JP5450857B2 - 情報処理装置 - Google Patents
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Description
本発明は、情報処理装置に関するもので、特に、固体状の媒体の内部に離散的に3次元状にデータを記録し、それを透過する電磁波の吸収や共鳴エコーを利用して非接触で読み出す場合にデータの読み取りの信頼性、データ記録時間の短縮、記録密度の向上などを実現するためのデータの配置方法、およびデータの表現方法に関するものである。
画像や音声などデジタル情報を扱う装置の高性能化は急速に進んでおり、それに伴いデジタル情報を記憶する情報記憶装置の進歩も著しい。代表的な情報記憶装置としては、半導体メモリ、ハードディスク、光ディスクなどがある。これらは基本的には、情報を記憶する要素を2次元状に配置したものであり、これまで主として微細加工技術の進歩に頼って高集積化や低コスト化を進めて来た。しかし、加工技術の微細化も段々と困難になってきており、今後は、以前のように高集積化や低コスト化を急速に進めることは容易ではないと言われている。
この問題を解決する一つの手段として、記憶要素を2次元ではなく、3次元に配置することが考えられる。そのような例が、特許文献1から3に記載されている。特許文献1には、平面型光導波路を多層に重ねた多層導波路形再生専用メモリカードが記載されている。特許文献2には、円柱状のガラスもしくは、プラスチックを記憶媒体として用い、コンピュータトモグラフィ技術を用いて、情報を読み取る記憶装置が記載されている。また、特許文献3には、磁場中に置かれた原子核スピンなどの共鳴現象を利用した3次元メモリの例が記載されている。
なお、本発明に関連する文献として非特許文献1及び2、特許文献4がある。非特許文献1の第8章には、コンピュータトモグラフィ技術の原理に関しての詳細が記載されている。さらには、非特許文献2第1、および2章、1〜59ページには、磁場中の共鳴現象について、解説されている。特許文献4は、微小なコイルと容量からなる共振回路及びその製造方法について記載されている。
デジタル ピクチャー プロセシング ローゼンベルト、カーク著、アカデミックプレス出版、第8章、353〜430ページ(Digital Picture Processing, Second Edition, Volume 1, Azriel Rosenfeld, and Avinash C. Kak, Academic Press Inc., Section 8, pp.353~430)
プリンシプルズ オブ マグネティック レゾナンス スリッチャー著、スプリンガー出版、第1、および2章、1〜59ページ(C. P. Slichter, "Principles of Magnetic Resonance", 3rd Edition, Springer-Verlag, 1990, Sections 1 and 2, pp.1~59)
特許文献1には、平面型光導波路を多層に重ねた多層導波路再生専用メモリカードの例が記載されており、各々の層の側面は、導波路平面の法線に対し45度の傾きでカットされている。また、上記の法線方向から見て各層毎の上記カット面が重ならないようにずらしている。従って、上記法線側(積層された導波路平面の上面)から、選択したい層のカット面に光を当てると、カット面において光が反射して選択した層の導波路平面に光が入射される。選択した導波路平面に入射した光は、導波路中に形成された凹凸で散乱される。その散乱光の発生位置をレンズと2次元受光素子を用いて、2次元パターンとして読み取っている。この方式では、レンズの焦点を選択したカット面に合わせることによって選択した層からの散乱光のパターンを読み取ることができる。
しかしながら、受光素子から遠い層を選択すると、選択していない層を上記散乱光が通過するので、非選択層での光の吸収や凹凸での散乱も生じる。この散乱の影響は、層数が少ない時には余り問題ないが、層の数が増加すると上記の光の吸収により選択された層からの散乱光の強度は減少し、一方で非選択層における光の散乱の影響は大きくなってくる。このため、受光素子におけるSN比が低下して信号の読み出しができなくなってしまう可能性がある。
また、特許文献2には、円柱状のガラスもしくは、プラスチックの媒体を用いた実施例が記載されている。この媒体の内部に3次元的に光の透過率の異なる小区画を設けて、これにより情報を記憶すると記載されている。上記の小区画における光の透過率をどのように変化させるか、すなわち、どのように情報を書き込むか、ということについて具体的な記述は見当たらないが、読み出しについては次のような方法が記載されている。
円柱状媒体の直径方向にレーザビームを入射して、反対側においた受光部で、その強度を測定する。そして、円柱状媒体を、その中心軸の周りに回転させて透過率を測定する。ここで中心軸とは、円柱状媒体の円の中心を通る軸を指す。上記の1回転の間に測定した透過光のデータを元に、演算処理によって、断面円に分布する個々の小区域の透過率を求める。この作業を上記回転軸方向に円柱を移動させながら行うことで、円柱内部に記憶された情報を読み取ると説明されている。特許文献2の実施例では、円柱の直径方向にレーザビームを入射するので、円柱の回転軸方向の長さを大きくした場合に、信号のSN比が低下するという問題は生じない。
しかし、この文献に記載されている実施例の構成では、断面円内部に分布する全ての小区域の透過率を演算によって求めることができない。その原因は、レーザビームの発光部と、受光部を円柱の直径方向に配置したことにある。これでは、円柱を1回転させても、直径方向の透過率を測定しているだけである。よく知られているように、断面構造を演算によって求めるコンピュータトモグラフィでは、中心を通る直径方向の線の情報だけではなく、それに平行な多数の線の透過率も必要になる。従って、特許文献2の構成では、円柱状媒体に3次元状に分布するデータを正確に読み取ることはできない。コンピュータトモグラフィの原理については、非特許文献1の第8章に記載されている。
なお、特許文献2には記載されていないが、上記コンピュータトモグラフィ技術により断面構造を求めるために、レーザビームを円柱状媒体の中心からずらして入射することも考えられる。しかしながら、特許文献2の構成では、コンピュータトモグラフィで必要な直径と平行な光線の透過率を測定しようとしても、媒体が円柱状であり、かつ、入射光がレーザビームのために、中心から離れた所にレーザビームを入射すると、円柱の表面で光の屈折により光路が大きく曲がってしまい、正確な情報を得られない可能性がある。
以上から、特許文献2に記載されている実施例では、コンピュータトモグラフィの原理を適用して、正確な断面情報を得ることができない可能性がある。さらに、特許文献2には、記憶媒体中にデータを書き込む方法が示されていない。
特許文献3には、液体の水や固体ポリメタクリル酸メチルを記憶媒体として利用するものが記載されている。この方式では、水などの一様な記憶媒体に対して、3次元の傾斜を持つ磁場を印加することにより、共鳴周波数を制御し、局所的に異なる周波数の電磁波を吸収させることで書き込みを行っている。読み出しは、共鳴現象の緩和時間内に、水素原子などから放出される電磁波を読み取ることで行う。この方式は、3次元空間を用いることにより、従来の2次元の情報記憶装置に比べて高集積化には有利であるように思える。しかしながら、この方式では、読み出す前に緩和時間が経過したり、外部磁場を切ってしまったり、磁場のない環境に媒体を持ち出すと、記憶した情報が消えてしまうという問題がある。
以上のように、従来の情報記憶装置では、3次元情報の読み取りや情報のリテンションに問題があるなど、基本的な機能について十分な配慮がなかった。
上記に鑑み、発明者は、3次元情報記憶装置について検討した。その結果、上記の特許文献における基本的な問題を解決することはもちろんであるが、それに加えて、さらに、データの読み取りの信頼性の向上、データ記録時間の短縮、記録容量の増大などを実現するためには、データの配置方法やデータのコード方法についても配慮が必要であると考えた。
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものである。本発明の前記、ならびにその他の目的や新規な特徴は、本明細書の記述、および添付図面から明らかになるであろう。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
表面上に少なくとも一組の平行な平板部分を有する板状の固体を記録媒体に用いる。記憶する情報は、上記記録媒体の内部に3次元的に分布した離散的な微小領域にビットに分けて記憶される。
上記微小領域を以下、メモリセルと呼ぶ。メモリセル領域には、外部から照射される電磁波の透過率を変化させることにより、ビット情報を記録する。
上記特性が変化した部分のメモリセルの情報を‘1’、変化していないメモリセル部分の情報を‘0’と定義する。記録した情報の読み出しは、次のように行う。まず、上記平板と照射する電磁波の角度を変えながら、上記平板部分を投下する電磁波の強度を、射影像として観測する。次に、それらのデータを演算処理して所望の断面像を計算することで断面上のメモリセル部分における電磁波の透過率の違いを求めることにより、ビット情報を読み出す。メモリセルのピッチには、異方性を持たせ、上記平板部分に直角な方向のピッチは、平行な方向のピッチよりも大きい。
また、上記回転中に常に電磁波が当たる部分に包含される領域を記録領域として用いる。さらに、与えられたnビットを単位とするテキストコードやバイナリコードを、nより大きなmビットを単位とし、なおかつ、含まれる1の数がnより小さいデジタルフォーマットに変換して記録媒体に記録し、読み出し時には、それを元のテキストコードやバイナリコードに変換して出力する。媒体にデータを記録する時には、上記mビットで表現されたデータを、上記平板に直角方向に並べて記録する。
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、コンピュータトモグラフィの手法を利用して安定した読み出しが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、本発明の図面、および説明は、本発明を明解に理解するために必要な要素を図示する目的で簡略化してあり、同時に簡明にするために、周知と思われる他の要素は除外してある。本発明を実施するために図示していないその他の要素が望ましいか、または必要であることは、当業者には理解されよう。しかし、このような要素は当該技術において周知であって、本発明のより良い理解を助けるものではないため、このような要素の説明は本明細書では提供しない。
まず、本発明において記憶媒体中に、どのような配置で複数の層の3次元データを配置するのかについて、実施例を用いて説明する。図1Aに記憶媒体の形状の一実施例を示した。本図でMMは記憶媒体を示しており、MAはその内部におけるデータを記録する領域である。MAiは、MA内部のi番目の層の2次元データを示しており、複数の層を用いて3次元データを記録する。図1Aに示したように、記憶媒体MMは、板状の形状をしており、紙面に平行な平面(x−z平面)が最も大きくなっており、奥行き方向(y軸方向)は小さくなっている。記憶媒体MMの材料としては、例えば、透明なプラスチック等の有機物質やガラスを用いることができる。これらは、広い波長の光に対して、高い透過率を持つので、光を用いて情報を読み出す場合に好適である。プラスチックは、軽く、ガラスより耐衝撃性に優れるが、長期の保存性は、一般にガラスが優れるので、使用条件に合せて選べばよい。なお、ガラスの中でも、石英ガラスは、熱膨張係数が小さく、赤外線から紫外線まで広い波長域で透過率が高い。このため、温度変化に伴う膨張に起因する読み取りミスが起こりにくく、また、火災などの急激な温度変化にも耐えることが可能である。従って、本発明の記憶媒体MMの材料として好適である。
また、場合によっては石英ガラスより硬く、さらに、高温に強い材料が必要なことも考えられる。その場合には、例えば、サファイア、つまり、酸化アルミニウム(アルミナ)の結晶を用いることもできる。酸化アルミニウムの透明な人工結晶は、ダイヤモンドの次に硬く、また、融点も2000℃を超える。このため、石英ガラスよりも、さらに丈夫で、かつ、高温に強い記憶媒体MMを作ることが可能である。もちろん、書き込み、読み出しに利用する光の波長に対して透過性を持っている丈夫な材料であれば、この他の材料を使うことができることはもちろんである。例えば、添加物を加えて安定化したジルコニアや多結晶アルミナなどセラミックスの中で透光性のあるものやその他の人工的な材料を利用することが可能である。これらは一般に、単結晶のアルミナより安価なので、媒体の価格を低くできるというメリットがある。
記憶媒体の形状が板状であることのメリットとして次のようなものが挙げられる。まず、多角柱や円柱などを研磨するのに比較して板状の記憶媒体では、2面の平面を研磨するだけで済むので製造、ならびに検査が容易であり、低い価格で製造できる。また、万一、表面に傷がついたり、長期間の保管中に何らかの原因で表面の平面度や透明性が損なわれた場合でも、再研磨して読み取りができるようにすることが容易である。さらに、記憶媒体を扱う場合に、光の透過に使わない側面を触ることができるので、取り扱いが容易である。また、円柱状の媒体と比較して複数の媒体を収納する場合に、互いの隙間を小さくできるので、収納容積を小さくできるというメリットもある。
次に、板状の記憶媒体を用いて信頼性の高いデータの読み出しを行うための方法について説明する。図には示していないが、本実施例では、記憶領域MAの内部に3次元に分布した微小な領域(以下メモリセルと呼ぶ)に情報を記録する。ビット‘1’を書き込みたい領域には、フェムト秒レーザなどの短時間パルスレーザ光をレンズを用いて集光し、その部分に屈折率の変化あるいは、微小なキズなどの変性(以下ドットと呼ぶ)を起こさせる。ビット‘0’にしたい領域には、レーザを当てず、そのままにする。データの読み取りは、上記で書き込まれたドットの3次元分布をコンピュータトモグラフィを用いて求めることによって行う。そのために、後述のように媒体を少しずつ回転させながら、平行光線を当てて、投影画像を撮影する。通常のコンピュータトモグラフィでは断面画像を計算するために、1回転分の投影画像を利用する。1回転分の投影画像があれば、求めたい断面画像の2次元フーリエ成分が全て求まるので、それを2次元逆フーリエ変換すれば断面画像を得ることができる。しかし、板状の記憶媒体を用いると、回転角度に制限ができ、求めたい断面画像のフーリエ成分の一部しか利用できない場合がある。このような場合、正面に近い角度しか利用できないことになる。そうすると、断面の奥行き、つまり、y軸に近い方向のフーリエ成分が得られない。その結果、断面の奥行き方向の空間分解能が低くなることが懸念される。その対策として、メモリセルのx方向のピッチに対して、y方向(奥行き方向)のピッチを大きくする。
上記の課題を図1Bを用いて説明する。図1Bは、復元したい断面画像の2次元フーリエ空間を示したものである。図1Bにおいて、u軸とv軸は、それぞれ、記憶媒体のx方向とy方向に相当するフーリエ空間の軸である。数式による詳細な説明は、非特許文献1などに記載があるので省略するが、ある角度θの射影像を1次元フーリエ変換すると、その結果は、図1Bの2次元フーリエ空間において、u軸と角度θで交わる直線上のフーリエ成分となる。従って、図1Bに示したように、回転角度が±θimで限定されると、v軸方向すなわち、奥行き方向のフーリエ成分があまり得られないことがわかる。その結果、断面の奥行き方向の空間分解能が低くなる。
以下では、上記の課題に対する対策として、図1Cと数式を用いてメモリセルのピッチに異方性を持たせる実施例について説明する。なお、以下の説明は、一つの断面、MAiに着目して行うが、記憶されているドットDOTは、複数の断面に渡って存在することに注意されたい。
データ‘1’を記憶している領域、つまり、ドットDOTは離散的であるので、断面上でドットDOTを明確に分離するには、ドットDOTの吸収、散乱を受けないドットDOT間を直接透過する“直接光”で最小ピッチのドットDOTが分離できればよい。まず、ドットDOTのx方向は、回転角度が0度の時に得られる投影画像で分離できるようなピッチにしておけばよい。一方、y方向については、媒体を左右に回転した時に、少なくとも最大角度θimで図1Cのように斜めの直接光でy方向の分離ができればよい。ここで、θimは、正確には媒体内部における光線と入射面の法線との角度θiの最大値であり、媒体の機械的な回転角度の最大値より小さい値となることに注意されたい。この関係は、後述のように媒体の屈折率から決まる。上記の条件を定式化すると、x方向のメモリセルの一辺、および最小スペースをそれぞれDx、Sx、y方向をそれぞれDy、Syとして、
Sx/Dy>tan(θim) ・・・ (1.1)
(Sx+Dx)/(Sy+Dy)<tan(θim) ・・・ (1.2)
となる。なお、角度を表記するときに、回転方向を示すために符号をつけて表現することがあるが、上の式では、その大きさ、すなわち絶対値を付けて正の値にしたものとする。以下の説明の式でも煩雑になるので容易に判る場合は、符号の有無について説明を省略することがあることに注意されたい。
Sx/Dy>tan(θim) ・・・ (1.1)
(Sx+Dx)/(Sy+Dy)<tan(θim) ・・・ (1.2)
となる。なお、角度を表記するときに、回転方向を示すために符号をつけて表現することがあるが、上の式では、その大きさ、すなわち絶対値を付けて正の値にしたものとする。以下の説明の式でも煩雑になるので容易に判る場合は、符号の有無について説明を省略することがあることに注意されたい。
ここで(1.2)式の左辺の分母は、ドットDOTのy方向の最小ピッチPyであり、分子はドットDOTのx方向の最小ピッチPxである。例として、ドットDOTを立方体(断面は正方形)として、x方向の最小スペースとドットDOTの辺の長さを等しいとすると(Dx=Dy=Sx)となるので)、(1.1)式の左辺は1となる。石英ガラスを例にとると、後述のようにθimは、45度以下なので、右辺は1以下となり、この式は満たされる。従って、(1.2)式より、
Px/Py=2D/(Sy+D)<tan(θim) ・・・ (1.3)
が条件となる。ここでDは、正方形のドットDOTの一辺、およびx方向の最小スペースである。θaを空気中の入射光線とサンプルの入射面の法線(すなわち、y軸)とのなす角度、つまり機械的な回転角度とすると、θiは、θaと媒体の屈折率nを用いてスネルの法則
n=sin(θa)/sin(θi) ・・・ (1.4)
を満たす。
Px/Py=2D/(Sy+D)<tan(θim) ・・・ (1.3)
が条件となる。ここでDは、正方形のドットDOTの一辺、およびx方向の最小スペースである。θaを空気中の入射光線とサンプルの入射面の法線(すなわち、y軸)とのなす角度、つまり機械的な回転角度とすると、θiは、θaと媒体の屈折率nを用いてスネルの法則
n=sin(θa)/sin(θi) ・・・ (1.4)
を満たす。
上記θaは、空気中の入射光線とサンプルの入射面の法線とのなす角度であるので、媒体が板状の場合、その最大値は90度であり、その時のθiが、θiの最大値θimである。これは、媒体内部から空気中に光線が出射する場合の全反射の条件と等価である。
例えば、媒体を合成石英ガラスとして、その屈折率を1.465(光の波長457.9nm)として計算すると、θimは、約41度となる。このようにθimを決定することができる。しかし、θaが90度に近くなると表面反射のために透過率が低くなるので、θaの実用的な最大値は、90度より小さくなり、それに伴いθimも上記より小さくなる。
例えば、θaの最大値を60度とすると、θimは36度となる。θimを36度とすると、そのタンジェントは0.73であるから、(1.3)式を用いると、実用的にはドットの最小ピッチの比率Px/Pyは0.73以下、言い換えるとPyはPxの1.36倍以上とすることが望ましい。また、y方向のドットの最小スペースSyは、ドットDOTの一辺Dの1.73倍以上とすることが望ましいことがわかる。
上記では、簡単のため、ドットDOTの断面形状を正方形とし、x方向の隙間SxとドットDOTの幅Dを等しいとしたが、ドットDOTの断面が長方形であっても、ドットDOTの大きさとスペースが異なる場合であっても、上に示した数式から、望ましいピッチを計算することができる。断面が長方形のドットDOT、特に奥行き方向の辺が短いものは、‘1’のドットDOTが多くなっても透過光の減少率が少ないので、透過光の強度が弱くなりすぎる恐れが少ないというメリットがある。また、媒体を回転させたときに、ドットDOTの側面から入射される光の量が小さいので、ドットDOTの側面から光が入射して、その散乱光などがノイズとなって断面画像の再生に悪影響を与える可能性が減少するというメリットもある。なお、ドットDOTの形状が円など、他の形状であっても同様な考え方で計算することは容易である。
ところで、上記でθaが90度に近くなると反射が大きくなると記したが、これは以下の理由による。一般に屈折率の異なる材質の界面にある角度で光が入射する場合、入射面に平行な偏光成分(P偏光)と、垂直な偏光成分(S偏光)とでは反射率が異なる。反射率は、P偏光では角度が大きくなっていくと減少し、ブリュースター角(記憶媒体MMの平面での電磁波のP偏光成分の反射率が0になる角度)と呼ばれる角度で0まで減少し、それ以上の角度では増加する。一方、S偏光は単調増加を示す。従って、P偏光とS偏光が混合した通常の照明では、ブリュースター角を超えるθaでは、反射率が大きく、実用的な強度の透過光を得ることが難しい。上記の場合、ブリュースター角は、媒体と空気の屈折率から計算できる。媒体によって異なるが、おおよそ60度程度になるものが多い。
上記の理由により、P偏光とS偏光が混合した通常の照明では、最大回転角度をブリュースター角度と90度との間に設定するとよい。なお、P偏光とS偏光の割合によって、実用的な範囲は異なるので、照明やフィルタを含む光学系の性質に合わせて最適な角度を決めればよい。
次に、板状の記憶媒体を用いた場合における記憶領域MAの範囲について説明する。図2は、図1Aに示した媒体の断面図である。この図に示した六角形の領域に収まるようにデータの記憶領域を決める必要がある。その理由を以下に説明する。
前述のように、媒体の内部で記録ドットDOTに当たる光線の角度には、上限θimが存在する。従って、±θim以下の範囲で光の当たる領域の内部にドットを記録する必要がある。板状の媒体の前後から光を入射すると、図2における点A、B、C、D、E、Fで囲まれた部分が、ドットの記録に利用できる範囲である。この領域に収まるように、例えば、図2に示したMAの内部にメモリセルを配置すれば、どの回転角度においてもメモリセルに光が当たるので、コンピュータトモグラフィによるデータの読み出しの信頼性を上げることができる。
なお、記憶媒体MMの表面、およびその近傍は、媒体を長く保存する場合には浸食あるいは、機械的な損傷を受けたりすることが考えられる。そのような場合に、記録したデータを保護するためには、記憶領域MAは、上記の制限の範囲内で、記録媒体MMの全ての表面から、ある程度の深さのところに設けるとよい。そのようにすれば、万一、表面近くに損傷を受けても再度表面を研磨することにより記録したデータを読み出すことが可能となる。
また、位置の目安とするための合わせマークを記憶媒体中に書き込んでおくと便利である。さらに、この合わせマークを座標の基準点だけではなく、回転の基準点やデータの濃度の基準として、記憶媒体の適切な位置に複数記録しておけば、例えば、光学系の収差や媒体の形状誤差の補正、媒体の位置によるドットの濃度の書き込みのばらつきや、読み出しのばらつきなどを補正することができるため、より信頼性の高い情報の記憶と読み出しが可能となる。なお、上記合わせマークは、図1Cで示した領域の内部に記録して、複数の回転射影像から読み出すようにしてもよいし、特定の角度、例えば、角度が0、つまり、光の入射面と光線が垂直になることを判別するような合わせマークの場合は、角度0の射影像で見えればよいので、図1Cのデータ記録範囲の外側に書き込むことも可能である。その場合は、データの記録領域を使わないので、記録容量をその分大きく確保できるというメリットがある。
次に、図3と図4を用いてデジタルデータの表現方法について述べる。なお、後述の説明から明らかなように、これらの表現方法は、図1、及び、図2のような板状の媒体でなくても、円柱や多角形など他の形状の記憶媒体に対してもメリットはあるが、以下では板状の媒体を例に説明する。
前述のように、図1の実施例では、ビット‘1’を書き込むメモリセルには、フェムト秒レーザなどの短時間パルスレーザ光をレンズを用いて集光し、その部分に屈折率の変化などの変性を起こさせる。ビット‘0’にしたい領域には、レーザを当てずに変性を起こさずに、そのままにする。従って、記憶するデジタルデータの中に含まれる‘1’の割合が多いほど、データの記録に時間がかかる。
また、コンピュータトモグラフィによる読み出しでは、透過する光の強度を観測する。従って、光路の上に多くの‘1’が存在すると、その数に対して指数関数的に透過する光の強度が小さくなるので、ノイズの影響を受けやすくなり、場合によっては、読み出しデータの信頼性が低下する可能性もある。特に、奥行き方向のメモリセルの数を増加させたい場合に、そのような可能性が高くなる。そのような場合にも、‘1’の数が相対的に少ない方がよい。
図3は、8ビット長の通常の2進数を、‘1’の数が少ない9ビットのフォーマットに変換する実施例である。8ビット長の通常の2進数は、最大で‘1’の数が8であるのに対して、図3の右端の列に示したフォーマットでは、最大4つしか現れない。このため、図3の実施例を用いてデータの変換を行って、記憶媒体にデータを記録すれば、より短い時間で記憶媒体の製造ができるだけではなく、読み出しの信頼性を上げることもできる。また、透過光の強度が許容される範囲で、奥行き方向のメモリセルの数を増加させることで記録容量を増加することが可能になる場合もある。
図3を用いてそのフォーマットを説明する。図3には、左から、10進数、通常の8ビット長の2進数、本実施例である‘1’の少ない9ビットフォーマットが示してある。なお、このフォーマットは、9ビット長で、‘1’の数が最大で4つなので、4/9ビットフォーマットと呼ぶことにする。nビット長の‘0’と‘1’のビット列において‘1’の数がk個の表現は、nCk(ここでCは組み合わせ関数)であるから、nを9としてkを4とした場合、9C0、9C1、9C2、9C3、9C4の総和が256になるので、9ビット長の表現を用いれば、‘1’の最大数が4であれば8ビットの2進数を全て表現できることになる。通常の2進数との対応は、色々な対応が可能であるが、図3の4/9ビットフォーマットでは、対応する数の小さい順に‘1’の数が増えるようにしている。
また、同じ数の‘1’が出現する場合には、2進数として見た場合に、大きさの順になるように並べている。これは、与えられた2進数との変換を分かりやすくするためであるが、これに限らず、対応の仕方は、目的に応じて色々と変更してもよいことはもちろんである。なお、ここでは、一般にデータは8ビット、つまり、1バイトを単位に構成されていることが多いので、8ビットの2進数を変換する例を示した。また、変換のためのビット数を少なくするために9ビットに変換する実施例を示した。しかし、任意のビット長の2進数を、それよりビット長の長い表現で置き換えれば、‘1’の数を少なくできることはもちろんであり、記録したいデータによってビット長を最適に設定すればよい。図3のような方法によれば、変換するフォーマットのビット長を元のデータより長くするほど‘1’の数を減少することができる。また、上記では、‘1’の数を4だけではなく3,2,1,0のコードも利用したが、一定の数の‘1’だけにした方が、読み出し時点の誤りの確率が少なくなる場合も考えられる。そのような例としては、例えば144ビット長を用いて‘1’の数を4にしたコードが考えられる。この場合、144C4が、2の24乗より大きいことから、24ビットの2進数を表現できることになる。この他、同様の原理により様々なコードを利用できる。媒体の厚さや記憶ビットのピッチ、許容される透過率などを考慮して選択すればよい。
図4に図3とは異なるフォーマットの実施例を示した。これは、8ビットの2進数を20ビット長で、‘1’の数の最大値が5になるようにした例である。図3のフォーマットと比較すると、‘1’の削減では効率が悪いが、2進数との相互変換が分かりやすいというメリットがある。このフォーマットでは、20ビット長のコードのうち右端から連続して並んでいる‘0’の数を2進数で表現したものが、対応する2進数の下位4ビットに対応し、一番右側にある‘1’の左側にある4ビット(斜体字+下線で示される部分)が、対応する2進数の上位4ビットになるようにしている。このフォーマットでは、右側の‘0’の数をカウントすることと、‘1’の左の4ビットを、そのままコピーするだけで2進数に変換が可能である。
上記図3、図4以外にも、元の2進数のビット長より長いビット長のフォーマットを用いることで、‘1’の数を減少させるという考えに基づいたフォーマットには、色々とバリエーションが考えられるが、記憶領域の余裕や、許容される記録時間、変換の容易さなどを考慮して、フォーマットを選択すればよい。
次に、図3のフォーマットを用いて、図1の実施例にデータを記録する具体的な実施例を示す。図5は、板状の記録媒体において、図2のような断面にドットが記録されている様子を示した実施例である。媒体の奥行き方向に、図3に示した、4/9ビットフォーマットで、10進数では0、129、46に対応する数が記録された様子を示している。黒い正方形が、レーザで変性したビット‘1’を白い正方形は変性されていないビット‘0’の微小領域を示している。図2の実施例に従って、奥行き方向のピッチ(図面では縦方向)を大きくしている。図5に示した実施例のようにしてデータを記録すれば、板状の媒体を用いる際に高い信頼性が得られるだけではなく、記録時間の短縮も実現可能である。
図6は、図1から3(もしくは図4)までの実施例を用いて、カラー画像のデータを記録するのに適した実施例である。図6では、板状の記憶媒体の内部に、奥行き方向に赤(R)、緑(G)、青(B)に色分解した写真データを複数枚記録した様子を示している。このようにすれば、複数のカラー画像のデータを、板状の記憶媒体に記録することが可能である。
例えば、図3の4/9ビットフォーマットを用いて、RGB各色の無圧縮データを記録すれば、RGB各色で、8ビットの階調の所謂、フルカラーでカラー画像を記録することが可能である。非常に長期に渡って画像の保存を行うような場合には、データを圧縮して記録するより、このような方法の方が、将来データの一部が読めなくなった場合でも、それ以外の部分の画像を再生できるというメリットがある。
これまで述べた実施例を用いて、圧縮したデータを記録することができることはもちろんであり、その場合、より多くの画像を記録できることは言うまでもないし、画像以外のあらゆるデジタルデータの記録に有効であることももちろんである。なお、図3や図4のようなフォーマットを用いる場合には、その変換規則をテキストデータあるいは、表の画像としてデータと同時に、一種のメタデータとして保存しておくことが望ましい。そのようにすれば、将来、記録されたフォーマットの形式が解読できないというような事態を回避することができる。図3や図4のようなフォーマットは、非常に単純であるので、少ない領域を用いてメタデータの記録ができることも大きなメリットである。
図7、および、図8は、本発明の情報記憶装置の構成の一例を示す図である。これらの実施例では、媒体を少しずつ回転させながら、平行光線を当てて、投影画像を撮影し、コンピュータトモグラフィの演算を用いて記録されたメモリセルの情報を読み出す。図7に本実施例における主要な部品(以下ユニットと呼ぶことにする)を示すブロック図を、図8に具体的な構成例の斜視図を示した。なお、図8におけるy軸は、照明ユニットLUから受信ユニットRUへ向かう軸であり、x軸は、紙面に対して垂直の軸である。以下、特別な断りがない限り、同様である。
図7において、MUは、記憶ユニットであり、前述の実施例の記憶媒体MMを含んで構成されている。LUは照明ユニット、RUは受信ユニットである。照明ユニットLUによって、上記記憶ユニットMUに光を照射して、コンピュータトモグラフィの演算に必要な射影像を受信ユニットRUで撮像する。CUは、制御ユニットであり、MUにおける記憶媒体の回転や上下移動などを制御する。PUは、演算ユニットであり、受信ユニットRUから与えられた射影像のデータからコンピュータトモグラフィの原理に基づいて信号処理を行い、記憶ユニットMU中に記録されたメモリセルの配置(アドレス)とその値を計算する。また、図3や図4に示された表現方法で記録された場合、演算ユニットPUでコード変換を行い、8ビットに直してから出力してもよい。これにより、外部のプロセッサ等と接続されるインターフェースは、8ビットや16ビットといった通常用いるビット幅で構成できる。
本実施例では、演算ユニットPUに、外部から3次元のアドレス範囲ADD、およびコマンドCMDを入力すると、制御ユニットCUが照明ユニットLU、記憶ユニットMU、受信ユニットRUを制御することにより、後述するように受信ユニットRUで複数の射影像を撮像し、コンピュータトモグラフィの原理に従って、入力されたアドレス範囲に相当する記憶ユニットMU内部のデータの値を求め、出力する。本ブロック図に示した矢印は上記の各ブロックの間のデータや制御信号等の流れを示している。
図8は、図7の主な構成要素の斜視図を示した実施例である。本実施例では、データの読み取りにコンピュータトモグラフィの原理を応用するが、人体などのトモグラフィで用いられるX線ではなく、紫外線、およびそれより長い波長を持った安全な光を利用する。このため、設置場所にX線の遮蔽手段を設けるといった特別な安全対策が不要であり、例えば、役所、図書館あるいは、美術館など多数の人が利用する場所に手軽に置くことが可能である。
以下、図8に示した実施例の構成と動作を説明する。本実施例では、照明の光がピンホールから照射され、それをコリメータレンズCL1で平行光線に変換する。上記ピンホールとコリメータレンズCL1の間隔は、レンズCL1の焦点距離と等しくしておく。一方、記憶媒体MMは前述の実施例を利用して施策した板状のサンプルであり、内部の複数の微小領域にデータが書き込まれている。
上記コリメータレンズCL1から照射される平行光線は、記憶媒体MMに入射する。記憶媒体MMの内部を平行光線として透過した光は、再度、第2コリメータレンズCL2、ピンホールPH、第3コリメータレンズCL3を通過してから撮像チップCHに入力される。コリメータレンズCL1、およびCL2とピンホールPHの役目は、記憶媒体MM内部を平行光線が透過する際に、内部に記憶された微小変性領域によって散乱を受けた光や、光学系を構成するレンズや部材の表面反射による迷光をカットして射影像のSN比を上げるためのものである。コリメータレンズCL2とピンホールPHとの距離は、コリメータレンズCL2の焦点距離f2に等しくし、また、ピンホールPHとコリメータレンズCL3との距離はCL3の焦点距離f3に等しく設定するとよい。そのようにすると、コリメータレンズCL2に入射される光線のうち平行光線のみがピンホールPHを通過できるので平行光線による射影像のSN比を高く撮像できる。
また、ピンホールPHを通過した光はコリメータレンズCL3によって平行光線に戻るので、撮像チップCHとコリメータレンズCL3の距離を変えても像の倍率が変化することがない。なお、補正レンズCRL2を透過した像は、f3/f2倍に拡大されて撮像チップに投影されるので、f2とf3の比を変化させることで所望の倍率を得ることができる。また、CL3を透過した光は平行光線なので、撮像チップCHの前に干渉フィルタを置いて透過する波長を制限することが容易にできる。よく知られているように、干渉フィルタに斜めから光線を与えると透過波長が設計値からシフトしてしまうが、ここでは平行光線なので、干渉フィルタの設計値と、よく合致した透過光のスペクトルを得ることが可能である。これにより、所望の波長の淡色光のみで撮像することができ、色収差の影響を除去することが容易にできる。なお、単色の光源を用いたり、光源側にフィルタを設けるなどが可能な場合には、コリメータレンズCL3を省略して、撮像チップCHの前にカメラレンズなどを置いて射影像を撮像してもよいことはもちろんである。
いずれの場合でも、散乱光を除去して媒体を透過した平行光線を抽出するのに効果があることはもちろん、コリメータレンズCL1とCL2の間は平行な光線となるので、補正レンズCRL1、2と記憶媒体MMをまとめたレンズ群の位置のずれ(光線と平行、または直行する方向のずれ)に対して像の歪が起きにくいので装置の調整が楽であるというメリットもある。フィルタを用いて透過波長の制限をすると、光量が減少して、撮像に時間がかかる場合もあり得る。そのような場合には、コリメータレンズCLとして、色収差を補正したアクロマートレンズやアポクロマートレンズなどを利用した上で、透過波長の範囲の大きいフィルタを用いるかフィルタを使わないことも有効である。一般に、そのようなレンズでは、色収差だけではなく球面収差など他の収差も補正されているので、より鮮明な射影像を得ることが期待できる。もちろん、必要に応じて非球面のレンズを利用したり、複数のレンズから構成されるレンズ系を用いてもよいことは、もちろんである。
上記図8において、記憶媒体MMに記録されたデータの読み出しを行うために、記憶媒体MMを、回転軸RAを中心に少しずつ回転させながら、射影像を撮像する。こうして透過光の角度が±θimに収まる範囲で、コンピュータトモグラフィの演算に必要な射影像を収集する。これらのデータを得ることができれば、コンピュータトモグラフィの原理によって、記憶媒体の断面形状、つまり、メモリセルの分布を演算ユニットPUで計算することが可能である。
本実施例では、平行光線による射影像を撮像することができる。このため、X線によるファンビームで射影像を得る場合に比較して演算量が少ないというメリットがある。平行光線によるコンピュータトモグラフィ、およびX線ファンビームによるコンピュータトモグラフィの演算の詳細については、前記非特許文献1に記載されている。
上記照明の光源の例としては、LED光源などが利用できる。LED光源は、発熱が少なく消費電力が少ないという利点がある。LEDの光から特定の波長の光を取り出したい場合には、上記のようにフィルタを用いればよいことはもちろんである。なお、LED光源で光量が不足する場合は、キセノンランプ、水銀ランプなどを適宜応用してもよい。なお、ピッチの小さい微小領域の光の透過率を識別するには、光の干渉による画像の劣化が起きないようにすることが望ましい。このため、照明の光源としては、コヒーレント性の強くない、言い換えるとコヒーレント長の短いものが望ましい。
また、本実施例や、以下で述べる実施例においては、装置に外部から入射する余分な光をカットする遮光用の覆いや、布などは省略して図を描いているが、遮光用の手段を用いたり、実施例の装置を設置する部屋全体を暗室にするなど、余分な光が入らないような対策をしたりすることは、もちろんである。さらに、前述のように偏光成分によって、反射率と回転角度との関係が変わるので、偏光フィルタを光路に入れて偏光成分の割合を角度に応じて調整してもよい。
本実施例では、記憶領域MAの射影像が、撮像チップに収まるようにしたので記憶媒体MMを上下に移動させることも不要である。この構成は、小型の記憶媒体の時には制御ユニットの構成が単純化できてよい。MAとしてRA軸(z方向)に長いものを使用する場合には、記憶媒体のRA軸方向の移動も行えばよいことはもちろんである。ここでは、撮像チップとして2次元の画素が配列されたものを利用しているので、1回の移動量は、撮像チップのz方向の画素に収まる分だけ移動させればよい。
なお、図7と8ではRLSとして点光源を用いて、そこからの光を円形のコリメータレンズCLに入射して平行光線を得ていた。また、上記の光線によるMAの射影像を2次元の撮像チップCHで撮像していた。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、読み出し時間よりもコストを優先にする場合には、z軸方向に薄いレンズと1次元のラインセンサ型の撮像チップを用いて、1回転する度にRA軸に沿って記憶媒体を移動しながら撮像してもよい。また、z方向に伸びたスリット状光源をRLSとして使い、z方向に伸びたシリンドリカルレンズをコリメータレンズCLに使って平行光線を作ることも可能である。z方向に長い平行光線が必要な場合には、円形の大型レンズを用いるよりも、この方が少ない費用で済む場合がある。
また、上記実施例では、記憶領域MA全体の射影像が撮像素子に収まるので、角度を変えた1セット分の射影像を取得すれば、MAにおける任意のzの断面を計算できる。しかし、場合によっては、MAの中の一部のzにおけるメモリセルの分布情報のみが必要な場合があり得る。そのような場合には、全てのz値における回転射影像のデータのうち、データが欲しい領域を光が透過しているデータのみを保存しておけばよいことはもちろんである。
以上、図7と図8を用いて、記憶媒体中に3次元に配置されたデータを読み取ることのできる情報記憶装置の実施例を説明した。これによれば、記憶媒体MMを回転しながら射影像を撮像するだけで、3次元のデータを高速に再生することが可能である。データが3次元に記録されているので、2次元あるいは、少数の層でデータを記録している記憶媒体と比較して、微細化技術を用いずに大容量の情報記憶装置を作成することが可能となる。また、半導体メモリで用いられている複雑な配線や製造工程を用いることなく固体中に3次元状にデータを書き込んだり読み出したりすることができる。
また、媒体を高速回転させる必要がないため、ハードディスクや光ディスクと比較してドライブ装置を簡略化でき、その消費電力も削減できる。さらに、データの読み出しを記憶媒体の側面から行っているので特許文献1において層数を増加した場合に生じるSN比の低下を起こすことなく記憶媒体の高さ、つまり、層の数を増加することが可能である。
また、平行光線のx方向の広さが、記憶領域MAのx方向の大きさ以上となっているため、特許文献2のように回転射影像を得ることが困難であるという問題もない。なお、本実施例において、記憶媒体を平行光線に対して少しずつ回転させた時に、傾いた板を平行光線が透過すると幾何光学からわかるように、屈折の影響で記憶媒体の内部で光線の角度が変化する。つまり、内部でも平行光線であるが、媒体の回転角度(上述のθaよりも浅い角度(上述のθi))で記憶領域を光線が通過する。
また、光線に垂直な方向の寸法が変化する。この角度や寸法の変化は、媒体の屈折率と回転角度から容易に計算できるので、射影像の回転角度を物理的な回転角度から補正し、寸法も補正して断面画像の計算をすればよい。なお、媒体の外では、入射光と同じ方向の平行光線に戻る。ただし、内部で角度が変わる影響で、光線に直行する方向に像がわずかにずれる。この量も記憶媒体の屈折率と厚さ、および回転角度から計算できるので、射影像の位置ずれを計算で補正することもできるし、記憶媒体の中に目印となる合わせマークを入れておけば、撮像した複数の射影像について、そのマークを元に位置合わせが容易にできる。
図9、および図10を用いて、本発明の構成を示す第2の実施例を説明する。本実施例の特徴は、図7、図8で説明した実施例が、読み出し専用であったのに対して、書き込み機能も備えていることである。既存の光ディスクを例にすると、実施例1は、再生専用の装置である。それに対し、実施例2では、データの書き込みができ、ユーザ個人が記録も行うことができる再生、録画装置を構成することができる。
図9に本実施例における主要なユニットを示すブロック図を、図10に具体的な構成例の斜視図を示した。図9を図7と比較するとわかるように、本実施例は、図7の実施例に対して書き込みユニットWUを加えたものである。書き込みユニットWUは、記憶ユニットMUにデータを書き込むためのものである。
図10を用いて、具体的な動作を説明する。なお、読み出し動作については、図7、および図8で説明した実施例と同様なので、省略し、書き込み動作のみについて言及する。図10において、WLSは書き込み用光源であり、OLは対物レンズである。これらが、ブロック図9における書き込みユニットWUを構成する。まず、板状の記憶媒体MMを、回転させて書き込み用光源WLS、対物レンズOLに2面の平行面のうち、一枚が正面を向くようにする。この状態で、WLSより光線を放射すると、それが対物レンズOLによって集光され、記憶領域MA内部で焦点を結び、該当する小領域に熱変性を起こす。これによって、データの書き込みを行う。
3次元的に配置された小領域を選択するためには、まず、対物レンズOLを書き込み用光源WLSに対して前後させることで、光源WLSと対物レンズOLの中心を結ぶ方向、つまり、記憶媒体MMの奥行き方向に焦点を移動できる。さらに、記憶媒体MMの角度を固定したまま2次元に移動させることを組み合わせれば、記憶領域MA内部の所望の位置に光の焦点を作り、その近傍に熱変性を起こすことが可能である。回転、および2次元の移動を行うシフト装置は、図面では省略しているが、パルスモータやマイクロメータなどの精密微動装置の組み合わせで容易に実現できる。なお、これらの制御は、外部から入力されたコマンドCMD、アドレスADD・データDATAに従って、制御ユニットCUが行う。また、図3又は図4に示される表現方法により記憶する場合は、演算ユニットPUに入力されるデータを8ビット単位とし、演算ユニットPUにてコード変換してから書き込むとよい。これにより、外部のプロセッサ等と接続されるインターフェースは、8ビットや16ビットといった通常用いるビット幅で構成できる。
書き込み用光源WLSとしては、レーザ、特にフェムト秒レーザなどの短パルスレーザが好適である。このようなレーザの光を集光することによって、短時間の露光で書き込みを行うと、熱変性を微小領域に局所的に起こすことが可能であり、より高密度なデータの記録が可能となる。熱変性を受けた微小領域は、歪や層の変化が残留し、局所的に屈折率の変化が起こり、透過光線に対する光の散乱あるいは、吸収特性に周囲との違いを生じる。そのため、例えば、変性を起こした所とそうでない所を情報の‘1’、‘0’として扱うことによりデジタル情報の記録が可能となる。なお、データの書き込みを行う場合に、書き込み用の光線の経路に既に熱変性を起こした領域があると、光の強度が弱まるなどの原因によって書き込みが十分にできない場合も考えられる。その場合は、焦点位置から対物レンズを見込む角度の大きい、すなわち、よりNAの大きなレンズを選ぶか、対物レンズから遠い位置から手前に向かってデータの書き込みを行うことにより上記の問題を解決することができる。
本実施例は、書き込み機能と共に読み取り機能も有している。これを利用すると書き込みのチェックが色々と可能である。例えば、データの書き込み後に、読み取り機能で書き込みデータをチェックして、書き込むための熱変性が十分でない場合は、再度、書き込みを行うことが可能である。また、記憶領域MA以外の場所に位置決めのマーキングを行い、それを読み取ることで、予め書き込み時の座標と読み出し時の座標とのずれを検証することができる。この検証結果に基づいて演算ユニットPUが演算を行うことにより、読み出し用のコリメータレンズCLや、書き込み用の対物レンズOLの収差、例えば、歪曲収差などの影響による誤作動を避けることが可能となる。
上記では、記録媒体として板状の媒体を用いて、データの読み出しに光を使った実施例について述べた。上記の実施例のように、読み出しに、可視光から赤外領域の範囲の波長で、なおかつ、強度の弱い照明を用いると、X線コンピュータトモグラフィと異なり、記憶媒体や記憶データの劣化の心配がなく、また、通常のレンズを用いて、様々な光路の補正が可能であるというメリットがある。図1A、図1B、図1C、および図2で説明した実施例を応用すれば、そのようなメリットを板状という扱いやすい形状の記憶媒体について活用することができる。なお、本発明は、そのような波長だけではなく、所謂電波に分類される領域の波長を利用して実現することも可能である。
以下では、ラジオ波と言われる周波数帯の電波を用いる磁気共鳴を応用した実施例について述べる。この実施例では、長い波長にもかかわらず、共鳴周波数を利用するので空間分解能を波長で制限されるレベルより上げることができるというメリットがあり、また、記憶媒体としてガラスより衝撃に強い金属を用いることも可能である。核磁気共鳴の理論的詳細については、例えば、非特許文献2などに記載されている。なお、以下の実施例では、共鳴を利用するので、前述の図1A、図1B、図1C、および図2で説明した工夫は不要となる。
まず、図2のようなデータの記憶領域の制限はない。さらに、図1A、図1B、図1Cで説明したようなピッチに異方性を持たせる工夫は、機械的に回転角度に制限ができる場合を除いて、記憶媒体が板状であっても不要である。
一方、図3、図4のような、‘1’の少ないフォーマットは、書き込みの工程を減少させたり、信頼性を上げることに対して、これまで説明した実施例と同様な効果を持つ。
図11に、実施例を構成する主要な部品(以下ユニットと呼ぶことにする)のブロック図を示す。本ブロック図に示した矢印は各ブロックの間のデータや制御信号等の流れを示している。CMDはコマンド信号、ADDはアドレス、DATAはデータである。
図11において、MUは、記憶ユニットであり、3次元に配置された小区域にデータDATAを記憶している。MUを構成する記憶媒体MMの形状としては、円柱状や四角柱あるいは、板状など様々な形状が考えられる。SUは送信ユニットであり、電磁波をメモリユニットMUに向けて送信する。RUは受信ユニットであり、メモリユニットMUを透過あるいは、MUから放出される電磁波を受信する。PUは、演算ユニットであり、受信ユニットRUから与えられた受信信号に対して信号処理を行い、記憶ユニットMU中に記録されたデータの配置とその値を計算する。MFUは、磁場発生ユニットであり、必要な磁場をメモリユニットに与えるためのものである。CUは、制御ユニットであり、MUの回転や上下移動あるいは、傾きなどを制御する。また、図3や図4に示された表現方法で記録された場合、演算ユニットPUでコード変換を行い、8ビットに直してから出力してもよい。これにより、外部のプロセッサ等と接続されるインターフェースは、8ビットや16ビットといった通常用いるビット幅で構成できる。
本実施例では、演算ユニットPUに、外部から読み出しコマンドとアドレスが入力されると、入力されたアドレスに相当するデータの値が出力される。具体的な読み出し動作については、後述する。なお、以下では、電磁波や磁場、電場の発生方法、電磁波の受信方法あるいは、スペクトル解析などの信号処理については説明を省略する。これらについては、電気工学の教科書に記載されており、一般的な知識を有するエンジニアであれば必要な装置の設計が可能である。
図12に、図11の実施例におけるデータの記録に適した物質の例を示す。本実施例は、読み出しに、核磁気共鳴による電磁波の吸収あるいは、放出を利用する場合の物質の実施例である。
記憶媒体MMのメモリセル以外の部分の材料としては、核磁気共鳴を起こさないシリコン(Si)、タングステン(W)等で構成することができる。シリコンは、安定な物質であり長期保存に適する、また、集積回路用として大量に出回っているので入手し易いという利点がある。タングステンは金属であるので、シリコンやガラスより割れにくく融点も高いというメリットがある。
データを記録する小領域であるメモリセルとしては、中性子あるいは、陽子のいずれか一方、あるいは、両方が奇数の元素、例えば、水素(H)、タンタル(Ta)、銀(Ag)、金(Au)などを含む物質を用いることが可能である。これらは、純粋な元素として利用する必要はなく、化合物あるいは、混合物として利用しても共鳴の周波数などの特性が異なるだけで共鳴現象を利用することができる。なお、メモリセルに水素を用いる場合には、気体ではメモリセルの位置に固定することが困難であるので、アモルファスシリコンに結合させて用いればよい。核磁気共鳴は元素そのものが持つ性質であり、性質そのものが劣化したりしないのでデータの長期保存に適している。また、メモリセルを構成する物質としては、核磁気共鳴に加えて、電子スピン共鳴、強磁性体共鳴、反強磁性体共鳴のうち、少なくとも1つの共鳴現象を起こす物質であればよい。
このように、記憶媒体MMのメモリセル以外の部分の材料としては、電磁波の吸収、放出が無視できるか、少なくともメモリセルに対して電磁波の吸収、放出が小さい材料を用い、かつ、メモリセルに核磁気共鳴が起こる材料を用いることにより、メモリセルを構成する材料の元素そのものの性質を利用して情報を記憶することが可能となり、情報を不揮発に記憶することが可能となる。
しかし、メモリセルを構成する物質や記憶媒体を構成する物質の組み合わせによっては、固体であっても、記憶媒体中でメモリセルを構成する物質が拡散して、読み取りに支障が出る場合も考えられる。その場合には、拡散係数の小さい物質の組み合わせを選択するか、メモリセル部分に拡散を防止するバリア層を施すなどの対策が有効である。
また、記憶媒体MMを図12に記載されたメモリセル用の物質を混入した材料を用いて、一様に作成し、メモリセルを構成する部分に、局所的に熱変性を起こしてデータを書き込むことも可能である。この熱変性の結果、所謂ケミカルシフトと呼ばれる現象と同様に、電磁波の応答特性を変化させることができる。核磁気共鳴を起こす元素そのものは、もちろん変性しないが、周囲の分子の構造が変化したり、核磁気共鳴を起こす元素の局所的な密度が変化したりして、吸収あるいは、放出スペクトルにおける特定周波数の電磁波の緩和時間や、強度を変調することが可能となる。従って、メモリセル以外の物質と、メモリセルの物質と異ならせた場合と、同じ効果を得ることが可能となる。なお、特許文献3と異なり熱変性により得られたメモリセルは、外部から磁場等を与えなくとも安定に存在するため、不揮発に記憶することが可能となる。この場合、記憶媒体MMに使用する材料を1つにすることができるが、MM−BASEにおいても電磁波の吸収、放出が行われるが、熱変性により電磁波の吸収、放出の違いを得ることができるため、データを読み出すことができる。
なお、上記における局所的な熱変性を起こすには、電磁波の共鳴吸収を利用する方法や、レーザなど強力な電磁波を局所的に集光する方法などが利用できる。これらの方法については、図16(b)の実施例について後述するので、ここでは省略する。
以下では、図13、14の実施例を用いて、核磁気共鳴でデータを読み出す方法を述べる。図13は、そのために必要な記憶媒体の回転を示す実施例であり、図14は、読み出しの手順を示した実施例である。図13においては、z方向とx方向にのみ、依存性を持つ傾斜磁場を与える。例えば、x、y、z方向に等間隔Pで、1000個ずつのメモリセルを配置した場合、傾斜磁場Hの空間座標依存性は、
H(x,z)=1000(z/P)+x/P・・・ (1.5)
などとすればよい。なお、x,zは、0,P,2P,3P〜999Pとなる。そして、電磁波をy方向から照射する。その時の吸収もしくは、放出される電磁波のスペクトルを求め、少しずつz軸の周りに回転させながらデータを収集する。こうして得られたある回転角θにおいて、観測された電磁波の特定の周波数成分は、対応するz−x座標におけるy軸、つまり、電磁波の照射方向にメモリセルの吸収あるいは、放射する電磁波の強度を積分したものとなる。つまり、コンピュータトモグラフィの射影像と数学的に等価なものが得られる。ここで、z軸の周りに記憶媒体MMを回転させることで、y軸方向の積分値をz軸に垂直な各断面において、それぞれ1回転分測定することができる。1回転分の積分値を測定できれば、コンピュータトモグラフィが可能となり、高速なデータ読み出しができる。
H(x,z)=1000(z/P)+x/P・・・ (1.5)
などとすればよい。なお、x,zは、0,P,2P,3P〜999Pとなる。そして、電磁波をy方向から照射する。その時の吸収もしくは、放出される電磁波のスペクトルを求め、少しずつz軸の周りに回転させながらデータを収集する。こうして得られたある回転角θにおいて、観測された電磁波の特定の周波数成分は、対応するz−x座標におけるy軸、つまり、電磁波の照射方向にメモリセルの吸収あるいは、放射する電磁波の強度を積分したものとなる。つまり、コンピュータトモグラフィの射影像と数学的に等価なものが得られる。ここで、z軸の周りに記憶媒体MMを回転させることで、y軸方向の積分値をz軸に垂直な各断面において、それぞれ1回転分測定することができる。1回転分の積分値を測定できれば、コンピュータトモグラフィが可能となり、高速なデータ読み出しができる。
なお、核磁気共鳴においてSN比の高いデータを得るには、よく知られているように強い磁場を記憶媒体MMに印加する必要がある。しかし、場合によっては強い磁場を発生することが、装置が大きくなるあるいは、大きな電力を消費する(電磁石の場合)などの理由で困難な場合がある。その場合には、図15に示すような実施例が有効である。
本実施例では、メモリセル部分に微小なコイルと容量からなる共振回路を封入している。微小な共振回路は、例えば、カーボンによって形成することが可能である。その製造方法については、例えば、特許文献4に記載されている。このようなカーボンによる微小なコイルは、サイズによってカーボンマイクロコイルあるいは、カーボンナノコイル等と呼ばれている。電磁波との共鳴周波数は、ナノメートルサイズのカーボンナノコイルでは光の領域、マイクロメートルサイズのカーボンマイクロコイルでは、高周波の電波領域とすることが可能であり、共鳴周波数に合せて本特許を適用することが可能である。前者は、負の屈折率を持つレンズなどへの応用が検討されており、後者は、例えば、電磁波シールド材として用いられているものである。
図13の実施例を適用するためには、共振周波数の空間依存性を持たせる必要があるが、カーボンによる微小なコイルでは、コイルの周りの誘電体による規制容量が共振回路のキャパシタとして作用するので、磁場の代わりに傾斜電場を印加することによって共鳴周波数の空間座標依存性を持たせることができる。なお、傾斜電場を印加する代わりに、メモリセルの空間座標に応じてコイルの巻数の異なるものもしくは、コイルを固定する充填材を異なる透磁率を有するものを利用することも可能である。これにより、傾斜電場を生成する必要がなくなる。
このように、メモリセルにコイルを含ませることにより、特殊な永久磁石や、大きな電流を消費する電磁石による外部磁場を必要としないことがメリットとなる。なお、メモリセルは、これまで述べてきたように、記憶媒体MM内部の記憶領域MAに3次元的に配置されている。
このような、3次元的にメモリセルを配置した記憶媒体MMの製造方法において、様々な製造方法が考えられるが、その中でも製造が容易となる方法について、図16を用いて説明する。図16(a)は、MM−BASEとメモリセルとを異なる物質で構成する場合の製造方法を示している。最初に、例えば、シリコンなどのウエハで予め円盤状の記憶媒体のスライスを準備する(STEP1−1)。次に、スライスにおける所望の位置に貫通孔を開けて図14のメモリセル材料を埋め込む(STEP1−2)。その後、STEP2でメモリセル材料を埋め込んだスライスを複数枚積み重ね、接着することで、1つの記憶媒体MMとする(STEP1−3)。このように、記憶媒体MMを製造することで、スライス毎にデータを書き込んでおけるので、大量に作成する場合には、価格を下げることが可能である。
図16(b)は、熱変性によりメモリセルを構成する場合の製造方法を示している。まず、図12に記載されたメモリセル用の物質を混入した材料を用いて、記憶媒体MMを一様に作成する(STEP2−1)。次に、外部磁場により媒体内部の記憶領域MA内部の共鳴周波数が空間座標毎に異なる状態にしておく(STEP2−2)。その後、この状態でデータを変えたいメモリセルの共振周波数を持つ強力な電磁波を照射する(STEP2−3)。こうすると、その共振周波数を持つメモリセルに選択的に熱変性を起こすことができる。なお、外部磁場と電磁波を用いる代わりに、レーザによる照射でも熱変性を行わせることができる。外部磁場と電磁波を用いた場合は、物質の透過性がよいので記憶媒体MMに使用する物質の選択の幅を広げることができる。一方、レーザを用いた場合は、記憶媒体MMの物質としてレーザを透過する物質とする必要があり、材料の選択の幅は小さくなるが、レーザを収束させるレンズ位置を制御することで必要な場所に書き込むことが可能となり、書き込みが容易になるメリットがある。レーザの場合は、短パルスレーザ、特にフェムト秒レーザなどの光を集光すると、そのレーザの波長を透過する媒体でも、その内部に変性を起こすことが可能である。
以上、上記図11から述べてきた磁気共鳴を利用した実施例によれば、3次元状にデータを保存するので一般的な半導体記憶装置のような2次元記憶と比較して、微細加工に頼らずに高集積な記憶が可能である。また、特許文献2に記載された方法とは異なり、メモリセルが記憶媒体MMとは別の物質で保存されているので、外部磁場がなくてもデータが不揮発的に保存される。さらに、固体状の媒体中に密閉してデータが保存され、それが非接触で読み出されるため、データを長期間保存することが可能である。すなわち、電磁波を遮断するケースに保存しておけば、通常の温度や湿度によってデータが失われることはない。
これまで述べて来た実施例では、記憶データを固体中に3次元的に配置して、その座標を光あるいは、ラジオ波などの応答と演算により求めているが、このとき、本来のデータの他に座標の基準となるデータを印として記録しておくと、便利である。例えば、回転角の始点や終点の基準となる印、回転軸の基準となる印あるいは、データの記憶領域の範囲や、層の番号を示す印などをデータと同じ方法で、所望の位置に記憶することができる。これらがあると、読み取り装置に媒体を設置するための基準となるだけではなく、レンズの収差、印加する磁場の傾きの誤差などを読み取ったデータから演算によって補正する際の基準データとして利用することができる。本発明によれば、頑丈な記憶媒体の内部にデータを密閉して保存することができるため、貴重な映像や文献あるいは、文化財のデータをデジタルデータとして非常に長期間に渡って保管するのに適している。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更や工夫が可能であることは言うまでもない。
本発明による情報記憶装置は、メモリセルを3次元に配置することによる記憶密度の向上を可能とする。また、記憶領域MAを固体である記憶媒体MAの内部に封印しているので、情報を、頑健、かつ、長期的に保存することが可能となる。
具体的には、記録媒体の内部に、3次元状に記録された情報のメモリセルのピッチに異方性を持たせることにより、媒体と媒体に照射する電磁波の相対的な回転角度を変化できる範囲に制限があっても、コンピュータトモグラフィの手法を利用して安定した読み出しが可能となる。
さらに、上記回転角度の制限の基で、常に電磁波が当たる部分に包含される領域を記録領域として用いることにより、回転角度によって一部のメモリセルからの情報が得られないということを回避できる。
また、nビットの単位でコード化されたテキストデータやバイナリデータをnより大きなmビットのデジタルデータで、1の数の上限がnより少ないk個に限定される表現に変換して記録することにより、書き込み工程を削減でき、記録媒体の製造速度の向上やコストダウンが可能となる。上記mビットコードを板と直角な方向に並べることにより、射影像の上に重なって見える‘1’のメモリセルの数が減少することが期待できる。このため、透過光の強度が極端に減少することを避けることができるので、受信側のダイナミックレンジやSN比率の不足によって読み出しの信頼性が下がることを防止できる。
以上から、本発明は、例えば、長期的な保存が必要な公文書や文化財に関する画像、音声、テキストデータの保存あるいは、絶滅が危惧される稀少生物の遺伝子情報などを保存し、後世に伝えるなどの利用が可能である。
なお、本発明における記憶媒体に、作成日時、記憶内容を示すタイトル、作成者や、読み出し方法などを含むメタデータを付加しておくと、作成されてから長期間が経過しても、記憶内容に関する情報がわかって便利である。このメタデータは、上記実施例の方法で読み出すことのできる形式で記憶媒体に書き込んでおいてもよいし、容易に判別できるようにわかりやすい文字パターンや模様として記録してもよいことはもちろんである。なお、特に日時に関する情報は、現在の西暦では、遠い将来の新しい暦との対応が不明となる場合があり得る。そのような場合は、例えば、恒星や惑星の位置あるいは、日食などの天文現象を西暦と共に記憶しておくとよい。恒星の位置は、その固有運動や地球の歳差現象で数百年から数千年の間に相対位置や点の北極からの位置が変化する。また、惑星の位置は、約一年を周期とする地球の公転や数年から数十年を周期とする惑星自身の公転によって、恒星に対する位置を日々変える。これらの情報に加えて、さらに、日食などの情報があると、日付の推定をかなり正確に行うことが可能となる。
DRL0、DRL−θim、DRL+θim:直接光、LIGHT:照明光、θa:媒体外部における光線と入射面の法線とのなす角度、θi:媒体内部における光線と入射面の法線とのなす角度、θim:θiの最大値、CMD:コマンド、ADD:アドレス、DATA:データ、RU:受信ユニット、WU:書き込みユニット、MU:記憶ユニット、LU:照明ユニット、CU:制御ユニット、PU:演算ユニット、MM:記憶媒体、MA:記憶領域、MAi:記憶領域の断面スライス、RLS:読み出し用光源、WLS:書き込み用光源、CL、CL1、CL2、CL3:コリメータレンズ、OL:対物レンズ、CRL1、CRL2:補正レンズ、RA:回転軸、CH:撮像チップ、PKG:パッケージ、PJ:射影像、CELL、CELL‘1’:メモリセル、MFU:磁場発生ユニット、COIL:コイル、C:キャパシタ。
Claims (5)
- データを3次元配置された複数の微小領域に格納する記憶媒体と、
上記記憶媒体の第1の平面に電磁波を照射する照射ユニットと、
上記記憶媒体を透過した電磁波もしくは、上記電磁波を吸収した後に放射された電磁波を受信する受信ユニットと、
上記受信ユニットで得られた情報を演算し、外部からの要求に応じたデータを出力する演算ユニットと、を具備し、
上記記憶媒体は前記第1の平面に平行なn個の記録面を有し、
上記記憶媒体は、前記第1の平面に垂直な方向の線に沿って、m個の記録済み前記微小領域を有し、
前記mは、前記nより常に小さいことを特徴とする情報処理装置。 - 請求項1において、上記記憶媒体が、石英ガラスもしくは、酸化アルミニウムであることを特徴とする情報処理装置。
- 請求項1において、上記記憶媒体内部の上記微小領域の少なくとも一部は、電磁波の屈折率あるいは吸収率が、上記微小領域の周囲の記憶媒体とは異なることを特徴とする情報処理装置。
- 請求項1において、上記記憶媒体内部の上記微小領域は、記憶媒体内部の位置によって吸収もしくは、放射される電磁波の周波数が異なることを特徴とする情報処理装置。
- 請求項1において、上記情報処理装置は、上記記憶媒体を、上記照射する電磁波の進行方向に対して回転する機能を具備したことを特徴とする情報処理装置。
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