JP5434122B2 - 擁壁 - Google Patents

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Description

本発明は、高低差を有する土地に構築される擁壁に関し、特に、宅地としての土地に構築される擁壁に関する。
高低差を有する土地では、その段差部に擁壁を構築することが一般的となっており、これによって、擁壁の背面側の地盤からの土圧に抵抗し、その背面側の地盤の崩壊を防止することとしている。
図14は、従来から提案されている代表的な擁壁101の側面断面図である。この擁壁101は、底版111と、底版111から上側に向かって立設された縦壁113とから断面略L字状に形成された複数のコンクリート製部材110を連結して構築されており、縦壁113の背面側には盛土により所定高さの地盤105が形成されることになる。この擁壁101では、コンクリート製部材110の自重と底版111上部の土砂の重量によって背面側の地盤105からの土圧に抵抗し、斜面の崩壊を防ぐように構成されている。
また、この他の擁壁としては、例えば、特許文献1に開示のように、断面略L字状の壁体構成部材の底版に穿設された杭挿通孔内に、壁体構成部材よりも更に下側に埋設された基礎杭を挿通したうえで、これらを場所打ちコンクリートにより一体化したものが提案されている。
また、この他の擁壁としては、例えば、特許文献2に開示のように、地中に埋設された鋼矢板と、この鋼矢板の上部に接合されて地上に立ち上げられた鉄筋と、この鉄筋が埋設されて構築されたコンクリート壁とからなるコンクリート擁壁が提案されている。
また、壁体の前面側又は背面側の地盤表面に道路が設けられるような公衆用道路としての土地に対しては、前面側の地盤表面から上端までの壁高が4m以下の擁壁を、複数の鋼矢板を連結した鋼矢板壁から構成したものが既に適用されている。
特開平09−209377号公報 特開平10−88592号公報
ところで、上述した各種の擁壁は、以下に説明するような問題点を有するものであった。
図14に示すような従来の擁壁101は、壁体115の前面側の地表面から上端までの壁高を高くした場合に、底版111の幅や擁壁101そのものの自重が大きくなってしまい、擁壁101の施工時にコンクリート製部材110を吊り上げる際のバランスを保持することが困難となり、施工作業が困難になるという問題点があった。
また、このような従来の擁壁101は、底版111を背面側の地盤105中に埋設させる必要があるため地盤の掘削量、埋め戻し量が多くなるうえ、軟弱地盤上に構築する場合には、底版111を支持する地盤材料の置換や固化改良が必要となっていた。このため、
このような擁壁101では、施工期間、施工コストが増大するという問題点があった。
更にまた、このような従来の擁壁101は、盛土をした後でなければ擁壁101の近傍に建築物108を設置することができない構成とされているため、図14に示すように、擁壁101の構築予定位置に近接して既設の建築物108が設置されている場合には、そもそも擁壁101の構築が不可能となってしまい、施工の自由度を制限してしまっていた。
また、特許文献1に開示された擁壁は、図14に示すような擁壁101よりも、底版の長さを小さくすることができ、地盤の掘削量、埋め戻し量を抑えることができるというメリットがあるものの、底版がある以上、上述したような従来の擁壁101と同様の問題が生じていた。
また、特許文献1及び特許文献2の何れに開示された擁壁も、構造が比較的複雑なものとなっているため、構築時の工程数が多く、施工期間、施工コストが増大するという問題点があった。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、宅地としての土地に構築される擁壁として、施工性、経済性に優れた擁壁を提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記の擁壁を発明した。
請求項1に係る擁壁は、高低差を有する土地に構築される擁壁において、上記擁壁の前面側に位置する高さが低い側の地盤と上記擁壁の背面側に位置する高さが高い側の地盤との間に、少なくとも10年以上使用するために構築され、下部が宅地としての土地の地中に鉛直に埋設されるとともに、上部が該宅地としての土地の地中から鉛直上側に突出され、複数の鋼矢板が継手を介して連結されてなる鋼矢板壁によって該背面側の地盤の崩壊が防止されており、上記前面側の地盤上及び/又は上記背面側の地盤上に建築物が設置され、上記鋼矢板壁は、ウエブ部と、上記ウエブ部の両側のフランジ部と、上記フランジ部の先端の継手とを有するU字形鋼矢板が当該継手を介して連結されて構成されるとともに、上記前面側の地盤表面から上端までの壁高が3.0m以上、3.5m以下、前面側の地盤表面から鉛直下側に0.5m離間した位置から下側の地盤の平均N値が10以上、20以下で、断面二次モーメントが32400cm 4 /m以上の場合における、前面側の地盤表面から下端までの根入れ長さLが、上記鋼矢板壁の前面側の壁面上に防食層を形成したり、塗装をする又は塗装のメンテナンスをするために、上記前面側の地盤を掘削する場合に、上記鋼矢板壁の前面側の地盤表面から0.5m鉛直下側に離間した位置を設計地盤面とした条件下で、下記数式(1)を満足させて、上記前面側の地盤表面から0.5m鉛直下側に離間した位置から更に下側の地盤によって、上記鋼矢板壁の安全性を保持するための抵抗力を得ることを特徴とする。
L≧9.25−0.1N ・・・ (1)
N:上記平均N値
請求項2に係る擁壁は、高低差を有する土地に構築される擁壁において、上記擁壁の前面側に位置する高さが低い側の地盤と上記擁壁の背面側に位置する高さが高い側の地盤との間に、少なくとも10年以上使用するために構築され、下部が宅地としての土地の地中に鉛直に埋設されるとともに、上部が該宅地としての土地の地中から鉛直上側に突出され、複数の鋼矢板が継手を介して連結されてなる鋼矢板壁によって該背面側の地盤の崩壊が防止されており、上記前面側の地盤上及び/又は上記背面側の地盤上に建築物が設置され、上記鋼矢板壁は、ウエブ部と、上記ウエブ部の両側のフランジ部と、上記フランジ部の先端に設けられたアーム部と、上記アーム部の先端の継手とを有するハット形鋼矢板が当該継手を介して連結されて構成されるとともに、上記前面側の地盤表面から上端までの壁高が2.5m以上、3.0m以下、前面側の地盤表面から鉛直下側に0.5m離間した位置から下側の平均N値が10以上、20以下で、断面二次モーメントが24400cm 4 /m以上の場合における、前面側の地盤表面から下端までの根入れ長さLが、上記鋼矢板壁の前面側の壁面上に防食層を形成したり、塗装をする又は塗装のメンテナンスをするために、上記前面側の地盤を掘削する場合に、上記鋼矢板壁の前面側の地盤表面から0.5m鉛直下側に離間した位置を設計地盤面とした条件下で、下記数式(2)を満足させて、上記前面側の地盤表面から0.5m鉛直下側に離間した位置から更に下側の地盤によって、上記鋼矢板壁の安全性を保持するための抵抗力を得ることを特徴とする。
L≧8.75−0.1N ・・・ (2)
N:上記平均N値
請求項に係る擁壁は、請求項1又は2に係る発明において、上記背面側の地盤上には、上記鋼矢板壁から背面側に少なくとも1m以上離間して建築物が設置されることを特徴とする。
請求項に係る擁壁は、請求項1〜の何れか1項に係る発明において、上記鋼矢板壁の前面側には、その前面側の地盤表面から上側に0.1m、下側に0.5mの範囲を少なくとも含むように防食層が形成されてなることを特徴とする。
本発明に係る擁壁により、従来の断面略L字状の壁体構成部材からなる擁壁101のように、底版111を地盤中に埋設させるために行う地盤の掘削、埋め戻しが不要となるため、従来の擁壁と比較して施工期間や施工コストを大幅に低減することが可能となる。また、本発明に係る擁壁は、底版111を地盤中に埋設させるための地盤の掘削、埋め戻しが不要な構成とされているため、擁壁の構築予定位置に近接して既設の建築物が設置されている場合でも、その既設の建築物を撤去することなく擁壁の構築を容易に行うことができ、施工の自由度が向上している。特に、擁壁を軟弱地盤上に構築する場合でも、地盤材料の置換や固化改良をすることなく、鋼矢板壁を根入れするのみで擁壁の安全性を確保することができるため、施工期間や施工コストを更に有効的に低減することが可能となる。また、本発明に係る擁壁は、複数の鋼矢板を連結してなる鋼矢板壁のような、構造が比較的簡単なものから構成されており、施工性、経済性に優れたものとなっている。また、本発明に係る擁壁は、鋼矢板壁が少なくとも10年以上使用するために構築されており、通常、仮設構造物として用いられる簡単な構造の鋼矢板壁を、宅地としての土地においてもいわゆる永久構造物として用いることが可能となっている。
請求項1、2に係る発明により、鋼矢板壁の根入れ長さが所定の条件を満足するように調整するといった簡単な構成を採用するのみで、複雑な設計計算を行うことなく、宅地としての土地に鋼矢板壁から構成される擁壁を構築する場合でも、地震時における鋼矢板壁及び背面側の地盤の安全性を確保することが可能となる。また、擁壁のメンテナンス等のために前面側の地盤を掘削する場合があっても、鋼矢板壁及び背面側の地盤の安全性を保つことが可能となっている。
請求項に係る発明により、地震時における鋼矢板壁及び背面側の地盤の安全性を更に確実なものにすることが可能となる。
請求項に係る発明により、鋼矢板壁の地際部での腐食の発生を防止することができ、これをもって鋼矢板壁が前面側の地盤の地際部近傍から倒壊する恐れを軽減して擁壁としての耐久性を向上させることが可能となる。また、これにより、防食層の構成材料の使用量を必要最低限に抑えつつ、このような効果を得ることが可能となる。
第1実施形態の擁壁の構成を示す側面断面図である。 第1実施形態の擁壁の構成を示す平面断面図である。 鋼矢板壁の根入れ長さを設計する際の条件について示すモデル図である。 U字形鋼矢板から構成される鋼矢板壁について設計計算により得られた平均N値と鋼矢板壁の根入れ長さとの関係を示すグラフである。 擁壁の背面側の地盤を盛土によって形成した場合の擁壁の構成を示す側面断面図である。 第2実施形態の擁壁の構成を示す平面断面図である。 ハット形鋼矢板から構成される鋼矢板壁について設計計算により得られた平均N値と鋼矢板壁の根入れ長さとの関係を示すグラフである。 第3実施形態の擁壁の構成を示す側面断面図である。 第3実施形態の擁壁の構成を示す平面断面図である。 鋼矢板壁の前面側に形成される防食層の構成を示す一部切欠前面図である。 地震時における擁壁の背面側の地盤の沈下量、傾斜量を検証すべく行なった試験条件を示すモデル図である。 前面側の地盤の掘削範囲を検討するために行なった試験条件を示すモデル図である。 前面側の地盤表面からの掘削深度に対するB地点での水平変位量の関係を示すグラフである。 従来の擁壁の構成を示す側面断面図である。
以下、本発明を実施するための形態として、高低差を有する土地に構築される擁壁について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した擁壁1の第1実施形態の構成を示す側面断面図であり、図2は、その平面断面図である。
擁壁1は、その前面側に位置する高さが低い側の地盤4とその背面側に位置する高さが高い側の地盤5との間の段差部に構築されるものであり、複数の鋼矢板20が連結されてなる鋼矢板壁10から構成されている。この鋼矢板壁10は、下部11が所定長さLに亘って土地3の地中に鉛直に埋設され、上部13が土地3の地中から鉛直上側に突出されている。換言すると、この擁壁1の上部13は、その前面側の地盤表面4aから鉛直上側に突出されていることになる。このように鋼矢板壁10が構成されることにより、背面側の地盤5の崩壊が防止されていることになる。
不動産登記法上の地目としては、宅地、公衆用道路、農地等が存在しているが、本発明に係る擁壁1は、この不動産登記法上の地目で公衆用道路や農地等として分類される土地3ではなく、宅地として分類される土地3に構築される。また、本実施形態における擁壁1は、その背面側の地盤5上に新設又は既設の家屋等の建築物8が設置されている。本発明に係る鋼矢板壁10は、背面側の地盤5からの土圧荷重や背面側の地盤5上に設置される建築物8の荷重に対して、鋼矢板の剛性と前面側の地盤4の反力によって抵抗するものであり、安定して自立するいわゆる自立式の壁体として構成されている。
なお、本発明に係る擁壁1は、背面側の地盤5とともに前面側の地盤4上にも新設の建築物8を設置するようにしてもよいし、背面側の地盤5上には建築物8を設置せずに前面側の地盤4上にのみ新設の建築物8を設置するようにしてもよい。
鋼矢板壁10を構成する鋼矢板20は、隣り合う他の鋼矢板20と互いに連結するための継手25を幅方向の両端に有するものである。この継手25は、隣り合う他の鋼矢板20の継手25と互いに嵌合可能な形状とされており、他の鋼矢板20の継手25との嵌合時に互いに離脱しないようにその形状が調整されている。
鋼矢板20は、本実施形態においてU字形鋼矢板20Aから構成されている。このU字形鋼矢板20Aは、ウエブ部21と、ウエブ部21の一面側に向かって傾斜するようにウエブ部21の両側に設けられたフランジ部23と、それぞれのフランジ部23の先端に設けられた継手25とを有するものである。U字形鋼矢板20Aは、ウエブ部21とウエブ部21の両側のフランジ部23とから断面略U字状に形成されている。鋼矢板壁10は、
このようなU字形鋼矢板20Aを継手25を介して連結することによって構成されている。
鋼矢板20は、この他に、後述するようなハット形鋼矢板から構成されていてもよい。
鋼矢板壁10を構成する複数の鋼矢板20は、それぞれの上端を被覆するようにコンクリート製の上部工31が水平方向に亘って設けられて構成されている。上部工31は、例えば、場所打ちコンクリートやプレキャスト製部材によって設けられる。鋼矢板壁10を構成する複数の鋼矢板20は、この上部工31によってそれぞれの上端が強固に連結されている。
鋼矢板壁10を構成する複数の鋼矢板20には、その前面側に修景工としての下部コンクリート33が場所打ちコンクリートによって上部工31と一体的に設けられている。鋼矢板壁10の修景工は、必要に応じて設けられていればよく、この他にも、後述するような化粧パネルから構成されていてもよい。
鋼矢板壁10は、その前面側の地盤表面4aから上端10aまでの壁高Hが少なくとも2.0m以上となるように構成されている。なお、鋼矢板壁10は、その壁高が5.0mを超えてしまうと、地震時におけるその上端10aの水平変位量δが過大となり、後述する数式(7)を満足すること難しくなるので、その壁高Hが5.0m以下とされることが好ましい。
鋼矢板壁10は、壁高Hが2.0m超、3.5m以下、後述する設計地盤面より下側の地盤の平均N値が8以上、20以下の場合における、前面側の地盤表面4aからその下端10bまでの根入れ長さLが、下記数式(1)を満足することが好ましい。根入れ長さLが下記数式(1)を満足しない場合、地震発生時に背面側地盤5からの地震時土圧やコンクリートの上部工31、修景工の慣性力が鋼矢板壁10に作用した際に、鋼矢板壁10の前面側の地盤4からこの水平力に耐えれるだけの抵抗力を得られず、背面側の地盤5からの土圧によって鋼矢板壁10がたわんでしまい、鋼矢板壁10の水平方向の変位の増大や、背面側の地盤5の著しい沈下、傾斜を招いてしまうため好ましくない。なお、地盤の平均N値が大きくなるほど必要となる鋼矢板壁10の根入れ長さLが小さくなるのは、平均N値が大きいほど地盤が硬くなり、水平方向の抵抗力が増大するためである。
L≧9.25−0.1N ・・・ (1)
N:設計地盤面より下側の地盤の平均N値
ここで、上記の数式(1)を導き出した理由は下記の通りである。地震発生後の鋼矢板壁10及び背面側の地盤5の安全性を確保するうえでは、地震発生時に背面側の地盤5から鋼矢板壁10に水平力が作用した際に、鋼矢板壁10の前面側の地盤4からの水平抵抗が工学的に弾性挙動として評価できる範囲で前面側の地盤4からの抵抗力が得られるように、鋼矢板壁10の根入れ長さLを設定する必要があり、具体的には、下記数式(3)を満足する必要があることが知られている。なお、ここでいうLは、設計地盤面から鋼矢板壁10の下端10bまでの根入れ長さのことである。また、ここでいう設計地盤面とは、将来の地盤の変状等を考慮して設計上取り扱うもので、設計時においては、その設計地盤面以下の地盤からの水平抵抗が期待できるものとして取り扱う。また、数式(3)中のβ(m−1)は、下記の数式(4)で表せることが知られており、数式(4)中のkは、下記の数式(5)で表せることが知られている(「自立式鋼矢板擁壁設計マニュアル」 財団法人先端建設技術センター、鋼管杭協会 発行、P32、P36等参照。)。
Figure 0005434122
Figure 0005434122
Figure 0005434122
Figure 0005434122
E :鋼矢板壁のヤング係数(kN/m
I :鋼矢板壁の単位幅当たりの断面二次モーメント(cm/m)
B :鋼矢板壁の単位幅
:換算載荷幅(m)
H0:直径30cmの剛体円盤による平板載荷試験の値に相当する水平方向地盤反力係数(kN/m
N :設計地盤面より下側の地盤の平均N値
:水平方向地盤反力係数(kN/m
また、地震時において鋼矢板壁10及び背面側の地盤5の安全性を確保するためには、以下の二条件を満足する必要がある。まず第1に、地震後においても鋼矢板壁10の下部11に対する前面側の地盤4からの水平抵抗が工学的に弾性挙動として評価できる範囲で前面側の地盤4からの抵抗力が得られるよう、設計地盤面での許容水平変位量δが下記数式(6)を満足するように設計する必要がある。第2に、河川護岸等では地震時における安全性を確保するために鋼矢板壁の上端の許容水平変位量を壁高の1.0%以下と設計していることが多いことから、これに併せて鋼矢板壁10の上端10aの許容水平変位量δが下記数式(7)を満足するように設計する必要がある。
δ≦15mm ・・・(6)
δ≦H×1.0 ・・・(7)
この鋼矢板壁10の上端10aの許容水平変位量δ(m)は、設計地盤面でのたわみ角による変位量をδ(m)、設計地盤面以上の片持ばりの変位量をδ(m)とした場合に、下記の式(8)で表せる。なお、δ、δ、δは下記の式(9)〜(11)で表せる(「自立式鋼矢板擁壁設計マニュアル」 鋼管杭協会 発行、P37等参照。)。
δ=δ+δ+δ ・・・ (8)
Figure 0005434122
Figure 0005434122
Figure 0005434122
P :設計地盤面より上側において鋼矢板壁に作用する土圧の水平合力(kN)
:設計地盤面からその設計地盤面より上側において鋼矢板壁に作用する土圧の分布の重心位置までの高さ(m)
e :有効率
H :鋼矢板壁の壁高(m)
α:h/H
ここで、上記の数式(3)〜(11)中での、Bは単位幅1.0mとし、Eは鋼材の一般的なヤング率である2.0×10とし、Bは10mとし、eは、U形鋼矢板の継手効率である0.8とし、Hは上部工も含めた鋼矢板壁及び上部工からなる壁体の壁高として扱う。
図3は、上述したような数式(3)〜(11)を用いて数式(1)の根入れ長さLを求めるに当たり設定した条件を示すモデル図である。本発明においては、根入れ長さLを求めるにあたって以下の点を考慮した。
本発明に係る擁壁1では、鋼矢板壁10の前面側の壁面上に防食層37を形成したり、塗装をする又は塗装のメンテナンスをするために、前面側の地盤4を掘削する場合がある。これらの場合には、一般には、鋼矢板壁10の前面側の地盤4を地盤表面4aから0.5m程度掘削した後に塗装作業等を行うことになる。掘削後には、前面側の地盤表面4aから0.5m鉛直下側に離間した位置から更に下側の地盤によって、鋼矢板壁10の安全性を保持するための抵抗力を得ることになる。従来の公衆用道路に構築される鋼矢板壁からなる擁壁においてはこの点が考慮されていなかったが、本発明では、根入れ長さLを求めるにあたって、鋼矢板壁10の前面側の地盤表面4aから0.5m鉛直下側に離間した位置を設計地盤面とした条件下で設計を行なった。
根入れ長さLは、具体的には下記の手順で求められる。まず、所定の地盤条件、壁高H、平均N値の前提のもと、P、hを求める。次に、鋼矢板壁10の断面二次モーメントIを仮定する。ここでは、鋼矢板壁10の断面二次モーメントI(cm/m)として13000、32400、56700、86000のものを小さい順に用いるものとして仮定する。次に、数式(3)〜(5)に基づき、設計地盤面から下側の鋼矢板壁10の根入れ長さLを求めるとともに、数式(8)〜(11)に基づき変位量δ、δを求める。次に、得られた変位量δ、δが数式(6)、(7)を充たすかどうか照査し、数式(6)、(7)を充たさない場合は、鋼矢板10の断面二次モーメントIとして一段階大きいものを用いると仮定して、同様の手順を繰り返し、数式(6)、(7)を充たす場合は、その仮定した断面二次モーメントIを有する鋼矢板20を、その壁高H、平均N値等の条件で用いるものとする。
表1は、上述したような設計計算により得られたある壁高Hと平均N値の場合に必要となるI、L0、Lをまとめた表である。また、図4は、上述したような設計計算により得られた平均N値と最低限必要となる鋼矢板壁10の根入れ長さLとの関係を示すグラフである。図より、壁高Hが2.0m超、3.5m以下で、平均N値が8以上、20以下の条件下においては、平均N値と根入れ長さLとの関係を数式(1)で表せることが確認できる。
Figure 0005434122
なお、上記の数式(1)を満足するLをもつ鋼矢板壁10の単位幅当たりの断面二次モーメントIは、下記の数式(16)を満足することが好ましい。下記の数式(16)を満足しない場合、即ち、Iの大きさが数式(16)の右辺よりも大きくなる場合、数式(1)から導き出される鋼矢板壁10等の安全性を確保するうえで必要な根入れ長さLが大きくなり、鋼矢板壁10等の安全性を確保することができない可能性があるので好ましくない。下記の数式(16)は、上述した数式(4)を展開して得られるものである。また、鋼矢板壁10の断面二次モーメントIは、鋼矢板壁10がU形鋼矢板20Aから構成される場合、32000(cm/m)以上とすることが好ましい。この数値未満であると、地震発生時に背面側の地盤5からの土圧等によって、鋼矢板壁10がたわんでしまい、鋼矢板壁10の倒壊や背面側の地盤5の崩壊を招く可能性があるので好ましくない。
Figure 0005434122
また、数式(1)に規定される平均N値とは、設計地盤面から下側の地盤の平均N値を、標準貫入試験により得た数値のことをいう。また、平均N値が得られない場合は、設計地盤面から下側の地盤の内部摩擦角φを求めた後にこの内部摩擦角φと下記の数式(21)等を用いて平均N値を算出することとしてもよい。数式(21)は、大崎の式と呼ばれるものである。また、この他にも、基礎地盤の粘着力c(kN/m)を求めた後にこの粘着力cと下記の数式(22)、(23)等を用いて平均N値を算出することとしてもよい。数式(22)、(23)は、Terzaghi,Peckの式と呼ばれるものである。数式(21)は、平均N値を求める対象となる地盤が砂質土の場合に用い、数式(22)、(23)は、その地盤が粘性土である場合に用いればよい。
Figure 0005434122
u =N/0.082 ・・・ (22)
c =qu/2 ・・・ (23)
擁壁1の構築時には、複数の鋼矢板20をバイブロハンマー等によって宅地としての土地3の地中に打設して鋼矢板壁10を構築した後、擁壁1の背面側の地盤5を盛土によって形成したり、前面側の地盤7を切土によって取り除くことになる。本実施形態においては、図1に示すように、既設の建築物8から前面側に所定距離Aを空けて鋼矢板壁10を
構築した後、前面側の地盤7を切土によって取り除くこととしている。
この後、鋼矢板壁10を構成する複数の鋼矢板20の上端を被覆するように上部工31を設けるとともに、必要に応じて修景工としての下部コンクリート33を設け、その後に、鋼矢板壁10の上端10aの背面側や、鋼矢板壁10の前面側の地盤表面4a近傍を埋戻土35により埋め戻して整地する。
なお、既設の建築物8を取り除いた後、又は図示のような既設の建築物8がない状態で鋼矢板壁10を構築して前面側の地盤7を切土によって取り除いた後に、背面側の地盤5上に新設の建築物8を設置することとしてもよいのは勿論である。
また、図5は、擁壁1の背面側の地盤5を盛土によって形成した場合の擁壁の構成を示す側面断面図を示す。この場合、鋼矢板壁10を構築した後に、盛土される前の背面側の地盤9上に所定高さに亘って盛土を行い、擁壁1の背面側の地盤5を形成することになる。
次に、本発明に係る擁壁1の作用効果について説明する。
本発明に係る擁壁1は、従来の断面略L字状のコンクリート製部材110からなる擁壁101のように、底版111を地盤中に埋設させるために行う地盤の掘削、埋め戻しが不要となるため、従来の擁壁101と比較して施工期間や施工コストを大幅に低減することが可能となる。また、本発明に係る擁壁1は、底版111を地盤中に埋設させるための地盤の掘削、埋め戻しが不要な構成とされているため、擁壁1の構築予定位置に近接して既設の建築物8が設置されている場合でも、その既設の建築物8を撤去することなく擁壁1の構築を行うことができ、施工の自由度が向上している。特に、擁壁1を軟弱地盤上に構築する場合でも、地盤材料の置換や固化改良をすることなく、鋼矢板壁10を根入れするのみで擁壁1の安全性を確保することができるため、施工期間や施工コストを更に有効的に低減することが可能となる。また、本発明に係る擁壁1は、複数の鋼矢板20を連結してなる鋼矢板壁10のような、構造が比較的簡単なものから構成されており、施工性、経済性に優れたものとなっている。また、本発明に係る擁壁1は、鋼矢板壁10が少なくとも10年以上使用するために構築されており、通常、仮設構造物として用いられる簡単な構造の鋼矢板壁10を、宅地としての土地3においてもいわゆる永久構造物として用いることが可能となっている。
また、本発明に係る擁壁1は、鋼矢板壁10の根入れ長さが所定の条件を満足するように調整するといった簡単な構成を採用するのみで、複雑な設計計算を行なうことなく、宅地としての土地3に鋼矢板壁10から構成される擁壁1を構築する場合でも、地震時における鋼矢板壁10及び背面側の地盤5の安全性を確保することが可能となっている。特に、本発明に係る擁壁1は、鋼矢板壁10の前面側の地盤表面4aから0.5m鉛直下側に離間した位置を設計地盤面とした条件下で設計を行なっているので、擁壁1のメンテナンス等のために前面側の地盤4を掘削する場合があっても、鋼矢板壁10及び背面側の地盤5の安全性を保つことが可能となっている。
従来における図14に示すような擁壁や、公衆用道路としての土地に構築される鋼矢板壁からなる擁壁の設計時においては、背面側の地盤上に建築物が設置されるとの前提のもと、地震発生時における背面側地盤の沈下量、傾斜量等を十分に検討したうえで、適正な断面形状、寸法等の擁壁1の設計がなされていなかったという技術背景があり、このことから、このような地震時における安全性を確保することができるという効果は、従来技術に対して大きな利点を有するものであるといえる。
次に、本発明を適用した擁壁1の第2実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
図6は、第2実施形態の擁壁1の構成を示す平面断面図である。第2実施形態の擁壁1は、第1実施形態の擁壁1と比較して、鋼矢板20がハット形鋼矢板20Bから構成されている点で相違している。
このハット形鋼矢板20Bは、ウエブ部21と、ウエブ部21の一面側に向かって傾斜するようにウエブ部21の両側に設けられたフランジ部23と、それぞれのフランジ部23の先端からウエブ部21の他面側に向かって傾斜するように設けられたアーム部27と、それぞれのアーム部27の先端に設けられた継手25とを有するものである。ハット形鋼矢板20Bは、ウエブ部21と、ウエブ部21の両側のフランジ部23と、アーム部27とから断面略ハット型形状に形成されている。
この鋼矢板壁10は、壁高Hが2.0m超、3.5m未満、平均N値が8以上、20以下の場合における、前面側の地盤表面4aからその下端10bまでの根入れ長さLが、下記数式(2)を満足することが好ましい。根入れ長さLが下記数式(2)を満足しない場合、地震発生時に鋼矢板壁10がたわんでしまい、鋼矢板壁10の水平方向の変位の増大や、背面側の地盤5の著しい沈下、傾斜を招いてしまうため好ましくない。
L≧8.75−0.1N ・・・ (2)
上記の数式(2)は、数式(1)を導き出した手順と同様の手順で導き出した。なお、数式(2)の導出時において、eは、ハット形鋼矢板の継手効率である1.0とし、鋼矢板壁10の断面二次モーメントI(cm/m)は10500、24400のものを小さい順に用いるものとして仮定する。
表2は、上述したような設計計算により得られたある壁高Hと平均N値の場合に必要となるI、L、Lをまとめた表である。また、図7は、上述したような設計計算により得られた平均N値と最低限必要となる鋼矢板壁10の根入れ長さLとの関係を示すグラフである。図より、壁高Hが2.0m超、3.5m未満で、平均N値が8以上、20以下の条件下においては、平均N値と根入れ長さLとの関係が数式(2)で表せることが確認できる。
Figure 0005434122
なお、上記の数式(2)を満足するLをもつ鋼矢板壁10の断面二次モーメントIは、第1実施形態と同様に、上記の数式(16)を満足することが好ましい。また、鋼矢板壁10がハット形鋼矢板20Bから構成される場合、20000(cm/m)以上とする
ことが好ましい。この数値未満であると、地震発生時に背面側の地盤5からの土圧等によって、鋼矢板壁10がたわんでしまい、鋼矢板壁10の倒壊や背面側の地盤5の崩壊を招く可能性があるので好ましくない。
次に、本発明を適用した擁壁1の第3実施形態について説明する。図8は、第3実施形態の擁壁1の構成を示す側面断面図であり、図9は、その平面断面図である。
第3実施形態の擁壁1は、第1実施形態の擁壁1において鋼矢板壁10に設けていた修景工としての下部コンクリート33の代替として、プレキャストコンクリート製の平板状の化粧パネル36が設けられている。この化粧パネル36は、鋼矢板壁10を構成する複数の鋼矢板20の前面側に、図示しないボルト等によって取り付けられるものであり、鋼矢板壁10の修景工として機能している。化粧パネル36を鋼矢板20に取り付けるための手段は特に限定するものではなく、公知の如何なる取り付け手段が採用されていてもよい。
ここで、鋼矢板壁10の修景工として化粧パネル36を取り付けない場合のように、鋼矢板壁10を構成する複数の鋼矢板20の前面側が外気に曝されている場合等では、この鋼矢板壁10の前面側に腐食が生じ易い環境にある。特に、前面側の地盤4の地際部4bに位置する鋼矢板壁10の前面には、雨水等が溜まり易く、腐食が特に生じ易い環境にあるといえる。
このため、このような場合においては、図10に示すように、鋼矢板壁10の前面側の壁面上に、その前面側の地盤表面4aから上側に0.1mの範囲S1と、その地盤表面4aから下側に0.5mの範囲S2とを少なくとも含むように防食層37が形成されていることが好ましい。これにより、鋼矢板壁10の地際部4bでの腐食の発生を防止することができ、これをもって鋼矢板壁10が前面側の地盤4の地際部4b近傍から倒壊する恐れを軽減して擁壁1としての耐久性を向上させることが可能となる。また、これにより、防食層37の構成材料の使用量を必要最低限に抑えつつ、このような効果を得ることが可能となる。防食層37の形成されている範囲が、鋼矢板壁10の前面側の地盤表面4aから上側に0.1m未満とされている場合、又は、その地盤表面4aから下側に0.5m未満とされている場合、地際部4bでの腐食が促進され、鋼矢板壁10の耐久性が低下する恐れがあるため好ましくない。
この防食層37は、例えば、タールエポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、塩化ゴム系塗料等の耐腐食性のある塗料を塗布する、又は、耐腐食性のあるシートを打設前又は打設後に鋼矢板壁10に貼り付けることによって形成されるものである。
次に、図1に示すような、建築物8と鋼矢板壁10との離間距離Aの望ましい数値条件について説明する。
本発明に係る擁壁1においては、その背面側の地盤5上に、鋼矢板壁10から背面側に少なくとも1m以上離間した位置に、新設又は既設の建築物8が設置されることが望ましい。この条件を満足しない場合、地震時における背面側の地盤5の安全性を確保することができなくなってしまう。以下、この理由について説明する。
図11は、地震時における擁壁1の背面側の地盤5の沈下量、傾斜量を検証すべく行った試験条件を示すモデル図である。試験では、鋼矢板壁10の前面側の地盤を掘削する切土の場合と、鋼矢板壁10の背面側の地盤5を盛土により形成する場合とにわけて、鋼矢板壁10の上端に地震時に想定される変位を付与した際の、背面側の地盤5の挙動を有限要素法による数値解析で求めることとした。
切土の条件下では、図11(a)に示すように、鋼矢板壁10が構築された状態を初期として地盤を作成した後、鋼矢板壁10の壁高Hが0.45mとなるまで鋼矢板壁10の前面側の地盤7を取り除き、その後に、鋼矢板壁10から背面側に離間距離Aを空けた位置から更に背面側に0.5mの範囲で、背面側の地盤5上に建築物の荷重を付与することとした。盛土の条件下では、図11(b)に示すように、鋼矢板壁10が構築された状態を初期として地盤を作成した後、鋼矢板壁10の背面側に盛土をして図示のような状態とし、その後に、鋼矢板壁10から背面側に離間距離Aを空けた位置から更に背面側に0.5mの範囲で、背面側の地盤5上に建築物の荷重を付与することとした。
試験は、実物の1/10のスケールの条件で行った。鋼矢板壁10から背面側への離間距離Aは、0.0m、0.1m及び0.2mと異なる条件に設定して別々の試験を行った。背面側の地盤5上に付与した建築物の荷重は、1kN/mと設定した。
切土、盛土の何れの条件下においても、上記のように設定した後に、地震時に想定される図中の矢印Pが示す方向に向けて、鋼矢板壁10の上端10aに鋼矢板壁10の壁高Hの1.5%の変位量を付与した。
試験結果については次のように評価することとした。地震時において、背面側の地盤5の安全性を担保するために鋼矢板壁10に要求される条件は以下の二点が挙げられる。まず、第1の条件は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく告示や「小規模建築物基礎設計指針」等にある記載から、背面側の地盤5の傾斜量が6/1000以下であることが挙げられる。次に、第2の条件は、地震時において鋼矢板壁10に直接作用する水平方向の土圧の大きさが常時において鋼矢板壁10に作用する常時土圧よりも小さいものであることが挙げられる。なお、ここでいう常時土圧は、一般的なクーロン土圧の算定式に基づき算出される土圧のことである。
得られた試験結果について第1の条件を満たしているか否か検討すると、切土、盛土の何れの条件下においても、離間距離Aが0.0m、0.1m及び0.2mの何れの場合でも、背面側の地盤5の傾斜量は6/1000以下であった。次に、第2の条件を満たしているか否か検討すると、鋼矢板壁10から背面側への離間距離Aが0.0mの条件下では、切土、盛土の何れの場合においても条件2を満たしていないが、離間距離Aが0.1m、0.2mの条件下では、切土、盛土の何れの場合においても条件2を満たしていることが確認された。従って、本発明においては、背面側の地盤5上の建築物8は、鋼矢板壁10から背面側に1.0m以上離間して設置されることが好ましいことになる。
なお、本発明に係る擁壁1の前面側の地盤4に対しては、擁壁1の構築後において、排水路等を設けるために所定深さの掘削を必要とする場合がある。公衆用道路に構築される擁壁の場合、擁壁構築位置が官地と民地の境界となることが多く、前面側の地盤4の掘削時に背面側の地盤5の安全性について道路管理者等により検討することが行われる。これに対して宅地に構築される擁壁の場合、擁壁構築位置が民地同士の境界となる場合が多く、背面側の地盤5の安全性について詳細な検討がなされないまま前面側の地盤4が掘削されるケースが想定される。
このため、本発明者は、背面側の地盤5の安全性を確保することができる前面側の地盤4の掘削範囲について検討したところ、鋼矢板壁10から前面側に1.0m離間した位置より更に前面側を掘削する際には、前面側の地盤表面4aから下側に1.0m以下の範囲で掘削を留めておけば、背面側の地盤5の安全性を確保できることを見出した。掘削範囲についてこの条件を充たしていれば、掘削作業時に仮設土留め工等の対策工を施すことなく掘削が可能となる。なお、安全性を確保可能な掘削範囲を周知するために、擁壁1に上
記のような掘削可能範囲を記載した銘板等を設けることが好ましい。
図12は、ここで本発明者が前面側の地盤4の掘削範囲を検討するために行った試験条件を示すモデル図である。試験では、有限要素法による数値解析を用いることとした。試験では、図12に示すように鋼矢板壁10を構築した状態を初期状態とし、鋼矢板壁10の前面側から1.0m離間した位置から更に前面側に亘る所定長さの範囲を、その地表面4aから下側に0.25mずつ掘削することとした。なお、鋼矢板壁10の断面二次モーメントIは、32400cm/mとした。
図13は、前面側の地盤表面4aからの掘削深度に対する図15におけるB地点での水平変位量の関係を示すグラフである。図13に示すように、掘削深度が1.0mを超えたあたりから、B地点、即ち、鋼矢板壁10の上端10aでの水平変位量の増加傾向が顕著なものとなっており、掘削深度が1.5mの場合においては水平変位量が0.20mを超えることが確認できる。これより、鋼矢板壁10から前面側に1.0m離間した位置より更に前面側を掘削する際には、前面側の地盤表面4aから下側に1.0m以下の範囲で掘削を留めるのが好ましいことが確認できる。
因みに、本発明において、鋼矢板壁10は、図1、図2に示すような、その板厚方向の壁厚tが0.75m以下となるように形成することが可能となっている。これは、一般的な家屋の幅が15m程度であることから、その5/100以下に収めることが可能となっていることを意味している。なお、上部工31も含めると、鋼矢板壁10及び上部工31からなる壁体2の壁厚は、例えば0.8m程度になる。
なお、本発明において、背面側の地盤5上に設置される建築物8は、例えば、一般地域の3階建以下の小規模構造物が対象となっており、その荷重は、例えば、10(kN/m)から構成される。また、上部工31の上端と鋼矢板壁10の上端との間隔は、例えば、0.10〜0.60(m)から構成される。
1 :擁壁
3 :土地
4 :擁壁の前面側に位置する高さが低い側の地盤
5 :擁壁の背面側に位置する高さが高い側の地盤
8 :建築物
10 :鋼矢板壁
11 :鋼矢板壁の下部
13 :鋼矢板壁の上部
20 :鋼矢板
21 :ウエブ部
23 :フランジ部
25 :継手
27 :アーム部
31 :上部工
33 :下部コンクリート
35 :埋戻土
36 :化粧パネル
37 :防食層

Claims (4)

  1. 高低差を有する土地に構築される擁壁において、
    上記擁壁の前面側に位置する高さが低い側の地盤と上記擁壁の背面側に位置する高さが高い側の地盤との間に、少なくとも10年以上使用するために構築され、下部が宅地としての土地の地中に鉛直に埋設されるとともに、上部が該宅地としての土地の地中から鉛直上側に突出され、複数の鋼矢板が継手を介して連結されてなる鋼矢板壁によって該背面側の地盤の崩壊が防止されており、
    上記前面側の地盤及び/又は上記背面側の地盤上に建築物が設置され、
    上記鋼矢板壁は、ウエブ部と、上記ウエブ部の両側のフランジ部と、上記フランジ部の先端の継手とを有するU字形鋼矢板が当該継手を介して連結されて構成されるとともに、上記前面側の地盤表面から上端までの壁高が3.0m以上、3.5m以下、前面側の地盤表面から鉛直下側に0.5m離間した位置から下側の地盤の平均N値が10以上、20以下で、断面二次モーメントが32400cm 4 /m以上の場合における、前面側の地盤表面から下端までの根入れ長さLが、上記鋼矢板壁の前面側の壁面上に防食層を形成したり、塗装をする又は塗装のメンテナンスをするために、上記前面側の地盤を掘削する場合に、上記鋼矢板壁の前面側の地盤表面から0.5m鉛直下側に離間した位置を設計地盤面とした条件下で、下記数式(1)を満足させて、上記前面側の地盤表面から0.5m鉛直下側に離間した位置から更に下側の地盤によって、上記鋼矢板壁の安全性を保持するための抵抗力を得ること
    を特徴とする擁壁。
    L≧9.25−0.1N ・・・ (1)
    N:上記平均N値
  2. 高低差を有する土地に構築される擁壁において、
    上記擁壁の前面側に位置する高さが低い側の地盤と上記擁壁の背面側に位置する高さが高い側の地盤との間に、少なくとも10年以上使用するために構築され、下部が宅地としての土地の地中に鉛直に埋設されるとともに、上部が該宅地としての土地の地中から鉛直上側に突出され、複数の鋼矢板が継手を介して連結されてなる鋼矢板壁によって該背面側の地盤の崩壊が防止されており、
    上記前面側の地盤及び/又は上記背面側の地盤上に建築物が設置され、
    上記鋼矢板壁は、ウエブ部と、上記ウエブ部の両側のフランジ部と、上記フランジ部の先端に設けられたアーム部と、上記アーム部の先端の継手とを有するハット形鋼矢板が当該継手を介して連結されて構成されるとともに、上記前面側の地盤表面から上端までの壁高が2.5m以上、3.0m以下、前面側の地盤表面から鉛直下側に0.5m離間した位置から下側の平均N値が10以上、20以下で、断面二次モーメントが24400cm 4 /m以上の場合における、前面側の地盤表面から下端までの根入れ長さLが、上記鋼矢板壁の前面側の壁面上に防食層を形成したり、塗装をする又は塗装のメンテナンスをするために、上記前面側の地盤を掘削する場合に、上記鋼矢板壁の前面側の地盤表面から0.5m鉛直下側に離間した位置を設計地盤面とした条件下で、下記数式(2)を満足させて、上記前面側の地盤表面から0.5m鉛直下側に離間した位置から更に下側の地盤によって、上記鋼矢板壁の安全性を保持するための抵抗力を得ること
    を特徴とする擁壁。
    L≧8.75−0.1N ・・・ (2)
    N:上記平均N値
  3. 上記背面側の地盤上には、上記鋼矢板壁から背面側に少なくとも1m以上離間して建築物が設置されること
    を特徴とする請求項1又は2記載の擁壁。
  4. 上記鋼矢板壁の前面側には、その前面側の地盤表面から上側に0.1m、下側に0.5mの範囲を少なくとも含むように防食層が形成されてなること
    を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の擁壁。
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