JP2017057964A - シール付き転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】 外部からの油の浸入が抑えられてシールリップ部の摩耗が安定して行われ、かつ軸受空間への異物の侵入を防ぐことができるシール付き転がり軸受を提供する。【解決手段】 シール付き転がり軸受は、内輪1と外輪2との軸受空間Sを密封するシール部材5を備える。シール部材5は、シール部材本体8の外輪2に固定され、シール部材本体8の先端側に内輪1の外周面1bに接するラジアル接触の自己形成リップ部9を有する。自己形成リップ部9は、高分子材料からなり、軸受を回転状態で使用することで内輪1との接触部分9aが摩耗し、内輪1に対して非接触となるかまたは接触面圧が零と見なせる程度の軽接触となる。シール部材本体8の先端側に、内輪1の段面1cに接するアキシアル接触のオイルリップ部10が設けられている。【選択図】 図2

Description

この発明は、例えば、自動車のトランスミッション等に用いられるシール付き転がり軸受に関する。
例えば自動車のトランスミッションに用いられる転がり軸受において、低トルクを実現するために自己形成シールを採用したものが提案されている(例えば特許文献1)。自己形成シールは、予め締代を持った状態で軸受に組み込まれ、締代の大小に関わらず、軸受製造後の回転初期にシールリップ部を軌道輪(例えば内輪)の周面との摺動により摩耗させ、シールリップ部と軌道輪の周面との間に微小隙間を形成するようにしたシール部材のことである。シールリップ部における軌道輪の周面との接触部分は、摩耗が促進されるように高摩耗材からなっている。
特開2013−36493号公報
上記自己形成シールであるシール部材におけるシールリップ部の摩耗は、軸受の周囲に存在する潤滑油等の油の性状や温度によって大きく影響されるため、前記微小隙間が形成されるまでの時間にばらつきが出やすい。特に、シールリップ部と軌道輪の周面との間に潤滑油が浸入すると、シールリップ部と軌道輪の周面間の摩擦係数が小さくなり、微小隙間が形成されるまでの時間が長くなる。このため、予定の慣らし運転時間が経過しても、シール部材が軌道輪の周面に接触した状態のままとなり、低トルク化を実現することができないといった事態が生じる。なお、内輪と外輪間の軸受空間にグリースが充填されるが、このグリースは潤滑油に比べてシールリップ部の摩耗に与える影響が少ない。
上記のようにシールリップ部を軌道輪の周面にラジアル接触させるのではなく、シールリップ部を軌道輪の周面に対して角度を成す段面にアキシアル接触させたシール部材もある。しかし、このシールリップ部を軌道輪にアキシアル接触させたシール部材は、軸受のアキシアル方向の遊びにより、軌道輪とシールリップ部との間に隙間が生じ、この隙間から異物が内輪と外輪間の軸受空間に侵入する可能性がある。異物が軸受空間に侵入すると、軸受の短寿命につながる。
この発明の目的は、シールリップ部を回転初期に摩耗させる自己形成シールを用いたシール付き転がり軸受において、外部からの油の浸入が抑えられてシールリップ部の摩耗が安定して行われ、かつ軸受空間への異物の侵入を防ぐことができるシール付き転がり軸受を提供することである。
この発明の転がり軸受は、内輪と、外輪と、これら内輪および外輪の各軌道面間に介在する複数の転動体と、前記内輪と前記外輪間に形成される軸受空間を密封するシール部材とを備え、前記シール部材は、シール部材本体の基端が前記内輪と前記外輪のいずれか一方の軌道輪に固定され、前記シール部材本体の先端側に他方の軌道輪の円筒状周面に接するラジアル接触のシールリップ部である自己形成リップ部を有し、この自己形成リップ部は、高分子材料からなり、軸受を回転状態で使用することで前記他方の軌道輪との接触部分が摩耗し、前記他方の軌道輪に対して非接触となるかまたは接触面圧が零と見なせる程度の軽接触となるものであり、前記他方の軌道輪に、前記円筒状周面における前記軸方向外側の縁から前記軸受空間から遠ざかる方向に延びる段面が形成され、前記シール部材本体の先端側に前記段面に接するアキシアル接触のシールリップ部であるオイルリップ部が設けられていることを特徴とする。
この構成によると、他方の軌道輪の円筒状周面にラジアル接触する自己形成リップ部とは別に、この自己形成リップ部の軸方向外側の段面にアキシアル接触するオイルリップ部を有する。このため、オイルリップ部が、軸受の周囲に存在する潤滑油等の油が自己形成リップ部と他方の軌道輪の円筒状周面間に浸入することを防ぐか、または遅らせる。これにより、自己形成リップ部と他方の軌道輪の円筒状周面との間の摩擦係数の低下が抑えられ、自己形成リップ部が早期に摩耗し易くなる。自己形成リップ部の摩耗によって、自己形成リップ部と他方の軌道輪の円筒状周面との間に微小隙間が形成されることで、軸受が低トルクとなる。
自己形成リップ部は他方の軌道輪の円筒状周面にラジアル接触しているため、軸受のアキシアル方向の遊びがあっても、自己形成リップ部と他方の軌道輪の円筒状周面との間に大きな隙間が生じない。このため、軸受空間に異物が侵入することを防止できる。さらに、自己形成リップ部の軸方向外側にオイルリップ部が設けられているため、軸受空間への異物の侵入をより一層防止することができる。このため、軸受の長寿命化を図れる。
この発明において、軸受を未使用の状態で、前記自己形成リップ部の前記円筒状周面に対する接触面圧の方が、前記オイルリップ部の前記段面に対する接触面圧よりも高いのが好ましい。
自己形成リップ部は、軸受を未使用の状態では他方の軌道輪の円筒状周面に対して締代を持った状態となっている。他方の軌道輪の円筒状周面との間に微細な隙間が形成された時点では、他方の軌道輪に対して非接触となるかまたは接触面圧が零と見なせる程度の軽接触となるが、前記締代を小さく設定し過ぎると、製造誤差や組込み誤差によっては、軸受を未使用の状態ですでに自己形成リップ部が他方の軌道輪に対して非接触となっている可能性がある。そのため、軸受を未使用の状態においてある程度の締代があるように、自己形成リップ部の円筒状周面に対する接触面圧を設定する必要がある。一方で、オイルリップ部の段面に対する接触面圧を必要以上に高くすると、自己形成リップ部の摩耗が完了した後も軸受のトルクが高いままになる。これらの点を考慮すると、自己形成リップ部の円筒状周面に対する接触面圧を、オイルリップ部の段面に対する接触面圧よりも高くするのが良い。
この発明において、前記一方の軌道輪が前記外輪であり、前記他方の軌道輪が内輪であっても良い。逆に、前記一方の軌道輪が前記内輪であり、前記他方の軌道輪が外輪であっても構わない。
この発明において、潤滑方式がオイル潤滑であっても良い。
オイル潤滑であると、オイルリップ部を有することの効果が顕著に発揮される。また、オイル潤滑であると、オイル潤滑方式が基本である自動車のトランスミッション用の軸受に適する。
この発明の転がり軸受は、内輪と、外輪と、これら内輪および外輪の各軌道面間に介在する複数の転動体と、前記内輪と前記外輪間に形成される軸受空間を密封するシール部材とを備え、前記シール部材は、シール部材本体の基端が前記内輪と前記外輪のいずれか一方の軌道輪に固定され、前記シール部材本体の先端側に他方の軌道輪の円筒状周面に接するラジアル接触のシールリップ部である自己形成リップ部を有し、この自己形成リップ部は、高分子材料からなり、軸受を回転状態で使用することで前記他方の軌道輪との接触部分が摩耗し、前記他方の軌道輪に対して非接触となるかまたは接触面圧が零と見なせる程度の軽接触となるものであり、前記他方の軌道輪に、前記円筒状周面における前記軸方向外側の縁から前記軸受空間から遠ざかる方向に延びる段面が形成され、前記シール部材本体の先端側に前記段面に接するアキシアル接触のシールリップ部であるオイルリップ部が設けられているため、外部からの油の浸入が抑えられてシールリップ部の摩耗が安定して行われ、かつ軸受空間への異物の侵入を防ぐことができる。
この発明の一実施形態に係る転がり軸受の断面図である。 同転がり軸受のシール部材付近の拡大断面図である。 同シール部材の自己形成リップ部の摩耗の過程を示す説明図である。 図1ないし図3に示す転がり軸受をトランスミッションに用いた例の概略図である。
この発明の一実施形態を図1ないし図3と共に説明する。
図1に示すように、この転がり軸受は、軌道輪である内輪1および外輪2と、これら内輪1および外輪2の各軌道面1a,2a間に介在する複数の転動体3と、これら複数の転動体3を保持する保持器4と、内輪1および外輪2間に形成される環状の軸受空間Sの両端を密封する2つのシール部材5とを備えている。軸受空間Sにはグリースが初期封入される。この転がり軸受は、転動体3を玉とした深溝玉軸受であり、この例では内輪1を回転輪とし、外輪2を固定輪とした内輪回転タイプとしている。内輪1を固定輪とし、外輪2を回転輪とした外輪回転タイプとすることも可能である。
図1の部分拡大図である図2に示すように、前記シール部材5は、基端である外径端が外輪2の内周面に形成されたシール取付溝2bに嵌合固定される。軸受が未使用の状態では、シール部材5の先端側である内径端に設けられた自己形成リップ部9が内輪1の外周面1bにラジアル接触している。また、シール部材5には自己形成リップ部9の軸方向外側にオイルリップ部10が設けられており、このオイルリップ部10が内輪1の段面1cにアキシアル接触している。内輪1の段面1cは、内輪1の外周面1bにおける軸方向外側の縁から軸受空間Sから遠ざかる方向に延びる面である。
この例の場合、外輪2が請求項で言う「一方の軌道輪」であり、内輪1が請求項で言う「他方の軌道輪」である。また、内輪1の外周面1bが請求項で言う「他方の軌道輪の円筒状周面」である。
シール部材5は、環状の芯金6と、この芯金6に一体に固着される弾性部材7とを有する。これら芯金6および弾性部材7の大部分によりシール部材本体8が構成され、弾性部材7の残余の部分に、シールリップ部としての前記自己形成リップ部9およびオイルリップ部10が構成される。この例では、弾性部材7は、芯金6の立板部6cの内側面を除き芯金6の全体を覆うように設けられる。シール部材5は、例えば、ゴム材を加硫成形して形成され、この加硫成形時に金属製の芯金6が弾性部材7に接着される。
芯金6は、外径側から順に基端部6a、円筒部6b、立板部6c、傾斜部6dとなっている。立板部6cは、内輪1および外輪2の端面よりも軸方向内側で同端面と略平行に配置される。この立板部6cの外径端に円筒部6bの軸方向外側端が繋がり、円筒部6bの軸方向内側端に基端部6aが繋がっている。基端部6aは、円筒部6bに対して外径側に屈曲した形状である。立板部6cの内径端には、内径側に向かうに従って軸方向内側に傾斜する傾斜部6dが繋がっている。
前記芯金6の基端部6aおよび円筒部6bと、これら基端部6aおよび円筒部6bの周囲を覆う弾性部材7の一部である基端被覆部7aとで、シール部材5の外径端が構成される。このシール部材5の外径端が、外輪2のシール取付溝2bに嵌合固定される。このとき、弾性部材7の基端被覆部7aは、シール取付溝2bに弾性変形した状態で固定され、外輪2とシール部材5の外径端との密封性をより高めている。
芯金6における、立板部6cの外表面は均一な薄肉形状の覆い部7bで覆われ、傾斜部6dの内外表面はそれぞれ覆い部7c,7dで覆われている。前記覆い部7c,7dの内径端が、シール部材本体8の内径端となる。このシール部材本体8の内径端から、前記自己形成リップ部9が内径側に延びている。また、シール部材本体8の外表面の内径端付近から前記オイルリップ10が内径側に延びている。よって、弾性部材7は、基端被覆部7aと、覆い部7b,7c,7dと、シールリップ部としての自己形成リップ部9およびオイルリップ部10とでなる。
前記自己形成リップ部9は、全体的には外径側から内径側へ行くほど肉厚が薄くなる略断面三角形の先細り形状である。詳しくは、自己形成リップ部9の軸受空間S側の内側面は、軸方向にほぼ垂直な断面形状であり、軸受空間Sとは逆側の外側面は、内径側に向かうに従って軸方向内側に至るように傾斜する断面形状である。前記断面は、軸受軸心を含む平面で切断して見た断面である。そして、自己形成リップ部9の薄肉になった先端が、内輪1の外周面1bにラジアル接触している。
なお、図2は、内輪1および外輪2と未使用のシール部材5とを図面上で単に重ね合わせた表示となっている。このため、同図では、自己形成リップ部9の先端が内輪1の外周面1bに食い込んでいるように図示しているが、実際には、自己形成リップ部9の先端は、シール装着状態で内輪1の外周面1bに対し締代δ(図3(A))をもった状態で接触している。
自己形成リップ部9の先端に近い部分である接触部分9aは、この軸受を回転状態で使用することで摩耗して内輪1に対して非接触となるか接触面圧が零と見なせる程度の軽接触となる高摩耗材からなる。高摩耗材は例えば高摩耗ゴム材からなる。高摩耗材を構成する他の材料として、樹脂材、固体潤滑材、不織布、軟鋼等を適用しても良い。自己形成リップ部9の接触部分9aのみが高摩耗材からなっているのではなく、自己形成リップ部9全体が高摩耗材からなっていても良い。
前記オイルリップ部10は、自己形成リップ部9の軸方向外側に位置し、前述したようにシール部材本体8の外表面の内径端付近から内径側に延びている。オイルリップ部10の方が自己形成リップ部9よりも内径側に長く延びている。オイルリップ部10の肉厚は、全体的に自己形成リップ部9よりも薄く、外径側から内径側へ行くに従って若干肉厚が薄くなる断面形状である。このため、オイルリップ部10は軸方向の可撓性を有する。
オイルリップ部10が延びている方向は、おおむね内径側であるが若干軸方向外側に傾斜しており、延び方向の中央部で軸方向外側への傾斜が少しだけ大きくなっている。そして、傾斜の大きくなった先端部分10aの軸方向内側の面が内輪1の前記段面1cにアキシアル接触している。なお、内輪1の段面1cは、オイルリップ部10の先端部分10aよりも若干傾きが大きな傾斜面である。内輪1には、上記段面1cの内径端に続いてU字溝1dが設けられている。
このように、この転がり軸受のシール部材5は、シールリップ部として、内輪1の外周面1bにラジアル接触する自己形成リップ部9と、内輪1の段面1cにアキシアル接触するオイルリップ部10とを有する。自己形成リップ部9の内輪1の外周面1bに対する接触面圧P1とオイルリップ部10の内輪1の段面1cに対する接触面圧P2を比較した場合、軸受を未使用の状態で、自己形成リップ部9の接触面圧P1の方が、オイルリップ部10の接触面圧P2よりも高くしてある(P1>P2)。このように接触面圧P1,P2を設定する理由については、後で説明する。なお、接触面圧P1,P2は全周面圧のことである。
この転がり軸受は、シール部材5の自己形成リップ部9を高摩耗材で構成することにより、軸受使用の初期段階において、自己形成リップ部9と内輪1の外周面1bとの摺動により自己形成リップ部9の接触部分9aを早期に摩耗させるようになっている。ここで言う初期段階とは、軸受の慣らし運転の時間内(例えば60分以内)のことである。このときの軸受回転速度は、軸受の定格回転数(例えば400rpm)である。以下に、自己形成リップ部9の摩耗のメカニズムについて説明する。
シール部材5を軸受に組み込んだ状態では、図3(A)のように、自己形成リップ部9の先端が内輪1の外周面1bよりも径方向内方に位置する状態、つまり締代δを持った状態である。実際には、軸受の軸方向外側からシール部材5が組み込まれるので、図3(B)のように、自己形成リップ部9は先端が軸方向外側の取り残されたように撓んだ状態となる。自己形成リップ部9の弾性復元力によって、自己形成リップ部9の接触部分9aが内輪1の外周面1bに押し付けられる。
この状態で内輪1が回転すると、自己形成リップ部9の接触部分9aと内輪1の外周面1bとが摺動して、自己形成リップ部9の接触部分9aが摩耗する。自己形成リップ部9の摩耗が進むと、それに追随して自己形成リップ部9が撓んだ状態から組込み前の姿勢に戻ろうとするため、自己形成リップ部9は一定の押付け力Fで内輪1の外周面1bに押し付けられる。このため、安定した摩耗が連続して進行する。
内輪1に対する自己形成リップ部9の接触面圧が「零」に近づくと、自己形成リップ部9の摩耗は完了し、図3(C)に示す状態となる。この摩耗が完了した状態では、自己形成リップ部9の先端が内輪1の外周面1bに対し非接触または軽接触となり、自己形成リップ部9と前輪1の外周面1bとの間に微小隙間δsが形成される。この微小隙間δsは、全周に渡って均等に形成されるとは限らず、円周方向の一部にだけ形成される場合もある。
上記の自己形成リップ部9の摩耗の過程において、自己形成リップ部9と内輪1の外周面1bとの間に油が介在すると、自己形成リップ部9と内輪1の外周面1b間の摩擦係数が小さくなり、微小隙間δsが形成されるまでの時間が長くなる。転がり軸受が自動車のトランスミッションに使用される場合、転がり軸受の周囲には潤滑油が存在しているため、この潤滑油が自己形成リップ部9の摩耗に影響を与えるのを避ける必要がある。
この転がり軸受は、周囲の潤滑油が自己形成リップ部9の摩耗に影響を与えるのを避けるために、自己形成リップ部9の軸方向外側の段面1cにアキシアル接触するオイルリップ部10が設けられている。このオイルリップ部10により、周囲の潤滑油が自己形成リップ部9と内輪1の外周面1b間に浸入することを防ぐか、または遅らせることができる。それにより、自己形成リップ部9と内輪1の外周面1bとの間の摩擦係数の低下が抑えられ、自己形成リップ部9が早期に摩耗し易くなる。自己形成リップ部9の摩耗によって、自己形成リップ部9と内輪1の外周面1bとの間に微小隙間δsが形成されることで、軸受が低トルクとなる。また、微小隙間δsはラビリンス隙間として機能し、軸受空間Sへの異物の侵入を防止する。
自己形成リップ部9は内輪1の外周面1bにラジアル接触しているため、軸受のアキシアル方向の遊びがあっても、自己形成リップ部9と内輪1の外周面1bとの間に大きな隙間が生じない。このため、ラビリンス隙間として機能が損なわれない。さらに、自己形成リップ部9の軸方向外側にオイルリップ部10が設けられているため、軸受空間Sへの異物の侵入をより一層防止することができる。オイルリップ部10は軸方向の可撓性を有するため、軸受のアキシアル方向の遊びがあっても、その遊びを吸収して常に段面1cに接触した状態に保たれる。このように、軸受空間Sへの異物の侵入を防止することができるため、軸受の長寿命化を実現できる。
先に説明した、軸受を未使用の状態で自己形成リップ部9の接触面圧P1をオイルリップ部10の接触面圧P2よりも高くする理由を説明する。
自己形成リップ部9は、軸受を未使用の状態では内輪1の外周面1bに対して締代δを持った状態となっている。内輪1の外周面1bとの間に微細隙間δsが形成された時点では、内輪1に対して非接触となるかまたは接触面圧が零と見なせる程度の軽接触となるが、前記締代δを小さく設定し過ぎると、製造誤差や組込み誤差によっては、軸受を未使用の状態ですでに自己形成リップ部9が内輪1に対して非接触となっている可能性がある。一方で、オイルリップ部10の段面1cに対する接触面圧P2を必要以上に高くすると、自己形成リップ部9の摩耗が完了した後も軸受のトルクが高いままになる。これらの点を考慮すると、自己形成リップ部9の内輪1の外周面1bに対する接触面圧P1を、オイルリップ部10の段面1cに対する接触面圧P2よりも高くするのが良いのである。
上記実施形態は、シール部材5の基端が固定される一方の軌道輪が外輪2であり、自己形成リップ部9がラジアル接触する他方の軌道輪が内輪1であるが、この逆としてもよい。つまり、一方の軌道輪が内輪1であり、他方の軌道輪が外輪2であってもよい。
図4は、図1〜図3の転がり軸受を自動車のトランスミッションに組み込んだ一例を示す概略図である。同図はオートマチックトランスミッションの例である。ケース43の軸方向両端に転がり軸受BR1,BR1の外輪2が嵌合され、これら転がり軸受BR1,BR1の内輪1に、メインシャフト44の両端がそれぞれ回転自在に支持されている。ケース43に、カウンターシャフト45が前記メインシャフト44と平行に設けられている。このカウンターシャフト45は、メインシャフト44のギヤ部に噛み合うギヤ部を有し、前記ケース43に軸受46を介して回転自在に支持されている。運転中は、ケース43内に貯えられている潤滑油によるオイル潤滑が行われる。
このように転がり軸受BR1,BR1を、自動車のトランスミッションに組み込んだ場合、トランスミッション内におけるギヤの摩耗粉等の異物が、軸受内に侵入することを確実に防止することができ、かつ自己形成リップ部9(図2)の締代にかかわらず、シール部材5(図2)を十分にかつ確実に摩耗させて、低トルク化を図ることができる。シール部材5により生じるトルクの低減を図れるので、自動車の省燃費化を図ることが可能となる。
なお、この発明の転がり軸受は、無断変速式トランスミッションや、手動変速式トランスミッションに用いても良い。
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…内輪(他方の軌道輪)
1a…軌道面
1b…外周面(円筒状周面)
1c…段面
2…外輪(一方の軌道輪)
2a…軌道面
3…転動体
5…シール部材
8…シール部材本体
9…自己形成リップ部
10…オイルリップ部
S…軸受空間
P1…自己形成リップ部の円筒状周面に対する接触面圧
P2…オイルリップ部の段面に対する接触面圧
δ…締代

Claims (4)

  1. 内輪と、外輪と、これら内輪および外輪の各軌道面間に介在する複数の転動体と、前記内輪と前記外輪間に形成される軸受空間を密封するシール部材とを備え、前記シール部材は、シール部材本体の基端が前記内輪と前記外輪のいずれか一方の軌道輪に固定され、前記シール部材本体の先端側に他方の軌道輪の円筒状周面に接するラジアル接触のシールリップ部である自己形成リップ部を有し、この自己形成リップ部は、高分子材料からなり、軸受を回転状態で使用することで前記他方の軌道輪との接触部分が摩耗し、前記他方の軌道輪に対して非接触となるかまたは接触面圧が零と見なせる程度の軽接触となるシール付き転がり軸受において、
    前記他方の軌道輪に、前記円筒状周面における前記軸方向外側の縁から前記軸受空間から遠ざかる方向に延びる段面が形成され、前記シール部材本体の先端側に前記段面に接するアキシアル接触のシールリップ部であるオイルリップ部が設けられていることを特徴とするシール付き転がり軸受。
  2. 請求項1に記載のシール付き転がり軸受において、軸受を未使用の状態で、前記自己形成リップ部の前記円筒状周面に対する接触面圧の方が、前記オイルリップ部の前記段面に対する接触面圧よりも高いシール付き転がり軸受。
  3. 請求項1または請求項2に記載のシール付き転がり軸受において、前記一方の軌道輪は前記外輪であり、前記他方の軌道輪は内輪であるシール付き転がり軸受。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシール付き転がり軸受において、潤滑方式がオイル潤滑であるシール付き転がり軸受。
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