[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従う半導体集積回路に含まれる増幅回路の構成を示す図である。この図1に示す増幅回路は、電荷放電型増幅回路の構成を有し、容量素子の充放電により、差動入力信号の増幅結果を生成する。
図1において、増幅回路は、入力信号VIPおよびVINをそれぞれのゲート(制御電極)に受けるPチャネルMOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)MP1およびMP2と、制御信号(第1の制御信号)ZVP0に従ってこれらのMOSトランジスタMP1およびMP2の共通ソースノード3に一定の電流Ib1を供給する定電流段4と、電流/電圧変換用容量素子CL1およびCL2と、プリチャージ制御信号(第2の制御信号)VP1に従って容量素子CL1およびCL2を放電(正電荷を放電する:負電荷を充電する)するNチャネルMOSトランジスタMN1およびMN2と、プリチャージ制御信号(第3の制御信号)ZVP2に従って容量素子CL1およびCL2を充電するPチャネルMOSトランジスタMP3およびMP4を含む。
定電流段4は、ハイ側電源ノード(以下、単に電源ノードと称す)VDDと共通ソースノード3の間に直列に接続されるPチャネルMOSトランジスタMPC1およびMPC2と、MOSトランジスタMPC1とカレントミラー段を構成するPチャネルMOSトランジスタMPC3を含む。MOSトランジスタMPC2のゲートに比較制御信号ZVP0が与えられる。MOSトランジスタMPC3は、ゲートおよびドレインが相補接続されカレントミラー段のマスタとして動作し、動作時、MOSトランジスタMPC1には、MOSトランジスタMPC3を流れる定電流Ibのミラー電流Ib1が流れる。MOSトランジスタMPC1およびMPC3のサイズ(チャネル幅Wとチャネル長Lの比、W/L)が等しい場合には、MOSトランジスタMPC1およびMPC3には、同じ大きさの電流Ibが流れる。
MOSトランジスタMPC3のドレインノードは、図示しない定電流駆動部に結合される。この定電流駆動部は、定電流Ibを吸収する回路であれば、その構成は、任意である。低消費電流を低減するために、定電流駆動部が、比較動作時においてのみ定電流Ibを流す構成が用いられてもよい。
容量素子CL1およびCL2は、それぞれの第1電極が、出力ノード2aおよび2bを介してMOSトランジスタMP3およびMP4に結合される。MOSトランジスタMP1およびMP2は、それぞれのドレインノードが、内部ノード1aおよび1bに結合され、内部ノード1aおよび1bに入力信号VIPおよびVINに応じて電流(正電荷)を供給する。
MOSトランジスタMN1およびMN2は、内部ノード1aおよび1bとロー側電源ノード(以下、接地ノードと称す)VSSの間にそれぞれ接続され、プリチャージ制御信号VP1に従って内部ノード1aおよび1bを接地ノードへ電気的に結合し、この内部ノード1aおよび1bを、ロー側電源電圧(以下、接地電圧と称す)VSSにプリチャージする。この内部ノード1aおよび1bに、出力電圧VOPBおよびVONが生成される。ここで、電源/接地ノードとその電圧とを同一参照符号で示す。
MOSトランジスタMP3およびMP4は、プリチャージ制御信号ZVP2に従って、出力ノード2aおよび2Bを電源電圧レベルにプリチャージし、かつMOSトランジスタMN1およびMN2と協働して出力ノード2aおよび2bの電圧レベルをレベルシフト(シフトダウン)し、出力電圧VOPおよびVONを生成する。
以下、この図1に示す増幅回路の動作について説明する。
増幅動作の一周期Tは、4つの期間I−IVに分割される。時刻t0から時刻t1の間の期間Iにおいて、制御信号ZVP0およびVP1はともにHレベルであり、一方、制御信号ZVP2はLレベルである。この状態においては、MOSトランジスタMPC2がオフ状態、MOSトランジスタMP3、MP4、MN1およびMN2がオン状態である。したがって、容量素子CL1およびCL2の内部ノード1aおよび1bに接続する電極(第2電極)が接地電圧VSSにプリチャージされ、また出力ノード2aおよび2bに接続する第1電極が電源電圧VDDレベルにプリチャージされる。このプリチャージ期間Iにおいて、電源ノードから電流Ipが消費される。
時刻t1から時刻t2の間の期間IIの増幅期間においては、制御信号ZVP0、VP1およびZVP2はすべてLレベルに設定される。この状態において、PチャネルMOSトランジスタMPC2、MP3およびMP4がオン状態となり、MOSトランジスタMN1およびMN2がオフ状態となる。したがって、定電流段4より定電流Ib1が入力信号VIPおよびVINに応じてMOSトランジスタMP1およびMP2を介して振り分けられて、内部ノード1aおよび1bに供給され、内部ノード1aおよび1bの電圧レベルVOPBおよびVONBの電圧レベルが上昇する。入力信号VINの電圧レベルが、入力信号VIPの電圧レベルよりも低いと、応じて内部電圧VONBの電圧レベルが、内部ノード1a上の電圧VOPBよりも高い状態に設定される。
この期間IIにおいては、MOSトランジスタMP1およびMP2により、入力信号VIPおよびVINの電圧レベルの差に応じて電流が内部ノード1aおよび1bに供給され、容量素子CL1およびCL2の蓄積電荷により、MOSトランジスタMP1およびMP2からの電流信号が電圧信号に変換される。この場合、内部ノード1aおよび1bに正電荷が充電される(負電荷が放電される)。出力ノード2aおよび2bの電圧VOPおよびVONは、MOSトランジスタMP3およびMP4により電源電圧VDDレベルに維持される。
内部電圧VONBおよびVOPBの電圧差が十分に拡大されると、時刻t2においてP0、VP1およびVP2はすべてHレベルが設定される。すなわち、時刻t2から時刻t3の間のレベルシフト期間IIIにおいては、PチャネルMOSトランジスタMPC2、MP3およびMP4がオフ状態、一方、NチャネルMOSトランジスタMN1およびMN2がオン状態となり、内部ノード1aおよび1bが接地ノードに結合される。したがって、この容量素子CL1およびCL2の第2電極の電圧レベルは接地電圧VSSレベルに低下する。このとき、容量素子CL1およびCL2のチャージポンプ動作(容量結合)により、出力ノード2aおよび2bの電圧VOPおよびVONにおいて、それぞれ、内部ノード1aおよび1bの電圧変化に等しい電圧変化が生じる。このとき、時刻t2において生成された内部電圧VONBおよびVOPBの電圧差Δが、出力電圧VOPおよびVONの電圧差Δとして保存される。
容量Cと蓄積電荷Qの関係Q=C・Vから、内部電圧VIPBおよびVINBは次式で表わされる:
VOPB=(CL1に充電された正電荷量)/C1、
VONB=(CL2に充電された正電荷量)/C2。
ここで、C1およびC2は、容量素子CL1およびCL2の容量値を示し、充電電荷は正電荷であり、内部ノード1aおよび1bに供給される電流量が多ければ、この正電荷の充電量が多くなり、電圧レベルが高くなる。
したがって、時刻t2からのレベルシフト期間IIIにおいては、出力電圧VOPは、容量素子CL1およびCL2の容量結合により、次式で表わされる電圧レベルとなる:
VOP=VDD−VOPB(t2)、
VON=VDD−VONB(t2)。
ここで、VOPB(t2)およびVONB(t2)は、レベルシフト期間IIIが始まる時刻t2における内部電圧VOPBおよびVONBの電圧レベルを示す。
その後、時刻t3と時刻t4の間のラッチ出力期間IVにおいて、図示しないラッチ回路がイネーブルされ、出力電圧VOPおよびVONがラッチされ、入力信号VIPおよびVINの比較結果が得られる。時刻t0から時刻t3までのプリチャージ、比較、レベルシフト、およびラッチ期間により1つの増幅動作の結果を示す信号が得られる。
時刻t4以降再び時刻t0からの期間Iの動作が繰返し実行される。したがって、この図1に示す増幅回路の電流消費期間は、期間Iの容量素子CL1およびCL2の充電期間のみであり、消費電流を低減しつつ電圧比較を実行することができる。
比較/増幅期間IIにおいて生成された内部電圧VOPBおよびVONBの電圧レベルについては、入力信号VIPおよびVINの電圧値の差が小さいほど、コモンモードの電圧が生じ、内部電圧VOPBおよびVONBが、電源電圧VDDレベルに近くなる(電圧差Δが小さくなり、電流差の小さな電流が、MOSトランジスタMP1およびMP2を介して内部ノード1aおよび1bに伝達されるため)。
したがって、レベルシフト期間IIIを設けない場合、内部ノード1aおよび1bの電圧VOPBおよびVONBをそのまま、増幅回路の出力電圧として次段回路へ伝達した場合、以下の問題が生じる。すなわち、増幅回路の段数が多く設けられる場合、増幅段が進むにつれ、増幅回路の出力ノードの電圧が上昇し、ある段の増幅回路から正常に電圧増幅が行なわれなくなる可能性がある。しかしながら、PチャネルMOSトランジスタMP3およびMP4を用いて出力電圧を、内部ノードの電圧レベルから接地電圧方向にレベルシフトすることにより、出力電圧VOPおよびVONが電圧差を維持してレベルシフトダウンされる。これにより、コモンモード電圧が上昇しても、コモンモード電圧の影響を抑制でき、増幅回路を多段接続することが可能となる。
この増幅回路の入力信号VIPおよびVINの電圧範囲は、0V(ボルト)から(VDD−Odv+Vthp)Vである。なお、Odvは、オーバドライブ電圧であり、MOSトランジスタMP1およびMP2を正常に動作させるために必要とされるドレイン−ソース間電圧の最小値である。また、Vthpは、MOSトランジスタMP1およびMP2のしきい値電圧を示し、負の値である。
この図1に示す増幅回路を用いてコンパレータは消費電流を低減しつつ電圧比較を行なうことができる。また、増幅動作は、電源電圧VDDの電圧レベルを中心に行ない、一方側の電源電圧VDDのみが利用されるため、電源電圧VDDおよび接地電圧VSS間に電源ノイズが生じても、その電源ノイズの影響を受ける度合いが小さく、電源ノイズ耐性を高くすることができる。
また、定電流段4においては、MOSトランジスタMPC1−MPC3が用いられている。しかしながら、この定電流段4は、カレントミラー段の構成ではなく、単に所定のタイミングで定電流Ib1をMOSトランジスタMP1およびMP2の共通ソースノード3へ供給する構成であれば任意の構成を利用することができる。また、電流を制御するMOSトランジスタMPC2としては、相補スイッチなどの他の素子を用いてもよい。また、MOSトランジスタMN1、MN2、MP3およびMP4についても、相補スイッチ(CMOSトランスミッションゲート等)の素子が用いられてもよい。
なお、制御信号ZVP0、VP1およびZVP2については、増幅動作指示ENに従って活性化され、2相のクロック信号に従って制御信号を生成するとともに、入力信号転送制御を行う回路が利用されればよい。
以上のように、この発明の実施の形態1に従えば、第1および第2の入力信号を差動トランジスタで受け、容量素子のプリチャージノードへこの差動入力信号の電圧差に応じて電流を第1電源から供給し、容量素子を用いて電流/電圧変化を行ない内部電圧を生成する。この後、この容量素子のチャージポンプ動作(容量結合)を用いて増幅電圧レベルのレベルシフト動作を行なっている。したがって、電流は、プリチャージ期間における容量素子のプリチャージ時のみにおいてのみ利用されており、消費電流を低減することができる。
また、増幅動作時においては、一方の電源(ハイ側電源電圧VDD)のみが使用されており、電源ノイズ耐性を改善することができる。また、このレベルシフト動作時においては、ハイ側電源ノードへ正電荷が容量素子から放電されるだけであり、その放電電荷量は、比較増幅動作時の供給電流量と同じであり、消費電流を十分に抑制することができる。また、容量素子を介してのレベルシフト動作により、出力電圧レベルをレベルシフトダウンさせることができ、コモンモード電圧が大きくなる場合でも、このコモンモード電圧を低下させることができ、次段増幅回路の入力レンジ内の電圧信号を、次段増幅回路へ伝達することができ、安定に増幅回路を多段接続することができる。
[実施の形態2]
図2は、この発明の実施の形態2に従う電荷放電型増幅回路の構成を示す図である。この図2に示す増幅回路は、図1に示す実施の形態1に従う増幅回路のPチャネルMOSトランジスタおよびNチャネルMOSトランジスタを、それぞれ、NチャネルMOSトランジスタおよびPチャネルMOSトランジスタで置換えた構成と等価である。
すなわち、図2において、増幅回路は、入力信号VIPおよびVINをそれぞれのゲートに受けるNチャネルMOSトランジスタMN3およびMN4と、MOSトランジスタMN3およびMN4の共通ソースノード14と接地ノードの間に、プリチャージ制御信号VP0に従って一定の電流Ib1を流す定電流段10と、MOSトランジスタMN3およびMN4の放電電流を電圧に変換する容量素子CL3およびCL4と、プリチャージ制御信号ZVP1に従って容量素子CL3およびCL4の第2電極ノード(内部ノード1a、1b)を電源電圧VDDレベルにプリチャージするPチャネルMOSトランジスタMP5およびMP6と、プリチャージ制御信号VP2に従って容量素子CL3およびCL4の第1電極ノード(出力ノード2aおよび2b)を接地電圧VSSレベルにレベルシフトするNチャネルMOSトランジスタMN5およびMN6を含む。
定電流段10は、共通ソースノード14と接地ノードの間に直列に接続されるNチャネルMOSトランジスタMNC2およびMNC1と、定電流Ibを流すNチャネルMOSトランジスタMNC3を含む。このMOSトランジスタMNC2のゲートに比較増幅制御信号VP0が与えられる。MOSトランジスタMNC3は、ゲートおよびドレインが相互接続され、MOSトランジスタMNC1とカレントミラー段を構成し、動作時、MOSトランジスタMNC1には、このMOSトランジスタMNC3を流れる定電流Ibのミラー電流Ib1が流れる。定電流Ibは、図示しない定電流供給部から与えられる。
以下、図2に示す増幅回路の動作について説明する。
時刻t10において1つの比較増幅動作サイクルが始まると、プリチャージ制御信号ZVP1および比較増幅制御信号VP0がともにLレベルに設定される。この状態においては、MOSトランジスタMP5およびMP6がオン状態、MOSトランジスタMNC2はオフ状態である。また、プリチャージ制御信号VP2がHレベルであり、MOSトランジスタMN5およびMN6がオン状態となる。したがって、内部ノード1aおよび1bは、MOSトランジスタMP5およびMP6により電源電圧VDDレベルに充電され、一方、出力ノード2aおよび2bは、MOSトランジスタMN5およびMN6により接地電圧VSSレベルにプリチャージされる。
時刻t10から時刻t11のプリチャージ期間Iにおいて、出力ノード2aおよび2bから接地ノードへ電流Isが流れ、この間、電流が消費される。MOSトランジスタMP5およびMP6は、先の増幅サイクルのレベルシフト期間IIIにおいてオン状態に設定されており、既に内部ノード1aおよび1bは電源電圧VDDレベルにプリチャージされている。従って、このプリチャージ期間IIにおいては、電流/電圧変換用の容量素子CL3およびCL4の第2電極(内部ノード1aおよび1b)が、すでに電源電圧VDDレベルに充電されており、容量素子CL3およびCL4の第1電極(出力ノード2aおよび2b)が接地電圧VSSレベルに放電されるだけである。
このプリチャージ動作が完了すると、時刻t11において、プリチャージ制御信号ZVP1および比較増幅制御信号VP0がともにHレベルとなる。プリチャージ制御信号VP2はHレベルに維持される。
この時刻t11から時刻t12の間の比較/増幅期間IIにおいては、制御信号VP0、ZVP1、VP2に従って、MOSトランジスタMP5およびMP6がオフ状態となり、MOSトランジスタMNC2がオン状態、またMOSトランジスタMN5およびMN6がオン状態である。したがって、内部ノード1aおよび1bへは、入力信号VIPおよびVINの電圧レベルに従ってMOSトランジスタMN3およびMN4から正電荷が放電され(負電荷が充電され)、内部電圧VOPBおよびVONBの電圧レベルが放電電流量(正電荷量)に応じて低下する。出力ノード2aおよび2bの出力電圧VOPおよびVONは、MOSトランジスタMN5およびMN6により、接地電圧VSSレベルに維持される。内部ノード1aおよび1bの電圧VOPBおよびVONBの低下の度合いは、先の実施の形態1と同様、定電流段10を流れる定電流Ib1と容量素子CL3およびCL4の容量値とにより決定される。
入力信号VIPおよびVINに従って、内部ノード1aおよび1bの電圧VOPBおよびVONBの電圧レベルが確定すると、時刻t12において比較増幅制御信号VP0およびプリチャージ制御信号ZVP1がともにLレベルに設定され、またプリチャージ制御信号VP2がLレベルに設定される。この時刻t12から時刻t13におけるレベルシフト期間IIIにおいては、MOSトランジスタMN5およびMN6がオン状態、MOSトランジスタMNC2、MN5およびMN6がすべてオフ状態である。したがって、内部ノード1aおよび1bが、MOSトランジスタMP5およびMP6により電源電圧VDDレベルに充電される。内部ノード1aおよび1bの電圧上昇が、容量素子CL3およびCL4を介して出力ノード2aおよび2bに伝達され、出力ノード2aおよび2bの電圧VOPおよびVONの電圧レベルが上昇する。
内部電圧電圧VOPBおよびVONBは、容量素子CL3およびCL4の容量値をC3およびC4でそれぞれ示すと、次式で表わされる:
VOPB=VDD−(CL3から放電された正電荷量)/C3、
VONB=VDD−(CL4から放電された正電荷量)/C4.
ここで、入力信号VIPおよびVINの電圧範囲は、(Odvn+Vthn)VからVDDである。ここで、Odvnは、MOSトランジスタMN3およびMN4のオーバードライブ電圧を示し、Vthnは、MOSトランジスタMN3およびMN4のしきい値電圧を示し、正の値である。
したがって、このレベルシフト開始の時刻t12における内部電圧VOPBおよびVONBを、それぞれVOPB(t12)およびVONB(t12)で表わすと、出力電圧VOPおよびVONは、次式で表わされる:
VOP=VDD−VOPB(t12)、
VON=VDD−VONB(t12).
したがって、この場合においても、時刻t12における内部電圧VOPBおよびVONBの電圧差Δは、出力電圧VONおよびVOPにおいて容量素子CL3およびCL4のチャージポンプ動作により保存されている。この図2に示す増幅回路の構成において、内部電圧VOPBおよびVONBのコモンモード電圧は、電源電圧VDDから見た共通部分の電圧であり、また出力電圧VOBおよびVONにおいても、コモンモード電圧は、ハイ側電源電圧VDDを基準として測定する電圧である。
図2に示す増幅回路において、プリチャージ期間Iにハイ側電源ノードVDD(電圧とその電源ノードを同一参照符号で示す)から容量素子CL3およびCL4に供給される電荷量は、比較増幅期間IIにおいて接地ノードVSSへ定電流源10を介して電流Ib(=Ib1)が流れることにより放電される電荷量とほぼ同じである(この関係は、実施の形態1の場合においても同様である)。
比較増幅期間IIにおいては、ハイ側電源ノードから分離した状態で、接地ノードVSSに対し放電を行なって比較および増幅を行なっている。したがって電源電圧VDDの電圧変化の影響を受けにくく、電源ノイズに対する耐性を大きくすることができる。
また、レベルシフト期間IIIにおいては、MOSトランジスタMP5およびMP6を用いて内部電圧VOPBおよびVONBをハイ側電源電圧VDDレベルに上昇させ、出力ノード2aおよび2bからの出力電圧VOPおよびVONを、容量素子CL3およびCL4のチャージポンプ動作より上昇させている。このとき、接地ノードVSSと出力ノード2a、2bとは分離されている。したがって、この場合においても、ハイ側電源電圧VDDと接地ノードVSSとは分離されており、レベルシフト動作における電源ノイズの影響を抑制することができる。また、出力電圧VOPおよびVONがレベルシフトしてその電圧レベルを上昇させており、コモンモード電圧を低減することができ、次段増幅回路の入力レンジ内に出力電圧VOPおよびVONの電圧レベルを設定することができる。
なお、この図2に示す増幅器回路において、定電流段10として、一定の電流Ib1を比較増幅動作時、MOSトランジスタMN3およびMN4に流すことのできる構成であれば任意の構成を利用することができる。また、MOSトランジスタMP5、MP6、MNC2は、相補スイッチなどを用いて構成してもよい。
この図2に示す増幅回路は、接地電圧VSSを、比較増幅動作時に主として用いて内部電圧を生成している。したがって、比較増幅動作時におけるハイ側電源電圧VDDの電圧変化の影響を受けにくく、ハイ側電源ノイズの耐性が強い。これにより、図1に示す実施の形態1に従う増幅回路と図2に示す増幅回路の使い分けは、一例として以下のように行なう。すなわち、ハイ側電源電圧VDDの変動が少ない場合には、ロー側電源電圧(接地電圧)VSSにノイズが発生する可能性が高く、実施の形態1に従う増幅回路を利用し、ロー側電源電圧(接地電圧)VSSの変動が小さい場合には、ハイ側電源電圧VDDにノイズが発生する可能性が高く、この図2に示す実施の形態2に従う増幅回路を利用する。この使い分けにより、電源ノイズの影響を低減することができる。
レベルシフト時、ハイ側電源電圧VDDのノイズが発生しても、出力電圧VOPおよびVONに、コモンモードノイズが重畳するだけであり、次段増幅回路での差動入力によりこのコモンモードノイズを相殺することができる。
また、このコモンモードノイズが生成されても、コモンモード電圧のレベルシフト動作により、十分に、次段増幅回路の入力レンジ内に出力電圧VOPおよびVONの電圧レベルを維持することができる。
時刻t13から時刻t14の期間IVにおいては、次段のラッチ回路を動作させ出力電圧をラッチする。
以上のようにこの発明の実施の形態2に従えば、入力信号に従って内部電圧を容量素子の電流/電圧変換により生成した後、出力電圧を、容量素子のチャージポンプ動作(容量結合)によりレベルシフトアップをしている。したがって、コモンモード電圧が生じても、そのコモンモード電圧を低減でき、十分余裕を持って、次段増幅回路の入力レンジ内の出力電圧を生成することができる。また、実施の形態1と同様、電源ノイズ(ハイ側およびロー側電源ノード間のノイズ)耐性に優れた低消費電流の増幅回路を実現することができる。
[実施の形態3]
図3は、この発明の実施の形態3に従う増幅回路の構成を示す図である。この図3に示す増幅回路は、増幅器本体20と、増幅器本体20の比較増幅動作時の充電電流を制御するバイアス回路25を含む。増幅器本体20の構成は、PチャネルMOSトランジスタMPC1を除いて図1に示す増幅回路の構成と同じであり、対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。PチャネルMOSトランジスタMPC1およびバイアス回路25により、定電流段が構成される。このPチャネルMOSトランジスタMPC1は、MOSトランジスタMP1およびMP2の共通ソースノード3とハイ側電源ノードVDDとの間に接続される。
バイアス回路25は、MOSトランジスタMPC1とカレントミラー段を構成するPチャネルMOSトランジスタMPC3と、MOSトランジスタMPC1およびMPC3のゲート電位を調整するPチャネルMOSトランジスタMPC4と、定電流段25と図示しない定電流駆動部とを選択的に結合するNチャネルMOSトランジスタMNC4を含む。
PチャネルMOSトランジスタMPC4は、比較増幅制御信号VP0がLレベルのとき導通し、MOSトランジスタMPC1およびMPC3のゲート電位を電源電圧VDDレベルに設定して、これらのMOSトランジスタMPC3およびMPC4をオフ状態に設定する。MOSトランジスタMNC4は、この比較増幅制御信号VP0がHレベルのとき導通し、MOSトランジスタMPC3と図示しない定電流駆動部との間に定電流Ibを流す。比較増幅制御信号VP0は、図1に示す比較増幅制御信号ZVP0の反転信号である。
図3に示すバイアス回路25の構成において、プリチャージ期間(I)においては、比較増幅制御信号VP0がLレベルであり、MOSトランジスタMPC4がオン状態、MOSトランジスタMNC4がオフ状態である。したがって、MOSトランジスタMPC1およびMPC3のゲートがハイ側電源ノードVDDに結合され、これらのMOSトランジスタMPC1およびMPC3はともにオフ状態に維持され、MOSトランジスタMP1およびMP2への定電流供給は停止される。
比較増幅期間(II)において、比較増幅制御信号VP0がHレベルにされる。応じて、MOSトランジスタMPC4がオフ状態、MOSトランジスタMNC4がオン状態となる。これにより、定電流IbがMOSトランジスタMPC3およびMNC4を介してハイ側電源ノードから図示しない定電流駆動部へと流れ、定電流Ibのミラー電流がMOSトランジスタMPC1を介して流れる。このMOSトランジスタMPC1からの定電流は、MOSトランジスタMP1およびMP2により、入力信号VIPおよびVINに応じて分流され、内部ノード1aおよび1bの電圧VOPBおよびVONBの電圧レベルが、充電電流に応じた電流レベルに設定される。この増幅器本体20の増幅動作は、実施の形態1の増幅回路の動作と同じであり、その詳細説明は繰返さない。
この図3に示す増幅回路の構成の場合、比較増幅動作期間中においてのみ、MOSトランジスタMPC1を介して比較増幅電流がハイ側電源ノードVDDから供給される。また、MOSトランジスタMP1およびMP2の共通ソースノード3とハイ側電源ノードVDDの間には、1つのMOSトランジスタMPC1が接続されるだけであり、ハイ側電源ノードVDDと共通ソースノード3の間に直列に接続されるMOSトランジスタの数を低減することができる。これにより、図1に示す実施の形態1に従う増幅回路のMOSトランジスタMPC2における電圧降下を削減することができる。応じて、電源電圧VDDが低電源電圧条件に設定される場合においても、確実にMOSトランジスタMPC1をオン状態に維持して定電流を共通ソースノード3に供給することができ、低電源電圧下においても、安定に増幅動作を行なうことができる。
なお、この図3に示す増幅回路において、入力信号VIPおよびVINの電圧範囲は、0Vから(VDD−Odv+Vthp)Vである。
[変更例]
図4は、この発明の実施の形態3の変更例の増幅回路の構成を示す図である。図4において、増幅回路は、増幅器本体30と、増幅器本体30の比較増幅動作時の電流を制御するバイアス回路35とを含む。増幅器本体30のMOSトランジスタMNC1を除いた構成は、図2に示す増幅回路の構成と同じであり、対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。MOSトランジスタMNC1は、MOSトランジスタMN3およびMN4の共通ソースノード14と接地ノードVSSとの間に接続される。
バイアス回路35は、MOSトランジスタMNC1とカレントミラー段を構成するNチャネルMOSトランジスタMNC5と、MOSトランジスタMNC5と図示しない定電流供給部との間に直列に接続されるPチャネルMOSトランジスタMPC4と、比較増幅制御信号ZVP0に従ってMOSトランジスタMNC1およびMNC5のゲートを接地ノードに結合するNチャネルMOSトランジスタMNC6を含む。
MOSトランジスタMPC4は、比較増幅制御信号ZVP0に従って選択的にオン状態となり、定電流供給部からの定電流IbをMOSトランジスタMNC5へ供給する。
MOSトランジスタMNC5は、ゲートおよびドレインが相互接続され、カレントミラー段のマスタとして動作する。したがって、動作時、MOSトランジスタMNC5を流れる電流Ibのミラー電流が、MOSトランジスタMNC1を介して流れる。
プリチャージ動作期間においては、比較増幅制御信号ZVP0がHレベルであり、MOSトランジスタMNC6がオン状態となり、MOSトランジスタMNC1およびMNC5のゲートが接地ノードに結合され、これらのMOSトランジスタMNC1およびMNC5がオフ状態となる。また、MOSトランジスタMPC4がオフ状態となり、図示しない定電流供給部からの定電流Ibの供給が停止される。
増幅器本体30においては、MOSトランジスタMP5およびMP6がプリチャージ制御信号ZVP1に従って内部ノード1aおよび1bを電源電圧VDDレベルにプリチャージし、また、出力ノード2aおよび2bが、MOSトランジスタMN5およびMN6により接地電圧VSSレベルにプリチャージされる。
比較増幅動作時においては、比較増幅制御信号ZVP0がLレベル、プリチャージ制御信号ZVP1がHレベル、プリチャージ制御信号VP2もHレベルである。この状態においては、バイアス回路35において、MOSトランジスタMPC4がオン状態、MOSトランジスタMNC6がオフ状態となる。したがって、定電流供給部からの定電流IbがMOSトランジスタMPC4を介してMOSトランジスタMNC5へ供給され、これらのMOSトランジスタMNC5およびMNC1のゲート電位が上昇し、応じて、バイアス回路35により、MOSトランジスタMNC1に定電流Ibのミラー電流が流れる。これにより、内部ノード1aおよび1bが入力信号VIPおよびVINに応じた電流量で放電され、内部ノード1aおよび1bの内部電圧VOPBおよびVONBが、入力信号VIPおよびVINに応じた電圧レベルに設定される。増幅器本体30の比較増幅動作は、図3に示す増幅回路の動作と同じであり、その詳細説明は省略する。
この図4に示す増幅回路の構成は、図3に示す増幅回路のMOSトランジスタの導電型を逆にし、また電源ノードの電圧極性を逆にしたものと同じである。したがって、図3に示す増幅回路と同様の効果を得ることができる。この図4に示す増幅回路の場合、入力信号VIPおよびVINの電圧範囲は、(Odvn+Vthn)VからVDDに設定することができる。
以上のように、この発明の実施の形態3に従えば、増幅回路の比較増幅動作時の定電流を供給するトランジスタをカレントミラー段で構成し、比較増幅制御信号に従ってカレントミラー動作を選択的に活性化している。したがって、共通ソースノードと電源ノードまたは接地ノードの間のトランジスタの数を低減でき、低電源電圧下においても確実に比較増幅動作を行なうことができる。また、実施の形態1および2と同様の効果を得ることができる。
[実施の形態4]
図5は、この発明の実施の形態4に従う半導体集積回路の構成を概略的に示す図である。この図5に示す半導体集積回路は、増幅回路50と、この増幅回路50の出力電圧VOPおよびVONをラッチ制御信号VLTに従ってラッチするラッチ60とを含む。増幅回路50としては、先の図1、図2、図3および図4に示される増幅回路のいずれが用いられてもよい。増幅回路50は、電荷放電動作により入力信号VIPおよびVINを差動増幅しかつコモンモードの電圧を低減するようにレベルシフトして出力電圧VOPおよびVONを生成する。
ラッチ60は、ラッチ制御信号VLTに従って増幅回路50の出力信号をラッチして出力信号DOUTを生成する。このラッチ60の出力信号DOUTは、相補信号VOUTPおよびVOUTNとして生成されてもよい。
ラッチ60の出力信号DOUT(またはVOUTP,VOPUTN)により、入力信号VIPおよびVINの大小比較結果を示すことができ、増幅回路50およびラッチ60により、入力信号を比較するコンパレータを構成することができる。
この増幅回路50に与えられる制御信号VPC0、VPC1、およびVPC2は、先の実施の形態1から3に示す増幅回路における制御信号VP0、ZVP0、VP1、ZVP1、VP2およびZVP2の組合せであり、増幅回路50として用いられる回路構成に応じてその論理が設定される。
図6は、図5に示すコンパレータの動作タイミングを示す図である。図6においては、制御信号VPC0、VPC1およびVPC2の論理レベルとして、図1に示す増幅回路に対して適用される制御信号の論理レベルを一例として示す。
この図6に示すように、時刻t20から時刻t21のプリチャージ期間Iにおいて、プリチャージ制御信号VPC1およびVPC0を活性化し、増幅回路50において内部ノード(1a,1b)をプリチャージする。プリチャージ完了後、時刻t21から始まる比較増幅期間IIにおいて比較増幅制御信号VPC0を活性化し、増幅回路50において入力信号VIPおよびVINに従って内部電荷の放電(充電)を行ない、内部電圧(VOPBおよびVONB)を生成する。
この増幅回路50の比較増幅動作完了後、時刻t22から時刻t23の間のレベルシフト期間IIIにおいて制御信号VPC2をHレベルに設定し、レベルシフトされた出力電圧VOPおよびVONを生成する。
出力電圧VOPおよびVONの生成後、時刻t23においてラッチ制御信号VLTを活性化し、ラッチ期間IVにおいて、ラッチ60が、増幅回路50の出力電圧VOPおよびVONをラッチし、入力信号VIPおよびVINの比較判定結果を示す信号DOUT(VOUTP,VOUTN)を生成する。
すなわち、増幅回路50における比較増幅およびレベルシフト動作完了後にラッチ制御信号VLTを活性状態に駆動する。これにより、増幅回路50の増幅信号VOPおよびVONを確実にラッチして正確な電圧比較結果をCMOSレベルの信号として得ることができる。
図7は、図5に示すラッチ60の構成の一例を示す図である。図7において、ラッチ60は、増幅回路50の出力信号VOPおよびVONを増幅してラッチするラッチ型センス増幅器70と、ラッチ型センス増幅器70の出力信号をバッファ処理するバッファ回路75と、バッファ回路75の出力信号をラッチして比較判定結果信号DOUTとして相補出力信号VOUTPおよびVOUTNを生成するセット/リセットフリップフロップ(RSフリップフロップ)80とを含む。
ラッチ型センス増幅器70は、入力用NチャネルMOSトランジスタMN11およびMN12と、これらのMOSトランジスタMN11およびMN12それぞれと並列に接続される正帰還用NチャネルMOSトランジスタMN13およびMN14と、ラッチ動作制御用NチャネルMOSトランジスタMN15およびMN16と、内部ノードプリチャージ制御用のPチャネルMOSトランジスタMP11およびMP12と、MOSトランジスタMP11およびMP12それぞれと並列に接続される正帰還用のPチャネルMOSトランジスタMP13およびMP14を含む。
MOSトランジスタMN11およびMN13は、内部ノード72aと接地ノードの間に並列に接続され、MOSトランジスタMN12およびMN14は、内部ノード72bと接地ノードの間に互いに並列に接続される。MOSトランジスタMN11およびMN12は、それぞれそのゲートに増幅回路50の出力信号VOPおよびVONを受け、MOSトランジスタMN13およびMN14は、それぞれのゲートが、内部ノード72bおよび72aに接続される。
MOSトランジスタMP11およびMP13は、電源ノードVDDと内部ノード74aの間に互いに並列に接続され、MOSトランジスタMP12およびMP14は、電源ノードVDDと内部ノード74bの間に互いに並列に接続される。MOSトランジスタMP11およびMP12は、それぞれのゲートにラッチ制御信号VLTを受け、MOSトランジスタMP13およびMP14は、それぞれのゲートが内部ノード74bおよび74aに接続される。
MOSトランジスタMN15は、内部ノード72aおよび74aの間に接続され、そのゲートにラッチ制御信号VLTを受ける。MOSトランジスタMN16は、内部ノード72bおよび74bの間に接続され、そのゲートにラッチ制御信号VLTを受ける。
バッファ回路75は、ラッチ型センス増幅器70の内部ノード74a上の信号を受ける複数段(本実施の形態においては3段)の縦続接続されるインバータバッファIV1−IV3と、内部ノード74b上の信号を受ける複数段(本実施の形態においては3段)の縦続接続されるインバータバッファIV4−IV6を含む。
RSフリップフロップ80は、インバータバッファIV3およびIV6の出力信号をそれぞれの第1入力に受けるNANDゲートG1およびG2を含む。NANDゲートG1の出力ノードがNANDゲートG2の第2入力に結合され、NANDゲートG2の出力ノードがNANDゲートG1の第2入力ノードに結合される。NANDゲートG1およびG2から出力信号VOUTPおよびVOUTNが、比較判定結果信号DOUTとして出力される。
次に、この図7に示すラッチ回路の動作について説明する。ラッチ制御信号VLTが非活性状態のLレベルのときには、MOSトランジスタMP11およびMP12がオン状態であり、また、MOSトランジスタMN15およびMN16がオフ状態である。したがって、内部ノード74aおよび74bは、MOSトランジスタMP11およびMP12により電源電圧VDDレベルに維持される。一方、内部ノード72aおよび72bは、内部ノード74aおよび74bと分離されており、前段の増幅回路50の出力信号VOPおよびVONに従って、内部ノード72aおよび72bは放電されてLレベルとなるかまたは不定状態にある。
内部ノード74aおよび74bは、電源電圧VDDレベルであり、バッファ回路75のインバータバッファIV3およびIV6の出力信号はLレベルであり、RSフリップフロップ80の出力信号VOUTPおよびVOUTNはともにHレベル(電源電圧VDDレベル)に維持される。
次いで、前段の増幅回路50における比較増幅およびレベルシフト動作が完了すると、ラッチ制御信号VLTが活性状態とされる(Hレベルに設定される)。応じて、MOSトランジスタMP11およびMP12がオフ状態、MOSトランジスタMN15およびMN16がオン状態となり、内部ノード74aおよび72aが電気的に接続され、また、内部ノード74bおよび72bが電気的に接続される。このときには、増幅回路50の出力電圧信号VOPおよびVONは確定状態にあり、MOSトランジスタMN11およびMN12のコンダクタンスが、増幅回路50からの出力電圧信号VOPおよびVONに応じた値に設定される。
今、出力電圧信号VOPが出力電圧信号VONよりも高い状態を考える。この状態においては、MOSトランジスタMN11のコンダクタンスがMOSトランジスタMN12のコンダクタンスよりも大きく、内部ノード72aおよび74aの電位が、内部ノード72bおよび74bの電位よりも早く低下する。内部ノード72aの電位が低下すると、MOSトランジスタMN14のコンダクタンスが低下し、内部ノード72bの低下速度がより低減され、一方、MOSトランジスタMN13は、内部ノード72bの電位に応じて内部ノード72aを放電する。
内部ノード72aおよび72bの電位は、内部ノード74aおよび74bの電位に反映され、内部ノード74aの電位低下に応じてMOSトランジスタMP14のコンダクタンスが増大し、内部ノード74bの電位を上昇させる。この内部ノード74bの電位上昇に従ってMOSトランジスタMP13のコンダクタンスが低下する。したがって、MOSトランジスタMN13およびMN14の正帰還により、内部ノード72aおよび72bのうち電位の低いほうの内部ノード、すなわち内部ノード72aが接地電圧レベルに放電され、一方、内部ノード74aおよび74bのうち電位の高いほうの内部ノード、すなわち内部ノード74bは、MOSトランジスタMP13およびMP14の正帰還動作により電源電圧VDDレベルに駆動される。最終的に、内部ノード74aおよび74bは、それぞれ接地電圧レベルおよび電源電圧レベルに駆動されてラッチされる。
内部ノード74aおよび74bのハイレベルおよびローレベルは、バッファ回路75により増幅かつ反転されて、CMOSレベルのLレベルおよびHレベルの信号が生成され、RSフリップフロップ80によりラッチされる。これにより、ラッチ80の出力信号VOUTPおよびVOUTNが、それぞれHレベルおよびLレベルに駆動されて保持される。
このラッチ動作期間が完了すると、再びラッチ制御信号VLTがLレベルとなり、内部ノード74aおよび74bがMOSトランジスタMP13およびMP14により電源電圧VDDレベルにプリチャージされる。内部ノード72aおよび72bは、MOSトランジスタMN15およびMN16により内部ノード74aおよび74bと分離され、ラッチ期間中に設定された接地電圧レベルまたは電圧信号VOPおよびVONの状態に応じた不定状態となる。
したがって、図5に示すように、増幅回路50およびラッチ60を用いて入力信号VIPおよびVINの電圧レベルを比較するコンパレータを構成することにより、増幅回路50において電源ノイズ耐性の大きな比較増幅動作およびレベルシフト動作を行なって入力信号VIPおよびVINの比較結果を示す信号を低消費電流で生成することができる。
また、ラッチ60においても、ラッチ型センス増幅器70は差動増幅を行なっており、コモンモードノイズまたは電源ノイズを相殺することができ、これらのノイズの影響は十分に抑制される。また、増幅回路50の出力電圧VOPおよびVONは、レベルシフトされて、コモンモード電圧が低減されており、MOSトランジスタMN11およびMN12を安定に動作させることができる(電圧信号VOPおよびVONは、MOSトランジスタMN11およびMN12のしきい値電圧Vthnよりも十分高い電圧レベルに保持される)。増幅回路50の出力電圧VOPおよびVONは、コモンモード電圧を低減するため、その電圧レベルがシフトアップされており、実施の形態2に従う構成が利用される。
実施の形態1に従う増幅回路を利用する場合、増幅回路50の出力電圧VOPおよびVONは、MOSトランジスタMP11およびMP12のゲートへ与えられ、MOSトランジスタMN11およびMN12のゲートに、ラッチ制御信号VLTが与えられる。
ラッチ60において電流が流れるのは、ラッチ制御信号VLTが活性状態(Hレベル)のラッチ動作期間(期間IV)の間だけである。また、正帰還用MOSトランジスタMN13およびMN14、MP13およびMP14により高速で増幅/ラッチ動作が行なわれるため、電源ノードから接地ノードに電流が流れる期間が短く、消費電流は十分に抑制される。
以上のように、この発明の実施の形態4に従えば、電荷再配分型増幅回路の出力電圧をレベルシフトした後、ラッチ回路でラッチして比較判定結果信号を生成している。したがって、正確に入力信号を比較した判定結果信号を低消費電流で得ることができる。
[実施の形態5]
図8は、この発明の実施の形態5に従う半導体集積回路の構成を概略的に示す図である。図8において、半導体集積回路は、複数段(図8においては2段)の縦続接続される電荷放電型増幅回路50Aおよび50Bと、電荷放電型増幅回路50Bの出力信号をラッチするラッチ60とを含む。
図8に示す半導体集積回路は、入出力信号VIPおよびVINの電圧レベルを比較し、その比較結果を示す信号DOUT(VOUTP,VOUTN)を生成するコンパレータである。電荷放電型増幅回路50Aおよび50Bは、これまでの実施の形態1から3において説明した増幅回路の構成のいずれかの構成を有する。増幅回路50Aに対し、制御信号VPC00、VPC10およびVPC20が図5に示す制御信号VPC0、PVC1およびVPC2として与えられる。増幅回路50Bに対して、制御信号VPC01、VPC11、およびVPC21が、図5に示す制御信号VPC0、VPC1およびVPC2として与えられる。ラッチ60は、図7に示す構成と同じ構成を有し、ラッチ制御信号VLTに従って増幅回路50Bの出力信号をラッチする。
図9は、図8に示すコンパレータ(半導体集積回路)の動作タイミングを示す図である。図9に示すように、時刻t30から始まる期間PR1において、制御信号VPC00およびVPC10が活性化され(図9においてHレベルで示す)、増幅回路50Aにおいてプリチャージ動作が行なわれる。このときまた、並行して、増幅回路50Bにおいても、制御信号VPC01およびVPC11が活性状態であり、内部ノードのプリチャージ動作が行なわれる。制御信号VPC20およびVPC21は、ともにLレベルであり、内部の容量素子の電極ノードのプリチャージが行われる。
増幅回路50Aのプリチャージ期間PR1の経過後、時刻t31から時刻t32の間の期間PR2において制御信号VPC00およびVPC10がLレベルに設定される。このとき、制御信号VPC20はLレベルである。これにより、増幅回路50Aにおいては、入力信号VIPおよびVINの比較および増幅動作が行なわれる。このとき増幅器50Bは内部ノードのプリチャージ状態にある。
この増幅回路50Aの比較増幅動作期間PR2が完了すると、時刻t32から時刻t33の間のレベルシフト期間PR3において、制御信号VPC00、VPC10、VPC20がHレベルに設定される。これにより、内部に含まれる電圧/電流変換用容量素子におけるチャージポンプ動作(容量結合)により、増幅回路50Aの出力信号のレベルシフトが行なわれて保持される。
増幅器50Aのレベルシフト期間PR3が完了すると、時刻t33から時刻t34の間の期間PR4において、制御信号VPC01およびVPC11がLレベルに設定される。制御信号VPC00、VPC10およびVPC20はHレベルであり、比較増幅回路50Aは出力保持状態にある。この期間PR4において増幅回路50Bは、増幅回路50Aの出力信号に従って比較および増幅動作を行なう。
この増幅回路50Bの比較増幅動作期間PR4が完了すると、時刻t34から時刻t35の期間PR5において、制御信号VPC01およびVPC11およびVPC21がHレベルに設定される。このとき、増幅回路50Aにおいては、制御信号VPC20がLレベルに設定され、内部ノードのプリチャージが実行される。一方、増幅回路50Bにおいては、この制御信号VPC21に従って、その内部に含まれる電流/電圧変換用の容量素子のチャージポンプ動作(容量結合)により、出力信号のレベルシフトが行なわれ、このレベルシフトされた出力電圧が保持される。
増幅回路50Bのレベルシフト期間PR5が完了すると、時刻t35から時刻t36の期間PR6においてラッチ制御信号VLTが活性状態(図10においてはHレベルで示す)に駆動され、ラッチ60が増幅器50Bの出力信号をラッチし、入力信号VIPおよびVINの電圧差に応じた出力信号DOUTを生成する。
時刻t36が経過すると、再び時刻t30から始まるプリチャージ期間PR1以降の動作が繰返し実行される。
期間PR1から期間PR6が、図8に示すコンパレータの入力信号VIPおよびVINの比較する動作期間の一周期となる。
この図8および図9に示すように、この発明の実施の形態1から3のいずれかに従う電荷放電型増幅器を複数段縦続接続することにより、増幅における利得が向上し、電圧比較精度が向上する。また、実施の形態1から4と同様の効果を得ることができる。
なお、この制御信号VPC00、VPC10、VPC20、VPC01、VPC11およびVPC21は、それぞれ実施の形態1から3に示す増幅回路に対して与えられる制御信号の組合せのいずれかが用いられればよく、用いられる増幅回路50Aおよび50Bの構成に応じて適宜選択される。
[実施の形態6]
図10は、この発明の実施の形態6に従う半導体集積回路の構成を概略的に示す図である。この図10に示す半導体集積回路は、容量アレイを利用する逐次比較型ADC(アナログ/デジタル変換器)である。図10において、逐次比較型ADCは、比較対象電圧VCOMMと基準電圧VREF1とを比較する比較器90と、比較器90の出力信号DOUTに従って比較対象電圧を生成する動作および比較結果を示すデータを生成する逐次比較レジスタ/ロジック95と、逐次比較レジスタ/ロジック95からの出力データ信号に従って接続経路を切換えるスイッチアレイ100と、スイッチアレイ100の接続経路に従って容量結合により比較対象電圧VCOMMの電圧レベルを調整する容量アレイ110を含む。
比較器90は、図8に示す比較器(コンパレータ)の構成を有し、比較対象電圧VCOMMおよび基準電圧VREF1をそれぞれ入力信号VIPおよびVINとして受け、内部の縦続接続される複数段の増幅回路を用いて増幅/レベルシフトした後、内部のラッチによりラッチして出力信号DOUTを生成する。
逐次比較レジスタ/ロジック95は、比較器90の出力信号DOUTに従ってその出力ノードD00、D0−D11に対する内部の変換結果データビットの設定および比較対象ビットの設定を実行する。
なお、図10に示すADCにおいては、出力データは12ビットであり、出力ビットD0−D11とダミー出力ビットD00を有する構成を一例として示す。このADCは、12ビットADCではなく、他のビット幅のADCであってもよい。
スイッチアレイ100は、逐次比較レジスタ/ロジック95の出力ノードD00、D0−D11それぞれに対して設けられるスイッチSb0、Sa0−Sa11を含む。これらのスイッチSb0およびSa0−Sa11は、各々3入力端子を有し、接地電圧VSS、変換対象入力電圧VIPおよび基準電圧VREF2のいずれかを逐次比較レジスタ/ロジック95の対応の出力ノードからの制御信号に従って選択する。
容量アレイ110は、スイッチSb0およびSa0−Sa11それぞれに対応して設けられる容量素子C00およびC0−C11と、比較対象電圧線112aおよび112bの間に接続される結合容量素子Ccを有する。この比較対象電圧線112aおよび112bに対しては、それぞれスイッチS2およびS1が設けられ、比較対象電圧線112aおよび112bは、これらのスイッチS2およびS1により、プリチャージ時、基準電圧VREF0にプリチャージされる。
容量素子C6−C11が比較対象電圧線112aに結合され、容量素子C00およびC0−C5が比較対象電圧線112bに結合される。比較対象電圧線112aおよび112bの間に結合容量素子Ccが配置される。
一般に、容量素子C11−C0は、それぞれの容量値が、対応のビット位置に応じて重み付けされる。容量素子Cn(n=0−11)は、2^n・C0の容量値を有するが、10ビット以上の分解能を持つ場合、容量アレイが巨大となる。なお、記号^は、べき乗を示す。そこで、容量素子Ccを用いて容量素子C0からC11の総容量を削減する。容量素子は、それぞれCi(i=0−5)=C2i+1=2^i・C0の容量値を有することができる。Cc=64/63・C0とすることにより、容量素子Ccにより分割された容量アレイは、容量素子Cn(n=0−11)が、2^n・C0の容量値を有する容量アレイと同等の機能を有する。したがって、以下においては、説明の簡単化のために、Cn(n=0−11)=2^n・C0として説明を行なう。
ダミー出力ビットD00に対して設けられる容量素子C00は、ダミー容量であり、容量素子C0と同じ容量値を有する。このダミー容量C00により、2進探索法による比較基準電圧を生成することができる。
図11は、図10に示す逐次比較型ADCの1つの変換対象入力電圧VIPについてのアナログ/デジタル変換動作を示すフロー図である。以下、図11を参照して、図10に示す逐次比較型ADCのA/D(アナログ/デジタル)変換動作について説明する。
ここで、基準電圧VREF0、VREF1およびVREF2は、すべて同一電圧レベルとする。
アナログ入力電圧VIPに対する変換サイクルが始まると、逐次比較レジスタ/ロジック95は、変換後のデジタルデータの最上位ビットを指定するため、ビット位置nを11に設定する(ステップST1)。
次いで、逐次比較レジスタ/ロジック95は、スイッチS1およびS2をオン(ON)状態に設定し、比較対象電圧線112aおよび112bを、基準電圧VREF0に充電する。またこのとき、逐次比較レジスタ/ロジック95は、出力ノードD00、D0−D11からの出力データビットdd0、d0−d11の状態を設定して、スイッチSb0、Sa0−Sa11にアナログ入力電圧VIPを選択させる(ステップST2)。これにより、容量素子C00およびC0−C11には、アナログ入力電圧VIPの電圧レベルに応じた電荷が蓄積される。前述のように、容量素子C0−C11は、デジタル変換値のビット位置に対応しており、容量値は、等価的にビット位置に応じた重みを有しており、ダミー容量素子C00は、1LSB(最下位ビット)に対応する容量値を有する容量素子C0と同じ容量値を有する。これらの容量素子C00およびC0の容量値をCとすると、容量素子Ciは、容量値C・2^iを有する。
次いで、逐次比較レジスタ/ロジック95は、スイッチS1およびS2を非導通状態(OFF状態)に設定し、比較対称電圧線112aおよび112bの基準電圧VREF0への充電を停止させる。また、スイッチSb0は、対応のビットdd0が“0”に設定され、接地電圧VSSを選択さする状態に維持される(ステップST3)。このステップST1−ST3により、比較対象電圧線112a−112bのプリチャージが完了する。
なお、スイッチSb0が接地電圧VSSを選択するため、比較対象電圧線112aおよび112b上の電圧VCOMMは、ダミー容量素子C00の容量結合により、その電圧レベルがLSB/2に相当する電圧レベル分低下する。この状態は、実際には容量素子C11の比較動作の最初のシーケンスに含まれ、比較動作時においては現れない。
次いで、スイッチアレイ100および容量アレイ110および逐次比較レジスタ/ロジック95で構成されるDAC(デジタル/アナログ変換器)においてスイッチSanを基準電圧VREF2を選択する状態に設定し(ビットdnを“1”に設定し)、残りのスイッチSa(n−1)−Sa0を対応のビットd(n−1)−d0を“0”に設定して接地電圧VSSを選択する状態に設定する(ステップST4)。
このスイッチの接続経路の設定により、接地ノードに結合される容量素子により比較対象電圧線112aおよび112bの電圧レベルが低下し、また、基準電圧源VREF2に接続される容量素子により比較対象電圧線112aおよび112bの電圧レベルが上昇し、これらの容量素子の間で電荷が再配分される。今、ビット位置nは、最上位ビットを示す11であるため、基準電圧源VREF2と接地ノードの間で、容量素子C11が、容量素子C00およびC0−C10の合成容量と直列に接続され、電荷の再配分が行なわれる。この場合、容量素子C11の容量値が(2^11・C)であり、残りの容量素子C00およびC0−C10の容量値の和と等しく、比較対象電圧線112aおよび112bの電圧VCOMMは、次式で表わされる:
VCOMM=VREF0−VIP+(VREF2/2).
上式の右辺第1および第2項は、スイッチSb0およびSa0−Sa11がすべて接地電圧を選択する状態に設定されたときの比較対象電圧を示し、上式右辺第3項が、この状態でスイッチSa11が基準電圧VREF2を選択する状態に設定されたときの比較対象電圧VCOMMの変化を示す。
次いで、比較器90において、この比較対象電圧VCOMMと基準電圧VREF1の比較を行ない、比較結果を示す信号DOUTを生成する。比較器90の比較増幅およびレベルシフト動作は、先の実施の形態5において示したコンパレータの動作と同じである。
逐次比較レジスタ/ロジック95に含まれるロジックは、比較器90の出力信号DOUTの論理値が“0”および“1”のいずれであるかに基づいて、比較対象電圧VCOMMが基準電圧VREF1よりも高いかを判定する(ステップST5)。比較対象電圧VCOMMが、基準電圧VREF1よりも高いときには、スイッチSanの状態が基準電圧VREF2を選択する状態に維持され、すなわち対応の出力データビットdnが“1”に維持される。一方、比較基準電圧VCOMMが、基準電圧VREF1よりも低い場合には、このスイッチSanは、対応のデータビットdnが“0”に設定され、接地電圧VSSを選択する状態に設定される(ステップST6)。
次いで、変換対象ビットを1ビット下位側にずらせるため、nを(n−1)で置換する(ステップST7)。次いで、このビット位置nが0以上であるかの判定が行なわれる(ステップST8)。ビット位置を示す値nが0以上のときには、まだ最下位ビットの変換動作が処理されていないため、再びステップST4へ戻り、上述の比較対象電圧VCOMMの変換および比較動作が実行される。
一方、ステップST8において、ビット位置を示す値nが負の値のときには、最下位ビットの変換が完了しているためであり、スイッチSa0−San(=Sa11)のスイッチの状態を出力する(ステップST9)。すなわち、逐次比較レジスタ/ロジック95に含まれる逐次比較レジスタのラッチデータd0−d11が、アナログ入力電圧VIPのデジタル変換値として出力される。
図12は、図10に示す逐次比較型ADCの変換時の比較対象電圧VCOMMの変化シーケンスの一例を示す図である。この図12においても、基準電圧VREF0、VREF1およびVREF2は、すべて同じ電圧レベルに設定される。
なお初期化時、比較対象電圧VCOMMは、図10に示すスイッチS1およびS2により基準電圧VREF0にプリチャージされる。次いで、図10に示すスイッチSb0、Sa0−Sa11をすべてアナログ入力電圧VIPを選択する状態から接地電圧VSSを選択する状態に設定する。応じて、比較対象電圧VCOMMは、プリチャージ電圧VREF0からアナログ入力電圧VIPの電圧レベルだけ低下する。
ここで、図11に示すように初期化シーケンスにおいては、スイッチSb0が接地電圧VSSを選択する状態に設定されるだけであり、この場合、比較対象電圧VCOMMは、図12において一点鎖線で示すようにプリチャージ電圧VREF0から少し(LSB/2)低下するだけである。この状態は、実際の変換動作時においては容量素子C12の比較シーケンスに含まれ、実際には出力されない。
次いで、比較動作開始時、スイッチSa0−Sa(n−1)はすべて接地電圧VSSを選択する状態に設定されるとともに、スイッチSanが基準電圧VREF2(=VREF0)を選択する状態に設定される。このときの比較対象電圧VCOMMは、電圧VREF0−VIP+VREF0/2である。この1回目の比較動作時において比較対象電圧VCOMMと基準電圧VREF1(=VREF0)の大小比較が行なわれる。この比較動作時、VCOMM−VREF0=VREF0−VIPであり、基準電圧とアナログ入力電圧との比較が行なわれており、変換後の最上位ビットが“1”であるかの識別が行なわれる。
図12においては、比較対象電圧VCOMMの電圧レベルは、基準電圧VREF1(=VREF0)よりも低いため、最上位ビットd11は、“1”に維持に変更された状態で、次のビットd10が“1”に設定され、残りのビットd9−d0およびdb0がすべて“0”に維持される。
次いで、2回目の比較動作時において上位ビットd11およびd10がともに“1”であり、残りのビットd9−d0が“0”である。この状態においては、基準電圧源VREF0(=VREF2:電源ノードと対応の電圧を同一参照符号で示す)と比較対象電圧線の間に容量素子C11およびC10が並列に接続され、また比較対象電圧線と接地ノードの間に残りの容量素子C9−C0およびC00が並列に接続される。この容量素子C10の容量結合および電荷再配分により比較基準電圧VCOMMが、先の比較動作時よりも電圧VREF0/4だけ上昇し、基準電圧VREF1との比較動作が行なわれる。
図12に示す比較シーケンスにおいて、この2回目の比較動作時においては、比較対象電圧VCOMMが、基準電圧VREF1よりも高いため、ビットd10が“0”に設定され、次いでビットd9を“1”に設定して比較動作が行なわれる。この3回目の比較動作(3ビット目の変換動作)の場合、ビットd10に対する容量素子C10が接地ノードに結合され、次の容量C9が比較対照電圧線と基準電圧源VREF2との間に接続される。したがって、この比較対象電圧VCOMMは、電圧VREF0/4低下するとともに、電圧VREF0/8上昇し、したがって、2回目の比較動作時の比較対象電圧VCOMMから電圧VREF0/8だけ低下した電圧レベルに設定される。この状態で、3回目の比較動作が行なわれ、この比較結果に応じてビットd9が“0”に設定され、次のビットd8が“1”に設定されて4回目の比較動作が行なわれる。このときには、−VREF0/8+VREF0/16の電圧変化が比較対照電圧VCOMMに生じ、3回目の比較動作時よりも比較基準電圧VCOMMは、VREF0/16だけ電圧レベルが低下する。
次いで、この4回目の比較結果に従ってビットd8は“1”に維持されたまま、次のビットd7が“1”に設定されて5回目の比較動作が行なわれる。したがって、この比較動作時においては、比較対照電圧VCOMMは、次式で表わされる電圧レベルとなる:
図12に示す比較動作が、必要な分解能(本実施例では12ビット分)の回数繰返し実行される。
最終的に必要な分解能の変換動作が完了すると、すなわち最下位ビットの変換動作が完了すると、各スイッチの状態は、アナログ入力電圧VIPをデジタル変換した値に対応しており、逐次比較レジスタ/ロジック95に含まれるレジスタに格納されるデータビットd0−d11がデジタル変換値として出力される。
[変更例]
図13は、この発明の実施の形態6に従う逐次比較型ADCの変換シーケンスの変更例を示す図である。図13においては、A/D変換シーケンスにおける初期化シーケンス時の比較対象電圧線に対する容量素子の接続態様を示す。この比較対象電圧線112を基準電圧VREF0にプリチャージするとき、容量素子Caはアナログ入力電圧VIPを受け、一方、容量素子Cbは接地ノードに結合される。ここで、容量CaおよびCbは、図10に示す容量アレイの容量素子の合成容量を示す。この比較対象電圧線112のプリチャージ後、スイッチアレイ(100)により、容量素子Caの対応のスイッチをアナログ入力電圧VIPから接地電圧VSS(=0V)を選択する状態に設定する。この場合、比較対象電圧線112の比較対象電圧VCOMMの電圧レベルは、容量素子CaおよびCbの電荷再配分により、Ca・VIP/(Ca+Cb)だけ低下する。このときの比較対象電圧VCOMMは、次式で表わされる:
VREF0−Ca・VIP/(Ca+Cb)
この比較対象電圧VCOMMを、正の電圧レベルに維持するため、アナログ入力電圧VIPの最大電圧VIP_MAXは、次式で表わされる:
VIP_MAX=VREF0・(Ca+Cb)/Ca
したがって、容量素子CaおよびCbのサンプリング時のスイッチ制御情報をa0−a11で表わし、ビットaiが“1”のとき、対応のスイッチSaiがアナログ入力電圧VIPを選択し、ビットanが“0”のとき、対応のスイッチSaiが、接地電圧VSSを選択すると、このアナログ入力電圧VIPの最大電圧VIP_MAXは、次式で表わされる:
したがって、この状態においてサンプリング可能なアナログ入力電圧の電圧範囲を大きくすることができる。
なお、上述のA/D変換シーケンスにおいて、基準電圧VREF0、VREF1およびVREF2は、すべて同じ電圧レベルに設定している。しかしながら、基準電圧として、次の関係を満たす基準電圧VREF0−VREF2が用いられてもよい:
VREF0=VREF1=VDD/2、
VREF2=VDD
以上のように、この発明の実施の形態6に従えば、この発明の実施の形態1から3に示す増幅器を用いてコンパレータを構成し、このコンパレータを用いてアナログ入力電圧をデジタル信号に変換している。したがって、電源ノイズ(VDD−VSS間に重畳するノイズ)に対する耐性に優れ、かつ多段接続による利得の増大した高精度のデジタル変換を行なうことのできる逐次比較型ADCを実現することができる。