本発明の実施例に記載する、被検査物の検査装置及び検査方法に適用される被検査物とは、例えばシリコンや化合物半導体などの半導体ウェーハ,絶縁物ウェーハ(例えば、サファイア,石英,ガラス,セラミックを素材とした基板)などの平板状基板である。
以下に記載する実施例では、半導体ウェーハを被検査物として適用した、本発明の一実施例である被検査物の検査方法及び検査装置について説明する。
本発明の一実施例であるウェーハ表面の検査装置では、レーザービームをウェーハの略中心部から外周部へと照射しながら、ウェーハ表面から発せられる散乱光を受光し、この受光した散乱光に基づいてウェーハ表面を検査する。
図1はウェーハ外周部の断面を示したものであるが、ウェーハ検査装置ではレーザービームがウェーハ外周部のエッジロールオフ101やベベル102(エッジ部)へ差し掛ると、ウェーハ表面から強い回折光が射出され、検出器のノイズ信号を増大させたり、更には検出器にダメージを与えて、検出感度を低下させる。そのため、通常のウェーハ検査装置では、回折光の影響でノイズ信号が高くなる領域を非検査領域とし、ウェーハ表面の検査領域から除外することによって、回折光の障害を回避している。
しかしながら、回折光の影響でノイズ信号が高くなるウェーハ外周部の領域を、ウェーハ表面の検査領域から除外すると、この領域から発せられる散乱光が受光できなくなるため、前記領域のウェーハの表面に付着した異物や表面に生じた欠陥の情報を得ることができない。また、ウェーハ外周部を検査領域から除外するため、図1に示すエッジロールオフ101やベベル102(エッジ部)の領域を検出することもできなくなる。
そこで、本発明の一実施例である被検査物の検査装置では、ウェーハ表面に照射したレーザービームによって、ウェーハ表面から発せられる散乱光を検出する検出器(受光器)を複数個設置し、ウェーハのベベル102(エッジ部)から発せられる強い回折光が常に略同一の方向(方位)へ放射される特性を利用して回折光の障害を回避する。この複数の検出器(受光器)の中から、ウェーハのベベル102(エッジ部)で発生する回折光の影響を受けない方向(方位,仰角)に配置した検出器(受光器)を選択して散乱光を受光することで、ウェーハの表面に付着した異物や表面に生じた欠陥の情報を、ウェーハ表面の全体に亘って採取可能に構成したものである。
また、本発明の一実施例である被検査物の検査装置では、ウェーハ表面に照射したレーザービームによって、ウェーハ表面から発せられる散乱光を検出する検出器(受光器)を複数個設置し、複数の検出器(受光器)で受光した散乱光の検出信号に基づいて演算処理することにより、レーザービームが照射するウェーハ表面の平坦な平面領域と、該平面領域から外れたウェーハ外周部のエッジロールオフ101やベベル102(エッジ部)に該当する所定領域との境界位置を判別可能に構成したものである。
さらに、本発明の一実施例である被検査物の検査装置では、ウェーハ表面に照射したレーザービームによって、ウェーハ表面から発せられる散乱光を検出する検出器(受光器)を複数個設置し、複数の検出器(受光器)で受光した散乱光の検出信号に基づく演算処理にて、所定領域の境界位置を判別し、当該境界位置から表面検査されたウェーハの複数の基準位置を算出し、検出された異物や欠陥の座標位置を、当該基準位置に基づいて補正可能に構成したものである。
図2から図6を用いて、本発明の一実施例である被検査物の検査装置を詳細に説明すると、まず、図2は被検査物である半導体ウェーハ1と、この半導体ウェーハ1に照射するレーザービーム204の状況と、レーザービーム204の照射によってウェーハ1のベベル102(エッジ部)で生じる強い回折光202,弱い回折光203の強度と、レーザービーム204の照射によってウェーハ1表面の異物から発生する散乱光Seを示した概念図である。
そして、図2(a)はウェーハ1のベベル102(エッジ部)で生じる強い回折光202と弱い回折光203を上方から示した上面図、図2(b)はウェーハ1のベベル102(エッジ部)で生じる強い回折光202を側面から示した側面図、図2(c)はウェーハ1表面に存在する異物又は欠陥(COP,積層欠陥,スクラッチ,クラック等)205から発生する散乱光Seの状態を示した説明図である。
図2(a)(b)に示されるレーザービーム204によって形成されるレーザースポット201は、ウェーハ1表面の略中心から、半径(r)方向の外周端部に向かって走査される。レーザースポット201が、ウェーハ1のエッジロールオフ101領域からベベル102領域へと進むに従い、回折光は次第に大きくなり、ベベル102領域ではウェーハ1の直径方向に強い回折光202が生じ、ウェーハ1の接線方向には弱い(小さい)回折光203が生じる。図2(b)は、レーザービーム204がウェーハ1のベベル102領域に照射された際の、ベベル102で生じる強い回折光202を側面から見たものであり、レーザースポット201内のレーザービーム204がウェーハ1のベベル102で回折し、強い回折光202がウェーハの半径方向に向かって形成される。
この強い回折光202は、ウェーハ1表面に照射されるレーザースポット201の照射位置が一定に制御され、ウェーハ1が矢印で示す円周方向に回転しながら、所定の一定方位へ直線移動することにより、常にウェーハ1の直径方向に発生する。
したがって、後述する検出器(受光器)に対して、ベベル102領域で発生するこの強い回折光202は、常に同じ方向(方位,仰角)に位置する。この強い回折光202の影響によって、ウェーハ1表面に存在する異物又は欠陥205から発生する散乱光Seは、強い回折光202に起因するノイズ信号の中に埋れてしまい、散乱光Seの望ましい検出信号を得ることが困難となる。
図2(c)は、ウェーハ1の表面に照射されるレーザービーム204からなるレーザースポット201が、ウェーハ表面の平坦な平面領域を走査している状態を示したものである。ウェーハ1表面に存在する異物又は欠陥205の上をレーザースポット201が走査すると、異物又は欠陥205から、その種類に応じた散乱光を放出する。微細な異物の場合には、広範囲な角度(方向)に散乱光Seが発生する。COPやスクラッチなどの構造欠陥の場合には、上方に指向性を持った散乱光が放出される。
ところが、ウェーハ1表面に照射されるレーザービーム204のレーザースポット201が、ウェーハ1端部のベベル102領域に位置する場合には、前述のベベル102領域で生じる強い回折光202の影響によって、ノイズ信号が増大する。したがって、このウェーハ1表面のベベル102領域に異物又は欠陥205が存在したとしても、このノイズ信号の中に異物又は欠陥205から発生した散乱光Seによる検出信号が埋れてしまい、ベベル102領域の異物又は欠陥205を検出することができないことになる。
そこで、本発明の実施例である被検査物の検査装置では、以下の構成によってベベル102領域からの強い回折光202によるノイズの影響を排除或いは低減して、ウェーハ1表面の異物又は欠陥205で発生する散乱光Seを効果的に検出できるようにしている。
図4は本発明の一実施例である被検査物の検査装置を構成する検出系の簡略構成図であり、図3は図4に示した検査装置を構成する検出器の概略を示すものであって、図3(a)は検出器の配置状況を示した上面図、図3(b)はウェーハ1表面で生じた散乱光を検出器で検出した際の、検出信号の処理内容を示す概略図である。
図3及び図4を用いて、本発明の一実施例であるウェーハ1表面を検査するウェーハ検査装置の構成を説明する。図3(a)には、ウェーハ1からの散乱光を検出する光電子増倍管(PMT)等からなる高角度用(高仰角用)の検出器(受光器)371〜374、及び高角度用より低角側の散乱光を検出する低角度用(低仰角用)の検出器(受光器)381〜386を、それぞれ上方から見た配置の一例を示している。また、図3(b)は、図3(a)に示した高角度用検出器371〜374及び低角度用検出器381〜386の一部分を、側方から見た配置の一例を示している。
高角度用検出器371〜374は、ウェーハ1表面に照射したレーザービーム204によって異物又は欠陥205から放出された散乱光Seのうち、ウェーハ1表面から約50〜70°の角度(仰角)に沿って入射するように配置されている。高角度用検出器371〜374は、上方から見た場合、円周方向に相互に略90°ずつそれぞれの配置方向(方位)を異ならせて円周方向に4個配置している。
同様に低角度用検出器381〜386は、ウェーハ1表面に照射したレーザービーム204によって異物又は欠陥205から放出された散乱光Seのうち、ウェーハ1表面から約20〜40°の角度(仰角)に沿って入射するように配置されている。低角度用検出器381〜386は、上方から見た場合、円周方向に相互に略60°ずつそれぞれの配置方向(方位)を異ならせて円周方向に6個配置している。
これらの高角度用検出器371〜374、及び低角度用検出器381〜386のうち、レーザービーム204の照射によってウェーハ1のベベル102領域で生じた強い回折光202の大きな影響を受ける検出器は、ウェーハ1の直径方向に沿って配置された高角度用検出器372及び374であり、次に強い回折光202の影響を受ける検出器は、低角度用検出器384及び385、並びに低角度用検出器381及び382である。
また、前記した強い回折光202による影響が少ない検出器は、ウェーハ1の直径方向とは直角に配置された、即ちウェーハ1の接線方向と平行する位置関係に配置された高角度用検出器371及び373である。また、強い回折光202による次に影響が少ない検出器は、低角度用検出器383及び386である。
図4は、本実施例のウェーハ表面検査装置の概略構成を示したものである。ウェーハ表面検査装置は、ウェーハ1を載置させるテーブル21と、テーブル21を回転させるスピンドルモータ等からなる回転駆動機構23と、このテーブル21と回転駆動機構23を搭載してウェーハ1を所定の略直線方向に移動させる直線移動機構22(進退駆動機構)と、投光光学系400と、回転駆動機構23と直線移動機構22を制御する駆動制御器51と、信号処理装置4と、データ処理装置52と、ディスプレイ等からなる表示装置75を備えて構成される。回転テーブル21に載置された検査対象となる被検査物のウェーハ1は、所定の回転速度に制御され、直線移動機構22により略中心からベベル102方向に向かって、所定方位へ直線移動する。
このウェーハ1の上部に配置された投光光学系400は、2つの投光光学系を備えて構成されている。第1の投光光学系では、レーザー発振器を備えたレーザー光源31から出力したレーザービーム204を、下方へと光路を変更するミラー331(光路切換機構)によって反射し、鉛直方向下方にレーザースポットSp(以下スポットSpと称する)を形成してウェーハ1の表面に略垂直に投射される(垂直照射)。
第2の投光光学系では、レーザー光源31から出力されたレーザービーム204の光路から、光路を変更するミラー331を二点鎖線で示した垂直方向の上方の位置に移動させ、光路の延長線上に配置された第2の投光光学系を構成するミラー332によって、レーザービーム204を鉛直方向下方に反射させる。次いで、この反射したレーザービーム204を、ウェーハ1表面への入射角を制御するミラー35(入射角制御機構)によって反射し、レーザースポット201をウェーハ1表面に所定の入射角で投射する(斜方照射)
。
上記の垂直照射のレーザースポット201、又は斜方照射のレーザースポット201は、回転駆動機構23及び直線移動機構22の駆動によるウェーハ1の移動によって、ウェーハ1の表面を走査する。
テーブル21に載置されたウェーハ1は、回転駆動機構23によって所定の回転速度に回転されるとともに、その回転速度に応じてテーブル21の半径方向(X方向:図中の白抜きの矢印方向)に向けて、直線移動機構22により略直線方向に移動する。
よって、ウェーハ1表面に照射されるレーザースポット201は、ウェーハ1表面上をウェーハ1の略中心から半径方向外周側のベベル102に向けてスパイラル状に走査され、その結果、ウェーハ1表面を全面に亘って走査することが可能となっている。
なお、回転駆動機構23及び直線移動機構22の駆動は、駆動制御器51を介してデータ処理装置52によって制御される。回転駆動機構23には回転方向の座標位置(θ)を検出する光学読み取り式のロータリーエンコーダ、直線移動機構22には直線方向(X方向)の座標位置(r)を検出する光学読み取り式のリニアエンコーダが、それぞれ配設されている。ウェーハ1表面上の走査位置は、ロータリーエンコーダ及びリニアエンコーダから送信される座標信号に基づいて検出され、駆動制御器51を介してデータ処理装置52へ送られ、異物又は欠陥205の検出信号と関連付けられ、メモリ72に記憶される。本実施例では、位置座標の検出センサに光学読み取り式のリニアエンコーダを用いているが、共に、高精度で角度または直線上の位置が検出できるセンサであれば、他の検出原理を用いたものでも良い。なお、前述の回転駆動機構23の回転速度及び直線移動機構22の移動速度は、入力装置76を介して表示装置75上に設けられたレシピ画面より入力され、データ処理装置52に登録された当該入力データに基づき、駆動制御器51によって制御される。
本実施例によるウェーハ表面の検査装置では、前記の図2(c)に示すように、ウェーハ1表面に異物又は欠陥205が存在すると、レーザービーム204のレーザースポット201によって、異物又は欠陥205に基づく散乱光Seが放射される。
このウェーハ1表面に存在する異物又は欠陥205から散乱した散乱光Seは、図3(b)に示すように、その散乱光Seの一部は集光され、光電変換器である光電子増倍管(以下PMTと称する)等から構成される高角度用検出器371〜374、及び低角度用検出器381〜386によってそれぞれ受光される。
この高角度用検出器371〜374及び低角度用検出器381〜386に入射した異物又は欠陥205からの散乱光Seは、前記高角度用検出器371〜374及び低角度用検出器381〜386に入射したそれぞれの散乱光Se強度に応じて、検出信号(電気信号)にそれぞれ変換され、これらの変換された検出信号(電気信号)が信号処理装置4に入力される。
信号処理装置4に入力された検出信号は、信号処理装置4によって高角度用検出器371〜374及び低角度用検出器381〜386それぞれの検出信号に信号処理が施され、データ処理装置52に送られる。次いで、各検出信号はデータ処理装置52に備えられたA/D変換回路(A/D)71によりデジタルデータに変換され、該データ処理装置52に備えられたメモリ72に一旦、デジタルデータとして記憶される。
次いで、データ処理装置52に備えられた演算装置(MPU)73によって、所定のプログラムが実行される。メモリ72に一旦記録された高角度用検出器371〜374及び低角度用検出器381〜386の各デジタルデータは、駆動制御器51を介して入力されたウェーハ1表面における走査位置の座標データ(θ,r)と共に、該データ処理装置52の演算器(MPU)73にて演算されデータ処理される。
データ処理装置52の演算器(MPU)73によるデータ処理によって、前記検出信号の検出データと座標データ(θ,r)に基づき、例えばウェーハ1表面に存在する異物又は欠陥205の大きさ、ウェーハ1表面上における位置座標,異物又は欠陥205の個数,異物や欠陥種の分離識別結果などを出力する。
さらに、データ処理装置52の演算器(MPU)73が所定のプログラムを実行することで、ウェーハ1表面に存在する異物又は欠陥205の特徴データが生成され、異物又は欠陥205の個数,大きさ,ウェーハ1表面上における位置座標,異物や欠陥種の分離識別結果が、マップ表示としてプリンタあるいはディスプレイ等の表示装置75等に出力される。
次に図5を用いて図4に示した本実施例の検査装置におけるエッジロールオフ101領域やベベル102領域に該当するウェーハ1外周部の所定領域の検査方法を説明する。
図5(a)はレーザービーム204がウェーハ1の所定領域10の領域を照射している状態を示した概略図、図5(b)は、高角度用検出器371〜374及び低角度用検出器381〜386で検出した検出信号の強度比を示した図、図5(c)は、表示装置75の画面上における閾値設定画面の一例を示した図である。
まず、図5(a)を用いてウェーハ1表面におけるエッジロールオフ101領域やベベル102(エッジ又はチャンファー)領域に該当する所定領域10での状態を説明する。ウェーハ1表面に照射するレーザービーム204のレーザースポット201の周縁部が、ウェーハ1表面の大部分を占める平面領域からウェーハ1の半径方向の外側端に向かって走査されると、エッジロールオフ101の傾斜の始まる部分(境界位置)Rpよりウェーハ1表面からの強い回折光202が徐々に強くなる。さらに、ベベル102の傾斜が始まる部分(境界位置)Epに差し掛かると、図2に示した直径方向の強い回折光202の強度は急に強くなり、ウェーハ1表面のベベルの境界位置Epの部分に存在する異物又は欠陥205から発生した散乱光Seの検出に大きな影響が出始める。
そのため、回折光の状態の変化をとらえることによって、ウェーハ1外周部における所定領域10は、ウェーハ1表面の強い回折光202が徐々に強まり始める部分(エッジロールオフの境界位置Rp)から強い回折光202が急に強まる部分までの間をエッジロールオフ101,強い回折光202が急に強まる前記した傾斜が始まる部分(ベベルの境界位置Ep)からウェーハ1の半径方向外側端部までをベベル102領域として検出することができる。
ウェーハ1表面の大部分を形成する平面領域と所定領域10における境界は、上記の場合、エッジロールオフ101の傾斜の始まる部分(境界位置)Rp、若しくはベベル102の傾斜が始まる部分(境界位置)Epを、平面領域との境界とすることができる。または、それぞれの領域に存在する異物又は欠陥205に応じて、半導体デバイスの歩留りに対する影響度が異なるため、二つの境界位置を設けて、検査領域を平面領域,エッジロールオフ101領域,ベベル102領域と複数の領域に分離識別させても良い。
次に、エッジロールオフ101の境界位置Rpとベベル102の境界位置Epの検出方法について説明する。ウェーハ1表面に照射されるレーザービーム204のレーザースポット201によるウェーハ1表面の走査(スキャン)が、平面領域から所定領域10にかかる際に、強い回折光の発せられる方向と略直角方向に配置された回折光を受けない(又は回折光の影響の少ない)角度(方位)の高角度用検出器(371,373)及び低角度用検出器(383,386)と、強い回折光の発せられる方向と略平行方向若しくは近接する方位に配置された回折光を受ける(又は回折光の影響の大きい)角度(方位)の高角度用検出器(372,374)及び低角度用検出器(381,382,384,385)とでは、検出信号に混入する回折光によるノイズレベルに大きな差異が現れる。
図5(b)は、回折光を受けない(又は回折光の影響の少ない)角度(方位)に配置された検出器と、回折光を受ける(又は回折光の影響の大きい)角度(方位)に配置された検出器で、入射された散乱光Seや強い回折光202,弱い回折光203をそれぞれ受光し、図3(b)及び図4に示した信号処理装置4からの出力信号を比較したものである。
ここでは、回折光を受ける(又は回折光の影響の大きい)角度に配置された検出器からの出力電圧をV1、回折光を受けない(又は回折光の影響の少ない)角度に配置された検出器からの出力電圧をV2とし、ウェーハ1の半径方向(r)に対する出力信号を演算した出力電圧の比(V1/V2)を、閾値Th1,Th2と共に表している。
図5(b)に示した出力電圧比V1/V2の値は、走査用のレーザービーム204のレーザースポット201が照射されるウェーハ1表面の位置が、平面領域からウェーハ1の半径方向の外方端部の所定領域10に到達すると、図2(a)に示したような強い回折光202が発生し、この強い回折光202の影響を受けて(又は回折光の影響が大きくなって)出力電圧の比の値が大きくなる。まずは、エッジロールオフ101の傾斜の始まる部分(境界位置)Rpより徐々に大きくなり、ベベル102の傾斜が始まる部分(境界位置)Epに差し掛かると、急に大きくなる。よって、出力電圧比V1/V2の値と閾値とを比較することにより、ウェーハ1の平面領域と外方端部のエッジロールオフ101やベベル102に該当する所定領域10の境界位置Rp,Epを正確に判定することが可能となる。
図5(c)に示す設定画面は、出力電圧比V1/V2値を比較判定するために表示装置75上に設けた、閾値設定画面の一例である。出力電圧の比V1/V2の閾値Th1,Th2の値は、ウェーハ1表面に照射するレーザービーム204の条件によって変化するため、検査条件設定画面504(条件設定手段)の中で、出力電圧の比V1/V2の閾値Th1,Th2の値を入力装置76より任意に設定可能としている。この閾値設定画面501には、ベベル102の境界位置Epを判断するための閾値設定手段502とエッジロールオフ101の境界位置Rpを判断するための閾値設定手段503を設けている。このベベルの境界位置Ep,エッジロールオフの境界位置Rpを判断するための複数の閾値設定手段502,503の設定値に基づいて、所定領域10を分離識別する。データ処理装置
52の演算器73で比較演算し、図5(b)に示す出力電圧比V1/V2の値が徐々に大きくなって閾値Th2を超える位置を平面領域とエッジロールオフ101の境界位置Rpと判定する。次いで出力電圧比V1/V2の値が急に大きくなって閾値Th1を越える位置をエッジロールオフ101領域とベベル102領域との境界位置Epと判定する。また前記閾値Th1を越えた領域全体をウェーハ1表面のベベル102に該当する所定領域10と判定する。
上記したように、所定領域10における回折光の影響度が異なる複数の検出器で受光した検出信号に基づき、データ処理装置52の演算器73で比較演算することによって、ウェーハ1表面の平面領域と所定領域10との間の境界位置(エッジロールオフの境界位置Rp,ベベルの境界位置Ep)を精度良く判定することができる。
この結果、ウェーハ1表面にレーザービーム204のレーザースポット201を照射して走査する有効範囲を、精度良く限界まで拡張した、広い範囲に設定することが可能とな
る。
また、本検査装置では、上記したように検出器で受光した検出信号に基づいてデータ処理装置52の演算器73で比較演算することによって、ウェーハ1表面の所定領域10の範囲を精度良く設定でき、この所定領域10にレーザービーム204のレーザースポット201を照射して走査する際には、回折光の影響を受けない又は影響の少ない位置に配置した検出器を選択して、異物又は欠陥205を判定するための検出信号を選別できる。
この結果、所定領域10に存在する異物又は欠陥205の状態について回折光による影響を受けずに、又は影響を少なくして検出することが可能となる。
即ち、ウェーハ1の所定領域10にレーザービーム204のレーザースポット201を照射して、所定領域10に存在する異物又は欠陥205を測定する場合には、エッジロールオフ101領域とベベル102領域に該当する境界位置Rp,Epを検出した時点で、データ処理装置52の演算器73によって、検出器の選別処理を行う(検出器選別手段)。例えば、高角度用検出器371〜374及び低角度用検出器381〜386の中から、
ウェーハ1表面の所定領域10で発生する強い回折光202を受けない(又は回折光の影響の少ない)角度に配置された高角度用検出器371,373及び低角度用検出器383,386を選択し、この選択された各検出器で検出した検出信号に基づき、所定領域10に存在する異物又は欠陥205を検出する。これにより、ウェーハ1の所定領域10に生じる強い回折光202によるノイズの影響を受けずに(又は影響を小さくして)、所定領域10に存在する異物又は欠陥205の状況を精度良く測定することができる。
または、データ処理装置52の演算器73によって、検出器の選別処理及び感度修正処理を行っても良い。例えば、高角度用検出器371〜374及び低角度用検出器381〜386の中から、所定領域10で発生する強い回折光202を受ける(又は回折光の影響の大きい)角度に配置した高角度用検出器372,374(又は低角度用検出器381,384及び検出器382,385)を選択して、選択された検出器の検出感度を下げる感度修正処理の操作(検出感度制御手段)を行う。或いは、ウェーハ1表面に照射されるレーザービーム204の強度(パワー)を下げて照射するように、レーザー光源31の出力を制御する処理(出力制御手段)を行っても良い。
感度修正処理の検出器における検出信号、或いは強度を下げたレーザービーム204における検出信号に基づき、ウェーハ1表面の所定領域10に存在する異物又は欠陥205を判定する。このことによって、ウェーハ1の所定領域10で生じる強い回折光202によるノイズの影響を受けずに(又は影響を小さくして)、所定領域10に存在する異物又は欠陥205の状態を精度良く測定することができる。また、強い回折光202による検出器へのダメージを抑制できるため、検出器の破損を防止することができる。
次に図6および図7を用いて、本発明の一実施例であるウェーハ1表面から検出された異物又は欠陥205の位置座標補正の方法について説明する。図6はウェーハ1を載置するテーブル21の螺旋走査駆動方法を示す図、図7は各θ座標におけるエッジロールオフの境界位置Rp,ベベルの境界位置Epを求める方法を示している。
図4で述べたように、テーブル21に載置されたウェーハ1は、回転駆動機構23によって所定の回転速度に回転(θ方向)されるとともに、その回転速度に応じてテーブル21の半径方向(r方向)に向けて、直線移動機構22により略直線方向に移動する。よって、図6に示すように、ウェーハ1を載置するテーブル21は、回転移動量θと並進移動量rの組合わせによって、相対的にレーザースポット201がウェーハ1を螺旋状に走査することとなる。基準位置601は、上述のロータリーエンコーダとリニアエンコーダからの位置座標信号にて制御された、検査開始の始点となる位置座標である。この基準位置601を始点に、前記テーブル21が1回転する各走査レーンである第1走査レーン602乃至第m走査レーン605の間、各々、半径方向外周部に向かってΔrだけ移動する。レーザースポット201の径がΔrより小さいと、検査領域に抜けが生じるので、通常Δrはレーザースポット201の径より小さく設定されている。従って、横軸に同一のθ座標を切出すと、Δrずつ移動しながらも、ウェーハ1表面の形状変化を半径方向外周部に向かって漏れなく検査することになる。なお、各走査レーン602〜605における並進移動のΔrは、小さいほど、形状変化の検出感度は向上するが、検査装置のスループットが低下する。ウェーハ1外周部の近辺(近傍)にレーザースポット201の走査が至った際に、並進移動のΔrが小さくなるように制御することが好ましい。
なお、基準位置601は、テーブル21における仮のウェーハ1中心であり、実際のウェーハ1中心は、搬送機構系が有する大きさの異なるランダム誤差によってウェーハ1の載置位置が搬送毎に変わることや、載置後の位置ずれなどにより、搬送毎に変化する。よって、実際のウェーハ1中心と基準位置601とは、検査毎にズレ量が変動することになる。
図7は、前述のデータ処理装置52のメモリ72に記憶された、回折光を受ける(又は回折光の影響の大きい)角度(方位)に配置された検出器のデジタルデータD1と、回折光を受けない(又は回折光の影響の少ない)角度(方位)に配置された検出器のデジタルデータD2に基づいてデータ処理装置52で演算処理し、並進移動量r(移動距離)に対する出力電圧比D1/D2の変化を、各々の同一θ座標でプロットしたものである。図5(b)に示したように、並進移動量r(移動距離)がウェーハ外周部に近づくと、エッジロールオフ101の傾斜の始まる部分Rp(境界位置)より徐々に大きくなり、ベベル102の傾斜が始まる部分Ep(境界位置)に差し掛かると、急に大きくなる。出力電圧比D1/D2カーブの、このエッジロールオフの境界位置Rp,ベベルの境界位置Epに対応した変化は、ウェーハ1のズレ量と偏心の状態に応じて、各々のθ座標でその位置が変化する。そこで、ベベル102の境界位置Epを判定する閾値Th1とエッジロールオフ101の境界位置Rpを判定する閾値Th2により、ウェーハ1周方向の任意のθ座標ごとに、このエッジロールオフの境界位置Rp,ベベルの境界位置Epの並進移動量r(移動距離)の位置を検出すれば、ウェーハ1のズレ量と偏心の状態を知ることができる。
また、同様な方法にて、ノッチの位置を検出することもできる。図7に示すθyは、ノッチの領域を捉えたものである。ノッチの領域は、ウェーハ1に形成した切欠きであるため、出力電圧比D1/D2の変化が、他のθ座標よりも早い時点で現れる。このθ座標の位置を捉えることによってノッチの位置を検出することができる。図8に示すようにノッチ803の領域近傍の複数のθ座標(例えば、図中のθy-2n,θy-n,θy,θy+n,θy+2n)を切出して、各θ座標におけるベベル102の境界位置Epが検出された移動距離(r)801を検出する。そして、その移動距離(r)801が最も小さくなるθ座標(θy)の位置をノッチ803の座標とする。ノッチ803の中心分が平坦部802であって、その位置を特定できない場合には、平坦部802領域の移動距離(r)801を微分し、その値が略0となる領域の中央をノッチ803の座標とする。
図9は、テーブル21の基準位置601を基に、ウェーハ1周方向のθ座標ごとのベベル102の境界位置Epが検出された移動距離801と、エッジロールオフ101の境界位置Rpが検出された移動距離901をX−Y座標上にプロットしたものである。テーブル21の基準位置601を(0,0)座標とし、この座標を通るθ座標の0°と180°の線をX軸、これと直交する90°と270°の線をY軸としている。このベベル102の境界位置Ep及びエッジロールオフ101の境界位置Rpより描かれた略円状の中心と、ノッチ803のθ座標から、ウェーハ1のズレ量と偏心の状態を検出することができる。
図10はベベル102の境界位置Epより描かれた概略円形の略中心を求める方法の一例である。弦の垂直二等分線は、円の中心を通ることを利用して中心を求める一例であり、中心が求められる方法であれば何でも良い。例えば、ベベルの境界位置Epが検出された移動距離801上の3点の座標を任意に選択し、x2+y2+ax+by+c=0の円の方程式から導いても良い。また、エッジロールオフ101の境界位置Rpより求めても良い。出力電圧比D1/D2の信号強度の上で、ベベル102の境界位置Epより求めたほうが、より安定した結果が得られる。ここではベベル102の境界位置Epより求める方法について一例を示す。
予めデータ処理装置52に記憶した一次関数f(x)1により、ベベルの境界位置Epが検出された移動距離801の交点A(X1,Y1)点、B(X2,Y2)点の座標を演算処理して求め、線分A−Bの中点であるC(X3,Y3)点を通る垂直二等分線の方程式f(x)3を算出する。同様に一次関数f(x)2より、ベベルの境界位置Epが検出された移動距離801の交点D(X4,Y4)点、E(X5,Y5)点の座標を演算処理して求め、線分D−Eの中点であるC(X3,Y3)点を通る垂直二等分線の方程式f(x)4を求める。線分A−Bの垂直二等分線の方程式f(x)3と線分D−Eの垂直二等分線の方程式f(x)4との連立方程式から、垂直二等分線の交点を求めることにより、ベベルの境界位置Epより描かれた略円形の略中心H(X7,Y7)点が導かれる。すなわち高速回転しながら表面検査を行った時点の、ウェーハ1の略中心Hが求められる。この略中心Hの位置精度を上げる上で、垂直二等分線を3つ以上にすることが好ましい。複数の垂直二等分線の交点から導き出される複数の略中心Hの座標を平均若しくは加重平均をすることにより、位置精度を向上できる。円の方程式から略中心Hを導く場合も同様に、3点の座標のセットを複数個選択し、得られた複数個の略中心Hの座標を平均若しくは加重平均をすることにより、位置精度を向上できる。平均若しくは加重平均によって、精度が向上することは、他の方法においても効果は同様である。
次いで、図8で得られたノッチ803の座標と図10より導かれた略中心Hの座標を通る軸を、検出された異物又は欠陥205の位置座標を補正するための第一の基準線1001(被検査物の垂直方向基準線)、略中心Hの座標を通り、第一の基準線と略直交する方向の軸を第二の基準線1002(被検査物の水平方向基準線)とする。テーブル21の基準位置601に基づくX軸,Y軸を、第一の基準線1001と第二の基準線1002に整合するための座標変換テーブルを作成する。座標変換テーブルに基づいて、記憶された異物又は欠陥205の位置座標を、被検査ウェーハ1の略中心Hを中心座標として補正する。図10に示す矢印が、座標補正の方向となる。本実施例では、座標変換テーブルを用いているが、座標補正式を算出して、記憶された異物又は欠陥205の位置座標に、演算処理を行っても良い。また、補正を行うための基準は、第一の基準線1001だけでも良い。被検査ウェーハ1の略中心Hと、ノッチ803のθ座標が判れば、座標補正を行うことができる。若干精度は落ちるものの、高速に演算処理することができる。また、第二の基準線1002は、略中心Hを通らなくても、第一の基準線1001と所定の角度で交差していても良い。テーブル21の基準位置601に基づいて構成された座標形態に、整合できる第二の基準線1002であれば何でも良い。なお、本実施例では、ノッチ803の位置が常に所定の位置に配置されるように、表示装置75に表示している。当該表示に対する異物又は欠陥205の座標補正は、被検査ウェーハ1の略中心Hの座標の補正後でも良いし、含めて座標補正の演算処理を行っても良い。
前述のように、本実施例の検査装置は、ベベル102やエッジロールオフ101の所定領域の特徴量を捉えることによって、被検査のウェーハ1自体の略中心Hの位置ずれやΘズレの状態を検出することができる。また、前記位置ずれやΘズレに基づいて、ウェーハ1自体の略中心Hを基準に、座標補正をすることができる。
その結果、被検査ウェーハ1の検査時の状態に基づいて座標補正するため、搬送機構系にランダム誤差を有し、ステージへのウェーハ1の設置位置が搬送毎に変動した場合でも、安定した異物又は欠陥205の座標精度を得ることができる。また、スピンドルモータの偏心による影響を抑止して、高い座標精度が維持できる。高性能のスピンドルモータを必要としないため、装置製造コストを低減することができる。さらに検査装置の機差を抑止できるため、他の検査装置間との、異物又は欠陥25の座標のマッチング性を向上できる。
また、ウェーハ1自体の略中心Hを基準に座標補正するため、回転速度によるウェーハ1の被検査面の膨張度合や、撓み量の変化によるウェーハ1の縮小度合に対し、補正係数を乗じることで座標の補正が容易となる。
次に図11に示したフローチャートを用いて、図4に示した本実施例におけるウェーハ表面の検査装置によってウェーハ1の表面に存在する異物又は欠陥25の有無をレーザービーム204のレーザースポット201を照射してウェーハ1の表面を走査する測定の流れを説明する。
まず最初に、ウェーハ平面領域の検査条件を設定のステップ1101では、図4に示した本実施例であるウェーハ表面の検査装置のデータ処理装置52によって、被測定物のウェーハ1のウェーハ平面領域の検査条件を設定する。
次に測定開始のステップ1102では、本実施例であるウェーハ表面の検査装置のテーブル21の回転を駆動制御器51からの指令によって開始し、テーブル21に載置されたウェーハ1を回転させながらウェーハ1の表面に照射するレーザービーム204のレーザースポット201の位置をウェーハ1の半径方向中心部より半径方向外側端部に向けて移動させながら測定(走査)を開始する。
平面領域走査中のステップ1104では、ウェーハ1の表面の平面領域をレーザービーム204のレーザースポット201をウェーハ1の半径方向中心部より半径方向外側端部に向けて移動させながら照射してウェーハ1の表面を走査する。
次の各受光器で受光した検出信号を周回毎に平均化したレベルを算出するステップ1105では、レーザースポット201がウェーハ1の表面上を一周している間に前記受光器で検出した散乱光Seの検出信号を平均化したレベルを算出するものである。
レーザービーム204のレーザースポット201をウェーハ1の表面に略同心円状に連続的に照射し、ウェーハ1の表面に存在する異物又は欠陥25から散乱した散乱光Seは、高角度用検出器371〜374及び低角度用検出器381〜386によって受光され、これらの受光信号である検出信号を前述したようにデータ処理装置52によって周回毎に平均化して検出信号の平均レベルを算出する。
次に、ウェーハ1の直径方向に配設されて回折光を受ける(又は回折光の影響の大きい)角度に配置された受光器から出力された出力電圧V1と、ウェーハ1の半径方向に配設されて回折光を受けない(又は回折光の影響の少ない)角度に配置された受光器から出力された出力電圧V2との出力電圧の比(V1/V2)を算出する、ウェーハ直径方向(V1)と半径方向(V2)にある受光器の信号比を算出するステップ1106に進む。
そして前記データ処理装置52によってウェーハ1の直径方向に配設された受光器で検出した受光信号と半径方向に配設された受光器で検出した受光信号の出力電圧の比(V1/V2)を算出する。
ウェーハ1の表面にレーザービーム204のレーザースポット201を照射させる位置は、ウェーハ1の表面の中心から半径方向外周端部に向かって移動するが、このレーザースポット201の位置の移動は直線移動機構22を駆動することによるウェーハ1の位置の移動に伴なうものである。
よって図4に示した直線移動機構22の移動量の入力値と、ウェーハ1の中心からウェーハ1の表面の前記所定領域10までの距離の設定値とを比較しながらレーザービーム204のレーザースポット201を移動させながら照射してウェーハ1の表面を走査させ、この照射位置が平面領域から所定領域10に近接したならばレーザービーム204のレーザースポット201を移動させる送り速度を細かく設定してウェーハ1の表面を略同心円状に走査できるようにする。
そして、ウェーハ1の表面を走査するレーザービーム204のレーザースポット201の走査位置(検出位置)の位置データと共に、受光器で受光したウェーハ1の表面に存在する異物又は欠陥25から散乱した散乱光Seの検出信号を前記データ処理装置52の演算器(MPU)73で演算してデータ処理する。
そして次に、閾値(Th1)<V1/V2を判断するステップ1107に進み、前記データ処理装置52の演算器73によって演算した前記出力電圧の比V1/V2の算出値と、図5の(b)に示す予め設定した閾値Th1とを比較して前記出力電圧の比V1/V2の算出値が閾値Th1を超えた位置である、現在、レーザービーム204のレーザースポット201をウェーハ1の表面に照射させている位置がウェーハ1の表面の平面領域とウェーハ1のベベル102に該当する所定領域10との境界位置Epであると判定する。
前記のウェーハ1の表面の平面領域と所定領域10とのベベルの境界位置Epを正確に測定するために、ウェーハ1の表面に照射するレーザービーム204のレーザースポット201が前記所定領域10の近傍に近づくと、レーザービーム204のレーザースポット201の送りを細かくしてウェーハ1の表面に略同心円状にレーザービーム204のレーザースポット201を照射させる。
このようにレーザービーム204のレーザースポット201を照射すれば、この略同心円状に走査するウェーハ1の表面の照射位置に異物又は欠陥205が存在する場合であっても、この異物又は欠陥25から発生する散乱光Seを検出器で検出した検出信号から、ウェーハ1の表面を略同心円状に走査した近接する複数の円周上の位置から異物又は欠陥25から発生する散乱光Seによる検出信号が検出されることから、この異物又は欠陥25から発生する散乱光Seによる検出信号を前記データ処理装置52の演算器73の演算によって削除すれば、ウェーハ1の表面の平面領域とウェーハ1のベベル102に該当する所定領域10との境界位置Epを精度良く判定することが可能となる。
尚、前記所定領域10の近傍に近づいた場合のウェーハ1の表面に照射するレーザービーム204のレーザースポット201の送り量は、通常の送り量の1/4〜1/2と細かく設定すれば良い。
次に、前記出力電圧の比V1/V2の算出値が閾値Th1を越えた領域の全体をウェーハ1のエッジ部dに該当するウェーハ1の表面の所定領域10と判断する。
そしてその後、ウェーハ1の表面の前記所定領域10にレーザービーム204を照射して走査する検査に対応するように、所定領域と判別し検査条件を変化させるステップ1108に進んで、レーザービーム204のレーザースポット201を照射して走査する位置が前記平面領域からベベルの境界位置Epを越えて前記所定領域に移行したと前記データ処理装置52の演算器73で判断した場合には、該データ処理装置52の演算器73にてウェーハ1の所定領域10にレーザービーム204のレーザースポット201を照射して走査する所定領域用の検査条件を変化して設定する。
即ち、ウェーハ1の表面の所定領域10を走査するレーザービーム204のレーザースポット201を照射するレーザー光源31から照射されるレーザービーム204の強度を下げるように調節するか、或いは散乱光Seを受光する検出器の受光感度を調節してウェーハ1の表面の所定領域10に存在する異物又は欠陥25から発生する散乱光Seを受光する位置に配置された検出器の受光感度を下げるように設定する。
上記のように所定領域10における検査条件を変化させて設定すれば、ウェーハ1の表面のベベル102によって発生する強い回折光202の影響を少なくしてウェーハ1の表面の所定領域10に存在する異物又は欠陥25から発生する散乱光Seを検出することが可能となり、この結果、前記所定領域10に存在する異物又は欠陥25を検出できるものである。
そして、前記の所定領域と判別し検査条件を変化させるステップ1108における検査が終了した場合、並びに、閾値(Th1)<V1/V2を判断するステップ1107で前記出力電圧の比V1/V2の算出値が閾値Th1より小さな値にしかならない場合には、測定終了位置を判定するステップ1103に進み、そして、レーザービーム204のレーザースポット201の位置がウェーハ1の表面の測定終了位置まで走査を完了していた場合には、測定終了のステップ1109に進んでウェーハ1の表面の測定は終了する。
前述した本実施例のウェーハ表面の検査装置では、テーブル21に載置したウェーハ1を回転させてレーザービーム204のレーザースポット201をウェーハ1の表面に照射し、ウェーハ1の表面に存在する異物又は欠陥25から発生する散乱光Seを検出器によって受光して前記異物又は欠陥25の状況を検査するものであるが、この検出器の劣化や散乱光Seの検出精度の低下を下記した対応によって抑制している。
即ち、本実施例のウェーハ表面の検査装置では、ウェーハ1のベベル102に該当するウェーハ1の表面の所定領域10の検査での前記散乱光Seの検出感度の低下をおさえるため、ウェーハ1の表面に存在する異物又は欠陥25から発生した散乱光を検出する複数個設置された検出器の中から、ウェーハ1のベベル102で発生する強い回折光202ができるだけ入射しない配置方向の検出器を選定して、選定した検出器によって前記散乱光を検出した受光信号を用いてウェーハ1の表面に存在する異物又欠陥25を高精度に検出している。
また、ウェーハ1のエッジ部dから発生する強い回折光202の方向は、ウェーハ1の回転に対して常に同一の方向となるウェーハの直径方向に発生するため、この強い回折光202を受ける角度を外した位置に配置されて、ウェーハ1の表面に存在する異物又は欠陥25から発生する散乱光Seを検出する検出器を選択し、この選択した検出器による散乱光Seの受光信号に基づいてウェーハ1の表面に存在する異物又は欠陥25を高精度に検出している。
即ち、本実施例のウェーハ表面の検査装置では、散乱光Seを検出する検出器が図2(a)に示すウェーハ1のベベル102で発生した強い回折光202による影響を受けないように、ウェーハ1の表面に存在する異物又は欠陥25から発生した散乱光を検出する検出器として、多数配置された検出器の中から高角度用検出器371,373、及び低角度用検出器383,386を選択し、これらの選定した検出器によってウェーハ1の表面に存在する異物又は欠陥25から発生する散乱光Seを効果的に検出することで、前記異物又は欠陥25の状況を高精度に測定(検査)している。
また、検出器の数や配置する位置については、強い回折光202を避ける位置に適宜設定してもよい。
本発明の実施例によれば、被検査物の表面をレーザービームを照射して検査する場合に、被検査物の検査対象となる平面領域の範囲をできるだけ広く設定可能にするため、この平面領域と該平面領域に隣接した被検査物のエッジ部に該当する所定領域との境界位置を正確に判別して検査する被検査物の検査装置及び被検査物の検査方法が実現できる。