JP5417097B2 - 電解槽、電解装置、酸性電解水の製造方法およびアルカリ性電解水の製造方法 - Google Patents

電解槽、電解装置、酸性電解水の製造方法およびアルカリ性電解水の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5417097B2
JP5417097B2 JP2009210638A JP2009210638A JP5417097B2 JP 5417097 B2 JP5417097 B2 JP 5417097B2 JP 2009210638 A JP2009210638 A JP 2009210638A JP 2009210638 A JP2009210638 A JP 2009210638A JP 5417097 B2 JP5417097 B2 JP 5417097B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrolyzed water
exchange membrane
electrolytic cell
anode
anion exchange
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009210638A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010133007A (ja
Inventor
順 田中
弘次 山中
洋 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Organo Corp
Original Assignee
Organo Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Organo Corp filed Critical Organo Corp
Priority to JP2009210638A priority Critical patent/JP5417097B2/ja
Publication of JP2010133007A publication Critical patent/JP2010133007A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5417097B2 publication Critical patent/JP5417097B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Water Treatment By Electricity Or Magnetism (AREA)
  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)

Description

本発明は、電解槽、電解装置、酸性電解水の製造方法およびアルカリ性電解水の製造方法に関するものであり、さらに詳細には、陰イオン交換膜の耐酸化性を向上してなる電解槽および電解装置と、上記電解槽を有してなる電解装置を用いた酸性電解水の製造方法およびアルカリ性電解水の製造方法に関するものである。
一般に、水または水溶液等を電気分解する電解装置は、電解槽と、電源装置等の周辺装置とによって構成されている。
そして、上記電解槽としては、陽極と陰極間にイオン交換膜等の隔膜を設けた隔膜式電解槽と、陽極と陰極間にイオン交換膜等の隔膜を設けない無隔膜式電解槽とが知られており、上記隔膜式電解槽としては、電解槽を1枚のイオン交換膜で陽極を収納した隔室(陽極室)と陰極を収納した隔室(陰極室)に隔てた2槽式のものや、電解槽を2枚のイオン交換膜で隔て、陽極室と陰極室との間にさらに中間室を設けた3槽式のもの(例えば、特許文献1参照)が知られている。
また、上記イオン交換膜としては、陰イオンを選択的に透過させる陰イオン交換膜と陽イオンを選択的に透過させる陽イオン交換膜とが知られており、陰イオン交換膜としては、スチレン−ジビニルベンゼンを母体とし、第4級アンモニウム基を陰イオン交換基とする材料からなるものが一般に用いられ、陽イオン交換膜としては、スチレン−ジビニルベンゼンやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を母体とし、スルホ基を陽イオン交換基とする材料からなるものが一般に用いられている。
このように、隔膜式電解槽においては、イオン交換膜を隔膜として用いることにより、陽極や陰極に特定イオンを接触させたり、両極の電極反応生成物を未反応物や反対電極の電極反応生成物と隔離し得ることから、無隔膜式電解槽に比べ、電解効率を向上させることが可能になる。
例えば、図1に示すような、隔膜式電解槽の一つである3槽式電解槽1においては、陰イオン交換膜7を陽極5に接触させるかまたはその直近に配設するとともに、陽イオン交換膜8を陰極6に接触させるかまたはその直近に配設することによって、薬品タンク9から中間室3に充填または通液した電解質溶液から、陽極5に陰イオン、陰極6に陽イオンをそれぞれ選択的に供給することができることから、隔膜式電解槽を有する電解装置においては、高効率な電解反応を行うことができ(電解反応に必要な投入電力を低減することができ)、電極反応生成物と未反応物や反対電極の電極反応生成物とを隔離しつつ純度の高い電極反応生成物を得ることができる。
隔膜式電解槽を有する電解装置の電極反応生成物としては、陽極室から酸性電解水、陰極室からアルカリ性電解水をそれぞれ得ることができ、このような酸性電解水やアルカリ性電解水は、殺菌、殺ウィルス、脱臭、脱脂洗浄、微粒子除去等の用途への利用が期待される(例えば、特許文献2〜特許文献6参照)。
しかしながら、隔膜式電解槽においては、陰イオン交換膜から陰イオンを選択的に透過させて陽極に接触させる必要があることから、陰イオン交換膜を陽極近傍に配設する必要があり、このような構成を採用させざるを得ない関係上、陰イオン交換膜は、陽極反応で生成する酸化性物質や陽極そのものによる陽極酸化によって酸化劣化され易い傾向がある。上述したように、陰イオン交換膜としては、一般にスチレン−ジビニルベンゼンを母体とし、第4級アンモニウム基を陰イオン交換基とする材料からなるものが用いられているが、第4級アンモニウム基は酸化分解されることによってより低級のアミンとなり、導電性やイオン選択性の低下による電解効率の低下をきたし易く、スチレン−ジビニルベンゼンからなる母体ポリマーが酸化されると、膜の物理強度が脆弱化して電解運転の継続が困難になる。
このように、隔膜式電解槽を用いた電解装置は、陰イオン交換膜の酸化劣化という技術課題を有するものであることから、工業的にはほとんど利用されていないのが実情である。
特許第3113645号公報 特開2009−34593号公報 特許第3940065号公報 特許第3554522号公報 特開2006−334260号公報 特開2006−2219号公報
このような状況下、本発明は、陰イオン交換膜を陽極近傍に配設した場合であっても、陰イオン交換膜の酸化劣化を抑制しつつ、高効率に純度の高い電解生成物を得ることができ、長時間の連続運転が可能な電解槽および該電解槽を有する電解装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記電解槽を有してなる電解装置を用いて、消費電力量を抑制しつつ、低コストで酸性電解水やアルカリ性電解水を製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、イオン交換膜で区画された、陽極が収納されてなる隔室と陰極が収納されてなる隔室とを有する電解槽であって、上記イオン交換膜の少なくとも一部が陰イオン交換膜であり、該陰イオン交換膜として、特定の構成単位を含む4級アンモニウム基含有架橋重合体とフッ素系重合体とを含有するポリマーブレンドからなるものを用い、この陰イオン交換膜が陽極近傍に配設されてなる電解槽により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)イオン交換膜で区画された、陽極が収納されてなる隔室と陰極が収納されてなる隔室とを有する電解槽であって、
前記イオン交換膜の少なくとも一枚が陰イオン交換膜であり、
該陰イオン交換膜が、下記一般式(I)
(ただし、Rは、炭素数6〜12の環状構造を有するポリアミン化合物から誘導される官能基であって、前記ポリアミン化合物を構成する窒素原子の一つが4級化して隣接するアルキレン基に化学結合してなる4級アンモニウム基であり、Xは陰イオンであり、nは1〜8の整数である。)
で表される構成単位を含む4級アンモニウム基含有架橋重合体とフッ素系重合体とを含有するポリマーブレンドからなり、
前記陰イオン交換膜が陽極と直接接触するようにあるいは絶縁性の不織布もしくはメッシュを介して接触するように配設されてなるか、または前記陰イオン交換膜と陽極との間隔が0mmを超え10mm以下になるように配設されてなることを特徴とする電解槽、
(2)前記4級アンモニウム基含有架橋重合体が、少なくとも2つのビニル基を有する架橋性構成単位をさらに含み、前記4級アンモニウム基含有架橋重合体中における前記架橋性構成単位の含有割合が0.1〜10質量%である上記(1)に記載の電解槽、
(3)前記フッ素系重合体が、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレンおよびこれらの混合物から選ばれる1種以上であり、前記4級アンモニウム基含有架橋重合体と前記フッ素系重合体の合計量に対するフッ素系重合体の含有割合が20〜80質量%である上記(1)または(2)に記載の電解槽、
(4)前記陰イオン交換膜と陽極とが直接接触するか、絶縁性の不織布またはメッシュを介して接触するように配設されてなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電解槽、
(5)前記電解槽が、陰イオン交換膜で区画され陽極が収納されてなる隔室と、陽イオン交換膜で区画され陰極が収納されてなる隔室と、前記陰イオン交換膜と陽イオン交換膜間に前記両隔室に挟まれるように形成されてなる中間室とを有する3槽式電解槽である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電解槽、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電解槽を有してなることを特徴とする電解装置、
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電解槽を有してなる電解装置を用いて陰イオンを含む被処理水を電気分解することにより酸性電解水を得ることを特徴とする酸性電解水の製造方法、
(8)得られる酸性電解水が殺菌または殺ウィルス用である上記(7)に記載の酸性電解水の製造方法、
(9)得られる酸性電解水が脱臭用である上記(7)に記載の酸性電解水の製造方法、
(10)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電解槽を有してなる電解装置を用いて陽イオンを含む被処理水を電気分解することによりアルカリ性電解水を得ることを特徴とするアルカリ性電解水の製造方法、
(11)得られるアルカリ性電解水が脱臭用である上記(10)に記載のアルカリ性電解水の製造方法、
(12)得られるアルカリ性電解水が脱脂用である上記(10)に記載のアルカリ性電解水の製造方法、および
(13)得られるアルカリ性電解水が微粒子除去用である上記(10)に記載のアルカリ性電解水の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、陰イオン交換膜として、特定の構成単位を含む4級アンモニウム基含有架橋重合体とフッ素系重合体とを含有するポリマーブレンドからなるものを用いていることから、陰イオン交換膜を陽極近傍に配設した場合であっても、陰イオン交換膜の酸化劣化を抑制しつつ、高効率に純度の高い電解生成物を得ることができ、長時間の連続運転が可能な電解槽および該電解槽を有してなる電解装置を提供することができる。
また、本発明によれば、上記電解槽を有してなる電解装置を用いて、消費電力量を抑制しつつ、低コストで酸性電解水やアルカリ性電解水を製造する方法を提供することができる。
3槽式電解槽を有する電解装置の概略説明図である。 2槽式電解槽を有する電解装置の概略説明図である。 本発明の実施例および比較例で得られた電解装置の連続運転結果を示す図である。 本発明の実施例で得られた酸性電解水およびアルカリ性電解水の脱臭効果を示す図である。 本発明の実施例で得られた酸性電解水およびアルカリ性電解水の脱臭効果を示す図である。 本発明の実施例で得られた酸性電解水およびアルカリ性電解水の脱臭効果を示す図である。 本発明の実施例で得られた酸性電解水およびアルカリ性電解水の脱臭効果を示す図である。
先ず、本発明の電解槽について説明する。
本発明の電解槽は、イオン交換膜で区画された、陽極が収納されてなる隔室と陰極が収納されてなる隔室とを有する電解槽であって、前記イオン交換膜の少なくとも一部が陰イオン交換膜であり、該陰イオン交換膜が、下記一般式(I)
(ただし、Rは、炭素数6〜12の環状構造を有するポリアミン化合物から誘導される官能基であって、前記ポリアミン化合物を構成する窒素原子の一つが4級化して隣接するアルキレン基に化学結合してなる4級アンモニウム基であり、Xは陰イオンであり、nは1〜8の整数である。)
で表される構成単位を含む4級アンモニウム基含有架橋重合体とフッ素系重合体とを含有するポリマーブレンドからなり、
前記陰イオン交換膜が陽極近傍に配設されてなることを特徴とするものである。
一般式(I)で表される構成単位において、Rは、炭素数6〜12の環状構造を有するポリアミン化合物から誘導される官能基であって、前記ポリアミン化合物を構成する窒素原子の一つが4級化して隣接するアルキレン基(−(CH−)に化学結合してなる4級アンモニウム基であり、この4級アンモニウム基は、炭素数6〜10の環状構造を有するポリアミン化合物から誘導される4級アンモニウム基であることが好ましく、炭素数6〜9の環状構造を有するポリアミン化合物から誘導される4級アンモニウム基であることがより好ましい。
上記環状構造を有するポリアミン化合物としては、例えば、下記式(II)
で表されるトリエチレンジアミンや、下記式(III)
で表される1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデ−7−エン(通称「ジアザビシクロウンデセン」)や、下記式(IV)
で表されるヘキサメチレンテトラミンなどのような環状又は多環式ポリアミンなどを挙げることができる。
上記式(II)〜(IV)で例示されるポリアミン化合物を構成する窒素原子は、ブリッジヘッドと呼ばれる孤立電子対を有しており、上記一般式(I)で表される構成単位形成時においては、ポリアミン化合物を構成するいずれかの窒素原子がカチオン化して(4級化して)隣接するアルキレン基(−(CH−)の一端に化学結合することによって4級アンモニウム基Rを成す。また、上記式(II)〜(IV)で例示されるポリアミン化合物において、隣接するアルキレン基(−(CH−)との結合に供されなかったアミノ基も非常に反応性に富んでいるため、陰イオン交換量の増大に大きく寄与し得る。
一般式(I)で表される構成単位において、Xは陰イオンであり、上記4級アンモニウム基Rのカウンターイオンになり得るものであれば特に制限されず、イオン交換反応によって種々の陰イオンを採用し得る。Xとしては、一価の陰イオンや二価の陰イオンを挙げることができ、一価の陰イオンであることが好ましい。
本発明の電解槽が、陽極におけるハロゲン化物イオンからのオキソ酸生成に好適に用いられるものであることを考慮すると、一価の陰イオンとしては、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)またはヨウ化物イオン(I)が好ましい。
一般式(I)で表される構成単位において、nは1〜8の整数であり、1〜5の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることがさらに好ましい。
4級アンモニウム基含有架橋重合体中における上記一般式(I)で表される構成単位の含有割合は、90〜99.9質量%であることが好ましく95〜99.5質量%であることがより好ましく、95〜98質量%であることがさらに好ましい。上記一般式(1)で表される構成単位の含有割合が90質量%未満であると陰イオン交換膜に十分な陰イオン交換能を付与することが困難になり、99.9質量%を超えると陰イオン交換膜の膜強度が低下する場合がある。
本発明の電解槽において、4級アンモニウム基含有架橋重合体は、上記一般式(I)で表される構成単位とともに、少なくとも2つのビニル基を有する架橋性構成単位をさらに含んでもよい。
上記架橋性構成単位としては、ジビニルベンゼンモノマー、トリビニルベンゼンモノマー、ジビニルトルエンモノマー、ジビニルキシレンモノマー、ジビニルナフタレンモノマー、ジビニルビフェニルモノマー、ビス(ビニルフェニル)スルホンモノマー、ビス(ビニルフェニル)エタンモノマー、エチレングリコールジメタクリレートモノマー、エチレングリコールジアクリレートモノマー、トリメチロールプロパントリメタクリレートモノマー、メチレンビス(アクリルアミド)モノマー、エチレンビス(アクリルアミド)モノマー等に由来する構成単位を挙げることができ、これらの構成単位のうち、ジビニルベンゼンモノマー、ジビニルビフェニルモノマー、ジビニルナフタレンモノマーに由来する構成単位が好ましい。
4級アンモニウム基含有架橋重合体中における上記架橋性構成単位の含有割合は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることがさらに好ましい。上記架橋性構成単位の含有割合が0.1質量%未満であると、陰イオン交換膜の強度が著しく低下して亀裂を生じたり、膜が過度に膨張したりするため好ましくない。一方、架橋性構成単位の含有割合が10質量%を超えると、膜が脆くなったり、陰イオン交換膜の陰イオン交換容量が低くなって性能が低下するため好ましくない。
また、4級アンモニウム基含有架橋重合体は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、1つのビニル基を有するビニル系モノマーに由来する構成単位を含んでもよく、1つのビニル基を有するビニルモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン等を挙げることができる。
本発明の電解槽において、陰イオン交換膜の構成材料であるポリマーブレンドは、上記4級アンモニウム基含有架橋重合体とともにフッ素系重合体を含有する。
フッ素系重合体としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(E/TFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)およびこれらの混合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。
陰イオン交換膜の構成材料であるポリマーブレンドにおいて、上記4級アンモニウム基含有架橋重合体とフッ素系重合体の合計量に対するフッ素系重合体の含有割合は20〜80質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましく、45〜55質量%であることがさらに好ましい。上記含有割合が20質量%未満であると、十分な耐酸化性を得ることができず、また、80質量%を超えると、陰イオン交換膜のアニオン交換容量が低くなり性能が低下する。
陰イオン交換膜の構成材料であるポリマーブレンドは、上記4級アンモニウム基含有架橋重合体やフッ素系重合体の他に、本発明の目的を損なわない範囲であれば、第三成分として、スチレンモノマー、エチレンモノマー、プロピレンモノマー、ブタジエンモノマー、塩化ビニルモノマー等のモノマーが重合してなる単独重合体または共重合体や、フタル酸エステル等の可塑剤等を含んでもよい。
陰イオン交換膜の陰イオン交換容量は、乾燥状態で単位重量当たり1.0〜4.5mg当量/gであることが適当であり、2.0〜4.0mg当量/gであることが好ましい。陰イオン交換膜の陰イオン交換容量が1.0mg当量/g未満であると、陰イオン交換膜としての性能が低下し易くなり、4.5mg当量/gを超えると、膜の膨張係数が増大して強度低下を招き易くなる。
陰イオン交換膜の膜厚は、通常、5〜500μmであり、10〜300μmであることが好ましい。膜厚が5μm未満であると、実使用条件下で要求される強度を維持し難くなり、500μmを超えると、イオン透過特性等が低下しやすくなる。
本発明の電解槽において、陰イオン交換膜は、例えば、以下に示す陰イオン交換膜の製法a〜cにより作製することができる。
(陰イオン交換膜の製法a)
陰イオン交換膜の製法aは、
(a−1)4級アンモニウム基含有架橋重合体の主骨格付与成分であるスチレンモノマーと、重合開始剤と、さらに必要に応じて、少なくとも2つのビニル基を有する架橋性構成単位付与成分である架橋性モノマーとを混合して、架橋重合体原料混合物を作製する工程と、
(a−2)上記架橋重合体原料混合物とフッ素系重合体と混合してなる樹脂ペーストを成形型中に充填し、加熱、重合することにより、スチレンモノマーに由来する構成単位を含む重合体とフッ素系重合体とを含有するポリマーブレンドからなる膜状物を形成する工程と、
(a−3)上記膜状物中のスチレンモノマーに由来する構成単位にハロアルキル化試薬を接触させてハロゲン化アルキル基を導入した後、ポリアミン化合物を接触させることにより、ハロゲン化アルキル基を構成するアルキレン基に対し、ポリアミン化合物を構成する窒素原子の一つが4級化した4級アンモニウム基を導入する工程と
を含むことを特徴とするものである。
上記重合体原料混合物作製工程(a−1)において、重合開始剤としては、アゾ系化合物を挙げることができ、例えば、2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等を挙げることができ、少なくとも2つのビニル基を有する架橋性構成単位付与成分である架橋性モノマーとしては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
重合体原料混合物中におけるスチレンモノマーの含有割合は、80〜99質量%であることが好ましく、85〜98質量%であることがより好ましく、90〜98質量%であることがさらに好ましい。また、重合体原料混合物は、必要に応じて、スチレンモノマー以外の1つのビニル基を有するビニル系モノマーをさらに含んでもよく、1つのビニル基を有するビニル系モノマーとしては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
上記膜状物形成工程(a−2)において、フッ素系重合体としては、上述したものと同様のものを挙げることができ、樹脂ペーストを構成する架橋重合体原料混合物とフッ素系重合体の合計量に対するフッ素系重合体の含有割合は20〜80質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましく、
45〜55質量%であることがさらに好ましい。また、樹脂ペーストの加熱温度は、架橋重合体原料を構成するスチレンモノマーと架橋性モノマーが重合し得る温度であれば特に制限されず、通常は、20〜120℃であり、30〜100℃であることが好ましい。重合時間は、上記加熱温度にも依るが、通常は、0.5〜48時間であり、1〜48時間であることが好ましい。
上記4級アンモニウム基導入工程(a−3)において用いられるハロアルキル化試薬としては、例えば、クロロメチルメチルエーテルやクロロメチルヘキシルエーテル等を用いることができる。
また、ポリアミン化合物としては、上記炭素数6〜12の環状構造を有するポリアミン化合物を挙げることができる。
上記ハロアルキル化試薬やポリアミン化合物は、必要に応じて適当な溶媒存在下、20〜200℃で常圧下または加圧下で、膜状物と接触させ、反応させることが好ましい。上記接触、反応時間は0.5〜48時間であることが好ましい。
(陰イオン交換膜の製法b)
陰イオン交換膜の製法bは、上記陰イオン交換膜の製法aの原料混合物作製工程(a−1)において、スチレンモノマーに代えてハロゲン化アルキルスチレンモノマーを用い、4級アンモニウム基導入工程(a−3)において、ハロアルキル化試薬を用いない以外は、陰イオン交換膜の製法aと同様の方法である。
ハロゲン化アルキルキルスチレンモノマーとしては、クロロメチルスチレンモノマー、ブロモメチルスチレンモノマー、ヨードメチルスチレンモノマー、クロロエチルスチレンモノマー、クロロプロピルスチレンモノマー、クロロブチルスチレンモノマー、クロロペンチルスチレンモノマー、クロロヘキシルスチレンモノマー等を挙げることができる。
また、重合体原料混合物中におけるハロゲン化アルキルスチレンモノマーの含有割合は、スチレンモノマー換算で、80〜99質量%であることが好ましく、85〜98質量%であることがより好ましく、90〜98質量%であることがさらに好ましい。
(陰イオン交換膜の製法c)
陰イオン交換膜の製法cは、下記一般式(I)
(ただし、Rは、炭素数6〜12の環状構造を有するポリアミン化合物から誘導される官能基であって、前記ポリアミン化合物を構成する窒素原子の一つが4級化して隣接するアルキレン基に化学結合してなる4級アンモニウム基であり、Xは陰イオンであり、nは1〜8の整数である。)
で表される構成単位を含む4級アンモニウム基含有架橋重合体とフッ素系重合体とをブレンドしてポリマーブレンドをなし、得られたポリマーブレンドを成形することを特徴とするものである。
上記4級アンモニウム基含有架橋重合体は、例えば、ハロゲン化アルキルスチレンモノマーに、必要に応じて、少なくとも2つのビニル基を有する架橋性構成単位付与成分である架橋性モノマーを加え、さらに重合開始剤を加えてなる架橋重合体原料混合物を水中に縣濁・分散させて重合し、得られた粒子をポリアミン化合物と反応させ、必要に応じて該粒子を粉砕することで作製することができる。ハロゲン化アルキルスチレンモノマー、架橋性モノマーおよび重合開始剤としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。また、重合体原料混合物中におけるハロゲン化アルキルスチレンモノマーの含有割合は、スチレンモノマー換算で、80〜99質量%であることが好ましく、85〜98質量%であることがより好ましく、90〜98質量%であることがさらに好ましい。
また、上記ポリマーブレンドは、上記4級アンモニウム基含有架橋重合体とフッ素系重合体とを、混練すること等により作製することができる。
陰イオン交換膜の製法cにおいて、ポリマーブレンドを成形する方法としては、ポリマーブレンドを加熱して成形する溶融成形法や、ブレンド物を溶媒に溶解・分散させ、キャストした後、溶媒を除去するキャスト成形法が挙げられる。
溶融成形法における加熱温度は150〜300℃が好ましく、170〜280℃がより好ましく、170〜270℃がさらに好ましい。
また、キャスト成形法において用いられる溶媒としては、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
本発明の電解槽において、陽イオン交換膜としては、フッ素樹脂母体に−SO−基を導入した強酸性陽イオン交換膜等や、またはスチレン−ジビニルベンゼン共重合体母体に−SO−基を導入した強酸性陽イオン交換膜等を挙げることができる。
本発明の電解槽において、陽極および陰極としては、金属、合金、金属酸化物等からなるものや、上記いずれかの材料を基材としてその他いずれかの材料をメッキまたはコーティングしたものや、焼結炭素等からなるものを挙げることができる。特に、陽極としては、耐酸性に優れ、酸化されにくい材料からなるものであることが望ましく、例えばPt、Pd、Ir、β−PbO、NiFe等からなるものが好ましく、陰極としては、耐アルカリ性に優れた材料からなるものであることが望ましく、例えばPt、Pd、Au、炭素鋼、ステンレス、Ag、Cu、グラファイト、ガラス質カーボン等からなるものが好ましい。陽極または陰極の形状としては、板状、パンチングメタル状、メッシュ状等を挙げることができる。
本発明の電解槽に用いられる電解槽ケーシングは、その内壁が、電解槽内に供給される原水や電解質溶液、生成する電解水に対して耐性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、電解槽ケーシングの内壁や電解槽ケーシング全体が、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、アクリル樹脂等の有機材料や、セラミックス、ガラス等の無機材料、及び接液面にゴムライニングや酸化皮膜処理等の対薬品性処理を施した金属材料等により構成されてなるものであることが好ましく、電解水の使用目的によって、電解水中の不純物濃度が低いことが要求される場合には、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体樹脂(PFA)等のフッ素樹脂や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)等の低溶出性有機材料等により構成されてなるものであることが好ましい。
本発明の電解槽において、陰イオン交換膜は陽極近傍に配設されてなる。
本発明の電解槽は、陰イオン交換膜が、陽極と直接接触するか、絶縁性の不織布またはメッシュを介して接触するように配設されてなるものであることが好ましい。
上記不織布やメッシュとしては、ポリエチレン繊維、ポリスチレン繊維、PTFE繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維等の絶縁性の繊維からなるものを挙げることができる。また、上記不織布やメッシュの厚さは、1μm〜5mmであることが好ましく、0.1mm〜3mmであることがより好ましく、0.2mm〜1mmであることがさらに好ましい。
本発明の電解槽が、陰イオン交換膜と陽極とが直接接触するように配設されてなるものである場合、電解電圧を低く抑えることができ、陰イオン交換膜を選択的に透過した陰イオンを高い効率で陽極に接触させて電極反応させることができるので、目的とする陽極反応生成物を効率よく得ることができる。
また、本発明の電解槽が、陰イオン交換膜と陽極とを絶縁性の不織布またはメッシュを介して接触するように配設されてなるものである場合、電解電圧は上昇するが、連続運転時における陰イオン交換膜の酸化をさらに抑制することが可能になる。
陰イオン交換膜と陽極とを直接接触させるか、絶縁性の不織布やメッシュ等を介して配設させるかは、電解装置の使用目的に応じて適宜選択すればよい。
また、本発明の電解槽において、陰イオン交換膜が、陽極と直接接触するか、絶縁性の不織布またはメッシュを介して接触するように配設されない場合には、陰イオン交換膜と陽極とを所定間隔をあけつつ配設されることが好ましく、この場合、陰イオン交換膜と陽極との間隔は、0mmを超え10mm以下であることが好ましく、0mmを超え5mm以下であることがより好ましく、0mmを超え3mm以下であることがさらに好ましい。
本発明の電解槽は、イオン交換膜で区画された、陽極が収納されてなる隔室と陰極が収納されてなる隔室とを有する電解槽であって、上記イオン交換膜の少なくとも一部が陰イオン交換膜であり、該陰イオン交換膜が陽極近傍に配設されてなるものである。このような電解槽としては、陰イオン交換膜で区画され陽極が収納されてなる隔室(陽極室)と、陽イオン交換膜で区画され陰極が収納されてなる隔室(陰極室)と、前記陰イオン交換膜と陽イオン交換膜間に前記両隔室に挟まれるように形成されてなる中間室とを有する3槽式電解槽または一枚のイオン交換膜により、陽極を収納した隔室(陽極室)と陰極を収納した隔室(陰極室)に区画されてなる2槽式電解槽を挙げることができる。
例えば、図1に示す電解槽1は、陰イオン交換膜7で区画され陽極5が収納されてなる陽極室2と、陽イオン交換膜8で区画され陰極6が収納されてなる陰極室4と、陰イオン交換膜7と陽イオン交換膜8間に陽極室2と陰極室4に挟まれるように形成されてなる中間室3とを有する3槽式電解槽を示すものであり、陰イオン交換膜7を陽極5に接触するように配設するとともに、陽イオン交換膜8を陰極6に接触するように配設してなるものである。図1に示す3槽式電解槽においては、後述するように、中間室3に充填または通液した電解質溶液から、陽極5に陰イオン、陰極6に陽イオンをそれぞれ選択的に供給することができる。
また、例えば、図2に示す電解槽1は、一枚の陰イオン交換膜7により、陽極5が収納されてなる陽極室2と陰極6が収納されてなる陰極室4とに区画されてなる2槽式電解槽を示すものであり、陰イオン交換膜7を陽極5の近傍に配設してなるものである。図2に示す電解槽1においては、例えば、陰極室4に食塩水等の電解質溶液を充填または通液しつつ、陽極室2および陰極室4に原水を供給し、陽極5および陰極6に通電して電気分解することにより、陽極室2側にNa等の陽イオンが浸入することを防ぎつつCl等の陰イオンを選択的に供給して陽極室2から不純物濃度の低い、殺菌効果や脱臭効果に優れた酸性電解水を得ることが可能になる。
図2に示すような2槽式電解槽においては、イオン交換膜として、陰イオン交換膜7に陽イオン交換膜を張り合わせたバイポーラ膜を用い、陽極室2や陰極室4に陰イオンや陽イオンを選択的に供給してもよい。
次に、本発明の電解装置について説明する。
本発明の電解装置は、本発明の電解槽を有してなることを特徴とするものである。
本発明の電解装置は、本発明の電解槽の他に、電気分解に必要な周辺装置、例えば、電解用電源装置や、電解質溶液を貯蔵するための薬品タンク、薬品タンクから電解槽へ電解質溶液を送液するポンプ、各種配管等を含むものが適当である。
本発明の電解装置としては、例えば、図1に示すように、電解槽を2枚のイオン交換膜で隔て、陽極室2と陰極室4との間にさらに中間室3を設けた3槽式電解槽を有してなるものであって、陰イオン交換膜7を陽極5に接触するように配設するとともに、陽イオン交換膜8を陰極6に接触するように配設することによって、薬品タンク9から中間室3に充填または通液した電解質溶液から、陽極5に陰イオン、陰極6に陽イオンをそれぞれ選択的に供給し得るものを挙げることができる。図1に示す電解装置においては、陽極室2下部および陰極室4下部から原水を供給する供給配管と、陽極室2および陰極室4上部から処理液を排出する排出配管がそれぞれ接続されており、上記中間室3下部には、薬品タンク9から供給されたハロゲン化物イオン等を含有する電解質溶液が充填または通液される供給配管が接続されるとともに、中間室3上部には、電解質溶液を排出し、薬品タンク9に循環する排出配管が接続されている。
中間室3に電解質溶液を充填または通液する設備としては、電解質溶液を貯留する上記薬品タンク9と、ハロゲン化物イオン含有液等の電解質溶液を薬品タンク9から中間室3に導入すべく設けられたポンプの組合せ等を用いることができる。
薬品タンク9は、その内壁または全体が、電解質溶液による溶解あるいは変質に対して耐性を有する材質からなるものであれば、何ら制限されず、例えば高密度ポリエチレン製のものを挙げることができる。また、ポンプの材質や型式も、用いるハロゲン化物イオン含有液等の電解質溶液に対する充分な耐性があり、必要な添加量が確保される吐出能力を備えたものであれば、何ら制限されないが、例えば接液部がフッ素樹脂からなる、往復動型定量ポンプや遠心ポンプ等を好適に用いることができる。
また、本発明の電解装置としては、例えば、図2に示すように、一枚の陰イオン交換膜7により、陽極5が収納されてなる陽極室2と陰極6が収納されてなる陰極室4とに区画されてなる2槽式電解槽1を有する電解装置を挙げることができ、図2に示す電解装置においては、薬品タンク9からハロゲン化物イオン等を含有する電解質溶液を中間室を介さずに直接陰極室4または陽極室2に供給し、薬品タンク9に循環しない点を除けば、図1に示す電解装置と同様の装置構成を採ることができる。
次に、本発明の酸性電解水の製造方法について説明する。
本発明の酸性電解水の製造方法は、本発明の電解槽を有してなる電解装置を用いて陰イオンを含む被処理水を電気分解することにより酸性電解水を得ることを特徴とするものである。
本発明の酸性電解水の製造方法においては、本発明の電解槽を有してなる電解装置を用い、陽極を収納した隔室に原水を供給しつつハロゲン化物イオン等の陰イオンを供給し、陰極を収納した隔室に少なくとも原水を供給して、電気分解することにより、陽極を収納した隔室から酸性電解水を得ることが好ましい。
例えば、本発明の電解槽が3槽式の電解槽である場合に、該電解槽を有してなる電解装置を用い、電解槽を構成する中間室にハロゲン化物イオンを含有する電解質溶液を供給することにより、陰イオン交換膜を通じて陽極室に選択的にハロゲン化物イオンを供給しつつ、中間室を挟むようにそれぞれ配置された、陽極を収納した隔室および陰極を収納した隔室に原水を供給して、電気分解することにより、陽極を収納した隔室から酸性電解水を得ることができる。
具体的には、図1に示す電解装置において、電解装置を構成する3槽式電解槽1において、薬品タンク9から中間室3にハロゲン化物イオンを含む電解質溶液を充填または通液することにより、中間室3から、陽極を収納した隔室である陽極室2に陰イオン交換膜7を通じてハロゲン化物イオン等の陰イオンを、陰極を収納した隔室である陰極室4に陽イオン交換膜8を通じて陽イオンをそれぞれ選択的に供給しつつ、陽極室2の下部および陰極室4の下部から原水を供給して、(図示しない)電源供給装置から陽極5および陰極6に電圧を印加することにより、陽極2に供給した原水が電気分解され、陽極室2に供給されたハロゲン化物イオン等の陰イオンと適宜反応することにより、陽極室2の上部から酸性電解水を得ることができる。
また、例えば、本発明の電解槽が2槽式の電解槽である場合に、該電解槽を有してなる電解装置を用い、陰極を収納した隔室に原水とハロゲン化物イオンを含有する電解質溶液とを供給することにより陰イオン交換膜を通じて陽極室に選択的にハロゲン化物イオンを供給しつつ、陽極を収納した隔室に少なくとも原水を供給して、電気分解することにより、陽極を収納した隔室から酸性電解水を得ることができる。
具体的には、図2に示す電解装置において、一枚の陰イオン交換膜7により陽極5が収納されてなる陽極室2と陰極6が収納されてなる陰極室4とに区画されてなる2槽式電解槽1を用いて、薬品タンク9から陰極室4に食塩水等の電解質溶液を充填または通液することにより、陽極室2側にNa等の陽イオンが浸入することを防ぎつつCl等の陰イオンを選択的に供給し、陽極室2および陰極室4に原水を供給して、(図示しない)電源供給装置から陽極5および陰極6に電圧を印加して電気分解することにより、陽極2に供給した原水が電気分解され、陽極室2に供給されたハロゲン化物イオン等の陰イオンと適宜反応することにより、陽極室2から不純物濃度の低い、殺菌力に優れた酸性電解水を得ることができる。
上記原水や電解質溶液を各隔室に通液させる場合、電解電流密度は5.0〜15.0A/dm程度であることが好ましい。
本発明の方法で得られる酸性電解水は、pHが、通常、1.0〜4.0である。また、上記電解質溶液が塩化ナトリウム水溶液である場合、得られる酸性電解水は、HCl、Cl、HClO、Oを有している。
本発明の酸性電解水の製造方法では、通常、有効塩素濃度が1〜400ppm である酸性電解水を得ることができるが、後述する用途を考慮すると、酸性電解水の有効塩素濃度は、0.1〜100ppmであることが好適であり、0.3〜60ppmであることがより好適である。
本発明の方法で得られる酸性電解水は、通常、1〜400mg/L程度の次亜塩素酸を含有している。このため、酸化還元電位で1000mV vs Ag/AgCl程度の高い酸化力を有し、後述する各種用途に使用し得る。
また、本発明の酸性電解水の製造方法は、本発明の電解装置を用いていることから、従来の電解装置に比較して電解効率に優れ、消費電力量を抑制しつつ、酸性電解水を製造することができる。このため、本発明の酸性電解水の製造方法においては、低コストで酸性電解水を製造することができる。
本発明の方法で得られる酸性電解水は、殺菌または殺ウィルス用や脱臭用として有効に利用することができる。
例えば、本発明の方法で得られる酸性電解水を、冷却塔内を循環する冷却水と混合することにより、上記冷却水中に侵入し、増殖するレジオネラ属菌等の菌類を殺菌することができる。本発明の方法で得られる酸性電解水が、冷却塔内を循環する冷却水と混合して使用される場合、有効塩素濃度が0.3〜1ppmとなるように調整して使用することが好ましい。特に、本発明の方法で製造される酸性電解水は、酸性電解水製造時の消費電力を抑制しつつ低コストで除菌することができる。
また、本発明の方法で得られる酸性電解水を、プール内または浴槽内の水または温水と混合することにより、該水または温水に侵入し、増殖するレジオネラ属菌等の菌類やウィルスを殺菌、殺ウィルス処理することもできる。
一般に、プールや浴槽等の温浴施設においては、殺菌、殺ウィルス用に次亜塩素酸ソーダが用いられているが、プールにおいて永く水を交換しない場合には(1年に1回程度以下であると)、次亜塩素酸ソーダを連続的に使用しても水質がアルカリ性側に傾いて殺菌効果が極端に落ちることが知られており、また、プール等の足洗い水槽には、一般に高濃度の塩素水が用いられているが、pH 管理がなされていないために、塩素の殺菌効果によって爪が白くなるなどの影響が出る。また、温浴施設の風呂等においては換水の頻度は高いものの、循環回路の水槽や濾過タンク等に発生するスライムを除去するシステムがなく、レジオネラ属菌等が繁殖する場合がある。
本発明の方法で得られる酸性電解水は、低濃度高活性の次亜塩素酸水溶液であり、20〜60ppmの有効塩素濃度を有するものが、約1000ppmの次亜塩素酸ソーダに匹敵する強力な殺菌、殺ウィルス力を持ち、短時間で殺菌処理を行うことができることから、プール内または浴槽内の水または温水を好適に殺菌処理することができる。本発明の方法で得られる酸性電解水がプール内または浴槽内の水または温水と混合して使用される場合、有効塩素濃度が0.4〜1.0ppmとなるように調整して使用することが好ましい。
また、本発明の方法で得られる酸性電解水を、微生物防除用として使用することにより、農薬に対する各種耐性菌を除菌することができる。
各種農薬に対する耐性菌の出現とそれに対抗する真農薬の開発は、深刻かつ緊急を要する事態となっており、耐性菌に対する防除剤が強く求められるようになっている。植物病原性の農薬耐性細菌としては、イネのもみ枯細菌病、内穎褐変病、苗立枯細菌病、褐条病、葉しょう褐変病、タバコの空胴病、ハクサイ、キャベツ、タマネギ、ジャガイモの軟腐病、コンニャクの腐敗病の原因菌で農薬に耐性なものなどが挙げられ、単子葉植物の一科で、イネ、ムギ、トウモロコシ、アワ、ヒエ、サトウキビ、タケなどを含むイネ科植物に対して病原性の農薬耐性細菌としては、白葉枯病、もみ枯細菌病、内穎褐変病、苗立枯細菌病、褐条病、葉しょう褐変病、株腐病、かさ枯病の原因菌で農薬に耐性なものなどが挙げられる。
本発明の酸性電解水を微生物防除剤として使用した場合、酸性電解水中の主要殺菌成分が反応性に富む次亜塩素酸であるために、病害菌に対しても種々の作用を与えて農薬耐性菌を防除することができる。
本発明で得られる酸性電解水を微生物防除用に使用する場合、酸性電解水中の有効塩素濃度は、特に限定されないが、10ppm以上であることが好ましく、25ppm以上であることがより好ましい。また、通常、農薬に使用される界面活性剤等とともに使用してもよい。
また、本発明の方法で得られる酸性電解水を、レストラン及び食堂等に義務付けられている油脂分回収装置(グリストラップ)に流し込む事で装置内における各種腐敗菌の増殖を抑制し、脱臭することもできる。
上記グリストラップにおいては、通常多くの食品残渣が回収槽の中に沈殿しているが、これら食品残渣沈殿は、数日間、数週間または数ヶ月もの間、取り出して廃棄されることは無く、沈殿した食品残渣が腐敗して悪臭を漂わす事も日常的である。沈殿し腐敗した食品残渣は、腐敗菌により様々な臭気物質を作り出すが、これらの臭気物質の多くは悪臭物質に指定されている。
このような悪臭物質の発生菌(腐敗菌)は、次亜塩素酸等により殺菌して、脱臭されるが、本発明の方法で得られる酸性電解水は、低濃度高活性の次亜塩素酸水溶液であり、20〜60ppmの有効塩素濃度を有するものが、約1000ppmの次亜塩素酸ソーダに匹敵する強力な殺菌力を持ち、短時間で殺菌処理を行うことができることから、グリストラップ内の腐敗菌を好適に殺菌し、悪臭の発生を抑制して、脱臭することができる。
通常、グリストラップを殺菌、脱臭処理する際は、各種の洗浄後に本発明の方法で得られる酸性電解水を流し、また、一日の厨房作業の終了後に、本発明の方法で得られる酸性電解水を流し込むことにより、各種腐敗菌の増殖を抑制して、脱臭することができる。
本発明の方法で得られる酸性電解水がグリストラップの殺菌、脱臭用に使用される場合、酸性電解水は、有効塩素濃度が5〜60ppmとなるように調整して使用されることが好ましい。
また、本発明の方法で得られる酸性電解水を、そのまま、あるいは洗濯水に混合することにより、洗濯物を脱臭することもできる。
一般に衣類についた臭いは、洗濯をすることによって汚れとともに除去する方法がとられており、これは衣類に付着した臭い成分を洗濯水が溶解することにより行われている。臭いの原因となる成分は様々なものがあるが、臭い成分の性質に合わせた消臭方法は講じられてこなかった。このため、洗濯水に対し十分に溶解しない臭い成分は衣類に残ることとなり、洗い上がりの洗濯物であっても臭いが生ずる原因となる。
衣類に付着している臭い成分にはさまざまなものがあるが、例えば皮脂や食品、油汚れ等のうち、アンモニアや微生物の代謝物等のアルカリ性を示す臭い成分は、
本発明の方法で得られる酸性電解水を洗濯水に混合することによって中和し、臭いの発生を抑えることができ、また、酸性電解水に含まれる次亜塩素酸の殺菌作用により、雑菌の繁殖を抑制して臭いの発生を抑えることができる。そのため、本発明の方法で得られた電解酸性水をそのまま、あるいは洗濯水に混合した状態ですすぎを行うことで、洗濯物の脱臭を行うことができる。
本発明の方法で得られる酸性電解水が洗濯物の脱臭用に使用される場合、酸性電解水は、洗濯水と混合したときに有効塩素濃度が1〜10ppmとなるように調整して使用されることが好ましい。
次に、本発明のアルカリ性電解水の製造方法について説明する。
本発明のアルカリ性電解水の製造方法は、本発明の電解槽を有してなる電解装置を用いて陽イオンを含む被処理水を電気分解することによりアルカリ性電解水を得ることを特徴とするものである。
本発明のアルカリ性電解水の製造方法においては、本発明の電解槽を有してなる電解装置を用い、陰極を収納した隔室に原水を供給しつつ陽イオンを供給し、陽極を収納した隔室に少なくとも原水を供給して、電気分解することにより、陰極を収納した隔室からアルカリ性電解水を得ることが好ましい。
例えば、本発明の電解槽が3槽式の電解槽である場合に、該電解槽を有してなる電解装置を用い、電解槽を構成する中間室に電解質溶液を供給することにより陽イオン交換膜を通じて陰極室に選択的に陽イオンを供給しつつ、中間室を挟むようにそれぞれ配置された、陽極を収納した隔室および陰極を収納した隔室に原水を供給して、電気分解することにより、陰極を収納した隔室からアルカリ性電解水を得ることができる。
具体的には、図1に示す電解装置において、電解装置を構成する3槽式電解槽1において、薬品タンク9から中間室3に電解質溶液を充填または通液することにより、中間室3から、陰極室4に陽イオン交換膜8を通じて陽イオンを、陽極室2に陰イオン交換膜7を通じて陰イオンをそれぞれ選択的に供給しつつ、陰極室4の下部および陽極室2の下部から原水を供給して、(図示しない)電源供給装置から陽極5および陰極6に電圧を印加することにより、陰極室4に供給した原水が電気分解され、陰極室4に供給された陽イオンと適宜反応することにより、陰極室4の上部からアルカリ性電解水を得ることができる。
上記原水や電解質溶液を各隔室に通液させる場合、電解電流密度は5.0〜15.0A/dm程度であることが好ましい。
本発明の方法で得られるアルカリ性電解水は、pHが、通常、10〜13程度である。
本発明の方法で得られるアルカリ性電解水は、通常、pH10以上の高いアルカリ性を示すものであることから、鹸化作用や乳化作用に優れ、以下に詳述するように脱脂用途等に優れた効果を発揮する。また、アルカリ性であることによって、水溶液中で粒子が有するゼータ電位を負電位側に変化させる効果も発揮して、例えば、研磨処理後の各種被処理物の表面を効果的に洗浄することができる。
本発明のアルカリ性電解水の製造方法は、本発明の電解装置を用いていることから、従来の電解装置に比較して電解効率に優れ、消費電力量を抑制しつつ、アルカリ性電解水を製造することができる。このため、本発明のアルカリ性電解水の製造方法においては、低コストでアルカリ性電解水を製造することができる。
本発明の方法で得られるアルカリ性電解水は、脱臭用であることが好ましい。
例えば、本発明の方法で得られるアルカリ性電解水を、そのまま、あるいは洗濯水に混合することにより、洗濯物を脱臭することもできる。
上述したように、一般に衣類についた臭いは、洗濯をすることによって汚れとともに除去する方法がとられており、これは衣類に付着した臭い成分を洗濯水が溶解することにより行われている。
衣類に付着している臭い成分にはさまざまなものがあるが、例えば皮脂や食品、油汚れ等のうち、空気酸化または微生物分解により酸性を示すものは本発明の方法で得られるアルカリ性電解水を洗濯水としてそのまま、あるいは洗濯水に混合することによって中和し、臭いの発生を抑えることができる。
本発明の方法で得られるアルカリ性電解水が洗濯物の脱臭用に使用される場合、アルカリ性電解水は、洗濯水としてそのまま、あるいは混合したときにpHが10〜12となるように調整して使用されることが好ましい。
また、本発明の方法で得られるアルカリ性電解水は、脱脂用または微粒子除去用であることが好ましい。
例えば、本発明の方法で得られるアルカリ性電解水を用いて、被処理物を洗浄することにより、被処理物表面の脱脂洗浄または微粒子除去を行うことができる。
金属加工後に加工物に塗装する場合やメッキ加工を施す場合、被処理物表面に付着した切削油や金属粉を予め洗浄除去する必要がある。また、圧延処理を行う場合、被処理物表面の酸化膜を除去したり、被処理物表面に付着した圧延油や防錆油、金属粉などの固体汚れを洗浄除去する必要がある。
通常、金属加工後の加工物は、切削屑や切削油の除去を目的として洗浄が行われており、該洗浄処理後に防錆油を表面塗布し発錆防止処理した上で次の処理工程に送られている。従来、上記洗浄処理には、揮発油系薬剤や、トリクロロエチレン、フロンなどが用いられてきたが、これらの薬剤は地球温暖化物質の使用禁止に伴い利用できなくなってきている。また、上記洗浄処理には、合成界面活性剤や、リン系の防錆剤が用いられてきたが、これらの化合物を有する廃液は分解されにくいため、環境に対する負荷が大きくなる。
そこで、本発明の方法で得られたアルカリ性電解水を用いて被処理物表面を洗浄することで、圧延油、防錆油等の油脂や、酸化皮膜や、金属粉(粒径が、通常0.1〜10μm程度であるもの)などの付着物を除去し、さらには防錆効果のある皮膜を生成することで、洗浄処理による環境負荷を大幅に低減することができる。
本発明の方法で得られるアルカリ性電解水が脱脂用または微粒子除去用に使用される場合、アルカリ性電解水は、pHが8.5〜13となるように調整して使用されることが好ましい。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
(1)イオン交換膜の作製
(i)陰イオン交換膜の作製
クロロメチルスチレン(純度88%、東京化成社製)100重量部と、ジビニルベンゼン(純度80%、アルドリッチ社製)10重量部と、重合開始剤である2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬社製)1.0重量部とを、ポリフッ化ビニリデン粉末(呉羽化学製)100重量部と混合し、均一な樹脂ペーストを調製した。
この樹脂ペーストをポリエチレン製の型(100mm×200mm×0.2mm)に流し込み、密封後、60℃で24時間重合した。
重合後、急冷して膜を型から剥離させ、得られた膜を、環状構造を有するポリアミン化合物であるトリエチレンジアミン(東京化成社製)20重量部とメタノール200重量部からなる溶液に浸漬させ、40℃で24時間反応させた。反応終了後、メタノールで十分洗浄して未反応トリエチレンジアミンを除去し、純水で洗浄して厚み200μmの陰イオン交換膜を得た。
上記陰イオン交換膜は、上記一般式(I)で表される構成単位を含む4級アンモニウム基含有架橋重合体とフッ素系重合体のポリマーブレンドからなるものであり、4級アンモニウム基含有架橋重合体中における、ジビニルベンゼンに由来する架橋性構成単位の含有割合は、4.4質量%であり、4級アンモニウム基含有架橋重合体とポリフッ化ビニリデンの合計量に対するポリフッ化ビニリデンの含有割合は48質量%である。
また、この陰イオン交換膜の陰イオン交換容量(中性塩分解容量)は、乾燥状態で1.7mg当量/gであった。
上記陰イオン交換膜を縦11cm、横6cmに切断したものを、図1に示す電解装置に供する陰イオン交換膜7とした。
(ii)陽イオン交換膜の作製
フッ素系陽イオン交換膜(デュポン社製ナフィオンN-115、厚さ127μm)を縦11cm、横6cmに切断したものを、図1に示す電解装置に供する陽イオン交換膜8とした。
(2)電解装置の作製
(1)で得られた各イオン交換膜を用いて、図1に示すような電解装置を作製した。
陽極5としては、チタン基板に酸化イリジウムを被覆したパンチングメタル形状の電極を選定し、陰極6としては、チタン基板に白金を被覆したパンチングメタル形状の電極を選定した。各電極は、有効面積が50cmであり、開口率が47.2%となるように表面に直径3mmの孔を有している。
図1に示すように、陽極5と陰極6を、それぞれ陰イオン交換膜7と陽イオン交換膜8に密着するように配設して、電解槽1内を仕切ることにより、3槽式電解槽1を作製した。また、得られた3槽式電解槽の中間室3には、薬品タンク9内の電解質溶液を槽の下部から上部へ通液する供給、排出配管を設けるとともに、陽極室2および陰極室4には、水道水を槽の下部から上部へ通液する供給、排出配管を設けることにより、図1に示すような電解装置を得た。
(3)連続電解
(2)で得られた電解装置を用いて、連続電解運転を行った。
中間室3には、薬品タンク9から送液ラインを通じて飽和食塩水を循環通液し、陽極室2および陰極室4には、供給配管を通じて水道水を流速0.31/minで通液した。また、陽極5および陰極6から14A/dmの電流密度にて定電流電解運転を行った。
電場によって泳動した塩化物イオンおよびナトリウムイオンは、イオン交換膜を通過してそれぞれ陽極室2や陰極室4へ導入される。そして、陽極室2において、上記塩化物イオンと水道水の電解生成物が適宜反応して、HCl、Cl、HClOおよびOを含む酸性電解水(陽極水)を陽極室2の上部から排出し、陰極室4において、上記ナトリウムイオンと水道水の電解生成物が適宜反応して、NaOHおよびHとを含むアルカリ性電解水(陰極水)を陰極室4の上部から排出した。陽極室2の出口から排出された陽極水中の有効塩素濃度の経時変化を図3に示す。
図3に示すように、本実施例においては、2200時間の連続運転試験を通じて、陽極水中の有効塩素濃度35〜42mg/L(ppm)の電解効率を維持することができ、この効率は2200時間経過後も維持し得る傾向にあった。この時の酸性電解水中の有効塩素濃度から電流効率を求めたところ、電流効率は39.9%であった。
(比較例1)
陰イオン交換膜として、スチレン−ジビニルベンゼンを母体とし、トリメチルアンモニウム基を陰イオン交換基として有する材料からなる陰イオン交換膜を用いた以外は、実施例1と同様にして電解装置を得た。本電解装置を用い、実施例1と同様にして連続電解運転を行ったときの、陽極室2の出口から排出される陽極水中の有効塩素濃度の経時変化を図3に示す。
図3に示すように、本例で得られた電解装置は、連続運転時間400時間付近から有効塩素濃度の低下が顕著となり、460時間経過時には陰イオン交換膜が破損して、運転継続が不可能となった。この時の酸性電解水中の有効塩素濃度から電流効率を求めたところ、電流効率は24.1%であった。
実施例1および比較例1とを対比することにより、本発明の電解装置は、陰イオン交換膜を陽極近傍に配設してなるものであるにも関わらず、陰イオン交換膜の酸化劣化を抑制しつつ、高効率に純度の高い電解生成物を得ることができ、長時間の連続運転が可能なものであることが分かる。
(実施例2)
実施例1(1)〜(2)と同様の方法により電解装置を作製し、実施例1(3)と同様の方法にして連続電解することにより、陽極室2の出口から陽極水(酸性電解水)を排出し、得られた酸性電解水の有効塩素濃度が30ppmになるように調整した。
上記有効塩素濃度を調整した酸性電解水10mLに対し、試験菌(クロカワカビ)液0.1mLを接種して、生菌数6.0×10/mLの試験液を得た。この試験液を室温で保存し、30秒後、1分後および5分後に試験液を直ちに10倍希釈し、菌数測定用培地であるGLPL寒天培地(日本製薬社製)を用い、混釈平板培養法にて25℃±1℃の温度下で7日間培養した後、生菌数を測定した。
その結果、酸性電解水に対して試験菌を接種した後、30秒保存した試験液では、生菌数は6.0×10/mLから10未満/mLまで低下した。また、酸性電解水に対して試験菌を接種した後、1分間および5分間保存した試験液でも同様の結果が得られた。本結果より、上記酸性電解水が殺菌用途に好適であることが分かる。
(実施例3)
実施例1(1)〜(2)と同様の方法により電解装置を作製し、実施例1(3)と同様にして連続電解することにより、陽極室2の出口から陽極水(酸性電解水)を排出し、有効塩素濃度32ppm、pH3.5になるように調整した。
上記有効塩素濃度を調整した酸性電解水0.9mLに対し、ネコカリシウィルス液(感染価:約5×10TCID50/mL)0.1mLを加え、攪拌機を用いてよく混合し室温で30秒間作用させた後、直ちに3%チオ硫酸ナトリウム0.1mLを加えて反応を停止させて測定試料原液を得、次いで得られた測定試料原液をPBS(Phosphate-Buffered Salines、リン酸緩衝液)で10倍階段希釈して、ウィルス溶液とした。
FBS(Fetal bovine serum、ウシ胎児血清)を5%添加したPBSを加えたDMEM培地(Dulbecco's modified Eagle's Medium)にCRFK細胞(細胞数8×10cells/mL)を懸濁して懸濁液とし、この懸濁液50μLと上記ウィルス溶液50μLとを混合した後、得られた混合液を96穴マイクロプレートに植え込んだ。
96穴マイクロプレート中でウィルスと接触させたCRFK細胞を、37℃の炭酸ガス孵卵器内で4日間培養した後、倒立顕微鏡によりウィルス感染による細胞変性効果(Cytopathogenic effect:CPE)の有無を観察した。細胞変性効果の結果からウィルス感染価(TCID50/mL)を求め、残存ウィルス感染価を算出した。なお、残存ウィルス感染価の算出に際して、反応時間0分の試料は、FBSを5%添加したPBSで代用した。
その結果、酸性電解水に対してネコカリシウィルスを接触し、30秒間作用させたウィルス溶液では、ウィルス感染価が4.5×10TCID50/mLから検出限界(63TCID50/mL)未満まで低下した。
本結果より、上記酸性電解水が殺ウィルス用途に好適であることが分かる。
(実施例4)
実施例1(1)〜(2)と同様の方法により電解装置を作製し、実施例1(3)と同様にして連続電解することにより、陽極室2の出口から陽極水(酸性電解水)を排出し、得られた酸性電解水の有効塩素濃度が20ppmになるように調整した。また、陰極室4の出口から陰極水(アルカリ性電解水)を排出し、得られたアルカリ性電解水のpHが11.0になるように調整した。
フッ化ビニル製の袋に上記酸性電解水5mLを封入した上で、空気3Lを封入したものを4つ準備し、各袋に、それぞれ、4大悪臭物質と呼ばれるアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、硫化水素を添加した。同様に、フッ化ビニル製の袋に、上記アルカリ性電解水5mLと空気3Lを封入したものを4つ準備し、各袋にそれぞれ、アンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、硫化水素を添加するとともに、フッ化ビニル製の袋に、水道水5mLと空気3Lを封入したものを4つ準備し、各袋にそれぞれ、アンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、硫化水素を添加した。
袋内の悪臭物質濃度をガス検知管((株)ガステック、光明理化学工業(株)製)にて測定した上で、上記各袋を室温で静置し、所定時間経過時における袋内の悪臭物質濃度を逐次測定した。結果を図4〜図7に示す。
図4に記載しているように、本実施例で得られた酸性電解水やアルカリ性電解水はアンモニアの脱臭性に優れ、特に酸性電解水は、初期濃度100ppmであったアンモニアを10分後に約43ppm、180分後に8ppmに低減させた。一方、水道水は、初期濃度100ppmであったアンモニアを10分後に約58ppm、180分後に19ppmに低減させるに止まった。
また、図5に記載しているように、本実施例で得られた酸性電解水やアルカリ性電解水はトリメチルアミンの脱臭性に優れ、特に酸性電解水は、初期濃度70ppmであったトリメチルアミンを10分後に約38ppm、180分後に16ppmに低減させた。一方、水道水は、初期濃度70ppmであったトリメチルアミンを10分後に約60ppm、180分後に39ppmに低減させるに止まった。
また、図6に記載しているように、本実施例で得られた酸性電解水やアルカリ性電解水はメチルメルカプタンの脱臭性に優れ、特に酸性電解水は、初期濃度10ppmであったメチルメルカプタンを10分後に6.1ppm、180分後に2.9ppmに低減させた。一方、水道水は全く効果が無く、180分後も初期濃度である10ppmを保っていた。
図7に記載しているように、本実施例で得られた酸性電解水やアルカリ性電解水は硫化水素の脱臭性に優れ、特にアルカリ性電解水は、初期濃度20ppmであった硫化水素を30分後に約6ppm、180分後に4ppmに低減させた。一方、水道水は、初期濃度20ppmであった硫化水素を30分後に約18ppm、180分後に16ppmに低減させるに止まった。
図4〜図7に示す結果より、本発明の酸性電解水およびアルカリ性電解水が脱臭用途に好適であることが分かる。
本発明によれば、陰イオン交換膜を陽極近傍に配設した場合であっても、陰イオン交換膜の酸化劣化を抑制しつつ、高効率に純度の高い電解生成物を得ることができ、長時間の連続運転が可能な電解槽および該電解槽を有してなる電解装置を提供することができる。また、本発明によれば、上記電解槽を有してなる電解装置を用いて、消費電力量を抑制しつつ、低コストで酸性電解水やアルカリ性電解水を製造する方法を提供することができる。
1 電解槽
2 陽極室
3 中間室
4 陰極室
5 陽極
6 陰極
7 陰イオン交換膜
8 陽イオン交換膜
9 薬品タンク

Claims (13)

  1. イオン交換膜で区画された、陽極が収納されてなる隔室と陰極が収納されてなる隔室とを有する電解槽であって、
    前記イオン交換膜の少なくとも一枚が陰イオン交換膜であり、
    該陰イオン交換膜が、下記一般式(I)

    (ただし、Rは、炭素数6〜12の環状構造を有するポリアミン化合物から誘導される官能基であって、前記ポリアミン化合物を構成する窒素原子の一つが4級化して隣接するアルキレン基に化学結合してなる4級アンモニウム基であり、Xは陰イオンであり、nは1〜8の整数である。)
    で表される構成単位を含む4級アンモニウム基含有架橋重合体とフッ素系重合体とを含有するポリマーブレンドからなり、
    前記陰イオン交換膜が陽極と直接接触するようにあるいは絶縁性の不織布もしくはメッシュを介して接触するように配設されてなるか、または前記陰イオン交換膜と陽極との間隔が0mmを超え10mm以下になるように配設されてなる
    ことを特徴とする電解槽。
  2. 前記4級アンモニウム基含有架橋重合体が、少なくとも2つのビニル基を有する架橋性構成単位をさらに含み、前記4級アンモニウム基含有架橋重合体中における前記架橋性構成単位の含有割合が0.1〜10質量%である請求項1に記載の電解槽。
  3. 前記フッ素系重合体が、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレンおよびこれらの混合物から選ばれる1種以上であり、前記4級アンモニウム基含有架橋重合体と前記フッ素系重合体の合計量に対するフッ素系重合体の含有割合が20〜80質量%である請求項1または請求項2に記載の電解槽。
  4. 前記陰イオン交換膜と陽極とが直接接触するか、絶縁性の不織布またはメッシュを介して接触するように配設されてなる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解槽。
  5. 前記電解槽が、陰イオン交換膜で区画され陽極が収納されてなる隔室と、陽イオン交換膜で区画され陰極が収納されてなる隔室と、前記陰イオン交換膜と陽イオン交換膜間に前記両隔室に挟まれるように形成されてなる中間室とを有する3槽式電解槽である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電解槽。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電解槽を有してなることを特徴とする電解装置。
  7. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電解槽を有してなる電解装置を用いて陰イオンを含む被処理水を電気分解することにより酸性電解水を得ることを特徴とする酸性電解水の製造方法。
  8. 得られる酸性電解水が殺菌または殺ウィルス用である請求項7に記載の酸性電解水の製造方法。
  9. 得られる酸性電解水が脱臭用である請求項7に記載の酸性電解水の製造方法。
  10. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電解槽を有してなる電解装置を用いて陽イオンを含む被処理水を電気分解することによりアルカリ性電解水を得ることを特徴とするアルカリ性電解水の製造方法。
  11. 得られるアルカリ性電解水が脱臭用である請求項10に記載のアルカリ性電解水の製造方法。
  12. 得られるアルカリ性電解水が脱脂用である請求項10に記載のアルカリ性電解水の製造方法。
  13. 得られるアルカリ性電解水が微粒子除去用である請求項10に記載のアルカリ性電解水の製造方法。
JP2009210638A 2008-11-06 2009-09-11 電解槽、電解装置、酸性電解水の製造方法およびアルカリ性電解水の製造方法 Expired - Fee Related JP5417097B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009210638A JP5417097B2 (ja) 2008-11-06 2009-09-11 電解槽、電解装置、酸性電解水の製造方法およびアルカリ性電解水の製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008285834 2008-11-06
JP2008285834 2008-11-06
JP2009210638A JP5417097B2 (ja) 2008-11-06 2009-09-11 電解槽、電解装置、酸性電解水の製造方法およびアルカリ性電解水の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010133007A JP2010133007A (ja) 2010-06-17
JP5417097B2 true JP5417097B2 (ja) 2014-02-12

Family

ID=42344553

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009210638A Expired - Fee Related JP5417097B2 (ja) 2008-11-06 2009-09-11 電解槽、電解装置、酸性電解水の製造方法およびアルカリ性電解水の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5417097B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012091121A (ja) * 2010-10-27 2012-05-17 Japan Organo Co Ltd 電解水製造装置
FR2971262B1 (fr) * 2011-02-03 2013-09-13 Ceram Hyd Electrolyseur et ensemble le comportant, notamment pour la production de h2 et de o2
JP5894787B2 (ja) * 2011-03-17 2016-03-30 優章 荒井 電解水の製造装置
US20130146473A1 (en) * 2011-12-13 2013-06-13 Ralph A. Lambert Dual diaphragm electrolysis cell assembly and method for generating a cleaning solution without any salt residues and simultaneously generating a sanitizing solution having a predetermined level of available free chlorine and pH
JP6000058B2 (ja) * 2012-10-23 2016-09-28 札内工業株式会社 電解脱脂方法及び電解脱脂装置
JP6021149B2 (ja) * 2012-11-21 2016-11-09 株式会社レドックス 電解装置
JP6215162B2 (ja) * 2014-09-19 2017-10-18 株式会社東芝 電解装置及び電解方法
JP2018176051A (ja) * 2017-04-11 2018-11-15 パナソニックIpマネジメント株式会社 イオン交換膜およびそれを備えたイオン交換膜積層体、水処理装置
JP6708764B1 (ja) 2019-01-28 2020-06-10 久保田 徹 機能水

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6299487A (ja) * 1985-10-25 1987-05-08 Toyo Soda Mfg Co Ltd 塩の水溶液からの酸,アルカリの分離方法
JPH09217185A (ja) * 1996-02-14 1997-08-19 Permelec Electrode Ltd 3室型電解槽
JP2000212787A (ja) * 1999-01-26 2000-08-02 Chemicoat & Co Ltd 電解方法
JP4091062B2 (ja) * 2005-05-20 2008-05-28 ファースト・オーシャン株式会社 水電気分解用電極
JP2007284705A (ja) * 2006-04-12 2007-11-01 Showa Denko Kk 電解型水素発生装置、水素ガスの発生方法及び燃料電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010133007A (ja) 2010-06-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5417097B2 (ja) 電解槽、電解装置、酸性電解水の製造方法およびアルカリ性電解水の製造方法
US6949178B2 (en) Electrochemical method for preparing peroxy acids
JP5140218B2 (ja) 表面洗浄・表面処理に適した帯電アノード水の製造用電解槽及びその製造法、並びに使用方法
KR100575036B1 (ko) 이산화염소 발생용 전해셀
US7967958B2 (en) Electrode for water electrolysis
US20070074975A1 (en) Methods and Apparatus for the On-Site Production of Hydrogen Peroxide
KR101579044B1 (ko) 전해수 생성 장치
JPH1043764A (ja) 水電気分解用電極及びそれを用いて水を滅菌する方法
CN101223885A (zh) 一种微电解杀菌消毒剂及其制备方法
JP5764474B2 (ja) 電解合成装置、電解処理装置、電解合成方法及び電解処理方法
JP2007521133A (ja) 水の貯蔵容器を処理するための電解装置
US6217741B1 (en) Method for manufacturing bactericide
WO2015087536A1 (ja) 電解質を添加しない殺菌用酸化水を生成する方法
KR101652671B1 (ko) 살균 소독액 포트
JP2008229475A (ja) 滅菌水の製造装置
KR101352887B1 (ko) 수전해 이온수 발생장치
JPH081160A (ja) 水の製造方法及び得られた水
WO2001083378A1 (fr) Procede et dispositif de traitement de clarification d'eau
JPH11100688A (ja) 水電気分解装置及び水電気分解方法
JP2012196643A (ja) 次亜塩素酸水等の生成装置
JP4251059B2 (ja) 殺菌性電解水の製造装置
Umimoto et al. Development of device producing electrolyzed water for home care
EP0802164B1 (en) Process for producing bactericide and for sterilizing water
JPH1099863A (ja) 用水の殺菌方法及びこれに用いる用水処理装置
JP3220355B2 (ja) 被処理水の電気化学的処理方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120417

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130626

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130828

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131016

TRDD Decision of grant or rejection written
A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131118

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5417097

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees