JP5451796B2 - 窒化物半導体構造 - Google Patents

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Description

本発明は、窒化物半導体構造に関し、より詳細には、原子レベルで平坦な表面または界面を有する窒化物半導体薄膜構造に関する。
窒化物半導体は、B、Al、Ga、In等のIII族元素のうち少なくとも1つ以上の元素と、V族元素である窒素との化合物であり、一般式Al1−a−b−cBaGabIncN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1)で表される。窒化物半導体薄膜の表面や、2層以上の窒化物半導体薄膜を積層したヘテロ構造の界面の平坦性は、物性解明や素子応用の観点から、原子レベルで平滑であることが望ましい。特に、障壁層と量子井戸層との間の界面が原子レベルで平坦であれば、量子井戸内に形成される量子準位(サブバンド)のエネルギー的な広がり(揺らぎ)が小さくなる。その結果、量子井戸の発光スペクトルが峡鋭化したり、サブバンドを利用する素子(共鳴トンネルダイオード、光スイッチ素子、カスケードレーザ等)の特性を向上したりすることができる。
ここで、砒化物半導体であるGaAsのエピタキシャル成長において、成長領域をメサやマスク材によって制限する選択成長法によって、原子レベルで平坦な表面やヘテロ界面が得られることが報告されている(特許文献1及び2参照)。これらの発明において、半導体基板上に成長する薄膜材料のマイグレーション長、もしくは気相での横方向での拡散長のうち、短い方の長さを直径とする領域に選択成長することによって目的を達している。
ところが、窒化物半導体のエピタキシャル成長においては、半導体基板や、半導体基板とエピタキシャル成長した窒化物半導体薄膜の界面から伸びる、らせん成分を有する貫通転位が高密度に存在するため、窒化物半導体薄膜の表面やヘテロ界面の平坦性は損なわれていた。非特許文献1では、らせん成分を含む転位を起源とするスパイラル成長のため、選択成長したGaNの表面が高密度の原子ステップとテラスから構成されていて、GaAsの場合よりも平坦性が悪いことが報告されている。最も広い原子テラスが成長領域に占める割合はせいぜい1〜2%である。
また、特許文献1及び2では、半導体基板の転位が半導体薄膜成長に与える影響に関しては言及されていない。
特願平8−54422号公報 特願平8−153618号公報
T. Akasaka, T. Nishida, S. Ando, and N. Kobayashi, Japanese Journal of Applied Physics vol. 37 (1998) pp. L842-844.
このように、窒化物半導体薄膜では、例え選択成長法を用いたとしても、らせん成分を有する貫通転位の影響により原子レベルで平坦な表面やヘテロ界面を作製することは不可能であった。さらに、らせん成分を有する貫通転位の密度やマスク材の開口部の大きさが、窒化物半導体薄膜の表面やヘテロ界面の平坦性に与える影響も検討されていなかった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、原子レベルで平坦な表面またはヘテロ界面を有する窒化物半導体構造を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、窒化物半導体基板と、前記窒化物半導体基板上に形成された、複数の開口部を有するマスク層と、前記複数の開口部のそれぞれに形成された複数の窒化物半導体多層薄膜とを備える窒化物半導体構造であって、各開口部の面積は、前記窒化物半導体基板のらせん成分を含む貫通転位密度の逆数より狭く、前記貫通転位密度は、10cm−2以上10cm−2以下であり、前記窒化物半導体多層薄膜は、前記開口部に島状に独立して形成され、前記島状に形成された窒化物半導体多層薄膜のうち少なくとも一つの窒化物半導体多層薄膜の少なくとも一つの界面について、前記界面を構成する原子テラスのうち最も広い原子テラスが、前記界面の面積の80%以上の面積を持つことを特徴とする。
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記窒化物半導体基板は、サファイアと、前記サファイアの主方位面上に形成された第2のマスク材と、前記第2のマスク材上に横方向成長した窒化物半導体薄膜とを備えることを特徴とする。
また、本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記窒化物半導体基板は、シリコンと、前記シリコンの主方位面上に形成された第2のマスク材と、前記第2のマスク材上に横方向成長した窒化物半導体薄膜とを備えることを特徴とする。
また、本発明の第4の態様は、第1の態様において、前記窒化物半導体基板は、炭化珪素と、前記炭化珪素の主方位面上に形成された第2のマスク材と、前記第2のマスク材上に横方向成長した窒化物半導体薄膜とを備えることを特徴とする。
また、本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記開口部は、多角形または円形であることを特徴とする。
また、本発明の第6の態様は、窒化物半導体基板上にマスク材を形成するステップと、前記マスク材に複数の開口部を形成するステップと、前記複数の開口部のそれぞれに、窒化物半導体多層薄膜を形成するステップとを備える窒化物半導体構造の製造方法であって、各開口部の面積は、前記窒化物半導体基板のらせん成分を含む貫通転位密度の逆数より狭く、前記貫通転位密度は、10cm−2以上10cm−2以下であり、前記窒化物半導体多層薄膜は、前記開口部に島状に独立して形成され、前記島状に形成された窒化物半導体多層薄膜のうち少なくとも一つの窒化物半導体多層薄膜の少なくとも一つの界面について、前記界面を構成する原子テラスのうち最も広い原子テラスが、前記界面の面積の80%以上の面積を持つことを特徴とする。
本発明によれば、基板に存在するらせん成分を含む貫通転位密度がN cm−2である場合に、マスク材の各開口部の面積を1/N cm以下にすることにより、各開口部内に形成した窒化物半導体薄膜の表面または窒化物半導体多層薄膜の界面を平坦にすることをできる。
参考例の窒化物半導体構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図を示す図である。 GaN薄膜105のうちの1つの表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を示す図である。 実施形態1の窒化物半導体構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図を示す図である。 実施形態2の窒化物半導体構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。密度や厚さ等の具体的数値を特定した例を用いて説明するが、これらの例に限定する意図はない。
(参考例)
図1(a)及び(b)に、参考例の窒化物半導体構造を示す。図1(a)は平面図を表し、図1(b)は図1(a)のA−A’線に沿った断面を表す。窒化物半導体基板101は、(0001)面を主方位面とするGaNであり、らせん成分を含む貫通転位104の密度は1×10cm−2であった。窒化物半導体基板101の主方位面上にマスク材102(酸化シリコン薄膜、厚さ100nm)が形成されている。また、マスク材102には複数の開口部103が開けられている。開口部103のそれぞれは、1辺が8ミクロンの正六角形であり、各辺はGaNの[11−20]方向に平行である。さらに、開口部103のそれぞれには、厚さが500nmのGaN薄膜105が形成されている。
図2に、GaN薄膜105のうちの1つの表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を示した。周辺部に数層の原子ステップが見られるが、GaN薄膜105の表面は単一の原子テラスで80%以上が覆われていることが分かった。すなわち、各開口部内に形成した窒化物半導体薄膜の表面を構成する原子テラスのうち、最も広い原子テラスの面積が窒化物半導体薄膜の表面積の80%以上であった。
ここで、窒化物半導体基板101であるGaN基板のらせん成分を含む貫通転位104の密度は1×10cm−2であることから、貫通転位104の面内間隔は約30ミクロン程度となる。そのため、1辺が8ミクロンの正六角形である、複数形成された開口部103のうち、大多数の開口部の内部には貫通転位104が全くない状況が実現されている。そのため、従来のGaNの選択成長において表面平坦性を損ねていたスパイラル成長が起こらず、単一の原子テラスでほぼ覆われた原子レベルで平坦なGaN表面が形成できた。
様々な条件下で貫通転位104の密度と開口部103の面積との関係を検討すると、らせん成分を含む貫通転位密度がN cm−2である場合、マスク材102の各開口部103の面積が1/N cm以下であれば、各開口部103内に形成した窒化物半導体薄膜の表面が平坦になることを見出した。そして、Nの値が10以上10以下である場合には、各開口部103内に形成した窒化物半導体薄膜105の表面を構成する原子テラスのうち、最も広い原子テラスの面積が表面積の80%以上となることが分かった。
なお、この関係は窒化物半導体基板101や窒化物半導体薄膜105がGaNであるときばかりではなく、任意の組成を有する窒化物半導体Al1−a−b−cBaGabIncN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1)で成り立つ。ただし、窒化物半導体基板101と窒化物半導体薄膜105との間でミスフィット転位が発生しない組成の組み合わせや薄膜の厚みが必要とされる。また、窒化物半導体基板101の主方位面は必ずしも(0001)でなくても良く、{1−100}、{1−101}、{11−20}、{11−21}、{11−22}面などでも良い。さらに、開口部103の形状は必ずしも正六角形でなくてもよく、他の多角形や円形であっても良い。
(実施形態1)
図3(a)及び(b)に、実施形態1の窒化物半導体構造を示す。図3(a)は平面図を表し、図3(b)は図3(a)のA−A’線に沿った断面を表す。窒化物半導体基板101は(11−20)面を主方位面とするGaNであり、らせん成分を含む貫通転位104の密度は1×10 cm−2である。窒化物半導体基板101の主方位面上にマスク材102(窒化シリコン薄膜、厚さ50nm)が形成されている。また、マスク材102には複数の開口部103が開けられている。開口部103は1辺が20ミクロンの正方形であり、各辺はGaNの[0001]または[1−100]方向に平行である。さらに、開口部103には、500nm厚のn型GaN層106a、厚さ3nmのアンドープAlN層106b、厚さ2nmのアンドープGaN層106c、厚さ3nmのアンドープAlN層106d、および、300nm厚のn型GaN層106eが順次形成され、窒化物半導体多層薄膜106となっている。この窒化物半導体多層薄膜106の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、すべての界面において、最も広い原子テラスの面積が各界面の面積の80%以上であった。よって、各開口部103内に形成した窒化物半導体多層薄膜106の少なくとも1つの界面において、界面を構成する最も広い原子テラスの面積が界面の面積の80%以上であったと言うことができる。
様々な条件下で貫通転位104の密度と開口部103の面積との関係を検討すると、らせん成分を含む貫通転位密度がN cm−2である場合、マスク材102の各開口部103の面積が1/N cm以下であれば、各開口部103内に形成した窒化物半導体多層薄膜106の界面が平坦になることを見出した。そして、Nの値が10以上10以下である場合には、各開口部103内に形成した窒化物半導体多層薄膜106の少なくとも1つの界面を構成する原子テラスのうち、最も広い原子テラスの面積が界面の面積の80%以上となることが分かった。
なお、この関係は窒化物半導体基板101や窒化物半導体多層薄膜106が、任意の組成を有する窒化物半導体Al1−a−b−cGaInN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1)で成り立つ。ただし、窒化物半導体基板101と窒化物半導体多層薄膜106、および、窒化物半導体多層薄膜106内の各層の間でミスフィット転位が発生しない組成の組み合わせや各層の厚みが必要とされる。また、窒化物半導体基板101の主方位面は必ずしも{11−20}でなくても良く、(0001)、{1−100}、{1−101}、{11−21}、{11−22}面などでも良い。さらに、開口部103の形状は必ずしも正方形でなくてもよく、他の多角形や円形であっても良い。
カソードルミネッセンス法により、窒化物半導体多層薄膜106からの発光スペクトルを4Kの温度で測定した。界面が高密度の原子ステップで形成されている従来の窒化物半導体多層薄膜と比較して、発光スペクトルの幅が3分の1程度に狭くなった。これは、量子井戸となる厚さ2nmのアンドープGaN層106cの膜厚揺らぎが小さくなり、サブバンドのエネルギー的な広がり(揺らぎ)が小さくなったためである。
また、窒化物半導体多層薄膜106の表面と窒化物半導体基板101の裏面に、それぞれ、オーミック電極を形成し、共鳴トンネルダイオードを作製した。室温で電流電圧特性を測定したところ、界面が高密度の原子ステップで形成されている従来の窒化物半導体多層薄膜から作製された共鳴トンネルダイオードと比較して、3〜5倍のピークツーバレー比を得ることができた。これもまた、厚さ2nmのアンドープGaN層106cの膜厚揺らぎが小さくなり、サブバンドのエネルギー的な広がり(揺らぎ)が小さくなったためである。
(実施形態2)
参考例及び実施形態1において、窒化物半導体基板101としてサファイア基板上のGaN薄膜を用いた例を示して説明したが、図4(a)及び(b)に、実施形態2の窒化物半導体構造を示す。図4(a)は平面図を表し、図4(b)は図(a)のA−A’線に沿った断面を表す。本実施形態における窒化物半導体基板101は、(0001)面を主方位面とするサファイア101a、第2のマスク材101b、横方向成長GaN薄膜101cで構成されている。図4(a)にサファイア101aの方位を示した。第2のマスク材101bは厚さ100nmの酸化シリコン薄膜であり、サファイア101aの[1−100]方向に平行な多数のストライプを形成している。ストライプの幅は1から100ミクロン、ストライプの間隔は1から100ミクロンとすることができる。横方向成長GaN薄膜101cの表面上にマスク材102および開口部103が形成されている。このとき、開口部103は第2のマスク材101b上に横方向成長した部分のGaN薄膜に形成する必要がある(図4(b)参照)。これは、マスク材101bの上に横方向成長した部分のGaN薄膜のらせん成分を含む貫通転位の密度が小さいためである。実施形態1及び2と同様に、開口部103内に、表面を構成する原子テラスのうち、最も広い原子テラスの面積が表面積の80%以上を占める窒化物半導体薄膜105や、少なくとも1つの界面において界面を構成する最も広い原子テラスの面積が界面面積の80%以上である窒化物半導体多層薄膜106を形成することができた。
ここで、第2のマスク材101bの上に横方向成長した部分のGaN薄膜101cのらせん成分を含む貫通転位密度がN cm−2である場合、マスク材102の開口部103の面積が1/N cm以下にする必要がある。この関係は横方向成長GaN薄膜101c、窒化物半導体薄膜105、窒化物半導体多層薄膜106が、任意の組成を有する窒化物半導体Al1−a−b−cGaInN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1)で成り立つ。ただし、横方向成長GaN薄膜101cと窒化物半導体薄膜105または窒化物半導体多層薄膜106との間、および、窒化物半導体多層薄膜106内の各層間でミスフィット転位が発生しない組成の組み合わせや各層の厚みが必要とされる。
さらに、サファイア101aの代わりにシリコンや炭化珪素を用いても良い。サファイアや炭化珪素の場合、(0001)以外の主方位面、例えば、{11−20}、{1−100}、{1−101}、{11−21}、{11−22}面等を用いても良い。シリコンの場合、{111}、{100}、{110}等の主方位面を用いることができる。
101 窒化物半導体基板
101a サファイア
101b 第2のマスク材
101c 横方向成長したGaN薄膜
102 マスク材
103 マスク材の開口部
104 らせん成分を含む貫通転位
105 窒化物半導体薄膜
106 窒化物半導体多層薄膜
106a n型GaN層
106b アンドープAlN層
106c アンドープGaN層
106d アンドープAlN層
106e n型GaN層

Claims (6)

  1. 窒化物半導体基板と、
    前記窒化物半導体基板上に形成された、複数の開口部を有するマスク層と、
    前記複数の開口部のそれぞれに形成された複数の窒化物半導体多層薄膜と
    を備える窒化物半導体構造であって、
    前記窒化物半導体基板のらせん成分を含む貫通転位密度はNcm −2 (10 ≦N≦10 )であり、
    前記複数の開口部の各開口部の面積は1/Ncm 以下であり、
    前記窒化物半導体多層薄膜は、前記開口部に島状に独立して形成され、前記島状に形成された窒化物半導体多層薄膜のうち少なくとも一つの窒化物半導体多層薄膜の少なくとも一つの界面について、前記界面を構成する原子テラスのうち最も広い原子テラスが、前記界面の面積の80%以上の面積を持つことを特徴とする窒化物半導体構造。
  2. 前記窒化物半導体基板は、
    サファイアと、
    前記サファイアの主方位面上に形成された第2のマスク材と、
    前記第2のマスク材上に横方向成長した窒化物半導体薄膜と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体構造。
  3. 前記窒化物半導体基板は、
    シリコンと、
    前記シリコンの主方位面上に形成された第2のマスク材と、
    前記第2のマスク材上に横方向成長した窒化物半導体薄膜と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体構造。
  4. 前記窒化物半導体基板は、
    炭化珪素と、
    前記炭化珪素の主方位面上に形成された第2のマスク材と、
    前記第2のマスク材上に横方向成長した窒化物半導体薄膜と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体構造。
  5. 前記開口部は、多角形または円形であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の窒化物半導体構造。
  6. 窒化物半導体基板上にマスク材を形成するステップと、
    前記マスク材に複数の開口部を形成するステップと、
    前記複数の開口部のそれぞれに、窒化物半導体多層薄膜を形成するステップと
    を備える窒化物半導体構造の製造方法であって、
    前記窒化物半導体基板のらせん成分を含む貫通転位密度はNcm −2 (10 ≦N≦10 )であり、
    前記複数の開口部の各開口部の面積は1/Ncm 以下であり、
    前記窒化物半導体多層薄膜は、前記開口部に島状に独立して形成され、前記島状に形成された窒化物半導体多層薄膜のうち少なくとも一つの窒化物半導体多層薄膜の少なくとも一つの界面について、前記界面を構成する原子テラスのうち最も広い原子テラスが、前記界面の面積の80%以上の面積を持つことを特徴とする窒化物半導体構造の製造方法。
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