上記発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載の内容に加え、以下の実施の形態では、製品化の上で望ましい課題が解決でき、また製品化の上で望ましい効果を奏する。上記発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載の内容と重複する部分もあるが、下記実施の形態に記載の装置が解決する課題あるいは効果を、次に記載する。更にまた、実施の形態の説明でも、具体的な課題の解決や具体的な効果について説明する。
〔パワースイッチング回路のスイッチング頻度の低減〕
以下の実施の形態で説明する電力変換装置では、直流電力から変換される交流出力の交流波形の角度すなわち位相に基づいて、パワースイッチング回路が有するスイッチング素子のスイッチング動作を制御する。これにより、従来のPWM方式に比べ上記スイッチング素子のスイッチング動作の単位時間当たりのスイッチング回数あるいは交流出力の1サイクル当たりのスイッチング回数を低減でき、電力損失を低減できる。
また、以下の実施の形態で説明する電力変換装置では、交流出力の位相に基づいてパワースイッチング回路が有するスイッチング素子のスイッチング動作制御することで、高調波を低減でき、単位時間当たりのスイッチング回数あるいは交流出力の1サイクル当たりのスイッチング回数を低減しているにも関わらず、脈動の増大を抑えることができる。
以下に説明する実施の形態では、低減しようとする高調波の次数を選択できる。このように本発明の適用対象に合せて削除する次数を選択することができるので、必要以上に削除する次数の種類が増えるのを防止でき、このことによりパワースイッチング回路のスイッチング素子の単位位相当たりのスイッチング回数の低減が可能となる。さらにまた低減する次数の高調波を単位位相毎に重ねあわせ、重ね合わせた波形に基づいてパワースイッチング回路のスイッチング素子のスイッチングタイミングを制御するので、パワースイッチング回路のスイッチング素子のスイッチング回数を低減できる。
〔制御対象の状態変動や外乱に対する安定性〕
以下の実施の形態では、制御周期を定めて、制御周期を繰り返すことにより、パワースイッチング回路のスイッチング素子の導通や遮断を制御する。パワースイッチング回路のスイッチング素子の導通や遮断の動作が前記複数の制御周期に跨って行われるため、演算処理の入力情報が前の制御周期と次の演算周期で異なることが生じ、前記スイッチング素子の導通や遮断の動作の状態が制御周期の途中で変化する課題がある。 以下の実施の形態では、演算処理において前の制御周期での導通や遮断の動作に係る演算結果と次制御周期での導通や遮断の動作に係る演算結果と不連続となる場合を調べ、演算結果が不連続となる場合に対応する処理を行うので、安定した制御、信頼性の高い制御が得られる。
以下の実施の形態では、従来のPWM制御に比べスイッチング素子のスイッチング回数が低減されているが、スイッチング動作の間隔が長くなる属性を有する。従って前の制御周期での導通や遮断の演算結果と次制御周期での導通や遮断の演算結果とが不連続となる可能性がある。演算結果の不連続に対処する処理を行うことで、安定した制御、信頼性の高い制御を確保できる。
スイッチング素子が安定して動作するには、ある基準期間より長い遮断期間を有するように制御することが望ましい。前の制御周期と次制御周期との演算結果が入力パラメータの変化により異なる状態となり、スイッチング素子の遮断期間がある基準期間より短くなる恐れがある。以下の実施の形態では、スイッチング素子の遮断期間を調べ基準期間より短くなる恐れがある場合に、遮断期間を長くするあるいは遮断期間を無くする処理を行う。これによりスイッチング素子の動作の安定確保できる効果がある。
スイッチング素子が安定して動作するには、ある基準期間より長い導通期間を有するように制御することが望ましい。前の制御周期と次制御周期との演算結果が入力パラメータの変化により異なる状態となり、スイッチング素子の導通期間がある基準期間より短くなる恐れがある。以下の実施の形態では、スイッチング素子の導通期間を調べ基準期間より短くなる恐れがある場合に、導通期間を長くする処理を行う。これによりスイッチング素子の動作の安定確保できる効果がある。
なお、スイッチング素子としては、動作速度が速く、また制御信号に基づき導通および遮断動作の両方を制御できる素子が望ましく、このような素子として例えばinsulated gate bipolar transistor(以下IGBTと記す)や電界効果トランジスタ(MOSトランジスタ)があり、これらの素子は応答性や制御性の点から望ましい。
上記電力変換装置から出力される交流出力は回転電機などで構成されるインダクタンス回路に供給され、インダクタンスの作用に基づいて交流電流を流れる。以下の実施の形態ではインダクタンス回路としてモータやゼネレータの作用を為す回転電機を例に挙げ説明している。回転電機を駆動する交流電力を発生するために本発明を使用することは、効果の点から、最適であるが、回転電機以外のインダクタンス回路に交流電力を供給する電力変換装置としても使用できる。
以下の実施の形態では、所定の条件に応じてスイッチング素子のスイッチング動作の方法を切り替えることができる。たとえば、回転電機の回転速度が速い第1の動作範囲では、出力しようとする交流出力、例えば交流電圧の位相に基づいて、スイッチング素子のスイッチング動作を発生し、一方上記第1の動作範囲より回転電機の回転速度が遅い第2の動作領域では、一定周波数の搬送波に基づいてスイッチング素子の動作を制御するPWM方式で上記スイッチング素子を制御する。上記第2の動作領域には上記回転電機の回転子が停止状態を含めることができる。なお、以下の実施の形態では回転電機としてモータおよび発電機として使用されるモータジェネレータを例に説明する。
〔出力される交流電流の歪低減〕
出力しようとする電力の交流波形の角度に基づいて、スイッチング素子を導通あるいは遮断する方式では、出力される交流出力の周波数が低い領域では、交流波形の歪が大きくなる傾向が有る。上述の説明において、交流出力の周波数が低い第2の領域はPWM方式を使用して時間経過に基づいてスイッチング素子を制御し、第2の領域より周波数の高い第1の領域では、角度に基づいてスイッチング素子を制御することができる。このように異なる方式を利用してスイッチング素子を制御することにより、出力される交流電流の歪を低減できる効果が生じる。
〔基本的制御〕
本発明の実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。本発明の実施形態に係る電力変換装置は、ハイブリッド用の自動車(以下HEVと記す)や純粋な電気自動車(以下EVと記す)の回転電機を駆動する為の交流電力を発生する電力変換装置に適用した例である。HEV用の電力変換装置もEV用の電力変換装置も基本的な構成や制御において共通するところが多く、代表例として、本発明の実施形態に係る電力変換装置をハイブリッド自動車に適用した場合の制御構成と電力変換装置の回路構成について、図1と図2を用いて説明する。図1はハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
本発明の実施形態に係る電力変換装置では、自動車に搭載される車載電機システムの車載用の電力変換装置について説明する。特に、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用電力変換装置を例に挙げて説明する。車両駆動用電力変換装置は、車両駆動用の回転電機を駆動する制御装置として車両駆動用電機システムに備えられる。この車両駆動用の電力変換装置は、車載電源を構成する車載バッテリ或いは車載発電装置から供給された直流電力を所定の交流電力に変換し、得られた交流電力を上記回転電機に供給して上記回転電機を駆動する。また、上記回転電機は電動機の機能に加え発電機としての機能も有しているので、上記電力変換装置は運転モードに応じ、直流電力を交流電力に変換するだけでなく、上記回転電機が発生する交流電力を直流電力に変換する動作も行う。変換された直流電力は車載バッテリに供給される。
本実施の形態は、自動車やトラックなどの車両駆動用の電力変換装置として使用する例を説明している。しかし、これら以外の分野で使用する電力変換装置、例えば電車や船舶、航空機などに使用する電力変換装置、さらに工場の設備を駆動する回転電機に供給する交流電力を発生する為の産業用の電力変換装置、或いは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する回転電機に供給する交流電力を発生する為の電力変換装置として使用するのにも適している。特に本実施の形態は、直流電力を受け回転電気に供給する交流電力を発生する電力変換装置に、最適である。
図1において、HEV110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEVの駆動トルク発生源あるいはHEVの電力発生源として動作する。モータジェネレータ192,194は例えば3相同期回転電機あるいは3相誘導電動機などの回転電機である。これらは電力変換装置の運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記すこととする。
車体のフロント部に前輪車軸114および前輪車軸114の両端に設けられた1対の前輪112が設けられている。車体のリア部に後輪車軸(図示省略)および後輪車軸の両端に設けられた1対の後輪が設けられている。本実施形態のHEVでは、動力によって駆動される主輪を前輪112とし、連れ回される従輪を後輪とする、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。
前輪車軸114の中央部には前輪側ディファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪車軸114は前輪側DEF116の出力側に機械的に接続されている。前輪側DEF116の入力側には変速機118の出力軸が機械的に接続されている。前輪側DEF116は、変速機118によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸114に分配する差動式動力分配機構である。変速機118の入力側にはモータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ192の入力側には動力分配機構122を介してエンジン120の出力側及びモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。尚、モータジェネレータ192,194及び動力分配機構122は、変速機118の筐体の内部に収納されている。
電力変換装置140あるいは電力変換装置142に、平滑用のコンデンサとして動作するコンデンサモジュール500と、高電圧の直流電力を供給するためのバッテリ136とが電気的に接続されている。バッテリ136から供給された直流電力が、モータジェネレータ192あるいはモータジェネレータ194を駆動するための交流電力に、電力変換装置140あるいは142によってそれぞれ変換される。モータジェネレータ192およびモータジェネレータ194は、回転子に磁極を形成する永久磁石を備えた同期機である。これらの固定子の電機子巻線に、電力変換装置140あるいは142が発生した交流電力がそれぞれ供給され、モータジェネレータ192あるいは194の回転速度あるいは回転トルクが電力変換装置140あるいは142によってそれぞれ制御される。モータジェネレータ192あるいは194が発電機として動作している場合には、モータジェネレータ192あるいは194が発生した交流電力はそれぞれ電力変換装置140あるいは142によって直流電力に変換され、バッテリ136を充電する。コンデンサモジュール500は、電力変換装置140あるいは電力変換装置142が直流電力を交流電力に変換する状態で、あるいは交流電力を直流電力に変換する状態で、発生する脈動および電気的なノイズを除去する作用を為す。
本実施の形態として示す車載電機システムは、モータジェネレータ192及び電力変換装置140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194及び電力変換装置142からなる第2電動発電ユニットとの2つ電動発電ユニットを備えており、車両の運転状態に応じてそれらの機能を選択的に制御する。すなわち、エンジン120を車両走行の加速や減速に使用すると車両の走行効率が低くなる傾向にあり、エンジン120を効率の良い運転領域内で運転し、車両走行の加速や減速をできるだけ、第1および第2電動発電ユニットで行う。例えば、車両走行の状態において、車両の走行トルクを第1電動発電ユニットによって発生する。バッテリ136が蓄電している電力量が不足する場合には、エンジン120を効率の良い運転領域内で運転し、エンジン120によって発生する回転トルクを第2電動発電ユニットによって電力に変換し、バッテリ136あるいは第1電動発電ユニットに供給する。
バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の走行が可能である。また、第1電動発電ユニットあるいは第2電動発電ユニットを発電ユニットとして動作させ、エンジン120が発生する運動エネルギー或いは車輪から供給される車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリ136を充電することが可能である。モータジェネレータ192あるいはモータジェネレータ194をモータとして動作させるかあるいは発電機として動作させるかの制御は、電力変換装置140あるいは電力変換装置142の制御によって行われる。例えば電力変換装置140あるいは電力変換装置142の発生する交流電力を、モータジェネレータ192あるいはモータジェネレータ194の回転子の磁極に対して進み方向の位相となるように制御すると、モータジェネレータ192あるいはモータジェネレータ194はモータとして動作し、電気エネルギーがモータジェネレータ192あるいはモータジェネレータ194によって機械エネルギーに変換される。逆に電力変換装置140あるいは電力変換装置142の発生する交流電力を、モータジェネレータ192あるいはモータジェネレータ194の回転子の磁極に対して遅れ方向の位相となるように制御すると、モータジェネレータ192あるいはモータジェネレータ194は発電機として動作し、機械エネルギーがモータジェネレータ192あるいはモータジェネレータ194によって電気エネルギーに変換され、電力変換装置140あるいは電力変換装置142は交流電力を直流電力に変換してバッテリ136に直流電力が供給される。
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機用のモータとしては、例えばエアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136から電力変換装置43に直流電力が供給され、電力変換装置43で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。電力変換装置43は、電力変換装置140や142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。例えばモータ195の回転子の回転に対し進み位相の交流電力を供給することにより、モータ195はトルクを発生する。一方、遅れ位相の交流電力を発生することで、モータ195は発電機として作用し、回生制動状態の運転となる。このような電力変換装置43の制御機能は、電力変換装置140や142の制御機能と同様である。モータ195の容量はモータジェネレータ192や194の容量より小さいので、電力変換装置43の最大変換電力は電力変換装置140や142より小さい。しかし、電力変換装置43の回路構成および動作は基本的に電力変換装置140や142の回路構成や動作と類似している。
電力変換装置140や142および電力変換装置43さらにコンデンサモジュール500は電気的に密接な関係にある。さらに発熱に対する対策が必要な点が共通している。また装置の体積をできるだけ小さく作ることが望まれている。これらの点から以下で詳述する電力変換装置は、電力変換装置140や142および電力変換装置43さらにコンデンサモジュール500を電力変換装置の筐体内に内蔵している。この構成により、小型で信頼性の高い装置が実現できる。
また電力変換装置140や142および電力変換装置43さらにコンデンサモジュール500を一つの筐体に内蔵することで、配線の簡素化やノイズ対策で効果がある。またコンデンサモジュール500と電力変換装置140や142および電力変換装置43との接続回路のインダクタンスを低減でき、スパイク電圧を低減できると共に、発熱の低減や放熱効率の向上を図ることができる。
次に、図2を用いて電力変換装置140や142あるいは電力変換装置43の電気回路構成を説明する。尚、図1〜図2に示す実施の形態では、電力変換装置140や142あるいは電力変換装置43をそれぞれ個別に構成する場合を例に挙げて説明する。電力変換装置140や142あるいは電力変換装置43は同様の構成で同様の作用を為し、同様の機能を有している。ここでは、代表例として電力変換装置140の説明を行う。
本実施形態に係る電力変換装置200は、電力変換装置140、142とコンデンサモジュール500と電力変換装置43を備えるが、図2では電力変換装置142および電力変換装置43を省略する。電力変換装置140は、パワースイッチング回路144と制御部170とを有している。また、パワースイッチング回路144は、上アームとして動作するスイッチング素子と下アームとして動作するスイッチング素子を有している。この実施の形態ではスイッチング素子としてIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を使用している。上アームとして動作するIGBT328はダイオード156と並列接続されており、下アームとして動作するIGBT330はダイオード166と並列接続されている。上下アームの直列回路150を複数設けられており、図2の例ではU相とV相とW相に対応する3つの上下アームの直列回路150が設けられている。それぞれの直列回路150を構成する上下アームの接続点169は、交流端子159を通してモータジェネレータ192へ交流電力を供給するための交流電力線である交流バスバー186と接続されている。
スイッチング素子である上アームと下アームのIGBT328や330は、制御部170から出力された駆動信号を受けてスイッチング動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力はモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。上述のとおり、電力変換装置140はモータジェネレータ192が発生する三相交流電力を直流電力に変換する動作も行う。
本実施形態に係る電力変換装置200は、図1に記載の如く電力変換装置140と142さらに電力変換装置43とコンデンサモジュール500を有している。上述のとおり電力変換装置140と142さらに電力変換装置43は同様の回路構成であるので、ここでは電力変換装置140を代表として記載し、電力変換装置142と電力変換装置43は、既に上述したとおり省略した。
パワースイッチング回路144は3相のブリッジ回路により構成されている。バッテリ136の正極側と負極側には、直流正極端子314と直流負極端子316が電気的に接続されている。直流正極端子314と直流負極端子316の間には、各相に対応する上下アームの直列回路150,150,150がそれぞれ電気的に並列に接続されている。ここで、上下アームの直列回路150をアームと記載する。各アームは、上アーム側のスイッチング素子328及びダイオード156と、下アーム側のスイッチング素子330及びダイオード166とを備えている。
本実施の形態では、スイッチング素子としてIGBT328や330を用いることを例示している。IGBT328や330は、コレクタ電極153,163、エミッタ電極(信号用エミッタ電極端子155,165)、ゲート電極(ゲート電極端子154,164)を備えている。IGBT328,330のコレクタ電極153,163とエミッタ電極との間には、ダイオード156,166が図示するように電気的に並列に接続されている。ダイオード156,166は、カソード電極及びアノード電極の2つの電極を備えている。IGBT328,330のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう方向が順方向となるように、カソード電極がIGBT328,330のコレクタ電極に、アノード電極がIGBT328,330のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。スイッチング素子としては、MOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい。この場合は、ダイオード156やダイオード166は不要となる。
上下アームの直列回路150は、3相のモータジェネレータ192に供給する交流電力の各相に対応しており、各直列回路150,150,150は、IGBT328のエミッタ電極とIGBT330のコレクタ電極163を接続する接続点169はそれぞれU相、V相、W相の交流電力を出力するのに使用される。各相の上記接続点169がそれぞれ交流端子159とコネクタ188を介して、モータジェネレータ192のU相、V相、W相の電機子巻線(同期電動機では固定子巻線)と接続されることにより、上記電機子巻線にU相、V相、W相の電流が流れる。上記上下アームの直列回路同士は電気的に並列接続されている。上アームのIGBT328のコレクタ電極153は、正極端子(P端子)157を介してコンデンサモジュール500の正極側コンデンサ電極に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は、負極端子(N端子)158を介してコンデンサモジュール500の負極側コンデンサ電極に、それぞれ直流バスバーなどを介して電気的に接続されている。
コンデンサモジュール500は、IGBT328,330のスイッチング動作によって生じる直流電圧の変動を抑制する平滑回路を構成するためのものである。コンデンサモジュール500の正極側コンデンサ電極にはバッテリ136の正極側が、コンデンサモジュール500の負極側コンデンサ電極にはバッテリ136の負極側が、それぞれ直流コネクタ138を介して電気的に接続されている。これにより、コンデンサモジュール500は、上アームIGBT328のコレクタ電極153とバッテリ136の正極側との間と、下アームIGBT330のエミッタ電極とバッテリ136の負極側との間で接続され、バッテリ136と上下アームの直列回路150に対して電気的に並列接続される。
制御部170は、制御回路172を備え、入力されるモータジェネレータ192の制御情報およびモータジェネレータ192の回転速度や磁極位置などの状態情報を受け、パワースイッチング回路144の各スイッチング素子を制御する制御信号を発生し、ドライバ回路174に制御信号を供給する。ドライバ回路174は制御信号に基づき、スイッチング素子の導通や遮断動作を制御する駆動信号である駆動パルスを発生し、各スイッチング素子のゲート電極154あるいは164に供給する。上述の制御回路172は、IGBT328,330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータを備えている。このマイクロコンピュータには、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値あるいは目標回転速度、モータジェネレータ192の回転子の磁極位置、モータジェネレータ192に供給される各相の実際の電流値が入力される。上記電流値は、電流センサ180から出力された検出信号に基づいて検出される。磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出される。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしてもよい。制御回路のマイクロコンピュータは、上記目標トルク値あるいは目標回転速度に基づき、上下アームの直列回路150からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される各相の目標電流値が演算する。これらの目標電流値と実際の測定された電流値とに基づきフィードバック制御を行う。あるいは目標回転速度と実際の回転速度とに基づきフィードバック制御を行う。
さらに詳述すると、制御回路172内のマイクロコンピュータは、入力された目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、このd,q軸の電圧指令値からパルス状の駆動信号を生成する。
制御回路172は後述するように2種類の方式の駆動信号を発生する機能を有する。この2種類の方式の駆動信号は、インダクタンス負荷であるモータジェネレータ192の状態に基づいて、あるいは変換しようとする交流出力の周波数、などに基づいて、選択される。
上記2種類の方式の内の1つは、出力しようとする交流波形の位相に基づいて、スイッチング素子であるIGBT328、330のスイッチング動作を制御する変調方式(PHM方式として後述する)である。上記2種類の方式の内の他の1つは、出力しようとする交流波形と一定周波数の搬送波との交点に基づいてスイッチング素子であるIGBT328、330のスイッチング動作を制御する方式で、一般にPWM(Pulse Width Modulation)と呼ばれる変調方式である。
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、パルス状の変調波の信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、上アームを駆動する場合、パルス状の変調波の信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからパルス状の変調波の信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極に出力する。これにより、各IGBT328,330は、入力されたドライブ信号に基づいてスイッチング動作する。こうして制御部170からの駆動信号(ドライブ信号)に応じて行われる各IGBT328,330のスイッチング動作により、電力変換装置140は、直流電源であるバッテリ136から供給される電圧を、電気角で2π/3 rad毎にずらしたU相、V相、W相の各出力電圧に変換し、3相交流モータであるモータジェネレータ192に供給する。なお、電気角とは、モータジェネレータ192の回転状態、具体的には回転子の位置に対応するものであって、0から2πの間で周期的に変化する。この電気角をパラメータとして用いることで、モータジェネレータ192の回転状態に応じて、各IGBT328,330のスイッチング状態、すなわちU相、V相、W相の各出力電圧を決定することができる。
また、制御部170は、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、上下アームの直列回路150を保護している。このため、制御部170にはセンシング情報が入力されている。例えば各アームの信号用エミッタ電極端子155,165からは各IGBT328,330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,330を過電流から保護する。上下アームの直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アームの直列回路150の温度の情報がマイクロコンピュータに入力されている。また、マイクロコンピュータには上下アームの直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイクロコンピュータは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、上下アームの直列回路150、引いては、この回路150を含む半導体モジュール、を過温度或いは過電圧から保護する。
図2において、上下アームの直列回路150は、上アームのIGBT328及び上アームのダイオード156と、下アームのIGBT330及び下アームのダイオード166との直列回路である。IGBT328,330は、スイッチング用半導体素子である。パワースイッチング回路144の上下アームのIGBT328,330の導通および遮断動作が一定の順で切り替わる。この切り替わり時のモータジェネレータ192の固定子巻線の電流は、ダイオード156,166によって作られる回路を流れる。
上下アームの直列回路150は、図示するように、Positive端子(P端子、正極端子)157、Negative端子(N端子158、負極端子)、上下アームの接続点169からの交流端子159、上アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)155、上アームのゲート電極端子154、下アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)165、下アームのゲート端子電極164、を備えている。また、電力変換装置200は、入力側に直流コネクタ138を有し、出力側に交流コネクタ188を有して、それぞれのコネクタ138と188を通してバッテリ136とモータジェネレータ192にそれぞれ接続される。また、モータジェネレータへ出力する3相交流の各相の出力を発生する回路として、各相に2つの上下アームの直列回路を並列接続する回路構成の電力変換装置であってもよい。
本実施例では、たとえばモータジェネレータ192の回転速度が比較的低い領域で、モータジェネレータ192をPWM制御方式で制御し(以下PWM制御モードと記す)、一方比較的回転速度が高い領域ではモータジェネレータ192を後述するPHM制御方式で制御する(以下PHM制御モードと記す)。PWM制御モードにおいて、電力変換装置140は図3に示すような一定周波数の搬送波信号を用いて上下アームを構成するスイッチング素子の導通あるいは不導通を制御する駆動信号を発生する。
具体的には、制御回路172内のマイクロコンピュータにより、入力された目標トルク値あるいは目標回転速度に基づいてモータジェネレータ192のd,q軸の指令値を演算し、これをU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、各相の電圧指令値に応じた正弦波を基本波として、これを搬送波である所定周期の三角波と比較し、その比較結果に基づいて決定したパルス幅を有するパルス状の変調波をドライバ回路174に出力する。この変調波に応じた駆動信号をドライバ回路174から各相の上下アームにそれぞれ対応するIGBT328,330へ出力することにより、バッテリ136から出力された直流電圧が3相交流電圧に変換され、モータジェネレータ192へ供給される。
PHM制御については後で詳しく説明する。PHM制御モードにおいて制御回路172により生成された変調波は、ドライバ回路174に出力される。これにより、当該変調波に応じた駆動信号がドライバ回路174から各相の対応するIGBT328,330へ出力される。その結果、バッテリ136から出力された直流電圧が3相交流電圧に変換され、モータジェネレータ192へ供給される。
電力変換装置140のようにスイッチング素子を用いて直流電力を交流電力に変換する場合、単位時間当たりあるいは交流出力の所定周期当たりのスイッチング回数を少なくすると、スイッチング損失を低減することができる反面、変換される交流出力に高調波成分が多く含まれる傾向があるためにトルク脈動が増大し、モータジェネレータ192の制御の応答性が悪化する可能性がある。特にPHM制御方式では、発生する交流電力が低周波数の場合に歪が大きくなる傾向がある。このため本実施の形態では、PWM制御モードとPHM制御モードとを、変換しようとする交流出力の周波数あるいはこの周波数と関連があるモータジェネレータ192の回転速度等に応じて選択的に切り替える。具体的には、低次の高調波の影響を受けにくいモータジェネレータ192の回転域である高速回転域ではPHM制御方式を適用し、トルク脈動が発生し易い低速回転域ではPWM制御方式を適用する。このように選択的にPWM制御方式とPHM制御方式を使用することにより、トルク脈動の増大を比較的低く抑えることができ、さらにスイッチング損失を低減することができる。
なお、スイッチング回数が最小となるモータジェネレータ192の制御状態として、出力する交流の半サイクルにスイッチング素子を1回ずつ導通あるいは遮断する矩形波による制御状態がある。この矩形波による制御は図3に示す。上記のPHM制御方式においては、出力する交流出力波形における変調度の増大に従って減少する半周期あたりのスイッチング回数がもっとも少なくなった最終的な状態である。以下に説明する如く変調度を徐々に増大すると、発生する交流出力の半周期中のスイッチング素子のスイッチング回数が徐々に減少し、最終的には導通回数が1回となる。従ってPHM制御を行うと矩形波制御への移行制御は、PHM制御方式の一制御形態として滑らかに移行する。この結果、モータジェネレータの発生トルクや回転速度が滑らかに変化し、矩形波制御へ移行できる。この点については後で詳しく説明する。
PHM制御方式を説明するために、図3を参照して、先ず始めにPWM制御と矩形波制御について説明する。図3(A)はPWM制御の概念図であり、電力変換装置に入力される制御指令に基づいてモータジェネレータ192のトルクや回転速度を制御するための交流電力を先ず演算する、この演算された値が図3(A)に、出力する交流波形として示す波形である。上記出力する交流波形と一定周波数の搬送波との大小関係を比較し、比較結果に基づいてスイッチング回路を構成するスイッチング素子の導通や遮断を制御する駆動信号を発生し、スイッチング素子の導通や不導通を制御する方式である。PWM制御方式を用いることで比較的脈動の少ない交流電力をモータジェネレータ192に供給でき、トルク脈動が少ないモータジェネレータ192の制御が可能となる。一方、単位時間当たりあるいは交流波形の周期毎のスイッチング素子のスイッチング回数が多いためにスイッチング損失が大きい欠点がある。
図3(B)は、PWMに対する大変極端な矩形波制御の方式を示す概念図である。この矩形波制御方式では、電力変換装置に入力される制御指令に基づいて演算された出力する交流波形の半周期に1個の矩形波を出力する。この矩形波制御方式では、スイッチング素子のスイッチング回数が少なくなるためにスイッチング損失を少なくできる効果がある。反面、モータジェネレータ192に供給される交流電力の交流波形はインダンタンス負荷の影響を無視すると矩形波状となり、正弦波に対して5次、7次、11次、・・・等の高調波成分が含まれた状態となる。矩形波をフーリエ展開すると基本正弦波に加え、5次、7次、11次、・・・等の高調波成分があらわれる。この高調波成分により電流歪が生じ、モータジェネレータ192のトルク脈動の原因となる。このように、PWM制御と矩形波制御は互いに長所と短所が異なる。
矩形波状にスイッチング素子の導通および遮断を制御する矩形波制御方式により交流電力を発生した場合に、交流出力に生じる高調波成分の例を図4(a)と(b)に示す。図4(a)は、矩形波状に変化する交流波形を基本波である正弦波と5次、7次、11次、・・・等の高調波成分に分解した例である。図4(a)に示す矩形波のフーリエ級数展開は、式(1)のように表される。
f(ωt)=4/π×{sinωt+(sin3ωt)/3+(sin5ωt)/5+(sin7ωt)/7+・・・} ・・・ 式(1)
式(1)は、4/π・(sinωt)で表される基本波の正弦波と、これの高調波成分である3次、5次、7次・・・の各成分とにより、図4(a)に示す矩形波が形成されることを示している。このように、基本波に対してより高次の高調波を合成していくことで矩形波に近づくことが分かる。
図4(b)は、基本波、3次高調波、5次高調波の各振幅をそれぞれ比較した波形図を示す。図4(a)の矩形波の振幅を1とすると、基本波の振幅は1.27、3次高調波の振幅は0.42、5次高調波の振幅は0.25とそれぞれ表される。このように、高調波の次数が上がるほどその振幅は小さくなるため、矩形波制御方式では、高次高調波になるほど影響が小さくなる。
矩形波形状にスイッチング素子を導通および遮断した場合に発生する可能性があるトルク脈動の観点から、影響の大きい低次の高調波成分を削除し、影響が小さい高次の高調波成分に対してその影響を無視してこれら高調波成分を含めることで、矩形波制御方式よりスイッチング回路のスイッチング素子のスイッチング回数が増大するが、PWM方式に比べるとスイッチング素子のスイッチング回数を減少させることが可能となり、スイッチング回数のスイッチング損失を低減できる。高次高調波はトルク脈動に関する影響が少ないため、トルク脈動の増大を低く抑えることができる電力変換器を実現できる。本実施の形態で使用するPHM制御では、矩形波交流電流が有する高調波成分を制御の状態に応じてある程度削減した交流出力を出力し、これにより、モータジェネレータ192の制御のトルク脈動の影響を使用上問題が生じない範囲に押さえ、スイッチング回数のスイッチング損失を大きく低減できる。このような制御方式を、上述のとおり、この明細書ではPHM制御方式と記載している。
続いて上記PHM制御を実現するための制御回路172の構成について図5を用いて説明する。なお、上記制御回路172は、モータジェネレータ192の制御のために、2種類の制御方法でスイッチング回路のスイッチング素子の制御信号を発生する能力を備えており、上記制御信号は制御方式に対応して2種類発生する。次にモータジェネレータ192の2種類の制御の方法を実施の形態として記載する。
−第1の実施の形態−
本発明の第1の実施の形態に係る制御回路172によるモータジェネレータ192の制御系を図5に示す。制御回路172には、上位の制御装置より、目標トルク値としてのトルク指令T*が入力される。電流指令変換部410は、入力されたトルク指令T*と、回転磁極センサ193により検出された磁極位置信号θに基づいて角速度演算器460により演算された電気角速度ωreとに基づいて、予め記憶されたトルク−回転速度マップのデータを用いて、d軸電流指令信号Id*およびq軸電流指令信号Iq*を求める。電流指令変換器410において求められたd軸電流指令信号Id*およびq軸電流指令信号Iq*は、電流制御器(ACR)420、421にそれぞれ出力される。
電流制御器(ACR)420、421は、電流指令変換器410から出力されたd軸電流指令信号Id*およびq軸電流指令信号Iq*と、電流センサ180により検出されたモータジェネレータ192の相電流検出信号lu、lv、lwが制御回路172上の図示しない3相2相変換器において回転センサ−からの磁極位置信号によりd,q軸上に変換されたId,Iq電流信号とに基づいて、モータジェネレータ192を流れる電流がd軸電流指令信号Id*およびq軸電流指令信号Iq*に追従するように、d軸電圧指令信号Vd*およびq軸電圧指令信号Vq*をそれぞれ演算する。電流制御器(ACR)420において求められたd軸電圧指令信号Vd*およびq軸電圧指令信号Vq*は、PHM制御用のパルス変調器430へ出力される。一方、電流制御器(ACR)421において求められたd軸電圧指令信号Vd*およびq軸電圧指令信号Vq*は、PWM制御用のパルス変調器440へ出力される。
PHM制御用のパルス変調器430は、電圧位相差演算器431、変調度演算器432、パルス生成器434により構成される。電流制御器420から出力されたd軸電圧指令信号Vd*およびq軸電圧指令信号Vq*は、パルス変調器430において電圧位相差演算器431と変調度演算器432に入力される。
電圧位相差演算器431は、モータジェネレータ192の磁極位置とd軸電圧指令信号Vd*およびq軸電圧指令信号Vq*が表す電圧位相との位相差、すなわち電圧位相差を算出する。この電圧位相差をδとすると、電圧位相差δは式(2)で表される。
δ=arctan(-Vd*/Vq*) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
電圧位相差演算器431は、さらに上記の電圧位相差δに回転磁極センサ193からの磁極位置信号θが表すロータ位相角を加算することで、電圧位相を算出する。そして、算出した電圧位相に応じた電圧位相信号θvをパルス生成器434へ出力する。この電圧位相信号θvは、磁極位置信号θが表すロータ位相角をθreとすると式(3)で表される。
θv=δ+θre+π・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
変調度演算器432は、d軸電圧指令信号Vd*およびq軸電圧指令信号Vq*が表すベクトルの大きさをバッテリ136の電圧で正規化することにより変調度を算出し、その変調度に応じた変調度信号aをパルス生成器434へ出力する。この実施の形態では、上記変調度信号aは、図2に示すパワースイッチング回路144に供給される直流電圧であるバッテリ電圧に基づいて定められることになり、バッテリ電圧が高くなると変調度aは小さくなる傾向となる。また指令値の振幅値が大きくなると変調度aは大きくなる傾向となる。具体的にはバッテリ電圧をVdcとすると式(4)で表される。なお、式(4)において、Vdはd軸電圧指令信号Vd*の振幅値、Vqはq軸電圧指令信号Vq*の振幅値をそれぞれ表す。
a=(√((2/3)*(Vd^2+Vq^2))/(Vdc/2)・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
パルス生成器434は、電圧位相差演算器431からの電圧位相信号θvと、変調度演算器432からの変調度信号aとに基づいて、U相、V相、W相の各上下アームにそれぞれ対応する6種類のPHM制御に基づくパルス信号を生成する。そして、生成したパルス信号を切換器450へ出力し、切換器450からドライバ回路174へ出力し、各スイッチング素子に駆動信号が出力される。なお、PHM制御に基づくパルス信号(この明細書ではパルス信号と記す以外に特別にPHMパルス信号と記す場合がある)の発生方法については、後で詳しく説明する。
一方、PWM制御用のパルス変調器440は、電流制御器421から出力されたd軸電圧指令信号Vd*およびq軸電圧指令信号Vq*と、回転磁極センサ193からの磁極位置信号θに基づいて角速度演算器460により演算された電気角速度ωreとに基づいて、周知のPWM方式により、U相、V相、W相の各上下アームのそれぞれのスイッチング素子を制御するための6種類のPWM制御に基づくパルス信号(以下PWMパルス信号と記す)を生成する。上記6種類のPWM制御に基づくパルス信号(以下PWMパルス信号と記す)がそれぞれのスイッチング素子の動作を導通あるいは非導通に制御する。発生したPWMパルス信号を切換器450へ送る。
切換器450は、PHM制御用のパルス変調器430から出力されたPHMパルス信号、またはPWM制御用のパルス変調器440から出力されたPWMパルス信号のいずれか一方を選択し、選択した信号に基づいてドライブ回路174にパルス信号を送信し、ドライブ回路174は切換器450により選択されたパルス信号に基づいて、各スイッチング素子のスイッチング動作を制御する駆動パルスを発生し、各スイッチング素子のゲートに電流を供給する。この切換器450によるパルス信号の選択動作は、前述のようにモータジェネレータ192の回転速度などに応じて行われる。例えば、モータジェネレータ192の回転速度が、切替ラインとして設定された所定のしきい値よりも低い場合は、PWM方式によりパルス変調器440で発生したパルス信号を選択する。このためモータジェネレータ192の回転速度がしきい値より低い状態では、電力変換装置140はPWM制御方式でモータジェネレータ192を制御する。一方モータジェネレータ192の回転速度が高い場合は、パルス生成器434が発生するパルス信号が切換器450により選択され、電力変換装置140はPHM制御方式でモータジェネレータ192を制御する。
PHM制御方式はスイッチング回路のスイッチング素子のスイッチング回数を少なくできる効果があるが、出力する交流の位相に基づいてスイッチング動作を行うため、出力する交流の周波数が低い状態では、歪などが生じやすい問題がある。出力する交流周波数の低い状態では、従来のPWM制御方式を利用することで、制御特性を改善できる効果がある。
以上説明したようにして、制御回路172からドライバ回路174に対して、PHMパルス信号またはPWMパルス信号が出力される。このパルス信号に基づいて、ドライバ回路174がパワースイッチング回路144の各IGBT328,330へ駆動信号を出力する。
次に図5のパルス生成器434の詳細について説明する。本実施の形態において、パルス生成器434は、たとえば図6に示すように、パルス演算器435と、該パルス演算器435の演算結果に基づきパルス信号を発生するパルス出力回路436とを備えている。パルス演算器435は、例えば図7に示すように、位相検索器437とパルス補正器438とを備えている。図5の電流指令変換器410、電流制御器(ACR)420、電流制御器(ACR)421、電圧位相差演算器431、変調度演算器432、および図7の位相検索器437とパルス補正器438、の機能は、プログラムにより動作するプロセッサの処理により行われる。またパルス変調器440も図6の如く演算部とパルス出力部を備えており、パルス変調器440の演算部もプログラムにより動作するプロセッサの処理により行われる。また、この明細書では実際の代数計算の他、大小比較やデータテーブルからの検索などの処理も含め、演算と呼んでいる。
上述のようにパルス演算部の演算結果である、パルス信号を発生するための立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'がパルス信号の発生のためのパルス出力回路436に入力され、パワースイッチング回路の各スイッチング素子に対応したパルス信号が出力される。図6のパルス出力回路436の詳細回路の一例を図53に示す。なお、パルス演算器434が出力する各スイッチング素子の導通や非導通(遮断)に関する演算結果から、各スイッチング素子毎のパルス信号を発生する回路は、各スイッチング素子それぞれにおいて同じ回路で同じ動作であるので、代表して一つのスイッチング素子に対する一つのパルス信号の発生について開示および説明し、他は煩雑さを避けるために省略する。また、パルス変調器440も基本的には図6の構成の如くパルス演算器とパルス出力回路を備えており、該パルス出力回路は図53と同様の回路である。
図7の位相検索器437は、電圧位相差演算器431からの電圧位相信号θv、変調度演算器432からの変調度信号aおよび角速度演算器460からの電気角速度信号ωreに基づいて、予め記憶されたパルス信号の位相情報のテーブルから、パルス信号の立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffをU相、V相、W相の上下各アームについて検索し、その検索結果の情報をパルス補正器438へ出力する。ここでパルス信号とは、図2のパワースイッチング回路144を構成する6個のスイッチング素子であるIGBT328あるいは330のそれぞれについての導通動作のために使用する信号である。パルス信号に基づいてドライバ回路174からIGBT328あるいは330のゲート端子に駆動パルスを加えると、加えられたIGBTがパルス信号のハイレベル(真理値の「1」)の期間導通する。ここでパルス信号のハイレベルは、電圧値の高低を指すのではなく、スイッチング素子を導通する期間を意味し、パルス信号のローレベル(真理値の「0」)は、電圧値の高低を指すのではなく、スイッチング素子を遮断する期間を意味する。パルス補正器438は、位相検索器437でデータ検索による演算で求められた立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffに対して、最小パルス幅制限とパルス連続性補償を行うためのパルス補正処理などの補正すなわち微調整を施し、その結果をパルス補正後の立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'としてパルス出力回路436へ出力する。ここで、位相θonおよび位相θon'はパルス信号をハイレベル(真理値の「1」)に変える位置すなわちタイミングを意味し、位相θoffおよび位相θoff'はパルス信号をローレベル(真理値の「0」)に変える位置すなわちタイミングを意味する。具体的には、位相θonおよび位相θon'あるいは位相θoffおよび位相θoff'はタイミングを決めるための図53の位相カウンタ510の計数値を表しており、位相関数の代わりに時間関数で演算結果が出力される場合には、上記位相カウンタ510は単位位相角に基づくパルスを計数する代わりに、クロックパルスを計数するタイマカウンタ510‘として動作する。
パルス出力回路436は、パルス演算器435のパルス補正器438から出力されたパルス補正後の立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'に基づいて、U相、V相、W相の上下各アームに対するスイッチング動作指令のためのパルス信号をそれぞれのスイッチング素子に対応して生成する。パルス出力回路436により作られた各相の上下各アームに対する6種類のPHMパルス信号は、前述のように切換器450へ出力され、前記切換器450およびドライバ回路174を介して、図2に示す各IGBTのゲートに供給される。
本実施の形態におけるパルス生成器434の基本動作を図8および図52を用いて説明する。図8も図52も略同じ内容を開示しているが、図8は位相角の関数に基づいて動作する例であり、図52は位相角を時間の関数に変換した、時間の関数に基づいて動作する例である。時間の関数による動作は位相の関数による動作と基本的には同じであるが、位相角の関数で演算された演算結果を、回転速度のデータを使用して時間関数に変換し、パルス出力回路に入力する。この場合演算結果の比較対象となる計数値をクロックを計数するタイマカウンタを使用して発生することが可能で、回路が簡単になる効果がある。
図5に示したモータジェネレータ192の制御システムでは、制御システムの性能からの要求などに応じて、モータジェネレータ192に対する制御周期Tが定められる。この制御周期Tはたとえば数百μs程度である。この制御周期毎に、上述の図7の演算処理が実行され、その次の制御周期で発生するパルス信号の立上がり位相θon'あるいは、および、立下がり位相θoff'が演算される。図8および図52を用いて演算結果に基づくパルス信号の発生動作を説明する。
今、図7の演算処理の実行タイミングが、制御周期Tn−1を終了したタイミングで、すなわち制御周期Tnの開始タイミングにあると仮定する。なお図示されていない制御周期Tn−1では、制御周期Tnの期間に発生するパルス信号のための演算が行われ、演算された結果は作業用のメモリ(RAM)に一時保持される。図8や図52に示す例では制御周期Tnの期間はたまたまパルス信号を発生しない状態なので、制御周期Tn−1での演算結果はパルス信号を発生しない内容を示している。
この実施の形態では、制御周期Tnの期間に発生するパルス信号の演算期間は制御周期Tn−1であり、その演算結果は、次の制御周期Tnの開始時に作業用メモリ(RAM)から読み出され、図6のパルス出力回路436にセットされる。図53は図6のパルス出力回路436の詳細回路の一例であり、図53のレジスタ516にセットされる。このセットされた演算結果に基づき、図6や図53のパルス出力回路436が動作してパルス信号が出力される。しかし、上述のとおり今レジスタ516に書き込まれた演算結果はパルス信号を発生しない内容のデータなので、制御周期Tnではパルス出力回路436はパルス信号を発生しない。本実施の形態では演算結果を図6や図53のパルス出力回路436にセットするタイミングは制御周期の開始時期であるがこれは一例であり、制御周期Tnの開始時でなくてもよく、制御周期Tn−1における演算後すぐに、演算結果をセットしても良い。例えば、図53のレジスタ516の既に保持されている立上がり位相θon'や立下がり位相θoff'の後に、新たな演算結果を入力するようにしても良い。パルス出力回路436は入力された順に、入力された演算結果に基づいてパルス信号を出力するので、演算結果に基づくパルス信号の出力動作が行われる。すなわち、演算結果に基づくパルス信号を発生するタイミングの前にパルス出力回路436に演算結果をセットできればよい。
パルス生成器434のパルス演算器435は、制御周期毎に、スイッチング素子であるIGBT328、330スイッチング動作を制御するためのパルス信号の立上げタイミングおよび立下げタイミングを繰り返し演算する。上述したとおり、パルス生成器434の演算機能は、実際はコンピュータプログラムにより動作するコンピュータの処理により実現される。上記コンピュータは本出願の実施の形態の処理だけでなくシステムに必要な他の処理も実行するので、上記コンピュータは上記制御周期中の短い期間で、図7(図9)に示す演算を完了する。この図7(図9)の演算処理は、実行周期毎に繰り返し行われる。図7の演算処理について、位相検索器437の具体的な処理内容は図9の801〜805まで、パルス補正器438の具体的な処理内容は図9の806および図14に示す。上記コンピュータの演算期間は、図8や図52において演算処理期間opnとして示す。
制御周期Tn演算処理期間opnでTn+1の制御周期中に発生するパルス信号に関する演算が実行される。制御周期Tnの開始時にその前の演算周期Tn−1で実行された演算結果をパルス演算器435のセットし、その後引き続き図7(図9)の演算を実行する。また、制御周期Tn+2で発生するパルス信号に関する演算は、制御周期Tn+1の演算処理期間opnで実行される。
制御周期Tnの演算処理期間opnでは、電圧位相差演算器431によりロータ位相角θreが取得される。このロータ位相角θreに基づいて、電圧位相差演算器431において前述の式(3)により電圧位相が演算され、電圧位相信号θvがパルス生成器434の位相検索器437へ出力される。パルス生成器434の位相検索器437は、この電圧位相信号θvと角速度演算器460からの電気角速度信号ωreから、次の制御周期Tn+1の開始位相θv1および終了位相θv2を算出し、その範囲における立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffを予め演算結果が保持されているメモリのテーブルより検索により算出される。この立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffに基づいて、パルス補正処理後の立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'がパルス補正器438により演算される。演算結果に基づき、パルス出力回路436の位相カウンタとのコンペアマッチ機能により、パルス信号が出力される。なお上述のとおり、図8と図53は、代表例として6個のスイッチング素子の導通動作を行うためのパルス信号の1つ発生動作を例示している。
図8に示す動作では制御周期Tnでの演算処理で、制御周期Tn+1でのパルス信号の立上がり位相θon'とパルス信号の立下がり位相θoff'のタイミングを決めるためのカウンタ518(図53)の計数値C1とC2が演算により求められる。図52では、立上がり位相θon'とパルス信号の立下がり位相θoff'のタイミングに対応する時間関数TonとToffとに対応する計数値C1とC2が演算により求められる。演算結果である位相θon'と位相θoff'あるいは時間TonとToffの位置を決めるための値C1とC2をレジスタ516にセットする共に、パルス信号の立下がりや立下がりを指定するビット(レジスタ516のR/S部)に、演算結果に基づく内容をセットする。R/S部で例えば、例えばRは2進数の「ゼロ」で立下がり、Sは2進数の「1」で立上りを表す。
制御周期Tn+1の開始時にレジスタ516に、演算結果に基づき計算値C1と「S」および計算値C2と「R」が順に入力される。入力されたデータに基づき、計算値C1がレジスタ518に保持され、信号「S」がフリップフロップ512に入力される。レジスタ516に最初に入力されたデータの内、「S」信号に基づいてフリップフロップ512はセット状態となり、セット信号「1」をアンドゲート513Sに送信し、一方アンドゲート513Rに信号「0」を送り、アンドゲート513Rを開状態とする。一方アンドゲート513Rは閉状態となる。
カウンタ510はクロック信号又は単位位相角を表すパルス信号を計数する。図8に示す如く、計算値C1が角度関数の場合には、カウンタ510は単位位相角を表すパルス信号を計数する。一方図52に示す如く、計算値C1が時間の関数であれば、カウンタ510はクロックパルスを計数する。
位相θon'あるいは時間Tonでカウンタ510の計数値とレジスタ518の値が一致し、比較器511の出力がゲート513Sを介してフリップフロップ514Sに入力され、フリップフロップ514Sの出力が立上がる。パルス信号がフリップフロップ514からドライバ回路174に供給され、ドライバ回路174から対応するスイッチング素子に駆動電流が供給され、対応するスイッチング素子が導通状態となる。パルス信号の立上がりタイミングでは、フリップフロップ512の出力により、ゲート513Sが開き、ゲート513Rが閉じる。一方演算結果の立下がりデータでは、フリップフロップ512がリセット状態となり、ゲート513Sが閉じ、ゲート513Rが開く。
上記位相θon'あるいは時間Tonのタイミングで比較器511の出力が発生すると、比較器の出力によりフリップフロップ514がセット状態となると共に、レジスタ516に信号が送られ、レジスタ516のデータがレジスタ518の方にシフトし、演算結果C2がレジスタ518に入力され、立下りを意味する信号「R」がフリップフロップ512に入力され、フリップフロップ512のリセット側から信号「1」がゲート513Rに送られる。ゲート513Sが閉じ、ゲート513Sが開く。位相θoff'あるいは時間Toffのタイミングで比較器511の出力がゲート513Rを介してフリップフロップ514のリセット側に入力され、フリップフロップ514からの出力パルスが立ち下がる。この動作により、図8や図52に示すパルス信号が発生する。
なお、制御周期Tn+1の期間に発生するパルスがこれで終了するので、レジスタ516の残りの部分には、例えばカウンタ510の計数値より大きい値が入力されている。位相θoff'あるいは時間Toffのタイミングでの比較器511の出力により、レジスタ516にはカウンタの最大計数より大きい値が保持される。比較器511は以後、レジスタ516のデータが書き換えられるまで、条件が成立することが無く、出力信号を発生しない。
上述の図6と図7のパルス演算器435の動作を詳細に説明したフローチャートを図9に示す。このフローチャートの動作を行うためのプログラムは、図8や図52の制御周期の開始に合わせて実行される。ステップ801で前の周期で演算されて、一時保持メモリRAMに保持されていた演算結果をパルス出力回路436に入力する。すなわち演算結果が図53のレジスタ516に入力される。次にステップ802で、パルス演算器435内の位相検索器437により、電圧位相差演算器431からの電圧位相信号θv、変調度演算器432からの変調度信号a、および角速度演算器460からの電気角速度信号ωreを取得する。ステップ803では、位相検索器437により、ステップ801で取得した電気角速度ωreに制御周期Tnの長さを乗算することで、一制御周期当たりの位相変化量θnを算出する。ステップ804では、位相検索器437により、ステップ802で取得した電圧位相θvにステップ803で算出した位相変化量θnを加えることで、制御周期Tnの終了位相、すなわち次の制御周期Tn+1の開始位相θv1を求める。また、位相変化量θnを2倍した値を電圧位相θvに加えることで、次の制御周期Tn+1の終了位相θv2を求める。
ステップ805では、位相検索器437により、次の制御周期Tn+1の期間、すなわち開始位相θv1から終了位相θv2までの範囲内で、メモリに記憶された位相情報のテーブルに基づいて立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffを算出する。このとき位相検索器437はROM検索を行う。ROM検索では、ステップ801で取得した変調度aに基づいて、ステップ803で演算された電圧位相の範囲において、ROM(不図示)に予め記憶されたテーブルより、スイッチングオンのタイミングを規定する立上がり位相と、スイッチングオフのタイミングを規定する立下がり位相とを検索する。このROM検索において用いられる立上がり、立下がり位相のテーブルの例を図10に示す。ここでは、MF1からMFnまでの各変調度について立上がり位相と立下がり位相をテーブル化した例を示している。ステップ804で算出した立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffは、パルス補正器438へ出力する。
ステップ806では、パルス演算器435内のパルス補正器438により、ステップ804で算出された立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffに対して、最小パルス幅制限とパルス連続性補償を行うためのパルス補正処理を行う。そして、パルス補正後の立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'をパルス出力回路436へ出力する。このパルス補正処理の具体的な内容は後で詳しく説明する。以上説明したステップ801〜806の処理を制御周期の開始条件に基づいて実行することにより、パルス出力回路436に演算結果が入力され、パルス出力回路436からパルス信号が切替器450に送られる。
次に、図9のステップ806で実行されるパルス補正処理について説明する。前述したようにパルス補正処理は、パルス補正器438において、生成されるPHMパルスに対して最小パルス幅制限とパルス連続性補償を施すために実行される。最小パルス幅制限とは、ステップ804で算出された立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffに応じたパルス幅が所定の最小パルス幅未満となるような場合に、そのパルス幅を最小パルス幅として出力することである。このときの最小パルス幅は、スイッチング素子であるIGBT328、330の応答速度などに応じて定められる。パルス連続性補償とは、一制御周期前の演算に基づいて生成されたパルス波形と今回の制御周期で生成すべきパルス波形との間でパルスパターンが変化しており、そのままではパルス連続性が保てなくなるような場合に、パルス連続性が保たれるように、あるいは異常が発生しないように、あるいは特性が低下しないように、パルス波形を変化して出力することである。なお、こうしたパルスパターンの変化は、演算のための入力値の変化により発生するもので、外乱等の要因でモータジェネレータ192の状態が急峻に変化したときや、制御モードを切り替えたときなどに特に発生し易い。
図11は、上記連続性補償を行わない場合に、パルス信号のパルスパターンの変化が生じる例を示す。制御周期Tn-1において、上述の方法により立上がり位相θonが算出され、制御周期Tnにおいてパルス信号11aの実線の信号が出力されたとする。このパルス信号11aは制御周期Tn-1において既に演算された結果であり、制御周期Tnの演算において変更することができない。制御周期Tnにおいて入力パラメータが前制御周期に対して変化することにより、制御周期Tnにおける演算結果が制御周期Tn-1の状態に対して変化することが起こる。図11の例では入力パラメータの変化により、制御周期Tn-1での演算に基づくパルス信号11aが、制御周期Tnで実線の値を取りさらに制御周期Tn+1の点線部で立下がる予定であり、立下がり位置が制御周期Tnで計算される予定であった。しかし入力パラメータの変化により、制御周期Tnにおいて演算された結果は、パルス信号11bの波形に変化し、制御周期Tnの演算では制御できない制御周期Tnで既に立下がる動作に変わってしまった。このようにモータジェネレータの状態が変化するなどに伴い、入力パラメータが変化した場合に、隣接する制御周期間でパルス信号の連続性が維持できない問題が生じる。
制御周期Tn+1で発生するパルス信号11bに関する演算が行われる、制御周期Tnでの演算で、図11に示す場合には、次の制御周期Tn+1で発生するパルス信号11bの波形には立上がりや立下がりの変化が生じないとの結果になっている。このパルス信号11bは、制御周期Tn+1の期間は、立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffが存在しないためはデータ設定がなされない、あるいは図53のカウンタ510の最大値より大きな値を新たに入力し、立上がりおよび立下がりのタイミングパルスが比較器511から発生しない状態とするなどの操作が行われる可能性が起こりうる。
しかし、制御周期Tnで既に出力されたパルス波形11aでは、位相θv1においてオフ(ローレベル)ではなくオン(ハイレベル)となっているため、実際にパルス出力回路436から出力されるパルス信号11cは、制御周期Tn+1において本来はオフ(ローレベル)となるべきところがオン(ハイレベル)となってしまい、演算結果と異なり、長い期間ハイレベルが続く異常なパルス信号を出力する心配がある。例えばパルス信号が長い期間ハイレベルを続けるとスイッチング素子の導通時間が異常に長くなり、電流値が異常に増大するなどの問題を発生し、ひいては安全性を損なう心配がある。
図12は、制御周期を跨ぐパルス信号の連続性に関するトラブルを解決するために、パルス信号の連続性補償を行った場合に出力されるパルス信号を示す。この場合、制御周期Tnで次の制御周期Tn+1のパルス信号12bを演算したとき、そのパルス信号12bの発生動作の開始位置、この実施例では制御周期の開始位置である位相θv1におけるパルス信号のハイあるいはローレベルの状態、すなわちスイッチング素子であるIGBT328、330の導通または遮断の制御状態を確認し、制御周期Tnのパルス信号12aと比較する。その結果、パルス信号12aとパルス信号12bの信号レベル(ハイまたはロー)状態が位相θv1において不一致で、隣接する制御周期の境界でパルス信号が不連続な関係となっている場合に補正処理を行う。補正処理後のパルス信号をパルス信号12cに示す。パルス信号12cのレベル(ハイまたはロー)の状態を位相θv1で強制的に前のパルス信号のレベル(ハイまたはロー)の状態に合わせる処理が行われる。これにより、パルス信号の不連続性による問題を解決できる。
先にも述べたが、この明細書でパルス信号のハイレベルとは2値信号の一方を意味し、スイッチング素子を導通状態にすることを意味する信号である。またパルス信号のハイレベルとは2値信号の他方であり、スイッチング素子を遮断状態にすることを意味する信号である。パルス信号のハイレベルとローレベルは、上述のとおり論理値の一方と他方を意味しており、パルス信号の実際の電圧値が高いか低いかを直接意味するものではない。
図12で、パルス出力回路436への新たな演算結果の書き込みタイミングである位相θv1において、パルス信号12aがハイレベルであり、パルス信号12bがローレベルである場合に、上述の補正操作を行う。この場合は、位相θv1において補正後のパルス信号12cを強制的にローレベルとする操作を行う。例えば、位相θv1でパルス補正後の立下がり位相θoff'となるデータを、新たにパルス出力回路436に設定する。一方、図12の開示内容とは反対に、制御周期の切り替え部である位相θv1において、パルス信号12aがローレベルであり、パルス信号12bがハイレベルである場合は、位相θv1において補正後のパルス信号12dを強制的にハイレベルとする。この場合、位相θv1で補正後のパルス信号が立上がるように、位相θon'となるデータを設定する。なお、パルス信号12aとパルス信号12bのオンオフ状態が位相θv1でのデータ設定により一致するように補正することで、パルス信号の不連続に起因する問題を解決できる。
パルス信号の連続性に基づく補償制御を行うために、パルス信号のレベルを強制的に変更する場合、最小パルス幅制限により、そのパルス幅が前述した最小パルス幅未満とならないように、インバータ回路のデッドタイムを考慮することが望ましい。図13は、最小パルス幅制限の条件を満たしたパルス信号の例を示している。パルス信号13aは、制御周期Tn-1で算出し、制御周期Tnの位相θonのタイミングで立上がる波形を示している。このパルス信号13aの破線部分は制御周期Tnで演算される部分である。
制御周期Tnにおける演算では、入力パラメータが制御周期Tn-1に対して変化し、その結果制御周期Tnでの演算結果がパルス信号13bの破線で示され波形となり、パルス信号13aとは変わってしまっている。図12で説明のように、制御周期Tn+1の開始時に強制的にパルス信号をローレベルに変化させると、パルス信号はパルス信号13cの波形となる。パルス信号のハイレベルの幅が非常に短くなる。上述のようにパルス信号のハイレベルはパワースイッチング回路144のスイッチング素子であるIGBTの導通状態を示す。スイッチング素子の正確な動作を得るにはある時間以上の幅で、スイッチング素子への導通のための駆動信号をゲート端子に加えることが必要である。従って上記パルス信号のハイレベルの幅を所定のパルス幅以上とすることが必要となる。
パルス信号13cでは、上記最小パルス幅の制限を満足できない。このような場合、パルス信号のハイレベルの幅を最小パルス幅以上となるように拡大する必要がある。パルス信号13dは、パルス信号のハイレベルの幅が最小パルス幅以上なるように補正制御した例である。
図13はパルス信号のハイレベルの幅を最小パルス幅以上となるように拡大した例であるが、パルス信号のローレベルの幅が非常に短くなる場合も問題を生じる。スイッチング素子の正確な動作を得るには、スイッチング素子の遮断時間が短いと、正確な動作を得ることができない。パワースイッチング回路144の上下アームの直列回路が短絡すると大きな事故に繋がる。このため直列回路を構成する上下アームのどちらかが遮断状態となっていることが必要である。パルス信号のローレベルの幅が非常に短い場合、スイッチング素子を安定して遮断することが困難となり、直列回路の短絡事故を起こす恐れがある。このため、パルス信号のローレベルの幅が短い場合に、パルス信号のローレベルの幅を所定の時間以上に広げる動作を行う。
以上説明したパルス信号の制御周期を跨ぐ場合のトラブルを解決する補正処理の手順を、図14のフローチャートを用いて、詳細に説明する。このフローチャートは、図11から図14を用いて説明した課題を解決するための処理であり、制御周期Tnの演算処理において行われるパルス信号の補正処理例として説明する。従って図14のフローチャートで処理された演算結果が、制御周期Tn+1の開始時にパルス出力回路436に入力され、制御周期Tn+1でのパルス信号の発生動作に反映される。
ステップ901において、パルス補正器438は、図9のステップ804において位相検索器437により算出された立上がり位相θonが次の制御周期Tn+1の間に存在するか否かを判定する。制御周期Tn+1の間に立上がり位相θonがある場合はステップ902へ進み、ない場合はステップ908へ進む。ステップ902において、パルス補正器438は、図9のステップ804において位相検索器437により算出された立下がり位相θoffが次の制御周期Tn+1の間に存在するか否かを判定する。制御周期Tn+1の間に立下がり位相θoffがある場合はステップ903へ進み、ない場合はステップ905へ進む。
ステップ903において、パルス補正器438は、立上がり位相θonから立下がり位相θoffまでの期間、または立下がり位相θoffから立上がり位相θonまでの期間に対応するパルス幅ΔTが、所定の最小パルス幅未満であるか否かを判定する。なお、パルス幅ΔTは、立上がり位相θonと立下がり位相θoffの位相差を求め、その位相差を電気角速度ωreで除算することによって求めることができる。また、最小パルス幅は、前述のようにスイッチング素子であるIGBT328、330の応答速度などに応じて予め定めることができる。パルス幅ΔTが最小パルス幅未満である場合はステップ904へ進み、最小パルス幅以上である場合はステップ916へ進む。
ステップ904において、パルス補正器438は、位相検索器437によって算出されたパルスを削除する。すなわち、位相検索器437から出力された立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffの値に関わらず、パルス補正後の立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'のいずれをもパルス出力回路436へ出力しないようにする。これにより、図9のステップ807でパルス出力回路436によって生成されるPHMパルス信号が制御周期Tn+1の期間内では変化せず、スイッチング素子であるIGBT328、330の導通または遮断の制御状態が維持されるようにする。ステップ904を実行したら、ステップ916へ進む。
ステップ905において、パルス補正器438は、次の制御周期Tn+1の先頭がオフ領域であるか否かを判定する。オフ領域である場合、すなわち制御周期Tnで位相検索器437によって算出されたパルス信号が位相θv1においてオフ状態である場合は、ステップ906へ進む。一方、オン領域である場合、すなわち制御周期Tnで位相検索器437によって算出されたパルス信号が位相θv1においてオン状態である場合は、ステップ913へ進む。
ステップ906において、パルス補正器438は、位相検索器437によって算出されたパルスを次の制御周期Tn+1の先頭において強制的に立ち下げる。すなわち、位相θv1をパルス補正後の立下がり位相θoff'として新たに設定することで、図9のステップ807でパルス出力回路436によって生成されるPHMパルス信号が制御周期Tn+1の先頭で強制的にオフされるようにする。これにより、パルス補正器438において、制御周期TnにおけるIGBT328、330の遮断状態と、次の制御周期Tn+1におけるIGBT328、330の遮断状態との関係が不連続の関係となった場合に、IGBT328、330の遮断の制御を追加して行うようにする。ステップ906を実行したら、ステップ913へ進む。
ステップ907において、パルス補正器438は、図9のステップ804において位相検索器437により算出された立下がり位相θoffが次の制御周期Tn+1の間に存在するか否かを判定する。制御周期Tn+1の間に立下がり位相θoffがある場合はステップ908へ進み、ない場合はステップ910へ進む。
ステップ908において、パルス補正器438は、次の制御周期Tn+1の先頭がオン領域であるか否かを判定する。オン領域である場合、すなわち制御周期Tnで位相検索器437によって算出されたパルス信号が位相θv1においてオン状態である場合は、ステップ909へ進む。一方、オフ領域である場合、すなわち制御周期Tnで位相検索器437によって算出されたパルス信号が位相θv1においてオフ状態である場合は、ステップ913へ進む。
ステップ909において、パルス補正器438は、位相検索器437によって算出されたパルスを次の制御周期Tn+1の先頭において強制的に立ち上げる。すなわち、位相θv1をパルス補正後の立上がり位相θon'として新たに設定することで、図9のステップ807でパルス出力回路436によって生成されるパルス信号が制御周期Tn+1の先頭で強制的にオンされるようにする。これにより、パルス補正器438において、制御周期TnにおけるIGBT328、330の導通状態と、次の制御周期Tn+1におけるIGBT328、330の導通状態との関係が不連続の関係となった場合に、IGBT328、330の導通の制御を追加して行うようにする。ステップ909を実行したら、ステップ913へ進む。
ステップ910において、パルス補正器438は、次の制御周期Tn+1の先頭がオン領域であるか否かを判定する。オン領域である場合、すなわち制御周期Tnで位相検索器437によって算出されたパルス信号が位相θv1においてオン状態である場合は、ステップ911へ進む。一方、オフ領域である場合、すなわち制御周期Tnで位相検索器437によって算出されたパルス信号が位相θv1においてオフ状態である場合は、ステップ912へ進む。
ステップ911において、パルス補正器438は、ステップ909と同様に、位相検索器437によって算出されたパルスを次の制御周期Tn+1の先頭において強制的に立ち上げる。すなわち、位相θv1をパルス補正後の立上がり位相θon'として新たに設定することで、図9のステップ807でパルス出力回路436によって生成されるPHMパルス信号が制御周期Tn+1の先頭で強制的にオンされるようにする。これにより、パルス補正器438において、制御周期TnにおけるIGBT328、330の導通状態と、次の制御周期Tn+1におけるIGBT328、330の導通状態との関係が不連続の関係となった場合に、IGBT328、330の導通の制御を追加して行うようにする。ステップ911を実行したら、ステップ913へ進む。
ステップ912において、パルス補正器438は、ステップ906と同様に、位相検索器437によって算出されたパルスを次の制御周期Tn+1の先頭において強制的に立ち下げる。すなわち、位相θv1をパルス補正後の立下がり位相θoff'として新たに設定することで、図9のステップ807でパルス出力回路436によって生成されるPHMパルス信号が制御周期Tn+1の先頭で強制的にオフされるようにする。これにより、パルス補正器438において、制御周期TnにおけるIGBT328、330の遮断状態と、次の制御周期Tn+1におけるIGBT328、330の遮断状態との関係が不連続の関係となった場合に、IGBT328、330の遮断の制御を追加して行うようにする。ステップ912を実行したら、ステップ913へ進む。
ステップ913において、パルス補正器438は、前回の制御周期Tn-1において演算されたパルス補正後の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'の情報を前回値として取得し、この前回値に基づいて強制切替時のパルス幅を計算する。すなわち、ステップ906、909、911または912において今回のパルス補正後の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'として新たに設定された位相θv1と、前回値の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'との位相差を求め、その位相差を電気角速度ωreで除算することによって強制切替時のパルス幅を計算する。なお、前回値の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'の情報は、後述するステップ916において保存されたものが取得される。複数の位相値が前回値の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'として保存されている場合は、その中で位相θv1に最も近いものが取得される。
ステップ914において、パルス補正器438は、ステップ913で計算された強制切替時のパルス幅が最小パルス幅未満であるか否かを判定する。なお、最小パルス幅はステップ903の判定で使用されたのと同じものが用いられる。強制切替時のパルス幅が最小パルス幅未満である場合はステップ915へ進み、最小パルス幅以上である場合はステップ916へ進む。
ステップ915において、パルス補正器438は、ステップ913で計算された強制切替時のパルス幅を最小パルス幅となるようにセットする。すなわち、ステップ906、909、911または912において設定された今回のパルス補正後の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'の値を、その初期設定値であるθv1から変更して、前回値の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'に最小パルス幅分に相当する位相値を加えたものとする。
これにより、パルス補正器438において、強制切替時のパルス幅が最小パルス幅未満とならないように制限する。なお、ステップ906、909、911および912がいずれも実行されていない場合は、ステップ913〜915の各処理を省略してもよい。
ステップ916において、パルス補正器438は、上記の各処理によって最終的に決定されたパルス補正後の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'をパルス出力回路436へ出力する。すなわち、ステップ903においてパルス幅ΔTが最小パルス幅以上であると判定された場合は、位相検索器437からの立上がり位相θonと立下がり位相θoffをそのままパルス補正後の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'として出力する。また、ステップ906、909、911または912により、パルスを強制的に立上げまたは立下げしたときのパルス補正後の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'の値を設定した場合は、その設定値を出力する。ただし、ステップ915を実行することで設定値を変更した場合は、その変更後の設定値を出力する。
ステップ917において、パルス補正器438は、ステップ916で出力されたパルス補正後の立上がり位相θon'または立下がり位相θoff'の値を不図示のメモリに保存する。ここで保存された値が、次の制御周期Tn+1において図14のフローチャートを実行するときに前回値として取得される。
以上説明したステップ901〜917の処理により、パルス補正器438においてパルス補正処理が行われる。
上記のパルス補正処理によって出力されるパルス信号の例を図15〜図22にそれぞれ示す。図15は、図14のフローチャートにおいて、ステップ901、902、903および904の各処理を順に実行した場合のパルス信号の例を示している。この場合、制御周期Tnにおいて、たとえばパルス信号15aが出力される。このパルス信号15aは、制御周期Tn-1での演算に基づいたものであり、制御周期Tnにおいて変更することはできない。制御周期Tnでは、次の制御周期Tn+1のパルス信号15bを予測する演算を行う。このパルス信号15bにおけるパルス幅ΔTが最小パルス幅より狭いとステップ903において判定されると、当該パルスはステップ904において削除される。その結果、実際に出力される補正演算に基づくパルス信号はパルス信号15cとなり、パルス信号のハイレベル部分が削除される。このようにして最小パルス幅以下のハイレベル幅(スイッチング素子の導通幅)を持つパルス信号の発生が抑制される。
図16は、図14のフローチャートにおいて、ステップ901、902および903の各処理を順に実行し、ステップ904の処理を実行しなかった場合のパルス信号の例を示している。この場合、制御周期Tnにおいて、たとえばパルス信号16aが出力される。このパルス信号16aは、制御周期Tn-1での予測演算に基づいたものであり、制御周期Tnにおいて変更することはできない。制御周期Tnでは、次の制御周期Tn+1のパルス信号16bを演算する。このパルス信号16bにおけるパルス幅ΔTが最小パルス幅以上であるとステップ903において判定されると、ステップ904は実行されない。その結果、パルス信号16bがそのまま補正後のパルス信号16cとして出力される。
図17は、図14のフローチャートにおいて、ステップ901、902、905および906の各処理を順に実行した場合のパルス信号の例を示している。この場合、制御周期Tnにおいて、たとえばパルス信号17aが出力される。このパルス信号17aは、制御周期Tn-1での演算に基づいたものであり、制御周期Tnにおいて変更することはできない。制御周期Tnでは、次の制御周期Tn+1のパルス信号17bを予測演算する。このパルス信号17bにより、制御周期Tn+1の開始時点の位相θv1がオフ状態(ローレベル状態)であるとステップ905において判定されると、ステップ906において位相θv1がパルス補正後の立下がり位相θoff'とするための新たにデータがパルス出力回路436に設定される。その結果、実際に出力される補正演算に基づくパルス信号は、パルス信号17cに示す波形となる。このパルス信号17cは制御周期Tn+1の開始時点において強制的に立ち下げられる。このようにしてパルス信号のハイレベル状態が異常に長く続く課題を補正処理により解決できる。
図18は、図14のフローチャートにおいて、ステップ901、902および905の各処理を順に実行し、ステップ906の処理を実行しなかった場合のパルス信号の例を示している。この場合、制御周期Tnにおいて、たとえばパルス信号18aが出力される。このパルス信号18aは、制御周期Tn-1での演算に基づいたものであり、制御周期Tnにおいて変更することはできない。制御周期Tnでは、次の制御周期Tn+1のパルス信号18bを演算する。このパルス信号18bにより、制御周期Tn+1の開始時点の位相θv1がオン状態(ハイレベル状態)であるとステップ905において判定されると、ステップ906は実行されない。その結果、パルス信号18bが補正処理された後のパルス信号はパルス信号18cとしてそのまま出力される。
図19は、図14のフローチャートにおいて、ステップ901、907、908および909の各処理を順に実行した場合のパルス信号の例を示している。この場合、制御周期Tnにおいて、例えばパルス信号19aが出力される。このパルス信号19aは、制御周期Tn-1での演算に基づいたものであり、制御周期Tnにおいて変更することはできない。制御周期Tnでは、次の制御周期Tn+1のパルス信号19bを演算する。このパルス信号19bにより、制御周期Tn+1の開始時点の位相θv1がオン状態(ハイレベル状態)であるとステップ908において判定されると、ステップ909において位相θv1がパルス補正処理後の立上がり位相θon'として新たにデータがパルス出力回路436に設定される。その結果、実際に出力される補正処理後のパルス信号19cは、制御周期Tn+1の開始時点において強制的に立ち上げられる。このようにしてパルス信号を新たなパラメータによる処理結果に近づけることができ、制御性が改善される。
図20は、図14のフローチャートにおいて、ステップ901、907および908の各処理を順に実行し、ステップ909の処理を実行しなかった場合のパルス信号の例を示している。この場合、制御周期Tnにおいて、たとえばパルス信号20aが出力される。このパルス信号20aは、制御周期Tn-1での演算に基づいたものであり、制御周期Tnにおいて変更することはできない。制御周期Tnでは、次の制御周期Tn+1のパルス信号20bを演算する。このパルス信号20bにより、制御周期Tn+1の開始時点の位相θv1がオフ状態(ローレベル状態)であるとステップ908において判定されると、ステップ909は実行されない。その結果、パルス信号20bが補正処理後のパルス信号20cとしてそのまま出力される。
図21は、図14のフローチャートにおいて、ステップ901、907、910および911の各処理を順に実行した場合のパルス信号の例を示している。この場合、制御周期Tnにおいて、たとえばパルス信号21aが出力される。このパルス信号21aは、制御周期Tn-1での演算に基づいたものであり、制御周期Tnにおいて変更することはできない。制御周期Tnでは、次の制御周期Tn+1のパルス信号21bを演算する。このパルス信号21bにより、制御周期Tn+1の開始時点の位相θv1がオン領域であるとステップ910において判定されると、ステップ911において位相θv1がパルス補正後の立上がり位相θon'としたデータを新たにパルス出力回路436に設定する。その結果、実際に出力される補正処理後のパルス信号21cは、制御周期Tn+1の開始時点において強制的に立ち上げられる。このようにしてパルス信号を新しいパラメータに沿った演算結果に近づけることができ、制御特性が改善される。
図22は、図14のフローチャートにおいて、ステップ901、907、910および912の各処理を順に実行した場合のパルス信号の例を示している。この場合、制御周期Tnにおいて、たとえばパルス信号22aが出力される。このパルス信号22aは、制御周期Tn-1での演算に基づいたものであり、制御周期Tnにおいて変更することはできない。制御周期Tnでは、次の制御周期Tn+1のパルス信号22bを演算する。このパルス信号22bにより、制御周期Tn+1の開始時点の位相θv1がオフ状態(ローレベル状態)であるとステップ910において判定されると、ステップ912において位相θv1がパルス補正後の立下がり位相θoff'としてデータを新たにパルス出力回路436に設定する。その結果、実際に出力される補正後のパルス信号22cは、制御周期Tn+1の開始時点において強制的に立ち下げられる。このようにしてパルス信号のハイレベル状態が異常に長く続き、スイッチング素子を流れる電流が異常に増大する課題を改善できる。
次に、パルス補正前の移送検索器演算方法であるパルス信号の立上がり位相と立下がり位相の決定方法について説明する。図10のテーブルに示した立上がりと立下がりの位相は、以下の式(5)〜(8)で示す行列式に則って予め演算することができる。
ここでは、一例として、3次、5次、7次の高調波成分を消去する場合を取り上げる。
削除する高調波次数として3次、5次、7次の高調波成分を指定すると、次のような行列演算が行われる。
ここで3次、5次、7次の消去次数に対して式(5)のような行ベクトルを作る。
式(5)の右辺括弧内の各要素はk1/3、k2/5、k3/7となっている。k1、k2、k3は任意の奇数を選択することができる。ただし、k1=3,9,15、k2=5,15,25、k3=7,21,35などを選択してはならない。この条件下で、3次、5次、7次成分は完全に消去される。
上記をより一般的に記すと、分母の値を削除する高調波次数とし、分子の値を分母の奇数倍を除く任意の奇数とすることで、式(5)の各要素の値を決定することができる。ここで式(5)の例では、消去次数が3種類(3次、5次、7次)であるため行ベクトルの要素数を3つとしている。同様に、N種類の消去次数に対して要素数Nの行ベクトルを設定し、各要素の値を決定することができる。
なお、式(5)において、各要素の分子と分母の値を上記のもの以外とすることで、高調波成分を削除するかわりに、そのスペクトルを整形することもできる。そのため、高調波成分の削除ではなくスペクトル整形を主な目的として、各要素の分子と分母の値を任意に選択してもよい。その場合、分子と分母の値は必ずしも整数である必要はないが、分子の値として分母の奇数倍を選択してはならない。また、分子と分母の値は定数である必要はなく、時間に応じて変化する値でもよい。
上記のように、分母と分子の組み合わせでその値が決定される要素が3つの場合は、式(5)のように3列のベクトルを設定することができる。同様に、分母と分子の組み合わせでその値が決定される要素数Nのベクトル、すなわちN列のベクトルを設定することができる。以下では、このN列のベクトルを高調波準拠位相ベクトルと呼ぶこととする。
高調波準拠位相ベクトルが式(5)のように3列のベクトルである場合は、その高調波準拠位相ベクトルを転置して式(6)の演算をする。その結果、S1〜S4までのパルス基準角度が得られる。
パルス基準角度S1〜S4は、電圧パルスの中心位置を表わすパラメータであり、後述する三角波キャリアと比較される。このようにパルス基準角度が4個(S1〜S4)である場合、一般的には、線間電圧一周期当たりのパルス数は16個となる。
また、式(5)のかわりに式(7)のように高調波準拠位相ベクトルが4列の場合は、行列演算式(8)を施す。
その結果、S1〜S8までのパルス基準角度出力が得られる。このとき線間電圧一周期当たりのパルス数は32個となる。
削除する高調波成分の数とパルス数との関係は、一般的には次のとおりである。すなわち、削除する高調波成分が2つである場合、線間電圧一周期当たりのパルス数は8パルスであり、削除する高調波成分が3つである場合、線間電圧一周期当たりのパルス数は16パルスであり、削除する高調波成分が4つである場合、線間電圧一周期当たりのパルス数は32パルスであり、削除する高調波成分が5つである場合、線間電圧一周期当たりのパルス数は64パルスである。同様に、削除する高調波成分の数が1つ増すにつれて、線間電圧一周期当たりのパルス数が2倍になる。
ただし、線間電圧で正のパルスと負のパルスが重畳するようなパルス配置の場合、パルス数は上記とは異なる場合がある。
上記のようにして得られるパルス基準角度出力に応じた立上がりと立下がりの位相を変動度ごとにテーブル化したものがROMに記憶される。このテーブルを用いて位相検索器437がROM検索を行うことにより、PHMパルス信号における立上がりと立下がりの位相が決定され、UV線間電圧、VW線間電圧、WU線間電圧の3種類の線間電圧においてパルス信号がそれぞれ形成される。これらの各線間電圧のパルス信号は、それぞれ2π/3の位相差を有する同一のパルス信号である。したがって、以下では各線間電圧を代表して、UV線間電圧のみを説明する。
ここで、UV線間電圧の基準位相θuvlと電圧位相信号θvおよびロータ位相θreとの間には、式(9)の関係がある。
θuvl=θv+π/6=θre+δ+π/6 [rad] ・・・・・・・・・・(9)
式(9)で表されるUV線間電圧の波形は、θuvl=π/2,3π/2の位置を中心に線対称であり、かつ、θuvl=0,πの位置を中心に点対称となる。したがって、UV線間電圧パルスの1周期(θuvlが0から2πまで)の波形は、θuvlが0からπ/2までの間のパルス信号を元に、これをπ/2毎に左右対称または上下対称に配置することによって表現できる。
これを実現するひとつの方法が、0≦θuvl≦π/2の範囲におけるUV線間電圧パルスの中心位相を4チャンネルの位相カウンタと比較し、その比較結果に基づいて、1周期すなわち0≦θuvl≦2πの範囲についてUV線間電圧パルスを生成するアルゴリズムである。その概念図を図23に示す。
図23は0≦θuvl≦π/2の範囲における線間電圧パルスが4つである場合の例を示している。図23において、パルス基準角度S1〜S4は、その4つのパルスの中心位相を表す。
carr1(θuvl),carr2(θuvl),carr3(θuvl),carr4(θuvl)は、4チャンネルの位相カウンタの各々を表している。これらの各位相カウンタは、いずれも基準位相θuvlに対して2π radの周期を持つ三角波である。また、carr1(θuvl) とcarr2(θuvl)は振幅方向にdθの偏差を持ち、carr3(θuvl)とcarr4(θuvl)の関係も同様である。
dθは線間電圧パルスの幅を表している。このパルス幅dθに対して基本波の振幅が線形に変化する。
線間電圧パルスは、各位相カウンタcarr1(θuvl),carr2(θuvl),carr3(θuvl),carr4(θuvl)と、0≦θuvl≦π/2の範囲におけるパルスの中心位相を表すパルス基準角度S1〜S4との各交点に形成される。これにより、90度毎に対称的なパターンのパルス信号が生成される。
より詳細には、carr1(θuvl),carr2(θuvl)とS1〜S4とがそれぞれ一致した点において、正の振幅を有する幅dθのパルスが生成される。一方、carr3(θuvl),carr4(θuvl) とS1〜S4とがそれぞれ一致した点において、負の振幅を有する幅dθのパルスが生成される。
以上説明したような方法を用いて生成した線間電圧の波形を変調度毎に描いた一例を図24に示す。図24では、式(5)のk1、k2、k3の値として、k1=1、k2=1、k3=3をそれぞれ選択し、変調度を0から1.0まで変化させたときの線間電圧パルス信号の例を示している。図24により、変調度の増加とほぼ比例してパルス幅が増加していることが分かる。こうしてパルス幅を増加させることで、電圧の実効値を増加させることができる。ただし、θuvl=0,π,2π付近のパルスは、変調度0.4以上において、変調度が変化してもパルス幅は変化していない。このような現象は、正の振幅を有するパルスと負の振幅を有するパルスが重なり合うことで生じるものである。
上述したように、上記実施の形態では、ドライバ回路174から駆動信号をパワースイッチング回路144の各スイッチング素子に送ることにより、各スイッチング素子は出力しようとする交流出力、例えば交流電圧の位相に基づいてスイッチング動作を行う。交流出力の一周期におけるスイッチング素子のスイッチング回数は、除去しようとする高調波の種類が増えるほど、増える傾向となる。ここで三相交流の回転電機に供給する三相交流電力を出力する場合には、3の倍数の高次高調波は互いに打ち消し合うことに成るので、除去しようとする高調波に含めなくても良い。
また別の観点で見ると、供給される直流電力の電圧が低下すると変調度が増加し、導通している各スイッチング動作の導通期間が長くなる傾向となる。またモータジェネレータ192などの回転電機を駆動する場合に回転電機の発生トルクを大きくする場合には変調度が大きくなり、結果的に各スイッチング動作の導通期間が長くなり、回転電機の発生トルクを小さくする場合には、各スイッチング動作の導通期間が短くなる。導通期間が増大し、遮断時間が短くなった場合、つまりスイッチング間隔がある程度短くなった場合には、安全にスイッチング素子を遮断できない可能性が有り、その場合は遮断させないで導通状態のままそれに続く導通期間につながる制御が行われる。
また別の観点で見ると、出力される交流出力、例えば交流電流の歪の影響が大きくなる周波数の低い状態、特に回転電機が停止状態あるいは回転速度が非常に低い状態では、PHM方式の制御ではなく、定周期の搬送波を利用するPWM方式でパワースイッチング回路144を制御し、回転速度が増加した状態でPHM方式に切り換えてパワースイッチング回路144を制御する。本発明を自動車駆動用の電力変換装置の適用した場合には、車が停止状態から発進して加速する段階は、車の高級感に影響するなどの理由で特にトルク脈動の影響を少なくすることが望ましい。このため少なくとも車が停止状態から発進する状態はPWM方式でパワースイッチング回路144を制御し、ある程度加速した後PHM方式の制御に切り換える。このようにすることで、少なくとも発進時はトルク脈動の少ない制御が実現でき、少なくとも通常の運転である定速走行に移った状態ではスイッチングロスの少ないPHM方式で制御することか可能となり、トルク脈動の影響を抑えながら損失の少ない制御を実現できる。
本発明において用いられるPHMパルス信号によると、上記のように変調度を固定したときに、例外を除き、パルス幅が等しいパルス列による線間電圧波形を形成することを特徴とする。なお、例外的に線間電圧のパルス幅が他のパルス列と不等である場合とは、上記のように正の振幅をもつパルスと負の振幅をもつパルスが重なった場合である。この場合、パルスが重なった部分を正の振幅をもつパルスと負の振幅をもつパルスに分解すると、パルスの幅は全域で必ず等しい。つまり、パルス幅の変化で変調度が変化する。
ここで、例外的に線間電圧のパルス幅が他のパルス列と不等である場合について、さらに図25を用いて詳細に説明する。図25の上部には、図24において変調度1.0のときの線間電圧パルス波形のうち、π/2≦θuvl≦3π/2の範囲を拡大したものを示している。この線間電圧パルス波形では、中心付近の2つのパルスが他のパルスとは異なるパルス幅を有している。
図25の下部には、こうしたパルス幅が他とは異なる部分を分解した様子を示している。この図から、当該部分では、他のパルスと同じパルス幅をそれぞれ有する正の振幅をもつパルスと負の振幅をもつパルスとが重なっており、これらのパルスが合成されることによって他とは異なるパルス幅のパルスが形成されていることが分かる。すなわち、こうしてパルスの重なりを分解することで、PHMパルス信号に応じて形成される線間電圧のパルス波形は、一定のパルス幅を有するパルスによって構成されていることが分かる。
本発明により生成されるPHMパルス信号による線間電圧パルス波形の他の一例を図26に示す。ここでは、式(5)のk1、k2、k3の値として、k1=1、k2=1、k3=5をそれぞれ選択し、変調度を0から1.27まで変化させたときの線間電圧パルス波形の例を示している。図26では、変調度が1.17以上になると、θuvl=π/2、3π/2の位置において、互いに隣接する左右対称の2つのパルス間の隙間がなくなっている。したがって、変調度が1.17未満の範囲では狙った高調波成分を削除できるが、変調度がこれ以上になると高調波成分を有効に削除できないことが分かる。さらに変調度を大きくしていくと、他の位置においても隣接するパルス間の隙間がなくなっていき、最終的に変調度1.27において矩形波の線間電圧パルス波形となる。
図26に示した線間電圧パルス波形を対応する相電圧パルス波形で表した例を図27に示す。図27でも図26と同様に、変調度が1.17以上になると隣接する2つのパルス間の隙間がなくなっていくことが分かる。なお、図27の相電圧パルス波形と図26の線間電圧パルス波形との間には、π/6の位相差がある。
図27において、変調度を大きくするにつれて、パルス出力回路436が発生するPHMパルス信号のローレベルの幅が徐々に狭くなる。図27の楕円A1からA3は、パルス信号のローレベルの幅に基づいてパワースイッチング素子が遮断状態にある期間を示す。変調度が増大するにつれてA1で示すスイッチング素子の遮断期間が、A2で示す遮断期間に縮まり、さらにパルス信号のローレベルの幅が規定の時間幅より短くなるとA3に示すように、遮断動作が削除され、導通状態が連続する。このような制御は楕円B1からB3の部分も同様であり、更に他の部分も同様である。このようにして変調度を大きくなると最後には交流出力波形の半サイクルに1回導通する矩形波制御に移る。交流波形の後半の半サイクルも同様であり、楕円C1からC3およびD1からD3の動作の変化も同様である。なお、相電圧の極性が後半の半サイクルは前半の半サイクルに対して逆極性となるので、楕円C1からC3およびD1からD3に示す波形の上側がスイッチング素子の遮断期間、波形の下側がスイッチング素子の導通期間となる。PHM制御方式では、変調度を増大することにより、徐々にスイッチング素子の遮断時間が短くなり、滑らかに矩形波制御に移ることができる。このためモータジェネレータのトルクや回転速度を滑らかに制御できる効果がある。
次に、線間電圧パルスを相電圧パルスに変換する方法について説明する。図28は、線間電圧パルスから相電圧パルスへの変換において用いられる変換表の例を示している。この表中で左端の列に記載されている1〜6の各モードは、取り得るスイッチング状態ごとに番号を割り当てたものである。モード1〜6では、線間電圧から出力電圧への関係が1対1に決まっている。これらの各モードは、直流側と3相交流側の間でエネルギー授受のあるアクティブな期間に対応している。なお、図28の表中に記載されている線間電圧は、異なる相の電位差として取りうるパターンをバッテリ電圧Vdcで正規化して整理したものである。
図28において、たとえば、モード1ではVuv→1、Vvw→0、Vu→−1と示されているが、これはVu−Vv=Vdc、Vv−Vw=0、Vw−Vu=−Vdcとなる場合を正規化して示している。このときの相電圧すなわち相端子電圧(ゲート電圧に比例)は、図28の表によるとVu→1(U相の上アームをオン、下アームをオフ)、Vv→0(V相の上アームをオフ、下アームをオン)、Vw→0(W相の上アームをオフ、下アームをオン)となる。すなわち、図28の表では、Vu=Vdc、Vv=0、Vw=0となる場合を正規化して示している。モード2〜6も、モード1と同様の考え方で成り立っている。
図28の変換表を用いて矩形波の状態でパワースイッチング回路144を制御するモードにおける線間電圧パルスを相電圧パルスに変換した例を図29に示す。図29において、上段は線間電圧の代表例としてUV線間電圧Vuvを示しており、その下にU相端子電圧Vu、V相端子電圧Vv、W相端子電圧Vwを示している。図29に示すように、矩形波制御モードでは図28の変換表に示したモードが1から6まで順番に変化する。なお、矩形波制御モードでは後述する3相短絡期間は存在しない。
図30は、図24に例示した線間電圧パルス波形を図28の変換表に従って相電圧パルスに変換する様子を示している。図30において、上段は線間電圧の代表例としてUV線間電圧パルスを示しており、その下にU相端子電圧Vu、V相端子電圧Vv、W相端子電圧Vwを示している。
図30の上部には、モード(直流側と3相交流側の間でエネルギー授受のあるアクティブな期間)の番号、および3相短絡となっている期間を示している。3相短絡の期間では3相の上アームをすべてオンにするか3相の下アームをすべてオンにするかのいずれかであるが、スイッチング損失や導通損失の状況に応じて、どちらかのスイッチモードを選択すればよい。
たとえば、UV線間電圧Vuvが1のときは、U相端子電圧Vuが1、V相端子電圧Vvが0である(モード1,6)。UV線間電圧Vuvが0のときは、U相端子電圧VuとV相端子電圧Vvが同じ値、すなわちVuが1かつVvが1(モード2、3相短絡)、またはVuが0かつVvが0(モード5、3相短絡)のいずれかである。UV線間電圧Vuvが−1のときは、U相端子電圧Vuが0、V相端子電圧Vvが1である(モード3,4)。このような関係に基づいて、相電圧すなわち相端子電圧の各パルス(ゲート電圧パルス)が生成される。
図30において、線間電圧パルスと各相の相端子電圧パルスのパターンは、位相θuvlに対して、π/3を最小単位として準周期的に繰り返されるパターンとなっている。つまり、0≦θuvl≦π/3の期間のU相端子電圧の1と0を反転させたパターンは、π/3≦θuvl≦2π/3のW相端子電圧のパターンと同じである。また、0≦θuvl≦π/3の期間のV相端子電圧の1と0を反転させたパターンは、π/3≦θuvl≦2π/3のU相端子電圧のパターンと同じであり、0≦θuvl≦π/3の期間のW相端子電圧の1と0を反転させたパターンは、π/3≦θuvl≦2π/3のV相端子電圧のパターンと同じである。モータジェネレータ192の回転速度と出力が一定である定常状態においては、こうした特徴が特に顕著に表れる。
ここで、上記のモード1〜6を、異なる相で上アーム用のIGBT328と下アーム用のIGBT330をそれぞれオンさせて直流電源であるバッテリ136からモータジェネレータ192に電流を供給する第1の期間として定義する。また、3相短絡期間を、全相で上アーム用のIGBT328または下アーム用のIGBT330のいずれか一方をオンさせてモータジェネレータ192に蓄積されたエネルギーでトルクを維持する第2の期間と定義する。図30に示す例では、これら第1の期間と第2の期間を電気角に応じて交互に形成していることが分かる。
さらに図30では、たとえば0≦θuvl≦π/3の期間において、第1の期間としてのモード6および5を、第2の期間としての3相短絡期間を間に挟んで交互に繰り返している。ここで図28から分かるように、モード6では、V相において下アーム用のIGBT330をオンする一方で、他のU相、W相では、V相と異なる側、すなわち上アーム用のIGBT328をオンしている。他方、モード5では、W相において上アーム用のIGBT328をオンする一方で、他のU相、V相では、W相と異なる側、すなわち下アーム用のIGBT330をオンしている。すなわち、第1の期間では、U相、V相、W相のうちいずれか1相(モード6ではV相、モード5ではW相)を選択し、この選択した1相について、上アーム用のIGBT328または下アーム用のIGBT330をオンさせると共に、他の2相(モード6ではU相およびW相、モード5ではU相およびV相)について、選択した1相とは異なる側のアーム用のIGBT328,330をオンさせる。また、第1の期間ごとに選択する1相(V相、W相)を交替している。
0≦θuvl≦π/3以外の期間でも上記と同様に、第1の期間としてのモード1〜6のいずれかを、第2の期間としての3相短絡期間を間に挟んで交互に繰り返す。すなわち、π/3≦θuvl≦2π/3の期間ではモード1および6を、2π/3≦θuvl≦πの期間ではモード2および1を、π≦θuvl≦4π/3の期間ではモード3および2を、4π/3≦θuvl≦5πの期間ではモード4および3を、5π/3≦θuvl≦2πの期間ではモード5および4を、それぞれ交互に繰り返す。これにより、上記と同様に、第1の期間では、U相、V相、W相のうちいずれか1相を選択し、選択した1相について、上アーム用のIGBT328または下アーム用のIGBT330をオンさせると共に、他の2相について、選択した1相とは異なる側のアーム用のIGBT328,330をオンさせる。また、第1の期間ごとに選択する1相を交替する。
ところで、上記の第1の期間すなわちモード1〜6の期間を形成する電気角位置と、この期間の長さとは、モータジェネレータ192に対するトルクや回転速度などの要求指令に応じて変化させることができる。すなわち前述のように、モータジェネレータ192の回転速度やトルクの変化に伴って削除する高調波の次数を変化させるために、第1の期間を形成する特定の電気角位置を変化させる。あるいは、モータジェネレータ192の回転速度やトルクの変化に応じて、第1の期間の長さすなわちパルス幅を変化させ、変調度を変化させる。これにより、モータジェネレータ192を流れる交流電流の波形、より具体的には交流電流の高調波成分を所望の値に変化させ、この変化により、バッテリ136からモータジェネレータ192に供給する電力を制御することができる。なお、特定の電気角位置と第1の期間の長さは、いずれか一方のみを変化させてもよいし、両方を同時に変化させてもよい。
ここで、パルスの形状と電圧には以下の関係がある。図示したパルスの幅は電圧の実効値を変化させる効果があり、線間電圧のパルス幅が広いときには電圧の実効値は大きく、狭いときには電圧の実効値が小さい。また、削除する高調波の個数が少ない場合は、電圧の実効値が高いため、変調度の上限が矩形波に近づく。この効果は、回転電機(モータジェネレータ192)が高速回転しているときに有効であり、通常のPWMで制御した場合の出力の上限を上回って出力させることができる。すなわち、直流電源であるバッテリ136からモータジェネレータ192に電力を供給する第1の期間の長さと、この第1の期間を形成する特定の電気角位置とを変化させることで、モータジェネレータ192に印加する交流電圧の実効値を変化させ、モータジェネレータ192の回転状態に応じた出力を得ることができる。
また、図30に示す駆動信号のパルス形状は、U相、V相およびW相の各相について、任意のθuvlすなわち電気角を中心に左右非対称となっている。さらに、パルスのオン期間またはオフ期間のうち少なくとも一方がθuvl(電気角)でπ/3以上にわたって連続する期間を含んでいる。たとえばU相では、θuvl=π/2付近を中心に前後それぞれπ/6以上のオン期間と、θuvl=3π/2付近を中心に前後それぞれπ/6以上のオフ期間とを有している。同様に、V相では、θuvl=π/6付近を中心に前後それぞれπ/6以上のオフ期間と、θuvl=7π/6付近を中心に前後それぞれπ/6以上のオン期間とを有しており、W相では、θuvl=5π/6付近を中心に前後それぞれπ/6以上のオフ期間と、θuvl=11π/6付近を中心に前後それぞれπ/6以上のオン期間とを有している。このようなパルス形状の特徴を有している。
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置によれば、PHM制御モードが選択されているときに、直流電源からモータジェネレータ192に電力を供給する第1の期間と、3相フルブリッジの全相上アームをオン或いは全相下アームをオンさせる第2の期間を、電気角に応じた特定のタイミングで交互に発生させる。これにより、PWM制御モードが選択されている場合に比べて、スイッチングの頻度が1/7から1/10以下で済む。したがって、スイッチング損失を低減することができる。さらに加えて、EMC(電磁ノイズ)を軽減することもできる。
次に、図26で例示したように変調度を変化させたときの線間電圧パルス波形における高調波成分の削除の様子について説明する。図31は、変調度を変化させたときの線間電圧パルスにおける基本波と削除対象の高調波成分の振幅の大きさを示した図である。
図31(a)では、3次および5次の高調波を削除対象とした線間電圧パルスにおける基本波と各高調波の振幅の例を示している。この図によると、変調度が1.2以上の範囲では5次高調波が削除しきれずに現れることが分かる。図31(b)では、3次、5次および7次の高調波を削除対象とした線間電圧パルスにおける基本波と各高調波の振幅の例を示している。この図によると、変調度が1.17以上の範囲では5次および7次の高調波が削除しきれずに現れることが分かる。
なお、図31(a)に対応する線間電圧パルス波形と相電圧パルス波形の例を図32、33にそれぞれ示す。ここでは、要素数が2である行ベクトルを設定し、各要素(k1/3、k2/5)におけるk1、k2の値としてk1=1、k2=3をそれぞれ選択して、変調度を0から1.27まで変化させたときの線間電圧パルス波形と相電圧波形の例を示している。また、図31(b)は、図26、27にそれぞれ示した線間電圧パルス波形と相電圧パルス波形に対応している。
上記の説明から、変調度がある一定の値を超えると、削除対象とした高調波が削除しきれずに現れ始めることが分かる。また、削除対象とする高調波の種類(数)が多いほど、低い変調度で高調波を削除しきれなくなることが分かる。
次に、図5に示したPWM制御用のパルス変調器440におけるPWMパルス信号の生成方法について、図34を参照して説明する。図34(a)は、U相、V相、W相の各相における電圧指令信号と、PWMパルスの生成に用いる三角波キャリアとの波形を示している。各相の電圧指令信号は、位相を互いに2π/3ずつずらした正弦波の指令信号であり、変調度に応じて振幅が変化する。この電圧指令信号と三角波キャリア信号とをU、V、Wの各相についてそれぞれ比較し、両者の交点をパルスのオンオフのタイミングとすることで、図34(b)、(c)、(d)にそれぞれ示すようなU相、V相、W相の各相に対する電圧パルス波形が生成される。なお、これらのパルス波形におけるパルス数は、いずれも三角波キャリアにおける三角波パルス数に等しい。
図34(e)は、UV線間電圧の波形を示している。このパルス数は、三角波キャリアにおける三角波パルス数の2倍、すなわち各相に対する上記の電圧パルス波形におけるパルス数の2倍に等しい。なお、他の線間電圧、すなわちVW線間電圧およびWU線間電圧についても同様である。
図35は、PWMパルス信号によって形成される線間電圧の波形を変調度毎に描いた一例を示している。ここでは、変調度を0から1.27まで変化させたときの線間電圧パルス波形の例を示している。図35では、変調度が1.17以上になると、互いに隣接する2つのパルス間の隙間がなくなり、合わせて1つのパルスとなっている。こうしたパルス信号は過変調PWMパルスと呼ばれる。最終的には変調度1.27において、矩形波の線間電圧パルス波形となる。
図35に示した線間電圧パルス波形を対応する相電圧パルス波形で表した例を図36に示す。図36でも図35と同様に、変調度が1.17以上になると隣接する2つのパルス間の隙間がなくなっていくことが分かる。なお、図36の相電圧パルス波形と図35の線間電圧パルス波形との間には、π/6の位相差がある。
ここで、PHMパルス信号による線間電圧パルス波形とPWMパルス信号による線間電圧パルス波形とを比較する。図37(a)は、PHMパルス信号による線間電圧パルス波形の一例を示している。これは、図24において変調度0.4の線間電圧パルス波形に相当する。一方、図37(b)は、PWMパルス信号による線間電圧パルス波形の一例を示している。これは、図35において変調度0.4の線間電圧パルス波形に相当する。
図37(a)と図37(b)とをパルス数について比較すると、図37(a)に示すPHMパルス信号による線間電圧パルス波形の方が、図37(b)に示すPWMパルス信号による線間電圧パルス波形よりも大幅にパルス数が少ないことが分かる。したがって、PHMパルス信号を用いると、生成される線間電圧パルス数が少ないために制御応答性はPWM信号の場合よりも低下するが、PWM信号を用いた場合よりもスイッチング回数を大幅に減らすことができる。その結果、スイッチング損失を大幅に低減することができる。
図38は、切換器450の切替動作によってPWM制御モードとPHM制御モードを切り替えたときの様子を示している。ここでは、θuvl=πのときに切換器450の選択先をPWMパルス信号からPHMパルス信号へと切り替えることにより、制御モードをPWM制御モードからPHM制御モードへと切り替えたときの線間電圧パルス波形の例を示している。
次に、PWM制御とPHM制御とにおけるパルス形状の違いについて、図39を参照して説明する。図39(a)は、PWMパルス信号の生成に用いられる三角波キャリアと、このPWMパルス信号によって生成されるU相電圧、V相電圧およびUV線間電圧とを示している。図39(b)は、PHMパルス信号によって生成されるU相電圧、V相電圧およびUV線間電圧を示している。これらの図を比較すると、PWMパルス信号を用いた場合はUV線間電圧の各パルスのパルス幅が一定ではないのに対して、PHMパルス信号を用いた場合はUV線間電圧の各パルスのパルス幅が一定であることが分かる。なお、前述のようにパルス幅が一定とはならない場合もあるが、これは正の振幅をもつパルスと負の振幅をもつパルスとが重なることによるものであり、パルスの重なりを分解すれば全てのパルスで同じパルス幅となる。また、PWMパルス信号を用いた場合は三角波キャリアがモータ回転速度の変動に関わらず一定であるため、UV線間電圧の各パルスの間隔もモータ回転速度によらず一定であるのに対して、PHMパルス信号を用いた場合はUV線間電圧の各パルスの間隔がモータ回転速度に応じて変化することが分かる。
図40は、モータ回転速度とPHMパルス信号による線間電圧パルス波形との関係を示している。図40(a)は、所定のモータ回転速度におけるPHMパルス信号による線間電圧パルス波形の一例を示している。これは、図24において変調度0.4の線間電圧パルス波形に相当するものであり、電気角(UV線間電圧の基準位相θuvl)2π当たり16パルスを有する。
図40(b)は、図40(a)のモータ回転速度を2倍としたときのPHMパルス信号による線間電圧パルス波形の一例を示している。なお、図40(b)の横軸の長さは、時間軸に対して図40(a)と等価となるようにしている。図40(a)と図40(b)とを比較すると、電気角2π当たりのパルス数は16パルスで変わらないが、同一時間内のパルス数が図40(b)では2倍となっていることが分かる。
図40(c)は、図40(a)のモータ回転速度を1/2倍としたときのPHMパルス信号による線間電圧パルス波形の一例を示している。なお、図40(c)の横軸の長さも、図40(b)と同様に時間軸に対して図40(a)と等価となるようにしている。図40(a)と図40(c)とを比較すると、図40(c)では電気角π当たりのパルス数が8パルスであるため、電気角2π当たりのパルス数では16パルスで変わらないが、同一時間内のパルス数が図40(c)では1/2倍となっていることが分かる。
以上説明したように、PHMパルス信号を用いた場合は、モータ回転速度に比例して線間電圧パルスの単位時間当たりのパルス数が変化する。すなわち、電気角2π当たりのパルス数を考えると、これはモータ回転速度によらず一定である。一方、PWMパルス信号を用いた場合は、図39で説明したように、モータ回転速度によらず線間電圧パルスのパルス数は一定である。すなわち、電気角2π当たりのパルス数を考えると、これはモータ回転速度が上昇するほど低減する。
図41は、PHM制御とPWM制御においてそれぞれ生成される電気角2π当たり(すなわち線間電圧一周期当たり)の線間電圧パルス数と、モータ回転速度との関係を示している。なお図41では、8極モータ(極対数4)を用いて、PHM制御において削除対象とする高調波成分を3,5,7次の3つとし、正弦波PWM制御で用いる三角波キャリアの周波数を10kHzとした場合の例を示している。このように電気角2π当たりの線間電圧パルス数は、PWM制御の場合はモータ回転速度が上昇するほど減少していくのに対して、PHM制御の場合はモータ回転速度によらず一定であることが分かる。なお、PWM制御における線間電圧パルス数は、式(10)で求めることができる。
(線間電圧パルス数)
=(三角波キャリアの周波数)/{(極対数)×(モータ回転速度)/60}×2
・・・(10)
なお、図41では、PHM制御において削除対象とする高調波成分を3つとした場合の線間電圧一周期当たりの線間電圧パルス数が16であることを示したが、この値は削除対象とする高調波成分の数に応じて前述のように変化する。すなわち、削除対象の高調波成分が2つである場合は8、削除対象の高調波成分が4つである場合は32、削除対象の高調波成分が5つである場合は64のように、削除対象とする高調波成分の数が1つ増すにつれて、線間電圧一周期当たりのパルス数が2倍になる。
以上説明した第1の実施の形態によれば、上述した作用効果を奏し、さらにまた次に記載の作用効果を奏する。
(1)電力変換装置140は、上アーム用および下アーム用のIGBT328,330を備えた3相フルブリッジ型のパワースイッチング回路144と、各相のIGBT328,330に対して駆動信号を出力する制御部170とを具備しており、バッテリ136から供給される電圧を駆動信号に応じたIGBT328,330のスイッチング動作によって電気角で2π/3 rad毎にずらした出力電圧に変換し、モータジェネレータ192へ供給する。この電力変換装置140は、PHM制御モードと正弦波PWM制御モードとを所定の条件に基づいて切り替える。PHM制御モードでは、異なる相で上アーム用のIGBT328と下アーム用のIGBT330をそれぞれオンさせてバッテリ136からモータジェネレータ192に電流を供給する第1の期間と、全相で上アーム用のIGBT328または下アーム用のIGBT330のいずれか一方をオンさせてモータジェネレータ192に蓄積されたエネルギーでトルクを維持する第2の期間とを、電気角に応じて交互に形成する。正弦波PWM制御モードでは、正弦波指令信号と搬送波との比較結果に基づいて決定したパルス幅に応じてIGBT328,330をオンさせてバッテリ136からモータジェネレータ192に電流を供給する。このようにしたので、トルク脈動とスイッチング損失を低減しつつ、モータジェネレータ192の状態に応じた適切な制御を行うことができる。
(2)制御部170の制御回路172は、PHM制御モードにおいて、入力情報に基づいてIGBT328,330の状態を所定の制御周期ごとに繰り返し演算し、その演算結果に応じて、パワースイッチング回路144が発生する交流出力、例えば交流電圧の位相に基づいたタイミングでIGBT328,330の導通または遮断を制御するための制御信号を発生する。さらに、パルス生成器434内のパルス補正器438が行うパルス補正処理では、パルス連続性を保つためのパルス連続性補償が施される。すなわち、前回演算された制御周期TnにおけるIGBT328,330の状態と今回演算された次の制御周期Tn+1におけるIGBT328,330の状態との関係が不連続の関係となった場合に、これらの状態に基づいて、次の制御周期Tn+1においてIGBT328,330を導通または遮断する制御を追加して行う。具体的には、制御周期Tnの最後におけるIGBT328,330の状態が導通状態であり、次の制御周期Tn+1の最初におけるIGBT328,330の状態が遮断状態であった場合に、次の制御周期Tn+1においてIGBT328,330を遮断する制御を追加して行う(図14ステップ906、912)。また、制御周期Tnの最後におけるIGBT328,330の状態が遮断状態であり、次の制御周期Tn+1の最初におけるIGBT328,330の状態が導通状態であった場合に、次の制御周期Tn+1においてIGBT328,330を導通する制御を追加して行う(図14ステップ909、911)。このようにしたので、トルク脈動の増大をできるだけ抑制しつつ、スイッチング損失の低減を図ると共に安全性を向上することができる。
(3)上記のパルス補正処理では、制御周期TnにおいてIGBT328,330の状態を最後に切り替えた時点から次の制御周期Tn+1の最初までの時間に応じたパルス幅が所定の最小パルス幅以上である場合は、次の制御周期Tn+1の最初の位相θv1においてIGBT328,330を導通または遮断する制御を追加して行う。一方、制御周期TnにおいてIGBT328,330の状態を最後に切り替えた時点から次の制御周期Tn+1の最初までの時間に応じたパルス幅が所定の最小パルス幅未満である場合は、最小パルス幅制限が施されることにより、次の制御周期Tn+1の最初の位相θv1からずらしたタイミングにおいてIGBT328,330を導通または遮断する制御を追加して行う(図14ステップ915)。このようにしたので、IGBT328,330を導通または遮断する制御を追加して行うために出力する制御信号におけるパルス幅を必ず最小パルス幅以上とすることができるため、IGBT328,330を確実に導通または遮断することができる。
(4)パルス補正処理ではさらに、制御周期Tnにおいて演算された次の制御周期Tn+1のパルス波形におけるパルス幅が最小パルス幅未満である場合は、当該パルスを削除する(図14ステップ904)。制御回路172は、このパルス削除後のパルス波形に応じた制御信号を発生する。このようにしたので、IGBT328,330のスイッチング動作が追従できない最小パルス幅未満の制御信号が制御回路172から出力されるのを未然に防止することができる。
−第2の実施の形態−
本発明の第2の実施の形態について以下に説明する。前述の第1の実施の形態では、パルス生成器434においてパルス出力回路436を用いてPHMパルス信号を生成する例を説明した。これに対して第2の実施の形態では、位相カウンタ比較器に代えてタイマカウンタ比較器を用いてPHMパルス信号を生成する例を説明する。
本実施形態に係る制御回路172におけるパルス生成器434’は、たとえば図42に示すように、パルス演算器435’とパルス出力回路436’によって実現される。パルス演算器435’は、たとえば図43に示すように、位相検索器437、パルス補正器438および位相/時間変換器439によって実現される。なお、位相検索器437とパルス補正器438は、第1の実施の形態において図7に示したものと同じである。
またパルス出力回路436’の具体的な回路は図53と同じであり、演算が時間の関数によって行われるので、演算結果が入力された図53のレジスタ518に対して、クロックパルスを計数するタイマカウンタ510’の計数値が比較器511に出力され、レジスタ518の保持値と比較される。
位相/時間変換器439は、パルス補正器438から出力されたパルス補正後の立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'を時間情報に変換し、立上がり時間Tonおよび立下がり時間Toffとしてそれぞれ出力する。パルス出力回路436’は、パルス演算器435の位相/時間変換器439から出力された立上がり時間Tonおよび立下がり時間Toffに基づいて、U相、V相、W相の上下各アームに対するスイッチング指令としてのPHMパルス信号をそれぞれ生成する。パルス出力回路436’により生成された各相の上下各アームに対する6種類のPHMパルス信号は、切換器450へ出力される。ここでパルス出力回路436’は図53の回路であり、上述のとおり、カウンタ510’はクロックパルスを計数するタイマカウンタとして動作する。図53の回路の動作は先に図6や図7と共に説明した上述の動作説明と同じである。
本実施形態におけるパルス生成器434’によるパルス生成の基本原理を図44に示す。第1の実施の形態におけるパルス生成の基本原理を示した図8と比較して、図44では、パルス補正後の立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'を立上がり時間Tonおよび立下がり時間Toffにそれぞれ変換する点と、位相カウンタに代えて時間カウンタを用いる点とが異なっている。
すなわち、制御周期Tnの先頭において、電圧位相差演算器431によりロータ位相角θreが取得される。このロータ位相角θreに基づいて、電圧位相差演算器431において前述の式(3)により電圧位相が演算され、電圧位相信号θvがパルス生成器434’へ出力される。パルス生成器434’は、この電圧位相信号θvと角速度演算器460からの電気角速度信号ωreから、次の制御周期Tn+1の開始位相θv1および終了位相θv2を算出し、その範囲における立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffをメモリより算出する。この立上がり位相θonおよび立下がり位相θoffに基づいて、パルス補正後の立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'を決定する。そして、位相θv1からパルス補正後の立上がり位相θon'、立下がり位相θoff'までの各差分Δθon'、Δθoff'をそれぞれ求め、これらの差分に応じた立上がり時間Tonおよび立下がり時間Toffをそれぞれ算出する。こうして立上がり時間Tonおよび立下がり時間Toffを決定したら、時間カウンタとのコンペアマッチ機能を用いて、U相、V相、W相の各相に対してPHMパルス信号を出力する。なお、図44ではU相のPHMパルス信号のみを例示しているが、V相、W相についても同様である。
以上説明したパルス生成の手順を詳細に説明したフローチャートを図45に示す。なお、図45のフローチャートにおいて、図9に示したフローチャートと同じ符号は、同じ動作内容である。同一内容については煩雑さを避けるためにの、説明を省略する。
パルス生成器434’は、図45のステップ809において、パルス演算器435’内の位相/時間変換器439により、ステップ806でパルス補正器438から出力されたパルス補正後の立上がり位相θon'および立下がり位相θoff'を立上がり時間Tonおよび立下がり時間Toffへそれぞれ変換する。ここでは、パルス補正後の立上がり位相θon'、立下がり位相θoff'から制御周期Tn+1の開始位相θv1をそれぞれ減算することで、差分Δθon'、Δθoff'をそれぞれ計算する。この差分Δθon'、Δθoff'を電気角速度ωreでそれぞれ除算することで、立上がり時間Ton、立下がり時間Toffをそれぞれ計算する。計算された値は作業用メモリに一時保管される。
次の制御周期Tn+1の開始で、ステップ801が実行され、先の制御周期の演算結果が、一時保管されていた作業用メモリから読み出され、パルス出力回路436’のレジスタ516に入力される。入力動作は発生するイベントの順に行われ、先ず立上がり時間Tonの計数値C1と立上がりを示す「S」が入力され、次に立下がり時間Toffの計数値C2と立上がりを示す「R」が入力される。図53のタイマカウンタ510’が計数動作を行い、タイマカウンタ510’の計数値が立上がり時間Tonの計数値C1に達すると、比較器511の比較結果に基づいて、ゲート513Sを介してフリップフロップ514にセット信号が送られ、PHMパルス信号を立ち下げる。
次に立下がり時間Toffのタイミングを表す計数値C2がレジスタ518に入力され、立下りを示す信号「R」がフリップフロップ512に入力される。この結果ゲート513Rが開き、ゲート513Sが閉じる。タイマカウンタ510’が計数動作を行い、その計数値がレジスタ518に保持されている計数値C2に達すると、比較器511の比較結果に基づいて、ゲート513Rを介してフリップフロップ514にリセット信号が送られ、フリップフロップ514がリセット状態となり、PHMパルス信号を立ち下げる。このようにしてPHMパルス信号が作られ、生成したPHMパルス信号が切換器450へ出力される。 パルス生成器434’において、以上説明したステップ809の処理が第1の実施の形態で説明したステップ801〜806の処理に加えて行われることにより、PHMパルス信号が生成される。
次に、本実施形態に係るパルス生成器434’により出力されるPHMパルス波形の特徴について図46〜50を用いて以下に説明する。図46は、従来の同期PWM制御においてキャリア波を変化させたときの問題点を説明するための図である。同期PWM制御では図46に示すように、様々な形状の三角波をキャリア波形として用いることで、PWMパルスの位置や幅を制御することが考えられる。しかし、このような制御方法では、キャリア波形を反転や周波数変化により様々に変形するための回路構成が複雑になったり、多数の三角波の形状を予めROM等に記憶させておく必要があったりするという問題がある。また、三角波の途中ではキャリア波形を変化させることができないため、波形によっては変化を開始するまでの待ち時間が長くかかり、トルク変動などの原因になるという問題もある。
図47は、図46に示した同期PWM制御によるPWMパルス波形と本実施形態に係るPHMパルス波形とを比較するための図である。図47において、図の上部に示す基本波、キャリア波およびPWMパルスは、図46の一部(区間S1に対応する部分)を拡大したものである。本実施形態に係るPHMパルスは、たとえば図47に示すような時間カウンタに基づいて出力される。この時間カウンタの周期は、モータジェネレータ192制御の最小周期であり、図44に示した制御周期Tnと等しい。これは第1の実施の形態で説明したように、たとえば数百μs程度である。
図47から分かるように、PHMパルスでは時間カウンタを用いるため、同期PWM制御におけるキャリア波のように複雑な形状の三角波を必要としない。したがって、上記のような複雑な回路構成やROM等への記憶が不要となる。また、波形を変化させるための待ち時間が時間カウンタの一周期分であり、これは数百μs程度と非常に短いため、トルク変動などの問題が生じることもない。
図48は、従来の同期PWM制御においてキャリア波を図46とは別の方法で変化させたときの問題点を説明するための図である。同期PWM制御では図48に示すように、三角波であるキャリア波の幅(周期)を変化させることで、PWMパルスの位置や幅を制御することも考えられる。しかし、このような制御方法では、非同期PWM制御と同期PWM制御を三角波の途中で切り替えるとパルスの連続性を保てなくなることがある。パルスの連続性が保てなくなると、スイッチング素子が長期間オンまたはオフされてしまい、電圧の過渡変動による過電流を生じたりする場合がある。したがって、三角波の山または谷の部分で切り替える必要があるため、キャリア波形の形状によっては制御切り替えの待ち時間が長くかかることがある。
図49は、図48に示したように非同期PWM制御から同期PWM制御へ切り替えたときのPWMパルス波形と本実施形態に係るPHMパルス波形とを比較するための図である。図49において、図の上部に示すキャリア波およびPWMパルスは、非同期PWM制御から同期PWM制御へ切り替えたときの例を示している。本実施形態に係るPHMパルスは、たとえば図49に示すような時間カウンタに基づいて出力される。この時間カウンタの周期は、図47と同じくモータ制御の最小周期である。
図49から分かるように、非同期PWM制御から同期PWM制御へ切り替えたときに、キャリア波の位相を変動させてその三角波の幅を拡大すると、その三角波によって決定されるPWMパルスが出力されるまでの待ち時間が三角波の幅に応じて大きくなる。一方、PHMパルスでは前述のように波形を変化させるための待ち時間が時間カウンタの一周期分であり数百μs程度と非常に短いため、波形を変化させたPHMパルスを即時に出力することができ、トルク変動などの問題が生じることはない。さらに、時間カウンタを用いてパルス波形を変化させるため、同期PWM制御のようにキャリア波の周期を変える必要もない。加えて、パルス波形を変化させるときに電圧位相に変動があった場合でも、同期PWM制御と比べて待ち時間が短いため、電圧の過渡変動を生じることなく、その位相変動に即時に対応することができる。
図50は、図49とは反対に、同期PWM制御から非同期PWM制御へ切り替えたときのPWMパルス波形と本実施形態に係るPHMパルス波形とを比較するための図である。図50から分かるように、キャリア波としての三角波の途中では同期PWM制御から非同期PWM制御へ切り替えることができないため、その三角波の幅に応じて制御切り替えまでの待ち時間が大きくなる。一方、PHMパルスでは図49で説明したとおり波形を変化させるための待ち時間が数百μs程度と非常に短いため、波形を変化させたPHMパルスを即時に出力することができる。したがって、トルク変動などの問題が生じることはない。
なお、上記では第2の実施の形態におけるPHMパルス波形の特徴を従来の同期PWM制御と比較して説明したが、第1の実施の形態におけるPHMパルス波形もこれと同様の特徴を有していることは言うまでもない。すなわち、時間カウンタを位相カウンタに置き換えても、図46〜50を用いて上記で説明したのと同様の特徴を有するPHMパルス波形を出力することができる。
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明したのと同様の作用効果を奏することができる。
上述の図5に記載のPHM制御用のパルス変調器430の動作原理について、再度ここで説明する。
出力すべき交流電力、例えば交流電圧の波形に対応した矩形波を想定する。矩形波には様々な高調波が含まれており、フーリエ級数展開を用いると、(1)式のように各高調波成分に分解することができる。
使用目的や状況に応じて、上記削除する高調波を決定し、パルス信号を生成する。言い換えると、ノイズとしての影響が少ない高調波成分を含ませることによってスイッチング回数の低減を図っている。
図51は、一例として、3次、5次、7次高調波が削除されたU相とV相の線間電圧のパターンの生成過程ならびに特徴を示した図である。ただし線間電圧とは各相の端子の電位差であり、U相の相電圧をVu、V相の相電圧をVvとすると、線間電圧VuvはVuv=Vu−Vvで表わされる。V相とW相との線間電圧、W相とU相との線間電圧も同様なので、以下、U相とV相との線間電圧のパターンの生成を代表例として説明する。
図51の横軸はU相とV相との間の線間電圧の基本波を基準として軸をとっており、以下略してUV線間電圧基準位相θuvlと名付ける。図51に示すように、電圧パルスの基本波はθuvlを基準とする正弦波電圧とする。生成するパルスはこの基本波のπ/2を中心に、図示する手順に従って、θuvlに対して図に例示したような位置にそれぞれ配置される。ここで、上記のようにθuvlは電気角に対応するものであるため、図51におけるパルスの配置位置を電気角により表すことができる。したがって、以下では、このパルスの配置位置を特定の電気角位置と定義する。これにより、S1〜S4、S1’〜 S2’のパルス列ができる。このパルス列は、 基本波に対する3次、5次、7次高調波を含まないスペクトル分布を有する。このパルス列は、言い換えれば、0 ≦ θuvl ≦ 2πを定義域とする矩形波から3次、5次、7次高調波を削除した波形である。なお、削除する高調波の次数は3次、5次、7次以外も可能である。削除する高調波は、基本波周波数が小なるときは高次まで消去し、基本波周波数が大なるときは低次のみでよい。たとえば、回転数が低いときは5次、7次、11次を削除し、回転数の上昇とともに5次、7次の削除に変更し、さらに回転数が上昇した場合は5次のみの削除、という具合に削除する次数を変化させる。これは、高回転域では、モータジェネレータ192の巻線インピーダンスが大きくなり、電流脈動が小さくなるからである。
同様にトルクの大小に応じて、削除する高調波の次数を変化させる場合もある。例えば、ある回転数を一定とした条件にてトルクを増大させたとき、トルクが小なる場合は5次、7次、11次を削除するパターンを選択し、トルクの増大とともに5次、7次の削除とし、さらにトルクが増大した場合は5次のみ削除という具合に削除する次数を変化させる。
また、上記のように単にトルクや回転数の増大に伴って削除する次数を減少させるばかりではなく、逆に増加させたり、あるいはトルクや回転数の増減にかかわらず削除する次数を変化させない場合もありうる。これらは、モータジェネレータ192のトルクリプル、騒音、EMCなどの指標の大小を勘案しながら決定するべきものであるため、回転数やトルクに対し単調に変化するとは限らないものである。
上述の実施の形態では、制御対象への歪の影響を考慮して、削除したい次数の高調波を選択することができる。上述したように削除しようとする高調波の次数の種類が増えるほど、パワースイッチング回路144のスイッチング素子328と330のスイッチング回数が増大する。上記実施の形態では、制御対象への歪の影響を考慮して、削除したい次数の高調波を選択することができるので、必要以上に多種類の高調波を削除することを防止でき、制御対象への歪の影響を考慮して上記スイッチング素子328と330のスイッチング回数を適切に低減できる。
上述の実施の形態で説明したように線間電圧の制御では、出力しようとする交流出力の半サイクルである位相0〔rad〕からπ〔rad〕のスイッチングタイミングと位相π〔rad〕から2π〔rad〕のスイッチングタイミングとを同じになるように制御しており、制御を単純化でき、制御性が向上する。さらに位相0〔rad〕からπ〔rad〕あるいは位相π〔rad〕から2π〔rad〕の期間においても、位相π/2あるいは3π/2を中心として同じスイッチングタイミングで制御しており、制御を単純化でき、制御性が向上する。
さらに上述したように使用目的や状況に応じ、ノイズとしての影響が少ない高調波成分を含ませてパルス信号を生成するので、パワースイッチング回路144のスイッチング素子328と330のスイッチング回数を低減できる。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記の各実施形態の構成に何ら限定されるものではない。