しかしながら、特開2007−325451号公報(特許文献1)に記載の電圧バランス調整法では、リチウムイオン二次電池の容量のばらつきや、組電池の容量のばらつきなどを解消することができない。電子材料構造体群を用いた電池や組電池などの電子モジュール体の物性のばらつきを解消することができないので、電子モジュール体の製造の後工程において、エージング、すなわち、電圧測定や良否判定などを行なう必要がある。
均一な物性を有する電子材料構造体のみを用いて電子材料構造体群を構成することができれば、複数のリチウムイオン二次電池や複数の組電池など、複数の電子モジュール体の物性を揃えることが可能である。しかしながら、このようにして複数の電子モジュール体の物性を揃えるためには、設計公差や製造公差の範囲内で物性がばらついている電子材料構造体から、所定の物性の電子材料構造体のみを選び取って電子材料構造体群や電子モジュール体の製造に用いることになり、非常に無駄が大きくなる。
そこで、この発明の目的は、電子材料構造体群間の物性のばらつきを簡単に低減させることが可能な電子材料構造体の組み合わせ方法とそれを備えた電子モジュール体の製造方法と、電子材料構造体の組み合わせ装置とそれを備えた電子モジュール体の製造装置を提供することである。
この発明に従った電子材料構造体の組み合わせ方法は、複数の電子材料構造体のそれぞれについて、少なくとも重量値を測定する測定段階と、所定の個数の電子材料構造体を組み合わせて電子材料構造体群を構成するために、測定段階において測定された複数の電子材料構造体の少なくとも重量値に基づいて算出される電子材料構造体群の全体の少なくとも重量値が所定の範囲内になるように、複数の電子材料構造体から所定の個数の電子材料構造体を選択して組み合わせて、一つの電子材料構造体群を求める組み合わせ段階と、を備える。
このようにして、個々の電子材料構造体の重量値が設計公差や製造公差の範囲内でばらついていても、電子材料構造体群の物性のばらつきを小さくすることができる。電子材料構造体群の物性のばらつきを小さくすることによって、電子材料構造体群の製造後に、改めて電子材料構造体群の物性値を測定し直すなどの後工程を省略したり簡単にしたりすることができる。このような後工程を省略したり簡単にしたりすることによって、電子材料構造体群や、電子材料構造体群の製造に必要な日数を少なくし、また、製造コストを下げることができる。
このようにすることにより、電子材料構造体群間の物性のばらつきを簡単に低減させることが可能な電子材料構造体の組み合わせ方法を提供することができる。
この発明に従った電子材料構造体の組み合わせ方法においては、測定段階は、電子材料構造体の重量値を測定する重量測定段階と、電子材料構造体の表面抵抗を測定する抵抗測定段階と、を含む。
重量値と表面抵抗を測定して、これらの値に基づいて電子材料構造体群の全体の値が所定の範囲内になるようにすることにより、電子材料構造体群の物性をより最適化することができる。
この発明に従った電子材料構造体の組み合わせ方法においては、組み合わせ段階は、重量測定段階において測定された複数の電子材料構造体の重量値に基づいて算出される電子材料構造体群の全体の重量値が所定の範囲内になるように、複数の電子材料構造体から所定の個数の電子材料構造体を選択して組み合わせて、各々が複数の電子材料構造体の組み合わせからなる複数の電子材料構造体群を求める第1の組み合わせ段階と、第1の組み合わせ段階で得られた複数の電子材料構造体群に含まれる複数の電子材料構造体について、抵抗測定段階において測定された複数の電子材料構造体の表面抵抗に基づいて算出される電子材料構造体群の全体の表面抵抗が所定の範囲内になるように、複数の電子材料構造体から所定の個数の電子材料構造体を選択して組み合わせて、一つの電子材料構造体群を求める第2の組み合わせ段階と、を含む。
このようにすることにより、電子材料構造体群について、重量値を均一に揃え、さらに、表面抵抗を均一に揃えることができるので、電子材料構造体群の全体の物性をより最適化することができる。
この発明に従った電子材料構造体の組み合わせ方法においては、電子材料構造体は電池の正極部材である。
電子材料構造体の重量値を測定することによって、電子材料構造体群の重量と、重量から二次的に算出される物性値を所定の範囲内に揃えることができる。電子材料構造体群の重量を所定の範囲内に揃えることによって、電子材料構造体群が電池の正極材料として用いられる場合には、電池の容量を揃えることができる。このようにして電池の容量を揃えることができるので、電池や組電池の容量試験工程や容量ランク識別を行なうことが不要になる。また、電池の容量が同じであれば、微小短絡による電池電圧低下量も同程度であると考えられる。そのため、電池や組電池の良否判定の検出精度を向上させることができるので、エージング日数を短縮することができる。
また、電子材料構造体の表面抵抗を測定することによって、電子材料構造体群の電流値を均一化することができる。電子材料構造体が正極部材であり、電子材料構造体群が単電池の正極として用いられると、単電池の電圧特性が均一になる。そのため、例えば、この単電池を複数並列接続して電子モジュール体として大容量の組電池を作製すると、組電池の充放電時に、各単電池に出入りする電流値を均一化することができる。また、例えば、この単電池を複数直列接続して電子モジュール体として大容量の組電池を作製すると、充放電時に各単電池の電圧上昇、電圧降下の特性を均一化することができる。
この発明に従った電子モジュール体の製造方法は、電子材料構造体群を含む電子モジュール体の製造方法であって、上記の電子材料構造体の組み合わせ方法を備える。
このようにすることにより、個々の電子材料構造体の重量値や表面抵抗が設計公差や製造公差の範囲内でばらついていても、電子材料構造体群の物性のばらつきを小さくすることができる。電子材料構造体群の物性のばらつきを小さくすることによって、電子材料構造体群を含む電子モジュール体の物性のばらつきを小さくすることができる。したがって、電子モジュール体群の製造後に、改めて電子モジュール体の物性値を測定し直すなどの後工程を省略したり、簡単にしたりすることができる。このような後工程を省略したり簡単にしたりすることによって、電子モジュール体の製造に必要な日数を少なくし、また、製造コストを下げることができる。
このようにすることにより、電子モジュール体間の物性のばらつきを簡単に低減させることが可能な電子モジュール体の製造方法を提供することができる。
この発明に従った電子モジュール体の製造方法においては、当該電子モジュール体は電池である。
このようにすることにより、測定段階において測定される値に応じて、電池の容量、厚み、充放電時の電流値、サイクル性能、極板の機械的強度、といった品質を揃えることができる。
この発明に従った電子モジュール体の製造方法においては、電池は組電池であることが好ましい。
このようにすることにより、測定段階において測定される値に応じて、組電池の容量、厚み、充放電時の電流値、サイクル性能、極板の機械的強度、といった品質を揃えることができる。
この発明に従った電子材料構造体の組み合わせ装置は、複数の電子材料構造体のそれぞれについて、少なくとも重量値を測定する測定部と、所定の個数の電子材料構造体を組み合わせて電子材料構造体群を構成するために、物性測定部において測定された複数の電子材料構造体の少なくとも重量値に基づいて算出される電子材料構造体群の全体の少なくとも重量値が所定の範囲内になるように、複数の電子材料構造体から所定の個数の電子材料構造体を選択して組み合わせて、一つの電子材料構造体群を求める組み合わせ部と、を備える。
このようにして、個々の電子材料構造体の重量値が設計公差や製造公差の範囲内でばらついていても、電子材料構造体群の物性のばらつきを小さくすることができる。電子材料構造体群の物性のばらつきを小さくすることによって、電子材料構造体群の製造後に、改めて電子材料構造体群の物性値を測定し直すなどの後工程を省略したり簡単にしたりすることができる。このような後工程を省略したり簡単にしたりすることによって、電子材料構造体群の製造に必要な日数を少なくし、また、製造コストを下げることができる。
このようにすることにより、電子材料構造体群間の物性のばらつきを簡単に低減させることが可能な電子材料構造体の組み合わせ装置を提供することができる。
この発明に従った電子材料構造体の組み合わせ装置においては、測定部は、電子材料構造体の重量値を測定する重量測定部と、電子材料構造体の表面抵抗を測定する抵抗測定部と、を含む。
重量値と表面抵抗を測定して、これらの値に基づいて電子材料構造体群の全体の値が所定の範囲内になるようにすることにより、電子材料構造体群の物性をより最適化することができる。
この発明に従った電子材料構造体の組み合わせ装置においては、組み合わせ部は、重量測定部において測定された複数の電子材料構造体の重量値に基づいて算出される電子材料構造体群の全体の重量値が所定の範囲内になるように、複数の電子材料構造体から所定の個数の電子材料構造体を選択して組み合わせて、各々が複数の電子材料構造体の組み合わせからなる複数の電子材料構造体群を求める第1の組み合わせ部と、第1の組み合わせ部で得られた複数の電子材料構造体群に含まれる複数の電子材料構造体について、抵抗測定部において測定された複数の電子材料構造体の表面抵抗に基づいて算出される電子材料構造体群の全体の表面抵抗が所定の範囲内になるように、複数の電子材料構造体から所定の個数の電子材料構造体を選択して組み合わせて、一つの電子材料構造体群を求める第2の組み合わせ部と、を含む。
このようにすることにより、電子材料構造体群について、重量値を均一に揃え、さらに、表面抵抗を均一に揃えることができるので、電子材料構造体群の全体の物性をより最適化することができる。
この発明に従った電子材料構造体の組み合わせ装置においては、電子材料構造体は正極部材である。
電子材料構造体の重量値を測定することによって、電子材料構造体群の重量と、重量から二次的に算出される物性値を所定の範囲内に揃えることができる。電子材料構造体群の重量を所定の範囲内に揃えることによって、電子材料構造体群が電池の正極材料として用いられる場合には、電池の容量を揃えることができる。このようにして電池の容量を揃えることができるので、電池や組電池の容量試験工程や容量ランク識別を行なうことが不要になる。また、電池の容量が同じであれば、微小短絡による電池電圧低下量も同程度であると考えられる。そのため、電池や組電池の良否判定の検出精度を向上させることができるので、エージング日数を短縮することができる。
また、電子材料構造体の表面抵抗を測定することによって、電子材料構造体群の電流値を均一化することができる。電子材料構造体が正極部材であり、電子材料構造体群が単電池の正極として用いられると、単電池の電圧特性が均一になる。そのため、例えば、この単電池を複数並列接続して電子モジュール体として大容量の組電池を作製すると、組電池の充放電時に、各単電池に出入りする電流値を均一化することができる。また、例えば、この単電池を複数直列接続して電子モジュール体として大容量の組電池を作製すると、充放電時に各単電池の電圧上昇、電圧降下の特性を均一化することができる。
この発明に従った電子モジュール体の製造装置は、電子材料構造体群を含む電子モジュール体の製造装置であって、上記の電子材料構造体の組み合わせ装置を備える。
このようにすることにより、個々の電子材料構造体の重量値や表面抵抗が設計公差や製造公差の範囲内でばらついていても、電子材料構造体群の物性のばらつきを小さくすることができる。電子材料構造体群の物性のばらつきを小さくすることによって、電子材料構造体群を含む電子モジュール体の物性のばらつきを小さくすることができる。したがって、電子モジュール体の製造後に、改めて電子モジュール体の物性値を測定し直すなどの後工程を省略したり簡単にしたりすることができる。このような後工程を省略したり簡単にしたりすることによって、電子モジュール体の製造に必要な日数を少なくし、また、製造コストを下げることができる。
このようにすることにより、電子モジュール体間の物性のばらつきを簡単に低減させることが可能な電子モジュール体の製造装置を提供することができる。
この発明に従った電子モジュール体の製造装置においては、当該電子モジュール体は電池である。
このようにすることにより、測定部において測定される値に応じて、電池の容量、厚み、充放電時の電流値、サイクル性能、極板の機械的強度、といった品質を揃えることができる。
この発明に従った電子モジュール体の製造装置においては、電池は組電池であることが好ましい。
このようにすることにより、測定部において測定される値に応じて、組電池の容量、厚み、充放電時の電流値、サイクル性能、極板の機械的強度、といった品質を揃えることができる。
以上のように、この発明によれば、電子材料構造体群間の物性のばらつきを簡単に低減させることが可能な電子材料構造体の組み合わせ方法とそれを備えた電子モジュール体の製造方法と、電子材料構造体の組み合わせ装置とそれを備えた電子モジュール体の製造装置を提供することができる。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の一つの実施の形態として、組電池製造装置の全体を模式的に示す図である。
図1に示すように、電子モジュール体の製造装置として組電池製造装置2は、電子材料構造体の組み合わせ装置として複数の組み合わせシステム200と、単電池組立て部280と、組電池組立て部290と、主組立てライン240と送出ライン230とから構成されている。主組立てライン240は、組み合わせシステム200と単電池組立て部280と組電池組立て部290とを連結する。送出ライン230は、組み合わせシステム200と主組立てライン240とを連結する。それぞれの組み合わせシステム200は、測定ステージ210と積層ステージ220とを備える。
図2は、組み合わせシステムの全体を模式的に示す図(A)と、測定ステージを模式的に示す図(B)である。
図2の(A)に示すように、それぞれの組み合わせシステム200は、12個の測定ステージ210と、1個の積層ステージ220を備える。12個の測定ステージ210は、排出ライン216によって積層ステージ220に連結されている。
図2の(B)に示すように、それぞれの測定ステージ210は、ストッカー211と、重量測定部213と、抵抗測定部215を含む。ストッカー211には、電子材料構造体として正極部材11が蓄えられる。ストッカー211と重量測定部213は、第1搬送部212によって連結されている。重量測定部213と抵抗測定部215は、第2搬送部214によって連結されている。重量測定部213は、正極部材11の重量を測定する。抵抗測定部215は、正極部材11の表面抵抗を測定する。この実施の形態では、重量合算値が所定の規格値を満たす10個の正極部材11の組み合せ抽出を一次判断とし、二次判断として10個の正極部材11を並列接続した際の表面抵抗の合算値が所定の規格値を満たす最適組み合わせを抽出する。
図3は、抵抗測定部の構成を模式的に示す図である。
図3に示すように、抵抗測定部215は、プローブA、B、C、および、a、b、cを有する。プローブAとa、Bとb、Cとcは、それぞれ同軸上に配置されている。正極部材11は、集電部11cと、集電部11cの表面上に形成される表面素子部11aと、集電部11cの裏面上に形成される裏面素子部11bとから構成されているので、正極部材11が抵抗測定部215に載置されると、プローブAとaが正極部材11の集電部11cを表面側と裏面側に接触する。また、プローブBとCが正極部材11の表面素子部11aに接触し、プローブbとcが正極部材11の裏面素子部11bに接触する。プローブAとaによって、集電部11cの厚みを測定することができる。また、プローブBとb、Cとcによって、正極部材11の複数箇所の厚みを測定することができる。各プローブは、交流4端子法による抵抗測定のプローブも兼ねているので、プローブAとaによって、集電部11cの抵抗値を測定することができる。また、プローブBとb、Cとcによって、正極部材11の複数箇所の全体抵抗値を測定することができる。また、プローブAとB、AとC、BとC、aとb、aとc、bとcによって、正極部材11の表面側と裏面側の表面抵抗を測定することができる。抵抗測定部215のプローブの本数や配置、特性確認項目は、任意に変更することができる。
図4は、組み合わせシステムの制御関連の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、組み合わせシステム200は、組み合わせ制御部201と、重量測定部213と、抵抗測定部215と、排出制御部270とを備える。組み合わせ制御部201は、重量組み合わせ部250と抵抗組み合わせ部260とから構成されている。重量組み合わせ部250は、重量演算部251と重量記憶部252とから構成されている。抵抗組み合わせ部260は、抵抗演算部261と抵抗記憶部262とから構成されている。重量組み合わせ部250は、第1の組み合わせ部の一例であり、抵抗組み合わせ部260は、第2の組み合わせ部の一例である。
組み合わせシステム200に含まれる個々の測定ステージ210(図2)の重量測定部213は、正極部材11の重量を測定し、重量組み合わせ部250の重量演算部251に信号を送信する。重量演算部251は、重量測定部213から受信した信号を重量記憶部252に送信する。重量記憶部は、個々の測定ステージ210で測定された正極部材11の重量を記憶する。重量演算部251は、個々の重量測定部213において測定された正極部材11の重量を、重量記憶部252から読み出して、全体の重量値として重量の合算値が所定の範囲内になる正極部材11の組み合わせを抽出する。
組み合わせシステム200に含まれる個々の測定ステージ210の抵抗測定部215は、正極部材11の表面抵抗Rを測定し、抵抗組み合わせ部260の抵抗演算部261に信号を送信する。抵抗演算部261は、抵抗測定部215から受信した信号に基づいて、表面抵抗Rの逆数を算出し、表面抵抗の逆数(1/R)を抵抗記憶部262に送信する。抵抗記憶部262は、個々の測定ステージ210で測定された正極部材11の表面抵抗の逆数(1/R)を記憶する。抵抗演算部261は、個々の抵抗測定部215において測定された正極部材11の表面抵抗Rから算出された表面抵抗の逆数(1/R)を、抵抗記憶部262から読み出して、全体の表面抵抗として表面抵抗の逆数(1/R)の合算値が所定の範囲内になる正極部材11の組み合わせを抽出する。
排出制御部270は、個々の測定ステージ210上の正極部材11を積層ステージ220(図2)に排出するように、測定ステージ210と排出ライン216を制御する。
組み合わせ制御部201は、重量演算部251と抵抗演算部261における演算の結果に基づいて、重量の合算値と表面抵抗の逆数の合算値が所定の範囲内になる正極部材11の組み合わせを抽出する。組み合わせ制御部201は、排出制御部270に制御信号を送信して、この正極部材11の組み合わせを各測定ステージ210から積層ステージ220に排出させる。
次に、一つの実施の形態の組電池製造装置2を用いて組電池1を製造する工程を順に説明する。
図5は、組電池を構成する個々の単電池の正極部材の製作工程を示す図である。
図5の(A)と(B)に示すように、厚み20μmのアルミニウム箔90の塗布部分92に、スラリーを塗布する。隣接する塗布部分92の間には、スラリーが塗布されない未塗布部分91が形成される。アルミニウム箔90に塗布されるスラリーは、この実施の形態においては、携帯機器に使用されるリチウムイオン電池の正極主材料であるLiCoO2と、結着剤であるポリビニリデンフルオライド(PVdF)と、導電助剤であるアセチレンブラックとをNMP(N‐メチルピロリドン)に均一に分散させたスラリーである。塗布部分92の長さPは、122mm、未塗布部分91の長さQは、10mmである。アルミニウム箔90の幅Lは、650mm程度である。スラリーを塗布し、乾燥させた後、アルミニウム箔90の裏面に同一ピッチで、表面と同様に塗布部分92と未塗布部分91を交互に設けながら、スラリーを塗布する。表面と裏面とに塗布するスラリーの厚みや塗布量は、同一であるようにする。
図5の(C)に示すように、スラリーを塗布して乾燥させたアルミニウム箔90を、約100μmの厚さまでロールプレスした後、長さ130mm(このうちアルミニウムが露出した端部の長さQ1を8mmとする)、幅L1が65mmの短冊状に切断して正極部材11を作製する。
このようにして作製された正極部材11は、組電池製造装置2のストッカー211に蓄えられる。
図6は、組電池製造装置の個々の組み合わせシステムにおいて正極部材を組み合わせる工程を順に示すフローチャートである。
図1から図6を用いて、組電池製造装置2における正極部材11の組み合わせ方法を順に説明する。
図6に示すように、ストッカー211に蓄えられている正極部材11のうちの1つが第1搬送部212によって重量測定部213に搬送されると、重量測定段階としてステップS1で、重量測定部213は正極部材11の重量を測定する。重量測定部213は、測定した正極部材11の重量についての信号を重量演算部251を介して重量記憶部252に送信する。測定された重量は、例えば、表1から表3に示すように、150個の正極部材11でばらつきがある。重量を測定された正極部材11は、第2搬送部214によって抵抗測定部215に搬送される。
ステップS2では、重量演算部251は、組み合わせシステム200の12個の測定ステージ210のそれぞれの重量測定部213で測定され、重量記憶部252に記憶されている正極部材11の重量を、重量記憶部252から読み出す。重量演算部251は、12個のうち10個の正極部材11を選択する組合せのすべての場合について、重量の合算値Aを算出する。
第1の組み合わせ段階としてステップS3では、重量演算部251は、12個の正極部材11のうちから、10個の正極部材11の重量合算値Aが所定の範囲内になる正極部材11の組み合わせを抽出する。例えば、表1の正極No.1〜12の正極部材11から10個の正極部材11を組み合わせるとき、重量合算値Aの所定の規格値範囲が22.695g〜22.705gである場合には、表4に示すように、27例の組み合わせBが抽出される。重量演算部251は、この27例の組み合わせBを重量記憶部252に記憶させる。
抵抗測定段階としてステップS4では、抵抗測定部215が正極部材11の表面抵抗を測定する。抵抗測定部215のプローブBとCの間に交流1kHzを印加して、正極部材11の表面素子の表面抵抗を測定する。抵抗測定部215は、測定した表面抵抗についての信号を抵抗演算部261に送信する。抵抗演算部261は、表面抵抗の逆数を算出して、算出された表面抵抗の逆数を抵抗記憶部262に記憶させる。
ステップS5では、抵抗演算部261は、測定システムの12個の測定ステージ210のそれぞれの抵抗測定部215で測定され、抵抗記憶部262に記憶されている正極部材11の表面抵抗の逆数を、抵抗記憶部262から読み出す。抵抗演算部261は、表4に示す、重量合算値が所定の規格値を満たす27例の正極部材11の組み合わせについて、表面抵抗の逆数の合算値Cを算出する。
第2の組み合わせ段階としてステップS6では、抵抗演算部261は、表4に示す27例の正極部材11の組み合わせのうち、表面抵抗の逆数の合算値Cが所定の規格値範囲内にある正極部材11の組み合わせを抽出する。表面抵抗の逆数の合算値Cについて、所定の規格値範囲を例えば30.8〜31.8×103Ω-1とすると、表4に示す27例の組み合わせBのうち、組合せグループNo.2等の19例の組み合わせDが抽出される。
ステップS7では、組み合わせ制御部201は、ステップS6で抽出された19例の組み合わせDのうち、任意の1つの組み合わせを選択し、この組み合わせに含まれる10個の正極部材11を積層ステージ220に排出するように、排出制御部270に制御信号を送信する。たとえば、組合せグループNo.2が選択された場合には、正極No.2,3,5,6,7,8,9,10,11,12の正極部材11が測定ステージ210から積層ステージ220に、1つずつ、排出される。
このとき、それぞれの正極部材11を積層ステージ220に排出する順序や、積層方向に対する正極部材11の表裏面選択を制御することによって、種々の目的に合致した積層順を構成することができる。
正極No.1と正極No.4の正極部材11は、積層ステージ220に排出されず、測定ステージ210に残される。正極No.2,3,5,6,7,8,9,10,11,12の正極部材11が載置されていた測定ステージ210の重量測定部213には、ストッカー211から、新たな正極部材11が供給される。組み合わせ制御部201は、正極No.1とNo.4の正極部材11と、新たな10個の正極部材11について、ステップS1〜S7を繰り返す。新たに組み合わせる12個の正極部材11は、正極No.13〜24とする。正極No.13〜24の正極部材11について、重量の合算値が所定の規格値範囲内、すなわち、22.695g〜22.705gである正極部材11の組み合わせを表5に示す。
組合せ制御部は、表5から、例えば組合わせグループNo.101の組み合わせを選択する。組み合わせグループNo.101を構成する正極部材11、すなわち、正極No.15,16,17,18,19,20,21,22,23,24は、測定ステージ210から積層ステージ220に排出される。排出されなかったNo.13と14の正極部材11はそのまま測定ステージ210に残され、新たに10個の正極部材11がストッカー211から重量測定部213に供給されて、ステップS1〜S7が繰り返される。
なお、12箇所の各重量測定部213における重量測定において規格値を満たす組合せが1例もない場合には、該当する12個の正極部材11すべてを積層ステージ220から、一旦、待機用ストッカー(図示せず)に排出し、新たな12個の正極部材11を各ストッカー211から各重量測定部213に供給する。
たとえば、ステップS1〜S7を8回繰り返して、表6に示すように、組合わせグループA〜Hの8個、正極部材11の組み合わせを求める。それぞれの組合せグループの正極部材11は、積層ステージ220で積層される。
積層ステージ220で積層された正極部材11は、送出ライン230を通って、主組立てライン240上に送出される。主組立てライン240上の積層された正極部材11は、単電池組立て部280に搬送される。単電池組立て部280においては、積層された正極部材11を用いて、電子材料構造体群として単電池の発電要素が製作される。
図7は、単電池として非水電解液電池の一例を示す概略的な平面図、図8は図7のVIII−VIII線に沿った方向から見た断面を拡大して示す部分断面図、図9は図7のIX−IX線に沿った方向から見た断面を拡大して示す部分断面図である。
図7に示すように、単電池100は、発電要素10と、発電要素10を収容して封止する外装部材20と、複数の集電部を介して発電要素10に接続されて外装部材20の外周縁から導出された正極端子30および負極端子40とから構成される。
図8と図9に示すように、発電要素10は、複数の正極部材11と、複数の負極部材12と、各々が複数の正極部材11の各々と複数の負極部材12の各々との間に介在するように配置された複数のセパレータ部材13と、図示しない非水電解液とを含む。複数の正極部材11の各々と複数の負極部材12の各々が複数のセパレータ部材13の各々を間に介在して交互に積層されている。正極部材11、負極部材12およびセパレータ部材13は、板状、フィルム状、箔状などに形成される。たとえば、複数のフィルム状の正極部材11と負極部材12がセパレータ部材13を介して密着状態で積層された積層体が、アルミニウムラミネートフィルムからなる外装部材20の内部に充填されている。図9に示すように、複数の負極部材12は複数の集電部材41を介して負極端子40に接続されている。図示されていないが、複数の正極部材11も同様に正極端子30(図7)に接続されている。
単電池組立て部280において、このような構成に作製された単電池100は、次に、主組立てライン240を通って、組電池組立て部290に送出される。
図10は、組電池の全体を示す斜視図である。
図10に示すように、組電池1は、積層された単電池100と、保護回路モジュール130と、単電池100に接続される正極端子110と負極端子120とから構成されている。単電池100は、冷却用溝101が形成されたケースに入れられて積層されている。
以上のように、組み合わせシステム200は、複数の正極部材11のそれぞれについて、少なくとも重量値を測定する重量測定部213と抵抗測定部215と、所定の個数の正極部材11を組み合わせて発電要素10を構成するために、重量測定部213と抵抗測定部215において測定された複数の正極部材11の重量値と表面抵抗に基づいて算出される発電要素10の全体の重量値と表面抵抗が所定の範囲内になるように、複数の正極部材11から所定の個数の正極部材11を選択して組み合わせて、一つの発電要素10を求める重量組み合わせ部250と抵抗組み合わせ部260と、を備える。
また以上のように、組電池製造装置2における正極部材11の組み合わせ方法は、複数の正極部材11のそれぞれについて、少なくとも重量値を測定するステップS1とステップS4と、所定の個数の正極部材11を組み合わせて発電要素10を構成するために、ステップS1とステップS4において測定された複数の正極部材11の重量値と表面抵抗に基づいて算出される発電要素10の全体の重量値と表面抵抗が所定の範囲内になるように、複数の正極部材11から所定の個数の正極部材11を選択して組み合わせて、一つの発電要素10を求めるステップS3とステップS6と、を備える。
このようにして、個々の正極部材11の重量値と表面抵抗が設計公差や製造公差の範囲内でばらついていても、発電要素10の物性のばらつきを小さくすることができる。発電要素10の物性のばらつきを小さくすることによって、発電要素10の製造後に、改めて発電要素10の物性値を測定し直すなどの後工程を省略したり簡単にしたりすることができる。このような後工程を省略したり簡単にしたりすることによって、発電要素10の製造に必要な日数を少なくし、また、製造コストを下げることができる。
このようにすることにより、発電要素10間の物性のばらつきを簡単に低減させることが可能な正極部材11の組み合わせ方法と、組み合わせシステム200を提供することができる。
また、組み合わせシステム200においては、測定ステージ210は、正極部材11の重量を測定する重量測定部213と、正極部材11の表面抵抗を測定する抵抗測定部215と、を含む。また、正極部材11の組み合わせ方法においては、測定段階は、正極部材11の重量を測定するステップS1と、正極部材11の表面抵抗を測定するステップS4と、を含む。
正極部材11は、重量、厚みや電気抵抗などの直接測定可能な値や、これらの値から二次的に算出される空隙率や体積抵抗率など、多くの物性値によって表される物性を有する。
そこで、重量と表面抵抗を測定して、これらの値に基づいて発電要素10の全体の値が所定の範囲内になるようにすることにより、発電要素10の物性をより最適化することができる。
また、組み合わせシステム200は、重量測定部213において測定された複数の正極部材11の重量に基づいて算出される重量合算値が所定の範囲内になるように、複数の正極部材11から所定の個数の正極部材11を選択して組み合わせて、各々が複数の正極部材11の組み合わせからなる複数の発電要素10を求める重量組み合わせ部250と、重量組み合わせ部250で得られた複数の発電要素10に含まれる複数の正極部材11について、抵抗測定部215において測定された複数の正極部材11の表面抵抗に基づいて算出される表面抵抗の逆数の合算値が所定の範囲内になるように、複数の正極部材11から所定の個数の正極部材11を選択して組み合わせて、一つの発電要素10を求める抵抗組み合わせ部260と、を含む。
また、この発明に従った正極部材11の組み合わせ方法においては、組み合わせ段階は、ステップS1において測定された複数の正極部材11の重量に基づいて算出される重量合算値が所定の範囲内になるように、複数の正極部材11から所定の個数の正極部材11を選択して組み合わせて、各々が複数の正極部材11の組み合わせからなる複数の発電要素10を求めるステップS3と、ステップS2で得られた複数の発電要素10に含まれる複数の正極部材11について、ステップS4において測定された複数の正極部材11の表面抵抗に基づいて算出される表面抵抗の逆数の合算値が所定の範囲内になるように、複数の正極部材11から所定の個数の正極部材11を選択して組み合わせて、一つの発電要素10を求めるステップS6と、を含む。
このようにすることにより、発電要素10について、重量を均一に揃え、さらに、表面抵抗を均一に揃えることができるので、発電要素10の全体の物性をより最適化することができる。
正極部材11の重量値を測定することによって、発電要素10の重量と、重量から二次的に算出される物性値を所定の範囲内に揃えることができる。発電要素10の重量と、重量から二次的に算出される物性値を所定の範囲内に揃えることによって、発電要素10の品質を揃えることができる。
また、組み合わせシステム200と電子材料構造体の組み合わせ方法においては、電子材料構造体は正極部材11である。
正極部材11の重量値を測定することによって、発電要素10の重量と、重量から二次的に算出される物性値を所定の範囲内に揃えることができる。発電要素10の重量を所定の範囲内に揃えることによって、発電要素10が電池の正極材料として用いられる場合には、電池の容量を揃えることができる。このようにして電池の容量を揃えることができるので、単電池100や組電池1の容量試験工程や容量ランク識別を行なうことが不要になる。また、電池の容量が同じであれば、微小短絡による電池電圧低下量も同程度であると考えられる。そのため、単電池100や組電池1の良否判定の検出精度を向上させることができるので、エージング日数を短縮することができる。
単電池100の製造工程においては、正極部材11の組み合わせを選択した後、正極部材11、セパレータ部材13、負極部材12を積層し、ラミネートシートによって形成されている外装部材20に封入する。その後、外装部材20内に電解液を注入し、初充電する。このときの初充電によって、負極部材12が炭素系負極材料によって形成されている場合には、負極部材12にSEI(Solid Electrolyte Interface、固体電解質被膜)が形成される。この被膜によって、単電池100の安全性やサイクル特性を向上させることができる。しかしながら、この被膜が形成されるときには副反応としてガスが発生するので、その後にガス抜きの工程が必要になる。初充電し、ガス抜きを行なった後、エージングAを行なう。エージングAでは、電圧測定などを行なう。
一方、負極部材12をチタン酸リチウムなどの負極材料によって形成すると、SEIは形成されない。そのため、負極部材12がチタン酸リチウムなどによって形成されている場合には、SEIを形成するために初充電を行なう必要がない。SEIが形成されないので、初充電時に副反応としてガスが発生することもないので、初充電後にガス抜きを行なう必要がない。この場合には、使用者が、使用時に初充電を行なえばよいので、初充電、ガス抜き、エージングAを省略することができる。このようにして、単電池100や組電池1の製造に要する間接費やリードタイムを大きく低減することができる。
その後、単電池100の容量試験を行なう。容量試験においては、内部抵抗の測定などを行なう。容量試験は、短絡した電池などの不良品を市場に出さないためのスクリーニングのために行なわれる。従来の各単電池の放電容量は、たとえば設計値を中心とした正規分布など、一定の分布を示す。そこで、容量ランクを、たとえば5ランクに識別して、保証値に準じて顧客仕向け先を変えたり、組電池1を同一ランクの放電容量や内部抵抗を有する単電池で構成したりする。
このような容量試験は、正極活物質塗布総重量が各単電池で異なるために必要になるものである。各単電池間で正極活物質塗布量が一致すれば、各単電池の放電容量も一致する。正極活物質塗布量は、正極部材11の重量値に反映される。そこで、各単電池100を構成する正極部材11全体の重量を均一に揃えて、正極活物質塗布量を一致させることによって、容量ランクの識別が不要になるので、容量試験工程を省略したり、簡単にしたりすることができる。
容量試験の後、エージングBを行なう。エージングBの工程では、微小短絡による電池電圧低下量により、良否判定をする。電池の容量が同じであれば、微小短絡による電池電圧低下量も同程度であると考えられる。そのため、各単電池100を構成する正極部材11全体の重量を均一に揃えて、正極活物質塗布量を一致させることによって、単電池100や組電池1の良否判定の検出精度を向上させることができるので、エージング日数を短縮することができる。
また、正極部材11の表面抵抗を測定することによって、発電要素10の電流値を均一化することができる。電子材料構造体が正極部材11であり、発電要素10が単電池100の正極として用いられると、単電池100の電圧特性が均一になる。そのため、例えば、この単電池100を複数並列接続して電子モジュール体として大容量の組電池1を作製すると、組電池1の充放電時に、各単電池100に出入りする電流値を均一化することができる。また、例えば、この単電池100を複数直列接続して電子モジュール体として大容量の組電池1を作製すると、充放電時に各単電池100の電圧上昇、電圧降下の特性を均一化することができる。
また、組電池製造装置2は、発電要素10を含む単電池100と組電池1の製造装置であって、組み合わせシステム200を備える。また、組電池製造装置2において用いられる単電池100と組電池1の製造方法は、発電要素10を含む単電池100と組電池1の製造方法であって、上記の正極部材11の組み合わせ方法を備える。
このようにすることにより、個々の正極部材11の重量値や表面抵抗が設計公差や製造公差の範囲内でばらついていても、発電要素10の物性のばらつきを小さくすることができる。発電要素10の物性のばらつきを小さくすることによって、発電要素10を含む単電池100や組電池1の物性のばらつきを小さくすることができる。したがって、単電池100や組電池1の製造後に、改めて単電池100や組電池1の物性値を測定し直すなどの後工程を省略したり簡単にしたりすることができる。このような後工程を省略したり簡単にしたりすることによって、単電池100や組電池1の製造に必要な日数を少なくし、また、製造コストを下げることができる。
このようにすることにより、単電池100や組電池1間の物性のばらつきを簡単に低減させることが可能な組電池製造装置2を提供することができる。
また、組電池製造装置2と製造方法においては、製造される電子モジュール体は単電池100と、単電池100を用いて製造される組電池1である。
このようにすることにより、測定段階において、重量測定部213、抵抗測定部215において測定される値に応じて、電池の容量、厚み、充放電時の電流値、サイクル性能、極板の機械的強度、といった品質を揃えることができる。
また、この実施の形態においては、電子モジュール体として組電池を用いたが、電子モジュール体は、リチウムイオンバッテリー(LIB)の他の蓄電デバイスであってもよい。
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。