JP5439618B2 - 肉牛用飼料及び飼育方法 - Google Patents

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本発明は、牛の嗜好性を悪化させることなく尿石症を予防し、肉色及び脂肪交雑を改善し得る肉牛用飼料及び方法に関する。
牛の尿石症は、腎盂や膀胱で結石が形成されて、輸尿管や尿道を閉塞することにより障害を生じる疾患であり、その発症要因としては、濃厚飼料の過給及び粗飼料の給与不足、飼料中のカルシウム/リン比の不均衡(低カルシウム・高リン)、マグネシウムの過給、尿のアルカリ化、ビタミンAの欠乏、飲水量の減少、並びに早期(4ヶ月齢以前)の去勢などが指摘されている(非特許文献1及び2)。尿石症は、症状が重篤化すると食欲不振となり発育成績が低下する他、腎盂腎炎、腎膿瘍、尿管炎、膀胱炎、尿道炎などの原因となり、尿道が完全に閉塞すると膀胱や尿道の破裂を招き腹膜炎や尿毒症を発現させ、死亡若しくは枝肉の廃棄処分に至ることもある(非特許文献1)。
わが国における肉牛肥育では、濃厚飼料を長期間(黒毛和種の場合通常は30ヶ月間)に亘って給与するのが一般的であることに加え、近年では脂肪交雑等の肉質を向上させることを目的に、ビタミンAの供給を制限する飼養方法が広く普及しており、尿石症の発生が大きな問題となっている。尿結石には、リン酸カルシウム塩、リン酸マグネシウム塩、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、ケイ酸塩などを主成分とするものが報告されているが、わが国では主にリン酸マグネシウム塩に起因する尿石症が問題となっている(非特許文献1、2、3及び4)。
尿石症の予防若しくは治療方法としては、飲水の加温による飲水の摂取促進(寒冷期)、食塩の飼料添加、カルシウムの飼料添加、ビタミンAの給与、塩化アンモニウムなど尿を酸性化させる陰イオン塩の供給、ウラジロガシエキスの投与、鎮痙剤の投与、外科的療法などが知られている(非特許文献1)。この他、給与飼料のタンパク/デンプン比が高いと尿がアルカリ化するため、タンパクの低減とデンプンの増給が尿石症予防に寄与するとの報告もある(非特許文献5)。
より具体的には、今村らは、宮崎県内農家における黒毛和種雄子牛の調査において、制限給水しているグループは自由飲水のグループに比べ陰毛に結石が付着している割合が多かったこと、結石が付着している個体では給与飼料のリン含有量が多い傾向を認めたこと、並びにリンを多く含むふすまを給与しているグループでは結石の付着が多く、ふすまの給与を中止しカルシウム/リン比を高めると尿道閉塞が減少したことを報告している(非特許文献6)。また、Peterssonらは、ヴィール子牛において、代用乳のマグネシウム含有量を0.1重量%から0.6重量%まで高めると腎臓内及び膀胱内に結石が認められたが、食塩を2重量%添加すると結石が発生した個体が減少したこと、代用乳を溶解するお湯の量を増やすと結石を発生する個体数が減少したこと、結石はカルシウムアパタイト(リン酸カルシウム)又はカルシウムアパタイトとストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)の混合物であったことを報告している(非特許文献7)。また、Kallfelzらは、離乳後の雄子牛において、飼料中のマグネシウム含有量を1.4重量%まで高めると尿石症が発生し、結石はカルシウムアパタイトであったが、飼料中マグネシウム含有量を高めると同時にカルシウム含有量を1.8重量%まで高めると尿石症は発生しなかったと報告している(非特許文献2)。奥村らは、尿石症が多発している黒毛和種去勢牛の肥育において、肥育前期の乾草増給、導入時(10ヶ月齢時)及び肥育中期における30万IUのビタミンAの経口投与、及び肥育後期の飼料へのビタミンAの添加を実施したところ尿石症の発生が減少したこと、並びに肥育牛の膀胱内から得られた結石はウラジロガシ製剤によって溶解したことを報告している(非特許文献4)。
石田は、塩化アンモニウムの供給又は給与飼料のイオンバランス(Dietary Cation−Anion Difference、以下、DCADということがある)の低減による尿の酸性化が尿石症予防に有効であることを報告し(非特許文献8)、Taubeらは、肥育牛に被覆塩化カルシウム製剤を75g/日供給すると尿pHが低下し尿中リン含有量が減少したことを報告している(非特許文献9)。Huntington及びEmerickは、ヘレフォード×アンガスの交雑肥育牛において、リン含有量が乾物換算で0.3重量%の飼料に炭酸カルシウムを添加して飼料中カルシウム含有量を乾物中0.3、0.6、0.9又は1.2重量%とし、それぞれのグループに20頭ずつ配分して試験を行ったところ、腎臓又は膀胱内に結石を認めた個体数は、0.3重量%のグループで12頭、0.6重量%で5頭、0.9重量%で5頭、1.2重量%4頭となり、結石の主成分はシュウ酸カルシウムであったことを報告している(非特許文献3)。塩崎らは、黒毛和種去勢肥育牛において、炭酸カルシウムを添加して飼料中カルシウム/リン比を1にまで高めた飼料を、肥育期間を通じて給与すると、尿アンモニア添加改良法による尿中結晶出現率が低下したことを報告している(非特許文献10)。一方、Yanoらは、ヒツジにおいて、飼料中リン含有量が0.6重量%の条件下では、炭酸カルシウムを添加して飼料中カルシウム含有量を0.1、0.6又は1.2重量%とすると、飼料中カルシウム含有量が増えるにつれ尿pHは高まるが尿中リン含有量は減少し、0.1重量%のグループのみで腎臓内に結石が認められたが、飼料中リン含有量が1.1重量%の条件下では、炭酸カルシウムを添加して飼料中カルシウム含有量を0.1又は1.3重量%とすると、尿中リン含有量はむしろ1.3重量%のグループの方が高く、いずれのグループでも腎臓内に結石が認められたことを報告している(非特許文献11)。また、Stewartらは、ヒツジにおいて、3.4重量%のケイ酸と0.29重量%のカルシウムと0.26重量%のリンを含む基礎飼料に、炭酸カルシウムを添加してカルシウム含有量を0.6重量%まで高めた飼料を給与したグループ(L区)では、基礎飼料を給与したグループ(C区)よりも腎臓内に結石を認めた個体数が増加する傾向であり、カルシウム含有量を0.6重量%とし重曹を1.0重量%添加したグループ(LS区)ではC区より統計的に有意に腎臓内に結石を認めた個体数が多く、カルシウム含有量を0.6重量%とし塩化アンモニウムを1.0重量%添加したグループ(LA区)では、L区よりも腎臓内に結石を認めた個体数と結石の重量はやや減少し、試験羊から得られた結石の主成分はケイ酸であったことなどを報告しており(非特許文献12)、炭酸カルシウムの添加は尿pHを上昇させるため、実際の生産現場ではむしろ尿石症を増加させるとの指摘もある(非特許文献5、非特許文献8)。
飲水の加温による飲水の摂取促進は、加温設備を必要とするため必ずしも普及しておらず、食塩の飼料添加は、経験的に肉のしまりを悪化させるとの意見があり、過度の添加は敬遠されている。ビタミンAの供給は、脂肪交雑等の肉質を悪化させるリスクを抱えており(非特許文献13)、塩化アンモニウムや塩化カルシウム等の尿酸性化剤は嗜好性が悪く摂取量を低下させると考えられている(非特許文献8)。タンパクの低減とデンプンの増給は、尿石症への効果が十分に検証されておらず、またタンパクやデンプンは通常、発育成績や肉質の観点から供給量が決められ、さらにデンプンの過給はルーメンアシドーシスを招くため、必ずしも尿石症予防の観点で供給量を調整することはできないのが現状である。ウラジロガシエキスの投与、鎮痙剤の投与、外科的療法等は、尿石症発症牛への治療として行われており、尿石症の予防策として日常的に実施するのは、費用や労力の点から現実的でない。このように、尿石症の有効な予防策は確立されていないのが実情である。
黒毛和種去勢肥育牛において、飼料中の中性デタージェント繊維(以下、NDFという)含有量を乾物換算で31.4重量%まで高めると乾物摂取量は最大となること、飼料中NDF含有量とロース芯脂肪含有量には正の相関が認められること、飼料の糖・でんぷん・有機酸類(NCWFE)含有量が低く、NDF含有量が高いと、BCS(Beef Color Standard:肉色の評価基準)が低く、淡い肉色になる傾向にあることが報告されている(非特許文献14)。また、一般的な濃厚飼料に比べ、粗飼料を主体とし繊維含有量が多い飼料をヒツジ及び子牛に給与すると、リンの腸管吸収率が低下し、腎臓におけるリンの再吸収が促進され、尿中へのリン排泄量が抑制されることが報告されている(非特許文献15)。しかしながら、NDFを多く含む代表的な飼料原料である、ふすま、米ぬか、脱脂米ぬか、コーングルテンフィード、穀物由来エタノール副産物(とうもろこしジスチラーズグレインソリュブル、小麦ジスチラーズグレインソリュブル、精白米ジスチラーズグレインソリュブル等)等は、リンとマグネシウムを多く含むため尿石症の発症リスクを高めるという一面を有する。このような原料を利用してリンとマグネシウム含有量を低レベルとしながら多量のNDFを供給するのは高コストの処理なくしては困難であり、事実上尿石症の発症を低減させつつ摂取量及び肉質向上を図ることは困難であった。また、これらのNDF供給原料以外にも、例えば菜種粕のように、NDFが比較的多い一方でリンとマグネシウムを多く含む原料は、尿石症のリスクを高める懸念から肉牛用飼料への利用は限定的になりがちであった。
肉色は、消費者の購買意欲に影響する重要な格付形質であり、一般には色が淡くBCSが低い方が好まれる傾向にある。ミオグロビンは筋肉中に存在する、ヘム鉄を含有する色素タンパク質であり、ミオグロビンの含有量と質が牛肉色を左右する。すなわち、ミオグロビンは、と畜後、乳酸の生成により肉pHの低下が進むと鮮赤色のオキシ型の形態をとるが、pHが十分に低下しない場合はミトコンドリアの酸素消費によりオキシ型になりにくく、暗赤色の還元型として存在することになり、その結果肉色は濃くなる。しかしながら、わが国で肥育された肉牛においては、pHよりもミオグロビンの含有量の方が肉色への影響が大きく、黒毛和種、交雑種またはホルスタイン種のいずれにおいても、ミオグロビン含有量は肉色(L*値:明度)と強い負の相関があり、BCSが低いほど牛肉中ミオグロビン含有量が少ないことが報告されている(非特許文献16)。
鉄平衡は、主に消化管における鉄吸収によって制御されると考えられており(非特許文献17)、消化管からの鉄吸収を減少させることで筋肉中のミオグロビン含有量を低減させられることが示唆されている。ヴィール子牛において、代用乳中の鉄含有量を10〜100μg/gとして実施した試験では、鉄含有量が多いと血中のヘモグロビン含有量と筋肉中のミオグロビン含有量が高まり、L*値が低くなることが報告されている(非特許文献18)。さらに、ヴィール子牛において、7週齢からと畜(21〜23週齢)まで代用乳中の鉄含有量を5ppm高くすると、17週齢以降の血中ヘモグロビンと19週齢以降の血清鉄濃度が高まり、肉色が黒くなったこと、並びに銅の吸収が促進されたことが報告されている(非特許文献19)。
肉牛用飼料におけるカルシウム供給源としては、通常、嗜好性、価格、扱いやすさ等の点から、炭酸カルシウムが用いられている。カルシウムのヒトにおける鉄の吸収に対する影響に関し、影響しないか、或いは阻害するとの報告がある(非特許文献17)。肥育牛においては、反対に、炭酸カルシウムの飼料添加が鉄の吸収を促進すること、並びに炭酸カルシウムの添加量を1.07重量%から0.4重量%に低減すると、牛肉中ミオグロビン含有量が有意に低下することが報告されている(非特許文献16)。
硫酸カルシウムは、これまで主に分娩前後の乳牛が発症する乳熱(分娩性低カルシウム血症)の予防を目的として、分娩前の乾乳牛への供給が研究されており、代謝性アシドーシスを誘導し尿pHを低下させること、分娩後24時間以内の血漿カルシウム濃度を増加させ、血中リン濃度の低下を抑制することが報告されている(非特許文献20、非特許文献21)。この他、離乳後の未経産牛および繁殖牛の放牧において濃厚飼料の摂取量を制御する目的として、農業用石膏の使用が検討されており、綿実粕又は綿実粕と圧ぺん大麦からなる濃厚飼料に農業用石膏を10〜35重量%混合すると、濃厚飼料の摂取量を少ない水準に留められるが、未経産牛においては3日間で1頭当たり5ポンド(2.27kg)、繁殖牛においては3日間で1頭当たり11.4ポンド(5.16kg)の農業用石膏を摂取すると体調不良に陥る個体が発生し、未経産牛では死に至るものもあったことが報告されている(非特許文献22)。
イオウの過剰摂取は銅の吸収阻害や大脳皮質壊死症を招くことが知られており、乾物換算で飼料中0.4重量%以下を推奨する報告や(非特許文献23及び24)、乾物換算で飼料中0.56重量%を超えると顕著に大脳皮質壊死症が増加するが、イオノフォア系抗生物質の投与により大脳皮質壊死症の発症リスクを軽減できるとの報告がある(非特許文献25及び26)。
銅は血中では大部分がセルロプラスミンとして存在しており、ヒトでは、セルロプラスミンはフェロキシダーゼとして働き、2価鉄を3価鉄へ酸化し鉄のトランスフェリンへの結合を促進することを介し、貯蔵鉄の輸送に関与していることが知られている(非特許文献17)。このように、銅は鉄の代謝と関連すると考えられるが、牛においてイオウの給与が鉄代謝に及ぼす影響は明らかでない。
一方、本発明者の知る限りでは、わが国のように濃厚飼料を多給することの多い肉牛の肥育において、硫酸カルシウム又は石膏を供給又は飼料に配合した事例は報告されていない。また、肉牛の尿石症や肉質に対する硫酸カルシウム又は石膏の効果を示す報告もない。
前出吉光,小岩政照監修 デーリィマン社発行「新版 主要症状を基礎にした牛の臨床」p.353―356 Kallfelz et al.1987.Cornell Vet.Jan;77(1):33−45. Huntington and Emerick.1984.Am.J.Vet.Res.45(1):180−182 奥村ら.2006.岩獣会報.32(1):4−8 第26回 尿石症のお話 その2[平成24年5月11日検索] インターネット http://www.ja-job.com/Portals/1/sonota/hiiku/025.pdf 今村ら.2005.家畜診療.52巻12号.p.737 Petersson et al.1988.J.Dairy Sci.71:3369−3377 石田.2009.牧草と園芸.第57巻第5号.p.17−20[平成24年5月13日検索] インターネット http://www.snowseed.co.jp/bokusou_engei/magazine/09_10/0910_05.pdf Taube et al.2010.Archives of Animal Nutrition.64(2):111−120 塩崎ら.2005.鳥取県畜産試験場研究報告.33号.p.22−27 Yano et al.1975.Jap.J.Zootech.Sci.46(11):642−648 Stewart et al.1990.J.Anim.Sci.68:498−503 岡.2006.肉牛ジャーナル.7月号p.87−91.8月号p.2−47.9月号p.48−53 橋端ら.1995.畜産試験場研究資料.第8号.p.1−14 Scott.1972.Quarterly Journal of Experimental Physiology.57:379−392 河野幸雄.2010.家畜診療.57巻8号.p.465−470 木村修一,小林修平翻訳監修.株式会社建帛社発行.「最新栄養学〔第8版〕―専門領域の最新情報―」p.324−341,386−396 MacDougall et al.1973.J.Sci.Fd Agric.24,1255−1263 Wensing et al.1986.Veterinary Research Communications.10:283−296. Oetzel et al.1991.J.Dairy Sci.74:965−971 Ramos−Nieves et al.2009.J.Dairy Sci.92:5677−5691 Wagnon.1960.Journal of range management.13(6):279−282 独立行政法人農業・食品技術総合研究機構編 社団法人中央畜産会発行 「日本飼養標準肉用牛(2008年版)」p.24 National Academy Press,(株)デーリィ・ジャパン社発行「NRC乳牛飼養標準(2001年・第7版)」 Vanness et al.2009.Nebraska Beef Cattle Reports.p.79−80 Felix and Loerch.2011.Feedstuffs.June 20 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)飼料分析基準[平成25年4月9日検索] インターネットhttp://www.famic.go.jp/ffis/feed/bunseki/bunsekikijun/01_01_04_inorg.pdf#page=5 独立行政法人農業・食品技術総合研究機構編 社団法人中央畜産会発行 「日本標準飼料成分表(2009年版)」 金井正光編著,金井泉原著 金原出版株式会社発行「臨床検査法提要 改訂第30版」p.601−602 金井正光監修,奥村伸生・戸塚実・矢冨裕編集 金原出版株式会社発行「臨床検査法提要 改訂第33版」p.426−428,499−501,505−507,568−569 浅井ら.2005.岐阜県畜産研究所研究報告.(5):54−59 浅井ら.2008.日本畜産学会報.79(1):45−50 Charbonneau et al.2006.J.Dairy Sci.89(2):537−548 日本食肉格付協会牛枝肉取引規格[平成25年4月9日検索] インターネットhttp://www.jmga.or.jp/ Trout.1989.Journal of Food Science.54(3):536−540.
本発明は、以上の技術的背景において、良好な嗜好性を維持しながらも、尿石症予防効果に優れ、肉質を改善し得る肉牛用飼料及び方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、従来困難であった、尿石症の十分な予防効果と、嗜好性の双方を満たす飼料及び飼育方法を求めて鋭意検討を重ねた結果、硫酸カルシウムを飼料へ添加したところ、飼料の嗜好性に悪影響を及ぼさずに、飼料を摂取した牛における尿中のリン濃度の上昇を伴わずに尿pHを低下し、他の陰イオン塩を配合した飼料より尿石症予防効果に優れることを見出した。更に、硫酸カルシウムは、消化管における鉄の吸収を阻害し、ミオグロビン含有量の低減を介して肉色を改善すること、並びにマグネシウムやリンを比較的高濃度含有する飼料を給与しても尿石症の発症を抑制し得るため、NDF供給原料の多用を可能として、脂肪交雑を向上させ肉色をより改善し得ることを見出した。
即ち、本発明は、硫酸カルシウム及び/又はその水和物を、好ましくは乾物換算で0.2〜2.0重量%含む肉牛用飼料、並びに当該飼料を給与する、肉牛の尿石症を予防し、肉色及び脂肪交雑を改善する方法を提供するものである。
試験5における、対照群と試験群の配合飼料と粗飼料の摂取量の1ヶ月ごとの推移を示したものである。 試験5における、対照群と試験群の血清鉄濃度の推移を示したものである。 試験5における、対照群の4号牛の腎臓内に、結石が蓄積されている様子を示す写真である。 試験5における、対照群の4号牛の腎臓内に蓄積されていた結石を総て取り出した状態を示す写真である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明の範囲は、以下の説明によって限定されるものではない。
本発明の飼料は、肉牛に給与するための飼料であり、硫酸カルシウム及び/又はその水和物を有効成分として含有する。後述の実施例で実証する通り、硫酸カルシウムは、飼料に対する肉牛の嗜好性に悪影響を及ぼさず、尿中の無機リン濃度の上昇を伴わずに尿pHを低下させるため、嗜好性及び尿石症予防効果に優れる飼料を可能にする。また、硫酸カルシウムは、消化管における鉄の吸収を阻害し得るために肉色を改善することができる。更に、NDF供給原料を多く含有させた結果、リンやマグネシウムの含有量が高い飼料となった場合であっても、尿石症の発症を抑制することができ、高含有量のNDF供給原料と相まって、肉色を淡くし、脂肪交雑を改善することができる。
硫酸カルシウムの水和物としては、例えば、硫酸カルシウム0.5水和物、硫酸カルシウム二水和物等を挙げることができる。
硫酸カルシウム及び/又はその水和物は、例えば、石膏を利用して配合することができる。石膏は、硫酸カルシウムを主成分とする鉱物であり、無水石膏(CaSO)、半水石膏(CaSO・1/2HO)、及び二水石膏(CaSO・2HO)がある。二水石膏は加熱(120〜150℃)すると水和水を失って半水石膏へ変化し、半水石膏は水を加えると水和して二水石膏となり、凝固する性質を持つ。無水石膏には可溶性と不溶性の2種類が存在し、半水石膏を加熱(180〜190℃)して得られる可溶性無水石膏は、空気中の水分を吸収し再び半水石膏へ戻る性質を有するが、二水石膏を300〜700℃で焼成して得られ、天然にも存在する不溶性無水石膏は、容易に水和反応しない。本発明の飼料では、無水石膏、半水石膏及び二水石膏のいずれか1種又は2種以上に由来する硫酸カルシウム及び/又はその水和物を配合することができる。
硫酸カルシウム及び/又はその水和物の含有量は、飼料の形態に応じて良好な嗜好性と尿石症予防効果を発揮し得る量とすることが好ましい。例えば、配合飼料とする場合には、肉牛の一日当たりの飼料摂取量を考慮の上良好な嗜好性、尿石症予防効果及び鉄の吸収阻害効果を発揮させるために、硫酸カルシウム及び/又はその水和物を飼料中に乾物換算で0.2〜2.0重量%含むことが好ましく、より高い尿石症予防効果と鉄の吸収阻害効果及びイオウ濃度の抑制といった観点から0.3〜1.5重量%含むことがより好ましく、0.5〜1.4重量%含むことがより好ましく、0.6〜1.2重量%含むことが更に好ましく、0.65〜1.0重量%含むことが最も好ましい。
また、混合飼料又は単体飼料とする場合のように他の飼料と組合せて用いられる飼料の場合には、組合せて用いられる他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含み得るが、粗飼料を除く)との1日当りの総量において、上記含有量の硫酸カルシウム及び/又はその水和物を飼料中に含むようにすることが好ましい。
これを、1日当たりの牛1頭に供給される量で見ると、硫酸カルシウム及び/又はその水和物を10〜200g/日・頭供給する形態の飼料が好ましく、15〜160g/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、40〜140g/日・頭供給する形態の飼料がより好ましく、50〜130g/日・頭供給する形態の飼料が更に好ましく、60〜110g/日・頭供給する形態の飼料が最も好ましい。従って、混合飼料等によって硫酸カルシウム及び/又はその水和物を供給する場合には、このような一日当りの供給量を単独で又は他の飼料と共に達成可能な量の硫酸カルシウム等を混合飼料等が含有することになる。通常、混合飼料等は、一日1〜10回、一回当たり10〜1,000g給与されるので、このような硫酸カルシウム等の供給を単独で達成可能な混合飼料等は、通常、硫酸カルシウム及び/又はその水和物を飼料中に乾物換算で5〜70重量%含み、好ましくは10〜50重量%含む。
なお、本明細書に記載する硫酸カルシウム又はその水和物の重量及び重量パーセント濃度は、水和水を除いた硫酸カルシウム、すなわちCaSO換算の重量及び重量パーセント濃度を指す。
本発明の飼料では、硫酸カルシウム等と組み合わせて、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム及び塩化カルシウム等の他のカルシウム供給原料を含んでもよい。但し、これらのカルシウム塩は、嗜好性、尿石症予防効果または鉄の吸収阻害効果のいずれかの点で硫酸カルシウムより劣るため、これらの特性を高いレベルで維持するには含有量は少ない方が望ましい。具体的には、炭酸カルシウムは、嗜好性は良いが尿pHを高めるため尿石症予防効果が低く、更に鉄の吸収にはむしろ促進的に作用し、リン酸カルシウムは、嗜好性は良いが、尿pHを下げる一方で尿中リン濃度を増加させるので、尿石症予防効果は硫酸カルシウムより低く、塩化カルシウムは、尿石症予防効果は硫酸カルシウムと同じく高レベルであるが嗜好性が悪い、という特徴がある。
上述の点から、配合飼料とする場合では、炭酸カルシウムの含有量を飼料中乾物換算で0〜2.0重量%とすることが好ましく、0〜1.0重量%とすることが特に好ましい。同様に、リン酸カルシウム及び塩化カルシウムは、配合飼料中に乾物換算で1.0%以下とするのが好ましい。
また、混合飼料等のように他の飼料と組合せて用いられる飼料では、単独で又は他の飼料と共に炭酸カルシウムを1日当たり0〜200g/頭供給する形態の飼料が好ましく、0〜100g/頭供給する形態の飼料が特に好ましい。このような炭酸カルシウムを単独で供給するための混合飼料等は、通常、炭酸カルシウムを飼料中に乾物換算で0〜40重量%含み、好ましくは0〜20重量%含む。
同様に、混合飼料等のように他の飼料と組合せて用いられる飼料では、単独で又は他の飼料と共に、リン酸カルシウム又は塩化カルシウムを1日当たり0〜100g/頭供給する形態の飼料が好ましい。混合飼料等は、通常、リン酸カルシウム及び/又は塩化カルシウムを飼料中に乾物換算で0〜30重量%含み、好ましくは0〜20重量%含む。
本発明の飼料は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩酸等の尿pHを低下させる効果を有する陰イオン塩を含んでもよい。もっとも、これらの陰イオン塩は飼料の嗜好性を低減するため、その含有量は低い方が好ましく、具体的には乾物換算で飼料中2重量%以下とすることが好ましく、1重量%以下とすることがより好ましい。また、混合飼料等のように他の飼料と組合せて用いられる飼料では、単独で又は他の飼料と共に1日当たり0〜100g/頭供給する形態の飼料とすることが好ましい。混合飼料等は、通常、これらの陰イオン塩を飼料中に乾物換算で0〜30重量%含む。グルタミン酸発酵粕及びグルタミン酸発酵副産液は、塩素とイオウを多く含む尿酸性化剤であるため、上記の陰イオン塩と同様に本発明の飼料に含んでも良い。もっとも、グルタミン酸発酵粕及びグルタミン酸発酵副産液は飼料の嗜好性を低減するため、その含有量は低い方が好ましい。具体的にはグルタミン酸発酵粕は乾物換算で飼料中4重量%以下とすることが好ましく、2重量%以下とすることがより好ましく、グルタミン酸発酵副産液は乾物換算で飼料中2重量%以下とすることが好ましく、1重量%以下とすることがより好ましい。また、混合飼料等のように他の飼料と組合せて用いられる飼料では、単独で又は他の飼料と共にグルタミン酸発酵粕を1日当たり0〜200g/頭供給する形態の飼料とすることが好ましく、グルタミン酸発酵副産液を1日当たり0〜100g/頭供給する形態の飼料とすることが好ましい。混合飼料等は、通常、グルタミン酸発酵粕を飼料中に乾物換算で0〜30重量%、グルタミン酸発酵副産液を飼料中に乾物換算で0〜15重量%含む。
一方、イオウの過剰摂取による害を防ぎつつDCADを低めて尿石症の発症を低減する観点から、硫酸カルシウムに塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩酸等の塩化物又はグルタミン酸発酵粕を組み合わせて、飼料中のイオウ含有量及びDCADを調整してもよい。具体的には、配合飼料とする場合には飼料中イオウ含有量を乾物換算で0.56重量%以下とし、DCADを−300〜30mEq/kgとするのが好ましく、−250〜0mEq/kgとするのがより好ましく、−200〜−30mEq/kgとするのがより好ましく、−190〜−50mEq/kgとするのが更に好ましく、−180〜−70mEq/kgとするのが最も好ましい。
混合飼料等の他の飼料と組み合わせて使用する飼料の場合にも、同様の観点から、一日当りに給与される混合飼料等とそれに組合せて使用される他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含み得るが、粗飼料は含まない)との飼料全体において、イオウ含有量が上記の量となる形態の飼料が好ましい。典型的な混合飼料は、飼料中イオウを乾物換算で1〜17重量%含有し、DCADが−10,000〜−500mEq/kgであり、好ましくは、イオウを乾物換算で飼料中0.1〜0.4重量%含有し、DCADが0〜200mEq/kgである配合飼料と組合せて用いられる。また、このような配合飼料は通常リン含有量が高く、0.55〜0.85重量%のリンを含む。
なお、本願明細書において、「給与飼料のイオンバランス(Dietary Cation−Anion Difference、 DCAD)」とは、式[Na]+[K]−[Cl]−[S](式中[]は当量値を示す)により求めた飼料中の陰イオンと陽イオンの差を意味する。
本発明の飼料は、好ましくは中性デタージェント繊維(以下、NDFと省略する)を含む。
NDF自体は、尿中へのリンの排泄を抑制して尿中のリン濃度を低減する効果を奏するが、その供給源であるふすま、ぬか等の原料は、通常、リンとマグネシウムを比較的多く含有し、NDF供給原料自体が、尿中のリンおよびマグネシウム濃度を高める原因に成り得るという問題がある。しかし、本発明の飼料では、カルシウム供給源である硫酸カルシウム等が飼料に配合されているため、飼料中のリン含有量が高くなっても飼料を給与された牛の腸管内でカルシウムとリンが不溶性の塩を形成し吸収阻害が起きる。また、カルシウムは、副甲状腺ホルモンの分泌を抑制するため、腎臓におけるリンの再吸収が促進され、尿中へのリン排泄が減少する。また、硫酸カルシウム等は、尿pHを低下させるため、尿中のリンとマグネシウムに由来する尿結石の形成自体を抑制する効果も奏する。この結果、NDF供給原料の配合に伴う問題が解消され、NDFと、硫酸カルシウム等との協働作用により、尿結石症の予防効果を高めることができる。また、NDFを配合することは、飼料の摂取量及び肉質の向上といった点からも有益である。特に、わが国では、濃厚飼料を多給して長期間飼育する肉用牛肥育が広くなされており、濃厚飼料中のNDF含有量を一定の範囲で高めることは有効である。
ここで、本明細書において「中性デタージェント繊維(NDF)」とは、セルロース、へミセルロース、及び/又はリグニンからなる繊維性物質(これらは細胞壁を構成する主な成分である)を意味し、NDF値は、耐熱性α−アミラーゼを加えながら、中性デタージェント溶液で試験飼料を煮沸した後、残渣から灰分を除いた画分の質量を計測することによって求められる。測定方法は、飼料分析基準(非特許文献27)に準ずる。
また、本明細書において「非繊維性炭水化物(NFC)」とは、中性デタージェント溶出部分に含まれる炭水化物を意味し、主にデンプン、糖、有機酸、ペクチンからなる。NFC値は、乾物重量−(NDF+粗蛋白質+粗脂肪+粗灰分)により求められ、測定方法は、飼料分析基準(非特許文献27)に準ずる。
NDF供給原料としては、例えばふすま、麦ぬか、米ぬか、コーングルテンフィード、コーンハル等の小麦、大麦、米、とうもろこし等の穀物を精白する際に生じる副産物;とうもろこし、小麦、精白米等の穀物を用いてエタノールを製造した際の残渣であるDDGS等の穀物由来エタノール副産物;大麦から主にデンプンを除去した際の残渣であるビール粕;大豆種実の外皮である大豆皮;醤油製造における固形残渣である醤油粕;大豆から豆乳を製造した残渣である豆腐粕;並びに脱脂米ぬか、コーンジャーム粕等の繊維質を主成分とする穀物副産物の脱脂処理産物;綿実粕、ごま粕、やし粕、ひまわり粕、サフラワー粕、パーム核粕等の繊維質を主成分とする油糧作物の脱脂処理産物等を挙げることができ、本発明の飼料では、ふすま、米ぬか、脱脂米ぬか、コーングルテンフィード、穀物由来エタノール副産物(とうもろこしジスチラーズグレインソリュブル、小麦ジスチラーズグレインソリュブル、精白米ジスチラーズグレインソリュブル等)といったリンとマグネシウムを多く含む原料も比較的多く含有することができる。また、これらのNDF供給原料以外にも、例えば菜種粕のように、NDFが比較的多い一方でリンとマグネシウムを多く含み、尿石症のリスクから肉牛用飼料で多用できなかった原料についても、本発明の飼料では多用が可能である。
本発明の飼料においては、飼料の摂取量及び肉質の向上並びに尿石症の予防効果の増大の点からNDFを比較的多量に含有することが好ましく、具体的には、NDFを乾物換算で20〜35重量%含むことが好ましく、23〜33重量%含むことがより好ましく、26〜32重量%含有することが特に好ましい。
また、本発明の飼料は、好ましくはリンを乾物換算で0.55〜0.85重量%含有することができ、0.65〜1.0重量%含有することもできる。また、マグネシウムを乾物換算で0.25〜0.40重量%含有することができ、0.30〜0.50重量%含有することもできる。リンを多く含む飼料においては、最も一般的なカルシウム供給原料である炭酸カルシウムを添加すると、尿石症の発症を抑制できないか、むしろ助長する。
一方、本発明の飼料では、リンやマグネシウム含有量が多い飼料でも尿石症のリスクが高くならないので、本発明は、このような高リンまたは高マグネシウム含有飼料で特に有効である。
混合飼料又は単体飼料などの他の飼料と組み合わせて使用される飼料では、一日当りに給与される混合飼料等とそれに組合せて使用される他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含むが粗飼料は含まない)との飼料全体において、NDF、リン及びマグネシウムを上記の量含有することができる。典型的には、混合飼料は、乾物換算で2〜50重量%のNDFを含有し、好ましくは4〜40重量%のNDFを含有することができる。同様に、典型的な混合飼料は、リンを乾物換算で0.05〜5.0重量%含有し、好ましくは0.1〜3.0重量%含有する。マグネシウムは乾物換算で0.02〜2.0重量%含有し、好ましくは0.05〜1.0重量%含有する。
前述の通り、本発明の飼料では、硫酸カルシウム等の配合により所望の尿石症予防効果を達成することができるため、ビタミンAや食塩など、従来の尿石症の予防の観点から配合されていた成分の含有量を低減することができ、例えば、ビタミンA及び食塩の含有量の低減は、脂肪交雑、肉のしまり等の肉質改善のメリットをもたらす。
具体的には、本発明の飼料では、ビタミンAの含有量を乾物換算で0〜1,000IU/kgとすることができ、0〜700IU/kgとすることが好ましく、0〜400IU/kgとすることが特に好ましい。また、食塩の含有量は乾物換算で0〜1重量%とすることができ、0〜0.6重量%とすることが好ましい。
また、混合飼料又は単体飼料等のように他の飼料と組み合わせて使用される飼料では、一日当りに給与される混合飼料等とそれに組合せて使用される他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含み得るが粗飼料は含まない)との飼料全体において、ビタミンA及び食塩を上記の量含有するものとすることができる。
本発明はまた、その特徴から、粗タンパク質を多く含有する一方デンプン及び/又はNFC含有量が低い濃厚飼料(尿結石が生じ易いとされる)に適用することができる。粗タンパク質の低減は発育成績に影響を及ぼし、デンプン及び/又はNFCの過給はルーメンアシドーシスや肉色の悪化(非特許文献14)等の問題を生じ得るため、本発明の飼料は、このような組成変更を要することなく、尿結石の予防効果を高められる点で意義を有する。
具体的には、本発明の飼料は、粗タンパク質を乾物換算で12〜20重量%含有することが好ましく、14〜18重量%含有することがより好ましい。同様に、本発明の飼料は、デンプンを乾物換算で30〜55重量%含有することが好ましく、33〜47重量%含有することがより好ましく、36〜44重量%含有することが最も好ましい。NFCは乾物換算で35〜58重量%含有することが好ましく、40〜53重量%含有することがより好ましく、44〜50重量%含有することが最も好ましい。
また、混合飼料又は単体飼料等のように他の飼料と組み合わせて使用される飼料では、一日当りに給与される混合飼料等とそれに組合せて使用される他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含み得るが粗飼料を含まない)との飼料全体において、粗タンパク質、デンプン及びNFCを上記の量含有するものとすることができる。
前述の通り、飼料へのモネンシン、ラサロシド、サリノマイシンなどのイオノフォア系抗生物質の投与は、イオウの過剰摂取に起因する大脳皮質壊死症のリスクを軽減することができる。そのため、本発明の飼料に、イオノフォア系抗生物質を含むのは好ましい形態の一つであり、乾物換算で10〜50ppm含むことが好ましく、15〜30ppm含むことがより好ましい。
また、混合飼料又は単体飼料等のように他の飼料と組み合わせて使用される飼料では、一日当りに給与される混合飼料等とそれに組合せて使用される他の飼料(配合飼料、混合飼料及び単体飼料を含み得るが粗飼料を含まない)との飼料全体において、イオノフォア系抗生物質を上記の量含有するものとすることができる。
本発明の飼料では、消化管における鉄の吸収が阻害されるため、牛肉中のミオグロビン含有量が減少し、肉色が改善される。肉牛の発育成績を損なうことなく、肉色の改善効果を奏するために、鉄の含有量を乾物換算で50〜500ppm含むことが望ましく、80〜200ppm含むことがより好ましい。同様に、銅の含有量を乾物換算で5〜40ppm含むことが望ましく、7〜20ppm含むことがより好ましい。
ここで、本発明の好ましい実施形態の飼料の組成を以下に示す。
硫酸カルシウム及び/又はその水和物:乾物換算で0.5〜1.4重量%
炭酸カルシウム、リン酸カルシウム及び塩化カルシウムからなる群から選択される他のカルシウム供給原料:乾物換算で0〜1重量%
塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩酸からなる群から選択される陰イオン塩:乾物換算で0〜1重量%
グルタミン酸発酵粕:乾物換算で0〜2重量%
グルタミン酸発酵副産液:乾物換算で0〜1重量%
NDF:乾物換算で23〜33重量%
リン:乾物換算で0.55〜0.85重量%
マグネシウム:乾物換算で0.25〜0.40重量%
ビタミンA:乾物換算で0〜700IU/kg
食塩:乾物換算で0〜1重量%
粗タンパク質:乾物換算で14〜18重量%
デンプン:乾物換算で33〜47重量%
NFC:乾物換算で40〜53重量%
イオウ:乾物換算で0.28〜0.56重量%
鉄:乾物換算で50〜500ppm
銅:乾物換算で5〜40ppm
DCAD:乾物換算で−200〜−30mEq/kg
(任意に、イオノフォア系抗生物質:15〜30ppm)
なお、混合飼料又は単体飼料によって硫酸カルシウム等を供給する場合には、それと組み合わせて給与する配合飼料、混合飼料及び/又は単体飼料との合算において、上記の組成とすれば良い。
本発明の飼料は、肉牛一般に給与され得るものであるが、通常、生後3ヶ月齢以上の肉牛を対象とし、と畜(通常は生後3年以内)までの少なくとも一部の期間給与される。給与方法については、特に制限はなく、粗飼料と併用することができ、不断給餌又は制限給餌とすることができる。配合飼料の場合には、通常1日1〜10回に分割して給与することができ、一日当たり3〜12kgの飼料を給与して、15〜160g/日・頭の硫酸カルシウム及び/又はその水和物を供給することが好ましい。このような量の硫酸カルシウム及び/又はその水和物の供給は、牛の尿pHを7.0以下として尿結石の形成を効果的に抑制することができると共に、尿中へのリン排泄の増加を抑制することができ、消化管における鉄の吸収を抑制することができる。
硫酸カルシウム等の供給は混合飼料又は単体飼料によって行ってもよく、この場合には、1日当たりの硫酸カルシウムの供給量が15〜160g/日・頭となるように混合飼料又は単体飼料を給与する。混合飼料又は単体飼料で硫酸カルシウム等を給与する場合には、リン含有量(例えば乾物換算で0.55〜0.85重量%)、マグネシウム含有量(例えば乾物換算で0.25〜0.40重量%)やDCAD(例えば乾物換算で0〜200mEq/kg)が高い飼料と組合せることができ、組み合わされる飼料は混合給与若しくは分離給与され、牛が同時に摂取できるようにすることが望ましい。
本発明の方法では、上記の量の硫酸カルシウム及び/又はその水和物と共に、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、尿pHを低下させる効果を有する陰イオン塩(塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩酸等)、グルタミン酸発酵粕、グルタミン酸発酵副産液、ビタミンA、食塩等を以下の表1に示す量供給することができる(各成分の供給量の技術的意義は、飼料に関して述べたところと同様である)。
Figure 0005439618
本発明の方法では、上記飼料の給与により、牛の尿pHが7.0以下となっていることを確認することが好ましい。上述の通り、このような酸性の尿pHでは尿結石の形成を効果的に抑制できる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
試験1.二水石膏と硫酸マグネシウム三水和物が尿pHおよび尿成分に及ぼす影響
ホルスタイン種雌非妊娠乾乳牛4頭を供試し、二水石膏又は硫酸マグネシウムを含む飼料を給与して両成分が尿pHと尿成分に及ぼす影響について検討した。乾物86.9重量%、乾物換算で粗蛋白質14.0重量%、可消化養分総量(TDN)84.1重量%、ビタミンA無添加、炭酸カルシウム含有量0.92重量%、食塩含有量0.4重量%のフレーク・マッシュの肥育牛用配合飼料を基礎飼料とし、これを基に下記の表2に示す配合割合及び成分値(設計値)の飼料を調製し、表2に示す量給与した。
Figure 0005439618
表2に示す通り、比較例1の飼料は、炭酸カルシウムを0.99重量%添加した飼料である。実施例1の飼料は、炭酸カルシウムを0.49重量%、二水石膏を0.82重量%添加した飼料である。実施例2の飼料は、二水石膏を1.63重量%添加した飼料である。比較例2の飼料は、炭酸カルシウムを0.97重量%、硫酸マグネシウム三水和物を1.63重量%添加した飼料である。各試験飼料の給与量は、基礎飼料となる肥育牛用配合飼料の給与量が8kg/日となるように設定し、カルシウムとリンの給与量は各例でほぼ同一である。
試験は、1期6日間の4×4ラテン方格法にて実施し、各試験飼料と稲ワラ(1kg/日)を半量ずつ9:30と17:30の2回に分けて給与した。各期の最終日の11:00、14:00及び17:00に尿を採取した。採取後速やかにpHメーター(PH82 横河電機株式会社)にてpHを測定した。尿中無機リンはモリブデンブルー法(非特許文献29)にて、マグネシウムはキシリジルブルー法(非特許文献30)にて、クレアチニンは酵素法(非特許文献30)にて分析した。沈殿物重量は、採取した50mlの尿を3,000rpmで15分遠心分離し上清を除き、沈殿物を135℃で2時間乾燥し、デシケーター内で放冷した後質量を測定して求めた。浅井ら(非特許文献31、非特許文献32)の報告に基づき、無機リン、マグネシウムおよび沈殿物重量は、クレアチニンをインデックスとしてクレアチニンとの比で評価した。
結果を表3に示す。
Figure 0005439618
尿pHは比較例1の飼料で最も高く、次いで実施例1、比較例2であり、実施例2の飼料が最も低かった。無機リン/クレアチニンは、実施例2の飼料と比較例2の飼料でやや高いものの明確な差異は認められず、マグネシウム/クレアチニンは比較例2の飼料において他の飼料よりも高い値であった。沈殿物重量/クレアチニンは、各例の飼料間で明確な差異は認められなかった。これは供試牛の沈殿物重量が少なく、尿結石をほとんど含んでいなかったためと考えられる。
これらの結果から、炭酸カルシウムの代替として、カルシウム給与量が同一となるように二水石膏を配合すると、少なくとも1.63重量%までの含有量では、尿中無機リン及びマグネシウム排泄量には代替による影響が殆どなく、一方尿pHは用量依存的に低下することが示された。硫酸マグネシウム三水和物を配合すると尿中マグネシウム排泄量が増加し、二水石膏と比較すると尿pHを低下させる効果は小さいものと考えられた(なお、実施例2と比較例2の飼料はカルシウムとイオウの給与量が略同一である)。マグネシウムイオンが、尿pHを高める作用を有するためと理解できる(非特許文献33)。
試験2.二水石膏が肥育牛の尿pH、尿成分および尿結石量に及ぼす影響
19ヶ月齢の黒毛和種雌肥育牛を供試し、二水石膏が尿pH、尿成分及び尿結石量に及ぼす影響を評価した。供試牛は3頭×4群(牛群A,B,C,D)の12頭であり、1期約11日間の4×4ラテン方格法にて試験を実施した。各例の飼料の配合割合は表4〜7の通りであり、各群に給与しているフレーク・マッシュの肥育牛用配合飼料(乾物86.9〜88.0重量%、乾物換算で粗蛋白質13.8〜14.1重量%、TDN80.7〜84.1重量%、ビタミンA無添加、炭酸カルシウム含有量0.64〜0.92重量%、食塩含有量0.4重量%)を基礎飼料とし、炭酸カルシウム又は二水石膏を添加した。
Figure 0005439618

Figure 0005439618

Figure 0005439618

Figure 0005439618
表4〜7に示す通り、比較例3、4、6及び8の飼料は、各群に給与される飼料の基礎飼料となる肥育牛用配合飼料であり、比較例1、5、7及び9は、炭酸カルシウムを0.99重量%含有する。実施例3、4、6及び8の飼料は、二水石膏を0.82重量%含有する。実施例2、5、7及び9の飼料は、二水石膏を1.63重量%含有する。なお、二水石膏1.63重量%は、カルシウム含有量として炭酸カルシウム0.99重量%に相当するため、比較例1、5、7及び9の飼料と実施例2、5、7及び9の飼料とはカルシウム含有量は同一である。
各試験飼料と稲ワラは不断給与とし、稲ワラは9:00と17:00に、各試験飼料は9:30と17:30に給与した。各期の最終日の14:00〜15:00に尿を採取した。尿の分析は前述と同様に行い、無機リン、マグネシウム及び沈殿物重量はクレアチニンとの比で評価した。
結果を表8に示す。
Figure 0005439618
尿pHは、実施例2、5、7及び9の飼料で最も低く、次いで実施例3、4、6及び8の飼料であり、比較例3、4、6及び8の飼料と比較例1、5、7及び9の飼料では高い値を示した。無機リン/クレアチニンとマグネシウム/クレアチニンは各例の飼料間で明確な差異は認められなかった。沈殿物重量/クレアチニンは、実施例2、5、7及び9の飼料で最も低い値であり、次いで実施例3、4、6及び8の飼料、比較例1、5、7及び9の飼料であり、比較例3、4、6及び8の飼料で最も高い値を示した。沈殿物重量/クレアチニンが0.5以上の個体数は、比較例3、4、6及び8の飼料、比較例1、5、7及び9の飼料、実施例3、4、6及び8の飼料、実施例2、5、7及び9の飼料の順に多く、沈殿物重量/クレアチニンが1.0以上の個体は、比較例3、4、6及び8の飼料、比較例1、5、7及び9の飼料並びに実施例3、4、6及び8の飼料で1頭であったが、実施例2、5、7及び9の飼料では0頭であった。これは、尿結石含有量及び尿結石を多く排出した個体数が、二水石膏を配合した実施例3、4、6及び8並びに実施例2、5、7及び9の飼料で減少したことを示す。
これらの結果から、炭酸カルシウムに代えて二水石膏を肥育牛用飼料へ添加すると、少なくとも1.63重量%までは、尿中無機リン及びマグネシウム排泄量は殆ど変化しないが、尿pHが低下し、尿結石量が減少することが示された。
硫酸塩の供給は、代謝性アシドーシスを引き起こし、副甲状腺ホルモンに対する生体の応答性を高める。この結果、一般的な硫酸塩の供給では、骨吸収が促進されて血中へのリン放出が増大すると共に、腎臓におけるリンの再吸収が抑制されて尿中へのリン排泄が増加すると考えられる。しかし、硫酸カルシウムを給与すると、牛の腸管内でカルシウムとリンが不溶性の塩を形成し吸収阻害を起こし、且つカルシウムの供給により副甲状腺ホルモンの分泌が抑制されるため、尿中へのリン排泄増加が抑制されると推測される。また、硫酸塩の特性として尿pHを低下させる。この結果、硫酸カルシウムを含有する飼料では、尿中へのリン排泄の増加抑制と、尿pH低下の両立が達成されているものと理解できる。
従って、二水石膏の肥育牛用飼料への配合は、尿結石成分の尿中濃度の上昇抑制及び尿結石形成条件の両面から尿石症の予防に有効であると考えられた。
試験3.二水石膏と炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム三水和物及びグルタミン酸発酵粕との嗜好性比較
二水石膏と炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム三水和物及びグルタミン酸発酵粕との嗜好性の比較について、表9に示す配合割合の飼料で検証した。
Figure 0005439618

注)成分値(設計値:乾物中の値)は、「日本標準飼料成分表(2009年版)」(非特許文献28)の値を引用し、「日本標準飼料成分表(2009年版)」に値が記載されていないものは「NRC乳牛飼養標準(2001年・第7版)」(非特許文献24)の値を引用した。DCADは、[Na]+[K]―[Cl]―[S]により求めた(式中[]は当量値を示す)。デンプンは、CPM−Dairyにて計算した。グルタミン酸発酵粕のミネラル含有量は日本配合飼料株式会社分析値(Ca:1.34%、P:0.16%、Mg:0.50%、Na:1.06%、K:4.24%、Cl:12.38%、S:3.89% 乾物中の値)を用いた。なお、二水石膏1.00重量%はCaSO換算で0.79重量%に相当する。従って、二水石膏0.82重量%はCaSO換算で0.65重量%に相当し、二水石膏1.63重量%はCaSO換算で1.29重量%に相当する。配合割合は小数点第三位以下を四捨五入して示した。
約4ヶ月齢のホルスタイン種雄育成牛6頭を供試し、カフェテリア方式にて、肥育牛用配合飼料を基礎飼料とし、炭酸カルシウムを0.49重量%、二水石膏を0.82重量%含有する実施例1の飼料と、炭酸カルシウムを0.99重量%含有する比較例1の飼料を自由選択させた嗜好性比較試験を4日間行った。結果を表10に示す。
Figure 0005439618
上記の通り、実施例1の飼料は、比較例1の飼料と同等の平均摂取量、平均摂取比率及びのべ勝敗数であった。
次に、約4ヶ月齢のホルスタイン種雄育成牛6頭を供試し、カフェテリア方式にて、肥育牛用配合飼料を基礎飼料とし、二水石膏を1.63重量%含有する実施例2の飼料と、炭酸カルシウムを0.99重量%含有する比較例1の飼料とを自由選択させた嗜好性比較試験を4日間行った。結果を表11に示す。
Figure 0005439618
上記の通り、実施例2の飼料は、比較例1の飼料と同等の平均摂取量、平均摂取比率及びのべ勝敗数であった。
次に、約4ヶ月齢のホルスタイン種雄育成牛6頭を供試し、カフェテリア方式にて、肥育牛用配合飼料を基礎飼料とし、二水石膏を1.63重量%含有する実施例2の飼料と、炭酸カルシウムを0.97重量%、硫酸マグネシウム三水和物を1.63重量%含有する比較例2の飼料とを自由選択させた嗜好性比較試験を2日間行った。結果を表12に示す。
Figure 0005439618
上記の通り、実施例2の飼料は、比較例2の飼料よりも平均摂取量、平均摂取比率及びのべ勝敗数が顕著に優った。
次に、約4ヶ月齢のホルスタイン種雄育成牛6頭を供試し、カフェテリア方式にて、肥育牛用配合飼料を基礎飼料とし、二水石膏を1.63重量%含有する実施例2の飼料と、炭酸カルシウムを0.97重量%、グルタミン酸発酵粕を2.42重量%含有する比較例10の飼料とを自由選択させた嗜好性比較試験を4日間行った。結果を表13に示す。
Figure 0005439618
上記の通り、実施例2の飼料は、比較例10の飼料よりも平均摂取量、平均摂取比率及びのべ勝敗数が顕著に優った。
以上の結果より、二水石膏は、炭酸カルシウムと嗜好性は同等であり、嗜好性に問題はないこと、並びに、他のイオンバランスを低減させる原料である、硫酸マグネシウム三水和物とグルタミン酸発酵粕よりも顕著に嗜好性に優れることが示された。
試験4.二水石膏と塩化カルシウム二水和物との嗜好性比較
ホルスタイン種雌非妊娠乾乳牛6頭を供試し、二水石膏と塩化カルシウム二水和物の嗜好性を比較した。試験1で用いたものと同一の肥育牛用配合飼料を基礎飼料とし、配合割合及び成分値(設計値)は表14の通りとした。
Figure 0005439618
表14に示す通り、実施例2の飼料は二水石膏を1.63重量%含有し、比較例11の飼料は塩化カルシウム二水和物を1.40重量%含有し、実施例2と比較例11の飼料のDCADは同一である。実施例2と比較例11の飼料を供試牛に自由選択させ、30分間の摂取量を測定した。
結果を表15に示す。
Figure 0005439618
上記の通り、比較例11の飼料に比べ、実施例2の飼料は、平均摂取量、平均摂取比率及び勝敗数は顕著に優った。なお、供試牛の6頭中3頭は、比較例11の飼料を明らかに忌避する傾向であり、摂取比率は5%未満であった。
以上の結果より、二水石膏は、従来技術である塩化カルシウム二水和物よりも、嗜好性の点で優れることが示された。
試験5.高リン、高マグネシウム、高NDF飼料への二水石膏の添加が肥育牛の枝肉成績と腎臓および膀胱内結石量に及ぼす影響
12.6ヶ月齢の黒毛和種雌肥育牛10頭を5頭ずつ対照群と試験群に分け、二水石膏を1.10重量%配合した飼料が枝肉成績と腎臓および膀胱内結石量に及ぼす影響について評価した。飼料の形態はフレーク・マッシュとし、対照群に給与した配合飼料の配合割合及び成分値(設計値)は表16、試験群に給与した配合飼料の配合割合及び成分値(設計値)は表17の通りとした。
Figure 0005439618

Figure 0005439618
対照群には、肥育中期(12.6〜21.7ヶ月齢)に比較例3の飼料を給与し、肥育後期(21.7〜30.8ヶ月齢)に比較例12の飼料を給与した。表16に示す通り、比較例3と比較例12の飼料のいずれも、グルタミン酸発酵粕と二水石膏は含有せず炭酸カルシウムを含み、TDN含有量は約84重量%、NDF含有量は約23重量%、リン含有量は約0.6%重量%、マグネシウム含有量は0.24重量%、DCADは約35mEq/kgである。
試験群には、12.6〜16.9ヶ月齢に比較例13の飼料を給与し、16.9〜21.7ヶ月齢に比較例6の飼料を給与し、21.7〜23.8ヶ月齢に比較例14の飼料を給与し、23.8〜30.8ヶ月齢に実施例10の飼料を給与した。表17に示す通り、いずれの飼料もふすまを35重量%前後含み、TDN含有量は約80重量%、NDF含有量は約28重量%、リン含有量は約0.7重量%、マグネシウム含有量は約0.3重量%であるが、比較例13の飼料は炭酸カルシウムを0.69重量%、グルタミン酸発酵粕を3.00重量%含むが二水石膏は含有せず、DCADは−79.4mEq/kgであり、比較例6と比較例14の飼料は炭酸カルシウムを含むがグルタミン酸発酵粕と二水石膏のいずれも含有せず、DCADはそれぞれ60.4mEq/kg、60.6mEq/kgであり、実施例10の飼料は炭酸カルシウムとグルタミン酸発酵粕は含有せず二水石膏を1.10重量%含み、DCADは−81.7mEq/kgである。
試験牛は5頭ずつの群飼とし、各試験飼料は16ヶ月齢に達するまで制限給与、以後は不断給与とした。粗飼料は細断した国産稲ワラとし、試験期間を通じて不断給与した。稲ワラは9:00と17:00に、各試験飼料は9:30と17:30に給与した。採血は2〜3ヶ月おきに実施して血清ビタミンA濃度をHPLC(非特許文献30)にて測定し、19.5ヶ月齢以降は、血清ビタミンA濃度が40IU/dL程度となるよう、経口もしくは筋注により適宜ビタミンAを補給した。22.4ヶ月齢以降の採血では、ニトロソPSAP法(非特許文献30)にて血清鉄濃度を測定した。29.6ヶ月齢時に尿道カテーテルを用いて採尿(14:00〜15:00に実施)し、前述と同様に尿の分析を行い、無機リン、マグネシウム及び沈殿物重量をクレアチニンとの比で評価した。30.8ヶ月齢時に出荷し、格付成績(日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格に準ずる:非特許文献34)を得た。第6−第7肋骨間胸最長筋、腎臓及び膀胱を採取し、胸最長筋は、色彩色差計(CR−300 コニカミノルタ株式会社)にてL*値(明度)、a*値(赤色度)及びb*値(黄色度)を測定した後ミンチにし、pH、水分、粗脂肪及びミオグロビン含有量を測定した。pHはpHメーター(F−22 (株)堀場製作所)にて測定し、水分及び粗脂肪は、飼料分析基準(非特許文献27)に準じて測定した。ミオグロビン含有量はTroutの方法(非特許文献35)を参考に、pH6.8の0.04Mリン酸バッファーを加えホモジナイズし、遠心分離して得られた上清を分光光度計(SmartSpec 3000 Bio−Rad)で525nmと700nmにおける吸光度を測定し、次式によりミオグロビン含有量を求めた。
ミオグロビン(mg/mL)=(A525−A700)×2.303×dilution factor
腎臓と膀胱は切開して結石の有無を確認した。結石は80℃で一晩乾燥させた後、重量を測定した。対照群の4号牛(結石量が最も多かった個体)の腎臓結石については、水分、粗灰分、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウムおよび窒素を、飼料分析基準(非特許文献27)に順じて分析した。
結果を表18〜22並びに図1〜4に示した。
Figure 0005439618

Figure 0005439618

Figure 0005439618

Figure 0005439618

Figure 0005439618
配合飼料摂取量は、配合飼料を飽食とした16ヶ月齢から、対照群の方が高く推移したが、試験群を比較例6の飼料に切り替えると試験群の配合飼料摂取量は増加し、19ヶ月齢以降、対照群と試験群の配合飼料摂取量は同等となった。試験群は21.7ヶ月齢で比較例14の飼料に、23.8ヶ月齢で実施例10の飼料に切り替えたが、配合飼料摂取量は対照群と同水準で推移した。このことから、比較例13の飼料に配合したグルタミン酸発酵粕は、嗜好性が悪く飼料摂取量を低下させ得るが、実施例10の飼料に配合した二水石膏は飼料摂取量を低下させないことが示された。
尿pHは、対照群に比べ試験群で有意に低い値を示した(p<0.001)。無機リン/クレアチニンとマグネシウム/クレアチニンは試験群で高い傾向であったが、沈殿物重量は試験群で低い値となり、結石の形成が抑制されていたものと考えられた。無機リン/クレアチニンとマグネシウム/クレアチニンが試験群で高い値であったのは、実施例10の飼料は比較例12の飼料よりリンおよびマグネシウム含有量が高かったためと考えられる。
腎臓結石は対照群で4頭、試験群で1頭、膀胱結石は対照群で1頭、試験群で2頭確認されたが、対照群の4号牛の腎臓結石は著しく多く、その他は少量であった。なお、4号牛はと畜場の検査で腎臓結石・胆管結石と診断されていたが、出荷前1ヶ月間程度、食欲不振に陥っており、出荷2週間前の血液検査では血清尿素窒素が92.1mg/dLと異常高値(基準値は10〜20mg/dLとされる)を示していたことから、腎臓結石により腎不全に陥っていたものと考えられた。4号牛の腎臓結石はリンとマグネシウムを多く含み、リン酸マグネシウム塩が主成分であると考えられた。一方、試験群では、ふすまの配合割合が多くリンとマグネシウム含有量が多い実施例10の飼料を給与していたにも関わらず、結石の蓄積は僅かであり、二水石膏が結石の形成を抑制したものと考えられた。
枝肉成績に関しては、BMS No.が試験群で優れる傾向にあり、その他の項目に大きな差は見られなかった。ロース芯のL*値は試験群でやや高く、a*値はやや低い値であり、肉色は淡い傾向であった。粗脂肪含有量は試験群で4.5%高い値であり、ミオグロビン含有量は試験群で低い値であった。
血清鉄濃度は、比較例14の飼料を給与していた22.4ヶ月齢時において、試験群は対照群より有意に高い値(p<0.05)であったが、実施例10の飼料に切り替えた以後、血清鉄濃度は低下し対照群と同水準で推移した。このことから、二水石膏は、消化管における鉄の吸収を阻害し、血清鉄濃度を低下させることが示唆された。
ロース芯粗脂肪含有量と血清鉄濃度(22.4〜30.4ヶ月齢の計4回の採血データの平均値)を独立変数、ロース芯ミオグロビン含有量を従属変数とする重回帰分析を行ったところ、R=0.9347の非常に高い相関が得られた(ミオグロビン含有量(mg/g)=8.6466−0.1584×粗脂肪含有量(%)+0.0185×血清鉄濃度(μg/dL):回帰係数は粗脂肪と血清鉄濃度のいずれについてもp<0.0001)。従って、ミオグロビン含有量を低減させ、肉色を改善するには、粗脂肪含有量を高め血清鉄濃度を低くすること、つまり脂肪交雑の改善と消化管における鉄の吸収阻害が重要であることが示唆された。
以上、二水石膏は、飼料摂取量を低下させることなく、肥育牛の尿石症を予防する効果を有し、高リン・高マグネシウムの尿石症を誘発する原料の多用を可能とすることが示された。また、二水石膏は、優れた尿石症予防効果を有するため、ふすまのような高リン・高マグネシウムのNDF供給原料の併用を可能とし、脂肪交雑を改善し得ることが示唆された。更に、二水石膏は、消化管における鉄の吸収を阻害することと、ふすま等のNDF供給原料との組み合わせで脂肪交雑を改善することにより、筋肉中のミオグロビン含有量を低減させ肉色を改善する(淡くする)ことが示された。
以上の各試験の結果によれば、肥育牛用飼料への硫酸カルシウム等の添加は、硫酸マグネシウム又は炭酸カルシウムよりも尿石症の予防効果に優れ、グルタミン酸発酵粕、硫酸マグネシウム並びに塩化カルシウムよりも嗜好性に優ることが分った。さらに、硫酸カルシウム等の添加は、高リン・高マグネシウムである尿石症誘発原料の多用を可能とし、NDF含有量を高めることで脂肪交雑を改善すること、さらにミオグロビン含有量を低減させ、肉色を改善し得ることが分かった。従って、本発明の飼料は、従来技術より有効な尿石症予防策と肉質改善策を提供し得るものである。

Claims (18)

  1. 硫酸カルシウム及び/又はその水和物を乾物換算で0.2〜2.0重量%含む、肉牛用飼料。
  2. 前記硫酸カルシウム及び/又はその水和物を乾物換算で0.3〜1.5重量%含む、請求項1に記載の飼料。
  3. 中性デタージェント繊維を乾物換算で20〜35重量%含む、請求項1又は2の何れか1項に記載の飼料。
  4. 中性デタージェント繊維を乾物換算で23〜33重量%含む、請求項1〜の何れか1項に記載の飼料。
  5. リン(P)を乾物換算で0.55〜0.85重量%含む、請求項1〜の何れか1項に記載の飼料。
  6. 式[Na]+[K]−[Cl]−[S](式中[]は当量値を示す)で求められる給与飼料のイオンバランス(DCAD)が、乾物換算で−250〜0mEq/kgである、請求項1〜の何れか1項に記載の飼料。
  7. 前記硫酸カルシウム及び/又はその水和物が、無水石膏、半水石膏及び二水石膏からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する、請求項1〜の何れか1項に記載の飼料。
  8. 配合飼料である、請求項1〜の何れか1項に記載の飼料。
  9. 配合飼料及び/又は単体飼料と組み合わせて用いるための混合飼料であって、該配合飼料及び/又は単体飼料と該混合飼料との全体で換算したときに、硫酸カルシウム及び/又はその水和物の含有量が乾物換算で0.2〜2.0重量%となる量の硫酸カルシウム及び/又はその水和物を含む、請求項1の飼料。
  10. 硫酸カルシウム及び/又はその水和物を乾物換算で5〜70重量%含む、請求項に記載の飼料。
  11. 前記配合飼料及び/又は単体飼料と前記混合飼料との飼料全体で換算したときに、DCADが乾物換算で−250〜0mEq/kgとなるDCAD値を有する、請求項9又は10記載の飼料。
  12. 前記配合飼料及び/又は単体飼料と前記混合飼料との飼料全体で換算したときに、中性デタージェント繊維が乾物換算で20〜35重量%となる量の中性デタージェント繊維を含む、請求項9〜11の何れか1項に記載の飼料。
  13. 請求項1〜12の何れか1項に記載の飼料を肉牛に給与することを特徴とする、肉牛の尿石症の予防方法。
  14. 請求項1〜12の何れか1項に記載の飼料を肉牛に給与することを特徴とする、肉牛の尿石症を予防しながら肉色を改善する方法。
  15. 請求項3〜8及び12の何れか1項に記載の飼料を肉牛に給与することを特徴とする、肉牛の尿石症を予防しながら脂肪交雑を改善する方法。
  16. 石膏を硫酸カルシウム換算で15〜160g/日・頭供与する、請求項13〜15に記載の方法。
  17. 中性デタージェント繊維を1.4〜3.8kg/日・頭供給する、請求項13〜16に記載の方法。
  18. リンを40〜100g/日・頭供給する、請求項13〜17に記載の方法。
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