以下に、本発明に係る回転電機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る回転電機の模式的な概略構成図である。
本実施形態の回転電機1は、図1に示すように、固定子であるステータ2と回転子であるロータ3とを備えるものである。この回転電機1は、電気エネルギを機械的動力に変換して出力する電動機や機械的動力を電気エネルギに変換して回収する発電機等として適用されるものである。すなわち、この回転電機1は、電力の供給により駆動し電気エネルギを機械エネルギに変換して出力する電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。
本実施形態の回転電機1は、例えば、ハイブリッド車両(HV:Hybrid Vehicle)、電気車両(EV:Electric Vehicle)、燃料電池車両(FCV:Fuel Cell Vehicle)などの車両を駆動するための駆動装置に主として走行用回転電機として搭載される。なお、以下の説明では、本発明に係る回転電機は、車両を駆動するための駆動装置に備えられる走行用回転電機であるものとして説明するが、車両の作業用回転電機や補機用回転電機などとして適用してもよいし、車両に限らず他の装置の電動機又は発電機として適用してもよい。また、本発明に係る回転電機である電動機と発電機とはほぼ同じ構造を有するため、ここでは主として電動機(電動モータ)について説明し発電機に関する説明をできるだけ省略する。
なお、以下の説明では、特に断りのない限り、ロータ3の回転中心である回転軸線X1に沿った方向を軸方向といい、回転軸線Xに直交する方向、すなわち、軸方向に直交する方向を径方向といい、回転軸線X周りの方向を周方向という。
具体的には、本実施形態の回転電機1は、ステータ2と、ロータ3と、ケース4と、ロータ軸5とを備えている。回転電機1は、例えば両端が閉塞した円筒状のケース4の内部空間部にステータ2、ロータ3、ロータ軸5などが収容される。回転電機1は、ステータ2がケース4の内部空間部に固定されて支持されるのに対して、ロータ3がケース4の内部空間部にロータ軸5、軸受6を介して回転軸線X1を回転中心として回転可能に支持される。この回転電機1は、ステータ2、ロータ3、ロータ軸5の中心軸線が回転軸線X1で一致するようにケース4に位置決めされる。
具体的には、ステータ2は、円筒状に形成される。ステータ2は、円筒形の中心軸線がロータ3の回転軸線X1と一致するようにケース4の内周面に固定される。すなわち、ステータ2は、回転軸線X1と同軸の円筒状に形成され、ケース4の内部空間部にこのケース4に対して相対回転不能に支持される。
ステータ2は、ステータコア(ステータ鉄心)21と、ステータコイル22とを含んで構成される。
ステータコア21は、ステータ2の円筒状の鉄心をなし、軸方向に沿って複数の電磁鋼板(積層鋼板)を積層させて構成される。つまり、ステータコア21は、軸方向に沿って積層された複数の電磁鋼板からなる。なお、このステータコア21は、電磁鋼板に限定されず、例えば圧粉磁心から構成されてもよい。
ステータコイル22は、ステータコア21に巻回されて設けられる。ステータコイル22は、例えば、三相ケーブルなどを介して車両の制御装置(不図示)に電気的に接続されている。例えば、この制御装置には、車両に搭載されたECU(Electrical Control Unit)から回転電機1が出力すべきトルク指令値が送られる。そして、この制御装置は、そのトルク指令値によって指定されたトルクを出力するための制御電流を生成し、その制御電流を三相ケーブルを介してステータコイル22に供給する。
ロータ3は、円筒状に形成される。ロータ3は、ステータ2の内周面23側、すなわち、ステータ2の径方向内側に回転軸線X1を中心として回転自在に設けられる。ロータ3は、円柱状に形成されるロータ軸5の外周面に設けられる。このロータ軸5は、軸受6を介して回転軸線X1を回転中心として回転可能にケース4に支持される。つまり、ロータ3は、ケース4の内部空間部にロータ軸5、軸受6を介して回転軸線X1を回転中心として回転可能に支持される。ロータ3は、ロータ軸5と共にケース4、ステータ2に対して回転軸線X1を中心として相対回転可能である。
ロータ3は、ロータコア(ロータ鉄心)31と、永久磁石32とを含んで構成される。
ロータコア31は、ロータ3の円筒状の鉄心をなし、軸方向に沿って複数の電磁鋼板(積層鋼板)を積層させて構成される。つまり、ロータコア31は、軸方向に沿って積層された複数の電磁鋼板からなる。なお、このロータコア31は、電磁鋼板に限定されず、例えば圧粉磁心から構成されてもよい。
永久磁石32は、ロータコア31に複数埋め込まれて設けられている。複数の永久磁石32は、例えば、ロータコア31の周方向に沿って等間隔で設けられており、周方向にとなりあう2つの永久磁石32の極性が互いに異なるように設定されている。なおここでは、ロータ3は、埋込磁石型の永久磁石ロータを使用することとしたが、これに限らず、例えば、表面磁石型の永久磁石ロータを使用することにしてもよい。
上記のように構成されるステータ2とロータ3とは、ステータ2の内周面23とロータ3の外周面33とが径方向に対向する。また、ステータ2とロータ3とは、ステータ2の軸方向に沿った長さがロータ3の軸方向に沿った長さより長く設定されている。ここでは、ステータ2とロータ3とは、ステータコア21とロータコア31の軸方向に沿った長さがほぼ同等に設定されているが、ステータコア21から軸方向両側に突出したステータコイル22のコイルエンド部24の分だけステータ2がロータ3よりも軸方向の両側に突出した形状となっている。
なお、このステータ2の各コイルエンド部24は、ステータ2の軸方向の両端部において周方向に沿って円環状に形成される。つまり、各コイルエンド部24は、ステータ2の軸方向の両端部において回転軸線X1と同軸の円環状に形成される部分である。ステータ2は、ステータコア21の軸方向両端面から軸方向両側に突出するこの一対のコイルエンド部24を例えば樹脂モールドすることで両端部に一対の樹脂モールドコイルエンド部を有する構成としてもよい。また、ロータ3は、ロータコア31の軸方向の両端部に不図示のエンドプレートが設けられる構成としてもよい。
上記のように構成される回転電機1は、制御装置(不図示)から三相ケーブル(不図示)などを介してステータコイル22に電力が供給されることで、ステータ2に電磁力が生じ、この電磁力によりロータ3が回転駆動する。すなわち、ステータ2のステータコイル22からの磁束がロータ3内を通りロータ3が回転する。ロータ3の回転は、ロータ軸5から車両の動力伝達部材に入力され、最終的には車両の駆動輪に伝達され、この駆動輪を回転駆動させる。このとき、制御装置から電力は、例えばインバータなどにて高電圧に変換されて回転電機1に供給される。
そして、この回転電機1は、作動に伴って熱を発生するものであるため、冷却媒体、ここではオイル(潤滑油)によって冷却している。
具体的には、回転電機1は、オイル通路7を備えている。オイル通路7は、オイル供給装置8から供給される冷却媒体としてのオイルが流動可能な通路である。オイル通路7は、ロータ軸通路71と、本発明の媒体通路としてのロータ通路72とを含んで構成される。ここで、オイル供給装置8は、回転電機1にオイルを供給するものである。
ロータ軸通路71は、ロータ軸5の内部に設けられオイルが流動可能なものである。つまり、ロータ軸5は、内部に中空部が形成されこの中空部がロータ軸通路71をなす。このロータ軸通路71は、オイル供給装置8から供給されるオイルをロータ通路72に導くものである。
このロータ軸通路71は、主通路部71aと分岐通路部71bとを含んで構成される。主通路部71aは、ロータ軸5の内部に軸方向に沿って設けられる。分岐通路部71bは、ロータ軸5の内部に軸方向に交差する方向に沿って、ここでは径方向に沿って設けられる。
ロータ軸通路71の主通路部71aは、軸方向の一端部が閉塞して形成される一方、軸方向の他端部が種々の通路を介してオイル供給装置8に接続される。ロータ軸通路71の分岐通路部71bは、複数設けられそれぞれ径方向内側の端部が主通路部71aと連通する一方、径方向外側の端部が後述のロータ通路72と連通する。
ロータ通路72は、本発明の媒体通路であり、ロータ3の内部に設けられ内部をオイルが流動可能なものである。ロータ通路72は、例えば、ロータ3のロータコア31あるいはエンドプレート(不図示)などに設けられる。ロータ通路72は、ロータ軸通路71のオイルを径方向内側から外側に向かって導くものである。
ロータ通路72は、径方向通路73と、流出通路74とを含んで構成される。径方向通路73は、ロータ3の内部に軸方向に交差する方向に沿って、ここでは径方向に沿って設けられる。流出通路74は、ロータ3の内部に軸方向に沿って設けられる。
径方向通路73は、ロータ3の軸方向の両端部側に、永久磁石32を軸方向に挟むようにしてそれぞれ複数設けられる。複数の径方向通路73は、例えば、ロータ3の周方向に沿って等間隔で設けられている。各径方向通路73は、径方向内側の端部がそれぞれ対応する分岐通路部71bを介してロータ軸通路71の主通路部71aと連通する一方、径方向外側の端部が閉塞して形成される。
流出通路74は、径方向通路73に対応して複数設けられる。各流出通路74は、一方の端部がロータ3の軸方向端面34で開口する一方、他方の端部がそれぞれ対応する径方向通路73と連通する。ここで、ロータ3の軸方向端面34は、ロータ3の回転軸線X1に沿った方向、すなわち軸方向の端面である。つまり、各流出通路74は、ロータ3の軸方向端面34にオイルが流出可能な流出開口75を有する。
なお、ステータ2の内側の空間部の一部は、流出開口75から流出したオイルが滞留する滞留空間部76となっている。滞留空間部76は、ケース4と、ステータ2の内周面23と、ロータ3の軸方向端面34とで区画される。各流出開口75は、この滞留空間部76に開口している。
上記のように構成される回転電機1は、オイル供給装置8からロータ軸通路71の主通路部71aに冷却用のオイルが供給される。ロータ軸通路71の主通路部71aに供給されたオイルは、ロータ3及びロータ軸5の回転に伴って径方向内側から外側に向けて遠心力が作用することにより、各分岐通路部71bを介して各ロータ通路72に導かれる。このとき、ロータ軸通路71の主通路部71aのオイルは、各分岐通路部71bでロータ通路72の各径方向通路73に分岐されて導入される。
ロータ通路72の各径方向通路73に導入されたオイルは、ロータ3及びロータ軸5の回転に伴って径方向内側から外側に向けて遠心力が作用することにより、この径方向通路73の内部を径方向内側から外側に向かって導かれて流動し、永久磁石32の軸方向端部近傍を通って各流出通路74に流入した後、各流出開口75を介して滞留空間部76に流出する。この間、ロータ軸通路71の主通路部71a、分岐通路部71b、ロータ通路72の径方向通路73、流出通路74を通過するオイルは、ロータコア31や永久磁石32などの回転電機1の各部を冷却し、この結果、この回転電機1は、過剰な温度上昇が抑制される。
そして、各流出開口75を介して滞留空間部76に流出したオイルは、この滞留空間部76に一旦滞留した後に不図示の排出口から滞留空間部76の外部(例えば、ケース4の外部)に排出される。
ところで、このような回転電機1は、例えば、ロータ3の回転に伴う遠心力によりロータ通路72を径方向内側から外側に移動し流出開口75から流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込むと、回転電機1の回転効率が低下するおそれがある。すなわち、この場合、回転電機1は、ステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込んだオイルがロータ3の回転に対する抵抗として作用し、これにより、ロータ3の回転に伴うオイルの引き摺り損失や攪拌損失が増大し、この結果、回転電機1の回転効率が低下するおそれがある。
なお、本実施形態の回転電機1は、上記のようにステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込んだオイルがロータ3の回転に対する引き摺り抵抗や攪拌抵抗として作用することで摩擦熱などによりこのオイル自体が温度上昇し、これにより、回転電機1の冷却効率が悪化し、回転電機1の温度が過剰に上昇するおそれもある。回転電機1は、例えば、耐熱性の低い永久磁石32が高温になると、この永久磁石32が減磁し磁石としての特性が低下する傾向にあることから、永久磁石32の温度が過剰に上昇すると、この永久磁石32の減磁によってもモータトルクが減少しモータ効率が悪化するおそれもある。
そこで、本実施形態の回転電機1は、ステータ2の内周面23側に壁体100を設けることで、回転効率の向上を図っている。
本実施形態の壁体100は、軸方向に対してロータ3を挟むようにして一対でステータ2の内周面23側に設けられる。
各壁体100は、それぞれ円筒状に形成される。各壁体100は、円筒形の中心軸線がロータ3の回転軸線X1と一致するようにステータ2の内周面23側に設けられる。すなわち、各壁体100は、回転軸線X1と同軸の円筒状に形成される。
各壁体100は、流出開口75が設けられたロータ3の軸方向端面34と回転軸線X1に沿った方向に隣接するようにして設けられる。つまり、一方の壁体100は、ロータ3の軸方向の一方の軸方向端面34と軸方向に隣接するようにして設けられ、他方の壁体100は、ロータ3の軸方向の他方の軸方向端面34と軸方向に隣接するようにして設けられる。さらに言えば、本実施形態の各壁体100は、ステータ2のコイルエンド部24の内周面23側に設けられる。
また、各壁体100は、ステータ2の内周面23と回転軸線X1と交差する方向、ここでは回転軸線X1と直交する径方向に隣接して設けられる。そして、各壁体100は、このステータの内周面23に沿って設けられる。つまり、各壁体100は、上述したように、回転軸線X1と同軸の円筒状に形成され、ステータ2と同軸で形成される。
さらに、各壁体100は、回転軸線X1と交差する方向、ここでは回転軸線X1と直交する径方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられる。つまり、各壁体100は、各流出開口75より径方向外側に設けられる。さらに言えば、各壁体100は、径方向に対して流出開口75とステータ2の内周面23との間に設けられる。
この各壁体100は、例えば、不図示のボルトや溶接などによりステータ2の内周面23に固定されている。つまり、各壁体100は、ステータ2に対して相対回転不能に支持されている。なお、各壁体100は、例えば、ケース4に固定されていてもよい。すなわち、各壁体100は、例えば、ケース4の内壁面から回転軸線X1に沿ってロータ3の軸方向端面34に向かって突出するようにしてケース4と一体で形成されてもよい。
上記のように構成される回転電機1は、壁体100が軸方向端面34と軸方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と径方向に隣接してこのステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、この壁体100が径方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられることから、流出開口75から流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込むことを壁体100によって抑制することができるので、回転効率を向上することができる。すなわち、回転電機1は、流出開口75から流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込むことを壁体100によって抑制することができるので、オイルがロータ3の回転に対する抵抗として作用することを抑制することができ、ロータ3の回転に伴うオイルの引き摺り損失や攪拌損失が増大することを抑制することができる。また、回転電機1は、ロータ3とオイルとの接触部の外径が壁体100によって相対的に小さくなることから、この結果、ロータ3の外径側のオイルとの接触部分の周速度を相対的に抑制することができるので、これによってもロータ3の回転に伴うオイルの攪拌損失を抑制することができる。
また、本実施形態の回転電機1は、流出開口75から流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込むことを壁体100によって抑制することができるので、オイルがロータ3の回転に対する引き摺り抵抗や攪拌抵抗として作用することによる摩擦熱などの発熱を抑制することができる。これにより、回転電機1は、オイルがロータ3の回転に対する引き摺り抵抗や攪拌抵抗として作用することによる発熱を抑制することができることから、オイル自体の温度上昇を抑制することができ、回転電機1の冷却効率が悪化することを抑制することができ、回転電機1の温度が過剰に上昇することを確実に抑制することができる。この結果、回転電機1は、回転電機1の冷却効率が悪化することを抑制することができ、回転電機1の温度が過剰に上昇することを確実に抑制することができるので、耐熱性の低い永久磁石32が高温となることを防止することができ、永久磁石32の減磁を抑制することができ、永久磁石32の磁石としての特性が低下することを抑制することができる。したがって、回転電機1は、永久磁石32の磁石としての特性が低下することを抑制することができるので、モータトルクが減少しモータ効率が悪化することを抑制することができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係る回転電機1によれば、筒状に形成されるステータ2と、ステータ2の内周面23側に回転軸線X1を中心として回転自在に設けられるロータ3と、ロータ3に回転軸線X1と交差する方向(径方向)に沿って設けられ内部をオイルが流動可能であると共にロータ3の回転軸線X1に沿った方向(軸方向)の軸方向端面34にこのオイルが流出可能な流出開口75を有するロータ通路72と、流出開口75が設けられたロータ3の軸方向端面34と回転軸線X1に沿った方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と回転軸線X1と交差する方向に隣接してステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、回転軸線X1と交差する方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられる壁体100とを備える。
したがって、回転電機1は、壁体100が軸方向端面34と軸方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と径方向に隣接してこのステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、径方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられることから、壁体100によって流出開口75から流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込むことを抑制することができるので、回転効率を向上することができる。
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2に係る回転電機の模式的な概略構成図である。実施形態2に係る回転電機は、実施形態1に係る回転電機と略同様の構成であるが壁体の設置位置が実施形態1に係る回転電機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の回転電機201は、図2に示すように、ステータ2の内周面23側に壁体200を設けることで、回転効率の向上を図っている。各壁体200は、流出開口75が設けられたロータ3の軸方向端面34と回転軸線X1に沿った方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と回転軸線X1と交差する方向に隣接してステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、回転軸線X1と交差する方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられる。
そして、本実施形態の壁体200は、回転軸線X1に沿った方向、ここでは軸方向に対して一部がロータ3と重なるような設置位置に設けられている。
具体的には、本実施形態のロータ3は、壁体収容凹部235を有している。壁体収容凹部235は、流出開口75が設けられたロータ3の軸方向端面34の縁部に回転軸線X1に沿った方向、すなわち、軸方向に窪んだ部分、言い換えれば、切り欠き部分として形成される。すなわち、壁体収容凹部235は、ロータ3の軸方向端面34の縁部にロータ3の周方向に沿った円環状の凹部として形成される。
壁体200は、回転軸線X1に沿った方向の一方の端部200aが壁体収容凹部235内に収容され他方の端部200bが軸方向端面34から回転軸線X1に沿った方向に突出するようにして配置される。
この結果、回転電機201は、壁体200の一部が軸方向に対してロータ3と重なる構成となる。すなわち、回転電機201は、壁体200とロータ3とが軸方向に沿ってオーバーラップした部分(オーバーラップ部)を有することとなる。
上記のように構成される回転電機201は、回転軸線X1に沿った方向に対して壁体200の一部がロータ3と重なるので、ロータ3の回転に伴う遠心力によるオイルの加速方向すなわち径方向に対して、軸方向端面34の縁部と壁体200との隙間がほぼ垂直に形成されることとなる。この結果、回転電機201は、壁体200にオイルが衝突することで流出開口75から流出したオイルの速度を低下することができると共に、ロータ3の軸方向端面34の縁部と壁体200との隙間を介してステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間にオイルが入り込むことを確実に抑制することができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係る回転電機201によれば、回転電機201は、壁体200が軸方向端面34と軸方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と径方向に隣接してこのステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、径方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられることから、壁体200によって流出開口75から流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込むことを抑制することができるので、回転効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る回転電機201によれば、壁体200は、回転軸線X1に沿った方向(軸方向)に対して一部がロータ3と重なる。したがって、回転電機201は、回転軸線X1に沿った方向に対して壁体200の一部がロータ3と重なることから、壁体200にオイルが衝突することで流出開口75から流出したオイルの速度を大幅に低下することができると共に、ロータ3の軸方向端面34の縁部と壁体200との隙間を介してステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間にオイルが入り込むことを確実に抑制することができる。
(実施形態3)
図3は、本発明の実施形態3に係る回転電機の模式的な概略構成図である。実施形態3に係る回転電機は、実施形態1に係る回転電機と略同様の構成であるが媒体通路の構成が実施形態1に係る回転電機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の回転電機301は、図3に示すように、ステータ2の内周面23側に壁体100を設けることで、回転効率の向上を図っている。各壁体100は、流出開口75が設けられたロータ3の軸方向端面34と回転軸線X1に沿った方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と回転軸線X1と交差する方向に隣接してステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、回転軸線X1と交差する方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられる。
そして、本実施形態の媒体通路としてのロータ通路72は、本発明の湾曲部としての流出通路374を有している。
流出通路374は、径方向通路73に対応して複数設けられる。各流出通路374は、一方の端部がロータ3の軸方向端面34で開口する一方、他方の端部がそれぞれ対応する径方向通路73と連通する。つまり、各流出通路374は、ロータ3の軸方向端面34にオイルが流出可能な流出開口75を有する。
そして、流出通路374は、ロータ通路72において、この流出開口75側に設けられる本発明の湾曲部である。湾曲部としての流出通路374は、ロータ通路72において、回転軸線X1と交差する方向に対してステータ2の内周面23側にいくほど徐々に軸方向端面34側に向かって湾曲する部分である。つまり、流出通路374は、ロータ通路72の流出開口75近傍にて、径方向内側から径方向外側にいくほど徐々に軸方向端面34側に向かって湾曲する部分である。さらに言い換えれば、ロータ通路72は、流出通路374において、径方向内側から径方向外側にいくほど軸方向端面34からの深さ(軸方向に沿った軸方向端面34からの距離)が徐々に浅くなるように形成されている。
上記のように構成される回転電機301は、ロータ通路72が流出開口75側に設けられる湾曲部であって径方向に対してステータ2の内周面23側にいくほど徐々に軸方向端面34側に向かって湾曲する湾曲部としての流出通路374を有することから、ロータ通路72を流動するオイルがこの湾曲部としての流出通路374により案内されて流出開口75から流出されステータ2の軸方向端部側に向けて放出されるので、流出したオイルを滞留空間部76内にたまりにくくすることができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係る回転電機301によれば、回転電機301は、壁体100が軸方向端面34と軸方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と径方向に隣接してこのステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、径方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられることから、壁体100によって流出開口75から流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込むことを抑制することができるので、回転効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る回転電機301によれば、ロータ通路72は、流出開口75側に設けられる流出通路374であって回転軸線X1と交差する方向(径方向)に対してステータ2の内周面23側にいくほど徐々に軸方向端面34側に向かって湾曲する流出通路374を有する。したがって、回転電機301は、ロータ通路72がステータ2の内周面23側にいくほど徐々に軸方向端面34側に向かって湾曲する流出通路374を有することから、ロータ通路72を流動するオイルが流出通路374により案内されて流出開口75からステータ2の軸方向端部側に向けて放出されるので、流出したオイルが滞留空間部76内にたまりにくくすることができ、この結果、ロータ3の回転に伴うオイルの引き摺り損失や攪拌損失をさらに抑制することができ、ステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間にオイルが入り込むことを確実に抑制することができる。
(実施形態4)
図4は、本発明の実施形態4に係る回転電機の模式的な概略構成図である。実施形態4に係る回転電機は、実施形態2、3に係る回転電機と略同様の構成であるが壁体が傾斜部を有する点で実施形態2、3に係る回転電機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の回転電機401は、図4に示すように、ステータ2の内周面23側に壁体400を設けることで、回転効率の向上を図っている。各壁体400は、流出開口75が設けられたロータ3の軸方向端面34と回転軸線X1に沿った方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と回転軸線X1と交差する方向に隣接してステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、回転軸線X1と交差する方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられる。
そして、本実施形態の壁体400は、実施形態2の壁体200(図2参照)と同様に、回転軸線X1に沿った方向、ここでは軸方向に対して一部がロータ3と重なるような設置位置に設けられている。つまり、本実施形態のロータ3は、壁体収容凹部235を有し、各壁体400は、回転軸線X1に沿った方向の一方の端部400aが壁体収容凹部235内に収容され他方の端部400bが軸方向端面34から回転軸線X1に沿った方向に突出するようにして配置される。
また、本実施形態の媒体通路としてのロータ通路72は、実施形態3のロータ通路72(図3参照)と同様に、本発明の湾曲部としての流出通路374を有している。
そして、本実施形態の壁体400は、さらに傾斜部400cを有する。傾斜部400cは、壁体400の流出開口75側の面に設けられる傾斜部分であり、すなわち、壁体400の流出開口75側の面において、ステータ2の回転軸線X1に沿った方向の端部に向かって傾斜した部分である。つまり、傾斜部400cは、壁体400の流出開口75側の面である壁体400の内周面に、ステータ2の軸方向端部に向かって傾斜するようにして形成される。
さらに言えば、壁体400は、外径が軸方向に沿ってほぼ一定に設定される一方、内径が傾斜部400cにおいてステータ2の軸方向端部側に行くにしたがって、徐々に大きくなるように設定される。言い換えれば、傾斜部400cは、壁体400の軸方向外側端部(ロータ3側とは反対側の端部)において、壁体400の内周面に沿って円環状のテーパ部として形成される。
上記のように構成される回転電機401は、壁体400が流出開口75側の面にステータ2の回転軸線X1に沿った方向(軸方向)の端部に向かって傾斜する傾斜部400cを有することから、ロータ通路72を流動し流出通路374により案内されて流出開口75からステータ2の軸方向端部側に向けて放出されるオイルをさらに壁体400の傾斜部400cによりステータ2の軸方向端部側に向けて案内することができるので、流出したオイルを確実に滞留空間部76内にたまりにくくすることができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係る回転電機401によれば、回転電機401は、壁体400が軸方向端面34と軸方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と径方向に隣接してこのステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、径方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられることから、壁体400によって流出開口75から流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込むことを抑制することができるので、回転効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る回転電機401によれば、壁体400は、流出開口75側の面にステータ2の回転軸線X1に沿った方向の端部に向かって傾斜する傾斜部400cを有する。したがって、回転電機401は、壁体400が流出開口75側の面にステータ2の軸方向端部に向かって傾斜する傾斜部400cを有することから、流出開口75から放出されるオイルを壁体400の傾斜部400cによりステータ2の軸方向端部側に向けて案内することができるので、流出したオイルを滞留空間部76内にたまりにくくすることができ、この結果、ロータ3の回転に伴うオイルの引き摺り損失や攪拌損失をさらに抑制することができ、ステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間にオイルが入り込むことを確実に抑制することができる。
(実施形態5)
図5は、本発明の実施形態5に係る回転電機の模式的な概略構成図である。実施形態5に係る回転電機は、実施形態1に係る回転電機と略同様の構成であるがブレードを有する点で実施形態1に係る回転電機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の回転電機501は、図5に示すように、ステータ2の内周面23側に壁体100を設けることで、回転効率の向上を図っている。各壁体100は、流出開口75が設けられたロータ3の軸方向端面34と回転軸線X1に沿った方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と回転軸線X1と交差する方向に隣接してステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、回転軸線X1と交差する方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられる。
そして、本実施形態のロータ3は、複数のブレード(羽根)536が設けられる。
各ブレード536は、それぞれ軸方向に沿って設けられる。複数のブレード536は、流出開口75が設けられた軸方向端面34の縁部に設けられる。複数のブレード536は、軸方向端面34の流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられる。すなわち、複数のブレード536は、軸方向端面34の流出開口75の径方向外側に設けられる。つまり、本実施形態の回転電機501は、径方向内側から外側に向かって流出開口75、複数のブレード536、壁体100の順で設けられている。複数のブレード536は、回転軸線X1周り方向、すなわち、ロータ3の周方向に沿って等間隔で設けられる。
上記のように構成される回転電機501は、ロータ3に複数のブレード536が設けられることから、ロータ3の回転に伴って複数のブレード536が周方向に沿って回転することで、流出開口75から放出されるオイルをこの回転する複数のブレード536の作用によりステータ2の軸方向端部側に向けて飛び散らすことができるので、流出したオイルを滞留空間部76内にたまりにくくすることができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係る回転電機501によれば、回転電機501は、壁体100が軸方向端面34と軸方向に隣接し、かつ、ステータ2の内周面23と径方向に隣接してこのステータ2の内周面23に沿って設けられると共に、径方向に対して流出開口75よりステータ2の内周面23側に設けられることから、壁体100によって流出開口75から流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間に入り込むことを抑制することができるので、回転効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る回転電機501によれば、ロータ3は、流出開口75が設けられた軸方向端面34の流出開口75よりステータ2の内周面23側に回転軸線X1周り方向に沿って複数のブレード536が設けられる。したがって、回転電機501は、ロータ3に複数のブレード536が設けられることから、ロータ3の回転に伴って複数のブレード536が回転軸線X1周り方向に沿って回転することで、流出開口75から放出されるオイルをこの回転する複数のブレード536の作用によりステータ2の軸方向端部側に向けて飛び散らすことができるので、流出したオイルを滞留空間部76内にたまりにくくすることができ、この結果、ロータ3の回転に伴うオイルの引き摺り損失や攪拌損失をさらに抑制することができ、ステータ2の内周面23とロータ3の外周面33との間にオイルが入り込むことを確実に抑制することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る回転電機は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係る回転電機は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
以上の説明では、回転電機は、例えば、ハイブリッド車両、電気車両、燃料電池車両などの車両を駆動するための駆動装置に主として走行用回転電機として用いられるものとして説明したが、これに限らず、車両の作業用回転電機や補機用回転電機などとして適用してもよいし、車両に限らず他の装置の電動機として適用してもよい。また、本発明に係る回転電機は、発電機として用いられてもよい。