JP5454703B2 - 睡眠状態推定装置 - Google Patents
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Description
本発明は、睡眠状態推定装置に関し、特に対象者の状態を推定する睡眠状態推定装置に関する。
睡眠時における対象者の状態を推定することにより、対象者の無呼吸症候群等の睡眠の質を推定する装置が提案されている。このような装置によれば、対象者の睡眠の質に応じて対象者に対し様々な処置を行うことが可能となる。例えば、特許文献1には、在床判定部を有し、在床判定部では、就寝者の心拍数が在床判定閾値を超えると在床していると判定され、在床判定閾値を下回ると離床していると判定される装置が開示されている。この在床/離床判定はメモリに記憶される。誤判定検出部では、在床判定部によって在床と判定された区間において心拍数の度数分布の尖度Kwが所定値を超える場合、また在床判定部によって離床と判定された区間において心拍数の度数分布の尖度Kwが所定値以下である場合、在床判定部による判定は誤判定であるとみなされる。
ところで、上記のような技術では、在床と離床としか精度良く推定することができない。上記の技術では、ある区間の統計量である心拍数の度数分布の尖度を用いて、データベースと照合して在床か離床かを判断している。しかし、上記の技術では短い時間に起こった体動等は統計量からは判断することができない。例えば、上記の技術では体動において不随意と随意との区別がつかない。また、上記の技術では体動の種類を特定できず、例えば、会話や深呼吸等の意図的な呼吸について区別がつかない。また、上記の技術では体動が連続的になされた場合、例えば、対象者が無意識に身体を揺する動作については通常の体動と区別がつかない。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、対象者の体動をより詳細に分類することがより容易に可能となり、睡眠深度や体動等の対象者の状態を推定する精度を向上させることをより容易に実現する睡眠状態推定装置を提供することにある。
本発明は、対象者の呼吸波形の特徴量として呼吸波形の周期ごとの同一性に基づいて対象者の状態を推定する状態推定ユニットを備えた睡眠状態推定装置である。
心拍変動は脳幹を起源とする自律神経に支配されており、対象者自身が随意にコントロールすることは難しい。そのため、対象者の体動を推定するためには、微妙なゆらぎ解析等の周波数解析が必要であり、即時的な処理には適さない。一方、この構成によれば、状態推定ユニットは、呼吸波形の特徴量として対象者の呼吸波形の周期ごとの同一性に基づいて対象者の状態を推定する。呼吸変動は対象者自身が随意にコントロールすることが可能であるため、対象者の呼吸波形の周期ごとの同一性に基づいて対象者の状態を推定することにより、対象者の体動をより詳細に分類することがより容易に可能となり、睡眠深度や体動等の対象者の状態を推定する精度を向上させることがより容易に可能となる。
この場合、状態推定ユニットは、対象者の呼吸波形の周期ごとの同一性として、呼吸波形を任意の時間だけずらした波形と元の呼吸波形との同一性である自己相関性と、呼吸波形の周期ごとの最低値のゆらぎである再現性との少なくともいずれかに基づいて対象者の状態を推定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、対象者の呼吸波形の周期ごとの同一性として、呼吸波形を任意の時間だけずらした波形と元の呼吸波形との同一性である自己相関性と、呼吸波形の周期ごとの最低値のゆらぎである再現性との少なくともいずれかに基づいて対象者の状態を推定する。これにより、簡単な処理により、睡眠深度や体動等の対象者の状態を推定する精度を向上させることが可能となる。
この場合、状態推定ユニットは、対象者の呼吸波形の特徴量として呼吸波形の周期、振幅、自己相関性及び再現性に基づいて対象者の状態を推定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、対象者の呼吸波形の特徴量として呼吸波形の周期、振幅、自己相関性及び再現性に基づいて対象者の状態を推定する。これにより、呼吸波形の周期、振幅、自己相関性及び再現性の4つの指標を組み合わせて対象者の状態を推定することになるため、睡眠深度や体動等の対象者の状態を推定する精度をさらに向上させることが可能となる。
この場合、状態推定ユニットは、呼吸波形の振幅、自己相関性及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が座り直している状態であると推定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、呼吸波形の振幅、自己相関性及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が座り直している状態であると推定する。本発明者は、対象者が座り直す状態のときは、対象者の呼吸波形の振幅、自己相関性及び再現性に変動が見られるとの知見を得た。このため、呼吸波形の振幅、自己相関性及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が座り直している状態であると推定することにより、対象者が座り直している状態を精度良く推定することができる。
また、状態推定ユニットは、呼吸波形の振幅及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が上方に手を伸ばしている状態であると推定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、呼吸波形の振幅及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が上方に手を伸ばしている状態であると推定する。本発明者は、対象者が上方に手を伸ばす状態のときは、対象者の呼吸波形の振幅及び再現性に変動が見られるとの知見を得た。このため、呼吸波形の振幅及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が上方に手を伸ばしている状態であると推定することにより、対象者が上方に手を伸ばしている状態を精度良く推定することができる。
また、状態推定ユニットは、呼吸波形の自己相関性及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が会話をしている状態であると推定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、呼吸波形の自己相関性及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が会話をしている状態であると推定する。本発明者は、対象者が会話をしている状態のときは、対象者の呼吸波形の自己相関性及び再現性に変動が見られるとの知見を得た。このため、呼吸波形の自己相関性及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が会話をしている状態であると推定することにより、対象者が会話をしている状態を精度良く推定することができる。
また、状態推定ユニットは、呼吸波形の周期及び振幅が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が深呼吸をしている状態であると推定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、呼吸波形の周期及び振幅が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が深呼吸をしている状態であると推定する。本発明者は、対象者が深呼吸をしている状態のときは、対象者の呼吸波形の周期及び振幅に変動が見られるとの知見を得た。このため、呼吸波形の周期及び振幅が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者が深呼吸をしている状態であると推定することにより、対象者が深呼吸をしている状態を精度良く推定することができる。
また、状態推定ユニットは、呼吸波形の特徴量と特徴量ごとに設定された閾値とを比較することで対象者の状態を推定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、呼吸波形の特徴量と特徴量ごとに設定された閾値とを比較することで対象者の状態を推定するため、簡単な処理により、睡眠深度や体動等の対象者の状態を推定することが可能となる。
この場合、状態推定ユニットは、対象者ごとに特徴量ごとの閾値を設定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、対象者ごとに特徴量ごとの閾値を設定する。このため、対象者ごとの体質や嗜好に対応して対象者の状態を推定することが可能となる。
また、状態推定ユニットは、車両に搭乗した対象者の状態を推定し、車両の加速度に基づいて車両の車両挙動と対象者の体動とを判別しつつ対象者の状態を推定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、車両に搭乗した対象者の状態を推定し、車両の加速度に基づいて車両の車両挙動と対象者の体動とを判別しつつ対象者の状態を推定する。このため、車両に搭乗した対象者の状態を車両挙動と体動とを判別しつつ精度良く推定することが可能となる。
また、状態推定ユニットは、対象者の呼吸波形から対象者の呼吸方式が腹式呼吸であるか胸式呼吸であるかを判定することにより、対象者の睡眠深度を推定するものとできる。
この構成によれば、状態推定ユニットは、対象者の呼吸波形から対象者の呼吸方式が腹式呼吸であるか胸式呼吸であるかを判定することにより、対象者の睡眠深度を推定する。呼吸方式が腹式呼吸であるか胸式呼吸であるかは、対象者の睡眠深度と密接な関係があるため、睡眠深度を推定する精度を向上させることができる。
本発明の睡眠状態推定装置によれば、対象者の体動をより詳細に分類することがより容易に可能となり、睡眠深度や体動等の対象者の状態を推定する精度を向上させることをより容易に実現することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る睡眠状態推定装置について説明する。本実施形態の睡眠状態推定装置は、車両等に搭載され、対象者の睡眠深度や体動等の睡眠状態を推定し、様々なアプリケーションプログラムによる対処を行なうための装置である。図1に示すように、本実施形態の睡眠状態推定装置1は、シート10、呼吸センサ12、加速度センサ14、I/F20、演算ユニット30及びDB40を備えている。
呼吸センサ12は非侵襲で対象者Mの呼吸を測定するセンサである。呼吸センサ12は、具体的には図1及び図2に示すように、シート10の座面や背もたれに複数設置された圧力センサにより構成される。図2に示すように、呼吸センサ12は、シート10に対象者Mの胸部の動きを測定する圧力センサ13a、対象者Mの腹部の動きを測定する圧力センサ13b及び対象者Mの座面への圧力を測定する圧力センサ13cを備えている。
また、図3に示すように、シート10は対象者Mの呼吸を測定する呼吸バンド16,18を備えていて良い。呼吸バンド16,18は、対象者Mの呼吸を検出可能な歪ゲージバンドである。呼吸バンド16は対象者Mの胸郭の動きを検出する。呼吸バンド18は対象者Mの腹腔の動きを検出する。また、シート10は、心拍センサや脳波センサを別途備えていても良い。
図1に戻り、シート10は車両の加速度を検出する加速度センサ14を備えている。加速度センサ14は、車両に予め搭載されたものを利用できる。あるいは、加速度センサ14は、睡眠状態推定装置1に用意されたものを利用できる。
呼吸センサ12及び加速度センサ14の検出値は、I/F20を介して演算ユニット30で処理される。演算ユニット30では、個々の対象者Mごとのデータが記録されたDB40を参照しつつ、対象者Mの睡眠深度や、対象者Mの深呼吸、会話、座り直し、上方への両手伸ばし、左右いずれかの臀部を浮かせる等の体動がなされているか否かの対象者Mの睡眠状態を推定する。
以下、本実施形態の睡眠状態推定装置1の動作について説明する。まず、動作の概略について説明する。図4に示すように、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、呼吸センサ12等による呼吸波形の後述するような特徴量が正常か異常であるかを判定する(S01)。呼吸波形の特徴量が異常であるときは(S01)、演算ユニット30は呼吸センサ12及び加速度センサ14の検出値に基づいて、当該呼吸波形の特徴量の異常が、対象者Mの深呼吸等の体動に起因しているものか、あるいは車両のブレーキ等の車両挙動に起因しているものかを判定する(S02)。当該呼吸波形の特徴量の異常が車両挙動に起因しているものである場合は(S02)、演算ユニット30は当該呼吸波形の特徴量の異常は車両挙動に起因しており、対象者Mの体動を推定することは不可能と判定する(S03)。これらS01〜S03の動作は、呼吸センサ12及び加速度センサ14の出力波形でフィルタ処理を行なう。
呼吸波形の特徴量が正常であるときは(S01)、演算ユニット30は、対象者Mの眠りが深いか、眠りが深い以外の状態であるかを判定する(S04)。演算ユニット30は対象者Mの眠りが深いと判定したときは、その旨を出力する(S04,S05)。呼吸波形の特徴量が異常であり(S01)、当該呼吸波形の特徴量の異常が対象者Mの体動に起因しているとき(S02)、あるいは呼吸波形の特徴量が正常であり(S01)、対象者Mの状態が眠りが深い以外の状態であるときは(S04)、演算ユニット30は、対象者Mが覚醒しているか眠りが浅いかを判定する(S06)。演算ユニット30は、対象者Mが覚醒しているか眠りが浅いかの判定結果を出力する(S06〜S08)。これらS04〜S08の動作は、演算ユニット30はDB40に記憶された学習データを参照し、またはDB40に新たな学習データを記憶させつつ対象者Mの睡眠状態の推定を行なう。
なお、本実施形態では、上記S04において、演算ユニット30は対象者Mが覚醒しているか寝ているかの判定を行なうものとできる。この場合、対象者Mが寝ていると判定された場合は(S04)、演算ユニットは上記S05にて対象者Mが寝ている旨の演算結果を出力する。呼吸波形の特徴量が正常であり(S01)、対象者Mが覚醒しているとき(S04)、あるいは呼吸波形の特徴量が異常であり(S01)、当該呼吸波形の特徴量の異常が対象者Mの体動に起因しているときは(S02)、あるいは演算ユニット30は、対象者Mが覚醒している旨の演算結果を出力する。
以下、本実施形態の睡眠状態推定装置1の動作の詳細について説明する。図5に示すように、演算ユニット30は、対象者Mを認識し、後述する呼吸波形の特徴量である再現性、振幅、周期及び自己相関性の閾値a〜dを設定する(S101)。これらの閾値a〜dは、対象者Mごとに設定され、DB40に記録される。
演算ユニット30は、加速度センサ14の検出値を用い、加速度のX成分(車両の前後方向)が1.0m/s2等の閾値を超えているか否かを判定する(S102)。演算ユニット30は、加速度センサ14の検出値を用い、加速度のY成分(車両の左右方向)が1.0m/s2等の閾値を超えているか否かを判定する(S103)。
加速度のX成分及びY成分のいずれかが1.0m/s2等の閾値を超えているときは(S102,S103)、演算ユニット30は、呼吸センサ12による検出値を車両ノイズと推定する(S104)。演算ユニット30は、加速度のX成分及びY成分のいずれも1.0m/s2等の閾値以下のときは(S102,S103)、演算ユニット30は、呼吸センサ12による検出値から、特徴量として再現性を算出する(S105)。
再現性とは、呼吸波形の周期ごとの最低値のゆらぎである。図6に示すような呼吸波形が呼吸センサ12により検出されていたとすると、呼吸波形の周期ごとの最低値は、α、β及びγとなる。平均値μは、μ={(α−β)+(β−γ)}/2で算出される。再現性Fは、F={(α−β−μ)2+(β−γ−μ)2}1/2で算出される。
図5に戻り、演算ユニット30は、再現性Fが閾値aを超えているか否かを判定する(S106)。再現性Fが閾値aを超えているときは(S106)、演算ユニット30は、対象者Mは覚醒していると推定し、後述するように対象者Mの体動を識別する(S113)。
再現性Fが閾値a以下であるときは(S106)、演算ユニット30は、呼吸センサ12による検出値から、特徴量として振幅を算出する(S107)。図7に示すように、呼吸波形の振幅は、直前の一周期の呼吸波形の最低値と最高値との差から求められる。
図5に戻り、演算ユニット30は、振幅が閾値bを超えているか否かを判定する(S108)。振幅が閾値bを超えているときは(S108)、演算ユニット30は、対象者Mは覚醒していると推定し、後述するように対象者Mの体動を識別する(S113)。
再現性Fが閾値a以下であるときは(S108)、演算ユニット30は、呼吸センサ12による検出値から、特徴量として周期を算出する(S109)。演算ユニット30は、周期が閾値cを超えているか否かを判定する(S110)。周期が閾値cを超えているときは(S110)、演算ユニット30は、対象者Mは覚醒していると推定し、後述するように対象者Mの体動を識別する(S113)。
周期が閾値c以下のときは(S110)、演算ユニット30は、特徴量として自己相関性を算出する(S111)。自己相関性とは、呼吸波形を任意の時間だけずらした波形と元の呼吸波形との同一性である。例えば、図8に示すように、呼吸センサ12により検出された呼吸波形を2秒、5秒あるいは1〜3周期だけずらし、すらした波形と元の呼吸波形との相違を数値化することにおり、自己相関性は算出される。自己相関性については、例えば呼吸波形をある周期ずらした波形と元の呼吸波形との相違を数値化したものと、呼吸波形を異なる周期ずらした波形と元の呼吸波形との相違を数値化したものとを組み合わせて、両者で相違があったときに、自己相関性に変化が有ったものとすることで、検出の精度を向上させることができる。
図5に戻り、演算ユニット30は、自己相関性が閾値dを超えているか否かを判定する(S112)。自己相関性が閾値dを超えているときは(S112)、演算ユニット30は、対象者Mは覚醒していると推定し、後述するように対象者Mの体動を識別する(S113)。自己相関性が閾値d以下のときは(S112)、演算ユニット30は、対象者Mは睡眠状態であると推定し、後述するように対象者Mの睡眠段階と体動とを識別する(S114)。
以下、対象者Mの体動を識別する手法について説明する。本発明者は、対象者Mの呼吸波形の振幅、周期、自己相関性及び再現性を組み合わせて利用することで、かなりの高確率で対象者Mの体動を推定可能であるという知見を得た。例えば、図9に示すように、対象者Mの深呼吸等の体動や、ブレーキ等の車両挙動によって、対象者Mの呼吸波形の振幅、再現性等にはかなりの相違が見られることが判る。
そのため、本実施形態では、対象者Mの呼吸波形の振幅、周期、自己相関性及び再現性を組み合わせて利用することで対象者Mの体動を推定する。図10に示すように、対象者Mが座り直すときは、呼吸波形の振幅、自己相関性及び再現性に変化が現れる。対象者Mが上方に手を伸ばすときは、呼吸波形の振幅及び再現性に変化が現れる。対象者Mが会話をするときは、呼吸波形の自己相関性及び再現性に変化が現れる。対象者Mが深呼吸をするときは、呼吸波形の周期及び振幅に変化が現れる。本発明者は、他にも対象者Mが脚を組み替えたり欠伸をしたりする体動についても、呼吸波形の振幅、自己相関性等の特徴量を組み合わせて利用することにより、これらの体動を精度良く検出することが可能であるとの知見を得た。
図11に示す対象者Mが深呼吸を3回した場合の呼吸波形の特徴量の変化について説明する。各波形は、上から呼吸波形の生波形、周期、振幅、2周期前の波形と現在の呼吸波形との自己相関性、3周期前の波形と現在の呼吸波形との自己相関性及び再現性をそれぞれ示す。周期、振幅、自己相関性及び再現性については、比較しやすいように算出された数値を正規化し、数値が0のときは通常から変化が無く、数値が0を超えるときは通常から変化が有ることを示す。正規化された数値が1を超える場合には1を上限値とする。図11に示すように、実線でしめす通常時に対して、破線でしめす深呼吸時には、呼吸波形の周期及び振幅に顕著な相違が見られる。
同様に、図12に示す対象者Mが2回座り直した場合の呼吸波形の特徴量の変化について説明する。図12に示すように、実線でしめす通常時に対して、破線でしめす座り直し時には、呼吸波形の振幅、自己相関性及び再現性に顕著な相違が見られる。一方、呼吸波形の周期については、顕著な相違が見られない。
図13及び図14に、同様に車両が60km/hからブレーキをかけて停止することを6回繰り返したときと、車線変更を60km/hで6回繰り返したときとの呼吸波形及びその特徴量についてそれぞれ示す。図13及び図14から、車両挙動に変動があったときは、対象者Mの呼吸波形とその特徴量に変動が見られることが判る。したがって、車両において本実施形態の睡眠状態推定装置1を適用することで、対象者Mの深呼吸、会話、座り直し及び両手伸ばし(伸び)等の体動を分類でき、車両のブレーキ、車線変更、シフトダウン及びチョッピー路等の車両挙動を分類することができる。
さらに本実施形態では、対象者Mの呼吸波形とその特徴量とに加えて、加速度センサ14による検出値も利用してノイズを除去することで、対象者Mの状態を検出する精度を向上させる。例えば、図15に示すように、現実には対象者Mは覚醒(W)している場合に、推定器としての演算ユニット30は対象者Mの睡眠深度が浅いと誤った推定結果が出た場合であっても、呼吸波形により体動が推定されていれば、対象者Mが覚醒している可能性が高いため、推定結果を修正可能である。
あるいは、現実には対象者Mの睡眠深度が浅い場合に、推定器としての演算ユニット30は対象者Mの睡眠深度が深いと誤った推定結果が出た場合であっても、呼吸波形により車両挙動が推定されているか、加速度センサ14により車両挙動が検出されていれば、呼吸波形により睡眠深度が深いと推定した推定結果の信頼性は低いと判断でき、誤った推定結果の理由の検証に利用できる。呼吸波形や加速度センサ14により、対象者Mの体動や車両挙動が検出できなかった場合は、誤った推定結果を修正することができない場合もあり得るが、対象者Mの体動や車両挙動を常に検出し続けることにより、推定結果を修正して推定の精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、シート10に設けられた複数の呼吸センサ12の検出位置による一次フィルターを設け、眠りの状態が深いか浅いかを大分類する。一般的な睡眠時の呼吸特徴として、図16に示すように、深い眠りの状態では腹式呼吸が多くなり、浅い眠りの状態では胸式呼吸が多くなる。そのため、本実施形態では、シート10に設けられた複数の呼吸センサ12の検出位置から、対象者Mの呼吸方式が腹式呼吸か胸式呼吸かを判定して、対象者Mの眠りの状態が深いか浅いかの分類を高精度に実施する。また、深い睡眠段階では人間の体動が安定(安静)になる傾向があることから、計測位置の分散で睡眠深度を推定することも可能である。
呼吸方式には、大別して胸式呼吸と腹式呼吸とがあり、無意識には両者の要素が混ざり合っていることが多い。一般的に対象者Mの心の状態は呼吸と関わりが強く、心身が緊張状態にあると呼吸は浅く短くなる。つまり、緊張感や不安感があると人間は無意識の内に胸式呼吸になり易い。逆に考えると、就寝中は全身の緊張がほぐれてリラックスした状態であるため、深い睡眠状態となると腹式呼吸が支配的となると言われる。また、胸式呼吸と腹式呼吸とでは、一回に出入りする空気の量が数倍異なり、胸式呼吸では500mlであるのに対し、腹式呼吸では最大で2000mlとなる。これらを鑑みると、可観測な生理指標の1つである呼吸が、眠りが深くなると周波数が活動時や浅い眠りのときと比較して周波数が低く、ゆっくりとなることも裏付けられる。
そこで、本実施形態では、図17に示すように、呼吸センサ12の圧力センサ13a,13bを少なくともシート10の上下段に配置し、対象者Mの胸部と腹部とを計測可能として、対象者Mの腹式呼吸a及び胸式呼吸bの呼吸形式の変化で、深い眠りとその他の状態とに分類する。本実施形態では、図3に示すような呼吸バンド16,18を利用しても良い。具体的には、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、一回あるいは呼吸ごとの腹式呼吸と胸式呼吸との振幅差又は位相差を算出し、30秒間の平均値を取り、30秒の処理区間で変動係数(Coefficient of variation)を求め、胸式と腹式の大小関係を比較し、上記処理区間で微分積分を行い、ベクトルを算出する。
以下、睡眠段階変化と呼吸方式との関係について、さらに説明する。図18において、対象者の腹式呼吸a、胸式呼吸b及び睡眠段階dが示されている。図18に示すように、睡眠段階dが変化するたびに、腹式呼吸aと胸式呼吸bとが拮抗していることが判る。
このように睡眠段階の変化とその前後区間の呼吸方式の変化とに相関が確認されている。しかし、呼吸センサ12の検出値の差分をそのまま利用して変化を求めたのでは、呼吸センサ12の変更や、出力ゲインの変更等で数値が安定しないことが予想される。そのため、本実施形態では、比率を用いることで、この変更に対応する。例えば、図19に示すように、胸式呼吸に対する腹式呼吸の割合(腹式/胸式)を横軸に示し、その割合の頻度を縦軸に示すと、起きているときは胸式呼吸の割合が大きく、眠りが深くなるにつれて腹式呼吸の割合が大きくなることが判る。また、起きているときは、腹式/胸式の標準偏差が大きく、逆に眠っているときは、腹式/胸式の標準偏差が小さいことが判る。
ここで、図20に示すような区間を定義する。30秒間ごとの区間が順に区間P1〜P3と定義される。また、区間P1,P2にまたがる区間が区間P4と定義され、区間P2,P3にまたがる区間が区間P5と定義される。なお、図20において、睡眠段階の数値の変化は単なる例示であり、実際のデータとは関係が無い。また、図21に示すような腹式呼吸a,胸式呼吸b及び睡眠段階dの観測値が得られている。
図21から、30秒間ごとの傾向として、図22に示すように、覚醒から浅い眠りのときは、腹式呼吸a及び胸式呼吸bの両方が下降する傾向がある。浅い眠りから深い眠りに移行するときは、胸式呼吸bが下降し、腹式呼吸が上昇する傾向がある。浅い眠りから覚醒に移行するときは、腹式呼吸a及び胸式呼吸bの両方が上昇する傾向がある。深い眠りから浅い眠りに移行するときは、胸式呼吸bが上昇し、腹式呼吸が下降する傾向がある。
図20に定義された区間P1〜P5ごとの、腹式呼吸a及び胸式呼吸bの割合の変動を図23のグラフに示し、数値を図24の表に示す。図23中で、胸式呼吸の区間P2に対する区間P1の比率は、b(P1/P2)で示され、腹式呼吸の区間P3に対する区間P2の比率は、a(P2/P3)で示される。また、図25に、腹式呼吸の区間P2に対する区間P1の比率について、睡眠段階の変化ごとに示す。
ここで、腹式呼吸の区間P2に対する区間P1の比率について(a(P1/P2))、睡眠段階が浅い眠りから深い眠りに変化した場合と、睡眠段階が深い眠りから浅い眠りに変化した場合とに着目して、統計的なデータの有意差検定を行なう。図26及び図27に示すように、腹式呼吸の区間P2に対する区間P1の比率について(a(P1/P2))、睡眠段階が浅い眠りから深い眠りに変化した場合には平均値が約0.95、分散が0.028となり、睡眠段階が深い眠りから浅い眠りに変化した場合には平均値が約1.08、分散が0.094となった。これらのデータは、0.05水準で有意であることが判る。
これらより、本実施形態では、簡単な腹式呼吸及び胸式呼吸の変化から睡眠段階を推定することが可能であることが判る。呼吸方法の変化、例えば、胸式呼吸に対する腹式呼吸の割合(腹式/胸式)を用いることで睡眠段階の深い睡眠やその他の状態の変化を捉えることができる。また、胸式呼吸に対する腹式呼吸の割合(腹式/胸式)の分散(標準偏差)を用いることで、睡眠段階の覚醒状態及び睡眠状態の分離精度の向上が図れる。
心拍変動は脳幹を起源とする自律神経に支配されており、対象者自身が随意にコントロールすることは難しい。そのため、対象者の体動を推定するためには、微妙なゆらぎ解析等の周波数解析が必要であり、即時的な処理には適さない。一方、本実施形態によれば、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、呼吸波形の特徴量として対象者Mの呼吸波形の周期ごとの同一性に基づいて対象者の状態を推定する。呼吸変動は対象者M自身が随意にコントロールすることが可能であるため、対象者Mの呼吸波形の周期ごとの同一性に基づいて対象者Mの状態を推定することにより、対象者Mの体動をより詳細に分類することがより容易に可能となり、睡眠深度や体動等の対象者Mの状態を推定する精度を向上させることがより容易に可能となる。
また、本実施形態によれば、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、対象者Mの呼吸波形の周期ごとの同一性として、呼吸波形を任意の時間だけずらした波形と元の呼吸波形との同一性である自己相関性と、呼吸波形の周期ごとの最低値のゆらぎである再現性との少なくともいずれかに基づいて対象者Mの状態を推定する。これにより、簡単な処理により、睡眠深度や体動等の対象者の状態を推定する精度を向上させることが可能となる。
また、本実施形態によれば、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、対象者Mの呼吸波形の特徴量として呼吸波形の周期、振幅、自己相関性及び再現性に基づいて対象者Mの状態を推定する。これにより、呼吸波形の周期、振幅、自己相関性及び再現性の4つの指標を組み合わせて対象者Mの状態を推定することになるため、睡眠深度や体動等の対象者Mの状態を推定する精度をさらに向上させることが可能となる。
また、本実施形態によれば、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、呼吸波形の振幅、自己相関性及び再現性が、対象者Mの通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者Mが座り直している状態であると推定する。本発明者は、対象者Mが座り直す状態のときは、対象者Mの呼吸波形の振幅、自己相関性及び再現性に変動が見られるとの知見を得た。このため、呼吸波形の振幅、自己相関性及び再現性が、対象者Mの通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者Mが座り直している状態であると推定することにより、対象者Mが座り直している状態を精度良く推定することができる。
また、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、呼吸波形の振幅及び再現性が、対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者Mが上方に手を伸ばしている状態であると推定する。本発明者は、対象者Mが上方に手を伸ばす状態のときは、対象者Mの呼吸波形の振幅及び再現性に変動が見られるとの知見を得た。このため、呼吸波形の振幅及び再現性が、対象者Mの通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者Mが上方に手を伸ばしている状態であると推定することにより、対象者Mが上方に手を伸ばしている状態を精度良く推定することができる。
また、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、呼吸波形の自己相関性及び再現性が、対象者Mの通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者Mが会話をしている状態であると推定する。本発明者は、対象者Mが会話をしている状態のときは、対象者Mの呼吸波形の自己相関性及び再現性に変動が見られるとの知見を得た。このため、呼吸波形の自己相関性及び再現性が、対象者Mの通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者Mが会話をしている状態であると推定することにより、対象者Mが会話をしている状態を精度良く推定することができる。
また、本実施形態によれば、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、呼吸波形の周期及び振幅が、対象者Mの通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者Mが深呼吸をしている状態であると推定する。本発明者は、対象者Mが深呼吸をしている状態のときは、対象者Mの呼吸波形の周期及び振幅に変動が見られるとの知見を得た。このため、呼吸波形Mの周期及び振幅が、対象者Mの通常時と比較して変動していることを検出した場合は、対象者Mが深呼吸をしている状態であると推定することにより、対象者Mが深呼吸をしている状態を精度良く推定することができる。
また、本実施形態では、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、呼吸波形の特徴量と特徴量ごとに設定された閾値とを比較することで対象者Mの状態を推定するため、簡単な処理により、睡眠深度や体動等の対象者Mの状態を推定することが可能となる。
また、本実施形態では、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、対象者Mごとに特徴量ごとの閾値を設定する。このため、対象者Mごとの体質や嗜好に対応して対象者Mの状態を推定することが可能となる。
また、本実施形態では、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、車両に搭乗した対象者Mの状態を推定し、車両の加速度に基づいて車両の車両挙動と対象者Mの体動とを判別しつつ対象者Mの状態を推定する。このため、車両に搭乗した対象者Mの状態を車両挙動と体動とを判別しつつ精度良く推定することが可能となる。
また、本実施形態では、睡眠状態推定装置1の演算ユニット30は、対象者Mの呼吸波形から対象者Mの呼吸方式が腹式呼吸であるか胸式呼吸であるかを判定することにより、対象者Mの睡眠深度を推定する。呼吸方式が腹式呼吸であるか胸式呼吸であるかは、対象者Mの睡眠深度と密接な関係があるため、睡眠深度を推定する精度を向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。
本発明の睡眠状態推定装置によれば、対象者の体動をより詳細に分類することがより容易に可能となり、睡眠深度や体動等の対象者の状態を推定する精度を向上させることをより容易に実現することが可能となる。このため、詳細に推定された対象者の睡眠深度や体動の種類等に合わせて、例えば、様々なアプリケーションプログラムを対象者に対して実行し、対象者をさらに快適な状態に導くことも容易となる。
1 睡眠状態推定装置
10 シート
12 呼吸センサ
13a,13b,13c 圧力センサ
14 加速度センサ
16,18 呼吸バンド
20 I/F
30 演算ユニット
40 DB
10 シート
12 呼吸センサ
13a,13b,13c 圧力センサ
14 加速度センサ
16,18 呼吸バンド
20 I/F
30 演算ユニット
40 DB
Claims (12)
- 対象者の呼吸波形の特徴量として前記呼吸波形の周期ごとの同一性に基づいて前記対象者の状態を推定する状態推定ユニットを備え、
前記状態推定ユニットは、前記呼吸波形の周期ごとの同一性として、前記呼吸波形をm周期ずらした波形と元の前記呼吸波形との相違を数値化したものと、前記呼吸波形を前記m周期とは異なるn周期ずらした波形と元の前記呼吸波形との相違を数値化したものとの相違である自己相関性に基づいて前記対象者の状態を推定する、睡眠状態推定装置。 - 前記状態推定ユニットは、前記対象者の前記呼吸波形の周期ごとの同一性として、前記自己相関性と、前記呼吸波形の周期ごとの最低値のゆらぎである再現性とに基づいて前記対象者の状態を推定する、請求項1に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、前記対象者の前記呼吸波形の前記特徴量として前記呼吸波形の周期、振幅、前記自己相関性及び前記再現性に基づいて前記対象者の状態を推定する、請求項2に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、前記対象者の呼吸波形の特徴量に基づいて前記対象者の体動を推定する、請求項3に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、前記呼吸波形の振幅、前記自己相関性及び前記再現性が、前記対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、前記対象者が座り直している状態であると推定する、請求項4に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、前記呼吸波形の振幅及び前記再現性が、前記対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、前記対象者が上方に手を伸ばしている状態であると推定する、請求項4又は5に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、前記呼吸波形の前記自己相関性及び前記再現性が、前記対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、前記対象者が会話をしている状態であると推定する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、前記呼吸波形の周期及び振幅が、前記対象者の通常時と比較して変動していることを検出した場合は、前記対象者が深呼吸をしている状態であると推定する、請求項4〜7のいずれか1項に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、前記呼吸波形の前記特徴量と前記特徴量ごとに設定された閾値とを比較することで前記対象者の状態を推定する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、前記対象者ごとに前記特徴量ごとの前記閾値を設定する、請求項9に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、車両に搭乗した前記対象者の状態を推定し、前記車両の加速度に基づいて前記車両の車両挙動と前記対象者の体動とを判別しつつ前記対象者の状態を推定する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の睡眠状態推定装置。
- 前記状態推定ユニットは、前記対象者の前記呼吸波形から前記対象者の呼吸方式が腹式呼吸であるか胸式呼吸であるかを判定することにより、前記対象者の睡眠深度を推定する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の睡眠状態推定装置。
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