JP5425702B2 - 落重特性に優れた高強度厚鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、海洋構造物、船舶、橋梁等の構造材料の他、原子力発電プラントの圧力容器等の素材として用いられる高強度厚鋼板に関するものであり、特に高い強度と共に落重特性を改善した厚鋼板に関するものである。
焼入れ・焼戻しして用いられる厚鋼板(以下、「QT鋼板」と呼ぶことがある)は、高強度、高靭性を有すると共に、良好な溶接性を有することから、従来から橋梁や高層建造物、船舶、タンクなどの溶接構造物として広く用いられてきた。こうしたQT鋼板は、近年における溶接構造物の大型化設計に伴って、より高強度(例えば、降伏強度で415MPa以上、引張強度で620MPa以上)が要求される傾向がある。
厚鋼板は高強度であることは勿論のこと、脆性破壊特性の指標である落重特性にも優れている必要がある。しかしながら、高強度化、厚肉化に伴ってこうした特性を満足し難い状況である。
落重特性を良好にする技術として、例えば特許文献1のような技術も提案されている。この技術では、P含有量を極力低減することによって粒界強化を図ると共に、所定量のNを添加することによって細粒効果を図り、更にCr添加による靭性向上効果を図るものである。しかしながら、この技術で得られる鋼板は、落重特性の指標となる無延性遷移温度(NDT)は−50℃程度に留まっており、近年の要求特性に対応できるものではない。
また特許文献2には、低温圧延を実施することによって微細フェライトを生成させ、良好な落重特性を達成する技術が提案されている。しかしながら、この技術では高強度化が困難であり、高強度と共に良好な落重特性を確保することはできない。
更に、特許文献3では、ローラクエンチ式焼入れによって、ベイナイトの生成を抑制しつつ微細フェライトを生成させることによって、良好な落重特性を達成する技術が提案されている。しかしながら、この技術においても高強度化は困難であり、高強度と共に良好な落重特性を確保することはできない。
特開平02−93045号公報 特開昭55−79828号公報 特開昭60−155620号公報
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、高い強度と共に良好な落重特性を発揮でき、海洋構造物、船舶、橋梁等の構造材料の他、原子力発電プラントの圧力容器等の素材として有用な高強度厚鋼板を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る厚鋼板とは、C:0.03〜0.150%(「質量%」の意味。化学成分組成について以下同じ)、Si:0.5%以下(0%を含む)、Mn:1.0〜2.0%、P:0.015%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.06%、Cr:0.10〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、V:0.10%以下(0%を含まない)、N:0.0020〜0.010%およびO:0.010%以下(0%を含まない)を夫々含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、表面から深さt/4〜t/2(tは、板厚を表す、以下同じ)の位置におけるミクロ組織において、ベイナイトの面積分率が90%以上であると共に、ベイナイトのラス幅の平均値が3.5μm以下であり、且つベイナイト中の島状マルテンサイトの円相当直径の最大値が3.0μm以下である点に要旨を有する。
本発明の厚鋼板においては、上記島状マルテンサイトの平均円相当直径が1.0μm以下であることが好ましく、これによって落重特性が更に良好なものとなる。尚、本発明において「円相当直径」とは、島状マルテンサイト(以下、「MA」と略称することがある)の大きさに注目し、同一面積の円に換算したときの直径を意味する。
本発明の厚鋼板には、必要によって、更に(a)Cu:2%以下(0%を含まない)および/またはNi:2%以下(0%を含まない)、(b)Nb:0.05%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)、(c)Mg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはTi:0.030%以下(0%を含まない)、(d)Zr:0.1%以下(0%を含まない)および/またはHf:0.05%以下(0%を含まない)、(e)Ca:0.0035%以下(0%を含まない)、(f)Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)、(g)希土類元素:0.01%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有用であり、こうした元素を含有することで、その種類に応じて厚鋼板の特性が更に改善される。
Tiを含有する場合には、Tiの含有量を0.005〜0.030%とすると共に、鋼板中に存在するTi系分散粒子が平均円相当直径で40nm以下とすることや、Ti系分散粒子の円相当直径の最小値を10nm以上とすることが好ましく、こうした要件を満足させることによって、良好な落重特性に加えて、溶接熱影響部(HAZ)の靭性を一層高めることができる。尚、Ti系分散粒子とは、Tiを含有する炭化物、窒化物、酸化物、またはそれらが複合した炭窒化物等の分散粒子を意味する。
本発明によれば、化学成分組成を適切に調整すると共に、ミクロ組織を厳密に規定することによって、高い強度と共に、良好な落重特性が発揮できる厚鋼板が実現でき、このような厚鋼板は、海洋構造物、船舶、橋梁等の構造材料の他、原子力発電プラントの圧力容器用素材として極めて有用である。
落重試験で用いた試験片の形状を示す平面図である。
本発明者らは、高い強度と良好な落重特性を確保できる厚鋼板を実現する手段について様々な角度から検討した。その結果、鋼板のミクロ組織として、ベイナイトを主体(ベイナイトの面積分率が90%以上)とするものを選ぶことによって高い強度を確保すると共に、ベイナイトのラス幅(束状に形成されるベイナイトの幅)の平均値を3.5μm以下にし、且つベイナイト中のMAの大きさ(円相当直径の最大値)を3.0μm以下のものとすれば、落重特性の向上に有効であることを見出し、本発明を完成した。
尚、本発明の厚鋼板において、上記のミクロ組織の評価位置として、表面からt/4〜t/2(t:板厚)の位置としたのは、厚鋼板の特性を評価する上で代表的は位置として選んだものである。
本発明の厚鋼板においては、ベイナイトのラス幅を規定することが重要なポイントとなる。このラス幅は、落重特性に影響を与え、その平均値が3.5μm以下であれば、落重特性が実現できる。これは、破壊の進行を抑えるラス数が多くなるためとの理由によるものと考えることができる。尚、ベイナイトのラス幅は、3μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以下である。
ベイナイト中には、島状マルテンサイト(MA)がベイナイトのラスの間に板状か粒状で存在するが、この円相当直径の最大値は落重特性に影響を与え、その最大値(最大円相当直径)が3.0μm以下であれば、落重特性の向上に極めて有効なものとなる。これは、破壊の起点になりにくいとの理由によるものと考えることができる。尚、MAの大きさの平均値(平均円相当直径)は1.0μm以下であることが好ましく、こうした要件を満足させることによって、破壊に対するエネルギーが向上するとのの理由から落重特性を更に向上させることができる。
本発明の厚鋼板では、そのミクロ組織がベイナイトを主体(ベイナイトの面積分率が90%以上、好ましくは95%以上)とするものであり、全てがベイナイトである場合(ベイナイトの総面積率が100%)も含むものであるが、その一部(即ち、面積分率で10%以下)に他の組織(例えば、フェライト、ウィドマンステッテン・フェライト、パーライト、マルテンサイト、セメンタイト等のうちの1種または複数種)を含むものであっても良い。
MAの大きさ(平均円相当直径)は、C,SiおよびAlの含有量に基づいて下記(1)式で規定されるA値と相関関係があるとの知見が、合金元素の添加量とMAの大きさについて実験的に求められており、このA値を1.0(%)より小さい値とすることによって、MAの大きさ(平均円相当直径)を1.0μm以下に制御できる。尚、下記(1)式には、必要によって含有されるSiも含まれるものとなるが、Siを含まないときには、その項目がないものとしてA値を計算し、Siを含むときには、下記(1)式からA値を計算すれば良い。
A値=0.34+2.2×[C]+3.3[Si]+6.1×[Al]…(1)
但し、[C],[Si]および[Al]は、夫々C,SiおよびAlの含有量(質量%)を示す。
次に、本発明の厚鋼板における基本成分組成について説明する。本発明の厚鋼板では、鋼板としての基本成分(C,Si,Mn,P,S,Al,Cr,Mo,V,NおよびO)が、以下に示すような適正範囲内にあることも必要である。これらの成分の範囲限定理由は、下記の通りである。
[C:0.03〜0.150%]
Cは鋼板の強度を確保するために必要な元素であり、所望の強度を確保するためには0.03%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cを過剰に含有させると、落重特性が却って低下することになる。こうしたことから、その上限は0.150%とする必要がある。尚、C含有量の好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.13%である。
[Si:0.5%以下(0%を含む)]
Siは鋼板の強度を確保するために有効な元素であり、必要により含有される。しかしながら、過剰に含有されると鋼材(母材)に島状マルテンサイト(MA)の粗大化を招き落重特性を劣化させる。こうしたことから、その上限を0.5%とした。尚、Si含有量の好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.25%である。
[Mn:1.0〜2.0%]
Mnは焼入れ性を向上させて鋼板強度を確保する上で有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには、Mnは1.0%以上含有させる必要がある。しかしながらMnを過剰に含有させると、鋼板の落重特性が劣化するので上限を2.0%とする。Mn含有量の好ましい下限は1.2%であり、好ましい上限は1.6%である。
[P:0.015%以下(0%を含まない)]
Pは不可避的に混入してくる不純物であり、鋼板の落重特性に悪影響を及ぼすので、できるだけ少ない方が好ましい。こうした観点から、Pは0.015%以下に抑制するのが良い。P含有量の好ましい上限は0.010%である。
[S:0.01%以下(0%を含まない)]
Sは、鋼板中の合金元素と化合して種々の介在物を形成し、鋼板の落重特性に有害に作用する不純物であるので、できるだけ少ない方が好ましく、実用鋼の清浄度の程度を考慮して0.01%以下(好ましくは0.005%以下)に抑制するのがよい。尚、Sは鋼に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%とすることは工業生産上困難である。
[Al:0.005〜0.06%]
Alは脱酸剤として有効な元素であると共に、鋼板のミクロ組織微細化による鋼板強度向上効果も発揮する。こうした効果を発揮させるためには、Al含有量は0.005%以上とする必要がある。しかしながら、過剰に含有されると島状マルテンサイト(MA)の粗大化を招き、落重特性を劣化させる。こうしたことから、その上限を0.06%とした。尚、Al含有量の好ましい下限は0.01%であり、好ましい上限は0.04%である。
[Cr:0.10〜0.5%]
Crは、鋼板の焼入れ性を高めて強度を向上させるのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Cr含有量は0.10%以上とする必要がある。しかしながら、Crの含有量が過剰になると、落重特性を劣化させる。こうしたことから、Cr含有量は0.5%以下とする必要がある。尚、Cr含有量の好ましい下限は0.2%であり、好ましい上限は0.4%である。
[Mo:0.05〜0.5%]
Moは、微細炭化物を形成し、鋼板の強度を向上させる上で有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Mo含有量は0.05%以上とする必要がある。しかしながら、その含有量が過剰になると、炭化物粗大化が促進され、落重特性が却って低下する。こうしたことから、Mo含有量は0.5%以下にする必要がある。尚、Mo含有量の好ましい下限は0.15%であり、好ましい上限は0.3%である。
[V:0.10%以下(0%を含まない)]
Vは焼入れ性を向上させて鋼板の強度を向上させる効果を発揮する。またVは焼戻し軟化抵抗を高くする効果もある。しかしながら、多量に含有されると落重特性が劣化するため、0.10%以下(より好ましくは0.05%以下)とするのが良い。尚、その効果を有効に発揮させるためのV含有量は、0.02%以上である。
[N:0.0020〜0.010%]
Nは、Al等と結合し、窒化物を形成して鋼板組織を微細化させて落重特性を向上させる効果がある。こうした効果を発揮させるには、Nは0.0020%以上含有させる必要がある。しかし、N含有量が過剰になると落重特性が却って劣化するので、0.010%以下とする。尚、N含有量の好ましい下限は0.004%であり、好ましい上限は0.008%である。
[O:0.010%以下(0を含まない)]
Oは、不可避的不純物として含有されるが、鋼中では酸化物として存在する。しかしながら、その含有量が0.010%を超えると粗大な酸化物が生成して落重特性が劣化する。こうしたことから、O含有量の上限を0.010%とする。O含有量の好ましい上限は0.003%である。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避的不純物であり、該不可避的不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容され得る。また本発明の厚鋼板には、必要によって更に(a)Cu:2%以下(0%を含まない)および/またはNi:2%以下(0%を含まない)、(b)Nb:0.05%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)、(c)Mg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはTi:0.030%以下(0%を含まない)、(d)Zr:0.1%以下(0%を含まない)および/またはHf:0.05%以下(0%を含まない)、(e)Ca:0.0035%以下(0%を含まない)、(f)Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)、(g)希土類元素:0.01%以下(0%を含まない)等を含有させることも有用であり、こうした元素を含有することでその種類に応じて厚鋼板の特性が更に改善される。
[Cu:2%以下(0%を含まない)および/またはNi:2%以下(0%を含まない)]
CuおよびNiは、焼入れ性を高めて強度を向上させるのに有効な元素であり、必要によって含有される。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、落重特性が却って低下するので、いずれも2%以下(より好ましくは1%以下)とするのがよい。上記効果を発揮させるための好ましい下限は、いずれも0.2%以上(より好ましくは0.3%以上)である。
[Nb:0.05%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)]
NbおよびBは、焼入れ性を向上させて鋼板の強度を向上させる効果を発揮する。しかしながら、多量に含有されると炭化物や窒化物の生成が多くなり落重特性が劣化するため、上記の量までとするのが良い。より好ましくは、Nbで0.04%以下、Bで0.002%以下である。尚、これらの効果を有効に発揮させるための含有量は、Nbで0.01%以上、Bで0.0005%以上である。
[Mg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはTi:0.030%以下(0%を含まない)]
MgおよびTiは、酸化物や窒化物を形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制することによって、HAZの特性を向上させる効果を有するため、必要によって含有される。しかしながらこれらの含有量が過剰になると、介在物が粗大化して落重特性が劣化するため、Mgで0.005%以下(より好ましくは0.003%以下)、Tiで0.030%以下(より好ましくは0.02%以下)にするのが良い。
尚、Tiを含有する場合には、Tiの含有量を0.005〜0.030%とすると共に、鋼板中に存在するTi系分散粒子の平均サイズ(平均円相当直径)が40nm以下となるように制御することによって、落重特性に加えて、HAZの靭性を一層高めることが可能となって、好ましい。Ti系分散粒子の平均サイズは、より好ましくは30nm以下であり、平均サイズが小さければ小さいほど良好な特性が得られる。
一方、このようなTi系分散粒子の最小サイズ(円相当直径の最小値)を10nm以上となるように制御するとHAZ靭性の向上効果が顕著になって一層好ましい。Ti系分散粒子の最小サイズは、より好ましくは15nm以上であるが、小さいほど溶けやすいという観点からすれば、平均サイズにできるだけ近い方が好ましい。
[Zr:0.1%以下(0%を含まない)および/またはHf:0.05%以下(0%
を含まない)]
ZrおよびHfは、Nと窒化物を形成し、オーステナイト粒を微細化し、HAZ特性改善に有効な元素である。しかし、過剰に含有されると落重特性を却って低下させる。このため、これらの元素を含有するときには、Zrは0.1%以下(より好ましくは0.003%以下)、Hfは0.05%以下(より好ましくは0.01%以下)とする。
[Ca:0.0035%以下(0%を含まない)]
Caは硫化物の形態を制御してHAZ特性の向上に寄与する元素である。しかし、0.0035%を超えて過剰に含有させても落重特性が却って劣化する。尚、Ca含有量のより好ましい上限は0.0020%以下である。
[Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含
まない)]
CoおよびWは、焼入れ性を向上させて鋼板の強度を高める効果を有するので、必要により含有される。しかしながら、過剰に含有するとHAZ靭性が劣化するため、上限をいずれも2.5%とする。尚、これらの含有量のより好ましい上限は、いずれも0.5%以下である。
[希土類元素(REM):0.01%以下(0%を含まない)]
希土類元素(REM)は、鋼材中に不可避的に混入してくる介在物(酸化物や硫化物等)の形状を微細化・球状化することによって、母材やHAZの靭性の向上に寄与する元素であり、必要によって含有される。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、REMの含有量が過剰になると、介在物が粗大化して落重特性が劣化するため、0.01%以下に抑えることが好ましい。尚、本発明において、REMとは、ランタノイド元素(LaからLuまでの15元素)およびSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。
本発明の厚鋼板を製造するに当たっては、上記した化学成分組成を満たす鋼材を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブとし、例えば900〜1300℃の範囲に加熱した後熱間圧延を行い、引き続き950〜850℃までの温度範囲での圧下率を10%以上となるようにして粗圧延を行なった後、800〜850℃の温度範囲で最終圧延パスでの圧下率が3〜10%となるようにして仕上げ圧延を行ない、その後400℃までを0.1〜30℃/秒の平均冷却速度で直接冷却し、更に900〜1000℃の温度範囲に再加熱して焼入れを行ない、550〜700℃の温度範囲で2回以上の焼戻しを行なうようにすればよい。この方法における各条件の範囲設定理由は次の通りである。尚上記で示した温度は、鋼板表面の温度で管理したものである。
[スラブの加熱温度:900〜1300℃]
鋼板の組織を一旦全てオーステナイト化する観点から900℃以上とする必要があるが、加熱温度が1300℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化して後の工程で所望の組織を得ることは難しくなる。
[950〜850℃までの温度範囲での圧下率を10%以上となるようにして粗圧延を行なう]
この温度範囲での圧下率はベイナイトのラス幅に影響を与え、圧下率を10%以上とすることによって、後の工程との組合せによって、ベイナイトのラス幅の平均値を3.5μm以下にできる。圧下率が10%未満となると、ベイナイトのラス幅の平均値を3.5μm以下にできなくなる。
[800〜850℃の温度範囲で最終圧延パスでの圧下率が3〜10%となるようにして仕上げ圧延を行なう]
この温度範囲での圧下率はベイナイトのラス幅やMAサイズに影響を与え、温度が850℃を超えたり、圧下率が3%未満となると、ベイナイトのラス幅やMAサイズ(最大値)が規定値を超えることになる。またこのときの圧下率が10%を超えるような圧延は、仕上げ圧延では通常行なわれない。
[400℃までを0.1〜30℃/秒の平均冷却速度で直接冷却する]
仕上げ圧延を行なった後には、400℃までを0.1〜30℃/秒の平均冷却速度で直接冷却する必要がある。冷却時の平均冷却速度が0.1℃/秒未満或は30℃/秒超では、ベイナイト主体とすることができない。このときの冷却を400℃までとするのは、それ以上組織変態を生じないからである。また、直接冷却するのは、焼入れ前の組織を細かくしておくことで、焼入れ後も細かくするという観点からである。
[焼入れ時の再加熱温度:900〜1000℃]
オーステナイト化の観点から、再加熱温度は900℃以上とする必要があるが、再加熱温度が1000℃を超えると粗大オーステナイトとなる。尚、焼入れの効果を発揮させて所望の組織(ベイナイトを主体とする組織)を得るためには、上記の温度範囲に再加熱した後、0.5〜20℃/秒の平均冷却速度で冷却を行なって焼入れを行なう必要がある。即ち、焼入れ冷却時の平均冷却速度が0.5℃/秒未満となると、ベイナイト主体の組織とならずフェライト・パーライト主体の組織となり、20℃/秒を超えるような冷却では、マルテンサイトが主体の組織となる。
[550〜700℃の温度範囲で2回以上の焼戻しを行なう]
上記のような焼入れを行なった後は、焼戻しを行なうが、このときの焼戻し条件も適切に制御することが重要である。焼戻し条件は、ベイナイトのラス幅やMAサイズ(最大値)に影響を与え、焼戻し温度が550℃未満であったり、焼戻し回数が1回では、MAサイズ(最大値)が規定値を超えることになる。また焼戻し温度が700℃を超えると、ベイナイトのラス幅が規定値を超えることになる。
尚、Tiを0.005〜0.030%含有させると共に、鋼板中に存在するTi系分散粒子のサイズを制御する場合には、前記した本発明の厚鋼板の製造方法をベースとして以下のような条件の制御を行えばよい。
まず、スラブ加熱温度は1150℃以上とする必要がある。加熱温度をこのように比較的高めとすることで、スラブ加熱時点で既に存在するTi系分散粒子を溶融させることができ、平均サイズを小さくすることができる。また比較的高温とすることで、その後の工程にて生成するTi系分散粒子については、ある程度成長が促されるようになって、その結果、最終的に残存する微細なものを減少できるようになる。好ましくは1200℃以上であり、1200℃以上とすることで、最小サイズを10nm以上とすることができる。
また、Ti系分散粒子のサイズは、C,Si,Mn,Nb,Cu,Ni,Cr,Mo,V等の元素含有量によっても影響を受けることが分かっている。本発明者らが検討した結果、Ti系分散粒子の平均サイズを40nm以上とするためには、上記スラブ加熱温度の制御に加えて、下記(2)式で規定されるX値が40以上となるように各添加元素の含有量を調整することが必要であることが実験的に求められている。このX値は45以上であることが好ましいが(より好ましくは50以上)、逆に靭性劣化という観点からして、150以下であることが好ましい(より好ましくは100以下)。
尚、下記(2)式には、必要によって含有される元素(Si,Nb,Cu,Ni等)も含まれるものとなるが、これらの元素を含まないときには、その項目がないものとしてX値を計算し、これらの元素を含むときには、下記(2)式からX値を計算すれば良い。
X=500×[C]+32×[Si]+8×[Mn]−9×[Nb]+14×[Cu]+17×[Ni]−5×[Cr]−25×[Mo]−34×[V] …(2)
但し、[C],[Si],[Mn],[Nb],[Cu],[Ni],[Cr],[Mo]および[V]は、夫々C,Si,Mn,Nb,Cu,Ni,Cr,MoおよびVの含有量(質量%)を示す。
尚、本発明で対象とする鋼板は、基本的には板厚が50mm以上の厚鋼板を想定したものであるが、それ以下の板厚においても同等の特性を有するものとなり、本発明の対象に含まれるものである。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
[実施例1]
下記表1、2に化学成分組成を示す各種溶鋼を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブ(厚み:300mm)とした後、下記表3、4に示した条件で熱間圧延、冷却および焼戻しを行ない、各種鋼板(厚み:100mm)を得た。尚、下記表1、2において、REMはCeを50%程度とLaを25%程度含有するミッシュメタルの形態で添加した。尚、下記表1、2中「−」の欄は元素を添加していないことを示している。
Figure 0005425702
Figure 0005425702
Figure 0005425702
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得られた各厚鋼板について、組織[ベイナイト面積分率、ベイナイトのラス幅、MAのサイズ(平均円相当直径および最大円相当直径)]、機械的特性(厚鋼板の降伏強度YS、引張強度TS、落重特性NDT)を下記の方法によって測定した。
[ベイナイトの面積分率の測定]
得られた厚鋼板について、t/4(t:板厚)の位置の光学顕微鏡観察を行ない、ベイナイト以外の部位に色を塗り、透明フィルムに映し、その後画像解析装置(Media Cybernetics製:Image−Pro Plus)による画像解析にて色付き部分の面積率を求め、全体100%から差し引いた分をベイナイト面積分率とした。このとき、顕微鏡観察は100倍の3視野で撮影し、その平均値を算出した。
[ベイナイトのラス幅の測定]
得られた厚鋼板について、t/4(t:板厚)の位置から採取したサンプルを用いて、倍率:1000倍にて走査型顕微鏡(SEM)観察を行ない、3視野の平均値をその鋼種のラス幅とした。
[厚鋼板の引張特性の評価]
各厚鋼板のt/4(t:板厚)の位置から幅方向にNK U14号試験片を採取し、JIS Z2241に従って引張試験を行うことによって、降伏応力YS(上降伏点YPまたは0.2%耐力σ0.2)および引張強度TSを測定した。合格基準は、3回での平均値で、降伏強度YS:415MPa以上、引張強度TS:620MPa以上である。
[島状マルテンサイト(MA)のサイズ(円相当直径)の測定]
各厚鋼板のt/4(t:板厚)の位置から採取したサンプルを用いてレペラー腐食し、光学顕微鏡によって組織を観察し、倍率:1000倍、5視野を観察した(白い部分がMAと判断)。画像解析装置(Media Cybernetics製:Image−Pro Plus)による画像解析にて、MAのサイズ(平均円相当直径、最大円相当直径)を測定した。
[落重特性の評価]
ASTM E208(2006)に準拠して落重試験を実施し、各厚鋼板の無延性遷移温度NDTを測定した。このとき用いた試験片形状は、P−3タイプとして、厚鋼板のt/4(t:板厚)の位置からC方向(圧延方向に垂直な方向)に沿って採取したものを用いた。また試験片表面に形成するビードは、溶接棒(「NRL−S」 株式会社神戸製鋼所製:直径5mm)を用い、ストレートビードとした。このとき用いた試験片の形状を図1(平均図)に示す(L:50mm、W:130mm)。そして、NDTが−70℃以下を合格とした。
これらの測定結果を、下記表5、6に示す(試験No.1〜55)。尚、下記表6における、組織の項目で「−」の欄(試験No.51,52)は、ベイナイト組織が存在しないことを意味する(試験No.51はフェライト・パーライト組織、試験No.52はマルテンサイト組織)。
Figure 0005425702
Figure 0005425702
これらの結果から、次のように考察できる(尚、下記No.は、表1〜6の試験No.を示す)。No.1〜24は、本発明で規定する要件を満足するものであり、化学成分組成および組織が適切に制御されており、高い強度と共に良好な落重特性が得られていることが分かる。
これに対して、No.25〜55は、本発明で規定するいずれかの要件を外れる例であり、少なくともいずれかの特性が劣っている。このうちNo.25の例は、C含有量が本発明で規定する範囲に満たないものであり、落重特性は良好であるものの強度が低下している。No.26の例は、C含有量が本発明で規定する範囲を超えるものであり、高い強度は得られるものの落重特性が劣化している。
No.27の例は、Si含有量が本発明で規定する範囲を超えて(A値も高くなっている)、MAのサイズ(最大円相当直径)が大きくなっており、落重特性が劣化している。No.28の例は、Mn含有量が本発明で規定する範囲に満たないものであり、必要な強度が得られておらず、落重特性も若干低下している。No.29の例は、Mn含有量が本発明で規定する範囲を超えており、落重特性が劣化している
No.30の例は、P含有量が本発明で規定する範囲を超えており、高い強度は得られるものの、落重特性が劣化している。No.31の例は、S含有量が本発明で規定する範囲を超えており、高い強度は得られるものの、落重特性が劣化している。
No.32の例は、Al含有量が本発明で規定する範囲に満たないものであり、強度が低下している。No.33の例は、Al含有量が本発明で規定する範囲を超えるものであり、MAのサイズ(最大円相当直径)が大きくなり、落重特性が劣化している。
No.34の例は、任意添加成分であるCuの含有量が好ましい範囲を超えており、MAの最大サイズが大きくなり、落重特性が劣化している。No.35の例は、任意添加成分であるNiの含有量が好ましい範囲を超えており、MAのサイズ(最大円相当直径)が大きくなり、落重特性が劣化している。
No.36の例は、Cr含有量が本発明で規定する範囲に満たないものであり、強度が低くなると共に、落重特性が若干低下している。No.37の例は、Cr含有量が本発明で規定する範囲を超えており、高い強度は得られるものの、落重特性が劣化している。
No.38の例は、Mo含有量が本発明で規定する範囲に満たないものであり、強度が低くなると共に、落重特性が若干低下している。No.39の例は、Mo含有量が本発明で規定する範囲を超えており、高い強度は得られるものの、落重特性が劣化している。
No.40の例は、V含有量が本発明で規定する範囲を超えており、高い強度は得られるものの、落重特性が劣化している。No.41の例は、任意添加成分であるNbの含有量が好ましい範囲を超えており、落重特性が劣化している。
No.42の例は、任意添加成分であるTi含有量が好ましい範囲を超えており、強度が低下すると共に、落重特性が劣化している。No.43の例は、任意添加成分であるB含有量が好ましい範囲を超えており、落重特性が劣化している。
No.44の例は、N含有量が本発明で規定する範囲に満たないものであり、落重特性が劣化している。No.45の例は、N含有量が本発明で規定する範囲を超えており、落重特性が劣化している。No.46の例は、O含有量が本発明で規定する範囲を超えており、落重特性が劣化している。
No.47の例は、950〜850℃での圧下率が5%で圧延を行なったものであり、ベイナイトのラス幅が大きくなっており、落重特性が劣化している。No.48、49の例は、最終パスでの圧下率が小さいものであり、いずれもベイナイトのラス幅が大きくなると共に、MAのサイズ(最大円相当直径)が規定値を超えるものとなっており、落重特性が劣化している。
No.50の例は、最終パスの温度が高いものであり、ベイナイトのラス幅が大きくなると共に、MAのサイズ(最大円相当直径)が規定値を超えるものとなっており、落重特性が劣化している。No.51、52の例は、焼入れ時の冷却速度が所定の範囲内にないものであり、ミクロ組織がベイナイトを主体とするものにはならず、高い強度と良好な落重特性の両方を満足することができない。
No.53の例は、焼戻し回数が1回のものであり、MAのサイズ(最大円相当直径)が規定値を超えるものとなっており、落重特性が劣化している。No.54、55の例は、焼戻し温度が適切な温度範囲を外れており、ベイナイトのラス幅またはMAのサイズ(最大円相当直径)のいずれかが規定値を超えるものとなっており、落重特性が劣化している。
[実施例2]
下記表7に化学成分組成を示す各種溶鋼を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブ(厚み:300mm)とした後、下記表8に示した条件で熱間圧延、冷却および焼戻しを行ない、各種鋼板(厚み:100mm)を得た。尚、表7、8には、参考のために前記表1、3、5に示した試験No.24のものも同時に示した。
Figure 0005425702
Figure 0005425702
得られた各厚鋼板について、組織[ベイナイト面積分率、ベイナイトのラス幅、MAのサイズ(平均円相当直径および最大円相当直径)]、機械的特性(厚鋼板の降伏強度YS、引張強度TS、落重特性NDT)を実施例1に示した方法によって測定すると共に、Ti系分散粒子のサイズ(平均サイズ、最小サイズ)、およびHAZ靭性を下記に示す方法で測定した。これらの測定結果を、上記試験No.24の結果と共に下記表9に示す(試験No.56〜61)。
[Ti系分散粒子のサイズの測定]
得られた厚鋼板について、t/4の位置(t:板厚)の位置を、倍率:60000倍にて透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行ない、観察視野:2.0×2.0(μm)、観察箇所:5箇所の条件で観察し、その各視野中でのTi系分散粒子の面積を測定して、この面積から各粒子の円相当直径を算出した。またTi系分散粒子であるかどうかは、TEMに付属するEDX(エネルギー分散型X線検出器)によって、各粒子がTiを含むか否かで判別した。また、1nm未満の粒子については測定から除外した。得られた各粒子の円相当直径を算術平均して得られる値を平均サイズ、得られた値で最も小さい値を最小サイズとした。
[HAZ靭性の測定]
HAZ靭性については、得られた厚鋼板について、t/4の位置(t:板厚)の位置からシャルピー衝撃試験片(JIS Z 2201の4号試験片)を採取し、再現HAZ熱サイクルVノッチシャルピー試験を行った。再現HAZ熱サイクル条件は、入熱量:100kJ/mmの熱履歴を模擬した。HAZ靱性については、−15℃での吸収エネルギー(vE-15)を、3本の試験片について測定し、その平均値を求めた。
Figure 0005425702
これらの結果から、次のように考察できる(尚、下記No.は、表9の試験No.を示す)。No.56〜61の鋼板は、Ti系分散粒子の平均サイズが40nm以下となっているのでNo.24の鋼板と比較して、HAZ靭性が改善されていることが分かる。特にNo.60、61のものでは、Ti系分散粒子の平均サイズが40nm以下であると共に、その最小サイズが10nm以上となっているので、良好なHAZ靭性を示していることが分かる。

Claims (11)

  1. C:0.03〜0.150%(「質量%」の意味。化学成分組成について以下同じ)、Si:0.5%以下(0%を含む)、Mn:1.0〜2.0%、P:0.015%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.06%、Cr:0.10〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、V:0.10%以下(0%を含まない)、N:0.0020〜0.010%およびO:0.010%以下(0%を含まない)を夫々含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、表面から深さt/4〜t/2(tは、板厚を表す、以下同じ)の位置におけるミクロ組織において、ベイナイトの面積分率が90%以上であると共に、ベイナイトのラス幅の平均値が3.5μm以下であり、且つベイナイト中の島状マルテンサイトの円相当直径の最大値が3.0μm以下であることを特徴とする落重特性に優れた高強度厚鋼板。
  2. 島状マルテンサイトの平均円相当直径が1.0μm以下である請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 更に、Cu:2%以下(0%を含まない)および/またはNi:2%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の高強度厚鋼板。
  4. 更に、Nb:0.05%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高強度厚鋼板。
  5. 更に、Mg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはTi:0.030%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の高強度厚鋼板。
  6. 更に、Ti:0.005〜0.030%を含有すると共に、鋼板中に存在するTi系分散粒子が平均円相当直径で40nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の高強度厚鋼板。
  7. 前記Ti系分散粒子は円相当直径の最小値が10nm以上である請求項6に記載の高強度厚鋼板。
  8. 更に、Zr:0.1%以下(0%を含まない)および/またはHf:0.05%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の高強度厚鋼板。
  9. 更に、Ca:0.0035%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜8のいずれかに記載の高強度厚鋼板。
  10. 更に、Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜9のいずれかに記載の高強度厚鋼板。
  11. 更に、希土類元素:0.01%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の高強度厚鋼板。
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