近年、被写体の光学画像を、撮像レンズを介してCCD等の固体撮像素子に結像させ、該撮像素子により光電変換されて出力される画像信号を、記録媒体等に記録するようにしたデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等のデジタルカメラが実用化されている。静止画を撮影するカメラに動画の撮影機能を付加し、あるいは動画を撮影するビデオカメラに静止画の撮影機能を付加したものも実用化されている。このようなデジタルカメラにおいては、パララックス(視差)が無く、被写体深度が浅い場合や遠方の被写体でも精度良いピント合わせ(合焦)が可能で、しかも、専用のセンサを設ける必要がないという利点から、コントラスト方式のAF(オートフォーカス)装置が用いられている。
コントラスト方式は、焦点調節レンズ(フォーカスレンズ)を所定間隔(ピッチ)でステップ移動させつつ、撮影した各画像に基づいて焦点評価値(例えば、固体撮像素子から得られる画像信号の高周波成分の合計値等)を算出し、該焦点評価値が最大となるレンズ位置を合焦位置(ピントが合う位置)とするものである(例えば、特開平10−142488号公報参照)。
このようなコントラスト方式においては、合焦位置を予測することは一般にできないため、撮影レンズの焦点調節が可能な範囲(詳述すれば、撮影レンズの光軸方向において、該撮影レンズ内の焦点調節レンズを駆動可能な範囲であり、以下、焦点調節可能範囲という)の全範囲に渡ってサーチ動作(焦点調節レンズのステップ移動、焦点評価値の算出等の繰返動作等をいい、以降ではこのサーチ動作を、単に「サーチ」と称することもある)を行う必要がある。
ここで、焦点調節可能範囲は、レンズの焦点距離と最短撮影距離で決まる。最短撮影距離とは、ピントが合わせられる最短の撮影距離であり、撮影距離とはカメラから被写体までの距離である。図10(A)及び図10(B)は、焦点調節可能範囲について説明するための図である。図10(A)は被写体が無限遠の位置(撮影距離=∞)にある場合のレンズの結像の様子を表したものである。この場合はレンズからf(fは焦点距離)だけ離れたところに焦点を結ぶ。図10(B)は被写体が最短撮影距離Rだけ離れている時の結像の様子を表したものである。
図10(B)において、レンズの厚さを無視すれば、
a+b=R …(数式1)
となる。ここで、aは被写体からレンズまでの距離、bはレンズから焦点面までの距離である。また、レンズの結像では、a,bと焦点距離fとの間に以下の関係が成立する。
(1/a)+(1/b)=(1/f) …(数式2)
被写体が無限の距離(a=∞)にあると、bは焦点距離fと同じ(b=f)になるが、aが有限の値の場合は必ずb>fとなる。数式2をbについて解くと、
b=(a・f)/(a−f) …(数式3)
となる。
通常、レンズは距離が無限遠から最短撮影距離の間にある被写体にピントを合わせることができ、これを焦点面側に換算した焦点調節可能範囲は、図10(A)及び図10(B)に示すように、b−fとなる。そこで、数式1〜3を利用して焦点調節可能範囲を求めると、以下の数式4のようになる。
b−f=f2/(a−f)
=2・f2/[R−2・f+√(R2−4・R・f)]…(数式4)
数式4を撮影距離Rと焦点距離fのグラフにしたものが図11である。図11より、焦点距離が長く撮影距離が短いほど焦点調節可能範囲が大きくなることがわかる。一般に小型のデジタルカメラは焦点距離が短いため(5〜20mm程度)、焦点調節可能範囲も狭い。例えば、数式4でf=20mm、R=30cmの場合の焦点調節可能範囲は1.4mm程度となる。この程度であれば焦点調節可能範囲の全域をサーチしても、それ程時間がかからず実用上問題はないと考えられる。
一方、一眼レフの場合はレンズの焦点距離が小型デジタルカメラと比べて豊富であり、焦点距離も10mm程度から600mm程度と幅広い。そうするとレンズによって焦点調節可能範囲が大きく異なることになる。例えば、f=30mm、R=60cmの場合の焦点調節可能範囲は約1.6mmであるが、f=200mm、R=1mの場合は焦点調節可能範囲は50mm程度となり、小型デジタルカメラと比較して50倍近く広い範囲となる。この場合、焦点調節可能範囲の全域をサーチすると時間がかかり過ぎ、実用上問題となる。
このような問題に対処するため、例えば、サーチ範囲を焦点調節可能範囲の一部に制限する技術が提案されている(例えば、特開2004‐94130号公報)。しかしながら、焦点調節可能範囲を単に狭くするだけでは、制限した範囲内に合焦位置が存在する場合には効果的であるものの、制限した範囲外に合焦位置が存在する場合には、合焦することなくオートフォーカス動作が終了してしまうという問題がある。
この点を改善するため、制限した範囲内で合焦位置が検出できなかった場合に、ステップ間隔(焦点調節レンズのステップ移動の間隔)を大きくして、焦点調節可能範囲の全範囲を再サーチする技術が提案されている(例えば、特開2005‐249884号公報)。しかしながら、レンズの焦点距離が長い(即ち、焦点調節可能範囲が大きい)場合には、この方法は有効であると考えられるが、焦点距離が短い(即ち、焦点調節可能範囲が小さい)場合は、合焦位置を決定するために十分な数の焦点評価値が蓄積される前に、焦点調節可能範囲の全域のサーチが終了してしまい(例えば、5つの焦点評価値を得たいところが、その焦点調節可能範囲内で3回のステップの駆動しかできず、3つの焦点評価値しか得られないような場合)、結果として合焦位置が検出できなくなる場合がある。
また、特開2001‐343581号公報には、焦点調節レンズの移動範囲が大きい場合に、比較的に大きいステップ間隔で全範囲をサーチして大まかな合焦位置を求め、次いで、大まかな合焦位置の周辺を比較的に小さいステップ間隔で再サーチして、合焦位置を求めるようにした技術が開示されている。しかしながら、この技術では、最初のサーチにおいてレンズの移動範囲が大き過ぎてステップ間隔が大きくなってしまうと、焦点評価値のピーク(大まかな合焦位置)を検出することができない場合があるという問題がある。また、最初に全城をサーチし、その後に細かいサーチを実施するので、合焦位置の検出に要する時間をそれ程短縮することができない場合があるという問題がある。
本発明は上述したような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装着された撮影レンズの仕様にかかわらず、合焦位置を短時間で高効率的に検出できるようにすることである。
特開平10−142488号公報
特開2004‐94130号公報
特開2005‐249884号公報
特開2001‐343581号公報
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の実施形態に係るオートフォーカス装置を備えたカメラシステムの概略構成を模式的に示す断面図である。このカメラシステムは、デジタル一眼レフカメラシステムであり、動画の撮影機能をも備えている。
図1において、カメラシステムCMは、カメラボディCB及びカメラボディCBに交換可能に装着される撮影レンズCLを備えて構成されている。カメラボディCBの上部には、ファインダ部FDが一体的に固定されている。但し、撮影レンズCLはカメラボディCBに一体的に固定されていてもよい。
なお、本願明細書においては、撮影レンズとは、単一のレンズ若しくは複数のレンズやその他の光学素子等を含むレンズ系を、又はレンズ系に加えてレンズ鏡筒や一部のレンズを駆動する機構部、場合により該機構部等を制御する制御部やメモリ等も含むレンズアセンブリ全体をいうものとする。本実施形態における撮影レンズCLは、そのようなレンズアセンブリ全体を意味している。
カメラボディCBの内部には、高解像度のCCD等の撮像素子20が取り付けられている。撮像素子20は、受光面に結像される被写体の像を画像信号に変換して出力する。なお、撮像素子20は、その前面(撮影レンズCL側)に、赤外光をカットするための赤外カットフィルタや画像の折り返しノイズを防止するための光学的ローパスフィルタ等も備えている。撮像素子20は、電気的な制御により投影される被写体の像の露光時間を調節するための電子シャッタ(機能)を備えている。また、図示は省略しているが、撮像素子20の前面には、斜光部材を機械的に駆動して当該露光時間を調節するためのメカニカルシャッタも設けられている。
ファインダ部FDは、撮影レンズCLや後述するクイックリターンミラー70等を介して形成される被写体の光学像を観察するための光学式のファインダであり、フォーカシングスクリーン25、ペンタプリズム30、測光素子40、リレーレンズ50、接眼部60等を備えて構成されている。測光素子40は、シャッタスピードや絞り値を決定するために、これに結像される像の明るさを測定する素子である。
なお、カメラボディCBの背面には、撮像素子20に結像される画像を表示可能な液晶パネルが設けられている。従って、被写体の像は、ファインダ部FDの接眼部60又は液晶パネルの何れかを介して目視できるようになっている。
カメラボディCB内において、撮像素子20の前面側には、クイックリターンミラー70が回動可能に軸支されている。クイックリターンミラー70のメインミラーの裏面側(撮像素子20側)には、サブミラー80が一体的に取り付けられている。クイックリターンミラー70は、図1に示すような撮像素子20の撮像面に対して略45度で該撮像素子20の前面を遮断するような姿勢(第1姿勢/ミラーダウン状態)と、図1において時計方向に回動して撮像素子20の受光面に対して略直交(フォーカシングスクリーン25の下側で略平行)となる姿勢(第2姿勢/ミラーアップ状態)とで選択的に高速動作可能なミラーである。
クイックリターンミラー70のメインミラーはその一部(中央部近傍)がハーフミラー(その余の部分は全反射ミラー)となっており、クイックリターンミラー70が第1姿勢にある状態で、撮影レンズCLからの光は、その殆どが該メインミラーによってファインダ部FD(フォーカシングスクリーン25)側へ反射され、メインミラーのハーフミラー部を透過した一部の光は、サブミラー80で反射されるようになっている。サブミラー80で反射された光は、ミラー90で更に反射されて、位相差検出方式AF検出素子100に入射される。
クイックリターンミラー70が第2姿勢に切り換えられると、撮影レンズCLからの光は上述したメカニカルシャッタ(不図示)を介して撮像素子20に入射される。位相差検出方式AF検出素子100は、2つのラインセンサ及び入射される光を2つに分割して該ラインセンサにそれぞれ入射させるマスク等を備えて構成されている。マスクにより2つに分けられた光を2つのラインセンサ上にそれぞれ再結像させて、それぞれの像面位置の差を検出する。この差がピントのズレ量(デフォーカス量)に相当する。
カメラボディCBの上部又は背面には、位相差AFスイッチ(AF_SW)92及びコントラストAFスイッチ(AF_SW)95が設けられている。これらのスイッチは撮影者が操作するスイッチである。位相差AFスイッチ92が押されている間は、クイックリターンミラー70が第1姿勢の状態で位相差検出方式AF検出素子100の検出値に基づいて、位相差AFが実行される。コントラストAFスイッチ95が押されると、クイックリターンミラー70が第2姿勢に切り換えられ、コントラストAFスイッチ95が押されている間は、撮像素子20で検出された画像信号に基づいて、コントラストAFが実行される。
撮影レンズCLは、被写体の像を撮像素子20の受光面上に結像させるための光学系である。図1では、撮影レンズCLは焦点距離が変更可能なズームレンズが例示されているが、単焦点レンズであってもよい。フィッシュアイレンズ、広角レンズ、望遠レンズ、マイクロレンズ等を任意に交換して装着することも可能である。
撮影レンズCLは、レンズ鏡筒200内部に、固定レンズ210a、焦点距離調節レンズ210b、焦点調節レンズ210c、及び固定レンズ210dを備えて構成されている。なお、各レンズ210a,210b,210c,210dは、それぞれ単一のレンズ又は複数のレンズから構成されるレンズ系である。固定レンズ210a,210dはレンズ鏡筒200に固定されており、焦点距離調節レンズ210b及び焦点調節レンズ210cは、それぞれ撮影レンズCLの光軸AXに沿う方向に移動可能に取り付けられている。
焦点距離調節レンズ210bは、通常は、図示しないズーム環等を撮影者が手動で回すことにより、その光軸AX方向の位置が変化し、それに応じて撮影レンズCLの焦点距離を変化させることができるようになっている。焦点距離調節レンズ210bの位置は、ズームエンコーダ220により検出(モニタ)されるようになっている。ズームエンコーダ220の検出値は、焦点距離検出部340に供給される。
焦点調節レンズ210cは、レンズ駆動量設定部370からのレンズ駆動信号に基づいて、焦点調節レンズ駆動モータ(アクチュエータ)240により光軸AXに沿う方向の位置が変化され、その位置の変化は焦点調節レンズ位置エンコーダ230により検出(モニタ)されるようになっている。
絞り250は、撮像素子20へ入射させる光の量を調節するための可変開口絞りであり、絞りの設定は、カメラが自動で行う場合と、撮影者が手動で行う場合とがある。その絞り値は、プログラムモードやシャッタスピード優先モードの場合には、測光素子40の出力等に基づき決定される。絞り優先モードやマニュアルモードの場合には、撮影者により手動で設定される。絞り250の作動は、自動又は手動で設定された絞り値に基づき、不図示の絞り制御モータ等によって制御される。
コントラストAF制御部CNTは、焦点評価値算出部330、焦点距離検出部340、レンズ駆動量設定部370等と協働して制御系を構成し、後述するコントラストAFの制御処理の主要な部分を実行する処理装置である。
焦点評価値算出部330は、撮像素子20から出力される画像信号のうち、所定の測距エリアに相当する部分の焦点評価値を算出し、算出結果をコントラストAF制御部CNTに供給する。焦点評価値算出部330における焦点評価値を算出する方式としては、画像に高周波強調フィルタ処理を施し、その結果を積算する方法を用いることができる。但し、焦点評価値の算出方式は、他の方式であっても勿論よい。焦点距離検出部340は、焦点調節レンズ位置エンコーダ220の出力から撮影レンズCLの現在の焦点距離を検出し、コントラストAF制御部CNTに供給する。
レンズ駆動量設定部370は、コントラストAF制御部CNTからの制御信号に基づいて、レンズ駆動量を設定して焦点調節駆動モータ240に駆動信号を送り、焦点調節レンズ210cを光軸AXに沿う方向に移動させる。
コントラストAF制御部CNTは、後に詳述する各種の制御処理に従って、レンズ駆動量設定部370を介して焦点調節レンズ駆動モータ240を駆動して、焦点調節レンズ210cをステップ移動させつつ、各位置での撮像素子20による画像信号に基づき焦点評価値算出部330で算出された焦点評価値を蓄積保持する。次いで、該焦点評価値が最大になる位置を、所定の数学的補間式を用いて算出して、これを合焦位置として、焦点調節レンズ210cを当該合焦位置に位置させるように、レンズ駆動量設定部370を介して焦点調節レンズ駆動モータ240を制御するものである。
次に、本発明の第1実施形態に係るAF(オートフォーカス)装置の制御について説明する。この実施形態のコントラストAFは、概略、以下の4つの処理(第1〜第3サーチ、合焦駆動)から構成される。なお、サーチ(サーチ動作)とは、焦点調節レンズのレンズ光軸AX方向におけるステップ移動、焦点評価値の算出等の繰返動作を行って、合焦位置を検出する一連の処理、即ち、合焦位置を探索する処理である。
第1サーチ(第1のサーチ動作)では、撮影レンズCLの焦点調節可能範囲よりも狭い所定のサーチ範囲(第1サーチ範囲)で所定のステップ幅で合焦位置を検出する。第1サーチにおけるステップ幅も、合焦位置を必要な精度で算出できる程度の比較的に小さい値に設定される。第1サーチでのステップ幅は、例えば、100μm〜200μm程度である。なお、これら第1サーチのパラメータ(第1サーチ範囲とステップ幅)は、レンズの種類とは無関係に、予めカメラ内のメモリ(制御部CNT内のメモリ)に記憶されているものである。
第2サーチ(第2のサーチ動作)は、第1サーチで合焦位置が検出できず(第1サーチ範囲内に合焦位置が無い場合等)、かつ撮影レンズCLの焦点距離が予め設定された所定のしきい値以上である場合に実施される。第2サーチにおけるサーチ範囲(第2サーチ範囲)は、第1サーチ範囲よりも広い範囲で設定し、かつステップ幅も第1サーチのそれよりも大きい値、即ち、収集される焦点評価値に基づいて、合焦位置を必要な精度で算出できる程度ではないが、合焦位置の大まかな位置を検出することができる程度の比較的に大きい値に設定される。第2サーチ範囲は、第1サーチ範囲とその位置が完全に異なっていてもよく(第1サーチ範囲と重複しなくても良く)、又は第1サーチ範囲と一部が重複していてもよい。即ち、第2サーチ範囲は、一部でもその位置が第1サーチ範囲と異なっていれば良い。第2サーチでのステップ幅は、例えば、1mm〜1.2mm程度である。
第3サーチは、第2サーチで合焦位置の大まかな位置が検出された場合に実施される。第3サーチでは、第2サーチでの合焦位置を中心として、第1サーチと略同じステップ幅で合焦位置のサーチを行う。合焦駆動は、第1又は第3サーチにおいて、合焦位置が検出された場合に、その合焦位置ヘ焦点調節レンズ210cを移動させる処理である。
次に、図2を参照して、上記の処理をさらに詳細に説明する。図2は本発明の第1実施形態に係るオートフォーカス装置のコントラストAF制御部CNTを含む制御系の処理を示すフローチャートである。処理が開始されると、まず、S100において、位相差AFスイッチ92がOFFか否かを判定し、No(ONの場合)にはS200へ進んで、上述した位相差AFを実行する。S100において、Yesの場合(OFFの場合)にはS300へ進み、コントラストAFスイッチ95がONか否かを判定する。S300において、Noの場合(OFFの場合)にはこの判定を繰り返し、Yesの場合(ONの場合)にはS400へ進む。
S400において、クイックリターンミラー70をアップ(第2姿勢に設定)し、撮影レンズCLを介した光を撮像素子20へ導き、撮像素子20はここから画像信号の取り込みと出力を開始し、焦点評価値算出部330は焦点評価値の算出を開始する。次いで、S500において、第1サーチを実行する直前の焦点調節レンズ210cの位置を初期位置として取得し、S600において、第1サーチを実行する。
第1サーチでは、上述した通り、比較的小さいステップ幅で焦点調節レンズ210cをステップ移動させつつ、焦点評価値算出部330が焦点評価値を算出し、算出された焦点評価値は、コントラストAF制御部CNTに順次供給される。コントラストAF制御部CNTは、供給される各焦点評価値に基づいて、所定の補間演算を実施して、合焦位置を算出する。ここで合焦位置の検出ができなかった場合には、合焦検出失敗となる。
次いで、S700において、コントラストAF制御部CNTは、第1サーチで合焦位置が見つかったか否か(合焦検出に成功したか、失敗したか)を判定し、見つかった場合(Yesの場合)にはS800へ進んで、レンズ駆動量設定部370及び焦点調節レンズ駆動モータ240を介して、焦点調節レンズ210cを当該検出された合焦位置に移動させる合焦駆動を実行する。S700において、合焦位置が見つからなかった場合(Noの場合)にはS900へ進む。
次いで、S900において、コントラストAF制御部CNTは、撮影レンズCLの焦点距離が所定値未満であるか(短いか)否かを判定する。この判定は、焦点距離検出部340により検出された撮影レンズCLの現在の焦点距離(レンズ情報)と、コントラストAF制御部CNTが備えるメモリ内に予め設定された所定値(しきい値)とを比較することにより行われる。焦点距離が所定値未満の場合(Yesの場合)にはS1000へ進み、所定値以上の場合(Noの場合)にはS1200へ進む。かかる所定値は、撮影レンズCLの焦点距離との関係で予め適宜な値に設定される。
S900において、焦点距離が所定値未満である場合(Yesの場合)には、焦点調節可能範囲も小さいので、第1サーチによって焦点調節可能範囲のうちの相当量のサーチが行われていると推定できるため、合焦位置が存在しない可能性が高い。そこで、S1000において、焦点調節レンズ210cを初期位置へ駆動し、次いで、S1100において、コントラストAFの動作を停止する。なお、本実施形態では合焦位置が見つからなかった場合には、所期位置へ駆動することにしているが、これに限らず、例えば検出不能と判定した時点のレンズ位置を保持するようにしてもよい。なお、S1100において、コントラストAFの動作を停止した場合には、合焦位置が見つからなかった旨(AF検出不能な被写体である旨)を撮影者に通知するようにすることが好ましい。この通知は、例えば、液晶画面やファインダ内に文書や図形等で表示し、あるいは警告音によって行うようにしてもよい。
S900において、焦点距離が所定値以上である場合(Noの場合)には、焦点調節可能範囲も大きいので、第1サーチ範囲内で合焦位置が見つからなくても、第1サーチ範囲外に合焦位置が存在する可能性が高い。そこで、この場合には、S1200に進んで、第1サーチ範囲よりも広い第2サーチ範囲を設定するとともに、ステップ幅も第1サーチよりも大きく設定して、第2サーチを実行する。第2サーチ範囲は、第1サーチ範囲と重複しないように設定すると効率的であるが、一部が重複していてもよい。
次いで、S1300において、第2サーチで合焦位置が見つかったか否かを判定する。見つからなかった場合にはS1000へ進み、見つかった場合にはS1400へ進んで、第3サーチを実行する。第2サーチでは、合焦位置が見つかったとしても、ステップ幅が大きいため、必要な精度は保証できない。そこで、第2サーチで見つかった合焦位置付近を第1サーチと同程度の細かいステップ幅でサーチする第3サーチを実行する。
次いで、S1500において、第3サーチで合焦位置が見つかったか否かを判定し、見つかった場合(Yesの場合)にはS800へ進んで、合焦駆動を実行し、見つからなかった場合(Noの場合)にはS1000へ進む。
図3(A)及び図3(B)は焦点距離の短いレンズを用い、第1サーチで合焦位置が見つかった場合の一例を示している。図3(A)は、レンズ位置と焦点評価値との関係を示すグラフであり、横軸がレンズ位置、縦軸が焦点評価値である。図3(A)中の黒丸で示したP1〜P5がコントラストAF制御部CNTが取得した焦点評価値である。なお、P0はAF動作を開始する時点でのレンズ位置を示している。図3(B)は図3(A)に対応するレンズ位置と時間との関係を示すグラフであり、横軸がレンズ位置、縦軸が時間である。
コントラストAFの実行開始時には、レンズはP0に位置しており、次にP1までレンズを駆動してからP2→P3→P4→P5と焦点評価値を取得していく。P5の時点で焦点評価値が山状になったと判定して合焦位置を求め、合焦駆動を行う。
図4(A)及び図4(B)は焦点距離の長いレンズを用い、第1サーチで合焦位置が見つかった場合の一例を示している。図4(A)及び図4(B)における横軸及び縦軸は図3(A)及び図3(B)の場合と同じである。図4(A)に示されているように、焦点評価値曲線の裾野の部分が図3(A)のそれよりも広くなっている。基本的な動作は図3(A)及び図3(B)と同様であり、第1サーチで合焦位置が見つかったならば、そのまま合焦駆動してオートフォーカス動作を完了する。このように、第1サーチで合焦位置が見つかる場合、本実施形態のコントラストAFによるオートフォーカス動作は焦点距離によらず同じ動作となり、焦点距離の長短にかかわらず、合焦位置を高速に検出することができる。
図5(A)及び図5(B)は焦点距離の短いレンズを用い、第1サーチで合焦位置が見つからなかった場合の一例を示している。図5(A)及び図5(B)における横軸及び縦軸は図3(A)及び図3(B)の場合と同じである。コントラストAFの動作は図3(A)及び図3(B)の場合と同様であるが、P1からP5まで焦点評価値を取得しても焦点評価値が山状にならない。また、焦点距離が短いと焦点調節可能範囲も狭くなるので、第1サーチ範囲で焦点調節可能範囲の大半をカバーできる。従って、第1サーチで合焦位置が見つからなかった場合には、焦点調節可能範囲全体をサーチしても合焦位置が見つかる可能性は低い。よって、焦点距離が短くて、かつ第1サーチで合焦位置が見つからない場合は検出不能として、P0を取得した位置(初期位置)にレンズを戻すようにしている。
図6(A)及び図6(B)は焦点距離の長いレンズを用い、第1サーチで合焦位置が見つからなかった場合の一例を示している。図6(A)及び図6(B)における横軸及び縦軸は図3(A)及び図3(B)の場合と同じである。この例でも第1サーチ(P1〜P5)の焦点評価値が山状にならなかったので、第1サーチ範囲内では合焦位置が見つからない。しかし、焦点距離が長いレンズは焦点調節可能範囲が広く、第1サーチ範囲から離れた位置に合焦位置が存在する可能性がある。よって、焦点距離が短いレンズのように第1サーチの範囲で合焦位置が見つからなかったとしても、焦点調節可能範囲内に合焦位置が存在しないとは限らない。
このようなことから、焦点距離が長い場合で、第1サーチで合焦位置が見つからなかった場合には、第2サーチを実行する。この第2サーチはサーチ範囲が第1サーチ範囲よりも広く、例えば焦点調節可能範囲の全域に設定する。また、ステップ幅も第1サーチのそれよりも広く設定してサーチにあまり時間がかからないようにする。そのようにサーチ範囲とステップ幅を設定した後、レンズを焦点調節可能範囲の端に駆動し、そこからもう一方の端に向かってサーチを開始する。図6(A)中の黒三角で示したQ1〜Q7が第2サーチでコントラストAF制御部CNTが取得した焦点評価値である。第2サーチも第1サーチと同様、焦点評価値が山状になった場合に合焦位置が見つかったとする。
但し、ステップ幅が広い第2サーチでは合焦位置が見つかっても精度が十分に出ていない可能性がある。従って、第2サーチで合焦位置が見つかったならば、第1サーチとほぼ同じステップ幅(狭いステップ幅)で第3サーチを実行して合焦位置を検出する。図6(A)中の黒丸で示したR1〜R4が第3サーチでコントラストAF制御部CNTが取得した焦点評価値である。
このように、第1実施形態では、装着された撮影レンズの焦点距離に応じて(ズームレンズの焦点距離を変更した場合、焦点距離の異なる撮影レンズに交換した場合等に応じて)、動作を変えることにより、焦点距離が短いレンズでは検出不能であることを迅速に撮影者に伝えることにより、撮影者は速やかな対応ができるようになる。また、焦点距離が長いレンズでは合焦位置を検出する確率を高くすることができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、第1サーチで合焦位置が見つからなかった場合であって、焦点距離が長い場合にのみ、第2サーチを実行するようにしていた。これに対し、この第2実施形態では、第1サーチで合焦位置が見つからなかった場合には、焦点距離の長短によらず第2サーチを実行するようにし、焦点距離の長短に応じて、第2サーチのステップ幅を変えるようにしている。即ち、焦点距離が短い場合には焦点調節可能範囲が狭いのでステップ幅を小さくし、焦点距離が長い場合には焦点調整可能範囲が広いので逆にステップ幅を広くするようにしている。
図7は本発明の第2実施形態に係るオートフォーカス装置のコントラストAF制御部CNTを含む制御系の処理を示すフローチャートである。図2と実質的に同じステップについては同じ符号を付し、その説明の一部を省略する。S700において、第1サーチによって合焦位置が見つからない場合に、S900において焦点距離の長短を判断するのは第1実施形態と同じである。S900において、焦点距離が所定値未満であると判定された場合(Yesの場合)にはS910に進んで、第2サーチのステップ幅を第1サーチと同じステップ幅に設定し、焦点距離が所定値以上であると判定された場合(Noの場合)には、S920に進んで、第2サーチのステップ幅を第1サーチよりも広く設定する。
次いで、S1200において、S910又はS920で設定されたステップ幅で第2サーチを実行し、S1300において、合焦位置が見つかったか否かを判定する。第2サーチ範囲は、第1実施形態の場合と同様である。S1300において、合焦位置が見つからなかった場合(Noの場合)にはS1000へ進む。S1300において、合焦位置が見つかった場合(Yesの場合)にはS1340に進んで、S900と同様に焦点距離の長短を所定値と比較判定し、焦点距離が所定値未満である場合(Yesの場合)にはS800に進み、焦点距離が所定値以上である場合(Noの場合)にはS1400に進んで第3サーチを実行する。
上述したように、第2サーチにおいては、焦点距離が短い場合は第1サーチと同じステップ幅(つまり狭い幅)なので、見つかった合焦位置の精度は十分保証できる。従って、焦点距離が短い場合はそのまま合焦駆動へ移行しても良い。一方、焦点距離が長い場合は第2サーチのステップ幅が広いため、見つかった合焦位置の精度は保証できない。このため、焦点距離が長い場合は第2サーチで見つかった合焦位置付近を精細にサーチするべく第3サーチを実行するようにしている。
図8(A)及び図8(B)は焦点距離の短いレンズを用い、第1サーチで合焦位置が見つからなかった場合の一例を示している。図8(A)及び図8(B)における横軸及び縦軸は図3(A)及び図3(B)の場合と同じである。図8(A)では、P1〜P5で焦点評価値が山状にならないため合焦位置が検出されない。そこで、レンズを焦点調節可能範囲の端に駆動して、そこから第2サーチを開始する。但し、焦点調節可能範囲が狭いのでステップ幅を第1サーチと同じ値に設定してサーチを行う。すると、まもなく合焦位置が検出されて合焦駆動へ移行して動作を完了する。また、焦点距離が長い場合は図6(A)及び図6(B)と同じ動作となる。
このように、焦点距離が短い場合には、第2サーチのステップ幅を第1サーチと同じ値にすることで、第3サーチを実行しなくて済むので合焦時間を短縮することができる。また、狭い焦点検出可能範囲内でも合焦位置があるかどうかの判定に必要な数の焦点評価値が取得でき、確実に合焦位置が検出できるようになる。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について、図9を参照して説明する。図9は本発明の第3実施形態に係るカメラの概略構成を示す断面図である。図1と実質的に同一の構成部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図9に示すように、撮影レンズCLには、当該撮影レンズCLに係る各種のレンズ情報が予め記憶されたメモリMEMが内蔵されている。メモリMEMに記憶されるレンズ情報としては、ここでは、撮影レンズCLの最短撮影距離に関する情報が予め格納されているものとする。撮影レンズCLがカメラボディCBに取り付けられると、不図示の接続電極を介して、カメラボディCB側に内蔵されたコントラストAF制御部CNTよって、メモリMEMのレンズ情報を読み込むことができるようになっている。コントラストAF制御部CNTは、メモリMEMから読み込んだレンズ情報としての最短撮影距離と、焦点距離検出部340からのレンズ情報としての焦点距離とに基づいて、焦点調節可能範囲を算出する。
上述した第1又は第2実施形態では、焦点距離の長短で焦点調節可能範囲が長いか否かを推定し、焦点距離に応じて第2サーチの実行の有無や第2サーチのステップ幅を決定していた。しかし、図11に示すように、焦点調節可能範囲はレンズの焦点距離だけではなく、最短撮影距離にも依存する。従って、レンズの仕様によっては同じ焦点距離でも第2サーチを実行する必要がなかったり、第2サーチのステップ幅を広げたりする必要のないレンズが出てくる可能性もある。
そこで、この第3実施形態では、さらに高効率的にレンズを駆動するために、焦点距離の他に最短撮影距離を利用する構成とした。このようにすると、焦点距離と最短撮影距離から、数式4によって焦点調節可能範囲が算出できるので、それを基にサーチ動作を決定すればよい。また、基本的な動作は図2や図7に示したフローチャートと同様であり、焦点距離の長短を判断するステップ(S900,S1340)が、最短撮影距離と焦点距離から算出した焦点調節可能範囲の長短を判断するステップになる。この判断に用いられる所定値も焦点調節可能範囲に対応したものとなる。
なお、メモリMEMに記憶されるレンズ情報として、最短撮影距離ではなく、焦点調節可能範囲自体を記憶させるようにしてもよい。焦点調節可能範囲自体を記憶させることにより、焦点調節可能範囲を焦点距離と最短撮影距離とを用いて算出する必要がなくなり、より速いAF動作、より正確なAF動作が可能となる。
また、上述した第1又は第2実施形態では、コントラストAF制御部CNTは、装着されている撮影レンズCLのレンズ情報としての焦点距離を、焦点距離検出部340から供給を受けて、S900において、その長短を所定値と比較することにより、判断するようにしているが、上述した第3実施形態の撮影レンズCLのメモリMEMに、レンズ情報として焦点距離に関する情報(単焦点レンズの場合にはその焦点距離、ズームレンズの場合には焦点距離の代表値若しくは平均値又は可変範囲等)を予め格納しておき、当該メモリMEMから焦点距離に関する情報を読み出して、その長短を判断するようにしてもよい。
さらに、上述した第3実施形態のように、焦点調節可能範囲の取得が可能な場合において、第1実施形態に係る図2のS900において、焦点距離の長短を所定値と比較判定するのではなく、焦点調節可能範囲に対する第1サーチ範囲の割合を予め設定された所定割合と比較判定するようにし、その割合が所定割合以上である場合には、S1000へ進んで第2サーチを実行することなく終了し、所定割合未満である場合にはS1200へ進んで第2サーチを実行するようにしてもよい。所定割合としては、焦点調節可能範囲の50〜70%に設定することができる。焦点調節可能範囲の50〜70%程度のサーチが終了していても、合焦位置が検出できない場合には、全範囲をサーチしたとしても合焦位置が存在しない可能性が高いため、その余の部分をサーチすることなく終了した方が、効率的であると考えられるからである。
また、同様に、第2実施形態に係る図7のS900において、焦点距離の長短を所定値と比較判定するのではなく、焦点調節可能範囲に対する第1サーチ範囲の割合を予め設定された所定割合と比較判定するようにし、その割合が所定割合以上である場合には、S910へ進んで、第2サーチのステップ幅を第1サーチのステップ幅と同程度に設定し、所定割合未満である場合にはS920へ進んで、第2サーチのステップ幅を第1サーチのステップ幅よりも広く設定して、S1200で第2サーチを実行するようにしてもよい。所定割合としては、焦点調節可能範囲の50〜70%に設定することができる。
焦点調節可能範囲の50〜70%程度以上のサーチが終了している場合には、サーチが終了していないその余の範囲は小さいので、ステップ幅を広く設定することなく狭いステップ幅で合焦検出を継続した方が、短時間で合焦位置を検出できる場合が多いと考えられる。これと反対に、焦点調節可能範囲の50〜70%程度未満しかサーチが終了していない場合には、サーチが終了していないその余の範囲は大きいので、ステップ幅を広くして大まかに合焦位置を検出した後に、大まかな合焦位置の周辺を必要な精度で細かくサーチした方が、効率的であると考えられるからである。
また、第1サーチの上述のパラメータ(サーチ範囲、ステップ幅)を、メモリMEMに記憶させ、第1サーチ動作前に、カメラ側の制御部CNTにそのパラメータを送信する(第1サーチの際に使用するパラメータとして)ようにしておけば、レンズ毎に最適なサーチパラメータを使って、第1サーチ動作を行うことができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。