以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
図1および図2を参照して、本実施形態に係る印字装置1の概略構成について説明する。本実施形態の説明では、図1および図2の右上側、左下側、右下側、左上側、上側、下側を、それぞれ、印字装置1の後側、前側、右側、左側、上側、下側とする。
図1に示すように、印字装置1の上面には、キャラクタ(文字、記号および数字等)のキーボード3が設けられている。キーボード3の後側(紙面右上側)には、電源スイッチ、印字キー、機能キー群4等が設けられている。機能キー群4の後側には、キーボード3から入力されたキャラクタを表示するためのディスプレイ5が設けられている。印字装置1の上面の後部には、開閉可能なカバー6が設けられている。印字装置1の左後角には、カットされた印字済テープ50(図3参照)を受けるテープトレイ7が設けられている。
図2に示すように、ディスプレイ5の後側には、カセット装着部8が形成されている。カセット装着部8には、テープカセット30が上下方向に着脱される。カセット装着部8には、リボン巻取軸9が立設されている。リボン巻取軸9は、リボンスプール42(図4参照)から引き出されて文字等の印刷に使用された後のインクリボン60(図4参照)を巻取る。リボン巻取軸9の左前方には、正面視で略矩形状のヘッドホルダ74(図15参照)が立設されている。ヘッドホルダ74の前面には、フィルムテープ59(図4参照)に文字等を印字するサーマルヘッド10(図15参照)が取り付けられている。ヘッドホルダ74の左方には、印字済テープ50を送り駆動するためのテープ駆動軸11(図15参照)が立設されている。
カセット装着部8の前側には、後述のローラホルダ18、センサホルダ19、リリースロッド17等が配設されている(図6参照)。ローラホルダ18、センサホルダ19、リリースロッド17等は、板部13によって被覆されている。板部13の右側には、リリースロッド17と連結されたレバー16が設けられている。
カバー6は、カバー6の後端部の左右方向を支点として開閉自在である。カセット装着部8は、カバー6が閉位置にあるときにテープカセット30を着脱不能に閉鎖され(図1参照)、カバー6が開位置にあるときにテープカセット30を着脱自在に開放される(図2参照)。カバー6の裏面側前部には、カバー6が閉じられたときにレバー16を押下するレバー押下部61が設けられている。レバー押下部61の右側端部には、カバー6の裏面に対して垂直に保持部材62が延びている。保持部材62の下端部から左側に向けて、板状の突出片63が突出している。突出片63は、レバー押下部61と平行に突出し、カバー6が開かれるときにレバー16を引き上げる。
カバー6の裏面における両側端部には、一対の係合片64、64が設けられている。カセット装着部8の平面視外側には、一対の係合部27、27が設けられている。カバー6が閉じられたときには、係合片64、64と係合部27、27とが係合して、カバー6が閉位置に保持される。
次に、図3〜図5を参照して、本実施形態に係るテープカセット30の構造について説明する。本実施形態のテープカセット30は、感熱タイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープ種類に実装可能な汎用カセットを、ラミネートタイプに実装している。本実施形態の説明では、図3の左上側、右下側、右上側、左下側、上側、下側を、それぞれ、テープカセット30の後側、前側、右側、左側、上側、下側とする。
図3に示すように、テープカセット30は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状(箱型)の筐体であるカセットケース31を有している。カセットケース31は、カセットケース31の底面30Bを含む下ケース31Bと、カセットケース31の上面30Aを含む上ケース31Aとを有する。上ケース31Aは、下ケース31Bの上部に固定される。本実施形態の説明では、底面30Bから上面30Aまでの距離を、テープカセット30またはカセットケース31の高さ寸法という。
カセットケース31は、テープカセット30のテープ種類(例えば、テープ幅や印字態様など)にかかわらず、同一の幅(上下方向の長さが同一)に形成された角部32Aを有する。角部32Aは、平面視で直角をなすように外側方向に突出している。ただし、平面視で左下の角部32Aでは、テープ排出口49が角に設けられているために、直角はなしていない。カセットケース31の上下(高さ)方向において角部32Aと同一の位置、且つ、同一の幅でカセットケース31の側面を全周に亘って取り巻く部位(角部32Aを含む)を、共通部32という。
図5に示すように、共通部32は、カセットケース31の上下(高さ)方向における中心線Nに関して、上下方向に対称に形成された部位である。テープカセット30の高さ寸法は、カセットケース31内に収納されるフィルムテープ59や両面粘着テープ58のテープ幅(つまり、印字済テープ50のテープ幅)に応じて異なっている。しかし、共通部32の幅(上下方向の長さ)Tは、印字済テープ50のテープ幅にかかわらず、同一寸法に設定されている。
例えば、共通部32の幅Tが12mmである場合、印字済テープ50のテープ幅が大きくなると(例えば、18mm、24mm、36mm)、それに応じてカセットケース31の高さ寸法も大きくなるが、共通部32の幅Tは一定である。なお、印字済テープ50のテープ幅が共通部32の幅T以下である場合は(例えば、6mm、12mm)、カセットケース31の高さ寸法は、共通部32の幅T+所定幅である。この場合、カセットケース31の高さ寸法は最も小さくなる。
図3に示すように、上ケース31Aおよび下ケース31Bには、それぞれ後述のスプール類を回転可能に支持する支持孔65、66、67が設けられている。図3には、上ケース31Aに形成された各支持孔65,66,67のみしか図示されていないが、下ケース31Bについても同様に、支持孔65、66、67が形成されている。
図4に示すように、カセットケース31内には、第一テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58、第二テープスプール41に巻回された透明なフィルムテープ59、および、リボンスプール42に巻回されたインクリボン60の3種類のテープロールが収納されている。両面粘着テープ58は、一面に剥離紙が貼着された両面テープであり、印字済みのフィルムテープ59の印字面側に貼り合わされる。
両面粘着テープ58の剥離紙を外側に向けて巻回した第一テープスプール40は、カセットケース31内の左側後部において、先述の支持孔65を介して回転可能に配置されている。フィルムテープ59が巻回された第二テープスプール41は、カセットケース31内の右側後部において、先述の支持孔66を介して回転可能に配置されている。リボンスプール42に巻回されたインクリボン60は、カセットケース31内の右側前部において回転可能に配置されている。
カセットケース31内における第一テープスプール40とリボンスプール42との間には、リボン巻取スプール44が先述の支持孔67を介して回転可能に配置されている。リボン巻取スプール44は、リボンスプール42からインクリボン60を引き出すとともに、文字等の印字にて使用されたインクリボン60を巻き取る。なお、リボン巻取スプール44の下部には、リボン巻取スプール44が逆転することで巻き取ったインクリボン60が緩んでしまうのを防止するためのクラッチバネ(図示せず)が取り付けられている。
図3に示すように、カセットケース31の前面には、平面視で断面半円状をなす溝部である半円溝34Kが、カセットケース31の高さ方向(上面30Aから底面30Bまで)に亘って設けられている。半円溝34Kは、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、ローラホルダ18の軸支部であるホルダ軸181(図6参照)がカセットケース31と干渉しないように設けられた逃がし部である。カセットケース31の前面のうち、半円溝34Kから左に延びる部分を、アーム前面35という。アーム前面35と、アーム前面35から後方へ離間した位置に高さ方向に亘って設けられたアーム背面37とで規定される、テープカセット30の右側から左方に延びる部位をアーム部34という。
図4に示すように、アーム部34内には、第二テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59と、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60とが共に案内されている。アーム前面35の先端部は、後方へ向かって屈曲している。アーム前面35とアーム背面37の先端により、開口34Aが形成されている。フィルムテープ59とインクリボン60とは、開口34Aで重ね合わされて、後述する露出部77に向けて排出される。
アーム背面37と、アーム背面37から連続して設けられた周壁面とにより囲まれた、カセットケース31を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間は、ヘッド挿入部39である。ヘッド挿入部39は、テープカセット30の前面側に設けられた露出部77を介して、テープカセット30の前面側で外部とつながっている。テープカセット30がカセット装着部8(図2参照)に装着された場合、ヘッド挿入部39にはヘッドホルダ74(図15参照)が挿入される。
露出部77では、開口34Aから排出されたフィルムテープ59の一面が前方に露出され、且つその他面が後方のサーマルヘッド10(図15参照)に対向する。本実施形態では、フィルムテープ59の他面がインクリボン60を挟んでサーマルヘッド10に対向している。露出部77では、サーマルヘッド10によるフィルムテープ59への印字が、インクリボン60を使用して行われる。
図3および図4に示すように、開口34Aからテープ排出口49までのフィルムテープ59およびインクリボン60の搬送方向において、ヘッド挿入部39の下流側にはテープ駆動ローラ46が回転可能に軸支されている。テープ駆動ローラ46は、その内部に挿嵌されるテープ駆動軸11(図15参照)によって回転駆動される。テープ駆動ローラ46は、対向する可動搬送ローラ14(図19参照)と協働して、第二テープスプール41からフィルムテープ59を引き出し、第一テープスプール40から両面粘着テープ58を引き出し、フィルムテープ59の印字面に両面粘着テープ58をガイドして接着させる。
テープ駆動ローラ46の上流側には、上下一対の規制部材36が設けられている。規制部材36の基部は、サーマルヘッド10の下流側にて、印字後のフィルムテープ59を上下方向(テープ幅方向)に規制してテープ排出口49に向かって案内する。これにより、フィルムテープ59と両面粘着テープ58とが、位置ズレを生じることなく適正に接着される。
規制部材36の近傍には、ヘッド挿入部39を経由して搬送された使用済みのインクリボン60をフィルムテープ59から離間させ、リボン巻取スプール44に向かって案内するための案内壁47が立設されている。案内壁47とリボン巻取スプール44との間には、案内壁47に沿って案内される使用済みのインクリボン60と、第一テープスプール40に巻回して支持された両面粘着テープ58とが互いに接触するのを防止するための分離壁48が立設されている。
図3および図5に示すように、アーム前面35には、露出部77の右側に隣接して、テープカセット30のテープ種類を示すアーム識別部800が設けられている。アーム識別部800は、テープ種類に応じた規定のパターンで、非押圧部801と押圧部802とを含む。非押圧部801は、スイッチ端子231(図9参照)を挿脱可能な正面視矩形状の孔である。押圧部802は、スイッチ端子231と接触する面部である。本実施形態のアーム識別部800は、5つのスイッチ端子231に対応する5箇所の位置に、非押圧部801および押圧部802のいずれかを有する。以下では、非押圧部801および押圧部802を総称する場合、または何れかを特定しない場合には、単に識別部という。
本実施形態のアーム識別部800では、各識別部の左右方向の位置はそれぞれ異なっている。5つの識別部は、上下方向に重ならないようにジグザグに配置されている。よって、各識別部を結ぶ線は、テープカセット30の着脱方向であるテープカセット30の上下方向と交差する。機械式センサ23(図9参照)とアーム識別部800を用いたテープ種類の検出態様については、別途後述する。
アーム前面35には、アーム識別部800の右側上方に、係止孔820が設けられている。係止孔820は、後述のセンサホルダ19が識別位置(図19に示す位置)に移動した場合に、後述の係止片192(図9および図10参照)が挿入される孔部である(図20参照)。詳細には、係止孔820は、上ケース31Aと下ケース31Bとの結合部にまたがって、アーム識別部800の最も右側に位置する識別部(図5の例では、最下列の押圧部802)の上方から右方向に延びる、正面視で左右方向に長い略長方形状の貫通孔である。
図3に示すように、アーム前面35において、下ケース31Bのアーム識別部800の左側には、正面視で縦長長方形状の貫通孔850が設けられている。貫通孔850は、カセットケース31の成型時の金型の逃がし用に設けられたものであり、特定の機能は有しない。
図6を参照して、印字装置1に備えられた可動機構100の概略構成について説明する。本実施形態の可動機構100は、レバー16、リリースロッド17、ローラホルダ18、センサホルダ19、および後述の壁部20(図7参照)を含み、外圧に応じて可動する一連の機構をいう。
本実施形態では、図6の右下側、左上側、右上側、左下側、上側、下側は、それぞれ、可動機構100の前側、後側、右側、左側、上側、下側と対応する。図6は、可動機構100の動作態様を理解容易にするために、壁部20(図7参照)を取り除いて図示している(後述の図14、図15、図17〜図19も同様)。
ユーザは、カセット装着部8に対してテープカセット30を着脱するときはカバー6を上方に開く。印字装置1にて印字を行う場合にはカバー6を下方に閉じる。レバー16は、カバー6の開閉動作に伴って、レバー軸部161を中心にして上下方向(図6に示す回動方向D1)に回動する。詳細は後述するが、カバー6が上方に開かれるのに伴って、レバー16が上方向に回動する。カバー6が下方に閉じられるのに伴って、レバー16が下方向に回動する。
レバー16の下端には、正面視で左右方向を長手とする板状のリリースロッド17が係合されている。リリースロッド17は、レバー16の回動に伴って左右方向(図6に示す移動方向D2)に移動する。詳細は後述するが、レバー16が下方向(図6の下方向)に回動した場合には、リリースロッド17は左方向(図6の左下方向)に移動する。レバー16が上方向(図6の上方向)に回動した場合には、リリースロッド17は右方向(図6の右上方向)に移動する。
リリースロッド17の後側(図6の左上側)には、ローラホルダ18が設けられている。ローラホルダ18は、プラテンローラ15(図9参照)と可動搬送ローラ14とを備える。ローラホルダ18は、ホルダ軸181を中心に揺動可能に軸支されている。ローラホルダ18の左端縁部には、可動搬送ローラ14がローラ面を後方に露出させつつ回転可能に軸支されている。可動搬送ローラ14の右側には、プラテンローラ15がローラ面を後方に露出させつつ回転可能に軸支されている。可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15は、それぞれテープ駆動ローラ46およびサーマルヘッド10に対向する位置に配置されている(図15参照)。
ローラホルダ18は、付勢バネ(図示せず)によって前方向(図6の右下方向)に常に弾性付勢されている。ローラホルダ18は、リリースロッド17が左右方向(移動方向D2)に移動するのに伴って、ホルダ軸181を中心にして前後方向(図6に示す揺動方向D3)に揺動する。詳細は後述するが、リリースロッド17が左方向に移動した場合には、ローラホルダ18は付勢バネの付勢力に抗って後方(図6の左上方向)に揺動する。リリースロッド17が右方向に移動した場合には、ローラホルダ18は付勢バネの付勢力によって前方(図6の右下方向)に揺動する。
ローラホルダ18におけるホルダ軸181とプラテンローラ15との間には、正面視で略矩形状の開口部を形成する第一ホルダ開口縁182が設けられている。第一ホルダ開口縁182の上縁部は、ローラホルダ18の前面から若干後方に向けて突出している(図8および図9参照)。リリースロッド17の後側、かつ第一ホルダ開口縁182の内側には、センサホルダ19が設けられている。センサホルダ19の左上部には、第一ホルダ開口縁182の上縁部よりも上方に突出したホルダ突出部190が設けられている(図9参照)。第一ホルダ開口縁182およびホルダ突出部190については、後述する。
センサホルダ19には、後方(図6の左上方向)に突出するスイッチ端子231を備えた機械式センサ23が複数設けられている(図9参照)。複数の機械式センサ23は、アーム識別部800に設けられた複数の識別部にそれぞれ対応する位置に配置されている。センサホルダ19は、リリースロッド17の左右方向(移動方向D2)の移動に伴って前後方向(図6に示す移動方向D4)に移動する。詳細は後述するが、リリースロッド17が左方向に移動した場合には、センサホルダ19は後方(図6の左上方向)に移動する。リリースロッド17が右方向に移動した場合には、センサホルダ19は前方(図6の右下方向)に移動する。センサホルダ19は、ローラホルダ18には固定されていないため、ローラホルダ18とは独立して移動可能である。
以上の構成により、本実施形態の可動機構100では、カバー6が下方に閉じられるのに伴って、ローラホルダ18が後方に揺動し、且つ、センサホルダ19が後方に移動する。ローラホルダ18が後方に揺動すると、プラテンローラ15がサーマルヘッド10に圧接され、且つ、可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46に圧接される。センサホルダ19が後方に移動すると、機械式センサ23のスイッチ端子231がアーム識別部800に圧接される。これにより、印字装置1では、カセット装着部8に装着されたテープカセット30を用いた印字動作が可能となり、且つ、テープカセット30のテープ種類を特定可能となる。
カバー6が上方向に開かれるのに伴って、ローラホルダ18が前方に揺動し、且つ、センサホルダ19が前方に移動する。ローラホルダ18が前方に揺動すると、プラテンローラ15がサーマルヘッド10から離間され、且つ、可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46から離間される。センサホルダ19が前方に移動すると、機械式センサ23のスイッチ端子231がアーム識別部800から離間される。これにより、印字装置1では、カセット装着部8にテープカセット30を着脱自在となる。
図6〜図10を参照して、可動機構100に含まれる各部材の物理的構成の詳細について説明する。図7は、図6と同一方向から可動機構100を図示している。ただし、図7および図8では、可動機構100の連結構造を理解容易にするために、ローラホルダ18が印字位置(図19に示す位置)にあり、且つ、センサホルダ19が識別位置(図19に示す位置)にある状態を図示している。また、図7では、レバー16およびリリースロッド17を取り除いて図示している。
図6を参照して、レバー16の物理的構造について説明する。レバー16は、所定の厚みおよび幅を有し、正面視で右上方向に延びる略円弧を描くように湾曲している。レバー16の下端には、レバー16を回動自在に支持するレバー軸部161が設けられている。レバー16の先端部には、レバー突起部162が上方に向けて突設されている。レバー突起部162の左下側には、上面屈曲部163および接触面164が設けられている。上面屈曲部163は、レバー16の湾曲方向の外周側に形成された角部である。接触面164は、上面屈曲部163の下側に連設する面部である。レバー突起部162、上面屈曲部163、接触面164は、カバー6が閉じられるときにレバー押下部61(図2参照)に接触する部位であるが、詳細は後述する。
図6、図7および図15を参照して、リリースロッド17の物理的構造について説明する。図15は、印字装置1を底面視した場合の可動機構100の横断面を示し、且つ、テープカセット30を仮想線(二点鎖線)で示している。図15では、理解を容易にするために、壁部20およびバネ部材22を省略している(後述する図19も同様)。
レバー16におけるレバー軸部161の下端部には、押圧部171と胴部172とを備えたリリースロッド17が係合されている。胴部172は、左右方向を長手方向として延びる角柱状をなす所定の厚みおよび高さを有する。押圧部171は、胴部172の左端部に形成された頭部である。
押圧部171は、ローラホルダ18を前後方向(図15では上下方向)に揺動させる。押圧部171は、平面視で胴部172から前後方向に突出した形状を有しているため、胴部172よりも前後方向長さ(すなわち、厚み)が大きい。平面視で胴部172の前後方向位置から後方(図15では下方向)に向けて左右方向長さが漸減するように、押圧部171の左面から後面に亘って傾斜面が形成されている。押圧部171において左右方向と平行をなす背面部位が、後面1711である。押圧部171において後面1711の左側に連設されて左前方に伸びる傾斜面が、傾斜面1712である。
胴部172の上面には、凹所176が設けられている。凹所176は、胴部172の左右方向における略中央位置から右方向に延びる所定範囲内に設けられている。凹所176は、高さ位置が上面よりも若干低く形成された凹み部分である。凹所176の上面には、センサホルダ19を前後方向に案内するためのロッドガイド部175が形成されている。ロッドガイド部175は、第一ロッドガイド部1751、ロッドガイド斜部1752、第二ロッドガイド部1753を有する。
第一ロッドガイド部1751は、凹所176の前端縁に沿って立設された壁部である。第一ロッドガイド部1751は、凹所176の左端部から中央やや左側にかけて延びる。第二ロッドガイド部1753は、凹所176の後端縁に沿って立設された壁部である。第二ロッドガイド部1753は、凹所176の中央やや右側から右方向に延びる。ロッドガイド斜部1752は、第一ロッドガイド部1751の右端部と第二ロッドガイド部1753の左端部とを平面視で斜めに繋ぐ、凹所176から立設された壁部である。第一ロッドガイド部1751、ロッドガイド斜部1752、第二ロッドガイド部1753は、それぞれ同一の厚み及び高さを有する。ロッドガイド部175は、全体としてレール状の外観を有する。
胴部172の前面における、凹所176の右端部からみた右下側には、第一ガイド部174が設けられている。第一ガイド部174は、胴部172の前面から前方向に突出し、且つ、先端が下方向に屈曲された爪部である。押圧部171には、第二ガイド部173が設けられている。第二ガイド部173は、押圧部171の左面および右面に亘って設けられている。第二ガイド部173は、底面から上方に向けて溝状に凹陥する部位である。第二ガイド部173は、胴部172よりも前側に設けられている。第一ガイド部174および第二ガイド部173は、リリースロッド17の左右方向への移動を案内する部位である。
図7および図8を参照して、壁部20の物理的構造について説明する。壁部20は、左右方向に長い板状部材であって、印字装置1においてリリースロッド17の前方(図7では右下側)に立設されている。壁部20の上端辺は、壁部20の左側から右側(図7では左下側から右上側)に向けて順に、階段状に連なる第一上辺部201、第二上辺部202、第三上辺部203、第四上辺部204、第五上辺部205を有する。
第一上辺部201は、壁部20の左右方向における左端部から中央やや左寄りに亘って形成され、印字装置1の左右方向と平行をなす辺部である。第三上辺部203は、壁部20の中央やや右寄りから右端やや左寄りに亘って形成され、第一上辺部201よりも上方で印字装置1の左右方向と平行をなす辺部である。第五上辺部205は、壁部20の左右方向における右端縁に形成され、第三上辺部203よりも上方で印字装置1の左右方向と平行をなす辺部である。第二上辺部202は、異なる高さ位置にある第一上辺部201と第三上辺部203とを斜めに結ぶ辺部である。第四上辺部204は、異なる高さ位置にある第三上辺部203と第五上辺部205とを斜めに結ぶ辺部である。
第三上辺部203、第四上辺部204、第五上辺部205の下側には、長孔206が形成されている。長孔206は、左右方向に延びる溝状に貫通している。第三上辺部203の左下側には、正面視で円形状の孔部である円孔207が設けられている。円孔207の下側には、正面視で横長長方形状の孔部である第一角孔208が設けられている。第一角孔208よりも下方には、正面視で横長長方角形状の孔部である第二角孔209が設けられている。
リリースロッド17の第一ガイド部174が長孔206に対して摺動可能に係合され、且つ、第二ガイド部173が第一上辺部201に対して摺動可能に係合される。第一ガイド部174が長孔206に沿って案内され、且つ、第二ガイド部173が第一上辺部201に沿って案内されることによって、リリースロッド17が左右方向に移動する。
図6〜図10、図15を参照して、ローラホルダ18の物理的構造について説明する。ローラホルダ18は、先述のように可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15を回転自在に保持する部材であって、リリースロッド17の後側に設けられる。第一ホルダ開口縁182は、左右方向において、ホルダ軸181とプラテンローラ15との間に設けられている。第一ホルダ開口縁182の左辺に連続して、開口を形成する第二ホルダ開口縁183が形成されている。第二ホルダ開口縁183は、正面視で第一ホルダ開口縁182よりも小さい略矩形状の開口縁である。第一ホルダ開口縁182および第二ホルダ開口縁183がつながって、一つの開口部を形成している。
第二ホルダ開口縁183の背後には、ホルダ側受部184が設けられている。ホルダ側受部184は、プラテンローラ15の前面側から右側後方(図15では右下方向)に向けて延び、プラテンローラ15のローラ面に沿った湾曲面を有する。
リリースロッド17は、胴部172が第一ホルダ開口縁182によって形成される開口部の左右方向に沿って延び、且つ、押圧部171が第二ホルダ開口縁183によって形成される開口部に対して右側から挿入されるように配設される。押圧部171がホルダ側受部184から離間しているときは、ホルダ側受部184は押圧部171によって押圧されない。
先述したように、ホルダ軸181を中心に揺動するローラホルダ18は、前方向に常に弾性付勢されている。ホルダ側受部184が押圧されていない状態では、ローラホルダ18が待機位置(図15に示す位置)に保持される。リリースロッド17が左側に移動すると、押圧部171が第二ホルダ開口縁183内でホルダ側受部184に接触して押圧する。この場合、ローラホルダ18が待機位置から後方向(図15では下方向)に移動するが、詳細は後述する。
図6〜図10を参照して、センサホルダ19の物理的構造について説明する。センサホルダ19は、リリースロッド17の後側(図6では左上側)において、第一ホルダ開口縁182の内側に設けられている。センサホルダ19は、箱状のユニット本体191、ホルダ突出部190、機械式センサ23、係止片192、電気基板193、円筒部194、バネ部材22および回転防止部材195を有している。ユニット本体191、ホルダ突出部190、係止片192、円筒部194、および回転防止部材195は、一体に形成されている。
ユニット本体191において、カセット装着部8に装着されているテープカセット30に対向する面をカセット対向面191Aという。ホルダ突出部190は、所定の前後方向の厚みを有し、カセット対向面191Aの左上部(図10では、右上部)に設けられている。
ユニット本体191のカセット対向面191Aには、2箇所の開口である第一保護部開口197および第二保護部開口198が設けられている。第一保護部開口197は、背面視で縦長の略長方形に形成されている。第二保護部開口198は、第一保護部開口197の左上側(図10では右上側)において、第一保護部開口197よりも大きい開口面積で矩形状に形成されている。第一保護部開口197には、1つの機械式センサ23が嵌め込まれる。第二保護部開口198には、4つの機械式センサ23を一体に保持するセンサ収納体88が嵌め込まれる。各保護部開口197、198に嵌め込まれた機械式センサ23は、ユニット本体191に配設された電気基板193と電気的に接続される。
電気基板193は、ユニット本体191の前側に設けられており、前面が、第一ホルダ開口縁182によって形成される開口から前方に露出している。図示しないが、電気基板193の前面には電気配線が接続されている。電気基板193は、この電気配線を介して、印字装置1の内部に備えられた制御回路部400(図13参照)に電気的に接続されている。機械式センサ23のオン・オフの信号は、電気基板193に接続された電気配線を介してCPU401(図13参照)に伝達される。
上記の機械式センサ23が各々有するスイッチ端子231は、カセット対向面191Aから後方に突出している。言い換えると、各スイッチ端子231は、カセット装着部8に装着されているテープカセット30のアーム前面35(図3参照)に対向するように突出している。各スイッチ端子231は、先述したアーム識別部800の識別部(非押圧部801または押圧部802)(図5参照)にそれぞれ対応する位置に設けられている。本実施形態では、5つのスイッチ端子231がジグザグに配置されているので、各スイッチ端子231の左右方向の位置がそれぞれ異なっており、上下方向に重なるスイッチ端子231はない。各スイッチ端子231を結ぶ線は、テープカセット30の着脱方向である印字装置1の上下方向と交差する。カセット対向面191Aの右上部(図10の左上部)には、左右方向を長手とする板状突起である係止片192が設けられている。係止片192は、スイッチ端子231よりも後方への突出長さが大きくなっている。
電気基板193には、正面視で円形の孔部である電気基板孔196が設けられている。ユニット本体191は、前方(図8では右方向)に延びる円筒状の円筒部194を有する。円筒部194は、電気基板193に設けられた電気基板孔196を貫通して前方に突出している。円筒部194は、前後方向に延びる軸孔を有し、この軸孔に小径の円柱部材21が挿入されている。円筒部194の軸孔は、同軸をなすように連通した第一軸孔1941と第二軸孔1942とを含む。第一軸孔1941は、カセット対向面191Aから前方に、円筒部194の中央付近まで延びている。第二軸孔1942は、第一軸孔1941から円筒部194の前端まで延び、且つ、第一軸孔1941よりも開口径が大きい。円筒部194の軸孔に挿入された円柱部材21は、円柱部材21と略同径の第一軸孔1941に沿って前後方向に摺動可能である。円柱部材21の前方側の先端部には、小径の挿入ピン21Aが設けられている。
第二軸孔1942の開口径は、円柱部材21の直径よりも大きい。そのため、円柱部材21と円筒部194との間には、正面視で環状の溝部をなすバネ収容部1943が形成される。バネ収容部1943には、第二軸孔1942の軸長よりも全長が大きいバネ部材22が、バネ部材22の巻回中心に円柱部材21が挿入されて収容されている。バネ収容部1943の内部では、第一軸孔1941と第二軸孔1942との径差によって形成される段差部分に、バネ部材22の後端が接触している。円柱部材21にバネ部材22が巻回された状態で、挿入ピン21Aが円孔207に挿入され、且つ、バネ部材22の前端が壁部20に接触している。これにより、バネ部材22は、弾性圧によってセンサホルダ19を後方(図8では左方向)に付勢する。
円筒部194の前部における開口縁下部には、前方に向けて延びるホルダガイド部199が設けられている。ホルダガイド部199の下方に屈曲した先端部が、リリースロッド17のロッドガイド部175に係合されている。図8においては、ホルダガイド部199は、第二ロッドガイド部1753に係合されている。バネ部材22によって後方に付勢されるセンサホルダ19は、ホルダガイド部199とロッドガイド部175との係合によって後方への移動が規制されている。センサホルダ19は、リリースロッド17が左右方向に移動するのに伴って、ロッドガイド部175に案内されつつ前後方向に移動するが、詳細は後述する。
ユニット本体191の下端、且つホルダガイド部199の下方には、前方に向けて延びる回転防止部材195が設けられている。回転防止部材195は、壁部20の第二角孔209を貫通し、且つ、下方に屈曲した先端部が壁部20の前面に係合されている。センサホルダ19は、挿入ピン21Aと回転防止部材195との上下方向に並ぶ2点で壁部20にて位置決めされることで、円柱部材21を中心とした回転移動が規制される。
図11および図12を参照して、機械式センサ23の詳細について説明する。図12では、5つの機械式センサ23のうちで、最も左上(図10では右上)に位置する機械式センサ23の可動態様を模式的に示している。
図11および図12に示すように、機械式センサ23は、前後方向(図11および図12では左右方向)の長さが小さい薄型箱状のセンサ本体(図示外)の内部に、スイッチ端子231が設けられている。スイッチ端子231は、センサ本体の内部で左右方向(図11および図12では奥手前方向)に延びる軸部232を回動中心として、前後方向に回動可能に設けられている。スイッチ端子231は、常にはバネ(図示外)によって後方向(図11および図12では左方向)に回動した進出位置に移動している。スイッチ端子231の先端側に外圧が加えられると、スイッチ端子231は前方向(図11および図12では右方向)に回動した退入位置に移動する。スイッチ端子231の前方には、スイッチ端子231の変位状態を検出する検出体234が設けられている。
スイッチ端子231は、全体として側面視で略Uの字状に湾曲した平面部を有する板状部材である。スイッチ端子231は、腕部231Aと、突出部231Bとを有する。腕部231Aは、軸部232から径外方向に延びる。突出部231Bは、腕部231Aの先端から後方に進出する。突出部231Bは、腕部231Aから後方に向けて上下方向長さが漸減して、側面視で略Vの字に突出する形状を有する。スイッチ端子231が突出位置に移動した状態では、突出部231Bがカセット対向面191Aよりも後方に進出している。このとき、腕部231Aは検出体234に対して非接触状態となり、機械式センサ23はオフ状態となる。
突出部231Bが有する略Vの字形状の周縁部を押圧するように外圧が加えられると、突出部231Bが前方に向けて退入する。このとき、腕部231Aは検出体234に対して接触状態となり、機械式センサ23はオン状態となる。言い換えると、突出部231Bが後側から水平に押圧された場合のみならず、突出部231Bが上方または下方から垂直に押圧された場合でも、突出部231Bは前方に向けて退入し、機械式センサ23はオン状態となる。
図13を参照して、印字装置1の電気的構成について説明する。図13に示すように、印字装置1は、制御基板上に形成される制御回路部400を備えている。制御回路部400は、各機器を制御するCPU401、CPU401にデータバス410を介して接続されたROM402、CGROM403、RAM404、および入出力インターフェース411等から構成されている。
ROM402には、CPU401が印字装置1を制御するために実行する各種プログラムが記憶されている。カセット装着部8に装着されたテープカセット30のテープ種類を特定するためのテーブルも、ROM402に記憶されている。CGROM403には、キャラクタを印字するための印字用ドットパターンデータが記憶されている。RAM404には、テキストメモリ、印字バッファ等、複数の記憶エリアが設けられている。
入出力インターフェース411には、機械式センサ23、キーボード3、液晶駆動回路(LCDC)405、駆動回路406、407、408等が接続されている。駆動回路406は、サーマルヘッド10を駆動するための電子回路である。駆動回路407は、リボン巻取軸9およびテープ駆動軸11を回転させるテープ送りモータ24を駆動するための電子回路である。駆動回路408は、印字済テープ50を切断する移動刃(図示外)を動作させるカッターモータ25を駆動するための電子回路である。液晶駆動回路(LCDC)405は、ディスプレイ5に表示データを出力するためのビデオRAM(図示外)を有する。
図6、図8、および図14〜図19を参照して、可動機構100の動作態様の詳細について説明する。可動機構100の動作態様を理解容易とするために、図6、図14、図15、および図17〜図19では、壁部20(図7および図8参照)、バネ部材22(図7および図8参照)などを省略して図示している。図6、図8、および図14〜図19では、カバー6に備えられたレバー押下部61、保持部材62および突出片63(図2参照)などを省略して図示している。
カバー6が下方に閉じられることによって開位置(図2参照)から閉位置(図1参照)に変位する場合の、可動機構100の動作態様を説明する。
図6、図14、および図15に示すように、レバー16はレバーバネ(図視せず)によって上方向(図14の回動方向D5)に付勢されている。レバー16の付勢力によってカバー6が開位置にあるとき、レバー突起部162が最も高い位置となる。このとき、レバー16の下端に連結されたリリースロッド17が、リリースロッド17の可動範囲の右端位置にある。
カバー6が開位置にある状態では、ホルダガイド部199が第一ロッドガイド部1751に係合されている。バネ部材22によって後方(図15では下方向)に付勢されるセンサホルダ19は、第一ロッドガイド部1751によって後方向への移動が制限されて、離間位置(図15に示す位置)に保持される。ローラホルダ18のホルダ側受部184は、リリースロッド17の押圧部171から離間している。ローラホルダ18は、押圧部171によって押圧されることなく、付勢バネ(図示せず)によって前方に付勢されて、待機位置(図15に示す位置)に保持される。
カバー6が開位置から閉位置に移動する場合、レバー押下部61(図2参照)が、レバー突起部162、上面屈曲部163、および接触面164の順に当接して下方に押圧する。このため、レバー16は、レバーバネ(図示外)の付勢力に抗して、レバー軸部161を中心にして下方(図14の回動方向D5の反対方向)に回動する。レバー16の回動に伴って、リリースロッド17は右端位置から左方向に移動し始める。
リリースロッド17が左方向に移動するのに伴って、ホルダガイド部199の係合される対象部位が第一ロッドガイド部1751からロッドガイド斜部1752に変化する。ロッドガイド斜部1752は、ホルダガイド部199と係合しながら摺動可能な状態となる。この状態でリリースロッド17が左方向に移動すると、ホルダガイド部199はバネ部材22によって押圧されながらロッドガイド斜部1752に沿って後方に移動する。
リリースロッド17が可動範囲の左端位置の近傍まで移動すると、ホルダガイド部199の係合される対象部位は、ロッドガイド斜部1752から第二ロッドガイド部1753に変化する。カバー6が閉位置に移動すると、図8、および図17〜図19に示すように、ホルダガイド部199が第二ロッドガイド部1753と係合した状態が維持されつつ、リリースロッド17が可動範囲の左端位置に移動する。
第二ロッドガイド部1753は、左右方向に平行をなす壁部である。そのため、第二ロッドガイド部1753がホルダガイド部199と係合している状態では、リリースロッド17が左右方向に移動してもセンサホルダ19は前後方向に移動しない。つまり、センサホルダ19は、第二ロッドガイド部1753によって後方向への移動が制限されて、識別位置(図19に示す位置)に保持される。センサホルダ19が識別位置に移動している場合、センサホルダ19のスイッチ端子231が、テープカセット30のアーム識別部800に圧接される。
一方、リリースロッド17が、右端位置(図6、図14、および図15参照)から左方向に移動するのに伴って、押圧部171の傾斜面1712がローラホルダ18のホルダ側受部184に接触して押圧する。傾斜面1712がホルダ側受部184を押圧するのに伴って、ホルダ側受部184が傾斜面1712に沿って摺動し、且つ、ローラホルダ18が付勢バネ(図示外)の付勢力に抗して後方に揺動する。
カバー6が閉位置に移動すると、図17〜図19に示すように、リリースロッド17が可動範囲の左端位置に移動する。このとき、押圧部171の後面1711がホルダ側受部184に接触して、ローラホルダ18が印字位置(図19に示す位置)に保持される。ローラホルダ18が印字位置に移動している場合、プラテンローラ15が、露出部77に位置するフィルムテープ59およびインクリボン60を介して、サーマルヘッド10を押圧する。可動搬送ローラ14が、フィルムテープ59と両面粘着テープ58とを介して、テープ駆動軸11が挿入されたテープ駆動ローラ46を押圧する。
このように、カバー6が開位置から閉位置に向けて移動するのに連動して、ローラホルダ18が徐々に後方向へ移動する。カバー6が閉位置に近づくのに伴って、プラテンローラ15がサーマルヘッド10を押圧する圧力および可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46を押圧する圧力が徐々に大きくなる。ローラホルダ18が印字位置に移動した状態(図8および図17〜図19参照)では、テープカセット30が強固にカセット装着部8内で固定される。
図8および図17〜図19に示すように、センサホルダ19が識別位置に移動した状態では、係止片192がテープカセット30の係止孔820に挿入される。センサホルダ19に設けられたスイッチ端子231が、テープカセット30のアーム識別部800に対して垂直に対向する。各スイッチ端子231が、それぞれ対向する識別部(非押圧部801または押圧部802)を検出する。これにより、印字装置1に設けられたCPU401(図13参照)が、テープカセット30のテープ種類を判定可能となる。
このように、カバー6が閉じられた状態(図8および図17〜図19参照)では、ローラホルダ18が印字位置に移動し、且つ、センサホルダ19が識別位置に移動する。印字装置1は、安定的かつ正確に印字可能な状態となり、且つ、テープカセット30のテープ種類を判定可能な状態となる。
次に、カバー6が上方に開けられることによって閉位置(図1参照)から開位置(図2参照)に変位する場合の、可動機構100の動作態様を説明する。
図14〜図19には図示しないが、カバー6が閉位置にある状態(図8、および図17〜図19参照)では、カバー6の突出片63(図2参照)がレバー16のレバー突起部162の下方に位置している。カバー6が閉位置から上方に開かれると、突出片63の上面がレバー16を上方向に押し上げる。押し上げられたレバー16は、レバーバネ(図示外)によって付勢されて上方向に回動する。レバー16の回動に伴って、リリースロッド17が左端位置(図19参照)から右方向に移動する。
リリースロッド17が左端位置(図19参照)から右方向に移動すると、付勢バネ(図示外)によってホルダ側受部184が押圧部171(詳細には、傾斜面1712)に沿って前方に摺動する。このとき、プラテンローラ15および可動搬送ローラ14がそれぞれサーマルヘッド10およびテープ駆動ローラ46から離間される。カバー6が開位置に移動すると、図14〜図16に示すように、リリースロッド17が可動範囲の右端位置に移動する。このとき、ローラホルダ18が待機位置(図15参照)に保持される。
一方、リリースロッド17が左端位置(図19参照)から右方向に移動すると、ホルダガイド部199がロッドガイド部175(詳細には、ロッドガイド斜部1752)に沿って前方に摺動する。ホルダガイド部199が前方に摺動するのに伴って、センサホルダ19が識別位置(図19参照)から前方向に移動して、スイッチ端子231がアーム識別部800から離間される。カバー6が開位置に移動すると、図14〜図16に示すように、リリースロッド17が可動範囲の右端位置に移動する。このとき、センサホルダ19が離間位置(図15参照)に保持される。
このように、カバー6が開かれた状態(図14〜図16参照)では、ローラホルダ18が待機位置に移動し、且つ、センサホルダ19が離間位置に移動する。可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15は、カセット装着部8に対して着脱されるテープカセット30に干渉しない。スイッチ端子231は、カセット装着部8に対して着脱されるテープカセット30に干渉しない。印字装置1は、カセット装着部8に対してテープカセット30を着脱自在な状態となる。
次に、プラテンローラ15とサーマルヘッド10とが互いに貼り付いた場合において、この貼り付きを解除する際の可動機構100の動作態様を説明する。以下の説明では、図15および図19に二点鎖線で示しているテープカセット30は、カセット装着部8に装着されていないものとして説明する。
例えば、テープカセット30をカセット装着部8に装着せず、カバー6を閉じた状態で長期間保存した場合、プラテンローラ15とサーマルヘッド10とが貼り付いて、ローラホルダ18が印字位置に誤って固定されてしまう場合がある。仮に、ローラホルダ18が印字位置に誤って固定されたままである場合、可動搬送ローラ14およびプラテンローラ15が、カセット装着部8に装着されるテープカセット30に干渉するため、テープカセット30をカセット装着部8に装着することができない。
本実施形態では、カバー6が閉位置にある状態(図8および図17〜図19参照)から上方に開かれると、レバー16が上方向に回動するのに伴って、リリースロッド17が左端位置(図19参照)から右方向に移動する。しかし、プラテンローラ15がサーマルヘッド10に貼り付いている場合、付勢バネがローラホルダ18に対して印字位置から待機位置に向かう方向に付勢力を加えても、ローラホルダ18は前方に揺動しないことがありうる。
一方、カバー6が上方に開かれる場合には、ホルダガイド部199がロッドガイド部175に沿って摺動する。そのため、プラテンローラ15がサーマルヘッド10に貼り付いているか否かにかかわらず、センサホルダ19は識別位置(図8および図19参照)から離間位置(図15および図16参照)に向けて(つまり、前方に)移動を始める。このとき、プラテンローラ15がサーマルヘッド10に貼り付いていれば、ホルダ突出部190(図8参照)の後面が第一ホルダ開口縁182の上縁部に当接する。つまり、センサホルダ19がローラホルダ18を前方に押圧するため、プラテンローラ15がサーマルヘッド10から引き離される。これにより、ローラホルダ18は、印字位置に誤って固定された状態が解除されて前方に揺動可能となるため、付勢バネ(図示外)の付勢力によって待機位置(図15および図16参照)に移動する。
図5および図20を参照して、カセット装着部8に装着されているテープカセット30のテープ種類の検出態様について説明する。図20に示すように、テープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着されている場合は、カバー6(図2参照)が閉じられてセンサホルダ19が識別位置に移動すると、カセット対向面191Aに設けられた係止片192がテープカセット30の係止孔820に挿入される。カセット対向面191Aに設けられた機械式センサ23が、テープカセット30のアーム識別部800に対向する。5つのスイッチ端子231は、それぞれ対向するアーム識別部800の識別部(非押圧部801または押圧部802)によって選択的に押圧される。
具体的には、押圧部802に対向したスイッチ端子231は、アーム前面35の面部に押圧され、機械式センサ23がオン状態となる。非押圧部801に対向したスイッチ端子231は非押圧部801に挿入され、機械式センサ23がオフ状態となる。
印字装置1では、5つの機械式センサ23のオン・オフの組合せに基づいて、カセット装着部8に装着されているテープカセット30のテープ種類が特定される。詳細には、あらかじめROM402(図13参照)に記憶されているテーブルを参照して、機械式センサ23のオン・オフの組合せに対応するテープ種類が特定される。
以上説明したように、本実施形態の印字装置1では、例えばプラテンローラ15とサーマルヘッド10とが相互に貼り付いた場合、センサホルダ19の識別位置から離間位置への移動に伴って、ホルダ突出部190が第一ホルダ開口縁182を押圧する。これによって、ローラホルダ18が印字位置に誤って固定されている状態が解除され、ローラホルダ18を待機位置に向けて揺動させることができる。
ホルダ突出部190は、センサホルダ19に設けられているため、ローラホルダ18の誤った固定状態を解除するための部品を、センサホルダ19とは別に設ける必要がない。つまり、プラテンローラ15とホルダ軸181との間に、ローラホルダ18の誤った固定状態を解除するための部品を設けるためのスペースを設ける必要がない。このため、ローラホルダ18の誤った固定状態を解除するための部品とセンサホルダ19とを、プラテンローラ15とホルダ軸181との間に設けることができる。ひいては、印字装置1の装置サイズの大型化を抑制することができる。
機械式センサ23を備えたセンサホルダ19が、ローラホルダ18の揺動中心であるホルダ軸181とプラテンローラ15との間に設けられている。ローラホルダ18の設置スペース内にセンサホルダ19が設けられたため、センサホルダ19の設置スペースを別途確保する必要がない。したがって、ローラホルダ18とは独立して動作するセンサホルダ19を、印字装置1を大型化することなく設けることができ、筐体の省スペース化に役立つ。また設計の自由度が増す。
本実施形態のホルダ突出部190は、センサホルダ19における左上部に設けられている。言い換えると、ホルダ突出部190は、センサホルダ19の左右方向における中央よりも、ホルダ軸181から離れた部分に設けられている。このため、例えばプラテンローラ15とサーマルヘッド10とが相互に貼り付いた場合に、ホルダ軸181に近い位置にホルダ突出部190が設けられた場合に比べて、プラテンローラ15とサーマルヘッド10との貼り付きを解除する際に必要な力が小さくなる。よって、ローラホルダ18が印字位置に誤って固定されている状態をより確実に解除することができる。
本実施形態では、リリースロッド17を移動させることで、ローラホルダ18とセンサホルダ19とを独立して移動させることができる。また、ローラホルダ18が印字位置に誤って固定されている場合でも、リリースロッド17を移動させることで、ホルダ突出部190を第一ホルダ開口縁182に当接させ、ローラホルダ18の誤った固定状態を解除することができる。
本実施形態では、リリースロッド17の移動は、カバー6の開閉動作に連動している。このため、プラテンローラ15とローラホルダ18とが印字位置で固定された場合においても、ユーザがカバー6の開動作を行った場合に、印字位置での固定が解除される。このため、ユーザが印字装置1を使用するためにカバー6を開けた場合には、必ずローラホルダ18とプラテンローラ15とが待機位置に移動している。よって、ユーザがテープカセット30を着脱する際に、テープカセット30がプラテンローラ15に干渉することを防止できる。
リリースロッド17の移動に伴って、ローラホルダ18が回動し、且つ、センサホルダ19が移動する。言い換えると、リリースロッド17を移動させることで、ローラホルダ18とセンサホルダ19とが独立して動作する。印字装置1は、ローラホルダ18を動作させる部材と、センサホルダ19を動作させる部材とを別々に備える必要がない。したがって、印字装置1の構成部品数を低減して、装置サイズの大型化を抑制することができる。
カバー6の開閉動作に伴って、リリースロッド17が移動する。カバー6が開かれると、カセット装着部8にテープカセット30を着脱可能となる。カバー6が閉じられると、サーマルヘッド10による印字が可能となり、且つ、複数の機械式センサ23によるテープ種類の検出が可能となる。したがって、ユーザがカバー6を開閉するだけで、印字装置1をカバー6の状態に応じた最適な使用状態にすることができ、印字装置1の操作性を向上させることができる。
本実施形態の印字装置1では、機械式センサ23を備えたセンサホルダ19が、ローラホルダ18とは独立して移動可能である。したがって、機械式センサ23の可動性を向上させて、テープ種類の検出を適切に行うことができる。機械式センサ23の位置や数量などに制約を受けることなく、印字装置1の設計の自由度を向上できる。
上記実施形態において、フィルムテープ59が本発明の「テープ」に相当し、アーム識別部800が本発明の「指標部」に相当する。サーマルヘッド10が本発明の「印字ヘッド」に相当し、機械式センサ23が本発明の「センサ」に相当する。印字位置が本発明の「第一位置」に相当し、待機位置が本発明の「第二位置」に相当する。識別位置が本発明の「第三位置」に相当し、離間位置が本発明の「第四位置」に相当する。ホルダ突出部190が本発明の「解除部」に相当し、リリースロッド17が本発明の「ロッド部」に相当する。第一ホルダ開口縁182が本発明の「開口縁」に相当する。
なお、本発明の印字装置1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ホルダ突出部190は、センサホルダ19の左上部に設けられていたが、これに限定されない。例えば、ホルダ突出部190は、センサホルダ19の右下部に設けてもよい。また、ホルダ突出部190が、第一ホルダ開口縁182に当接することで、プラテンローラ15とローラホルダ18との印字位置での固定を解除していたが、これに限定されない。例えば、ホルダ突出部190が、ローラホルダ18における第一ホルダ開口縁182以外の部分に当接してもよい。
機械式センサ23の構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、スイッチ端子231は、ゴムや巻きバネなどの弾性体であって、前後方向に進退可能な軸体であってもよい。この場合、例えばスイッチ端子231に上下方向からの外圧が加えられたとしても、その外圧に応じてスイッチ端子231が弾性変形することで破損等が防止される。
また、機械式センサ23に代えて、発光部を有する反射型センサを用いてもよい。この場合、例えば、アーム識別部800(図3および図5参照)における押圧部802を、光を反射する反射面に変更し、非押圧部801を、光を反射しない非反射面に変更するとよい。この場合、反射型センサが発した光が、反射面によって反射された場合には、反射型センサの受光部で光が検出され、非反射面によって反射されなかった場合には、反射型センサの受光部で光が検出されない。印字装置1は、この光の有無によってテープ種類を特定できる。また、押圧部802は面部、非押圧部801は孔部のままであっても、反射率の違いにより、孔部の有無を検出できてテープ種類を特定できる。
また、機械式センサに代えて、受光部を有し、受光部による受光の有無を検出する光学式センサ(いわゆる透過型センサ)を用いてもよい。この場合、例えば、テープカセット30のアーム部34にテープ種類に対応した孔を設け、印字装置1に発光部を設けてもよい。そして、発光部が発した光が、アーム部34に設けられた孔を介して、光学式センサの受光部によって検出されるようにしてもよい。印字装置1は、受光部によって検出される光の有無によってテープ種類を特定できる。