発明のクリープ防止転がり軸受の実施形態を以下に添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態のクリープ防止転がり軸受は、転がり軸受の外輪1の外周面1aにできるだけ間隔を広く開けて2筋の周溝2を形成し、これら周溝2の内部に弾性シールリング3を嵌め合わせたものであり、弾性シールリング3として2つのリング部3a、3bがそれぞれ独立したOリングからなり、Oリング同士を同軸上に並列状に隣接させてOリング集合体とし、これら2つのOリング同士の接触によりV溝状の周溝4が形成されるようにしている。
なお、図中の符号5は内輪、6は保持器、7は球状の転動体(ボール)、8は非接触シールを示している。
弾性シールリング3に代わる他の形態のものとしては、図2(a)に示すように2つのOリングが融合した状態でリングの径方向断面がアレイ型の弾性シールリング12、図2(b)に示すように上半分は図2(a)の上面と同形状であるが、その底部には空隙を有しない底部矩形の弾性シールリング13、同図(c)のようにリングの径方向断面がH型であって2つのリング部を有する弾性シールリング14、同図(d)のようにリングの径方向断面が凹型であって上部のみに2つのリング部を有する弾性シールリング15などが挙げられる。断面H型の弾性シールリング14は、特に材料力学的にバンドの強度が高いものになる点で有利である。
これらはいずれもリング部の間に周溝12a、13a、14a、15aを形成している。そして、このような周溝には、後述する使用状態で外輪の外周面などに塗布された潤滑油を保持することができる。これにより、シール性の向上と共に、クリープ防止性をさらに高めることができる。
なお、2つのリング部を有するもののみを図示したが、弾性シールリングの他の形態として、3以上のリング部を有する一体のものであってもよく、または3以上の複数のシールリングの集合体であってもよく、前者の場合には複数のリング部の間に周知形状の周溝が形成されているものである。
このような形態の弾性シールリング3は、予め外輪の外周面または内輪の内周面に形成した周溝に嵌め合わせた状態で設ける。その場合、成型した弾性シールリング3を周溝2に嵌め入れてもよいが、周溝2を成型用の金型の一部に利用し、周溝2の開口部に上金型を被せ、この上金型に設けた1箇所または複数箇所のゲートから、溶融流動性を有する未硬化樹脂やゴム材料を注入し、好ましくは射出成型法その他の溶融成型法により弾性シールリング3を一体成形して設けてもよい。
この発明に用いる弾性シールリングの成形材料は、特に限定されるものではなく、周知のシール性のある樹脂やゴムを採用し、たとえば耐油性のあるゴム(ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴムなど)のほか、ナイロン(ポリアミド樹脂)やポリエーテルサルフォン、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など、単独の樹脂または2種以上の混合樹脂、熱可塑性エラストマーなどを用いたり、適宜に添加剤を配合した樹脂組成物を採用できる。
そして、図3に示すように、クリープ防止転がり軸受の外輪1の外周面1aにおける周溝2の間には、潤滑グリースなどの所要粘性の粘性潤滑剤17を塗布し層状に付着させている。
粘性潤滑剤17の具体例としては、防錆油などの粘性油や潤滑グリース等のように粘度を高めてある程度の厚みで油膜を形成できるように調製したものが好ましい。特に潤滑油に増ちょう剤を添加し、所要の粘度に高めた潤滑グリースは好適なものである。
上記のように構成される実施形態のクリープ防止転がり軸受は、複数のリング部を有する弾性シールリング3を採用することにより、外部のハウジング16などに対して弾性シールリング3が摩擦接触する面積を増大させている。
そのため、急激な軸回転速度の増大により、同方向に外輪が回転しようとするスピンまたは共回りの抑止力として、弾性シールリングの摩擦力が効果的に作用するものとなっている。
また、複数のリング部の間に潤滑油を保持する使用状態とすることにより、Oリングは、より摩耗し難くなり、それだけシール性も向上し、潤滑油膜の保持力も高まって、軸受は、そのクリープ防止機能を安定して維持できる。
また、弾性シールリングは複数のリング部からなるため、一つのリング部が破損しても全てのシール機能が損なわれないから、粘性潤滑剤の漏出が起こり難く、耐久性に優れたクリープ防止転がり軸受になる。
実施形態の径方向の要部断面図 弾性シールリングの他の形態を示す断面図 実施形態の使用状態を説明する径方向の要部断面図 軸受におけるクリープ現象の説明図
符号の説明
1 外輪
1a 外周面
2、4 周溝
3、12、13、14、15 弾性シールリング
3a、3b リング部
5 内輪
6 保持器
7 転動体
8 非接触シール
10 軸受外輪
10a 外輪外周面
11、16 ハウジング
11a ハウジング内周面
17 粘性潤滑剤

Claims (3)

  1. 転がり軸受の外輪の外周面または内輪の内周面に複数の周溝を形成し、これら周溝内にそれぞれ弾性シールリングを嵌め合わせて設けたクリープ防止転がり軸受からなり、前記弾性シールリングは同軸に複数のリング部を有し、これら複数のリング部の間に周溝を介在させた弾性シールリングであるクリープ防止転がり軸受。
  2. 弾性シールリングが、複数のシールリング部を構成する2以上のOリングを並列に隣接させたOリング集合体からなる弾性シールリングである請求項1に記載のクリープ防止転がり軸受。
  3. 転がり軸受の外輪の外周面または内輪の内周面における複数の周溝の間に粘性潤滑剤を塗布してなる請求項1又は2に記載のクリープ防止転がり軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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