JP5417470B2 - ダイナミックコンパレータのためのオフセット電圧補正回路とそれを用いたダイナミックコンパレータ回路 - Google Patents

ダイナミックコンパレータのためのオフセット電圧補正回路とそれを用いたダイナミックコンパレータ回路 Download PDF

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本発明は、ラッチを有するコンパレータであるダイナミックコンパレータのためのオフセット電圧補正回路とそれを備えたダイナミックコンパレータ回路に関する。
LSI(Large Scaled Integrated circuit)の超低消費電力化を実現するためにMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のサブスレッショルド領域動作を利用したサブスレッショルドLSIが注目されている。しかし、この設計手法は発展の初期段階にあるため超低消費電力回路の設計技術の確立が強く求められる。これまで、超低電力LSIを実現するために様々な研究が行われてきた。
アナログ回路の最も基本的な要素回路の一つであるダイナミックコンパレータ回路は、ADコンバータやセンスアンプ回路などの性能を決定する重要な要素回路の一つである。ダイナミックコンパレータに入力オフセット電圧が存在すると、基準電圧よりも入力オフセット電圧分だけずれた電圧で比較動作が行われ、変換精度が劣化する。ダイナミックコンパレータのオフセット電圧を補正する手法として、電流源を用いる手法(例えば、非特許文献1参照)や、プリアンプを用いる手法(例えば、非特許文献2参照)などが存在する。
特開2010−200302号公報
J. E. Proesel et al., "A 20-Gb/s, 0.66-pJ/bit Serial Receiver with 2-Stage Continuous-Time Linear Equalizer and 1-Tap Decision Feedback Equalizer in 45nm SOI CMOS," IEEE VLSI Symposium, pp. 206-207, June 2011. S. Kwon et al., "A 1.2V, 3.5uW, 2MS/s, 8-bit Comparator with Dynamic-Biasing Preamplifier," IEEE International Symposium on Circuits and Systems, pp. 21-24, June 2011. T. Kobayashi, et al., "A current controlled latch sense amplifier and a static power-saving input buffer for low-power architecture," IEEE JSSC, vol. 28, pp. 523-527, April 1993.
しかしながら、電流源を用いる手法では定常的な消費電流が発生する問題がある。また、プリアンプを用いる手法は、ダイナミックコンパレータを構成するためのプリアンプが必要となり、回路面積、消費電力の増大を招く問題がある。
図1は従来技術に係るダイナミックコンパレータのシンボル図である。図1及びそれ以降の図面において、21,22は差動信号の入力端子であり、23はクロックの入力端子であり、24,25は差動信号の出力端子である。図1において、クロックCLKが入力されることでダイナミックコンパレータ10は動作を開始する。ダイナミックコンパレータ10は、定常的な電流を消費しないため、低電力特性を実現することができる。
図2Aは従来技術に係るダイナミックコンパレータのための第1のオフセット電圧補正方法を示すブロック図であり、図2Bは従来技術に係るダイナミックコンパレータのための第2のオフセット電圧補正方法を示すブロック図である。図2A及び図2Bに示すように、オフセット電圧補正回路11,12をダイナミックコンパレータ10の内部ノード(図2A)、もしくは出力ノードに接続して(図2B)入力オフセット電圧を補正する。
図3は非特許文献1で開示された電流補正されたダイナミックコンパレータ回路の構成を示す回路図であり、ダイナミックコンパレータ10として、非特許文献3に開示された回路を用いる。図3において、ダイナミックコンパレータ回路は、
(a)PMOSトランジスタMP3及びNMOSトランジスタMN4とからなるインバータ41と、PMOSトランジスタMP4及びNMOSトランジスタMN5とからなるインバータ42とを備えたインバータラッチ40と、
(b)入力端子21,22に接続された1対のNMOSトランジスタMN2,MN3からなる差動対43と、
(c)電流源26及びMOSトランジスタMN21,MN22を含むバイアス電流発生回路44と、
(d)電流源27及びMOSトランジスタMN11,MN12を含むバイアス電流発生回路45と、
(e)クロックCLKに応答して動作状態を切り替えるNMOSトランジスタMN1,MN6,MN13,MN23とPMOSトランジスタMP5,MP6,MP7,MP8を含む回路とを備えて構成される。
図3のダイナミックコンパレータ回路において、ダイナミックコンパレータ10の内部ノードN1,N2(インバータラッチ40と差動対43との1対の接続点)から電流を取り出すことでコンパレータ10のオフセット電圧を補正する。ダイナミックコンパレータ自身の消費する電力はクロックによって制御されるため定常的な電流を消費することはない。しかし、オフセット電圧補正のための電流源回路が必要となるため電力が増大する問題があった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して、ダイナミックコンパレータにおいてオフセット電圧補正のための消費電力を大幅に低減することができるオフセット電圧補正回路とそれを用いたダイナミックコンパレータ回路を提供することにある。
第1の発明に係るダイナミックコンパレータのためのオフセット電圧補正回路は、ラッチを有するダイナミックコンパレータのためのオフセット電圧補正回路において、
上記ダイナミックコンパレータの1対の差動出力端子又は1対の差動内部ノードにそれぞれ接続され、互いに接続された複数の遅延素子をそれぞれ備えた1対の遅延素子回路と、
上記1対の遅延素子回路の各遅延素子を動作させて上記ダイナミックコンパレータから動作電流を引き抜くことにより、上記ダイナミックコンパレータのオフセット電圧を補正し、動作する上記1対の遅延素子回路の遅延素子の数を変化させることにより、上記ダイナミックコンパレータのオフセット電圧を変化させる制御回路とを備えたことを特徴とする。
上記オフセット電圧補正回路において、上記制御回路は、上記ダイナミックコンパレータのオフセット電圧が実質的に小さくなるように、上記1対の遅延素子回路の遅延素子の数を変化させることを特徴とする。
また、上記オフセット電圧補正回路において、上記制御回路は、上記ダイナミックコンパレータの1対の出力端子からの出力信号の論理値に基づいて、上記1対の遅延素子回路のうちいずれの遅延素子回路を動作させるかを設定した後、当該動作させた遅延素子回路の遅延素子の数を設定することを特徴とする。
さらに、上記オフセット電圧補正回路において、上記1対の遅延素子回路の各遅延素子を並列に接続したことを特徴とする。
とって代わって、上記オフセット電圧補正回路において、上記1対の遅延素子回路の各遅延素子を縦続に接続したことを特徴とする。
第2の発明に係るダイナミックコンパレータ回路は、ラッチを有するダイナミックコンパレータを備えたダイナミックコンパレータ回路であって、上記オフセット電圧補正回路を備えたことを特徴とする。
本発明に係るオフセット電圧補正回路とそれを用いたダイナミックコンパレータ回路によれば、上記ダイナミックコンパレータの1対の差動出力端子又は1対の差動内部ノードにそれぞれ接続され、互いに接続された複数の遅延素子をそれぞれ備えた1対の遅延素子回路と、上記1対の遅延素子回路の各遅延素子を動作させて上記ダイナミックコンパレータから動作電流を引き抜くことにより、上記ダイナミックコンパレータのオフセット電圧を補正し、動作する上記1対の遅延素子回路の遅延素子の数を変化させることにより、極めて簡単な構成でオフセット電圧補正回路を構成でき、従来技術に比較して、ダイナミックコンパレータにおいてオフセット電圧補正のための消費電力を大幅に低減することができる。
従来技術に係るダイナミックコンパレータのシンボル図である。 従来技術に係るダイナミックコンパレータのための第1のオフセット電圧補正方法を示すブロック図である。 従来技術に係るダイナミックコンパレータのための第2のオフセット電圧補正方法を示すブロック図である。 非特許文献1で開示された電流補正されたダイナミックコンパレータ回路の構成を示す回路図である。 本発明の第1の実施形態に係る遅延素子回路31,32を備えたダイナミックコンパレータ回路の構成を示す回路図である。 本発明の第2の実施形態に係る遅延素子回路31,32を備えたダイナミックコンパレータ回路の構成を示す回路図である。 図4及び図5の遅延素子回路31,32の第1の実施例である並列接続された遅延素子30−1〜30−Nを備えた遅延素子回路の構成を示す回路図である。 図4及び図5の遅延素子回路31,32の第2の実施例である縦続接続された遅延素子30−1〜30−Nを備えた遅延素子回路の構成を示す回路図である。 図6の遅延素子回路の場合においてクロックCLKの立ち上がり時の1個のインバータの動作電流Iins及び並列接続されたインバータの動作電流(時間平均値)Iaveを示すイメージ図である。 図7の遅延素子回路の場合においてクロックCLKの立ち上がり時の1個のインバータの動作電流Iins及び縦続接続されたインバータの動作電流(時間平均値)Iaveを示すイメージ図である。 図5のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の構成を示すブロック図である。 図10の遅延素子回路群31A,32Aの構成を示すブロック図である。 図11の遅延素子回路44の構成を示す回路図である。 図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示す各信号のタイミングチャートである。 初期化状態の図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示すブロック図である。 第1の動作状態の図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示すブロック図である。 第2の動作状態の図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示すブロック図である。 第3の動作状態の図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示すブロック図である。 第4の動作状態の図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示すブロック図である。 第5の動作状態の図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示すブロック図である。 第2の実施例に係る縦続接続された遅延素子回路40〜45を備えた遅延素子回路群31A,32Aの構成を示すブロック図である。 図15の遅延素子回路41の構成を示す回路図である。 図5のダイナミックコンパレータ回路のシミュレーション結果であって、動作インバータ数に対する補正オフセット電圧を示すグラフである。 図4のダイナミックコンパレータ回路のシミュレーション結果であって、動作インバータ数に対する補正オフセット電圧を示すグラフである。 図4及び図5の実施形態であって、それぞれ第1の実施例に係る並列接続型及び第2の実施例に係る縦続接続型のダイナミックコンパレータ回路の仕様諸元を示す表である。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。本願明細書等において、MOS電界効果トランジスタをMOSトランジスタと略し、PチャンネルMOSトランジスタをPMOSトランジスタといい、NチャンネルMOSトランジスタをNMOSトランジスタという。
本発明に係る実施形態では、ディジタル回路から構成される遅延素子を用いたコンパレータのオフセット電圧補正手法を提案する。提案する回路は、ラッチを有するコンパレータであるダイナミックコンパレータ10動作時に複数の遅延素子を動作させ、複数の遅延素子による動作電流によりオフセット電圧を補正することを特徴としている。具体的には、提案する回路は、ダイナミックコンパレータ10の1対の差動出力端子24,25又は1対の差動内部ノードN1,N2にそれぞれ複数の遅延素子からなる遅延素子回路31,32を接続することでオフセット電圧の補正を行う。ダイナミックコンパレータ10にクロックCLKを入力すると同時に当該複数の遅延素子を動作させ、複数の遅延素子を並列、又は逐次的に動作させてコンパレータのオフセット電圧を補正する。なお、本実施形態においては、各回路に供給する電流はナノアンペアオーダーであって、各回路をサブスレッショルド領域で動作させ、これにより、消費電力を大幅に低減させる。
図4は本発明の第1の実施形態に係る遅延素子回路31,32を備えたダイナミックコンパレータ回路の構成を示す回路図である。また、図5は本発明の第2の実施形態に係る遅延素子回路31,32を備えたダイナミックコンパレータ回路の構成を示す回路図である。
図4の第1の実施形態に係るダイナミックコンパレータ回路は、ラッチ型ダイナミックコンパレータの内部ノードN1,N2にそれぞれ、複数の遅延素子からなる遅延素子回路31,32を接続して構成する。また、図5は出力端子24,25に複数の遅延素子からなる遅延素子回路31,32を接続して構成する。ここで、ダイナミックコンパレータ回路は、
(a)PMOSトランジスタMP3及びNMOSトランジスタMN4とからなるインバータ41と、PMOSトランジスタMP4及びNMOSトランジスタMN5とからなるインバータ42とを備えたインバータラッチ40と、
(b)入力端子21,22に接続された1対のNMOSトランジスタMN2,MN3からなる差動対43と、
(c)遅延素子回路31を含むバイアス電流発生回路44aと、
(d)遅延素子回路32を含むバイアス電流発生回路45aと、
(e)クロックCLKに応答して動作状態を切り替えるNMOSトランジスタMN1,MN4と、クロックCLKに応答して出力電圧又は内部ノードN1,N2の電圧をリセットするPMOSトランジスタMP5,MP6,MP7,MP8とを含む回路とを備えて構成される。
図4及び図5において、ダイナミックコンパレータに入力されたクロックCLKが立ち上がると、ダイナミックコンパレータが動作を開始する。本実施形態に係る回路では、それと同時に遅延素子回路31,32内の各遅延素子を動作させる。各遅延素子が動作すると電流が流れる。各遅延素子の電源を、ダイナミックコンパレータの出力端子24,25又は内部ノードN1,N2とすることで、ダイナミックコンパレータから電流を引き抜き、オフセット電圧の補正を行うことができる。ここで、遅延素子として、例えばインバータ等である。
次いで、図4及び図5のダイナミックコンパレータ回路の動作について以下に説明する。
(1)クロックCLKの立ち下がり時:
クロックCLKがローレベルのとき、NMOSトランジスタMN1はオフとなり、ダイナミックコンパレータの比較動作は行われない。また、PMOSトランジスタMP5、MP6、MP7、MP8がオンとなり、ダイナミックコンパレータ内のインバータラッチ40と内部ノードN1,N2は電源電圧VDDまで充電される。
(2)クロックCLKの立ち上がり時:
クロックCLKの立ち上がりのとき、NMOSトランジスタMN1はオンとなり、ダイナミックコンパレータは差動入力電圧の比較動作を行う。なお、PMOSトランジスタMP5〜MP8はオフとなっていて回路動作に影響を与えない。入力端子21,22に入力された差動電圧の差により、インバータラッチ40に当該電位差が入力される。この電位差を、インバータラッチ40で増幅し、ハイレベル又はローレベルの信号を、出力端子24,25を介して出力する。
本実施形態に係るダイナミックコンパレータ回路では、ダイナミックコンパレータの動作時に遅延素子回路31,32内の複数の遅延素子が動作する。各遅延素子を流れる電流は、出力端子24,25もしくは内部ノードN1,N2から電流を引き抜く。ここで、動作させる遅延素子の数を制御することによりダイナミックコンパレータのオフセット電圧を補正することができる。
図6は図4及び図5の遅延素子回路31,32の第1の実施例である並列接続された遅延素子30−1〜30−Nを備えた遅延素子回路の構成を示す回路図である。また、図7は図4及び図5の遅延素子回路31,32の第2の実施例である縦続接続された遅延素子30−1〜30−Nを備えた遅延素子回路の構成を示す回路図である。なお、図6及び図7において、28は当該回路の出力端子であり、特に、負荷を接続していない。
本実施形態では、遅延素子としてインバータを使用した場合を考える。インバータ30−1〜30−Nの接続方法として、図6のようにインバータ30−1〜30−Nを並列に接続して並列駆動させる方法と、図7のようにインバータ30−1〜30−Nを縦続に接続してインバータチェーンを構成し、各インバータ30−1〜30−Nを逐次に駆動させる方法が考えられる。図6の構成では、並列動作するインバータ数を制御することで、補正するオフセット電圧を制御することができる。また、図7の構成では、逐次動作させるインバータ数(インバータチェーンの段数)を制御することで補正するオフセット電圧を制御することができる。
図8は図6の遅延素子回路の場合においてクロックCLKの立ち上がり時の1個のインバータの動作電流Iins及び並列接続されたインバータの動作電流(時間平均値)Iaveを示すイメージ図である。また、図9は図7の遅延素子回路の場合においてクロックCLKの立ち上がり時の1個のインバータの動作電流Iins及び縦続接続されたインバータの動作電流(時間平均値)Iaveを示すイメージ図である。
図8の電流のイメージ図から明らかなように、すべてのインバータ30−1〜30−Nが同時に動作するため、動作するインバータ数を制御することで、インバータ30−1〜30−Nを流れる合計の電流量を制御することが可能である。また、図7の構成では、動作するインバータチェーンの段数を制御することで補正するオフセット電圧を制御することができる。図9の電流のイメージ図から明らかなように、インバータ30−1〜30−Nが逐次的に動作するため、動作するインバータ数を制御すると、インバータ30−1〜30−Nにより電流を引き抜く時間を制御することが可能である。
次いで、以上のように構成されたダイナミックコンパレータ回路のためのオフセット電圧補正用制御部50について以下に説明する。当該制御部50では、ダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正回路のための具体的な制御方法を示す。
図10は図5のダイナミックコンパレータ回路のオフセット電圧補正用制御部50の構成を示すブロック図である。なお、図10は図5のダイナミックコンパレータ回路のオフセット電圧補正用制御部50の構成を示すが、図4のダイナミックコンパレータ回路のために同様にオフセット電圧補正用制御部50を構成してもよい。図10において、ダイナミックコンパレータ回路は、
(a)ダイナミックコンパレータ10と、
(b)オフセット電圧補正回路であり、それぞれ複数の遅延素子回路を備えて構成される遅延素子回路群31A,32Aとに加えて、
(c)オフセット電圧補正用制御部50とを備えて構成される。
ここで、オフセット電圧補正用制御部50は、
(c1)それぞれコントロールロジックにてなる制御回路33,34と、
(c2)複数のレジスタDL,DR,D0〜DN−1からなるレジスタ回路35とを備えて構成される。
当該制御部50において、レジスタDL,DRによりダイナミックコンパレータ10の出力端子24,25に接続されたどちらの遅延素子回路群31A,32Aを動作させるかの選択動作を指示し、また、レジスタD0〜DN−1からの出力信号(以下それぞれ、制御信号D0〜DN−1という。)に基づいて動作させる遅延素子数の制御を行う。
図11は図10の遅延素子回路群31A,32Aの構成を示すブロック図である。図11において、遅延素子回路群31A,32Aは、複数の遅延素子を並列接続した遅延素子回路40〜45を複数個備える。ここでは、6個のレジスタからの6ビットの制御信号を用いて6個の遅延素子回路40〜45の動作を制御する。ここで、遅延素子回路40〜45は以下のように構成される。
(a)遅延素子回路40は、32個の遅延素子が並列に接続されて構成された回路(DEP×32)である。
(b)遅延素子回路41は、16個の遅延素子が並列に接続されて構成された回路(DEP×16)である。
(c)遅延素子回路42は、8個の遅延素子が並列に接続されて構成された回路(DEP×8)である。
(d)遅延素子回路43は、4個の遅延素子が並列に接続されて構成された回路(DEP×4)である。
(e)遅延素子回路44は、2個の遅延素子が並列に接続されて構成された回路(DEP×2)である。
(f)遅延素子回路45は、1個の遅延素子のみで構成された回路(DEP×1)である。
図11において、6ビットのレジスタ信号D0、D1、D2、D3、D4、D5を用いて、64通りの接続構成を実現することができる。すなわち、レジスタD0〜D5を用いて、6個の遅延素子回路(DEP×32〜DEP〜1)40〜45の各ブロックを動作させる、もしくは動作させないことを制御し、64通りの構成を実現する。
図12は図11の遅延素子回路44の構成を示す回路図である。図12において、図11の遅延素子回路44は、2個の遅延素子を並列接続した遅延素子回路(DEP×2)の回路構成を有し、遅延素子としてインバータ30−1,30−32を用いた場合を示している。当該遅延素子回路44は、上記インバータ30−1,30−32のほかに、
(a)PMOSトランジスタMP31及びNMOSトランジスタMN31を有する転送ゲート37と、
(b)レジスタD4からの制御信号D4を反転するインバータ36と、
(c)インバータ36からの出力信号に基づいてオン・オフするNMOSトランジスタMN32と
をさらに備えて構成される。
図12の遅延素子回路44において、制御信号D4がハイレベルのとき転送ゲート37が開き、インバータ30−1,30−2にはクロック信号CLKが入力され、当該クロック信号CLKがインバータ30−1,30−2を伝搬するときに、端子VHに接続された回路から電流を引き抜く。一方、制御信号D4がローレベルのとき、インバータ30−1,30−2にはクロック信号CLKが入力されず、インバータ30−1,30−2は動作せず、電流の引き抜き動作は発生しない。このように、制御信号D0〜D5を用いることで動作させる、インバータ30−1,30−2,…,30−(N−1)のうちの動作数を制御することができる。
次いで、図10の制御回路33,34によるオフセット電圧補正用制御部50の動作について図13、図14A〜図14Fを参照して以下に説明する。オフセット電圧を補正する際、入力端子21,22には参照電圧VREFが入力される。
図13は図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示す各信号のタイミングチャートである。また、図14Aは初期化状態の図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示すブロック図であり、図14B〜図14Fはそれぞれ、各動作状態の図10のダイナミックコンパレータ回路10のオフセット電圧補正用制御部50の動作を示すブロック図である。当該オフセット電圧補正用制御部50の動作は、以下の通りである。
(1)ハイパルスのリセット信号RSTにより、各レジスタD0〜DN−1のレジスタ値を0に初期化する。
(2)校正イネーブル信号ENCAL信号がハイレベルのときに、各レジスタD0〜DN−1に対して所定のレジスタ値の設定を行う。
(2−1)クロック信号CLKを入力し、出力電圧OUT+の出力端子24と、出力電圧OUT−の出力端子25に接続された遅延素子回路群31A,32Aのうち、どちらを動作させるかを設定する。レジスタDLとDRは、これらのデータを記憶する。
(2−2)各レジスタD0−DN−1のレジスタ値を決定し、すなわち、動作させる遅延素子の数を決定する。
当該オフセット電圧補正用制御部50の動作の詳細を、図14A〜図14Fを用いて以下説明する。
図14Aに、RST直後の動作状態を示す。コンパレータはリセットされ、出力電圧OUT−,OUT+はどちらも1に初期化される。また、各レジスタD0〜DN−1のレジスタ値はすべて0に初期化される。次いで、校正イネーブル信号ENCALがハイレベルに立ち上がり、クロック信号CLKが入力されるとダイナミックコンパレータ10が動作する。このとき、オフセット電圧の影響によりダイナミックコンパレータ10は論理値0もしくは1を出力する。制御回路33は当該論理値をモニタし、出力端子24,25に接続された遅延素子回路群31A,32Aのどちらを動作させるかを決定する。図14Bに示す通り、出力電圧OUT−の論理値が1であり、出力電圧OUT+の論理値が0の場合を考える。出力電圧OUT−の論理値が1であるため、出力端子25に接続された遅延素子回路群31Aを動作させる。この指示データをレジスタDLとDRで記憶する(図14C)。
次に、遅延素子回路群31Aにおいて動作させる遅延素子の数、すなわち、遅延素子回路(40〜45のうちの1つ)を設定する。図14Dに示す通り、最初にレジスタD0に1を設定する。この状態でダイナミックコンパレータ10を動作させることは、補正に必要な遅延素子の数が、32個以上であるか、もしくは32個以下であるかを判定するためである。出力電圧OUT−、OUT+の論理値がそれぞれ(1,0)の場合、レジスタD0に1を設定する(図14D)。このことは、動作させる遅延素子の数が少ないことを表している。一方、出力電圧OUT−、OUT+の論理値がそれぞれ(0,1)に変化した場合、レジスタD0に0を設定する。このことは、動作させる遅延素子の数が多すぎることを表している。
次に、レジスタD1のレジスタ値を設定する。上述と同様に、最初にレジスタD1に1を設定する。出力電圧OUT−,OUT+の論理値がそれぞれ(1,0)の場合、動作させる遅延素子の数が少ないため、レジスタD1に1を設定する(図14E)。出力電圧OUT−,OUT+の論理値がそれぞれ(0,1)に変化した場合、動作させる遅延素子の数が多いため、レジスタD1に0を設定する(図14F)。
以上の動作を、すべてのレジスタD2,D3,…,DN−1に対して行ってレジスタ値を設定する。これらのレジスタ値を調整することにより、オフセット電圧が実質的に十分に小さくなるように制御することが可能となり、オフセット電圧補正を行うことができる。
図15は第2の実施例に係る縦続接続された遅延素子回路40〜45を備えた遅延素子回路群31A,32Aの構成を示すブロック図である。図15の遅延素子回路群31A,32Aは、上述と同様に、32、16、8、4、2、1個の遅延素子がそれぞれ直列に接続された各遅延素子回路群40〜45(DES×32、DES×16、DES×8、DES×4、DES×2、DES×1)を備えて構成される。動作させる遅延素子の数に応じて各遅延素子回路群40〜45への制御信号D0〜D5を切り替える操作が必要になるため、後段の遅延素子回路41〜45はクロック信号CLKのみならず、前段の出力信号out32,out16,out8,out4,out2と制御信号D0〜D5をモニタする構成を有する。ここで、制御信号D0、D1、D2、D3、D4、D5により、動作する遅延素子数を64通り変化させることができる。これにより、縦続接続される遅延素子の数を変化させ、上述と同様に制御信号D0〜D5のレジスタ値を調整することにより、オフセット電圧が実質的に十分に小さくなるように制御することが可能となり、オフセット電圧補正を行うことができる。
図16は図15の遅延素子回路41の構成を示す回路図である。図16において、遅延素子回路41は、16個の遅延素子30−1〜30−16を縦続接続した構成を有する。ここで、遅延素子回路41は、クロック信号CLKと、前段の遅延素子回路40からの出力信号out32をモニタする。また、選択回路38は、制御信号D0とD1を用いて、クロック信号CLKと出力信号out32のどちらの信号をインバータに接続するかを選択的に切り替えるように制御する。
発明者らは、図4及び図5の実施形態に係るダイナミックコンパレータ回路を0.18μmCMOSプロセスによりシミュレーション評価を行った。電源電圧VDD=500mVで動作させ、片方の入力端子21に200mV、他方の入力端子22に300mVのDC電圧を印加した状態でクロック信号CLKを入力端子23を介して入力した。なお、接続インバータ30−1〜30−Nの総数を63個とした。
図17は図5のダイナミックコンパレータ回路のシミュレーション結果であって、動作インバータ数に対する補正オフセット電圧を示すグラフである。また、図18は図4のダイナミックコンパレータ回路のシミュレーション結果であって、動作インバータ数に対する補正オフセット電圧を示すグラフである。すなわち、図17及び図18に動作インバータ数と補正オフセット電圧幅の関係を示す。図17及び図18から明らかなように、動作インバータ数を増加させると補正オフセット電圧幅が増加することがわかる。また、インバータを縦続接続して動作させた場合、補正可能なオフセット電圧に頭打ちが生じる。これは、後段のインバータが動作する前に、前段のコンパレータが比較動作を終えるためである。図5及び図4のダイナミックコンパレータ回路は、最大で±46.6mVのオフセット電圧補正を行うことができる。
図19は図4及び図5の実施形態であって、それぞれ第1の実施例に係る並列接続型及び第2の実施例に係る縦続接続型のダイナミックコンパレータ回路の仕様諸元を示す表である。図19において、その他の性能諸元を示している。
以上詳述したように、本発明に係るオフセット電圧補正回路とそれを用いたダイナミックコンパレータ回路によれば、上記ダイナミックコンパレータの1対の差動出力端子又は1対の差動内部ノードにそれぞれ接続され、互いに接続された複数の遅延素子をそれぞれ備えた1対の遅延素子回路と、上記1対の遅延素子回路の各遅延素子を動作させて上記ダイナミックコンパレータから動作電流を引き抜くことにより、上記ダイナミックコンパレータのオフセット電圧を補正し、動作する上記1対の遅延素子回路の遅延素子の数を変化させることにより、極めて簡単な構成でオフセット電圧補正回路を構成でき、従来技術に比較して、ダイナミックコンパレータにおいてオフセット電圧補正のための消費電力を大幅に低減することができる。
10…ダイナミックコンパレータ、
11,12…オフセット電圧補正回路、
21,22,23,29…入力端子、
24,25,28…出力端子、
26,27…電流源、
30−1〜30−N,36…インバータ、
31,32,40〜45…遅延素子回路、
31A,32A…遅延素子回路群、
33,34…制御回路、
35…レジスタ回路、
37…転送ゲート、
38…選択回路、
40…インバータラッチ、
41,42…インバータ、
43…差動対、
44,45,44a,45a…バイアス電流発生回路、
50…オフセット電圧補正用制御部、
N1,N2…内部ノード、
MP1〜MP31…PMOSトランジスタ、
MN1〜MN32…NMOSトランジスタ。

Claims (6)

  1. ラッチを有するダイナミックコンパレータのためのオフセット電圧補正回路において、
    上記ダイナミックコンパレータの1対の差動出力端子又は1対の差動内部ノードにそれぞれ接続され、互いに接続された複数の遅延素子をそれぞれ備えた1対の遅延素子回路と、
    上記1対の遅延素子回路の各遅延素子を動作させて上記ダイナミックコンパレータから動作電流を引き抜くことにより、上記ダイナミックコンパレータのオフセット電圧を補正し、動作する上記1対の遅延素子回路の遅延素子の数を変化させることにより、上記ダイナミックコンパレータのオフセット電圧を変化させる制御回路とを備えたことを特徴とするダイナミックコンパレータのためのオフセット電圧補正回路。
  2. 上記制御回路は、上記ダイナミックコンパレータのオフセット電圧が実質的に小さくなるように、上記1対の遅延素子回路の遅延素子の数を変化させることを特徴とする請求項1記載のオフセット電圧補正回路。
  3. 上記制御回路は、上記ダイナミックコンパレータの1対の出力端子からの出力信号の論理値に基づいて、上記1対の遅延素子回路のうちいずれの遅延素子回路を動作させるかを設定した後、当該動作させた遅延素子回路の遅延素子の数を設定することを特徴とする請求項1又は2記載のオフセット電圧補正回路。
  4. 上記1対の遅延素子回路の各遅延素子を並列に接続したことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載のオフセット電圧補正回路。
  5. 上記1対の遅延素子回路の各遅延素子を縦続に接続したことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載のオフセット電圧補正回路。
  6. ラッチを有するダイナミックコンパレータを備えたダイナミックコンパレータ回路であって、
    請求項1乃至5のうちのいずれか1つに記載のオフセット電圧補正回路を備えたことを特徴とするダイナミックコンパレータ回路。
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