JP5454326B2 - 等速電気泳動法 - Google Patents

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Description

本発明は、等速電気泳動法に関するものであり、特に、等速電気泳動により、血液由来試料中の分析物又はそのアナログ、当該分析物又はそのアナログとの複合体を形成し得る物質、当該分析物又はそのアナログの電気泳動移動度を変化させ得る物質及び検出可能な標識物質を含む複合体を濃縮すると共に、当該複合体と血液由来試料中の共存物質とを分離する方法及び分離された複合体の量又に基づいて試料中の分析物を測定する方法に関する。
キャピラリーや微小流体チップ(Microfluidics chip)を用いた電気泳動分離は、少量の試料を短時間で高精度に分析することができる分析方法として広く利用されている。
しかしながら、キャピラリー内にインジェクションできる試料の量が少ないことに起因する感度不足が問題となっている。
この問題を解消するため、等速電気泳動(Isotachophoresis:ITP)等により試料を予備的に分離・濃縮(オンライン前濃縮法)した後、分離・濃縮された試料をキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)又はキャピラリーゲル電気泳動(CGE)に供する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2等)。
ITPは、試料中の分析物よりも電気泳動移動度の速い(大きい)リーディングイオンを含む泳動媒体(リーディング電解液:LB)と、試料中の分析物よりも電気泳動速度の遅い(小さい)トレーリングイオンを含む泳動媒体(トレーリング電解液:TB)の間に分析物を含む試料を挟み込んだ状態で電圧を印加することにより、分析物が試料中の他の成分から分離されると共に、分析物が濃縮されるという原理に基づくものである。
一方、ITPにおいて、分析物の電気泳動移動度と分離したい成分の電気泳動移動度の中間の電気泳動移動度を有するスペーサーイオンを用いて、当該スペーサーイオンの前後に分析物と分離したい成分とを分配することによって分析物と他の成分との分離効率を高める方法、及び使用される種々のスペーサーイオンが提案されている(特許文献3、非特許文献1等)。
特開2004-325191 特開2006-317357 特表2007-518977
Electrophoresis 2006, 27, 984-991
しかしながら、血液由来試料を試料として用い、ITPにより、当該血液由来試料中の分析物又はそのアナログ、当該分析物又はそのアナログとの複合体を形成し得る物質:Complex Forming Substance(以下、CFSと略記する。)、当該分析物又はそのアナログの電気泳動移動度を変化させ得る物質(以下、移動度変化物質と略記する。)及び検出可能な標識物質を含む複合体を濃縮すると共に、当該複合体と血液由来試料中の共存物質とを分離する場合には、当該複合体と血液由来試料中の共存物質とを十分に分離できない場合があることが判った。
従って、本発明は、ITPにより、血液由来試料中の分析物又はそのアナログ、CFS、移動度変化物質及び検出可能な標識物質を含む複合体を濃縮すると共に、当該複合体と血液由来試料中の共存物質とを迅速、簡便且つ高精度に分離する方法及び分離された複合体の量又は当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子の量に基づいて試料中の分析物を高感度に測定する方法に関する。
本発明は、以下の構成よりなる。
1.
(A)2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)イオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、等速電気泳動(ITP)によって、下記[A-1]〜[A-3]の何れかの分離を行うと共に、下記複合体A、下記複合体A'又は下記複合体A''を濃縮する、ことを特徴とする複合体の分離方法、
[A-1] (i)(a)血液由来試料中の分析物、(b)分析物の電気泳動移動度を変化させ得る物質(移動度変化物質)が結合した、1種以上の、当該分析物との複合体を形成し得る物質(CFS)(移動度変化CFS)及び(c)標識物質が結合した、1種以上のCFS(標識CFS)を含む複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離、
[A-2] (i)(a')標識物質が結合した、分析物のアナログ(標識アナログ)及び(b)1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離、
[A-3] (i)(a'')移動度変化物質が結合した分析物のアナログ(移動度変化アナログ)及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFS又は/及び分析物と標識CFSを含む複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離。
2.
上記工程に加えて更に、(B)前記工程(A)の結果分離された、下記[B-1]〜[B-3]の何れかを、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)又はキャピラリーゲル電気泳動(CGE)によって、これらを更に分離することを特徴とする上記1に記載の複合体の分離方法、
[B-1] (i)当該複合体Aと(iii)血液由来試料中の共存物質、
[B-2] (i)当該複合体A'と(iii)血液由来試料中の共存物質、
[B-3] (i)当該複合体A''と(iii)血液由来試料中の共存物質。
3.
上記1又は2の方法によって分離された、[C-1]当該複合体Aの量又は当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFSの量、[C-2]当該複合体A'の量又は当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログの量、或いは[C-3]当該複合体A''の量、又は当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFSの量又は/及び分析物と標識CFSを含む複合体B''の量、を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求めること、を特徴とする分析物の測定方法。
即ち、本発明者らは、血液由来試料を試料として用い、ITPにより、当該血液由来試料中の分析物又はそのアナログ、CFS、移動度変化物質及び検出可能な標識物質を含む複合体を濃縮すると共に、当該複合体と血液由来試料中の共存物質とを分離する場合には、ITPにおけるスペーサーイオンとして従来から知られている種々のイオンのうち、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンのみが、当該複合体と血液由来試料中の共存物質との分離を可能とすること(言い換えれば、このような場合においては、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンのみが、当該複合体と血液由来試料中の共存物質との間のスペーサーイオンとなり得ること)を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の方法により、ITPを使用して、血液由来試料中の分析物又はそのアナログ、CFS、移動度変化物質及び検出可能な標識物質を含む複合体(即ち、分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')を濃縮すると共に、当該複合体と血液由来試料中の共存物質とを迅速、簡便且つ高精度に分離することができる。その結果、分離された複合体の量等に基づいて試料中の分析物を高精度に測定することができる。更には、ITPにより濃縮・分離された当該複合体をCZE又はCGEに供すれば、血液由来試料中の分析物を高精度且つ高感度に測定することが可能となる。
実施例1で作製した、DNA標識抗体〔250bpDNA断片(移動度変化CFS)が結合した抗AFP抗体WA1Fab'フラグメント)の製造スキームを示したものである。 実施例1で作製した、キャピラリーチップのレイアウトを示したものである。 実施例1で、キャピラリー内に導入された泳動用試料と試液の配置関係を示したものである。 実施例1で得られた、泳動用試料A(血清無添加試料)〔実験No.1-1〕を用いた場合(ITP)のエレクトロフェログラムと泳動用試料B(AFP添加試料)〔実験No.1-2〕を用いた場合(ITP)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例1で得られた、泳動用試料C(血清添加試料)〔実験No.1-3〕を用いた場合(ITP)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例1で得られた、泳動用試料E(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.1-5〕を用いた場合(ITP)のエレクトロフェログラムと泳動用試料D(血清含有試料:ビリルビン無添加)〔実験No.1-4〕を用いた場合(ITP)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例1で得られた、泳動用試料F(血清+MESイオン含有試料)〔実験No.1-6〕を用いた場合(ITP)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例1で得られた、泳動用試料G(血清+ビリルビン+MESイオン含有試料)〔実験No.1-7〕を用いた場合(ITP)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例2で得られた、泳動用試料A(血清無添加試料)〔実験No.2-1〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムと泳動用試料B(AFP添加試料)〔実験No.2-2〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例2で得られた、泳動用試料C(血清添加試料)〔実験No.2-3〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例2で得られた、泳動用試料D(血清含有試料)〔実験No.2-4〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例2で得られた、泳動用試料E(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.2-5〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例2で得られた、泳動用試料F(血清+MESイオン含有試料)〔No.実験2-6〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例2で得られた、泳動用試料G(血清+ビリルビン+MESイオン含有試料)〔実験No.2-7〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、泳動用試料H(血清無添加試料)〔実験No.3-1〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムと泳動用試料I(PIVKAII添加試料)〔実験No.3-2〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、泳動用試料J(血清添加試料)〔実験No.3-3〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、泳動用試料K(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.3-4〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、イオン種としてMESイオンを含み、血清及びビリルビンを含む泳動用試料L〔実験No.3-5〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、イオン種を含まない泳動用試料M〔実験No.3-6〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、イオン種としてMESイオンを含む泳動用試料N〔実験No.3-7〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、イオン種としてMOPSを含む泳動用試料O〔実験No.3-8〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、イオン種としてMOPSOを含む泳動用試料P〔実験No.3-9〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、イオン種としてタウリンを含む泳動用試料Q〔実験No.3-10〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例3で得られた、イオン種としてグルタミン酸イオンを含む泳動用試料R〔実験No.3-11〕を用いた場合(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例4得られた、ヘパリンを含有しない〔ヘパリン 0%(w/v)〕試液を用いた場合〔実験No.4-1〕(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例4得られた、ヘパリンを0.5%(w/v)含有する試液を用いた場合〔実験No.4-2〕(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。 実施例4得られた、ヘパリンを2%(w/v)含有する試液を用いた場合〔実験No.4-3〕(ITP-CE)のエレクトロフェログラムを示したものである。
1.等速電気泳動(ITP)
ITPは、細管(キャピラリー)内において、試料中の分析対象物(イオン)よりも電気泳動移動度の速い(大きい)イオン(リーディングイオン)を含む泳動媒体(リーディング電解液:LB)と、試料中の分析対象物(イオン)よりも電気泳動速度の遅い(小さい)イオン(トレーリングイオン)を含む泳動媒体(トレーリング電解液;以下、TBと略記する。)の間に分析対象物を含む試料を挟み込みんだ状態で電圧を印加すると、電気泳動度に従って分析対象物(イオン)と他の成分(イオン)とがそれぞれ異なるゾーンに分離されると共に、分析対象物(イオン)の濃度がリーディングイオン濃度よりも低い場合、分析対象物(イオン)が濃縮され、定常状態に達すると全ての成分(イオン)は等速で泳動する、という現象に基づくものである。
本発明は、ITPにより、血液由来試料中の分析物又はそのアナログ、CFS、移動度変化物質及び検出可能な標識物質を含む複合体(即ち、分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')(以下、本発明に係る複合体と略記する場合がある。)を濃縮すると共に、当該複合体と血液由来試料中の共存物質とを分離する方法、特に、後述するように、CZE又はCGE等に供するための試料(即ち、分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')をITPにより予備的に分離・濃縮する方法(オンライン前濃縮法)に適用することができる。
本発明におけるITPとしては、以下の方法が挙げられる。
(A)非競合法:
ITPを行わせる細管(キャピラリー)内のLBゾーンとTBゾーンの間に存在させた、血液由来試料中の分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体Aを、細管の両側に電圧を印加して、ITPによって、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する方法。
(B)競合法:
ITPを行わせる細管(キャピラリー)内のLBゾーンとTBゾーンの間に存在させた、検出可能な標識物質が結合した標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'を、細管の両側に電圧を印加することによって、ITPによって、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i')当該複合体A'と(ii')当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログ及び(iii')血液由来試料中の共存物質とを分離する方法、または
ITPを行わせる細管(キャピラリー)内のLBゾーンとTBゾーンの間に存在させた、移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A''を、細管の両側に電圧を印加することによって、ITPによって、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i'')当該複合体A''と(ii'')当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFS又は/及び分析物と標識CFSを含む複合体B''、及び(iii'')血液由来試料中の共存物質とを分離する方法。
2.本発明の分離方法
本発明は、上記したITPを、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下で実施すること、言い換えれば、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下で血液由来試料をITPに適用することを特徴とする。
MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でITPを行うことにより、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')と血液由来試料中の共存物質との分離をより効率的に行うことができる。
即ち、MESイオン及びグルタミン酸イオンの不存在下では、本発明に係る複合体と血液由来試料中の共存物質の電気泳動移動度は同程度であるので、これらは充分に分離されない。しかしながら、MESイオン及びグルタミン酸イオンは、本発明に係る複合体と血液由来試料中の共存物質の中間の電気泳動移動度を有しているため、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下にあっては、結果として、MESイオン又はグルタミン酸イオンのゾーン(プラグ)が本発明に係る複合体のゾーン(プラグ)と血液由来試料中の共存物質のゾーン(プラグ)との間に挿入され、当該複合体と当該共存物質とをより充分に分離することができる。
前述したように、ITPにおけるスペーサーイオンとしては、MESイオン及びグルタミン酸イオンを含め種々のイオンが知られている。
しかしながら、血液由来試料を試料として用い、ITPにより、当該血液由来試料中の分析物又はそのアナログ、CFS、移動度変化物質及び検出可能な標識物質を含む複合体を濃縮すると共に、当該複合体と血液由来試料中の共存物質とを分離する場合には、MESイオン及びグルタミン酸イオンのみが、当該複合体と血液由来試料中の共存物質との分離を可能とする(言い換えれば、このような場合においては、MESイオン及びグルタミン酸イオンのみが、当該複合体と血液由来試料中の共存物質との間のスペーサーイオンとなり得る)。
このことは、これまで全く知られていないことであり、本願発明者等が初めて見出したものである。
即ち、本発明の分離方法は、(A)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、下記[A-1]〜[A-3]の何れかの分離を行うと共に、下記複合体A、下記複合体A'又は下記複合体A''を濃縮する、ことを特徴とする、
[A-1] (i)(a)血液由来試料中の分析物、(b)分析物の電気泳動移動度を変化させ得る物質(移動度変化物質)が結合した、1種以上の、当該分析物との複合体を形成し得る物質(CFS)(移動度変化CFS)及び(c)標識物質が結合した、1種以上のCFS(標識CFS)を含む複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離、
[A-2] (i)(a')標識物質が結合した、分析物のアナログ(標識アナログ)及び(b)1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離、
[A-3] (i)(a'')移動度変化物質が結合した分析物のアナログ(移動度変化アナログ)及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFS又は/及び分析物と標識CFSを含む複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離。
上記したように、本発明の分離方法は、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、本発明に係る複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質とを分離すると共に、本発明に係る複合体を濃縮する方法に関するものであるが、以下の2つの方法に大別される。
(1)ITPを行う前に本発明に係る複合体を予め形成させ、形成された本発明に係る複合体をITPにより分離・濃縮する方法(本発明の分離方法1)
(2)ITPにより(ITPを行いながら)、本発明に係る複合体を形成させると共にこれを分離・濃縮する方法(本発明の分離方法2)
2−1.本発明の分離方法1
この方法においては、本発明の分離方法(ITP)を実施する前に、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')を予め形成させる必要がある。次いで、形成された複合体を含有する溶液をITPを行わせる細管(キャピラリー)(以下、ITP用細管と略記する場合がある。)内のLBゾーンとTBゾーンの間に存在させ(導入し)、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPを行う。
(1)複合体の形成
本発明に係る複合体を形成させる方法としては、最終的に本発明の複合体を形成することができる方法であればよく、例えば、(1−1)細管(キャピラリー)外で複合体を形成させる方法(例えば特表平10-512371号、WO2002/082083等)、(1−2)細管(キャピラリー)内で複合体を形成させる方法(例えば特開2005-31070号、特表2000-516343号、特開2003-202322号等)等の自体公知の複合体形成方法が使用できる。
なかでも、細管(キャピラリー)内で複合体を形成させる方法を用いるのが好ましい。
(1−1)細管(キャピラリー)外で複合体を形成させる方法
例えば特表平10-512371号、WO2002/082083等に記載の方法に準じて以下のように実施すればよい。(複合体形成方法1−1)
即ち、非競合法の場合には、(a)血液由来試料中の分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(c)1種以上の標識CFSを、例えば水やこの分野で用いられる緩衝液(例えばトリス緩衝液,リン酸緩衝液,ベロナール緩衝液,ホウ酸緩衝液,グッド緩衝液,SSC緩衝液,TBE緩衝液,TAE緩衝液等のハイブリダイゼーション法,免疫法等の分野で用いられる緩衝液等)等に直接添加して溶解、分散若しくは懸濁させてこれらを互いに接触させることにより、これら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含む溶液を得るか、または上記(a)〜(c)のそれぞれを一旦上記した如き水または緩衝液に添加して溶解、分散若しくは懸濁させて溶液とし、これら溶液を互いに混合して(a)〜(c)を接触させることにより、これら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含む溶液を得る。
また、標識アナログを用いる競合法の場合には、(a')標識アナログ、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(a)血液由来試料中の分析物を、上記した如き水または緩衝液に直接添加して溶解、分散若しくは懸濁させてこれらを互いに接触させること〔(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの接触、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの接触〕により、(a')及び(b)を含む複合体A'、(a)及び(b)を含む複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含む溶液を得るか、または上記(a)、(a')及び(b)のそれぞれを一旦上記した如き水または緩衝液に添加して溶解、分散若しくは懸濁させて溶液とし、これら溶液を互いに混合するか或いは(a)を含む溶液と(a')を含む溶液とを混合した後にこれと(b)を含む溶液と混合するかしてこれらを互いに接触させること〔(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの接触、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの接触〕により、(a')及び(b)を含む複合体A'、(a)及び(b)を含む複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含む溶液を得る。
更に、移動度変化アナログを用いる競合法の場合には、(a'')移動度変化アナログ、(c)1種以上の標識CFS、及び(a)血液由来試料中の分析物を、上記した如き水または緩衝液に直接添加して溶解、分散若しくは懸濁させてこれらを互いに接触させること〔(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの接触、及び(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSとの接触〕により、(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)及び(c)を含む複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の(a'')移動度変化アナログを含む溶液を得るか、または上記(a)、(a'')及び(c)のそれぞれを一旦上記した如き水または緩衝液に添加して溶解、分散若しくは懸濁させて溶液とし、これら溶液を互いに混合するか或いは(a)を含む溶液と(a'')を含む溶液とを混合した後にこれと(c)を含む溶液と混合するかしてこれらを互いに接触させること〔(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの接触、及び(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSとの接触〕により、(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)及び(c)を含む複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の(c)標識アナログを含む溶液を得る。
(1−2)細管(キャピラリー)内で複合体を形成させる方法
例えば特開2005-31070号等に記載の方法に準じて以下のように実施することができる(複合体形成方法1−2−1)。
即ち、非競合法の場合には、(a)分析物を含む血液由来試料(又はこれを含む上記した如き溶液)、(b)1種以上の移動度変化CFSを含む上記した如き溶液、及び(c)1種以上の標識CFSを含む上記した如き溶液をそれぞれ異なる細管(チャネル)から混合用細管内に導入し、当該混合用細管内でこれらを混合・反応させてこれら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含む溶液を得るか、または上記(a)〜(c)のうちの2種を含む溶液と残りの1種を含む溶液をそれぞれ異なる細管(チャネル)から混合用細管内に導入し、当該混合用細管内でこれらを混合・反応させてこれら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含む溶液を得る。
また、標識アナログを用いる競合法の場合には、(a')標識アナログを含む上記した如き溶液、(b)1種以上の移動度変化CFSを含む上記した如き溶液、及び(a)分析物を含む血液由来試料(又はこれを含む上記した如き溶液)をそれぞれ異なる細管(チャネル)から混合用細管内に導入し、当該混合用細管内でこれらを混合・反応させて〔(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの反応、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの反応により〕、(a')及び(b)を含む複合体A'、(a)及び(b)を含む複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含む溶液を得るか、または上記(a)、(a')及び(b)のうちの2種を含む溶液と残りの1種を含む溶液をそれぞれ異なる細管(チャネル)から混合用細管内に導入し、当該混合用細管内でこれらを混合・反応させて〔(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの反応、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの反応により〕、(a')及び(b)を含む複合体A'、(a)及び(b)を含む複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含む溶液を得る。
更に、移動度変化アナログを用いる競合法の場合には、(a'')移動度変化アナログを含む上記した如き溶液、(c)1種以上の標識CFSを含む上記した如き溶液、及び(a)分析物を含む血液由来試料(又はこれを含む上記した如き溶液)をそれぞれ異なる細管(チャネル)から混合用細管内に導入し、当該混合用細管内でこれらを混合・反応させて〔(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの反応、及び(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSとの反応により〕、(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)及び(c)を含む複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の(a'')移動度変化アナログを含む溶液を得るか、または上記(a)、(a'')及び(c)のうちの2種を含む溶液と残りの1種を含む溶液をそれぞれ異なる細管(チャネル)から混合用細管内に導入し、当該混合用細管内でこれらを混合・反応させて〔(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの反応、及び(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSとの反応により〕、(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)及び(c)を含む複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の(c)標識アナログを含む溶液を得る。
また、例えば特表2000-516343号、特開2003-202322号等に記載の方法に準じて以下のように実施することもできる(複合体形成方法1−2−2)。
即ち、非競合法の場合には、(a)分析物を含む血液由来試料(又はこれを含む上記した如き溶液)、(b)1種以上の移動度変化CFSを含む上記した如き溶液、及び(c)1種以上の標識CFSを含む上記した如き溶液を、分析物、移動度変化CFS及び標識CFSのうち、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料または溶液が、それよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料又は溶液の上流に位置するように(a)〜(c)を分析用細管内に配置させた後、電界印加によって(ITP以外の電気泳動法によって)電気泳動移動度の高い物質が、電気泳動移動度の低い物質を追い越すことによってこれらを電気泳動的に接触・反応させてこれら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含む溶液を得るか、または上記(a)〜(c)のうちの2種を含む溶液〔(a)及び(b)を含む溶液(分析物-移動度変化CFS中間複合体を含む溶液)、(a)及び(c)を含む溶液(分析物-標識CFS中間複合体を含む溶液)、又は(b)及び(c)を含む溶液〕と残りの1種を含む溶液を、分析物、移動度変化CFS、標識CFS、分析物-移動度変化CFS中間複合体及び分析物-標識CFS中間複合体のうち、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料または溶液が、それよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料又は溶液の上流に位置するように当該試料及び溶液を分析用細管内に配置させた後、電界印加によって(ITP以外の電気泳動法によって)電気泳動移動度の高い物質が、電気泳動移動度の低い物質を追い越すことによってこれらを電気泳動的に接触・反応させてこれら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含む溶液を得る。
また、標識アナログを用いる競合法の場合には、(a')標識アナログを含む上記した如き溶液、(b)1種以上の移動度変化CFSを含む上記した如き溶液、及び(a)分析物を含む血液由来試料(又はこれを含む上記した如き溶液)を、標識アナログ、移動度変化CFS及び分析物のうち、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料または溶液が、それよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料又は溶液の上流に位置するように(a)、(a'及び(b)を分析用細管内に配置させた後、電界印加によって(ITP以外の電気泳動法によって)電気泳動移動度の高い物質が、電気泳動移動度の低い物質を追い越すことによってこれらを電気泳動的に接触・反応させて〔(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの反応、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの反応により〕、(a')及び(b)を含む複合体A'、(a)及び(b)を含む複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含む溶液を得るか、または上記(a)、(a')及び(b)のうちの2種を含む溶液〔(a')及び(a)を含む溶液、(a')及び(b)を含む溶液(標識アナログ-移動度変化CFS複合体を含む溶液)、又は(a)及び(b)を含む溶液(分析物-移動度変化CFS複合体を含む溶液)と残りの1種を含む溶液を、分析物、標識アナログ、移動度変化CFS、標識アナログ-移動度変化CFS複合体及び分析物-移動度変化CFS複合体のうち、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料または溶液が、それよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料又は溶液の上流に位置するように当該試料及び溶液を分析用細管内に配置させた後、電界印加によって(ITP以外の電気泳動法によって)電気泳動移動度の高い物質が、電気泳動移動度の低い物質を追い越すことによってこれらを電気泳動的に接触・反応させてこれらを混合・反応させて〔(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの反応、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの反応により〕、(a')及び(b)を含む複合体A'、(a)及び(b)を含む複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含む溶液を得る。
更に、移動度変化アナログを用いる競合法の場合には、(a'')移動度変化アナログを含む上記した如き溶液、(c)1種以上の標識CFSを含む上記した如き溶液、及び(a) 分析物を含む血液由来試料(又はこれを含む上記した如き溶液)を、移動度変化アナログ、標識CFS及び分析物のうち、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料または溶液が、それよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料又は溶液の上流に位置するように(a)、(a'')及び(c)を分析用細管内に配置させた後、電界印加によって(ITP以外の電気泳動法によって)電気泳動移動度の高い物質が、電気泳動移動度の低い物質を追い越すことによってこれらを電気泳動的に接触・反応させて〔(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの反応、及び(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSとの反応により〕、(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)及び(c)を含む複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の(a'')移動度変化アナログを含む溶液を得るか、または上記(a)、(a'')及び(c)のうちの2種を含む溶液〔(a'')及び(a)を含む溶液、(a)及び(c)を含む溶液(分析物-標識CFS複合体を含む溶液)、又は(a'')及び(c)を含む溶液(移動度変化アナログ-標識CFS複合体を含む溶液〕と残りの1種を含む溶液を、分析物、移動度変化アナログ、標識CFS、分析物-標識CFS複合体及び移動度変化アナログ-標識CFS複合体のうち、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料または溶液が、それよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を含有する試料又は溶液の上流に位置するように当該試料及び溶液を分析用細管内に配置させた後、電界印加によって(ITP以外の電気泳動法によって)電気泳動移動度の高い物質が、電気泳動移動度の低い物質を追い越すことによってこれらを電気泳動的に接触・反応させてこれらを混合・反応させて〔(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの反応、及び(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSとの反応により〕、(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)及び(c)を含む複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の(c)標識アナログを含む溶液を得る。
(2)ITP
上記の如くして形成された本発明に係る複合体を含有する溶液〔複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFSを含む溶液、複合体A'、複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の標識アナログを含む溶液、又は複合体A''、複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の標識アナログを含む溶液〕をITP用細管(キャピラリー)内のLBゾーンとTBゾーンの間に存在させ(導入し)、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPを行い、本発明に係る複合体の分離と濃縮を行う。
即ち、本発明の分離方法1は、具体的には以下の工程(1)及び(2)を含むものである。
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-3]の何れかの溶液を導入する工程(導入工程)、
[I-1] (a)血液由来試料中の分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS及び(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液、
[I-2] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSを接触して得られる、これら(a')及び(b)を含む複合体A'、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSを接触して得られる、これら(a)及び(b)を含む複合体B'、及び当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含有する溶液、
[I-3] (a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a)及び(c)を含む複合体B''、及び当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液;
および
(2)当該複合体A、当該複合体A'又は当該複合体A''を、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、細管に電圧を印加して、ITPによって、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、下記[A-1]〜[A-3]の何れかの分離を行う工程(濃縮分離工程)、
[A-1] (i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離、
[A-2] (i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離、
[A-3] (i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び当該複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離。
(2−1)導入工程
導入工程は、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でITPを実施するために、本発明に係る複合体を含有する溶液〔複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFSを含む溶液、複合体A'、複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の標識アナログを含む溶液、又は複合体A''、複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の標識CFSを含む溶液〕をITP用細管(キャピラリー)内のLBゾーンとTBゾーンの間に存在させる工程(導入・配置させる工程)である。
導入工程において、本発明に係る複合体を含有する溶液をITP用細管内に導入する方法としては、当該溶液をITP用細管(キャピラリー)内のLBゾーンとTBゾーンの間に存在させる(導入・配置させる)ことができる方法であればよく、自体公知の導入方法が使用可能である。
より具体的には、例えば上記した(1−1)細管(キャピラリー)外で複合体を形成させる方法により、本発明に係る複合体を含有する溶液〔複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFSを含む溶液、複合体A'、複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の標識アナログを含む溶液、又は複合体A''、複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の標識CFSを含む溶液〕を得た場合には、例えば細管に電圧を印加して、溶液を電気的に細管内に導入する方法、細管内を加圧又は/及び減圧して、溶液を細管内に導入する方法、毛細管現象を利用して溶液を細管内に導入する方法等が使用可能である。
また、本発明に係る複合体を含有する溶液をITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入して配置させる方法としては、自体公知の導入・配置方法が使用可能である。このような自体公知の導入・配置方法としては、例えば、(1)先ずLB(又はTB)を、上記の如き導入方法により細管の端から細管内に導入し、次いで、本発明に係る複合体を含有する溶液を同様に上記の如き導入方法により細管の端から細管内に導入し、その後TB(又はLB)を同様に細管の端から細管内に導入して全ての溶液をITP用細管内に配置させる方法、(2)先ず液だめ(ウェル)内にLB(又はTB)を滴下して、これを上記の如き導入方法により細管内に導入し、次いで液だめ(ウェル)内の溶液を、本発明に係る複合体を含有する溶液に交換した後、これを同様に上記の如き導入方法により細管内に導入し、更に、液だめ(ウェル)内の溶液を、TB(又はLB)に交換した後、これを同様に上記の如き導入方法により導入し、全ての溶液をITP用細管内に配置させる方法、(3)複数の液だめ(ウェル)のそれぞれにLB、本発明に係る複合体を含有する溶液及びTBを別々に滴下して、これらを上記の如き導入方法により同一の細管内に別々に導入して全ての溶液をITP用細管内に配置させる方法等が挙げられる。
また、例えば上記した(1−2)細管(キャピラリー)内で複合体を形成させる方法により、本発明に係る複合体を含有する溶液〔複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFSを含む溶液、複合体A'、複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の標識アナログを含む溶液、又は複合体A''、複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の標識アナログを含む溶液〕を得た場合には、上記と同じ方法により、本発明に係る複合体を含有する溶液をITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入し、配置させることができる。
また、この場合には、例えば細管内で本発明に係る複合体を形成させた後、本発明に係る複合体を含有する溶液(ゾーン)を電気的に移動させて、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入し、配置させることもできる。
(2−2)濃縮分離工程
本発明の分離方法1における濃縮分離工程は、上記した導入工程によりTBゾーン/本発明に係る複合体を含有する溶液(ゾーン)/LBゾーンとなるように配置されたITP用細管に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下で電圧を印加し、即ちMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でITPを行い、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')をTBゾーンの下流側(より具体的には、トレーリングイオンの下流側)で濃縮すると共に、当該複合体と、当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質とを分離する工程である。
濃縮分離工程において、「細管の両側に電圧を印加することによって、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')を濃縮させる」とは、本発明に係る複合体が、ITP用細管の両側に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)、バンド状(プラグ状)に集合してくることを言う。換言すれば、ITP用細管の両側に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)、当該複合体が集合し、導入工程で配置されたゾーン中の複合体の濃度よりも、当該複合体の濃度の方が高くなるような部分が生じること、即ち、ITP用細管の両側に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)、本発明に係る複合体が集合し、導入工程で配置された本発明に係る複合体を含有する溶液ゾーン(上記した[I-1]における溶液ゾーン、[I-2]における溶液ゾーン、[I-3]における溶液ゾーン)中の本発明に係る複合体の濃度よりも、当該複合体の濃度の方が高くなるような部分が生じることを意味する。
尚、本発明における濃縮の度合い(程度)としては、導入工程で配置されたゾーン中の本発明に係る複合体の濃度に対する、ITP用細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)当該複合体が集合した部分(バンド状)の当該複合体の濃度が、下限が通常1.5倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、更に好ましくは25倍以上であり、上限は特に限定されないが、通常105倍以下、好ましくは104倍以下、より好ましくは2000倍以下である。
濃縮分離工程では、上記の如く複合体の形成によって得られた本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')と、当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質とを電気的に移動させてITP用細管内で分離する。
例えば非競合法の場合には、少なくとも、複合体Aと、当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び血液由来試料中の共存物質とを分離すればよく、移動度変化CFSを当該複合体から分離する必要はない。
また、例えば標識アナログを用いる競合法の場合には、少なくとも、複合体A'と、当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログ及び血液由来試料中の共存物質とを分離すればよく、移動度変化CFSや複合体B'(分析物と移動度変化CFSとの複合体)を当該複合体から分離する必要はない。また、移動度変化アナログを用いる競合法の場合には、少なくとも、複合体A''と、複合体B''及び当該複合体A''(及び複合体B'')の形成に関与しなかった遊離の標識CFS並びに血液由来試料中の共存物質とを分離すればよい。
(2−2−1)MESイオン、グルタミン酸イオン
本発明において使用されるMESイオン、例えば一水和物等の水和物に由来するもの、例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩に由来するもの等が使用でき、特に限定されず、また、MESそのものも使用できる。
また、グルタミン酸イオンとしては、特に限定されないが、例えばL-グルタミン酸そのもの、D-グルタミン酸そのもの等が使用でき、また、グルタミン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩に由来するものやその水和物に由来するもの等も使用できる。
これらMESイオンとグルタミン酸イオンは、それぞれ単独で使用しても、また、両者を併用してもよい。また、両者のうちMESイオンが特に好ましい。
本発明の分離方法1において、ITPを行う際にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを存在させる方法としては、最終的にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でITPを行うことができるものであれば良く、特に限定されない。
このような方法としては、例えば(1−1)細管(キャピラリー)外で複合体を形成させる方法においては、(a)血液由来試料中の分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS及び(c)1種以上の標識CFSを含有する溶液、(a')標識アナログ、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(a)血液由来試料中の分析物を含有する溶液、または(a'')移動度変化アナログ、(c)1種以上の標識CFS及び(a)血液由来試料中の分析物を含有する溶液にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを予め共存させておく方法、例えば(a)を含有する溶液、(b)を含有する溶液及び(c)を含有する溶液の何れか1種以上、(a')を含有する溶液、(b)を含有する溶液及び(a)を含有する溶液の何れか1種以上、または(a'')を含有する溶液、(c)を含有する溶液及び(a)を含有する溶液の何れか1種以上にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを予め共存させておく方法等が挙げられる。
また、(1−2)細管(キャピラリー)内で複合体を形成させる方法においては、(a)分析物を含む血液由来試料(又はこれを含む上記した如き溶液)、(b)1種以上の移動度変化CFSを含む上記した如き溶液及び(c)1種以上の標識CFSを含む溶液の何れか1種以上、(a)〜(c)のうちの2種を含む溶液又は/及び残りの1種を含む溶液、(a')標識アナログを含む上記した如き溶液、(b)1種以上の移動度変化CFSを含む上記した如き溶液及び(a)分析物を含む血液由来試料(又はこれを含む上記した如き溶液)の何れか1種以上、(a)、(a')及び(b)のうちの2種を含む溶液又は/及び残りの1種を含む溶液、または、(a'')移動度変化アナログを含む上記した如き溶液、(c)1種以上の標識CFSを含む上記した如き溶液及び(a)分析物を含む血液由来試料(又はこれを含む上記した如き溶液)の何れか1種以上、(a)、(a'')及び(c)のうちの2種を含む溶液又は/及び残りの1種を含む溶液にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを予め共存させておく方法等が挙げられる。
尚、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンはLB又は/及びTBに共存させておいても良いが、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置される溶液(上記した如き溶液)中に共存させておくのが好ましい。
なかでも、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液中〔(a)、(b)及び(c)を含有する溶液、(a')、(b)及び(a)を含有する溶液、(a'')、(c)及び(a)を含有する溶液、(a)と(b)又は(c)を含有する溶液、(a)と(a')又は(b)を含有する溶液、(a)と(a'')又は(c)を含有する溶液、または(a)を含有する溶液中〕に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを共存させておくのが特に好ましい。
MESイオンの使用量は、MESイオンを含有させる溶液中の濃度として、通常、下限が0.005mM以上、好ましくは0.05mM以上、より好ましくは0.5mM以上、特に好ましくは1Mm以上であり、上限が100mM以下、好ましくは20mM以下、より好ましくは10mM以下である。
また、グルタミン酸イオンの使用量は、グルタミン酸イオンを含有させる溶液中の濃度として、通常、下限が0.005mM以上、好ましくは0.05mM以上、より好ましくは0.5mM以上、特に好ましくは1mM以上であり、上限が100mM以下、好ましくは20mM以下、より好ましくは10mM以下である。
(2−2−2)LB、TB
本発明の分離方法1において用いられるLBは、少なくとも本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')よりも電気泳動速度の速いリーディングイオンを含む泳動媒体である。尚、LBは本発明に係る複合体を含有する溶液の下流側に配置される。
上記において、リーディングイオンとしては、通常この分野で使用されるものから適宜選択して使用されるが、例えば塩素イオン(Cl)等が挙げられる。また、リーディングイオンの使用濃度も、通常この分野で用いられる範囲から適宜選択すればよく、例えば通常1μM〜10M、好ましくは100μM〜1M、より好ましくは1mM〜500mMである。
このようなリーディングイオンを含むLBも、通常この分野で使用されるものから適宜選択して使用され、例えばトリス緩衝液、ビストリス緩衝液,ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、イミダゾール緩衝液、グリシン緩衝液等が挙げられる。なかでもトリス緩衝液及びビストリス緩衝液が好ましく、トリス緩衝液が特に好ましい。その使用濃度及びpHは、通常この分野で用いられる範囲から適宜選択すればよく、使用濃度は、例えば通常1μM〜10M、好ましくは100μM〜1M、より好ましくは1mM〜500mMであり、pHは、通常2〜12、好ましくは4〜10、より好ましくは6〜9である。
また、本発明の分離方法1において用いられるTBは、少なくとも本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')よりも電気泳動速度の遅いトレーリングイオンを含む泳動媒体である。尚、TBは本発明に係る複合体を含有する溶液の上流側に配置される。
上記において、トレーリングイオンとしては、通常この分野で使用されるものから適宜選択して使用されるが、例えばHEPES、TAPS、MOPS、グリシン、スレオニン等が挙げられる。なかでもHEPES及びTAPSが好ましく、HEPESが特に好ましい。また、トレーリングイオンの使用濃度も、通常この分野で用いられる範囲から適宜選択すればよく、例えば通常1μM〜10M、好ましくは100μM〜1M、より好ましくは1mM〜500mMである。
このようなトレーリングイオンを含むTBも、通常この分野で使用されるものから適宜選択して使用され、例えばトリス緩衝液、ビストリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、イミダゾール緩衝液、グリシン緩衝液等が挙げられる。なかでもトリス緩衝液及びビストリス緩衝液が好ましく、トリス緩衝液が特に好ましい。その使用濃度及びpHは、通常この分野で用いられる範囲から適宜選択すればよく、使用濃度は、例えば通常1μM〜10M、好ましくは100μM〜1M、より好ましくは1mM〜500mMであり、pHは、通常2〜12、好ましくは4〜10、より好ましくは6〜9である。
また、LB及びTBをITP用細管内に導入・配置する方法としては、当該溶液を細管(キャピラリー)内にLBゾーンとTBゾーンを存在させる(導入・配置させる)ことができる方法であればよく、自体公知の導入方法が使用可能である。
このような自体公知の導入方法としては、前述した導入工程における本発明に係る複合体を含有する溶液を細管内に導入・配置する方法等が挙げられる。
(2−2−3)ITP条件(印加電圧、pH、温度、時間)
本発明の分離方法1における濃縮分離工程は、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でITPを実施すればよく、自体公知のITP法〔例えばEveraerts, F.M., Geurts, M. Mikkers, F.E.P., Verheggen, T.P.E.M J Chromatagr. 1976, 119, 129-155;Mikkers, F.E.P., Everaerts, F.M., Peek, J.A.F. J. Chromatogr. 1979, 168, 293-315;Mikkers, F.E.P., Everaerts, F.M., Peek, J.A.F. J. Chromatogr. 1979, 168, 317-332;Hirokawa, T, Okamoto, H. Ikuta, N., and Gas, B., Analytical Sciences 2001, Vol. 17 Supplement il85等〕は何れも使用可能である。
また、その他の試薬類、操作方法、その他の条件等も、上記した如き文献等の記載に準じて適宜選択することができる。
濃縮分離工程における、印加電圧は、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')が充分に濃縮され、且つ本発明に係る複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質とを分離し得る範囲であればよく、通常この分野で用いられている自体公知の方法に従い適宜選択される。より具体的には、電圧は、下限が通常5V/cm以上、好ましくは10V/cm以上、より好ましくは50V/cm以上、更に好ましくは500V/cm以上、特に好ましくは1000V/cm以上であり、上限が通常10000V/cm以下、好ましくは5000V/cm以下、より好ましくは2000V/cm以下の範囲の電界強度となるように印加される。
また、その他のITP条件(例えばpH、温度、時間等)は、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')の濃縮と、本発明に係る複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質との分離を妨げない範囲であればよい。
具体的には、pHは下限が通常2以上、好ましくは5以上であり、上限が通常10以下、好ましくは9以下であり、温度は、下限が通常0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、上限が通常50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
ITP時間は、使用するCFSの分析物又はそのアナログに対する結合定数によって異なり、結合定数が低い場合は比較的長い反応時間が必要であり、また、結合定数が高い場合は比較的短い反応時間でよい。より具体的には、例えば下限が通常10秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上であり、上限が60分以下、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下である。
2−2.本発明の分離方法2
本発明の分離方法2は、(1)分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、CFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液等から選ばれる複数の溶液を、これらの溶液をITP用細管の外で予め混合させて分析物を含む複合体又は/及びアナログを含む複合体を形成させることなく、これらの溶液を、それぞれ別々のゾーンとなるようにITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させ、次いで、(2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管の両側に電圧を印加して、ITPにより、これらの溶液が当該細管内で均一に混合される前に、当該分析物とCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)とを電気泳動的に接触させるか、或いは当該分析物、そのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)及びCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を電気泳動的に接触させて、分析物を含む複合体又は/及びアナログを含む複合体を形成させ、当該複合体のうちの標識物質を含有する複合体(本発明に係る複合体A、複合体A'又は複合体A'')をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、当該標識物質含有複合体(本発明に係る複合体A、複合体A'又は複合体A'')と、当該標識物質含有複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質とを分離することを特徴とする。
即ち、非競合法に基づく本発明の分離方法2は、具体的には以下の工程(1)及び(2)を含むものである。
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-2]の何れかに記載の組合せからなる複数の溶液を、これらの溶液を予め混合することなく且つそれぞれ別々のゾーンとなるように導入する工程(導入工程)、
[I-1] 1)1種以上の標識CFSを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
[I-2] 1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液;
および
(2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、下記[II-1]又は[II-2]の方法により形成させた下記複合体Aを、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、[A](i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する工程(濃縮分離工程)、
[II-1] (a)当該分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(c)1種以上の標識CFSを接触させて、これら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させる、
[II-2] (a)当該分析物及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体と、(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させる。
また、競合法に基づく本発明の分離方法2は、具体的には以下の工程(1)及び(2)を含むものである。
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-7]の何れかに記載の組合せからなる複数の溶液を、これらの溶液を予め混合することなく且つそれぞれ別々のゾーンとなるように導入する工程(導入工程)、
[I-1] 1)分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
[I-2] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
[I-3] 1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
[I-4] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、2)標識アナログを含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
[I-5] 1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
[I-6] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液、
[I-7] 1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)移動度変化アナログを含有する溶液;
および
(2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、下記[II-1]〜[II-7]の何れかの方法により形成させた下記複合体A'または下記複合体A''を、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、下記[A-1]又は[A-2]の何れかの分離を行う工程(濃縮分離工程)、
[II-1] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、また、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
[II-2] (a)当該分析物と、前記[I-2] 2)の溶液中に存在する、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体A'とを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
[II-3] (a')標識アナログと、前記[I-3] 2)の溶液中に存在する、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体B'とを接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させる、
[II-4] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)との複合体A'を形成させ、次いで、(a)当該分析物と当該複合体A'とを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
[II-5] (a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)及び(b)との複合体B'を形成させ、次いで、(a')標識アナログと当該複合体B'とを接触させ、又は/及び(a')標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させる、
[II-6] (a)当該分析物と、前記[I-6] 2)の溶液中に存在する、(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの複合体A''とを接触させて、これら(a)及び(c)を含む複合体B''を形成させる、
[II-7] (a'')移動度変化アナログと、前記[I-7] 1)の溶液中に存在する、(a)当該分析物と(c)1種以上の標識CFSとの複合体B''とを接触させ、又は/及び(a'')移動度変化アナログと複合体B''の形成に関与しなかった(c)1種以上の標識CFSとを接触させて、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''を形成させる、
[A-1] (i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質との分離、
[A-2] (i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離。
(1)導入工程
導入工程は、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液等から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕を、これらの溶液をITP用細管の外で予め混合せずに、当該細管の両側に電圧を印加することにより、即ち、後述する濃縮分離工程を実施した際に、ITPにより、分析物を含む複合体又は/及びアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含む複合体〔上記した非競合法の[II-1]及び[II-2]における複合体A、上記した競合法の[II-1]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-2]の複合体B'、上記した競合法の[II-3]の複合体A'、上記した競合法の[II-4]及び[II-5]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-6]の複合体B''、上記した競合法の[II-7]の複合体A''〕が形成されるように、これらの溶液をITP用細管内に導入・配置させる工程である。
ここで、「細管の両側に電圧を印加することにより、分析物を含む複合体又は/及びアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含む複合体〔上記した非競合法の[II-1]及び[II-2]における複合体A、上記した競合法の[II-1]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-2]の複合体B'、上記した競合法の[II-3]の複合体A'、上記した競合法の[II-4]及び[II-5]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-6]の複合体B''、上記した競合法の[II-7]の複合体A''〕が形成されるように」とは、分子拡散によらず(依存せず)に、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質を含有する溶液を、それよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を含有する溶液の上流に配置させて、ITPによる電気泳動を行った場合、溶液中のより高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質がそれよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を追い越すことを利用して、ITPにより、分析物を含む複合体又は/及びアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含む複合体〔上記した非競合法の[II-1]及び[II-2]における複合体A、上記した競合法の[II-1]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-2]の複合体B'、上記した競合法の[II-3]の複合体A'、上記した競合法の[II-4]及び[II-5]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-6]の複合体B''、上記した競合法の[II-7]の複合体A''〕を形成させることを意味する。
即ち、本発明は、(1)分析物又はそのアナログ、若しくは分析物又はそのアナログとある標識CFS又は移動度変化CFSとの複合体と、(2)少なくとも1種の標識CFS又は/及び移動度変化CFSとの複合体を、当該ITP用細管の両側に電圧を印加することによって、ITP用細管内で形成させれば良い。言い換えれば、本発明は、分析物又はそのアナログと全てのCFS(標識CFS及び移動度変化CFS)との複合体が当該細管内のみで形成される場合だけでなく、例えば、2種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を使用する場合には、分析物又はそのアナログと2種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)のうちの一部のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)との複合体(中間複合体)を、ITP用細管外又はITP以外の方法で〔細管外の場所で(複合体形成方法1−1)、電圧を印加せずに混合用細管細管内で(複合体形成方法1−2−1)、又はITP用細管内でITP以外の電気泳動法により電気泳動的に(複合体形成方法1−2−2)〕予め形成させた後、当該中間複合体と残りの1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)とを、当該ITP用細管の両側に電圧を印加することによりITP用細管内で接触させて予め形成されている中間複合体と残りの1種以上のCFSとの複合体を形成させる場合も包含される。また、例えば、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を使用する場合には、アナログを含む複合体〔標識アナログ及び移動度変化CFSの複合体(複合体A')、移動度変化アナログと標識CFSとの複合体(複合体A'')〕と分析物を含む複合体〔分析物及び移動度変化CFSの複合体(複合体B')、分析物と標識CFSとの複合体(複合体B'')〕のどちらか一方を、ITP用細管外又はITP以外の方法で〔細管外の場所で(複合体形成方法1−1)、電圧を印加せずに混合用細管細管内で(複合体形成方法1−2−1)、又はITP用細管内でITP以外の電気泳動法により電気泳動的に(複合体形成方法1−2−2)〕予め形成させた後、形成された複合体と当該複合体には含まれない分析物又はアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)とを、当該ITP用細管の両側に電圧を印加してITPによりITP用細管内で接触させて残りの複合体を形成させる場合も包含される。
従って、本発明において、「溶液を予め混合することなく」とは、目的の反応に関係する、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、少なくとも1種のCFS(標識CFS又は移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕から選ばれる少なくとも2種の溶液を予め混合しないことを意味し、目的の反応に関係するこれら全ての溶液を予め一切混合しないことを意味するものではない。
本発明においては、電圧を印加した場合に(ITPを行った場合に)本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')が移動していく方を「下流」側、その反対を「上流」側と定義する。
分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕の配置順序としては、ITP用細管の両側に電圧を印加して、ITPを行うことにより、分析物を含む複合体又は/及びアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含む複合体〔上記した非競合法の[II-1]及び[II-2]における複合体A、上記した競合法の[II-1]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-2]の複合体B'、上記した競合法の[II-3]の複合体A'、上記した競合法の[II-4]及び[II-5]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-6]の複合体B''、上記した競合法の[II-7]の複合体A''〕を形成し得る順序であれば良く、特に限定されない。例えばWO2007/027495号及びWO2007/121263号に記載の方法に準じて適宜設定すればよい。
より具体的には、非競合法の場合には例えば以下に示すような配置順序とするのが好ましい。
[I-1]:下流から上流に向かって、(LBゾーン)/1種以上の標識CFSを含有する溶液(ゾーン)/分析物を含む血液由来試料を含有する溶液(ゾーン)/1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(ゾーン)/(TBゾーン)
[I-2]:下流から上流に向かって、(LBゾーン)/分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液(ゾーン)/1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(ゾーン)/(TBゾーン)
また、標識アナログを用いる競合法の場合には例えば以下に示すような配置順序とするのが好ましい。
[I-1]:下流から上流に向かって、(LBゾーン)/分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液(ゾーン)/1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(ゾーン)/(TBゾーン)
[I-2]:下流から上流に向かって、(LBゾーン)/分析物を含む血液由来試料を含有する溶液(ゾーン)/標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(ゾーン)/(TBゾーン)
[I-3]下流から上流に向かって、(LBゾーン)/標識アナログを含有する溶液(ゾーン)/分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(ゾーン)/(TBゾーン)
[I-4]:下流から上流に向かって、(LBゾーン)/分析物を含む血液由来試料を含有する溶液(ゾーン)/標識アナログを含有する溶液(ゾーン)/1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(ゾーン)/(TBゾーン)
[I-5]:下流から上流に向かって、(LBゾーン)/標識アナログを含有する溶液(ゾーン)/分析物を含む血液由来試料を含有する溶液(ゾーン)/1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(ゾーン)/(TBゾーン)
更に、移動度変化アナログを用いる競合法の場合には例えば以下に示すような配置順序とすることができる。
[I-6]:下流から上流に向かって、(LBゾーン)/分析物を含む血液由来試料(またはこれを含む溶液)(ゾーン)/1種類以上の標識CFSと移動度変化アナログを含有する溶液(ゾーン)/(TBゾーン)
[I-7]:下流から上流に向かって、(LBゾーン)/分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液(ゾーン)/移動度変化アナログを含有する溶液(ゾーン)/(TBゾーン)
尚、上記したITP用細管内の配置順序は、あくまでも分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は反応向上アナログ)を含有する溶液と1種以上のCFS(標識CFS又は/及び反応向上CFS)を含む溶液の間での順序であり、これらのうち最も下流側に配置された当該溶液の更に下流側やこれらのうち最も上流側に配置された当該溶液の更に上流側に、当該溶液以外の溶液等が配置されていても良いことは言うまでもない。
また、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕は必ずしも隣接させる必要はなく、これらの溶液の間には、例えば水、生理食塩水、各種緩衝液、有機溶媒等の液体を挿入しても良い。尚、このような緩衝液としては、本発明に係る複合体の形成を阻害しないものであれば、使用可能であり、例えばトリス緩衝液、グッド緩衝液、TE緩衝液、TAE緩衝液、TBE緩衝液、TBS緩衝液、リン酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液等の通常この分野で用いられる緩衝液が挙げられる。
尚、分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は反応向上アナログ)を含有する溶液と1種以上のCFS(標識CFS又は/及び反応向上CFS)を含む溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕、要すれば液体は、ITP用細管内に、それぞれ別々のゾーンとして形成され、配置される。言い換えれば、分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は反応向上アナログ)を含有する溶液と1種以上のCFS(標識CFS又は/及び反応向上CFS)を含む溶液との間〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液の間、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液の間〕、要すれば分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は反応向上アナログ)を含有する溶液と液体との間或いは1種以上のCFSを含む溶液と液体との間には、これら溶液、要すれば液体が配置された時点で液−液界面が形成・保持されている。
導入工程において、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕をITP用細管内に導入する方法としては、上記したような配置となるように、これら複数の溶液のゾーンをITP用細管内に別々に形成し得る方法、換言すれば、分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は反応向上アナログ)を含有する溶液と1種以上のCFS(標識CFS又は/及び反応向上CFS)を含む溶液との間〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液の間、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液の間〕、要すれば分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は反応向上アナログ)を含有する溶液と液体との間或いは1種以上のCFSを含む溶液と液体との間に、液−液界面を形成し得る方法であればよく、自体公知の導入方法が使用可能である。
このような自体公知の導入方法としては、例えば細管に電圧を印加して、これら溶液(及び液体)を電気的に細管内に導入する方法、細管内を加圧又は/及び減圧して、これら溶液(及び液体)を細管内に導入する方法、毛細管現象を利用してこれら溶液(及び液体)を細管内に導入する方法等が挙げられる。
また、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕をITP用細管内に導入して配置させる方法としては、自体公知の導入・配置方法が使用可能である。このような自体公知の導入・配置方法としては、例えば、(1)先ず分析物を含有する溶液、そのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕のうちの1種を、上記の如き導入方法により細管の端から細管内に導入し、次いで、残りの溶液のうちの1種を同様に上記の如き導入方法により細管の端から細管内に導入し、これを繰り返して全ての溶液をITP用細管内に配置させる方法、(2)先ず液だめ(ウェル)内に分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕のうちの1種を滴下して、これを上記の如き導入方法により細管内に導入し、次いで液だめ(ウェル)内の溶液を、残りの溶液のうちの1種に交換した後、これを同様に上記の如き導入方法により細管内に導入し、これを繰り返して全ての溶液をITP用細管内に配置させる方法、(3)複数の液だめ(ウェル)のそれぞれに分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕のうちの1種を別々に滴下して、これらを上記の如き導入方法により同一の細管内に別々に導入して全ての溶液をITP用細管内に配置させる方法等が挙げられる。尚、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕を細管内に導入する方法及び分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕をITP用細管内に導入して配置させる方法は上記の方法に限定されない。
(2)濃縮分離工程
本発明の分離方法2における濃縮分離工程は、上記した導入工程によりTBゾーン/複数の溶液(ゾーン)/LBゾーンとなるように配置されたITP用細管の両側に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下で電圧を印加し、即ちMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でITPを行い、分子拡散によらず(依存せず)に、当該分析物とCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)とを電気泳動的に接触させるか、或いは当該分析物、そのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)及びCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を電気泳動的に接触させて、分析物を含む複合体又は/及びアナログを含む複合体を形成させ、当該複合体のうちの標識物質を含有する複合体(本発明に係る複合体A、複合体A'又は複合体A'')をTBゾーンの下流側(より具体的には、トレーリングイオンの下流側)で濃縮すると共に、当該標識物質含有複合体(本発明に係る複合体A、複合体A'又は複合体A'')と、当該標識物質含有複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質とを分離する工程である。
「溶液〔分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物とアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液:上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕が均一に混合される前に」とは、導入工程により、ITP用細管内に配置された、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕、要すれば液体のそれぞれのゾーン(液−液界面)が、全て分子拡散によって均一に混合される前を意味する。
尚、本発明において、「界面」とは、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕とが接している境界、要すればこれらの溶液と液体とが接している境界を意味し、当該界面は、現実には拡散によって必ずしも全然混ざらないということを意味するものではない。
また、「当該分析物とCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)とを接触させるか、或いは当該分析物、そのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)及びCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)とを接触させる」とは、当該分析物とCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)との接触、或いは当該分析物、そのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)及びCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)との接触が、前述したように、分子拡散によらず(依存せず)に、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質を含有する溶液を、それよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を含有する溶液の下流に配置させて、ITPによる電気泳動を行った場合、溶液中のより高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質がそれよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を追い越すことを利用して、ITPにより、当該分析物とCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)のうち、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質がそれよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を追い越すことによって生じること、或いは当該分析物、そのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)及び1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)のうち、より高い電気泳動移動度(より速い電気泳動速度)を有する物質がそれよりも低い電気泳動移動度(遅い電気泳動速度)を有する物質を追い越すことによって生じることを意味する。即ち、濃縮分離工程においては、当該ITP用細管内に配置された、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物とアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液〔上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕及び、要すれば液体を放置することによって生じる分子拡散によって(依存して)これらを混合するのではなく、また、細管内でこれらの溶液を物理的に混合するのでもなく、更にはITP用細管内でITP以外の電気泳動により電気泳動的に移動させるのでもなく、溶液中の分析物とCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)とをITPによって電気泳動的に移動させて接触させるか、或いは溶液中の分析物、そのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)及び1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)をITPによって電気泳動的に移動させながら接触させるのである。
濃縮分離工程において、「細管の両側に電圧を印加することによって、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')を濃縮させる」とは、本発明に係る複合体が、ITP用細管の両側に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)、バンド状(プラグ状)に集合してくることを言う。換言すれば、ITP用細管の両側に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)、当該複合体が集合し、導入工程で配置されたゾーン中の当該複合体に対応する分析物又はアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)の濃度よりも、当該複合体の濃度の方が高くなるような部分が生じること、即ち、当該ITP用細管の両側に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)、本発明に係る複合体が集合し、導入工程で配置された本発明に係る複合体に対応する分析物又は/及びアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液ゾーン〔上記した非競合法の[I-1]における分析物を含む血液由来試料を含有する溶液ゾーン、[I-2]における分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液ゾーン、上記した競合法の[I-1]における分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液ゾーン、[I-2]における標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液ゾーン、[I-3]における標識アナログを含有する溶液ゾーン、[I-4]における標識アナログを含有する溶液ゾーン、[I-5]における標識アナログを含有する溶液ゾーン、[I-6]における移動度変化アナログと1種類以上の標識CFSとを含有する溶液ゾーン、[I-7]における移動度変化アナログを含有する溶液ゾーン〕中の本発明に係る複合体に対応する分析物又はアナログ(標識アナログ、又は移動度変化アナログ)の濃度よりも、当該複合体の濃度の方が高くなるような部分が生じることを意味する。
尚、本発明における濃縮の度合い(程度)としては、導入工程で配置されたゾーン中の本発明に係る複合体に対応する分析物又はアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)の濃度に対する、ITP用細管の両側に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)当該複合体が集合した部分(バンド状)の当該複合体の濃度が、下限が通常1.5倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、更に好ましくは25倍以上であり、上限は特に限定されないが、通常105倍以下、好ましくは104倍以下、より好ましくは2000倍以下である。
濃縮分離工程では、形成された本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')と、当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質とをITPによって電気的に移動させてITP用細管内で分離する。
例えば非競合法の場合には、少なくとも、複合体Aと、当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び当該試料中の共存物質等とを分離すればよく、移動度変化CFSを当該複合体から分離する必要はない。
また、例えば標識アナログを用いる競合法の場合には、少なくとも、複合体A'と、当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログ及び血液由来試料中の共存物質とを分離すればよく、移動度変化CFSや複合体B'(分析物と移動度変化CFSとの複合体)を当該複合体から分離する必要はない。また、移動度変化アナログを用いる競合法の場合には、少なくとも、複合体A''と、複合体B''及び当該複合体A''(及び複合体B'')の形成に関与しなかった遊離の標識CFS並びに血液由来試料中の共存物質とを分離すればよい。
(2−1)MESイオン、グルタミン酸イオン
本発明の分離方法2において用いられるMESイオン及びグルタミン酸イオンは、前述の分離方法1と同じであり、これらの具体例、好ましい態様等は前述した通りである。
本発明の分離方法2において、ITPを行う際にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを存在させる方法としては、最終的にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でITPを行うことができるものであれば良く、特に限定されない。
このような方法としては、例えば導入工程においてITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置される、分析物を含有する溶液、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液、分析物及びアナログを含有する溶液、1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液、分析物又はアナログとCFSとを含有する溶液から選ばれる複数の溶液の何れか1種以上〔(a)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、(b)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液及び(c)1種以上の標識CFSを含有する溶液の何れか1種以上、(a)〜(c)のうちの2種を含む溶液又は/及び残りの1種を含む溶液、(a')標識アナログを含有する溶液、(b)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液及び(a)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液の何れか1種以上、(a)、(a')及び(b)のうちの2種を含む溶液又は/及び残りの1種を含む溶液、または、(a'')移動度変化アナログを含有する溶液、(c)1種以上の標識CFSを含有する溶液及び(a)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液の何れか1種以上、(a)、(a'')及び(c)のうちの2種を含む溶液又は/及び残りの1種を含む溶液〕に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを予め共存させておく方法等が挙げられる。
より具体的には、非競合法の場合には例えば以下に示す溶液中にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを予め共存させておくのが好ましい。
[I-1]:1)1種以上の標識CFSを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液の何れか1種乃至全部
[I-2]:1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液の何れか1種乃至全部
また、標識アナログを用いる競合法の場合には例えば以下に示す溶液中にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを予め共存させておくのが好ましい。
[I-1]:1)分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液の何れか1種乃至全部
[I-2]:1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液の何れか1種乃至全部
[I-3]:1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液の何れか1種乃至全部
[I-4]:1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、2)標識アナログを含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液の何れか1種乃至全部
[I-5]:1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液の何れか1種乃至全部。
上記のうち、[I-1]が好ましい。
更に、移動度変化アナログを用いる競合法の場合には例えば以下に示す溶液中にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを予め共存させておくのが好ましい。
[I-6]:1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液の何れか1種乃至全部
[I-7]:1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)移動度変化アナログを含有する溶液の何れか1種乃至全部。
尚、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンはLB又は/及びTBに共存させておいても良いが、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置される溶液(例えば上記した非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液の何れか1種乃至全部、上記した競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液の何れか1種乃至全部)中に共存させておくのが好ましい。
なかでも、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液中〔例えば非競合法の[I-1]における2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、[I-2]における1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液、競合法の[I-1]における1)分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液、[I-2]における1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、[I-3]における2)分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、[I-4]における1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、[I-5]における2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、[I-6]における1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、[I-7]における1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液中〕に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを共存させておくのが特に好ましい。
MESイオンの使用量は、MESイオンを含有させる溶液中の濃度として、通常、下限が0.005mM以上、好ましくは0.05mM以上、より好ましくは0.5mM以上、特に好ましくは1mM以上であり、上限が100mM以下、好ましくは20mM以下、より好ましくは10mM以下である。
また,グルタミン酸イオンの使用量は、グルタミン酸イオンを含有させる溶液中の濃度として、通常、下限が0.005mM以上、好ましくは0.05mM以上、より好ましくは0.5mM以上、特に好ましくは1mM以上であり、上限が100mM以下、好ましくは20mM以下、より好ましくは10mM以下である。
(2−2)LB、TB
本発明の分離方法2において用いられるLB、LB中のリーディングイオン、TB及びTB中のトレーリングイオンは、前述の分離方法1と同じであり、これらの具体例、使用濃度、pH、好ましい態様は前述した通りである。
尚、分離方法2において、LBは、分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液と1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含む溶液〔例えば非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、競合法の[I-1]〜[I-6]の何れかにおける複数の溶液〕のうち、細管の最下流に配置された溶液の更に下流側に配置され、TBは、分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液と1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含む溶液〔例えば非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕のうち、細管の最上流に配置された溶液の更に上流側に配置される。
また、LB及びTBをITP用細管内に導入・配置する方法としては、当該溶液を細管(キャピラリー)内にLBゾーンとTBゾーンを存在させる(導入・配置させる)ことができる方法であればよく、自体公知の導入方法が使用可能である。
このような自体公知の導入方法としては、前述した分離方法1の導入工程における本発明に係る複合体を含有する溶液を細管内に導入・配置する方法等が挙げられる。
(2−3)ITP条件(印加電圧、pH、温度、時間)
本発明の分離方法2における濃縮分離工程も、分離方法1と同様、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でITPを実施すればよく、自体公知のITP法〔例えばEveraerts, F.M., Geurts, M. Mikkers, F.E.P., Verheggen, T.P.E.M J Chromatagr. 1976, 119, 129-155;Mikkers, F.E.P., Everaerts, F.M., Peek, J.A.F. J. Chromatogr. 1979, 168, 293-315;Mikkers, F.E.P., Everaerts, F.M., Peek, J.A.F. J. Chromatogr. 1979, 168, 317-332;Hirokawa, T, Okamoto, H. Ikuta, N., and Gas, B., Analytical Sciences 2001, Vol. 17 Supplement il85;WO2007/027495号;WO2007/121263号等〕は何れも使用可能である。
また、その他の試薬類、操作方法、その他の条件等も、上記した如き文献等の記載に準じて適宜選択することができる。
濃縮分離工程における、印加電圧は、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')が充分に形成され、且つ当該本発明に係る複合体が充分に濃縮されると共に、本発明に係る複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質とを分離し得る範囲であればよく、通常この分野で用いられている自体公知の方法に従い適宜選択される。より具体的には、電圧は、下限が通常5V/cm以上、好ましくは10V/cm以上、より好ましくは50V/cm以上、更に好ましくは500V/cm以上、特に好ましくは1000V/cm以上であり、上限が通常10000V/cm以下、好ましくは5000V/cm以下、より好ましくは2000V/cm以下の範囲の電界強度となるように印加される。
また、その他のITP条件(例えばpH、温度、時間等)は、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')の形成と、当該複合体の濃縮および本発明に係る複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質との分離を妨げない範囲であればよい。
具体的には、pHは下限が通常2以上、好ましくは5以上であり、上限が通常10以下、好ましくは9以下であり、温度は、下限が通常0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、上限が通常50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
ITP時間は、使用するCFSの分析物又はそのアナログに対する結合定数によって異なり、結合定数が低い場合は比較的長い反応時間が必要であり、また、結合定数が高い場合は比較的短い反応時間でよい。より具体的には、例えば下限が通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは90秒以上であり、上限が1時間以下、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下、更に好ましくは5分以下である。
上記したように、本発明の分離方法2における濃縮分離工程は、分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液と1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含む溶液〔例えば非競合法の[I-1]〜[I-2]の何れかにおける複数の溶液、競合法の[I-1]〜[I-7]の何れかにおける複数の溶液〕、要すれば液体とが、分子拡散によって均一に混合される前であって、更にこれらをITP用細管内で物理的に均一に混合することなく、言い換えれば、隣接するこれらの液−液界面を保持させたまま、溶液中の分析物とCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)とをITPによって電気泳動的に移動させながら接触させるか、或いは当該分析物、そのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)及びCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)をITPによって電気泳動的に移動させながら接触させて、分析物を含む複合体又は/及びアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含む複合体〔上記した非競合法の[II-1]及び[II-2]における複合体A、上記した競合法の[II-1]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-2]の複合体B'、上記した競合法の[II-3]の複合体A'、上記した競合法の[II-4]及び[II-5]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-6]の複合体B''、上記した競合法の[II-7]の複合体A''〕を形成させ、且つ標識物質を含有する本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')を濃縮させると共に、当該標識物質含有複合体(本発明に係る複合体)と、当該標識物質含有複合体(本発明に係る複合体)の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質とを分離するものである。
本発明においては、操作がより簡便であり、また、細管を有する微小流体デバイスの構造をよりシンプルにできることから、分離方法1と分離方法2のうち分離方法2がより好ましい。
2−3.細管(チャネル)
本発明において用いられるITP用細管(チャネル)としては、キャピラリー電気泳動法、キャピラリーチップ電気泳動法等の通常この分野で用いられるものであればよく、特に限定されない。
本発明で用いられるITP用細管(チャネル)の材質としては、通常この分野で用いられているものであればよく、分析物とCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)とを接触させて、或いは当該分析物、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)及びCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を接触させて、最終的に分析物を含む複合体又は/及びアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含む複合体〔上記した非競合法の[II-1]及び[II-2]における複合体A、上記した競合法の[II-1]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-2]の複合体B'、上記した競合法の[II-3]の複合体A'、上記した競合法の[II-4]及び[II-5]の複合体A'および複合体B'、上記した競合法の[II-6]の複合体B''、上記した競合法の[II-7]の複合体A''〕を形成することが出来るものであればよく、特に限定されない。ITP用細管(チャネル)の材質の具体例としては、例えばガラス,石英,シリコン等のシリカ系化合物、例えばサイクリックオレフィンコポリマー(COC),サイクリックオレフィンポリマー(COP),ポリメチルメタクリレート,ポリメチルシロキサン,ポリビニルクロライド,ポリウレタン,ポリスチレン,ポリスルホン,ポリカーボネート,ポリテトラフルオロエチレン等の合成ポリマー等が挙げられる。また、ITP用細管(チャネル)の内径及び長さは、本発明の分離方法1においては本発明に係る複合体の濃縮と、当該複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質との分離を行い得るものであればよく、また、本発明の分離方法2においては本発明に係る複合体の形成及び濃縮と、当該複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)及び血液由来試料中の共存物質との分離を行い得るものであればよい。より具体的には、内径は、通常1〜1000μm、好ましくは1〜200μm、より好ましくは1〜100μmであり、長さは、通常0.1mm〜100cm、好ましくは0.1mm〜20cm、より好ましくは0.1mm〜10cmである。
尚、本発明の分離方法1においてITPを実施する前に細管内で本発明に係る複合体を形成させるために使用される細管も上記したITP用細管と同様であり、自体公知の方法に従って適宜使用すればよい。
ITP用細管に導入される溶液〔例えば、上記分離方法1や分離方法2において導入される各種溶液(分析物、アナログ及びCFSの何れか1種以上を含有する溶液、LB、TB、液体等)〕には充填剤(ポリマー)を含有させても良い。これにより、電気浸透流の抑制や本発明に係る複合体と他の成分との分離度や泳動ピークの形状を変化させ、その結果分析精度や分析時間等を変動させることができる。
充填剤としては、通常この分野で用いられているものであればよく、特に限定されない。充填剤(ポリマー)の具体例としては、例えばポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール),ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル類、例えばポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、例えばポリアクリル酸,ポリアクリル酸エステル,ポリアクリル酸メチル等のポリアクリル酸系ポリマー、例えばポリアクリルアミド,ポリメタクリルアミド等のポリアミド系ポリマー、例えばポリメタクリル酸,ポリメタクリル酸エステル,ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸系ポリマー、例えばポリビニルアセテート,ポリビニルピロリドン,ポリビニルオキサゾリドン等のポリビニル系ポリマー、例えばプルラン,エルシナン,キサンタン,デキストラン,グアガム等の水溶性ヒドロキシルポリマー、例えばメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース化合物、これらの誘導体、及びこれらポリマーを構成するモノマーユニットを複数種含有するコポリマー等が挙げらる。尚、これら充填剤は、1種でも2種以上組み合わせて用いても何れでもよい。
このような充填剤(ポリマー)は、ITP用細管に導入される溶液〔例えば、上記分離方法1や分離方法2において導入される各種溶液(分析物、アナログ及びCFSの何れか1種以上を含有する溶液、LB、TB、液体等)〕の何れの溶液に含有させても良いが、ITP用細管に導入される全ての溶液中に含有させるのが好ましい。
また、上記した如き充填剤の分子量としては、通常500Da〜6000kDa、好ましくは1〜1000kDa、より好ましくは50〜500kDaである。
上記した如き充填剤の使用濃度は、通常この分野で用いられている範囲から適宜選択すればよく、通常0.01〜40%(W/V)、好ましくは0.01〜20%(W/V)、より好ましくは0.1〜10%(W/V)である。
尚、上記充填剤を溶液に添加した際の、溶液の粘度は、通常1〜1000センチポアズ、好ましくは1〜200センチポアズ、より好ましくは1〜10センチポアズである。
また、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')又は当該複合体(標識物質含有複合体)の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)に親和性を有する親和性物質を使用することによって、本発明に係る複合体と遊離の標識物質含有分子との分離度を変化させて分析精度や分析時間等を変動させることもできる。
このような親和性物質は、本発明に係る複合体又は遊離の標識物質含有分子と親和性物質との複合体の形成及び形成された複合体からの親和性物質の解離とを繰り返すような、弱い結合力を有するものであり、例えば本発明に係る複合体又は遊離の標識物質含有分子との結合定数が、下限が通常10-2M-以上、好ましくは10-3M-以上、より好ましくは10-4M-以上であって、上限が通常10-8M-以下、好ましくは10-7M-以下、より好ましくは10-6M-以下のものである。具体的には、例えばレクチン(例えばコンカナバリンA,レンズマメレクチン,インゲンマメレクチン,ダツラレクチン,小麦胚芽レクチン等)、オリゴヌクレオチド(例えばオリゴDNA、オリゴRNA等)等が挙げられる。なかでも、レクチンが好ましい。
親和性物質の使用にあたっては、本発明の濃縮分離工程を親和性物質の存在下で行わしめればよい。
このような方法としては、例えばITP用細管に導入される溶液〔例えば、上記分離方法1や分離方法2において導入される各種溶液(分析物、アナログ及びCFSの何れか1種以上を含有する溶液、LB、TB、液体等)〕に予め共存させておく方法や充填剤に予め親和性物質を結合させておく方法、或いはITP用細管の内表面に予め親和性物質を結合させておく方法等が挙げられる。尚、親和性物質を充填剤やITP用細管内表面に結合させる方法としては、例えば特開2005-24445号公報、特開2005-31070号公報、特公平7-24768号公報等に記載された自体公知の方法により行えばよい。
上記方法のなかでも、分析物又は/およびアナログを含有する溶液、あるいはLBに予め親和性物質を共存させておく方法が好ましく、LBのみに共存させておくのがより好ましい。
また、親和性物質の使用量は、使用する親和性物質の種類や使用方法等により一概に言えないが、例えば親和性物質を細管に導入される溶液に共存させる場合は、通常、親和性物質を含有させる溶液中の濃度として、下限が0.01mg/ml以上、好ましくは0.1mg/ml以上、より好ましくは1mg/ml以上であり、上限が20mg/ml以下、好ましくは10mg/ml、より好ましくは5mg/ml以下である。
特に、親和性物質としてレクチンを使用する場合、レクチンの濃度は、細管に電圧を印可する前の溶液(例えば2種以上の複合体と親和性物質とを含有する溶液、泳動用緩衝液等)中の濃度として、下限が0.01mg/ml以上、好ましくは0.1mg/ml以上、より好ましくは1mg/ml以上であり、上限が20mg/ml以下、好ましくは10mg/ml、より好ましくは5mg/ml以下である。
2−4.分析物、血液由来試料、共存物質、アナログ及びこれらを含有する溶液
(1)分析物
本発明における分析物としては、血液由来試料中に存在し得るものであり、具体的には、例えばヌクレオチド鎖(オリゴヌクレオチド鎖、ポリヌクレオチド鎖);染色体;ペプチド鎖(例えばC−ペプチド、アンジオテンシンI等);タンパク質〔例えばプロカルシトニン、免疫グロブリンA(IgA),免疫グロブリンE(IgE),免疫グロブリンG(IgG),免疫グロブリンM(IgM),免疫グロブリンD(IgD),β2−ミクログロブリン、アルブミン、これらの分解産物、フェリチン等の血清タンパク質〕;酵素〔例えばアミラーゼ(例えば膵型,唾液腺型,X型等)、アルカリホスファターゼ(例えば肝性,骨性,胎盤性,小腸性等)、酸性ホスファターゼ(例えばPAP等)、γ−グルタミルトランスファラーゼ(例えば腎性,膵性,肝性等)、リパーゼ(例えば膵型,胃型等)、クレアチンキナーゼ(例えばCK-1,CK-2,mCK等)、乳酸脱水素酵素(例えばLDH1〜LDH5等)、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(例えばASTm,ASTs等)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(例えばALTm,ALTs等)、コリンエステラーゼ(例えばChE1〜ChE5等)、ロイシンアミノペプチダーゼ(例えばC-LAP,AA,CAP等)、レニン、プロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ等〕;ホルモン(PTH,TSH,インシュリン,LH,FSH,プロラクチン等);レセプター(例えばエストロゲン,TSH等に対するレセプター);リガンド(例えばエストロゲン,TSH等);例えば細菌(例えば結核菌,肺炎球菌,ジフテリア菌,髄膜炎菌,淋菌,ブドウ球菌,レンサ球菌,腸内細菌,大腸菌,ヘリコバクター・ピロリ等)、ウイルス(例えばルベラウイルス,ヘルペスウイルス,肝炎ウイルス,ATLウイルス,AIDSウイルス,インフルエンザウイルス,アデノウイルス,エンテロウイルス,ポリオウイルス,EBウイルス,HAV,HBV,HCV,HIV,HTLV等)、真菌(例えばカンジダ,クリプトコッカス等)、スピロヘータ(例えばレプトスピラ,梅毒トレポネーマ等)、クラミジア、マイコプラズマ等の微生物;当該微生物に由来するタンパク質又はペプチド或いは糖鎖抗原;気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎等のアレルギーの原因となる各種アレルゲン(例えばハウスダスト、例えばコナヒョウダニ,ヤケヒョウダニ等のダニ類、例えばスギ、ヒノキ、スズメノヒエ,ブタクサ,オオアワガエリ,ハルガヤ,ライムギ等の花粉、例えばネコ,イヌ,カニ等の動物、例えば米,卵白等の食物、真菌、昆虫、木材、薬剤、化学物質等に由来するアレルゲン等);脂質(例えばリポタンパク質等);プロテアーゼ(例えばトリプシン,プラスミン,セリンプロテアーゼ等);腫瘍マーカータンパク抗原(例えばPSA,PGI,PGII等);糖鎖抗原〔例えばAFP(例えばL1からL3等)、hCG(hCGファミリー)、トランスフェリン、IgG、サイログロブリン、Decay-accelerating-factor(DAF)、癌胎児性抗原(例えばCEA,NCA,NCA-2,NFA等)、CA19-9、PIVKA-II、CA125、前立腺特異抗原、癌細胞が産生する特殊な糖鎖を有する腫瘍マーカー糖鎖抗原、ABO糖鎖抗原等〕;糖鎖(例えばヒアルロン酸、β−グルカン、上記糖鎖抗原等が有する糖鎖等);糖鎖に結合するタンパク質(例えばヒアルロン酸結合タンパク、βグルカン結合タンパク等);リン脂質(例えばカルジオリピン等);リポ多糖(例えばエンドトキシン等);化学物質(例えばT3,T4,例えばトリブチルスズ,ノニルフェノール,4-オクチルフェノール,フタル酸ジ-n-ブチル,フタル酸ジシクロヘキシル,ベンゾフェノン,オクタクロロスチレン,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル等の環境ホルモン);人体に投与・接種される各種薬剤及びこれらの代謝物;およびこれらに対する抗体等が挙げられる。
具体的には、本発明の方法は、上記したなかでも、糖鎖構造が異なる糖タンパク質、ヌクレオチド鎖(オリゴヌクレオチド鎖、ポリヌクレオチド鎖)、ペプチド鎖(ポリペプチドを含む)等の分析(定量)に有用であり、糖鎖構造が異なる糖タンパク質に特に有用である。尚、糖鎖構造が異なる糖タンパク質は、癌などある特定の疾患において糖鎖構造が変化することが知られており、臨床検査上の有用性が報告されているので、本発明の方法を用いることにより臨床検査上の有用性を検証することも可能である。また、ヌクレオチド鎖(オリゴヌクレオチド鎖、ポリヌクレオチド鎖)やペプチド鎖(ポリペプチドを含む)等の微小な変異・置換により生じた変異体と野生体の分離も、分子生物学や分子臨床検査の分野では重要な分析対象物質と考えられているので、本発明の方法を用いてこれらを分析(定量)することにより臨床検査上重要な因子等が見出される可能性も高い。
(2)分析物を含む血液由来試料
上記した如き本発明に係る分析物を含む血液由来試料としては、例えば全血,血清,血漿及びこれを水や通常この分野で用いられている例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等の緩衝液等に適宜溶解させて再構成して得られた処理物等が挙げられる。尚、本発明に係る血液由来試料には、化学的に合成された上記した如き分析物を含有するものも包含される。
(3)共存物質
本発明における共存物質は、上記した如き血液由来試料に存在するものであって、検出に用いる標識物質と同様の特性(例えば蛍光性物質を標識物質として使用する場合には、蛍光を発する性質)を有し且つ目的とする本発明に係る複合体の電気泳動移動度と同程度の電気泳動移動度を有する物質(言い換えれば、ITPによる当該複合体の移動時間付近に移動する物質、ITPの電気泳動クロマトグラフにおいて当該複合体のピークと同付近にピークを有する物質)である。
このような共存物質としては、例えばビリルビン、ビリベルジン、ヘモグロビン、ビタミン類、これらの代謝物、及びこれらとタンパク質との複合体等の蛍光を発する物質等が挙げられる。
なかでも、本発明の分離方法は、共存物質であるビリルビン、ビリルビンの代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体と、本発明に係る複合体との分離に特に有効である。
(4)アナログ(標識アナログ及び移動度変化アナログ)
本発明で用いられるアナログとは、分析目的である、血液由来試料中の分析物に結合するCFS(標識CFS、移動度変化CFS)が結合し得る物質、言い換えれば、当該試料中の分析物に存在する、CFS(標識CFS、移動度変化CFS)が結合し得る結合部位と同様に、当該CFSが結合し得る結合部位を有する物質である。
このような物質としては、例えば分析目的である血液由来試料中の分析物と同じもの、血液由来試料中の分析物の構造の一部を修飾、改変、変性、除去等したもの(所謂アナログ)等が挙げられ、具体的には、例えば分析目的である血液由来試料中の分析物の一部に変異を導入した組み換え蛋白質、分析目的である血液由来試料中の分析物のペプチド配列の一部を改変したペプチド、分析目的である血液由来試料中の分析物のヌクレオチド配列の一部を改変したヌクレオチド鎖等が挙げられる。尚、分析目的である血液由来試料中の分析物の具体例は、前述した通りである。
尚、本発明で用いられる標識アナログ及び移動度変化アナログは、上記した如き物質に、標識物質又は移動度変化物質を結合させたものであり、標識物質及び移動度変化物質の具体例、好ましい態様等は後述の通りである。また、上記した如き物質に標識物質又は移動度変化物質を結合させる方法は、後述する移動度変化物質とCFSとを結合する方法や標識物質によりCFSを標識する方法と同様の方法により行えばよい。
アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)の使用量は、使用するアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)の種類、CFSの種類や使用濃度、測定に必要な感度やダイナミックレンジ等により一概に言えない。
より具体的には、アナログを含有する溶液(例えば分析物及びアナログを含有する溶液、アナログを含有する溶液、アナログ及び標識CFS又は反応向上CFSとを含有する溶液)中のアナログ(標識アナログ又は反応向上アナログ)の使用量が、下限は通常10pM以上、好ましくは1nM以上、より好ましくは100nM以上であり、上限は通常10μM以下、好ましくは1μM以下、より好ましくは500nM以下となるように、上記した如き溶液中にアナログ(標識アナログ又は反応向上アナログ)を含有させればよい。
(5)分析物又はアナログを含有する溶液
分析物又はそのアナログを含有する溶液とは、上記した如き本発明に係る分析物(それを含む血液由来試料)又はアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含む溶液を意味する。
このような溶液としては、下記(a)〜(f)が挙げられる。
(a)分析物を含む血液由来試料自体又は当該試料を含有する溶液
〔例えば、分離方法2の非競合法[I-1]における分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、分離方法2の競合法[I-2]における分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、分離方法2の競合法[I-4]における分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、分離方法2の競合法[I-5]における分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、分離方法2の競合法[I-6]における分析物を含む血液由来試料を含有する溶液等〕
(b)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFS又は/及び移動度変化CFSとを含有する溶液(言い換えれば分析物と1種以上の標識CFS又は/及び移動度変化CFSとの複合体を含む溶液)
〔例えば、分離方法1における複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFSを含む溶液、分離方法2の非競合法[I-2]における分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液、分離方法2の競合法[I-3]における分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、分離方法2の競合法[I-7]における分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液等〕
(c)アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液
〔例えば、分離方法2の競合法[I-3]における標識アナログを含有する溶液、分離方法2の競合法[I-4]における標識アナログを含有する溶液、分離方法2の競合法[I-7]における移動度変化アナログを含有する溶液等〕
(d)分析物を含む血液由来試料とアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)とを含有する溶液(言い換えれば分析物とアナログとを含む溶液)
〔例えば、分離方法2の競合法[I-1]における分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液等〕
(e)アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)と1種以上の標識CFS又は/及び移動度変化CFSとを含有する溶液(言い換えればアナログと1種以上の標識CFS又は/及び移動度変化CFSとの複合体を含む溶液)
〔例えば、分離方法2の競合法[I-2]における標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、分離方法2の競合法[I-6]における移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液等〕
(f)分析物を含む血液由来試料、アナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)及び1種以上の標識CFS又は/及び移動度変化CFSを含む溶液
〔例えば、分離方法1における複合体A'、複合体B'及び当該複合体A'(及びB')の形成に関与しなかった遊離の標識アナログを含む溶液、分離方法1における複合体A''、複合体B''及び当該複合体A''(及びB'')の形成に関与しなかった遊離の標識CFSを含む溶液等〕
また、本発明の分離方法1においてITPを実施する前に細管内又は外で本発明に係る複合体を形成させるために使用される各種溶液も上記した分析物又はそのアナログを含有する溶液に該当することは言うまでもない。
尚、上記の溶液(b)又は(e)には、例えば、本発明において、分析物又はそのアナログと最終的に結合する全ての標識CFS又は/及び移動度変化CFSのうちの一部のCFS(全CFSの一部)と分析物又はそのアナログとの複合体(中間複合体)、言い換えれば、最終的に形成される分析物又はそのアナログと標識CFS又は/及び移動度変化CFSとの複合体を構成するCFSよりも少ない数のCFSと分析物又はそのアナログとの複合体(中間複合体)、を含有する溶液も含まれる。
即ち、例えばCFSを2種使用する場合にあっては、1種のCFSと分析物又はそのアナログとの複合体(中間複合体)を含有する溶液であり、例えばCFSを3種使用する場合にあっては、1種のCFSと分析物又はそのアナログとの複合体(中間複合体)を含有する溶液、及び2種のCFSと分析物又はそのアナログとの複合体(中間複合体)を含有する溶液である(尚、4種以上のCFSを使用する場合も、これらと同様の考え方である。)。
尚、上記した溶液の何れか1種に充填剤(ポリマー)を含有させればよいが、全ての溶液に含有させるのが好ましい。
上記において、(a)分析物を含む血液由来試料は先述した通りである。また、溶液(a)〜(f)としては、分析物と標識CFS又は/及び移動度変化CFSとの複合体又は/及びアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)と標識CFS又は/及び移動度変化CFSとの複合体の形成を妨げず、且つITPを妨げないものないものであれば良く、例えば水、緩衝液(例えばLB又はTB)等が挙げられる。
2−5.CFS(標識CFS、移動度変化CFS)、移動度変化物質、標識物質及びそれを含む溶液
(1)CFS
本発明において、「分析物との複合体を形成し得る物質(Complex Forming Substance:CFS)」とは、上記した如き分析物又はそのアナログに結合するか又は他のCFSを介して分析物又はそのアナログと結合して当該分析物又はそのアナログとCFSとの複合体、即ち分析物又はそのアナログとCFSとを構成成分として含む複合体を形成し得る性質を有する物質を意味する。
このようなCFSとしては、例えば「抗原」−「抗体」間反応、「糖鎖」−「タンパク質」間反応、「糖鎖」−「レクチン」間反応、「酵素」−「インヒビター」間反応、「タンパク質」−「ペプチド鎖」間反応又は「染色体又はヌクレオチド鎖」−「ヌクレオチド鎖」間反応、「ヌクレオチド鎖」−「タンパク質」間反応等の相互反応によって分析物又はそのアナログと結合するもの等を意味し、上記各組合せに於いて何れか一方が分析物又はそのアナログである場合、他の一方がこのCFSである。例えば、分析物又はそのアナログが「抗原」であるときはCFSは「抗体」であり、分析物又はそのアナログが「抗体」であるときはCFSは「抗原」である(以下、その他の上記各組合せにおいても同様である)。
具体的には、例えばヌクレオチド鎖(オリゴヌクレオチド鎖、ポリヌクレオチド鎖);染色体;ペプチド鎖(例えばC−ペプチド、アンジオテンシンI等)、タンパク質〔例えばプロカルシトニン、免疫グロブリンA(IgA),免疫グロブリンE(IgE),免疫グロブリンG(IgG),免疫グロブリンM(IgM),免疫グロブリンD(IgD),β2−ミクログロブリン、アルブミン、これらの分解産物、フェリチン等の血清タンパク質〕;酵素〔例えばアミラーゼ(例えば膵型,唾液腺型,X型等)、アルカリホスファターゼ(例えば肝性,骨性,胎盤性,小腸性等)、酸性ホスファターゼ(例えばPAP等)、γ−グルタミルトランスファラーゼ(例えば腎性,膵性,肝性等)、リパーゼ(例えば膵型,胃型等)、クレアチンキナーゼ(例えばCK-1,CK-2,mCK等)、乳酸脱水素酵素(例えばLDH1〜LDH5等)、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(例えばASTm,ASTs等)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(例えばALTm,ALTs等)、コリンエステラーゼ(例えばChE1〜ChE5等)、ロイシンアミノペプチダーゼ(例えばC-LAP,AA,CAP等)、レニン、プロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ等〕,ホルモン(例えばPTH,TSH,インシュリン,LH,FSH,プロラクチン等)、レセプター(例えばエストロゲン,TSH等に対するレセプター);リガンド(例えばエストロゲン,TSH等);例えば細菌(例えば結核菌,肺炎球菌,ジフテリア菌,髄膜炎菌,淋菌,ブドウ球菌,レンサ球菌,腸内細菌,大腸菌,ヘリコバクター・ピロリ等)、ウイルス(例えばルベラウイルス,ヘルペスウイルス,肝炎ウイルス,ATLウイルス,AIDSウイルス,インフルエンザウイルス,アデノウイルス,エンテロウイルス,ポリオウイルス,EBウイルス,HAV,HBV,HCV,HIV,HTLV等)、真菌(例えばカンジダ,クリプトコッカス等)、スピロヘータ(例えばレプトスピラ,梅毒トレポネーマ等)、クラミジア、マイコプラズマ等の微生物;当該微生物に由来するタンパク質又はペプチド或いは糖鎖抗原;気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎等のアレルギーの原因となる各種アレルゲン(例えばハウスダスト、例えばコナヒョウダニ,ヤケヒョウダニ等のダニ類、例えばスギ、ヒノキ、スズメノヒエ,ブタクサ,オオアワガエリ,ハルガヤ,ライムギ等の花粉、例えばネコ,イヌ,カニ等の動物、例えば米,卵白等の食物、真菌、昆虫、木材、薬剤、化学物質等に由来するアレルゲン等);脂質(例えばリポタンパク質等);プロテアーゼ(例えばトリプシン,プラスミン,セリンプロテアーゼ等);腫瘍マーカータンパク抗原(例えばPSA,PGI,PGII等);糖鎖抗原〔例えばAFP(例えばL1からL3等)、hCG(hCGファミリー)、トランスフェリン、IgG、サイログロブリン、Decay-accelerating-factor(DAF)、癌胎児性抗原(例えばCEA,NCA,NCA-2,NFA等)、CA19-9、PIVKA-II、CA125、前立腺特異抗原、癌細胞が産生する特殊な糖鎖を有する腫瘍マーカー糖鎖抗原、ABO糖鎖抗原等〕;糖鎖(例えばヒアルロン酸、β−グルカン、上記糖鎖抗原等が有する糖鎖等);糖鎖に結合するタンパク質(例えばヒアルロン酸結合タンパク、βグルカン結合タンパク等);リン脂質(例えばカルジオリピン等);リポ多糖(例えばエンドトキシン等);化学物質(例えばT3,T4,例えばトリブチルスズ,ノニルフェノール,4-オクチルフェノール,フタル酸ジ-n-ブチル,フタル酸ジシクロヘキシル,ベンゾフェノン,オクタクロロスチレン,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル等の環境ホルモン);人体に投与・接種される各種薬剤及びこれらの代謝物;アプタマー;核酸性結合物質;およびこれらに対する抗体等が挙げられる。尚、本発明に於いて用いられる抗体には、パパインやペプシン等の蛋白質分解酵素、或いは化学的分解により生じるFab、F(ab')フラグメント等の分解産物も包含される。
上記した如きCFSは、1種又は2種以上適宜組み合わせて用いても良い。
尚、2種以上のCFSを組み合わせて使用(併用)する場合、分析物又はそのアナログと2種以上のCFSとの複合体を形成し得るものであれば、それぞれのCFSの結合部位は特に限定されない。このようなCFSの結合部位としては、例えば2種以上のCFSの結合部位が全て分析物又はそのアナログ上のみに存在する場合〔結合形態(1)〕、2種以上のCFSのうち、少なくとも1種のCFS(例えばCFS A)の結合部位は分析物又はそのアナログ上のみに存在し、その他の少なくとも1種のCFS(例えばCFS B)の結合部位は分析物又はそのアナログとCFS Aとの複合体が形成されたことによって新たに生じる部位に存在する場合〔結合形態(2)〕、2種以上のCFSのうち、少なくとも1種のCFS(例えばCFS A)の結合部位は分析物又はそのアナログ上のみに存在し、その他の少なくとも1種のCFS(例えばCFS B)の結合部位はCFS A上のみに存在する場合〔結合形態(3)〕等が挙げられる。なかでも、2種以上のCFSの結合部位は、それぞれ異なるものであるのが好ましい。尚、上記結合形態(2)において、新たに生じる部位に特異的に結合する性質を有するもの(CFS)としては、例えば分析物又はそのアナログとCFSとの複合体を認識してこれに結合し得る抗体、ペプチド鎖、ヌクレオチド鎖等が挙げられる。
上記した如きCFSとしては、「抗原」−「抗体」間反応或いは「糖鎖−タンパク質」間反応によって分析物又はそのアナログと結合するものが好ましい。具体的には、分析物又はそのアナログに対する抗体、又は分析物又はそのアナログが結合する抗原、或いは分析物又はそのアナログに結合するタンパク質が好ましく、分析物又はそのアナログに対する抗体、或いは分析物又はそのアナログに結合するタンパク質がより好ましい。
上記した如きCFSに、標識物質又は分析物の電気泳動移動度を変化させ得る物質(以下、移動度変化物質と略記する)を結合させて、(i)分析物又はそのアナログとの複合体を形成し得且つ分析物又はそのアナログの電気泳動移動度を変化させ得る性質を有するCFS(以下、移動度変化CFSと略記する)、及び(ii)分析物又はそのアナログとの複合体を形成し得る性質を有し且つ標識物質により標識されたCFS(標識CFS)とする。
移動度変化物質を結合させたCFS(移動度変化CFS)を用いることによって、CFSの電気泳動移動度を変化させることができ、導入工程における分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液及び1種以上の標識CFS又は/及び移動度変化CFSを含む溶液の配置順序を任意の順序に制御し得、本発明に係る複合体の濃縮並びに当該複合体の形成反応の効率を向上することができる。
また、標識物質を結合させたCFS(標識CFS)を用いることによって血液由来試料中の分析物を測定(検出)することができる。
(2)移動度変化CFS、移動度変化物質
移動度変化CFSは、分析物又はそのアナログとの複合体を形成し得且つ分析物又はそのアナログの電気泳動移動度を変化させ得る性質、言い換えれば、分析物又はそのアナログとの複合体を形成することによって、当該分析物又はそのアナログの電気泳動操作に対応する挙動(電気泳動移動度)に差を生ぜしめ得る性質を有するものであり、分析物又はそのアナログと移動度変化CFSとの複合体(又は、分析物又はそのアナログと標識CFSとの複合体)の電気泳動移動度を、分析物又はそのアナログ自体(移動度変化CFSが結合していない分析物又はアナログ)の電気泳動移動度よりも高く又は低く(電気泳動速よりも速く又は遅く)し得るものである。
このような移動度変化CFSとしては、上記した如きCFSに、移動度変化物質〔例えばシリカ、アルミナ等の無機金属酸化物、例えば金、チタン、鉄及びニッケル等の金属及び、無機金属酸化物等にシランカップリング処理等の操作で官能基を導入したもの、例えば各種微生物、真核生物細胞等の生物、例えばアガロース、セルロース、不溶性デキストラン等の多糖類、例えばポリスチレンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート、ポリアクロレイン被覆粒子、架橋ポリアクリロニトリル、アクリル酸またはアクリル酸エステル系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン、塩化ビニル−アクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル−アクリレート等の合成高分子化合物、例えば赤血球、糖、核酸(RNA、DNA等のポリヌクレオチド)、タンパク質、ポリペプチド、ポリアミノ酸(ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリジン等)、脂質等の生体分子等〕を結合させたものが一般的である。しかしながら、例えば移動度変化物質表面に官能基を導入した後、この官能基を介して分析物に結合させる方法、移動度変化物質と分析物をリンカーを介して結合させる方法等の化学的結合法等により分析物に直接移動度変化物質を結合させてもよい。尚、上記に於いて、移動度変化物質とは、CFSと結合することによって、当該CFSに、上記した如き移動度変化CFSとしての性質を付与するものである。即ち、分析物又はそのアナログの電気泳動移動度を変化させ得る性質、言い換えれば、分析物又はそのアナログ、及びCFSとの複合体(又は、分析物又はそのアナログ、移動度変化CFS、及び標識CFSとの複合体)を形成することによって、CFSを介して、当該分析物又はそのアナログの電気泳動操作に対応する挙動(電気泳動移動度)に差を生ぜしめ得る性質であり、分析物又はそのアナログと移動度変化CFSとの複合体の電気泳動移動度を、分析物又はそのアナログ自体又は移動度変化CFSが結合していない分析物又はそのアナログとCFSとの複合体の電気泳動移動度よりも高く又は低く(電気泳動速度よりも速く又は遅く)し得るものである。
移動度変化物質としては、核酸鎖(ヌクレオチド鎖)、タンパク質、ポリペプチド又はポリアミノ酸が好ましく、核酸鎖(ヌクレオチド鎖)又はポリアミノ酸がより好ましい。なかでも核酸鎖が好ましく、DNAがより好ましい。また特に、DNAとしては二本鎖DNAが好ましい。
従って、移動度変化CFSとしては、上記した如きCFSに上記の好ましい移動度変化物質を結合させたものが好ましく、CFSとしての抗体に上記の好ましい移動度変化物質を結合させたものがより好ましい。なかでも、CFSとしての抗体に二本鎖DNAを結合させたものが特に好ましい。
また、使用される核酸鎖の長さとしては、例えば通常50bp〜2000bp、好ましくは100bp〜1000bp、より好ましくは120bp〜700bp、特に好ましくは150bp〜500bpである。尚、核酸鎖の長さをあまり短くすると核酸鎖の荷電が少なくなって分析物又はアナログの電気泳動移動度を変化させることが困難となり、逆にあまり長くすると分子量が大きくなって移動度が小さくなってしまう。
尚、移動度変化CFS(移動度変化物質)は、これを用いることにより本発明に係る複合体の電気泳動移動度をコントロールし、本発明に係る複合体のシャープな分離ピークを得るため(分離ピークをシャープにするため)等に使用されるが、その結果、本発明に係る複合体の電気泳動移動度が血液由来試料中の共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)の電気泳動移動度と同程度となる〔ITPによる共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)の移動時間付近に本発明に係る複合体の電気泳動移動度が移動する、ITPの電気泳動クロマトグラフにおいて共存物質(特に、ビリルビン)のピークと同付近に本発明に係る複合体の分離ピークが出現する、両者のピークがかぶる〕場合がある。
従って、本発明の分離方法は、このような場合に特に有用である。言い換えれば、本発明の分離方法は、移動度変化CFS(移動度変化物質)として本発明に係る複合体の電気泳動移動度を血液由来試料中の共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)の電気泳動移動度付近に変化させるものを使用する場合に特に有用である。
特に、移動度変化物質が核酸鎖である場合には、通常50bp〜2000bp、好ましくは100bp〜1000bp、より好ましくは120bp〜700bp、特に好ましくは150bp〜500bpの長さの核酸鎖を用いる場合、本発明に係る複合体の電気泳動移動度が血液由来試料中の共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)の電気泳動移動度と同程度となる〔ITPによる共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)の移動時間付近に本発明に係る複合体の電気泳動移動度が移動する、ITPの電気泳動クロマトグラフにおいて共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)のピークと同付近に本発明に係る複合体の分離ピークが出現する、両者のピークがかぶる〕可能性が高いので、本発明の分離方法が特に有効である。
尚、本発明における核酸鎖は、プリン塩基又はピリミジン塩基と、糖部分として五炭糖と、リン酸を含むヌクレオチド残基を基本単位とし、各ヌクレオチドはリン酸を介して糖部分の3'及び5'炭素と結合してポリヌクレオチド鎖(例えば、糖部分がリボースであるRNA又は/及び糖部分がデオキシリボースであるDNA)を形成するものである。
本発明で用いられる核酸鎖は、例えば化学合成法、微生物,昆虫,動物,植物等由来の細胞等から抽出・精製する方法、適当なプラスミド,ファージ,コスミド等のベクター遺伝子が導入された上記した如き細胞等を培養した後、細胞培養等により増殖したベクターを抽出・精製する方法、PCR等の遺伝子増幅技術を利用する方法(モレキュラークローニング ア ラボラトリー マニュアル セカンド エディション、J.サムブルック,E.F.フリッシュ,T.マニアティス、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス、WO2002/082083号等)等の自体公知の方法により調製することができる。また、このようにして得られた核酸鎖は、化学的分解や制限酵素等の核酸鎖切断酵素等により分解した後、適宜精製することによって所望の長さに調製してもよい。
また、このような核酸鎖は、種々のヌクレアーゼ活性に対するヌクレオチドの安定性を強化することが知られている任意種の修飾ヌクレオチドを使用して作製することもできる(例えば、ヌクレオチドのホスホロチオエート類似体、酸素の代わりにメチレン基をリボース環に含むヌクレオチド、又は2'-糖デオキシ置換基を2'-フルオロ、2'-o-メチル、2-o-アルコキシル−及び2'-o-アリル修飾で置換したヌクレオチドを使用することができる。このような修飾は例えばNucleic Acids Res., 1997, 25, 4429-4443, Susan M Freierらに記載されている。)。
CFSに移動度変化物質を結合させるには、即ち、移動度変化CFSを作製するには、通常この分野で用いられる常法、例えば自体公知のEIA、RIA、FIA或いはハイブリダイゼーション法等において一般的に行われている自体公知の標識方法[例えば、医化学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、宮井潔編、第3版、医学書院、1987、モレキュラー クローニング ア ラボラトリー マニュアル セカンド エディション、J.サムブルック,E.F.フリッシュ,T.マニアティス、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス、ハンドブック・オブ・フルオレッセント・プローブ・アンド・リサーチ・ケミカルズ7版第8章;モレキュラー・プローブInc.、国際公開パンフレットWO2002/082083号等]や、アビジン(又はストレプトアビジン)とビオチンの反応を利用した常法等何れの方法により行ってもよい。
また、CFSとして標識CFSと移動度変化CFSとを組み合わせて使用する(併用する)場合、分析物又はそのアナログ、標識CFS及び移動度変化CFSの三者の複合体が形成されるのであれば、これら三者の結合形態や標識CFSと移動度変化CFSの結合部位は特に限定されない。このような結合形態としては、例えば(1)分析物又はそのアナログを標識CFSと移動度変化CFSとで挟む所謂サンドイッチ複合体、(2)分析物又はそのアナログと標識CFS又は移動度変化CFSとの結合部位に更に移動度変化CFS又は標識CFSが結合した複合体、(3)分析物又はそのアナログと結合した標識CFS又は移動度変化CFSに更に移動度変化CFS又は標識CFSが結合した複合体等が挙げられる。また、当該結合部位は、例えば(1)標識CFSと移動度変化CFSの結合部位が全て分析物又はそのアナログ上のみに存在する場合〔結合形態(1)〕、(2)標識CFSと移動度変化CFSの一方の結合部位は分析物又はそのアナログ上のみに存在し、他方の結合部位は分析物と当該標識CFSと移動度変化CFSの一方との複合体が形成されたことによって新たに生じる部位に存在する場合〔結合形態(2)〕、(3)標識CFSと移動度変化CFSの一方の結合部位は分析物又はそのアナログ上のみに存在し、他方の結合部位は当該標識CFSと移動度変化CFSの一方のみに存在する場合〔結合形態(3)〕、(4)これらを組み合わせた場合等が挙げられる。なかでも、標識CFSの結合部位と移動度変化CFSの結合部位は異なるものであるのが好ましい。尚、上記(2)において、新たに生じる部位に特異的に結合する性質を有するもの(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)としては、例えば分析物又はそのアナログと標識CFS又は/及び移動度変化CFSとの複合体を認識してこれに結合し得る抗体、ペプチド鎖、ヌクレオチド鎖等が挙げられる。
(3)標識CFS、標識物質
検出可能な標識物質により標識された標識CFSを用いることによって血液由来試料中の分析物を測定(検出)することが可能となる。
本発明において用いられる標識物質としては、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、ハイブリダイゼーション法等、通常この分野で用いられるものであればよく、例えばアルカリホスファターゼ(ALP),β-ガラクトシダーゼ(β-Gal),パーオキシダーゼ(POD),マイクロパーオキシダーゼ,グルコースオキシダーゼ(GOD),グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH),リンゴ酸脱水素酵素,ルシフェラーゼ等の酵素類、例えばクーマシーブリリアントブルーR250,メチルオレンジ等の色素、例えばHiLyte Fluor 488、HiLyte Fluor 555、HiLyte Fluor 647、HiLyte Fluor 680、HiLyte Fluor 750等のHiLyte系色素〔何れもハイライトバイオサイエンス社(HiLyte Bioscience, Inc.)商品名〕、Alexa Fluor Dye 350、Alexa Fluor Dye 430、Alexa Fluor Dye 488、Alexa Fluor Dye 532、Alexa Fluor Dye 546、Alexa Fluor Dye 555、Alexa Fluor Dye 568、Alexa Fluor Dye 594、Alexa Fluor Dye 633、Alexa Fluor Dye 647、Alexa Fluor Dye 660、Alexa Fluor Dye 680、Alexa Fluor Dye 700、Alexa Fluor Dye 750等のAlexa系色素〔何れもモレキュラープローブス社(Molecular Probes)商品名〕、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7等のCyDye系色素〔何れもアマシャムバイオサイエンス社(Amersham Biosciences)商品名〕、例えばフルオレセイン,ローダミン,ダンシル,フルオレスカミン,クマリン,ナフチルアミン或はこれらの誘導体,希土類蛍光色素体〔例えばサマリウム(Sm)、ユーロピューム(Eu)、テルビウム(Tb)又はディスプロシウム(Dy)等の希土類金属と4,4'-ビス(1'',1'',1'',2'',2'',3'',3'',ヘプタフルオロ-4'',6''-ヘキサンジオン‐6''-イル)クロロスルフォ-o-テルフェニル(BHHCT)、4,7-ビス(クロロスルフォニル)-1,10-フェナンスロリン-2,9-ジカルボキシリックアシッド(BCPDA)、β-ナフチルトリフルオロアセチックアシッド(β-NTA)等のキレート化合物との組み合わせからなるもの等〕,インターカレーター色素〔例えばアクリジンオレンジ等のアクリジン色素、例えば臭化エチジウム,エチジウムホモダイマー1(EthD-1),エチジウムホモダイマー2(EthD-2),臭化エチジウムモノアジド(EMA),ジヒドロエチジウム等のエチジウム化合物、例えばヨウ素化プロピジウム,ヨウ素化ヘキシジウム等のヨウ素化合物、例えば7−アミノアクチノマイシンD(7-AAD)、例えばPOPO-1, BOBO-1, YOYO-1, TOTO-1, JOJO-1, POPO-3, LOLO-1, BOBO-3, YOYO-3, TOTO-3等のシアニンダイマー系色素(何れもモレキュラープローブ社商品名)、例えばSYBR Gold, SYBR Green I and SYBR Green II, SYTOX Green, SYTOX Blue, SYTOX Orange等のSYTOX系色素(何れもモレキュラープローブ社商品名)等〕、DNA二重らせんのマイナーグルーブに結合するもの〔例えば4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI:モレキュラープローブ社商品名),ペンタハイドレ−ト(ビス−ベンズイミド)(Hoechst 33258:モレキュラープローブ社商品名),トリヒドロクロライド(Hoechst 33342:モレキュラープローブ社商品名),ビスベンズイミド色素(Hoechst 34580:モレキュラープローブ社商品名)等〕、アデニン−チミン(A-T)配列に特異的に結合するもの〔例えば9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン(ACMA),ビス-(6-クロロ-2-メトキシ-9-アクリジニル)スペルミン(アクリジンホモダイマー)等のアクリジン色素、例えばヒドロキシスチルバミジン等〕等の蛍光性物質、例えばルシフェリン,イソルミノール,ルミノール,ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレート等の発光性物質、例えばフェノール,ナフトール,アントラセン或はこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル,3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル,2,6-ジ-t-ブチル-α-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリルオキシル等のオキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベル化剤としての性質を有する物質等が挙げられる。
標識物質により、CFSを標識するには、先に述べた如き標識物質によりCFSを標識する方法と同様の方法や国際公開パンフレットWO2002/082083号等に記載の常法により行えばよい。
(4)CFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含む溶液
このような溶液としては、例えば分離方法2の非競合法[I-1]における1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、分離方法2の非競合法[I-2]における1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、分離方法2の競合法[I-1]における1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、分離方法2の競合法[I-4]における1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、分離方法2の競合法[I-5]における1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液等が挙げられる。
上記した如きCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含有する溶液としては、分析物と標識CFS又は/及び移動度変化CFSとの複合体又は/及びアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)と標識CFS又は/及び移動度変化CFSとの複合体の形成を妨げず、且つITPを妨げないものであれば良く、例えば水、緩衝液(例えばLB又はTB)等が挙げられる。
上記した如き溶液中(または前述の分析物又はそのアナログを含有する溶液における溶液(b)、(e)及び(f))に含有させるCFS(標識CFS又は移動度変化CFS)の濃度、即ち、CFSの使用量は、使用するCFSの種類等により一概に言えないが、通常、反応液中(分析物又はそのアナログとCFSとを含有する溶液中)において、設定された検量限界濃度に相当する分析物又はそのアナログ全てと結合し得る濃度以上(好ましくはその2倍濃度以上、より好ましくはその5倍濃度以上)が当該反応液中に存在していることが望ましい。また、使用量の上限は特に限定されないが、経済性等を考慮して、通常設定された検量限界濃度に相当する分析物又はそのアナログ全てと結合し得る濃度の1012倍以下(好ましくは109倍以下、より好ましくは106倍以下)である。
より具体的には、分析物又はそのアナログとCFSとを含有する溶液中のCFSの使用量が、下限は通常10pM以上、好ましくは1nM以上、より好ましくは100nM以上であり、上限は通常10μM以下、好ましくは1μM以下、より好ましくは500nM以下となるように、上記した如き溶液中にCFSを含有させればよい。
2−6.具体的な分離方法
本発明の分離方法の実施の形態を以下に具体的に示す。
(1)分離方法1
以下に本発明の分離方法1の一実施形態を示す。
(1−1)非競合法
(1)前述したごとき本発明に係る複合体形成方法により細管外又は内において(a)血液由来試料中の分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS及び(c)1種以上の標識CFSを接触して予め得られた、これら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液を、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させる。
(2)次いで、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該ITP用細管に電圧を印加して、ITPによって、当該複合体AをTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(1−2)競合法
・標識アナログを用いる場合
(1)前述したごとき本発明に係る複合体形成方法により細管外又は内において(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSを接触して予め得られた、これら(a')及び(b)を含む複合体A'、これら(a)及び(b)を含む複合体B'、及び当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含有する溶液を、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させる。
(2)次いで、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該ITP用細管に電圧を印加して、ITPによって、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii) 当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
・移動度変化アナログを用いる場合
(1)前述したごとき本発明に係る複合体形成方法により細管外又は内において(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFS、(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSを接触して予め得られた、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''、これら(a)及び(c)を含む複合体B''、及び当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液を、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させる。
(2)次いで、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該ITP用細管に電圧を印加して、ITPによって、当該複合体A''をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A''と、(ii) 当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFS又は/及び当該複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(2)分離方法2
以下に本発明の分離方法2の一実施形態を示す。
(2−1)非競合法
(a)血液由来試料含有溶液、移動度変化CFS含有溶液及び標識CFS含有溶液を用いる場合
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)1種以上の標識CFSを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を、これらの溶液を予め細管外で混合することなく、1種以上の標識CFSを含有する溶液のゾーン、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液のゾーンおよび1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液のゾーンとが別々に形成されるように(液−液界面が形成されるように)、且つ細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)下記複合体Aが形成されるように、導入・配置させる。
(2)次いで、これらの溶液が均一に混合される前に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、分子拡散に依存せず、また物理的な混合を行うことなく、(a)当該分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(c)1種以上の標識CFSを電気泳動的に接触させてこれら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させ、当該複合体AをTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(b)血液由来試料及び標識CFS含有溶液と移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液(分析物と標識CFSとの複合体を含有する溶液)および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を、これらの溶液を予め細管外で混合することなく、分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液のゾーンおよび1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液のゾーンとが別々に形成されるように(液−液界面が形成されるように)、且つ細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)下記複合体Aが形成されるように、導入・配置させる。
(2)次いで、これらの溶液が均一に混合される前に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、分子拡散に依存せず、また物理的な混合を行うことなく、(a)当該分析物及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体と、(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させ、当該複合体AをTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(2−2)競合法
(c)血液由来試料及び標識アナログ含有溶液と移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を、これらの溶液を予め細管外で混合することなく、分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液のゾーンおよび1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液のゾーンとが別々に形成されるように(液−液界面が形成されるように)、且つ細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)下記複合体A'及び複合体B'が形成されるように、導入・配置させる。
(2)次いで、これらの溶液が均一に混合される前に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、分子拡散に依存せず、また物理的な混合を行うことなく、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、また、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(d)血液由来試料含有溶液と標識アナログ及び移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液((a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体A'を含む溶液)を、これらの溶液を予め細管外で混合することなく、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液のゾーンおよび標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液のゾーンとが別々に形成されるように(液−液界面が形成されるように)、且つ細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)下記複合体B'が形成されるように、導入・配置させる。
(2)次いで、これらの溶液が均一に混合される前に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、分子拡散に依存せず、また物理的な混合を行うことなく、(a)当該分析物と、複合体A'とを電気泳動的に接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(e)標識アナログ含有溶液、および血液由来試料及び移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)標識アナログを含有する溶液および2)分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(分析物と1種以上の移動度変化CFSとの複合体B'を含む溶液)を、これらの溶液を予め細管外で混合することなく、標識アナログを含有する溶液のゾーンおよび分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液のゾーンとが別々に形成されるように(液−液界面が形成されるように)、且つ細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)下記複合体B'が形成されるように、導入・配置させる。
(2)次いで、これらの溶液が均一に混合される前に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、分子拡散に依存せず、また物理的な混合を行うことなく、(a')当該標識アナログと複合体B'とを電気泳動的に接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(f)血液由来試料含有溶液、標識アナログ含有溶液及び移動度変化CFS含有溶液を用いる場合
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、2)標識アナログを含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を、これらの溶液を予め細管外で混合することなく、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液のゾーン、標識アナログを含有する溶液のゾーンおよび1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液のゾーンとが別々に形成されるように(液−液界面が形成されるように)、且つ細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)下記複合体A'及びB'が形成されるように、導入・配置させる。
(2)次いで、これらの溶液が均一に混合される前に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、分子拡散に依存せず、また物理的な混合を行うことなく、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させるとともに、(a)当該分析物と当該複合体A'とを電気泳動的に接触させてこれら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(g)標識アナログ含有溶液、血液由来試料含有溶液及び移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を、これらの溶液を予め細管外で混合することなく、標識アナログを含有する溶液のゾーン、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液のゾーンおよび1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液のゾーンとが別々に形成されるように(液−液界面が形成されるように)、且つ細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)下記複合体A'及び複合体B'が形成されるように、導入・配置させる。
(2)次いで、これらの溶液が均一に混合される前に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、分子拡散に依存せず、また物理的な混合を行うことなく、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させると共に、(a')標識アナログと当該複合体B'とを電気泳動的に接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(h)血液由来試料含有溶液及び移動度変化アナログ及び標識CFS含有溶液を用いる場合
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液((a')移動度変化アナログと(c)標識CFSとの複合体A''を含む溶液)を、これらの溶液を予め細管外で混合することなく、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液のゾーンおよび移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液のゾーンとが別々に形成されるように(液−液界面が形成されるように)、且つ細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)下記複合体B''が形成されるように、導入・配置させる。
(2)次いで、これらの溶液が均一に混合される前に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、分子拡散に依存せず、また物理的な混合を行うことなく、(a)当該分析物と当該複合体A''とを電気泳動的に接触させてこれら(a)及び(c)を含む複合体B''を形成させ、当該複合体A''をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(i)血液由来試料及び標識CFS含有溶液と移動度変化アナログ含有溶液とを用いる場合
(1)ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液((a)分析物と(c)1種以上の標識CFSとの複合体B''を含む溶液)と2)移動度変化アナログを含有する溶液を、これらの溶液を予め細管外で混合することなく、分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液のゾーンおよび移動度変化アナログを含有する溶液のゾーンとが別々に形成されるように(液−液界面が形成されるように)、且つ細管に電圧を印加した際に(ITPを行った際に)下記複合体A''が形成されるように、導入・配置させる。
(2)次いで、これらの溶液が均一に混合される前に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、ITPによって、分子拡散に依存せず、また物理的な混合を行うことなく、(a'')移動度変化アナログと当該複合体B''とを電気泳動的に接触させ、又は/及び(a'')当該移動度変化アナログと複合体B''の形成に関与しなかった(c)1種以上の標識CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''を形成させ、当該複合体A''をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
3.追加分離(CZE、CGE)
上記した如き本発明の分離方法(濃縮分離工程)により分離された本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')と血液由来試料中の共存物質とを、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)又はキャピラリーゲル電気泳動(CGE)によって、即ち、CZE又はCGEを行わせる細管内の2つのLBゾーンの間に導入し、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加することによって、これらを更に電気的に分離することができる。
本発明の分離工程においてITPにより分離された本発明に係る複合体と血液由来試料中の共存物質とを、更に、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でCZE又はCGEを行うことによりこれらの分離を更に効率的に行うことができる。
即ち、本発明の分離方法においては、前述した如き本発明の分離方法1又は2によって分離された、[B-1](i)当該複合体Aと(iii)血液由来試料中の共存物質、[B-2](i)当該複合体A'と(iii)血液由来試料中の共存物質、又は[B-3](i)当該複合体A''と(iii)血液由来試料中の共存物質を、CZE又はCGEを行わせる細管(以下、CZE/CGE用細管と略記する場合がある。)内の2つのLBゾーンの間に導入し(再導入工程)、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、当該細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、これらを更に分離する(追加分離工程)のが好ましい。
(1)再導入工程
再導入工程は、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でCZE又はCGEを実施するために、濃縮分離工程で分離された本発明に係る複合体〔複合体A、複合体A'又は複合体A''〕と血液由来試料中の共存物質とを、CZE/CGE用細管(キャピラリー)内の2つのLBゾーンの間に存在させる工程(導入・配置させる工程)である。
ここで、2つのLBゾーンの間に導入されるもの(以下、再導入物と略記する場合がある。)は、濃縮分離工程において分離された本発明に係る複合体を含有するゾーンと共存物質を含有するゾーン並びにこれら2つのゾーンの間に存在するゾーンであれば充分であるが、通常、濃縮分離工程において分離された、TBゾーンの下流側に存在する溶液、言い換えれば、ITPによりTBゾーンよりも速く移動した物質を含有するゾーンが導入される。好ましくは、濃縮分離工程において分離されたトレーリングイオンゾーンの下流側に存在する溶液、言い換えれば、ITPによりトレーリングイオンよりも速く移動した物質を含有するゾーンである。
尚、このような導入されるゾーン(再導入物)は、LBゾーンの上流側又はリーディングイオンゾーンの上流側に存在するもの、即ち、濃縮分離工程において分離されたTBゾーン(トレーリングイオンゾーン)とLBゾーン又はリーディングイオンゾーンの間に位置するものであれば充分であるが、後述するように、濃縮分離工程と追加分離工程とを同一の細管を用いて行う場合等においては、通常、濃縮分離工程において分離されたTBゾーン(好ましくはトレーリングイオンゾーン)の下流側に存在するゾーンは全て導入される。
また、MESイオン及びグルタミン酸イオンは本発明に係る複合体と共存物質の中間の電気泳動移動を示すため、ITP(濃縮分離工程)によりMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含有するゾーン(溶液)は、本発明に係る複合体を含有するゾーンと共存物質を含有するゾーンの間に存在することとなる。従って、上記した如き再導入物をCZE/CGE用細管(キャピラリー)内の2つのLBゾーンの間に導入(配置)すれば、その後に行われるCZE又はCGE(追加分離工程)はMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下で実施されることとなる。
従って、上記した如き再導入物としては、具体的には以下のものが挙げられる。
[B-1]非競合法の場合:
上記した濃縮分離工程(ITP)を実施した後に、TBゾーンの下流側に位置する、(1)血液由来試料中の分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体Aを含むゾーン、(2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び(3)血液由来試料中の共存物質を含むゾーン
尚、(1)のゾーン中には、上記の他に複合体の形成に関与しなかった遊離の移動度変化CFS、CFSと結合(反応)していない標識物質(未結合標識物質)等が含まれている場合もある。また、再導入物には、上記以外に移動度変化CFSを含むゾーンや未結合標識物質を含むゾーンが含まれる場合もある。
因みに、上記の再導入物の導入順序は、それぞれの物質が有する電気泳動移動度に従って濃縮分離工程(ITP)の結果決定されるが、通常は上流から下流に向かって(1)、(2)、(3)の順序である。
[B-2]標識アナログを用いる競合法の場合:
上記した濃縮分離工程(ITP)を実施した後に、TBゾーンの下流側に位置する、(1)標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'を含むゾーン、(2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び(3)血液由来試料中の共存物質を含むゾーン
尚、(1)のゾーン中には、上記の他に分析物と1種以上の移動度変化CFSとを含む複合体B'、複合体の形成に関与しなかった遊離の移動度変化CFS、CFSと結合(反応)していない標識物質(未結合標識物質)が含まれている場合もある。また、再導入物には、上記以外に複合体B'を含むゾーン、移動度変化CFSを含むゾーンや未結合標識物質を含むゾーンが含まれる場合もある。
因みに、上記の再導入物の導入順序は、それぞれの物質が有する電気泳動移動度に従って濃縮分離工程(ITP)の結果決定されるが、通常は上流から下流に向かって(1)、(2)、(3)の順序である。
[B-3]移動度変化アナログを用いる競合法の場合:
上記した濃縮分離工程(ITP)を実施した後に、TBゾーンの下流側に位置する、(1)移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含む複合体A''を含むゾーン、(2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び(3)血液由来試料中の共存物質を含むゾーン、
尚、(1)のゾーン中には、上記の他にCFSと結合(反応)していない標識物質(未結合標識物質)が含まれている場合もある。また、再導入物には、上記以外に未結合標識物質を含むゾーンが含まれる場合もある。場合によっては、(1)のゾーンには分析物と1種以上の標識CFSとを含む複合体B''が含まれることや再導入物として複合体B''を含むゾーンが含まれることもある。
因みに、上記の再導入物の導入順序は、それぞれの物質が有する電気泳動移動度に従って濃縮分離工程(ITP)の結果決定されるが、通常は上流から下流に向かって(1)、(2)、(3)の順序である。
再導入工程において、再導入物をCZE/CGE用細管内に導入する方法としては、当該溶液をCZE/CGE用細管(キャピラリー)内の2つのLBゾーンの間に存在させる(導入・配置させる)ことができる方法であればよく、自体公知の導入方法が使用可能である。
このような自体公知の導入方法としては、前述した分離方法1の導入工程における本発明に係る複合体を含有する溶液をITP用細管内に導入・配置する方法、分離方法2の導入工程における分析物又はそのアナログを含有する溶液と1種以上のCFSを含む溶液をITP用細管内に導入・配置する方法等が挙げられる。
尚、後述するように、濃縮分離工程と追加分離工程とを同一の細管を用いて(同一の細管内で)行う場合には、例えばWO2007/027495号、WO2007/121263号及び特開2006-317357号に記載された細管(キャピラリーチップ)を用いて、これらに記載された方法に従って実施することができる。
(2)追加分離工程(CZE、CGE)
追加分離工程は、例えばCZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に物質を導入し、当該物質を電気的に移動させて分離するCZE及びCGEの自体公知の方法において、本発明の分離方法(濃縮分離工程:ITP)により分離された本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')と血液由来試料中の共存物質とを、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でCZE又はCGEにより電気的に分離する以外は、自体公知の方法に従って実施すれば良く、使用される材料、試薬類等も自体公知の方法で用いられているものを使用すればよい。
追加分離工程では、濃縮分離工程において(ITPにより)既に分離された、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')と、前記した如き血液由来試料中の共存物質とを、CZE又はCGEにより電気的に移動させてCZE/CGE用細管内で更に分離する。
尚、ここでは、濃縮分離工程で既に分離されている、本発明に係る複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)とを更に分離する必要はないが、共存物質と同様にこれらを更に分離するのが好ましい。
例えば非競合法の場合には、少なくとも、複合体Aと、前記した如き血液由来試料中の共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)とを更に分離すればよく、移動度変化CFSを当該複合体から分離する必要はない。
また、例えば標識アナログを用いる競合法の場合には、少なくとも、複合体A'と、前記した如き血液由来試料中の共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)とを更に分離すればよく、移動度変化CFSや複合体B'(分析物と移動度変化CFSとの複合体)を当該複合体から分離する必要はない。また、移動度変化アナログを用いる競合法の場合には、少なくとも、複合体A''と、前記した如き血液由来試料中の共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)とを更に分離すればよい。
(2−1)MESイオン、グルタミン酸イオン
追加分離工程は、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下で、CZE又はCGEを行うものであるが、上記したように再導入工程において導入される再導入物には、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含有するゾーンが含まれているため、本発明の導入工程、濃縮分離工程、再導入工程及び追加分離工程を行えば、結果としてMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でCZE又はCGEを行うこととなる。
従って、追加分離工程の前に、MES又は/及びグルタミン酸を改めて存在させる必要はないが、例えば再導入工程においてMES又は/及びグルタミン酸を含有する溶液(ゾーン)を新たに導入したり、或いは追加分離工程で使用される2つのLBの何れか一方又は両方にMES又は/及びグルタミン酸を共存させておいても良い。
尚、この場合のMES又は/及びグルタミン酸の使用濃度、導入方法等は前述と同じである。
(2−2)2つのLB
追加分離工程において用いられるLB、LB中のリーディングイオン及びCZE/CGE用細管内への導入方法等は、前述の分離方法1と同じであり、これらの具体例、使用濃度、pH、好ましい態様は前述した通りである。
尚、2つのLB(及びリーディングイオン)は互いに同一でも異なっていても良い。また、追加分離工程で使用するLBと濃縮分離工程で使用するLBとは同一のものである必要はなく、これらを適宜選択して異なるLBを使用してもよい。
また、濃縮分離工程と追加分離工程とを同一の細管を用いて(同一の細管内で)行う場合、2つのLBのうち最下流に配置されるLBは、濃縮分離工程で用いられるLBと同一(共通)の組成であるものが一般的である。
(2−3)CZE、CGE条件(印加電圧、pH、温度、時間)
追加分離工程は、本発明に係る複合体と血液由来試料中の共存物質、要すれば当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)とを充分に分離し得る方法を用いて実施すればよく、このような方法としては、通常この分野で用いられる自体公知の細管内が基本的に泳動緩衝液だけで満たされており、それぞれの物質が荷電の大小によって異なる速度で移動することによって目的物質の分離を行うCZE〔文献:H.Hisamoto at al., Chem.Commun., (2001), 2662;WO2007/027495号;WO2007/121263号;特開2006-317357号等〕及び分子篩い効果を有するポリマー等の充填剤を使用し、目的物質の持つ荷電とポリマーとの相互作用を引き起こす分子の大きさによって目的物質を分離するCGE〔文献:S. Hjerten, J.Chromatogr., (1987), 397, 409;WO2007/027495号;WO2007/121263号;特開2006-317357号等〕が使用可能である。
尚、本発明においては、上記した如きCZE及びCGEにおいて使用される試薬類等が適宜使用可能である。また、このような試薬類、分離の際の操作方法、条件等は、前述した如き文献等の記載に準じて適宜選択することができる。
追加分離工程における印加電圧は、本発明に係る複合体と血液由来試料中の共存物質、要すれば当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)とが充分に分離される範囲であればよく、通常この分野で用いられている範囲から適宜選択される。より具体的には、電圧は、下限が通常5V/cm以上、好ましくは10V/cm以上、より好ましくは50V/cm以上、更に好ましくは500V/cm以上、特に好ましくは1000V/cm以上であり、上限が通常10000V/cm以下、好ましくは5000V/cm以下、より好ましくは2000V/cm以下の範囲の電界強度となるように印加される。
また、その他の分離条件(例えばpH、温度、時間等)は、本発明に係る複合体と血液由来試料中の共存物質、要すれば当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)とが充分に分離される範囲であればよく、通常この分野で用いられている自体公知の方法に従い適宜選択される。
具体的には、pHは下限が通常2以上、好ましくは5以上であり、上限が通常10以下、好ましくは9以下であり、温度は、下限が通常0℃以上、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、上限が通常50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
時間は、使用するCFSの分析物又はそのアナログに対する結合定数によって異なり、結合定数が低い場合は比較的長い反応時間が必要であり、また、結合定数が高い場合は比較的短い反応時間でよい。より具体的には、例えば下限が通常10秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上であり、上限が1時間以下、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下、更に好ましくは5分以下である。
(2−5)負荷電ポリマーの使用
本発明においては、追加分離工程を負(マイナス)の電荷を有する荷電ポリマー(負荷電ポリマー)の存在下で行うのが好ましい。
即ち、CZE又はCGEによる本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')の分離を、負荷電ポリマーの存在下で行えば、再導入工程において導入された再導入物中に存在する未結合標識物質(試薬ノイズ)と本発明に係る複合体とを分離することが可能となる。
尚、当該未結合標識物質(試薬ノイズ)とは、CFSやアナログが結合していない上記した如き標識物質自体であり、標識CFSや標識アナログを作製する際(即ち、標識物質とCFS又はアナログとを反応させる際)に生じる未反応の標識物質や、標識CFSや標識アナログの分解によって生じる解離した標識物質等を意味する。そしてこのような未結合標識物質は、標識CFS又は標識アナログを含有する溶液中に存在し、その電気泳動移動度によっては再導入工程においてCZE/CGE用細管内に導入される場合がある。このような場合には、続いて行われる追加分離工程(CZE又はCGE)において、例えばバックグラウンドの上昇等の分析に悪影響を及ぼす原因となる。従って、このような未結合標識物質と本発明に係る複合体とを充分に分離できれば、より精度の高い分析が可能となる。
また、濃縮分離工程を負荷電ポリマーの存在下で行えば、血液由来試料中に共存する、分析に悪影響を及ぼす共存物質の影響を低減することも可能となる。
本発明で用いる負荷電ポリマーとしては、ポリアニオン性ポリマーが挙げられ、より具体的には、例えばヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ポリタングステン酸、ホスホタングステン酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ポリアネトール硫酸等のポリアニオン性ポリサッカライド;例えばポリ-dIdC、ポリビニル硫酸、ポリアクリル酸等のポリアニオン性合成高分子化合物;これらの塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等);及びこれらの複合体等が挙げられる。これら負荷電ポリマーは1種でも、また、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
上記したなかでも、アニオン性ポリサッカライドが好ましく、ヘパリン又はその塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等)が特に好ましい。尚、ヘパリン又はその塩としては特に限定されず、低分子ヘパリン(その塩)〔分子量1000〜10000程度;平均分子量4000〜5000程度〕でも通常の(未分画)ヘパリン(その塩)〔分子量3000〜30000程度;平均分子量12000〜15000程度〕でも使用可能であるが、未分画ヘパリンが好ましい。
追加分離工程を実施する際に、上記した如き負荷電ポリマーを存在させる方法としては、最終的に負荷電ポリマーの存在下でCZE又はCGEを行うことができるものであれば良く、特に限定されない。
このような方法としては、例えば細管(ITP用細管又は、CZE/CGE用細管)に導入される溶液〔例えば、上記分離方法1や分離方法2において導入される各種溶液(分析物、アナログ及びCFSの何れか1種以上を含有する溶液、LB、TB、液体等)〕中に負荷電ポリマーを共存させておく方法等が挙げられる。尚、具体的には、前述した如き、分離方法1におけるITPを行う際にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを存在させる方法や分離方法2におけるITPを行う際にMESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを存在させる方法に準じてこれを行えばよい。
なかでも、負荷電ポリマーは、分析物を含む血液由来試料を含有しない溶液(ゾーン)〔LB、TB、分離方法1の(1−1)における(b)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、(c)1種以上の標識CFSを含有する溶液、(a')標識アナログを含有する溶液、(a'')移動度変化アナログを含有する溶液、分離方法1の(1−2)における(b)を含有する溶液、(c)を含有する溶液、(b)及び(c)を含有する溶液、(a')を含有する溶液、(b)を含有する溶液、(a')及び(b)を含有する溶液、(a'')を含有する溶液、(c)を含有する溶液、(a'')及び(c)を含有する溶液、分離方法2における(b)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、(c)1種以上の標識CFSを含有する溶液、(a')標識アナログを含有する溶液、(b)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、(a'')移動度変化アナログを含有する溶液、(c)1種以上の標識CFSを含有する溶液、(b)及び(c)を含有する溶液、(a')及び(b)を含有する溶液、(a'')及び(c)を含有する溶液等〕中に共存させておくのが好ましく、少なくともLB(ゾーン)中に含有させておくのが特に好ましい。
より具体的には、非競合法の場合には、例えばLB(ゾーン)、1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液および1種以上の標識CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中または、LB(ゾーン)及び1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中に含有させるのが好ましい。少なくともLB(ゾーン)中に含有させておくのが特に好ましい。
また、競合法の場合には、例えばLB(ゾーン)および1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB(ゾーン)および標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB(ゾーン)、標識アナログを含有する溶液および1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB(ゾーン)および1種以上の標識CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、またはLB(ゾーン)、移動度変化アナログを含有する溶液および1種以上の標識CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中に含有させるのが好ましい。少なくともLB(ゾーン)中に含有させておくのが特に好ましい。
上記した如き負荷電ポリマーの使用量は、使用される負荷電ポリマーの種類等によって異なるため一概には言えないが、例えばLB中の濃度としては、下限が通常0.01%(w/v)以上、好ましくは0.05%(w/v)以上、より好ましくは0.5%(w/v)以上であって、上限が通常50%(w/v)以下、好ましくは10%(w/v)以下、更に好ましくは5%(w/v)以下であり、なかでも約1%(w/v)が特に好ましい。また、LB以外の溶液(TB、または前述の分離方法1や分離方法2における各種溶液)中の濃度としては、下限が通常0.001%(w/v)以上、好ましくは0.01%(w/v)以上、より好ましくは0.02%(w/v)以上、更に好ましくは0.025%(w/v)以上であって、上限が通常10%(w/v)以下、好ましくは5%(w/v)以下、より好ましくは1%(w/v)以下、更に好ましくは0.05%(w/v)以下である。尚、LB以外の溶液中に当該負荷電ポリマーを多量に含有させると、測定に影響を与えるノイズ成分(共存物質)を濃縮してしまい、測定に悪影響を及ぼす可能性があるので注意が必要である。
(2−5)細管(チャネル)
上記したように追加分離工程はCZE/CGE用細管内で行われるが、このような細管としては、濃縮分離工程で用いられるITP用細管と同じものが挙げられ、また、細管の材質及び内径等も前述した通りである。
また、本発明の濃縮分離工程及び追加分離工程は、通常、同一の細管を用いて(同一の細管内で)行われる。即ち、本発明で用いられる細管は、少なくとも、本発明の濃縮分離工程(ITP)を実施し得る部分及び本発明の追加分離工程(CZE又はCGE)を実施し得る部分を有するものが好ましい。これらの部分は、細管にそれぞれ独立して存在していても、また、それらの一部或いは全部が重複して存在していても良い。言い換えれば、本発明の分離方法で用いられる細管は、ITPを実施し得る部分およびCZE又はCGEを実施し得る部分を有するものが好ましい。
このような細管(チャネル)及びこれを有するチップとしては、例えばWO2007/027495号、WO2007/121263号及び特開2006-317357号に記載された細管(チャネル)およびチップ)が挙げられる。
(2−6)追加分離工程を行う場合の具体的な分離方法
本発明において、追加分離工程を行う場合の分離方法の実施の形態を以下に具体的に示す。
以下に分離方法1における一実施形態を示す。
(2−6−1)非競合法に基づく分離方法1
(1)前記「2−6.(1−1)非競合法」における工程(1)のように、複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液を、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させる。
(2)次いで、前記「2−6.(1−1)非競合法」における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、当該複合体AをTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体Aと血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(2−6−2)競合法に基づく分離方法1
・標識アナログを用いる場合
(1)前記「2−6.(1−2)競合法・標識アナログを用いる場合」における工程(1)のように、(a')及び(b)を含む複合体A'、(a)及び(b)を含む複合体B'、及び当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含有する溶液を、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(1−2)競合法・標識アナログを用いる場合」における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii) 当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
・移動度変化アナログを用いる場合
(1)前記「2−6.(1−2)競合法・移動度変化アナログを用いる場合」における工程(1)のように、(a'')及び(c)を含む複合体A''、これら(a)及び(c)を含む複合体B''、及び当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液を、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(1−2)競合法・移動度変化アナログを用いる場合」における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、当該複合体A''をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A''と、(ii) 当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFS又は/及び当該複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A''と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
以下に本発明の分離方法2の一実施形態を示す。
(2−6−3)非競合法に基づく分離方法2
(a)血液由来試料含有溶液、移動度変化CFS含有溶液及び標識CFS含有溶液を用いる場合
(1)前記「2−6.(2)分離方法2」の(a)における工程(1)のようにITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)1種以上の標識CFSを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液とを導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(a)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(c)1種以上の標識CFSを電気泳動的に接触させてこれら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させ、当該複合体AをTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体Aと血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(b)血液由来試料及び標識CFS含有溶液と移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(b)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液(分析物と標識CFSとの複合体を含有する溶液)および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(a)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体と、(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させ、当該複合体AをTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体Aと血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(2−6−4)競合法に基づく分離方法2
(c)血液由来試料及び標識アナログ含有溶液と移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(c)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(c)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、また、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(d)血液由来試料含有溶液と標識アナログ及び移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(d)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液((a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体A'を含む溶液)を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(d)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物と、複合体A'とを電気泳動的に接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(e)標識アナログ含有溶液、および血液由来試料及び移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(e)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)標識アナログを含有する溶液および2)分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(分析物と1種以上の移動度変化CFSとの複合体B'を含む溶液)とを導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(e)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a')当該標識アナログと複合体B'とを電気泳動的に接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(f)血液由来試料含有溶液、標識アナログ含有溶液及び移動度変化CFS含有溶液を用いる場合
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(f)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、2)標識アナログを含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(f)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させるとともに、(a)当該分析物と当該複合体A'とを電気泳動的に接触させてこれら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(g)標識アナログ含有溶液、血液由来試料含有溶液及び移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(g)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液とを導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(g)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させると共に、(a')標識アナログと当該複合体B'とを電気泳動的に接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(h)血液由来試料含有溶液及び移動度変化アナログ及び標識CFS含有溶液を用いる場合
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(h)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液(移動度変化アナログと標識CFSとの複合体A''を含む溶液)を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(h)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物と当該複合体A''とを電気泳動的に接触させてこれら(a)及び(c)を含む複合体B''を形成させ、当該複合体A''をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A''と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(i)血液由来試料及び標識CFS含有溶液と移動度変化アナログ含有溶液とを用いる場合
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(i)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液(分析物と1種以上の標識CFSとの複合体B''を含む溶液)と2)移動度変化アナログを含有する溶液を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(i)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a'')移動度変化アナログと、当該複合体B''とを電気泳動的に接触させ、又は/及び(a'')当該移動度変化アナログと複合体B''の形成に関与しなかった(c)1種以上の標識CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''を形成させ、当該複合体A''をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A''と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
4.本発明の測定方法
本発明の分離方法1又は分離方法2(濃縮分離工程)により分離された、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')の量、本発明に係る複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子(標識CFS、標識アナログ、分析物-標識CFS複合体)の量を、これらに含まれる標識物質の性質に応じた方法により測定すれば、試料中に存在する分析物の量を、簡便且つ高感度に短時間に求めることができる。
また、本発明の分離方法において追加分離工程を実施した場合には、分離された本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')の量を、当該複合体に含まれる標識物質の性質に応じた方法により測定すれば、試料中に存在する分析物の量を、簡便且つ高感度に短時間に求めることができる。
従って、本発明の測定方法は、本発明の分離方法1又は分離方法2(濃縮分離工程)により分離された、[C-1]当該複合体Aの量又は当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFSの量、[C-2]当該複合体A'の量又は当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログの量、或いは[C-3]当該複合体A''の量、又は当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFSの量又は/及び分析物と標識CFSを含む複合体B''の量、を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求めるか(測定工程)、または
本発明の分離方法1又は2を実施した後、更に追加分離工程を実施して分離された、当該複合体Aの量、当該複合体A'の量、または当該複合体A''の量を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求めること(測定工程)、を特徴とする分析物の測定方法。
本発明の測定方法は、上記の如く離方法1又は分離方法2(濃縮分離工程)により分離された、本発明に係る複合体の量、本発明に係る複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子の量を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求めるもの、および本発明の分離方法1又は2を実施した後、更に追加分離工程を実施して分離された、当該複合体Aの量、当該複合体A'の量、または当該複合体A''の量を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求めるものである。
(1)測定工程
測定工程において、分離された本発明に係る複合体の量、本発明に係る複合体と当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子の量を測定するには、例えば当該複合体中の標識物質又は当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子中の標識物質の性質に応じた方法により当該標識物質を測定し、その結果に基づいて行えばよい。即ち、非競合法においては、分離された、複合体Aの量又は当該複合体Aの形成に関与しなかった標識CFSの量を、例えば当該複合体A中の標識物質又は当該複合体の形成に関与しなかった標識CFS中の標識物質の性質に応じた方法により当該標識物質を測定し、その結果に基づいて行えばよい。また、標識アナログを用いる競合法においては、分離された、複合体A'の量又は当該複合体A'の形成に関与しなかった標識アナログの量を、当該複合体A'中の標識物質又は当該複合体A'の形成に関与しなかった標識アナログ中の標識物質の性質に応じた方法により当該標識物質を測定し、その結果に基づいて行えばよい。また、移動度変化アナログを用いる競合法においては、分離された複合体A''の量又は複合体B''の量又は/及び当該複合体A''及び複合体B''の形成に関与しなかった標識CFSの量を、当該複合体A''中の標識物質又は当該複合体B''中の標識物質又は/及び当該複合体A''及び複合体B''の形成に関与しなかった標識CFS中の標識物質の性質に応じた方法により当該標識物質を測定し、その結果に基づいて行えばよい。
標識物質を測定するには、標識物質の種類に応じて夫々所定の方法に従って行えばよく、例えば、その性質が酵素活性の場合にはEIAやハイブリダイゼーション法等の常法、例えば「酵素免疫測定法、蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.31、北川常廣・南原利夫・辻章夫・石川榮治編集、51〜63頁、共立出版(株)、1987年9月10日発行」等に記載された方法に準じて測定を行えばよい。また、その性質が蛍光性の場合には蛍光光度計や共焦点レーザー顕微鏡等の測定機器を用いるFIAやハイブリダイゼーション法等の常法、例えば「図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、( 株)ソフトサイエンス社、1983」、「生化学実験講座2 核酸の化学III、実吉峯郎、299〜318頁、(株)東京化学同人、1977年12月15日発行等に記載された方法に準じて測定を行えばよく、その性質が発光性の場合にはフォトンカウンター等の測定機器を用いる常法、例えば「酵素免疫測定法、蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.31、北川常廣・南原利夫・辻章夫・石川榮治編集、252〜263頁、共立出版(株)、1987年9月10日発行」等に記載された方法に準じて測定を行えばよい。更に、その性質が紫外部に吸収を有する性質の場合には分光光度計等の測定機器を用いる常法によって測定を行えばよく、その性質が発色性の場合には分光光度計や顕微鏡等の測定機器を用いる常法によって測定を行えばよい。また、検出物質がスピンの性質を有する物質の場合には電子スピン共鳴装置を用いる常法、例えば「酵素免疫測定法、蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.31、北川 常廣・南原利夫・辻章夫・石川榮治編集、264〜271頁、共立出版(株)、1987年9月10日発行」等に記載された方法が挙げられる。
また、測定された、本発明に係る複合体の量又は当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子の量、即ち、本発明に係る複合体中の標識物質の量又は当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子の量中の標識物質の量に基づいて、試料中に存在する分析物の量を求めるには、例えば以下のように行えばよい。
非競合法においては、測定された、複合体Aの量又は当該複合体Aの形成に関与しなかった標識CFSの量、即ち、上記の如きして得られた複合体A中の標識物質の量又は当該複合体Aの形成に関与しなかった標識CFS中の標識物質の量に基づいて、試料中に存在する分析物の量を求めるには、例えば分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行い、得られた分析物の量と、複合体A中の標識物質の量又は当該複合体Aの形成に関与しなかった標識CFS中の標識物質の量との関係を示す検量線を作製し、この検量線に分析物を含有する試料を用いて測定を行って得られた標識物質の量をあてはめることにより、目的の分析物の量を求めることができる。
また、標識アナログを用いる競合法においては、複合体A'の量又は当該複合体A'の形成に関与しなかった標識アナログの量、即ち、上記の如きして得られた複合体A'中の標識物質の量又は当該複合体A'の形成に関与しなかった標識アナログ中の標識物質の量に基づいて、試料中に存在する分析物の量を求めるには、例えば分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行い、得られた分析物の量と、複合体A'中の標識物質の量又は当該複合体A'の形成に関与しなかった標識アナログ中の標識物質の量との関係を示す検量線を作製し、この検量線に分析物を含有する試料を用いて測定を行って得られた標識物質の量をあてはめることにより、目的の分析物の量を求めることができる。
移動度変化アナログを用いる競合法においては、複合体A''の量又は複合体B''の量又は/及び当該複合体A''及び複合体B''の形成に関与しなかった標識CFSの量、即ち、上記の如きして得られた複合体A''中の標識物質の量又は複合体B''中の標識物質の量又は/及び当該複合体A''及び複合体B''の形成に関与しなかった標識CFSの標識物質の量に基づいて、試料中に存在する分析物の量を求めるには、例えば分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行い、得られた分析物の量と、複合体A''中の標識物質の量又は複合体B''中の標識物質の量又は/及び当該複合体A''及び複合体B''の形成に関与しなかった標識CFS中の標識物質の量との関係を示す検量線を作製し、この検量線に分析物を含有する試料を用いて測定を行って得られた標識物質の量をあてはめることにより、目的の分析物の量を求めることができる。
また、試料中に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準として添加した当該物質の量と、本発明に係る複合体の量又は当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子の量〔即ち、本発明に係る複合体中の標識物質の量又は当該複合体の形成に関与しなかった遊離の標識物質含有分子中の標識物質の量〕とを比較することによって、相対的な試料中の分析物の量の算出を行ってもよい。また、このようにすることによって、電気泳動装置間の誤差を補正することも可能となる。更には、内部標準ピークの移動度を用いて目的ピーク移動度の補正も出来る。
このような検出可能な物質(内部標準)としては、前述した如き標識物質や蛍光物質等で標識された例えばペプチド、タンパク質、核酸(DNA、RNA)、アミノ酸、蛍光物質、糖、糖鎖等が挙げられる。
また、本発明において、標識物質として酵素を用いる場合等には、当該酵素の活性を測定するために、当該酵素の基質や他の共役酵素類等が必要な場合がある。そのような場合には、例えばこれら基質、他の共役酵素類等を、少なくとも本発明の濃縮分離工程を実施する前又は追加分離工程を実施する前に、本発明に係る複合体を含む溶液の下流側の細管内に配置させることができる。好ましくは、本発明の導入工程において、分析物又はそのアナログを含有する溶液(ゾーン)及び1種以上のCFSを含む溶液(ゾーン)のうちの最も下流側に配置された溶液のさらに下流側に、これら基質、他の共役酵素類等を含む溶液を配置させるか、或いは再導入工程において、分析物又はそのアナログを含有する溶液(ゾーン)及び1種以上のCFSを含む溶液(ゾーン)のうちの最も下流側に配置された溶液のさらに下流側に、これら基質、他の共役酵素類等を含む溶液を配置させて、本発明の測定方法を実施することができる。
また、標識物質としてインターカレーター色素を用いる場合には、本発明の導入工程又は再導入工程において、当該インターカレーター色素を、分析物又はそのアナログ(標識アナログ又は移動度変化アナログ)を含有する溶液及び1種以上のCFS(標識CFS又は/及び移動度変化CFS)を含む溶液と共に細管内に導入・配置させる必要はなく、LB又は/及びTB中に当該インターカレーター色素を含有させておけばよい。
(2)具体的な測定方法
本発明の測定方法の好ましい実施の形態を以下に具体的に示す。
以下に分離方法1における一実施形態を示す。
(2−1)非競合法に基づく分離方法1
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)前記「2−6.(1−1)非競合法」における工程(1)のように、複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液を、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させる。
(2)次いで、前記「2−6.(1−1)非競合法」における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、当該複合体AをTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体Aと血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
(2−2)競合法に基づく分離方法1
・標識アナログを用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)前記「2−6.(1−2)競合法・標識アナログを用いる場合」における工程(1)のように、(a')及び(b)を含む複合体A'、(a)及び(b)を含む複合体B'、及び当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含有する溶液を、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(1−2)競合法・標識アナログを用いる場合」における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
・移動度変化アナログを用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)前記「2−6.(1−2)競合法・移動度変化アナログを用いる場合」における工程(1)のように、(a'')及び(c)を含む複合体A''、これら(a)及び(c)を含む複合体B''、及び当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液を、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(1−2)競合法・移動度変化アナログを用いる場合」における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、当該複合体A''をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFS又は/及び当該複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A''と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A''中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A''中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
以下に本発明の分離方法2の一実施形態を示す。
(2−3)非競合法に基づく分離方法2
(a)血液由来試料含有溶液、移動度変化CFS含有溶液及び標識CFS含有溶液を用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)前記「2−6.(2)分離方法2」の(a)における工程(1)のようにITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)1種以上の標識CFSを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液とを導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(a)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(c)1種以上の標識CFSを電気泳動的に接触させてこれら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させ、当該複合体AをTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体Aと血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の少なくとも1種の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
(b)血液由来試料及び標識CFS含有溶液と移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(b)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液(分析物と標識CFSとの複合体を含有する溶液)および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(b)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体と、(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させ、当該複合体AをTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体Aと血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の少なくとも1種の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
(2−6−4)競合法に基づく分離方法2
(c)血液由来試料及び標識アナログ含有溶液と移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(c)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(c)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、また、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の少なくとも1種の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
(d)血液由来試料含有溶液と標識アナログ及び移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(d)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(標識アナログと1種以上の移動度変化CFSとの複合体A'を含む溶液)を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(d)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物と、複合体A'とを電気泳動的に接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の少なくとも1種の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
(e)標識アナログ含有溶液、および血液由来試料及び移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(e)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)標識アナログを含有する溶液および2)分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液(分析物と1種以上の移動度変化CFSとの複合体B'を含む溶液)とを導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(e)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a')当該標識アナログと複合体B'とを電気泳動的に接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の少なくとも1種の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
(f)血液由来試料含有溶液、標識アナログ含有溶液及び移動度変化CFS含有溶液を用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(f)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、2)標識アナログを含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(f)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させるとともに、(a)当該分析物と当該複合体A'とを電気泳動的に接触させてこれら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の少なくとも1種の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
(g)標識アナログ含有溶液、血液由来試料含有溶液及び移動度変化CFS含有溶液とを用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(g)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液とを導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(g)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させると共に、(a')標識アナログと当該複合体B'とを電気泳動的に接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを電気泳動的に接触させてこれら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、当該複合体A'をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A'と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の少なくとも1種の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A'中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
(h)血液由来試料含有溶液及び移動度変化アナログ及び標識CFS含有溶液を用いる場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(h)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液(移動度変化アナログと標識CFSとの複合体A''を含む溶液)を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(h)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a)当該分析物と当該複合体A''とを電気泳動的に接触させてこれら(a)及び(c)を含む複合体B''を形成させ、当該複合体A''をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A''と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A''中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の少なくとも1種の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A''中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
(i)血液由来試料及び標識CFS含有溶液と移動度変化アナログ含有溶液とを用いる場合
る場合
この場合、例えば下記の〔方法A〕又は〔方法B〕のように実施することができる。
〔方法A〕:
(1)「2−6.(2)分離方法2」の(i)における工程(1)のように、ITP用細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液(分析物と1種以上の標識CFSとの複合体B''を含む溶液)と2)移動度変化アナログを含有する溶液を導入・配置させる。
(2)次いで、「2−6.(2)分離方法2」の(i)における工程(2)のように、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、(a'')移動度変化アナログと、当該複合体B''とを電気泳動的に接触させ、又は/及び(a'')当該移動度変化アナログと複合体B''の形成に関与しなかった(c)1種以上の標識CFSとを電気泳動的に接触させて、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''を形成させ、当該複合体A''をTBゾーンの下流側で濃縮すると共に、(i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)血液由来試料中の共存物質とを分離する。
(3)TBゾーンの下流側に位置する、当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及び血液由来試料中の共存物質を含むゾーンを、CZE/CGE用細管内の2つのLBゾーンの間に導入する。
(4)当該CZE/CGE用細管に電圧を印加して、CZE又はCGEによって、当該複合体A''と血液由来試料中の共存物質とを更に電気的に移動させて分離する。
(5)分離された複合体A''中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)を、分析物濃度既知の試料を用いて同様の方法により測定を行って得られた分析物の量と標識物質の量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中の分析物の量を算出する。
〔方法B〕:
上記〔方法A〕の(1)の少なくとも1種の溶液に濃度既知の検出可能な物質を内部標準として添加し、内部標準を含む溶液を用いて(1)〜(4)の工程を行う。分離された、複合体A''中に含まれる標識物質の量を、標識物質の性質(種類)に応じた方法により測定し、測定結果(測定値)と、内部標準として添加した当該物質の量とを比較することによって、試料中の分析物の量を算出する。
本発明の測定方法は、本発明の分離方法を利用する以外は、上記した如き自体公知の方法に準じて実施すればよく、使用される試薬類もこれら自体公知の方法に準じて適宜選択すればよい。
5.本発明の特徴
本発明は、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下でITPを行うことにより、本発明に係る複合体(分析物、1種以上の移動度変化CFS及び1種以上の標識CFSを含む複合体A、標識アナログ及び1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'、及び移動度変化アナログ及び1種以上の標識CFSを含む複合体A'')と血液由来試料中の共存物質との分離をより効率的に行うことができると言う特徴を有している。
しかしながら、血液由来試料を試料として用い、ITPにより、当該血液由来試料中の分析物又はそのアナログ、CFS、移動度変化物質及び標識物質を含む複合体を濃縮すると共に、当該複合体と血液由来試料中の共存物質とを分離する場合には、当該複合体と血液由来試料中の蛍光性を示す共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)が、目的とする本発明に係る複合体の電気泳動移動度と同程度の電気泳動移動度を有し(言い換えれば、ITPによる当該複合体の移動時間付近に移動し、ITPの電気泳動クロマトグラフにおいて当該複合体のピークと同付近に共存物質のピークが出現し)、分離精度を悪化させてしまうと言う問題点自体、これまで全く知られていない。
そして、MESイオン及びグルタミン酸イオンのみが、当該複合体と血液由来試料中の共存物質との分離を可能とする(言い換えれば、このような場合においては、MESイオン及びグルタミン酸イオンのみが、当該複合体と血液由来試料中の共存物質との間のスペーサー分子となり得る)こともこれまで全く知られていない。
特に、共存物質としてビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等が上記した如き分析に悪影響を与えることは初めて認識されたことであり、本発明の分離方法が共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)と本発明に係る複合体との分離に特に有効であること、即ち、本発明の分離方法により血液由来試料中の共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)と本発明に係る複合体を分離できることは初めて見出されたことである。
また、移動度変化CFS(移動度変化物質)を用いて複合体の電気泳動移動度をコントロールし、その結果、本発明に係る複合体の電気泳動移動度が血液由来試料中の共存物質(特に、ビリルビン)の電気泳動移動度と同程度となる〔ITPによる共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)の移動時間付近に本発明に係る複合体の電気泳動移動度が移動する、ITPの電気泳動クロマトグラフにおいて共存物質(特に、ビリルビン)のピークと同付近に本発明に係る複合体の分離ピークが出現する、両者のピークがかぶる〕場合があり、このような場合には分離精度を悪化させてしまうと言う問題点自体も、これまで全く知られていない。
そして、本発明の分離方法が、このような場合に有用であること、言い換えれば、移動度変化CFS(移動度変化物質)として本発明に係る複合体の電気泳動移動度を血液由来試料中の共存物質(特にビリルビン、その代謝物、又はビリルビンとタンパク質との複合体等)の電気泳動移動度付近に変化させるものを使用する場合に特に有用であることも全く知られていない。
特に、移動度変化物質が核酸鎖である場合には、通常50bp〜2000bp、好ましくは100bp〜1000bp、より好ましくは120bp〜700bp、特に好ましくは150bp〜500bpの長さの核酸鎖を用いる場合に、本発明の分離方法が特に有効であることは初めて見出されたことである。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
実施例.1(ITPにおける血清共存物質とAFPの分離)
〔分析物(抗原)〕
α−フェトプロテイン(AFP)(和光純薬工業(株)製)
〔移動度変化結合物質(DNA標識抗体)〕
図1に示した手順に従って、DNAが結合した抗AFP抗体Fab'フラグメントを調製した。
即ち、先ず、常法により5'末端にNH2基が導入された250bpのDNA断片を精製し、次いで、このDNA断片に導入されたNH2基とスルホサクシニミジル 4-(p-マレイミドフェニル)ブチレイト(Sulfo-SMPB)リンカー(スクシンイミド基とマレイミド基を有するリンカー、ピアス社製)のスクシンイミド基とを常法により反応させた後、ゲル濾過処理を行い、未反応リンカーを除去して、リンカーが結合した250bpDNA断片を得た。得られたリンカー結合250bpDNA断片と、予め抗AFP抗体WA1(和光純薬工業(株)製)を用いて常法に従い調製した抗AFP抗体WA1Fab'フラグメントとを反応させた。得られた反応物を、夫々DEAEカラムを用いて精製し、250bpDNA断片が結合した抗AFP抗体WA1Fab'フラグメント(250bpDNA標識抗体)を調製した。
〔標識結合物質(蛍光標識抗体)〕
WA1抗体とは異なるAFPのエピトープを認識する抗AFP抗体WA2(和光純薬工業(株)製)を常法により処理して抗AFP抗体WA2Fab'フラグメントとし、当該フラグメントのアミノ基に、常法により蛍光物質HiLyte647(AnaSpec社製)を導入して、HiLyte647標識抗AFP抗体WA2Fab'フラグメント(蛍光標識抗体)を調製した。
〔キャピラリーチップ〕
図2に示すレイアウトを有するキャピラリーチップを、マイクロ科学チップの技術と応用 北森武彦ほか 2004年出版(丸善株式会社)に記載の方法に従い、以下のように作成した。
即ち、石英基板上に成膜したSi上にフォトレジスト膜を成膜した。このフォトレジストに図2に示すキャピラリデザイン(レイアウト)を有するマスクを用いて露光し、現像を行った。現像によりフォトレジストが除かれた部分のSiをスパッタによって除去した後、フッ化水素溶液を用いてウエットエッチングを行って石英基板にキャピラリチャンネル溝(細管)を作製した。石英基板上に残るフォトレジスト及びSi膜を除去した後、当該石英基板と液だめのための穴(ウェル)を有するカバープレートとをHF接合法によって張り合わせてキャピラリーチップを作製した。
尚、図2中、TBはトレーリングバッファー導入用ウェル、LB1及びLB2はリーディングバッファー導入用ウェルを、Sは泳動用試料導入用ウェルを、R1は試液(250bpDNA標識抗体含有溶液)導入用ウェルを、W1、W2及びW3は、ドレイン用ウェルをそれぞれ示す。
〔電気泳動〕
(1)泳動用試料
[泳動用試料A]
検体としてPBS〔0.1% 仔牛血清アルブミン(BSA)および150mM NaClを含む50mM リン酸緩衝液(pH6)〕 1μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6% (w/v) ポリジメチルアクリルアミド(pDMA)、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% (BSA)含有75mM Tris-HCl(pH 7.5);MESイオン不含〕 8μLを0.5mLチューブで混合し、10μLの混合液を調製した。混合液は氷上に約30分間静置させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、混合液を泳動用試料Aとした。
[泳動用試料B]
検体として約2nMのAFPを含むPBS(PBSにAFPを添加したもの) 1μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6%(w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5):MESイオン不含〕 8μLを0.5mLチューブで混合し、10μLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−AFP免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Bとした。
[泳動用試料C]
検体として約30pMのAFPを含む血清(AFPを内在する血清) 1μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6%(w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5):MESイオン不含〕 8μLを0.5mLチューブで混合し、10μLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−AFP免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Cとした。
[泳動用試料D]
検体として100pMのAFPを含む血清(血清にAFPを添加したもの) 1μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6%(w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5):MESイオン不含〕 8μLを0.5mLチューブで混合し、10μLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−AFP免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Dとした。
[泳動用試料E]
検体として100pMのAFPおよび20mg/dLのビリルビンを含む血清(血清にAFPとビリルビンを添加したもの) 1μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6%(w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5):MESイオン不含〕 8μLを0.5mLチューブで混合し、10μLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−AFP免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Eとした。
[泳動用試料F]
検体として約30pMのAFPを含む血清(AFPを内在する血清) 1μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及び3.6mM MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸一水和物:(株)同仁化学研究所製)含有サンプルバッファー〔0.6%(w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕 8μLを0.5mLチューブで混合し、10μLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−AFP免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Fとした。
[泳動用試料G]
検体として100pMのAFPおよび20mg/dLのビリルビンを含む血清(血清にAFPとビリルビンを添加したもの) 1μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及び3.6mM MES含有サンプルバッファー〔0.6%(w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕 8μLを0.5mLチューブで混合し、10μLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−AFP免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Gとした。
(2)試液(250bpDNA標識抗体含有溶液)
100nM 250bpDNA標識抗体を含有するリーディングバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01 % BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕を試液とした。
(3)電気泳動手順
a)泳動用試料及び試液の導入
図2のSウェル(泳動用試料導入用ウェル)に泳動用試料 10μL、R1ウェル(試液導入用ウェル)に試液 10μL、LB1ウェル及びLB2ウェルにリーディングバッファー 10μL、TBウェルにトレーリングバッファー〔0.6%(w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、0.01% BSA、125mM (2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)含有75mM Tris〕 10μLをそれぞれを滴下し、W1(ドレイン用ウェル)−W2(ドレイン用ウェル)−W3(ドレイン用ウェル)間に 30秒間、-5psiの圧力を印加して、泳動用試料、試液及びリーディングバッファー、トレーリングバッファーをチャネルに導入した。キャピラリー内の泳動用試料と試液の配置関係を、図3に模式的に示す。尚、図3中、斜線部分は泳動用試料の配置部分を、また、点部分は試液の配置部分をそれぞれ示す。
b)ITP(反応、濃縮、分離)・検出
図3のTBウェル−LB1ウェル間に、3000Vの電圧を印加して、30℃で、試液中の250bpDNA標識抗体を泳動用試料中の蛍光標識抗体−AFP免疫複合体と接触させて、蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体を形成させ、これを濃縮した。
尚、反応時間は約100秒(250bpDNA標識抗体が電気泳動試料のゾーンを通り抜ける時間として)であった。
さらに検出部分(LB2チャネルクロス部分から2cmのキャピラリー部分)で、蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピークが検出されるまでITPを行った。
尚、検出は、635nmレーザー励起によりLB2チャネルクロス部分から2cmのキャピラリー部分の蛍光強度を蛍光顕微鏡(BX-50;KSオリンパス(株)製)により経時的に測定することによって行った。
表1に、反応させた泳動用試料と試液の組合せおよび組成等を示す。
表1
Figure 0005454326
〔結果〕
図4に、泳動用試料A(血清無添加試料)〔実験No.1-1〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)と泳動用試料B(AFP添加試料)〔実験No.1-2〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。
図5に泳動用試料C(血清添加試料)〔実験No.1-3〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。
図6に泳動用試料E(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.1-5〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)と泳動用試料D(血清含有試料:ビリルビン無添加)〔実験No.1-4〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。
図7に泳動用試料F(血清+MESイオン含有試料)〔実験No.1-6〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。
図8に泳動用試料G(血清+ビリルビン+MESイオン含有試料)〔実験No.1-7〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。
尚、図4〜図8において、縦軸はピーク強度を、横軸はリテンションタイムをそれぞれ示す。
図4の結果から、146秒付近のピークが目的とする蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピークであることが判る。即ち、泳動用試料A(血清無添加試料)〔実験No.1-1〕を用いた場合には、DNA標識抗体が存在しないので当該免疫複合体は形成されない(ピークは出現しない。)。一方、泳動用試料B(AFP添加試料)〔実験No.1-2〕を用いた場合には、当該免疫複合体が形成され、146秒付近にピークが出現している。尚、泳動用試料A(血清無添加試料)〔実験No.1-1〕を用いた場合の146秒付近のピークは、試薬ノイズのピーク(未結合標識物質のピーク)であると考えられる。
図4の泳動用試料B(血清不含試料)〔実験No.1-2〕を用いた場合の結果と図5の泳動用試料C(血清添加試料)〔実験No.1-3〕を用いた場合の結果から、目的とする蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピーク(145秒付近のピーク)の前に、血清中の共存物質に由来するピーク(144.5秒付近のピーク)が出現しているのが判る。また、図6の泳動用試料E(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.1-5〕を用いた場合の結果と泳動用試料D(血清含有試料:ビリルビン無添加)〔実験No.1-4〕を用いた場合の結果から、ビリルビンを添加した血清試料を用いた場合には、ビリルビンを添加していない血清試料を用いた場合に比べて、145秒付近のピークが増加しているのが判る。このことから、図5における血清中の共存物質に由来するピーク(144.5秒付近のピーク)には、少なくともビリルビン由来のピークが含まれていることが判る。
図5の泳動用試料C(MESイオン不含試料)〔実験No.1-3〕を用いた場合の結果と図7の泳動用試料F(MESイオン含有試料)〔実験No.1-6〕を用いた場合の結果から、MESイオンが存在しない場合には免疫複合体のピーク(145秒付近のピーク)と共存物質に由来するピーク(144.5秒付近のピーク)との分離が不十分であるのに対して、MESイオンを存在させることによって、免疫複合体のピーク(145秒付近のピーク)と、共存物質に由来するピーク(139秒付近のピーク)が充分に分離されていることが判る。
また、同様に、図6の泳動用試料E(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.1-5〕を用いた場合の結果と図8の泳動用試料G(血清+ビリルビン+MESイオン含有試料)〔実験No.1-7〕を用いた場合の結果から、MESイオンが存在しない場合には免疫複合体のピーク(146秒付近のピーク)とビリルビンに由来するピーク(145秒付近のピーク)とは殆ど分離されていないが、MESイオンを存在させることによって、免疫複合体のピーク(146秒付近のピーク)と、ビリルビンに由来するピーク(136秒付近のピーク)が充分に分離されていることが判る。
以上のことから明らかなように、MESイオンの存在下でITPを行うことにより、目的とする複合体と共存物質とを良好に分離できることが判る。
実施例.2(ITP-CZEにおける血清共存物質とAFPの分離)
〔分析物(抗原)〕
実施例.1と同じものを使用した。
〔移動度変化結合物質(DNA標識抗体)〕
実施例.1と同じものを使用した。
〔標識結合物質(蛍光標識抗体)〕
実施例.1と同じものを使用した。
〔マイクロチップ〕
実施例.1と同じものを使用した。
〔電気泳動〕
(1)泳動用試料
実施例.1の泳動用試料A〜Fと同じものを使用した。
(2)試液(250bpDNA標識抗体含有溶液)
実施例.1と同じものを使用した。
(3)電気泳動手順
a)泳動用試料及び試液の導入
実施例1と同様に行った。
b)ITP(反応、濃縮、分離)
図3のTBウェル−LB1ウェル間に、3000Vの電圧を印加して、30℃で、試液中の250bpDNA標識抗体を泳動用試料中の蛍光標識抗体−AFP免疫複合体と接触させて、蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体を形成させ、これを濃縮した。
尚、反応時間は約100秒(250bpDNA標識抗体が電気泳動試料のゾーンを通り抜ける時間として)であった。
c)CZE(分離・検出)
蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体が、LB2チャンネルとメインチャンネルとのクロス部分を通過したところで、LB2ウェルに1300V、LB1ウェルに300Vの電圧を60秒間印加して、当該免疫複合体の分離と検出を行った。
尚、検出は、635nmレーザー励起によりLB2チャネルクロス部分から2cmのキャピラリー部分の蛍光強度を蛍光顕微鏡(BX-50;KSオリンパス(株)製)により経時的に測定することによって行った。
表2に、反応させた泳動用試料と試液の組合せおよび組成等を示す。
表2
Figure 0005454326
〔結果〕
図9に、泳動用試料A(血清無添加試料)〔実験No.2-1〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)と泳動用試料B(AFP添加試料)〔実験No.2-2〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。
図10に泳動用試料C(血清添加試料)〔実験No.2-3〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
図11に泳動用試料D(血清含有試料)〔実験No.2-4〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。また、図中のピーク面積は常法により求めた。
図12に泳動用試料E(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.2-5〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。また、図中のピーク面積は常法により求めた。
図13に泳動用試料F(血清+MESイオン含有試料)〔実験No.2-6〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
図14に泳動用試料G(血清+ビリルビン+MESイオン含有試料)〔実験No.2-7〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。また、図中のピーク面積は常法により求めた。
尚、図9〜図14において、縦軸はピーク強度を、横軸はリテンションタイムをそれぞれ示す。
図9の結果から、152秒付近のピークが目的とする蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピークであることが判る。即ち、泳動用試料A(血清無添加試料)〔実験No.2-1〕を用いた場合には、DNA標識抗体が存在しないので当該免疫複合体は形成されない(ピークは出現しない。)。一方、泳動用試料B(AFP添加試料)〔実験No.2-2〕を用いた場合には、当該免疫複合体が形成され、152秒付近にピークが出現している。
図9の泳動用試料A(血清無添加試料)〔実験No.2-1〕を用いた場合の結果、泳動用試料B(血清不含試料)〔実験No.2-2〕を用いた場合の結果と図10の泳動用試料C(血清添加試料)〔実験No.2-3〕を用いた場合の結果から、目的とする蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピーク(152秒付近のピーク)を含む140秒〜155秒の間に、血清中の共存物質に由来するピークが出現しているのが判る。
図11の泳動用試料D(血清含有試料:ビリルビン不含)〔実験No.2-4〕を用いた場合の結果(特に対照の結果)と図12の泳動用試料E(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.2-5〕を用いた場合の結果(特に対照の結果)から、泳動用試料E(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.2-5〕を用いた場合には、ビリルビンを添加していない血清試料を用いた場合に比べて、150秒付近のピークが増加しているのが判る。このことから、図10における血清中の共存物質に由来するピークには、少なくともビリルビン由来のピークが含まれていることが判る。
図10の泳動用試料C(MESイオン不含試料)〔実験No.2-3〕を用いた場合の結果と図13の泳動用試料F(MESイオン含有試料)〔実験No.2-6〕を用いた場合の結果から、MESイオンの不存在下でITPを行った後に更にCZEを行ったとしても、免疫複合体のピーク(152秒付近のピーク)が共存物質に由来するピーク(140秒〜155秒の間のピーク)に埋もれてしまい、両者が分離されていないのに対して、MESイオンの存在下でITPを行った後に更にMESイオンの存在下でCZEを行った場合(即ち、泳動用試料Fを用いた場合)には、免疫複合体のピーク(152秒付近のピーク)と、共存物質に由来するピーク(142秒付近のピーク)が効率的に分離されていることが判る。
また、同様に、図12の泳動用試料E(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.2-5〕を用いた場合の結果と図14の泳動用試料G(血清+ビリルビン+MESイオン含有試料)〔実験No.2-7〕を用いた場合の結果から、MESイオンが存在しない場合には免疫複合体のピーク(152秒付近のピーク)とビリルビンに由来するピーク(150秒付近のピーク)は分離されていないが、MESイオンを存在させることによって、免疫複合体のピーク(152秒付近のピーク)と、ビリルビンに由来するピーク(142秒付近のピーク)が充分に分離されていることが判る。
以上のことから明らかなように、ITPを行った後に、更にMESイオンの存在下でCZEを行うことにより、目的とする複合体と共存物質とを良好により効率的に分離できることが判る。
図11、12および14から、各泳動用試料における免疫複合体のピーク面積と対照における当該免疫複合体のピークに相当するピーク面積をそれぞれ求めた。
また、以下に示す比較試料を用いてITP-CZEを行って得られた電気泳動像(エレクトロフェログラム)(特に図示せず)から、同様にピーク面積を求めた。
更に、得られた泳動用試料におけるピーク面積と対照におけるピーク面積との差(差引値)、および比較試料における差引値に対する各泳動用試料における差引値の割合〔面積比(%)〕をそれぞれ表3に示す。
[比較試料]
検体として100pMのAFPを含むPBS(PBSにAFPを添加したもの) 1μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6%(w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5):MESイオン不含〕 8μLを0.5mLチューブで混合し、10μLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−AFP免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
表3
Figure 0005454326
表3から明らかなように、MESイオンを含む泳動用試料G〔実験No.2-7〕(図14)における差引値は24.60であり、血清を含まない試料(比較試料)での差引値(24.24)に対する割合(面積比)は101.49%であった。つまり、MESイオンを含む泳動用試料G〔実験No.2-7〕は、共存物質(ビリルビン)の影響を殆ど受けずに精度良く目的とする複合体を測定し得ることが判る。
一方、MESイオンを含まない泳動用試料D〔実験No.2-4〕(図11)における差引値は25.40であり、血清を含まない試料(比較試料)での差引値(24.24)に対する割合(面積比)は104.79%であった。また、MESイオンを含まない泳動用試料E〔実験No.2-5〕(図12)における差引値は23.11であり、血清を含まない試料(比較試料)での差引値(24.24)に対する割合(面積比)は95.34%であった。つまり、MESイオンを含まない泳動用試料を用いた場合には、共存物質(特にビリルビン)の影響を受けてしまうことが判る。
実施例.3(イオン種の検討)
〔分析物(抗原)〕
PIVKAII(protein induced by vitamin K absence or antagonist):Poser JW, Price PA. J Biol Chem. 1979 Jan 25;254(2):431-6に記載の方法に従って作製した。
〔移動度変化結合物質(DNA標識抗体)〕
抗AFP抗体WA1(和光純薬工業(株)製)の代わりに、抗PIVKAII抗体(和光純薬工業(株)製)を用いて、実施例.1の手順に従って、250bpDNA断片が結合した抗PIVKAII抗体Fab'フラグメント(250bpDNA標識抗体)を調製した。
〔標識結合物質(蛍光標識抗体)〕
WA2抗体の代わりに、抗プロトロンビン抗体(和光純薬工業(株)製)を用いて、実施例.1の手順に従って、HiLyte647標識抗プロトロンビン抗体Fab'フラグメント(蛍光標識抗体)を調製した。
〔マイクロチップ〕
実施例.1と同じものを使用した。
〔電気泳動〕
(1)泳動用試料
[泳動用試料H]
検体としてPBS〔0.1% BSAおよび150mM NaClを含む50mM リン酸緩衝液(pH6)〕 2μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕 7μLを0.5mLチューブで混合し、10uLの混合液を調製した。混合液は氷上に約30分間静置させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、混合液を泳動用試料Hとした。
[泳動用試料I]
検体として1nMのPIVKAIIを含むPBS(PBSにPIVKAIIを添加したもの) 2μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕 7μLを0.5mLチューブで混合し、10uLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−PIVKAII免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、混合液を泳動用試料Iとした。
[泳動用試料J]
検体として100pMのPIVKAIIを含む血清(血清にPIVKAIIを添加したもの) 2μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5):イオン種不含〕 7μLを0.5mLチューブで混合し、10uLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−PIVKAII免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Jとした。
[泳動用試料K]
検体として100pMのPIVKAIIおよび20mg/dLのビリルビンを含む血清(血清にPIVKAIIとビリルビンを添加したもの) 2μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5):イオン種不含〕 7μLを0.5mLチューブで混合し、10uLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−PIVKAII免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Kとした。
[泳動用試料L]
検体として100pMのPIVKAIIおよび20mg/dLのビリルビンを含む血清(血清にPIVKAIIとビリルビンを添加したもの) 2μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及び5mM MESイオン含有サンプルバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕 7μLを0.5mLチューブで混合し、10uLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−PIVKAII免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Lとした。
[泳動用試料M]
検体として1nMのPIVKAIIを含む血清(血清にPIVKAIIを添加したもの) 2μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5):イオン種不含〕 7μLを0.5mLチューブで混合し、10uLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−PIVKAII免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Mとした。
[泳動用試料N〜U]
検体として1nMのPIVKAIIを含む血清(血清にPIVKAIIを添加したもの) 2μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及び5mM 所定のイオン種含有サンプルバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕 7μLを0.5mLチューブで混合し、10uLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−PIVKAII免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料N〜Uとした。
(2)イオン種
下記のイオン種を使用した。
・MESイオン:2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸一水和物〔(株)同仁化学研究所製〕
・MOPSイオン:3-モルホリノプロパンスルホン酸〔(株)同仁化学研究所製製〕
・MOPSOイオン:2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(株)同仁化学研究所製〕
・タウリンイオン:タウリン〔和光純薬工業(株)製〕
・グルタミン酸イオン:L(+)−グルタミン酸水素ナトリウム一水和物〔和光純薬工業(株)製〕
・リン酸イオン:リン酸水素ニナトリウム〔和光純薬工業(株)製〕
・クエン酸イオン:クエン酸三ナトリウム〔和光純薬工業(株)製〕
・スレオニンイオン:L−スレオニン〔味の素(株)製〕
(3)試液(250bpDNA標識抗体含有溶液)
100nM 250bpDNA標識抗体を含有するリーディングバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01 % BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕を試液とした。
(4)電気泳動手順
a)泳動用試料及び試液の導入
実施例2と同様に行った。
b)ITP(反応、濃縮、分離)
実施例2と同様に行った。
c)CZE(分離・検出)
実施例2と同様に行った。
表4に、反応させた泳動用試料と試液の組合せおよび組成等を示す。
表4
Figure 0005454326
〔結果〕
図15に、泳動用試料H(血清無添加試料)〔実験No.3-1〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)と泳動用試料I(PIVKAII添加試料)〔実験No.3-2〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。
図16に、泳動用試料J(血清添加試料)〔実験No.3-3〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。また、図中のピーク面積は常法により求めた。
図17に、泳動用試料K(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.3-4〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。また、図中のピーク面積は常法により求めた。
図18に、イオン種としてMESイオンを含み、血清及びビリルビンを含む泳動用試料L〔実験No.3-5〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。また、図中のピーク面積は常法により求めた。
図19に、イオン種を含まない泳動用試料M〔実験No.3-6〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
図20に、イオン種としてMESイオンを含む泳動用試料N〔実験No.3-7〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
図21に、イオン種としてMOPSを含む泳動用試料O〔実験No.3-8〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
図22に、イオン種としてMOPSOを含む泳動用試料P〔実験No.3-9〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
図23に、イオン種としてタウリンを含む泳動用試料Q〔実験No.3-10〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
図24に、イオン種としてグルタミン酸イオンを含む泳動用試料R〔実験No.3-11〕を用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
尚、図15〜図24において、縦軸はピーク強度を、横軸はリテンションタイムをそれぞれ示す。
図15の結果から、151秒付近のピークが目的とする蛍光標識抗体−PIVKAII−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピークであることが判る。即ち、泳動用試料H(血清無添加試料)〔実験No.3-1〕を用いた場合には、DNA標識抗体が存在しないので当該免疫複合体は形成されない(ピークは出現しない。)。一方、泳動用試料I(PIVKAII添加試料)〔実験No.3-2〕を用いた場合には、当該免疫複合体が形成され、151秒付近にピークが出現している。
図15の泳動用試料H(血清無添加試料)〔実験No.3-1〕を用いた場合の結果、泳動用試料I(血清不含試料)〔実験No.3-2〕を用いた場合の結果と図16の泳動用試料J(血清添加試料)〔実験No.3-3〕を用いた場合の結果から、目的とする蛍光標識抗体−PIVKAII−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピーク付近に、血清中の共存物質に由来するピーク(150〜152秒付近)が出現しているのが判る。
図16の泳動用試料J(血清含有試料:ビリルビン不含)〔実験No.3-3〕を用いた場合の結果(特に対照の結果)と図17の泳動用試料K(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.3-4〕を用いた場合の結果(特に対照の結果)から、泳動用試料K(血清+ビリルビン含有試料)〔実験No.3-4〕を用いた場合には、ビリルビンを添加していない血清試料を用いた場合に比べて、149〜152秒付近のピークが増加しているのが判る。このことから、図16における血清中の共存物質に由来するピークには、少なくともビリルビン由来のピークが含まれていることが判る。
図17の泳動用試料K(MESイオン不含試料)〔実験No.3-4〕を用いた場合の結果と図18の泳動用試料L(MESイオン含有試料)〔実験No.3-5〕を用いた場合の結果から、MESイオンの不存在下でITPを行った後に更にCZEを行ったとしても、免疫複合体のピーク(150秒付近のピーク)が共存物質に由来するピーク(149秒〜152秒の間のピーク)と重なってしまい、両者が分離されていないのに対して、MESイオンの存在下でITPを行った後に更にMESイオンの存在下でCZEを行った場合には、免疫複合体のピーク(150秒付近のピーク)と、共存物質に由来するピーク(139秒付近のピーク)が効率的に分離されていることが判る。
図16、17および18から、各泳動用試料における免疫複合体のピーク面積と対照における当該免疫複合体のピークに相当するピーク面積をそれぞれ求めた。その結果を表5に示す。
また、以下に示す比較試料を用いてITP-CZEを行って得られた電気泳動像(エレクトロフェログラム)(特に図示せず)から、同様にピーク面積を求めた。
更に、得られた泳動用試料におけるピーク面積と対照におけるピーク面積との差(差引値)、および比較試料における差引値に対する各泳動用試料における差引値の割合〔面積比(%)〕をそれぞれ表5に示す。
[比較試料]
検体として100pMのPIVKAIIを含むPBS(PBSにPIVKAIIを添加したもの) 2μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及びサンプルバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5):イオン種不含〕 7μLを0.5mLチューブで混合し、10uLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−PIVKAII免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
表5
Figure 0005454326
表5から明らかなように、MESイオンを含む泳動用試料L〔実験No.3-5〕(図18)における差引値は20.66であり、血清を含まない試料(比較試料)での差引値(20.19)に対する割合(面積比)は102.33%であった。つまり、MESイオンを含む泳動用試料L〔実験No.3-5〕は、共存物質(ビリルビン)の影響を殆ど受けずに精度良く目的とする複合体を測定し得ることが判る。
一方、MESイオンを含まない泳動用試料J〔実験No.3-3〕(図16)における差引値は21.05であり、血清を含まない試料(比較試料)での差引値(20.19)に対する割合(面積比)は104.26%であった。また、MESイオンを含まない泳動用試料K〔実験No.3-4〕(図17)における差引値は23.82であり、血清を含まない試料(比較試料)での差引値(20.19)に対する割合(面積比)は117.98%であった。つまり、MESイオンを含まない泳動用試料を用いた場合には、共存物質(特にビリルビン)の影響を受けてしまうことが判る。
図19〜図24の結果から、MESイオンを含む泳動用試料K(MESイオン含有試料)を用いた場合(図20)とグルタミン酸イオンを含む泳動用試料O(グルタミン酸イオン含有試料)を用いた場合(図24)は、目的とする蛍光標識抗体−PIVKAII−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピーク(濃縮ピーク)と、共存物質のピーク(ノイズピーク)が効率的に分離されていることが判る。
一方、MOPSイオンを含む泳動用試料Lを用いた場合(図21)、MOPSOイオンを含む泳動用試料Mを用いた場合(図22)、タウリンイオンを含む泳動用試料Nを用いた場合(図23)は何れも、目的とする蛍光標識抗体−PIVKAII−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピーク(濃縮ピーク)と、共存物質のピーク(ノイズピーク)を良好に分離できないことが判る。尚、リン酸イオンを含む泳動用試料Sを用いた場合、クエン酸イオンを含む泳動用試料Tを用いた場合およびスレオニンイオンを含む泳動用試料Uを用いた場合の電気泳動像(エレクトロフェログラム)は特に示さないが、これらも、目的とする蛍光標識抗体−PIVKAII−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピーク(濃縮ピーク)と、共存物質のピーク(ノイズピーク)を良好に分離できないことが確認された。
以上のことから明らかなように、これら種々のイオン種のうち、MESイオンおよびグルタミン酸イオンのみが、目的とする複合体と共存物質とを良好に分離できることが判る。
尚、これらのイオン種(MESイオン、MOPSイオン、MOPSOイオン、タウリンイオン、グルタミン酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオンおよびスレオニンイオンは、スペーサーイオンとして同程度の電気泳動移動度を有することが知られている。しかしながら、血液由来試料中の共存物質と目的とする複合体との分離には、これら同程度の電気泳動移動度を有するイオン種のうち、MESイオンおよびグルタミン酸イオンのみが効果を示すことは意外なことであった。
実施例.4(負荷電ポリマーの効果)
〔分析物(抗原)〕
実施例.1と同じものを使用した。
〔移動度変化結合物質(DNA標識抗体)〕
実施例.1と同じものを使用した。
〔標識結合物質(蛍光標識抗体)〕
実施例.1と同じものを使用した。
〔マイクロチップ〕
実施例.1と同じものを使用した。
〔電気泳動〕
(1)泳動用試料(MESイオン含有試料)
[泳動用試料V]
検体として100pMのAFPおよび20mg/dLのビリルビンを含む血清(血清にAFPとビリルビンを添加したもの) 1μL、1μM 蛍光標識抗体 1μL及び3.6mM MES含有サンプルバッファー〔0.6%(w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01% BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕 8μLを0.5mLチューブで混合し、10μLの反応液を調製した。反応液は氷上に静置させ、約30分抗原抗体反応させ、蛍光標識抗体−AFP免疫複合体を形成させた。尚、蛍光標識抗体の最終濃度は、100nMである。
得られた、免疫複合体含有反応液を泳動用試料Vとした。
(2)試液(250bpDNA標識抗体含有溶液)
100nM 250bpDNA標識抗体を含有するリーディングバッファー〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01 % BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕を試液とした。
(3)電気泳動手順
a)泳動用試料及び試液の導入
LB1ウェル及びLB2ウェルからチャネルに導入するリーディングバッファーとして、0%(w/v)、0.5%(w/v)又は2%(w/v) ヘパリン〔ヘパリンLi;分子量3000〜30000、平均分子量15000、(KRAEBER GMBH&CO製)〕を含有する〔0.6% (w/v) pDMA、3%(w/v) グリセロール、75mM NaCl、0.01 % BSA含有75mM Tris-HCl(pH 7.5)〕を用いた以外は、実施例2と同様に行った。
b)ITP(反応、濃縮、分離)
実施例2と同様に行った。
c)CZE(分離・検出)
実施例2と同様に行った。
表6に、反応させた泳動用試料、試液およびリーディングバッファー(LB1、LB2)の組合せおよび組成等を示す。
表6
Figure 0005454326
〔結果〕
図25に、ヘパリン0%のリーディングバッファー(LB1、LB2)(ヘパリンを含有しないリーディングバッファー)を用いた場合〔実験No.4-1〕の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す(図14と同じもの。)。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
図26に、ヘパリンを0.5%(w/v)含有するリーディングバッファー(LB1、LB2)を用いた場合〔実験No.4-2〕の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
図27に、ヘパリンを2%(w/v)含有するリーディングバッファー(LB1、LB2)を用いた場合〔実験No.4-3〕の電気泳動像(エレクトロフェログラム)を示す。尚、対照として試液(DNA標識抗体含有溶液)を用いない場合(泳動用試料のみを用いた結果)を併せて示す。
尚、図25〜27において、縦軸はピーク強度を、横軸はリテンションタイムをそれぞれ示す。
図26および27の結果から、MESイオンの存在下でITPを行った後、MESイオン及びヘパリンの存在下でCZEを行えば、目的とする蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピーク(濃縮ピーク:図26の154秒付近のピーク、図27の158秒付近のピーク)と共存物質(ビリルビン)のピーク(ノイズピーク:図26の140秒付近のピーク、図27の147秒付近のピーク)とを分離できるだけでなく、更には試薬ノイズ(未結合の標識物質)のピーク(図26の163〜175秒付近のピーク、図27の172〜183秒付近のピーク)とも良好に分離できることが判る。
一方、図25の結果から、ヘパリンの不存在下においては、目的とする蛍光標識抗体−AFP−250bpDNA標識抗体の免疫複合体のピーク(濃縮ピーク:図25の152秒付近のピーク)と共存物質(ビリルビン)のピーク(ノイズピーク:図25の142秒付近のピーク)および試薬ノイズ(未結合の標識物質)のピーク(図25の157〜162秒付近のピーク)とが分離されてはいるものの、ヘパリン存在下の場合に比べてその分離の程度が低いことが判る。
以上のことから明らかなように、ヘパリン等の負荷電ポリマーの存在下でCZEを行うことによって、目的とする複合体と共存物質及び試薬ノイズ(未結合標識物質)とをより良好に分離できることが判る。

Claims (28)

  1. (A)2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)イオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、等速電気泳動(ITP)によって、下記[A-1]〜[A-3]の何れかの分離を行うと共に、下記複合体A、下記複合体A'又は下記複合体A''を濃縮する、ことを特徴とする複合体の分離方法、
    [A-1] (i)(a)血液由来試料中の分析物、(b) 50bp〜2000bpの核酸鎖が結合した、1種以上の、当該分析物との複合体を形成し得る物質(CFS)(移動度変化CFS)及び(c)標識物質が結合した、1種以上のCFS(標識CFS)を含む複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFS及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-2] (i)(a')標識物質が結合した、分析物のアナログ(標識アナログ)及び(b)1種以上の移動度変化CFSを含む複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログ及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-3] (i)(a'') 50bp〜2000bpの核酸鎖が結合した分析物のアナログ(移動度変化アナログ)及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFS又は/及び分析物と標識CFSを含む複合体B''、及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離。
  2. 以下の工程(1)及び(2)を含む請求項1に記載の複合体の分離方法。
    (1)ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-3]の何れかの溶液を導入する工程、
    [I-1] (a)血液由来試料中の分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS及び(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液、
    [I-2] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSを接触して得られる、これら(a')及び(b)を含む複合体A'、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSを接触して得られる、これら(a)及び(b)を含む複合体B'、及び当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含有する溶液、
    [I-3] (a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a)及び(c)を含む複合体B''、及び当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液;
    および
    (2)当該複合体A、当該複合体A'又は当該複合体A''を、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、下記[A-1]〜[A-3]の何れかの分離を行う工程、
    [A-1] (i)当該複合体Aと、(ii) 当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-2] (i)当該複合体A'と、(ii) 当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-3] (i)当該複合体A''と、(ii) 当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び当該複合体B''、及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離。
  3. 以下の工程(1)及び(2)を含む請求項1に記載の複合体の分離方法。
    (1)ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-2]の何れかに記載の組合せからなる複数の溶液を、これらの溶液を予め混合することなく且つそれぞれ別々のゾーンとなるように導入する工程、
    [I-1] 1)1種以上の標識CFSを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-2] 1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液;
    および
    (2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、下記[II-1]又は[II-2]の方法により形成させた下記複合体Aを、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、[A](i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを分離する工程、
    [II-1] (a)当該分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(c)1種以上の標識CFSを接触させて、これら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させる、
    [II-2] (a)当該分析物及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体と、(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させる。
  4. 以下の工程(1)及び(2)を含む請求項1に記載の複合体の分離方法。
    (1)ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-7]の何れかに記載の組合せからなる複数の溶液を、これらの溶液を予め混合することなく且つそれぞれ別々のゾーンとなるように導入する工程、
    [I-1] 1)分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-2] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-3] 1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-4] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、2)標識アナログを含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-5] 1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-6] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液、
    [I-7] 1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)移動度変化アナログを含有する溶液;
    および
    (2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、下記[II-1]〜[II-7]の何れかの方法により形成させた下記複合体A'または下記複合体A''を、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、下記[A-1]又は[A-2]の何れかの分離を行う工程、
    [II-1] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、また、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
    [II-2] (a)当該分析物と、前記[I-2] 2)の溶液中に存在する、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体A'とを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
    [II-3] (a')標識アナログと、前記[I-3] 2)の溶液中に存在する、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体B'とを接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させる、
    [II-4] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)との複合体A'を形成させ、次いで、(a)当該分析物と当該複合体A'とを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
    [II-5] (a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)及び(b)との複合体B'を形成させ、次いで、(a')標識アナログと当該複合体B'とを接触させ、又は/及び(a')標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させる、
    [II-6] (a)当該分析物と、前記[I-6] 2)の溶液中に存在する、(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの複合体A''とを接触させて、これら(a)及び(c)を含む複合体B''を形成させる、
    [II-7] (a'')移動度変化アナログと、前記[I-7] 1)の溶液中に存在する、(a)当該分析物と(c)1種以上の標識CFSとの複合体B''とを接触させ、又は/及び(a'')移動度変化アナログと複合体B''の形成に関与しなかった(c)1種以上の標識CFSとを接触させて、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''を形成させる、
    [A-1] (i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-2] (i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを分離。
  5. MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを、少なくとも、ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に導入する溶液中に存在させる請求項2〜4の何れかに記載の分離方法。
  6. MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンが、少なくとも、分析物を含む血液由来試料を少なくとも含有する溶液中に含まれる、請求項2〜4の何れかに記載の分離方法。
  7. MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンが、少なくとも、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液中、または分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液中に含まれる、請求項3に記載の複合体の分離方法。
  8. MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンが、少なくとも、分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液中、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液中、または分析物を含む血液由来試料と移動度変化アナログを含有する溶液中に含まれる、請求項4に記載の複合体の分離方法。
  9. 前記核酸鎖が、DNAである、請求項に記載の方法。
  10. 前記核酸鎖が、二本鎖DNAである、請求項に記載の方法。
  11. 更に、(B)前記工程(A)の結果分離された、下記[B-1]〜[B-3]の何れかを、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)又はキャピラリーゲル電気泳動(CGE)によって、これらを更に分離することを特徴とする請求項1に記載の複合体の分離方法、
    [B-1] (i)当該複合体Aと(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質、
    [B-2] (i)当該複合体A'と(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質、
    [B-3] (i)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる当該複合体A''と(iii)血液由来試料中の共存物質。
  12. 以下の工程(1)〜(4)を含む請求項11に記載の複合体の分離方法。
    (1)ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-3]の何れかの溶液を導入する工程、
    [I-1] (a)血液由来試料中の分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS及び(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液、
    [I-2] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSを接触して得られる、これら(a')及び(b)を含む複合体A'、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSを接触して得られる、これら(a)及び(b)を含む複合体B'、及び当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含有する溶液、
    [I-3] (a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a)及び(c)を含む複合体B''、及び当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液;
    (2)当該複合体A、当該複合体A'又は当該複合体A''を、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、下記[A-1]〜[A-3]の何れかの分離を行う工程、
    [A-1] (i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-2] (i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-3] (i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び当該複合体B''、及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離;
    (3)TBゾーンの下流側に位置する、前記工程(2)によって形成された下記[B-1]〜[B-3]の何れかに記載の組合せからなるゾーンを、CZE又はCGEを行わせる細管内の2つのLBゾーンの間に導入する工程、
    [B-1] 当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン、
    [B-2] 当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン、
    [B-3] 当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン;
    および
    (4)CZE又はCGEによって、当該複合体A、当該複合体A'又は当該複合体A''とビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを更に分離する工程。
  13. 以下の工程(1)〜(4)を含む請求項11に記載の複合体の分離方法。
    (1)ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-2]の何れかに記載の組合せからなる複数の溶液を、これらの溶液を予め混合することなく且つそれぞれ別々のゾーンとなるように導入する工程、
    [I-1] 1)1種以上の標識CFSを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-2] 1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液;
    (2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、下記[II-1]又は[II-2]の方法により形成させた下記複合体Aを、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、[A](i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを分離する工程、
    [II-1] (a)当該分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(c)1種以上の標識CFSを接触させて、これら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させる、
    [II-2] (a)当該分析物及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体と、(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させる;
    (3)TBゾーンの下流側に位置する、前記工程(2)によって形成された下記[B]に記載の組合せからなるゾーンを、CZE又はCGEを行わせる細管内の2つのLBゾーンの間に導入する工程、
    [B] 当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン;
    および
    (4)CZE又はCGEによって、当該複合体Aとビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを更に分離する工程。
  14. 以下の工程(1)〜(4)を含む請求項11に記載の複合体の分離方法。
    (1)ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-7]の何れかに記載の組合せからなる複数の溶液を、これらの溶液を予め混合することなく且つそれぞれ別々のゾーンとなるように導入する工程、
    [I-1] 1)分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-2] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-3] 1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-4] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、2)標識アナログを含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-5] 1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-6] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液、
    [I-7] 1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)移動度変化アナログを含有する溶液;
    (2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、下記[II-1]〜[II-7]の何れかの方法により形成させた下記複合体A'または下記複合体A''を、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、下記[A-1]又は[A-2]の何れかの分離を行う工程、
    [II-1] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、また、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
    [II-2] (a)当該分析物と、前記[I-2] 2)の溶液中に存在する、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体A'とを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
    [II-3] (a')標識アナログと、前記[I-3] 2)の溶液中に存在する、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体B'とを接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させる、
    [II-4] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)との複合体A'を形成させ、次いで、(a)当該分析物と当該複合体A'とを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
    [II-5] (a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)及び(b)との複合体B'を形成させ、次いで、(a')標識アナログと当該複合体B'とを接触させ、又は/及び(a')標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させる、
    [II-6] (a)当該分析物と、前記[I-6] 2)の溶液中に存在する、(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの複合体A''とを接触させて、これら(a)及び(c)を含む複合体B''を形成させる、
    [II-7] (a'')移動度変化アナログと、前記[I-7] 1)の溶液中に存在する、(a)当該分析物と(c)1種以上の標識CFSとの複合体B''とを接触させ、又は/及び(a'')移動度変化アナログと複合体B''の形成に関与しなかった(c)1種以上の標識CFSとを接触させて、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''を形成させる、
    [A-1] (i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-2] (i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを分離;
    (3)TBゾーンの下流側に位置する、前記工程(2)によって形成された下記[B-1]又は[B-2]の何れかに記載の組合せからなるゾーンを、CZE又はCGEを行わせる細管内の2つのLBゾーンの間に導入する工程、
    [B-1] 当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン、
    [B-2] 当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン;
    および
    (4)CZE又はCGEによって、当該複合体A'又は当該複合体A''とビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを更に分離する工程。
  15. 分離を、負荷電ポリマーの存在下で行う、請求項11に記載の方法。
  16. 前記負荷電ポリマーが、ポリアニオン性ポリサッカライド又はポリアニオン性合成高分子化合物である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記負荷電ポリマーが、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ポリタングステン酸、ホスホタングステン酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ポリアネトールスルホン酸、またはこれらの塩である、請求項15に記載の方法。
  18. 前記負荷電ポリマーが、ヘパリンまたはその塩である、請求項15に記載の方法。
  19. 前記工程(4)を、負荷電ポリマーの存在下で行い、当該負荷電ポリマーが、分析物を含む血液由来試料を含有しない溶液中に含まれる、請求項1214の何れかに記載の方法。
  20. 負荷電ポリマーが、LB、TB、1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液および1種以上の標識CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中または、LB、TB及び1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中に含まれる請求項13に記載の方法。
  21. 負荷電ポリマーが、LB、TBおよび1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TBおよび標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TBおよび標識アナログを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TB、標識アナログを含有する溶液および1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TB、標識アナログを含有する溶液および1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TBおよび移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、またはLB、TBおよび移動度変化アナログを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中に含まれる、請求項14に記載の方法。
  22. MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンが、少なくとも、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液中、または分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液中に含まれ、負荷電ポリマーが、LB、TB、1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液および1種以上の標識CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、または、LB、TB及び1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中に含まれる請求項13に記載の方法。
  23. MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンが、少なくとも、分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液中、分析物を含む血液由来試料を含有する溶液中、または分析物を含む血液由来試料と移動度変化アナログを含有する溶液中に含まれ、負荷電ポリマーが、LB、TBおよび1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TBおよび標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TBおよび標識アナログを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TB、標識アナログを含有する溶液および1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TB、標識アナログを含有する溶液および1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、LB、TBおよび移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中、またはLB、TBおよび移動度変化アナログを含有する溶液から選ばれる1種以上の溶液中に含まれる、請求項14に記載の方法。
  24. 前記CFSの少なくとも1種が、分析物又は分析物のアナログに対する抗体、或いは分析物又は分析物のアナログに結合するタンパク質である、請求項1に記載の方法。
  25. 請求項1の方法によって分離された、[C-1]当該複合体Aの量又は当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の標識CFSの量、[C-2]当該複合体A'の量又は当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の標識アナログの量、或いは[C-3]当該複合体A''の量、又は当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の標識CFSの量又は/及び分析物と標識CFSを含む複合体B''の量、を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求めるか、または、請求項11の方法により分離された、当該複合体Aの量、当該複合体A'の量、または当該複合体A''の量を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求めること、を特徴とする分析物の測定方法。
  26. 以下の工程(1)〜(5)を含む請求項25に記載の分析物の測定方法。
    (1)ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-3]の何れかの溶液を導入する工程、
    [I-1] (a)血液由来試料中の分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS及び(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a)〜(c)を含む複合体A及び当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液、
    [I-2] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSを接触して得られる、これら(a')及び(b)を含む複合体A'、及び(a)血液由来試料中の分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSを接触して得られる、これら(a)及び(b)を含む複合体B'、及び当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログを含有する溶液、
    [I-3] (a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''、(a)血液由来試料中の分析物と(c)1種以上の標識CFSを接触して得られる、これら(a)及び(c)を含む複合体B''、及び当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFSを含有する溶液;
    (2)当該複合体A、当該複合体A'又は当該複合体A''を、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、下記[A-1]〜[A-3]の何れかの分離を行う工程、
    [A-1] (i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-2] (i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-3] (i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び当該複合体B''、及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離;
    (3)TBゾーンの下流側に位置する、前記工程(2)によって形成された下記[B-1]〜[B-3]の何れかに記載の組合せからなるゾーンを、CZE又はCGEを行わせる細管内の2つのLBゾーンの間に導入する工程、
    [B-1] 当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン、
    [B-2] 当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン、
    [B-3] 当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン;
    (4)CZE又はCGEによって、当該細管に電圧を印加することによって、当該複合体A、当該複合体A'又は当該複合体A''とビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを更に分離する工程;
    および
    (5)分離された複合体Aの量、当該複合体A'の量又は当該複合体A''の量を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求める工程。
  27. 以下の工程(1)〜(5)を含む請求項25に記載の分析物の測定方法。
    (1)ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-2]の何れかに記載の組合せからなる複数の溶液を、これらの溶液を予め混合することなく且つそれぞれ別々のゾーンとなるように導入する工程、
    [I-1] 1)1種以上の標識CFSを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-2] 1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液;
    (2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、下記[II-1]又は[II-2]の方法により形成させた下記複合体Aを、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、[A](i)当該複合体Aと、(ii)当該複合体Aの形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを分離する工程、
    [II-1] (a)当該分析物、(b)1種以上の移動度変化CFS、及び(c)1種以上の標識CFSを接触させて、これら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させる、
    [II-2] (a)当該分析物及び(c)1種以上の標識CFSを含む複合体と、(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)〜(c)を含む複合体Aを形成させる;
    (3)TBゾーンの下流側に位置する、前記工程(2)によって形成された下記[B]に記載の組合せからなるゾーンを、CZE又はCGEを行わせる細管内の2つのLBゾーンの間に導入する工程、
    [B] 当該複合体Aを含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン;
    (4)CZE又はCGEによって、当該細管に電圧を印加することによって、当該複合体Aとビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを更に分離する工程;
    および
    (5)分離された複合体Aの量を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求める工程。
  28. 以下の工程(1)〜(5)を含む請求項25に記載の分析物の測定方法。
    (1)ITPを行わせる細管内のLBゾーンとTBゾーンの間に、下記の[I-1]〜[I-7]の何れかに記載の組合せからなる複数の溶液を、これらの溶液を予め混合することなく且つそれぞれ別々のゾーンとなるように導入する工程、
    [I-1] 1)分析物を含む血液由来試料と標識アナログを含有する溶液および2)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-2] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)標識アナログと1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-3] 1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料と1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-4] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液、2)標識アナログを含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-5] 1)標識アナログを含有する溶液、2)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および3)1種以上の移動度変化CFSを含有する溶液、
    [I-6] 1)分析物を含む血液由来試料を含有する溶液および2)移動度変化アナログと1種以上の標識CFSを含有する溶液、
    [I-7] 1)分析物を含む血液由来試料と1種以上の標識CFSを含有する溶液および2)移動度変化アナログを含有する溶液;
    (2)MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンの存在下、ITPによって、下記[II-1]〜[II-7]の何れかの方法により形成させた下記複合体A'または下記複合体A''を、TBゾーンの下流側で濃縮すると共に、下記[A-1]又は[A-2]の何れかの分離を行う工程、
    [II-1] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させ、また、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
    [II-2] (a)当該分析物と、前記[I-2] 2)の溶液中に存在する、(a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体A'とを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
    [II-3] (a')標識アナログと、前記[I-3] 2)の溶液中に存在する、(a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとの複合体B'とを接触させ、又は/及び(a')当該標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させる、
    [II-4] (a')標識アナログと(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)との複合体A'を形成させ、次いで、(a)当該分析物と当該複合体A'とを接触させて、これら(a)及び(b)を含む複合体B'を形成させる、
    [II-5] (a)当該分析物と(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a)及び(b)との複合体B'を形成させ、次いで、(a')標識アナログと当該複合体B'とを接触させ、又は/及び(a')標識アナログと複合体B'の形成に関与しなかった(b)1種以上の移動度変化CFSとを接触させて、これら(a')及び(b)を含む複合体A'を形成させる、
    [II-6] (a)当該分析物と、前記[I-6] 2)の溶液中に存在する、(a'')移動度変化アナログと(c)1種以上の標識CFSとの複合体A''とを接触させて、これら(a)及び(c)を含む複合体B''を形成させる、
    [II-7] (a'')移動度変化アナログと、前記[I-7] 1)の溶液中に存在する、(a)当該分析物と(c)1種以上の標識CFSとの複合体B''とを接触させ、又は/及び(a'')移動度変化アナログと複合体B''の形成に関与しなかった(c)1種以上の標識CFSとを接触させて、これら(a'')及び(c)を含む複合体A''を形成させる、
    [A-1] (i)当該複合体A'と、(ii)当該複合体A'の形成に関与しなかった遊離の(a')標識アナログ及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質との分離、
    [A-2] (i)当該複合体A''と、(ii)当該複合体A''の形成に関与しなかった遊離の(c)標識CFS又は/及び複合体B''、及び(iii)ビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを分離;
    (3)TBゾーンの下流側に位置する、前記工程(2)によって形成された下記[B-1]又は[B-2]の何れかに記載の組合せからなるゾーンを、CZE又はCGEを行わせる細管内の2つのLBゾーンの間に導入する工程、
    [B-1] 当該複合体A'を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン、
    [B-2] 当該複合体A''を含むゾーン、MESイオン又は/及びグルタミン酸イオンを含むゾーン及びビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質を含むゾーン;
    (4)CZE又はCGEによって、当該細管に電圧を印加することによって、当該複合体A'又は当該複合体A''とビリルビン、ビリルビンの代謝物及びビリルビンとタンパク質との複合体から選ばれる血液由来試料中の共存物質とを更に分離する工程;
    および
    (5)分離された当該複合体A'の量又は当該複合体A''の量を測定し、その結果に基づいて分析物の量を求める工程。
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