JP5413412B2 - 車両の側部衝撃吸収装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の側部衝撃吸収装置に関し、車両側面衝突後半におけるサイドエアバッグから乗員腰部への入力を低減できる側部衝撃吸収装置に関する。
特許文献1は、従来の一例の側部衝撃吸収装置を開示している。該装置では、サイドドアのアウタパネルとインナパネルとの間にインパクトバーが設けられ、インナパネルとドアトリム間に腰部衝撃吸収パッドが設けられ、車両側面視でインパクトバーとラップしない位置にサイドエアバッグユニットが配置されている。
上記の従来装置では、衝突してくる相手車両(以下、加害車両という)から側面衝突された際、加害車両のバンパがインパクトバーを車室内側に変形させ、インナパネル、腰部衝撃吸収パッド、ドアトリムを車室側に押し込み、腰部側方に展開したサイドエアバッグに入力を与え、乗員の腰部を拘束する。
特開2009−173139号公報
しかし、上記の従来装置には、つぎの問題がある。
側面衝突時に腰部衝撃吸収パッドを介してドアトリム全体を乗員腰部側に撓ませているので、衝突後半のサイドエアバッグからの腰上部および腹下部への入力を低減することができない。
本発明の目的は、車両側面衝突後半におけるサイドエアバッグから乗員腰部への入力を低減できる側部衝撃吸収装置を提供することにある。
(1)本発明の車両の側部衝撃吸収装置は、サイドドアのアウタパネルに沿ってドア内に配置されたインパクトバーと、乗員の腰部および腹下部の側方でサイドドアのドアトリムの裏面に配置され車両側面視でインパクトバーとラップする部分を有する乗員腰部保護用の衝撃吸収部材と、側面衝突時にドアトリムと乗員側部との間に展開膨張するサイドエアバッグと、を備える。衝撃吸収部材は、展開したサイドエアバッグの下部と車両側面視でラップし展開したサイドエアバッグからの荷重が入る入力部と、該入力部を除いた部分からなる一般部とを有し、入力部は一般部との連結部を有し入力部は少なくとも一般部との連結部において一般部のうち入力部に下方から接続する部分よりも薄肉に設定されている。
上記(1)の車両の側部衝撃吸収装置は、後述する本発明の実施例1、2の両方に適用される。
(2)上記(1)の車両の側部衝撃吸収装置において、衝撃吸収部材は、該衝撃吸収部材における車両側面視でインパクトバーとラップする部分の少なくとも一部に、サイドドアのインナパネルに設けられた孔を挿通してインパクトバー側に突出する突出部を有する。
上記(2)の車両の側部衝撃吸収装置は、本発明の実施例1、2の両方に適用される。
(3)上記(1)または(2)の車両の側部衝撃吸収装置において、衝撃吸収部材の入力部は着座した小柄な乗員の腰上腸骨および腹下部の側方に対応する部位に設定される。「小柄」とは、たとえば、AF05の体格をいう。
上記(3)の車両の側部衝撃吸収装置は、本発明の実施例1、2の両方に適用される。
(4)上記(1)〜(3)の何れか1つの車両の側部衝撃吸収装置において、衝撃吸収部材は、車両側面視で入力部の車両前後方向前後の位置に衝撃吸収部材の上端から入力部の下端部かそれより下方の位置まで延びる切り込みを有し、入力部の少なくとも連結部は入力部前後の切り込み間の車両前後方向全長にわたって一般部のうち入力部に下方から接続する部分よりも薄肉に設定されている。
上記(4)の車両の側部衝撃吸収装置は、本発明の実施例1、2の両方に適用される。
(5)上記(2)〜(4)の何れか1つの車両の側部衝撃吸収装置において、突出部は衝撃吸収部材の入力部より車両前後方向前方に設けられている。
上記(5)の車両の側部衝撃吸収装置は、本発明の実施例1、2の両方に適用される。
(6)上記(2)〜(5)の何れか1つの車両の側部衝撃吸収装置において、縦軸にサイドエアバッグから乗員腰部および腹下部に入る荷重をとり横軸に加害車両バンパの乗員腰部に対するストロークをとったグラフ上で、突出部と入力部をもつ衝撃吸収部材は第1の曲線をえがき突出部と入力部をもたない比較衝撃吸収部材は第2の曲線をえがく。第1の曲線は第1の勾配で立ち上がる第1の領域と第1の勾配より小さい第2の勾配で荷重のピーク値まで上昇する第2の領域を有する。
第1の曲線は第2の領域に第2の曲線との交点を有し、該交点が第1の曲線における第2の領域の中間部分に位置し、該交点より荷重小の領域では第1の曲線は第2の曲線より同じ荷重でストロークが小であり、該交点より荷重大で第1の曲線の荷重のピーク値までの領域では第1の曲線は第2の曲線より同じストロークで荷重が小であるように、入力部の少なくとも連結部の肉厚、入力部の上下方向高さ、突出部の一般部からの車両左右方向突出量が設定されている。
上記(6)の車両の側部衝撃吸収装置は、本発明の実施例1、2の両方に適用される。
(7)上記(1)〜(6)の何れか1つの車両の側部衝撃吸収装置において、入力部の車両前後方向前後の切り込みのうち前側の切り込みは後側の切り込みより車両前後方向幅が大に設定されており、前記前側の切り込みはポール衝突時に荷重が乗員にかかることを防止するスペースを形成する。
上記(7)の車両の側部衝撃吸収装置は、本発明の実施例2に適用される。
上記(1)の車両の側部衝撃吸収装置では、側面から加害車両が衝突してきた際に、サイドエアバッグが乗員の側部とドアトリム間に展開する。加害車両のバンパがサイドドアに衝突し、サイドドア内のインパクトバーを室内側に押して変形させ、さらにドアトリム内の衝撃吸収部材を介してドアトリムを室内側に押し込むことで、腰部および腹下部の横に展開したサイドエアバッグに入力を与え、乗員の腰部を拘束する。
加害車両のバンパはさらに進入し、ドアトリムおよびサイドエアバッグを介しての腰部および腹下部への荷重がさらに増大していく。この時、サイドエアバッグは腰部および腹下部からの反力をドアトリムを介して衝撃吸収部材に入力する。入力部は少なくとも一般部との連結部において一般部の連結部下方部分よりも薄肉に設定されているので、サイドエアバッグからドアトリムを介して入力部に加わる入力がバンパーの進入につれて増加していくと、入力部が一般部に対して車両左右方向外側に倒れるように変形し、さらに増加すると連結部で破断する。入力部が車両左右方向外側に変形または破断すると、入力部内側のドアトリム部分も車両左右方向外側に撓み、乗員の腰上腸骨部および腹下部への入力を減少させ、乗員の傷害値を低減できる。
上記(2)の車両の側部衝撃吸収装置によれば、衝撃吸収部材がインナパネルに設けられた孔を挿通してインパクトバー側に突出する突出部を有するので、突出部先端とインパクトバーとの隙間を突出部が無い場合よりも小さくすることができる。その結果、突出部が無い場合に比べて、側面衝突時にインパクトバーが衝撃吸収部材の突出部に早期に当接し、ドアドリムを室内側に早期に押し込み、展開したサイドエアバッグを介して乗員腰部を早期に拘束できる。
上記(3)の車両の側部衝撃吸収装置によれば、衝撃吸収部材の入力部が着座した小柄な乗員の腰上腸骨および腹下部の側方に対応する部位に設定されているので、耐性の相違から大柄な乗員より厳しい小柄な乗員を優先的に保護できる。
上記(4)の車両の側部衝撃吸収装置によれば、衝撃吸収部材が車両側面視で入力部の車両前後方向前後の位置に切り込みを有しているので、入力部を前後の一般部からの影響を受けることなく確実に破断することができる。
上記(5)の車両の側部衝撃吸収装置によれば、突出部が衝撃吸収部材の入力部下方部分より車両前後方向前方に設けられているので、突出部の位置が側面衝突時におけるインパクトバーの変形の最大部であるインパクトバーの長手方向中央部に近づき、インパクトバーの変形の最大部または最大部近傍で突出部を押すことにより乗員腰部を早期に拘束することができる。
上記(6)の車両の側部衝撃吸収装置によれば、第1の曲線の第2の曲線との交点を第1の曲線における第2の領域の中間部分に設定したことにより衝撃吸収部材のエネルギ吸収効果を比較衝撃吸収部材のエネルギ吸収効果とほぼ同じに維持できる。そして衝撃エネルギを実質的に増大させずに、突出部により側面衝突時に乗員腰部を早期に拘束でき、入力部により側面衝突時に乗員腰部および腹下部にかかる荷重を低減でき乗員の傷害値を低減できる。
上記(7)の車両の側部衝撃吸収装置によれば、入力部の前側の切り込みを後側の切り込みより幅広としたので、前側の切り込みによりポール衝突時にポール衝突荷重がシート上の前方位置に移動した乗員にかかることを防止することができる。したがって、入力部の前側の切り込みを幅広とするだけで、車両側面衝突とポール衝突とに対して対策できる。
本発明の実施例1に係る、かつ、前側切り込み以外は本発明の実施例2にも準用される車両の側部衝撃吸収装置の透視側面図である。 加害車両のバンパがサイドドアに衝突する前の、図1のA−A断面図である。 加害車両のバンパがサイドドアに衝突した後で入力部が破断する前の、図2に対応する図である。 加害車両のバンパがサイドドアに衝突した後で入力部が破断した後の、図2に対応する図である。 本発明の実施例1に係る、かつ、前側切り込み以外は本発明の実施例2にも準用される車両の側部衝撃吸収装置の衝撃吸収部材の車両外側から見た側面図である。 図5のB−B断面図である。 図6のD部の拡大断面図である。 図5のC部の拡大断面図である。 本発明の実施例2に係る車両の側部衝撃吸収装置の衝撃吸収部材の車両外側から見た側面図である。 図9の衝撃吸収部材の平面図である。 図9のG−G断面図である。 比較衝撃吸収部材の車両外側から見た側面図である。 図12のH−H断面図である。 縦軸にサイドエアバッグから乗員腰部および腹下部に入る荷重をとり横軸に加害車両バンパの乗員腰部に対するストロークをとったグラフ上に、本発明の突出部と入力部をもつ衝撃吸収部材がえがく第1の曲線と、突出部と入力部をもたない比較衝撃吸収部材がえがく第2の曲線を示した、荷重W−ストロークS線図である。
本発明の実施例に係る車両の側部衝撃吸収装置を図1〜図11および図14を参照して説明する。図1〜図8本発明の実施例1に係わり、図9〜図11は本発明の実施例2に係わる。図12、図13は比較衝撃吸収部材である。比較衝撃吸収部材は従来公知とは限らない。実施例1、2にわたって共通に適用可能な構成部分には、実施例1、2にわたって同じ符号を付してある。
図中、FRは車両前後方向前方を示し、OUTは車両左右方向外側、UPは車両上下方向上側を示す。
また、図示例は、左ハンドル車で示しているが、図2〜図4、図6〜図8で車両左右方向を反転させれば右ハンドル車にも適用可能である。本発明は、車両の側部衝撃吸収装置が左ハンドル車に適用された場合と右ハンドル車に適用された場合の両方を含む。
ず、本発明の実施例1に係る側部衝撃吸収装置10を図1〜図8および図14を参照して説明する。図1、図2に示すように、本発明の実施例1に係る側部衝撃吸収装置10は、サイドドア12のアウタパネル14に沿ってドア内に配置されたインパクトバー20と、乗員60の腰部62および腹下部64の側方でサイドドア12のドアトリム18の裏面に配置され車両側面視でインパクトバー20とラップする(重なる)部分を有する乗員腰部保護用の衝撃吸収部材30と、側面衝突時にドアトリム18と乗員側部との間に展開膨張するサイドエアバッグ50と、を備える。インパクトバー20は、車両側面視で車両前方側が後方側よりも高い傾斜した状態で配置されている。衝撃吸収部材30は、展開したサイドエアバッグ50の下部52と車両側面視でラップし展開したサイドエアバッグ50からの荷重が入る入力部32と、該入力部32を除いた部分からなる一般部34とを有する。図5および図6に示すように、入力部32は一般部34との連結部32aを有し入力部32は少なくとも一般部34との連結部32aにおいて一般部34のうち入力部32に下方から接続する部分34aよりも薄肉に設定されている。
図1、図2に示すように、サイドドア12は、金属製のアウタパネル14、アウタパネル14の室内側にある金属製のインナパネル16、インナパネル16の室内側にある樹脂製のドアトリム18を備える。インナパネル16はアウタパネル14に固定される。アウタパネル14とインナパネル16との間、およびインナパネル16とドアトリム18との間には、そえぞれ空間が設けられている。
図1、図2に示すように、インパクトバー20はサイドドア12のアウタパネル14とインナパネル16との間に配置されて車両前後方向に延び、インパクトバー20の長手方向両端部でサイドドア12のアウタパネル14に連結される。側面衝突前にはインパクトバー20の長手方向中間部とアウタパネル14との間には空間が存在する。インパクトバー20は上下方向には加害車両のバンパ70の高さ方向幅をカバーする範囲に配置される。インパクトバー20は展開したサイドエアバッグ50より下方で車両前後方向に延びる。インパクトバー20は、インパクトバー20の長手方向と直交する横断面が車両左右方向に凹凸状に屈曲する板材であってもよいし、またはパイプ状のインパクトビームとインパクトビームに連結された板材とのアッセンブリであってもよい。図2は、インパクトバー20が板材からなる場合を示す。
図5〜図8に示すように、衝撃吸収部材30は樹脂材またはゴム材からなり、たとえばウレタンからなる。ただし、衝撃を吸収できる樹脂材またはゴム材であればウレタンに限るものではない。
図1、図5に示すように、衝撃吸収部材30は車両側面視でほぼ矩形状の部材である。衝撃吸収部材30は複数箇所でドアトリム18の裏面に熱溶着などによって固定される。衝撃吸収部材30の熱溶着部位は局所的に薄肉とされることが望ましい。また、側面衝突時に衝撃吸収部材30の一部が破断した時に落下しないように、衝撃吸収部材30の車両左右方向外側表面は、該外側表面に貼付された図示略の布または可撓性樹脂膜で覆われることが望ましい。
図1、図2に示すように、衝撃吸収部材30は、車両前後方向に着座乗員の腰部の側方に対応する部位と該部位の車両前後方向前後部位にわたって延び、上下方向には着座乗員の腰部上部(腰上腸骨部)および腹下部の側方に対応する部位から着座乗員の腰部下端(尻部)の側方に対応する部位まで延びる。
衝撃吸収部材30は、衝撃吸収部材30の車両前後方向中間部の上部に、展開したサイドエアバッグ50の下端部と車両側面視でラップし展開したサイドエアバッグ50の下端部からの反力が入力される入力部32を有する。衝撃吸収部材30は、さらに入力部32以外の部分である一般部34を有する。
衝撃吸収部材30には、車両側面視で入力部32の車両前後方向前後の位置に、衝撃吸収部材30の上端から下方に向かって延びる切り込み36、38が設けられる。切り込み36、38は衝撃吸収部材30の下端までは延びない。切り込み36、38は入力部32の下端部かそれより下方の位置まで延びる。切り込み36より前側の部分34bと切り込み38より後側の部分34cは一般部34である。
図5、図6に示すように、衝撃吸収部材30の入力部32は、車両前後方向には切り込み36、38の間の全長にわたって延び、上下方向には衝撃吸収部材30の上端から下方に向かって切り込み36、38のうち切り込み深さが小さい方の後側切り込み38の下端近傍まで延びる、ほぼ矩形状部分からなる。入力部32は、車両前後方向にほぼ水平方向に延びている。入力部32の下端は、展開したサイドエアバッグ50の下端かそれより若干上方位置にあり、入力部32には展開したサイドエアバッグ50からの反力が入る。
望ましくは、衝撃吸収部材30の入力部32は着座した小柄な乗員の腰上腸骨62aおよび腹下部64の側方に対応する衝撃吸収部材の部分に設定される。ここで、小柄とは、たとえば、AF05(AFはアメリカ女性体格を意味し、最小柄を0、最大柄を100、平均を50とした時の05に対応する)の体格をいう。
連結部32aは入力部32の一部であり、連結部32aは前後の切り込み36、38の間の全長にわたって延びる。入力部32が一般部34より厚さを薄く設定される場合、入力部32の全域が一般部34のうち入力部32に下方から接続する部分34aよりも薄く設定されてもよいし、連結部32aのみが一般部34のうち入力部32に下方から接続する部分34aより薄く設定されてもよい。図2〜図4および図6は入力部32の全域が一般部34のうち入力部32に下方から接続する部分34aより薄い場合を示している。
図1、図2、図5、図6に示すように、衝撃吸収部材30は、該衝撃吸収部材30における車両側面視でインパクトバー20とラップする部分の少なくとも一部に、インナパネル16に設けられた孔22、たとえばサービスホールを挿通してインパクトバー20側に突出する突出部40を有する。突出部40は衝撃吸収部材30の一部であり、一般部34に一体成形されている。孔22はサービスホールでない孔であってもよい。なお、図示されていないが、サービスホールはサービスホールカバーによって覆われてシールされている。上記突出部40に対応するサービスホールカバーの部分は、突出部40の外形形状に併せて車両左右方向外側に突出形成されている。
突出部40の先端はインパクトバー20に対向する。突出部40の先端とインパクトバー20との間には隙間がある。突出部40の先端とインパクトバー20との間隔は、突出部34以外の一般部34とインパクトバー20との間隔より狭い。突出部40の先端とインパクトバー20との間にインナパネル16は存在せず、側面衝突時にインパクトバー20が加害車両のバンパ70によって押されて変形した時、突出部40は突出部40以外の一般部34よりも先にインパクトバー20に直接接触し車内側に押される。
突出部40は展開したサイドエアバッグ50の下端部52と車両側面視でラップしていなくてもよい。図示例は、突出部40が展開したサイドエアバッグ50の下端部52と車両側面視でラップしない場合を示している。図1および図5では、突出部40の先端形状が側面視で矩形状の場合を示したが、矩形状に限るものではなく、円形、楕円形、矩形状の角を丸めた形状等であってもよい。
図示例では、突出部40は衝撃吸収部材30の一般部34のうち入力部下方部分34aより車両前後方向前方に設けられている。突出部40が入力部下方部分34aより前方に設けられた場合、突出部40はインパクトバー20の長手方向中央部に近づく。インパクトバー20に加害車両のバンパ70から側突荷重がかかった場合、インパクトバー20の長手方向中央部の変形量が長手方向中央部以外の変形量に比べて大きくなるので、突出部40がインパクトバー20によって押されやすくなる。
図12、図13は、上記突出部40と入力部をもたない比較衝撃吸収部材100を示す。比較衝撃吸収部材100は、本発明に含まれない。
また、図14は、縦軸に側面衝突時にサイドエアバッグ50から乗員腰部62の腰上腸骨62aおよび腹下部64に入る荷重Wをとり横軸に加害車両バンパ70の乗員腰部62の中心に対するストロークSをとったグラフ上において、本発明の衝撃吸収部材30と比較衝撃吸収部材100の荷重F対ストロークS特性を示す。
本発明の衝撃吸収部材30のえがく曲線を第1の曲線Fpとし、比較衝撃吸収部材100のえがく曲線を第2の曲線Fcとする。
第1の曲線Fpは、荷重が上昇しない空走領域Fp0と、空走領域Fp0の終点から荷重が急激に増大し大きな第1の勾配で立ち上がる第1の領域Fp1と、第1の領域Fp1の終点から荷重が緩やかに増大し第1の勾配より小さな第2の勾配で第1の曲線の荷重ピーク値Wpmaxまで立ち上がる第2の領域Fp2と、第2の領域Fp2の終点から荷重が0まで荷重が急激に減少する第3の領域Fp3を有する。
第1の領域Fp1は、加害車両のバンパ70がインパクトバー20を室内側に変形させ、衝撃吸収部材30とドアトリム18を室内側に押し、展開したサイドエアバッグ50を介して乗員60をサイドドア12から離れる方向に移動させ乗員腰部62を拘束する領域である。第2の領域Fp2は、加害車両のバンパ70がさらに室内側に進入し、サイドエアバッグ50を介して乗員腰部62をさらに室内側に押し、乗員腰部62にかかる荷重Wは上昇するが、反面、乗員60からサイドエアバッグ50とドアとリム18を介して衝撃吸収部材30にかかる反力(荷重Wと大きさが同じで向きが逆の力)も増大する領域である。第2の領域Fp2の中間点で衝撃吸収部材30の入力部32に亀裂が入り第2の領域Fp2の荷重がピーク値となる近傍領域で破断がほぼ完了する。第3の領域Fp3ではバンパ70のストロークSがほぼ終了して乗員腰部62にかかる荷重Wが減少していき、第3の領域Fp3の領域の後半では乗員60が慣性でバンパ70から離れ、乗員に対するバンパストロークSが若干量減少する。
同様に、第2の曲線Fcは、荷重が上昇しない空走領域Fc0と、空走領域Fc0の終点から荷重が急激に増大し大きな第1の勾配で立ち上がる第1の領域Fc1と、第1の領域Fc1の終点から荷重が緩やかに増大し第1の勾配より小さな第2の勾配で第2の曲線の荷重ピーク値Wcmaxまで立ち上がる第2の領域Fc2と、第2の領域Fc2の終点から荷重が0まで荷重が急激に減少する第3の領域Fc3を有する。
第1の曲線Fpは第2の領域Fp2に第2の曲線Fcとの交点Pを有し、交点Pが第1の曲線Fpにおける第2の領域Fp2の中間部分にくるように、入力部32の少なくとも連結部32aの肉厚、入力部32の上下方向高さ、突出部40の一般部34からの車両左右方向突出量が設定されている。第2の領域Fp2の中間部分とは、第2の領域Fp2の荷重増加分Wincの中心Wcenから荷重増加分Wincの望ましくは±40%にある領域であり、さらに望ましくは±25%にある領域である。ただし、それに限るものではない。中間部分を±40%、±25%にある領域とする理由は、後述するように本発明の衝撃吸収部材30によるエネルギ吸収量を比較衝撃吸収部材100によるエネルギ吸収量とほぼ同じにするためである。
交点Pより荷重小の領域では第1の曲線Fpは第2の曲線Fcより同じ荷重でストロークが小であり、すなわち同じストロークで荷重が大であり、交点Pより荷重大で第1の曲線Fpの荷重のピーク値Wpmaxまでの領域では第1の曲線Fpは第2の曲線Fcより同じストロークで荷重が小である。
入力部32の厚さ、入力部32の上下方向高さ、突出部40の突出量の他、入力部32から一般部34にかけての湾曲部42(図7に示すE部)の曲率半径R1、入力部32から切り込み36、38にかけての湾曲部44(図8に示すF部)の曲率半径R2も、交点Pの設定に考慮されてもよい。R1、R2が小さいほど入力部32は一般部34から破断しやすくなる。
交点Pが第1の曲線Fpにおける第2の領域Fp2の中間部分にくるように入力部32の少なくとも連結部32aの肉厚、入力部32の上下方向高さ、突出部40の一般部34からの車両左右方向突出量が設定されていることによって、本発明の衝撃吸収部材30によるエネルギ吸収量の、比較衝撃吸収部材100によるエネルギ吸収量からの増加分Eincと減少分Edecとがほぼ同じとなる。衝撃吸収部材30によるエネルギ吸収量の、比較衝撃吸収部材100によるエネルギ吸収量からの増加分Eincは、交点Pより小側の第1の曲線Fpと第2の曲線Fcとの間の面積である。また、衝撃吸収部材30によるエネルギ吸収量の、比較衝撃吸収部材100によるエネルギ吸収量からの減少分Edecは、交点Pより大側でかつ第1の曲線Fpが第2の曲線Fcと再び交わる点Paまでの第2の曲線Fcと第1の曲線Fpとの間の面積である。本発明の衝撃吸収部材30によるエネルギ吸収量は比較衝撃吸収部材100によるエネルギ吸収量に比べて減少しないので、本発明の衝撃吸収部材30は比較衝撃吸収部材100に比べて乗員への衝撃を増加させず、衝撃からの乗員保護上望ましい。
また、衝撃吸収部材30に突出部40が設けられていることによって、第14図において、第1の曲線Fpの第1の領域Fp1は第2の曲線Fcの第1の領域Fc1より突出部40の突出量XだけストロークSの小側にオフセットする。
また、衝撃吸収部材30に一般部34より薄肉の連結部32aをもつ入力部32が設けられていることによって、第1の曲線Fpの荷重ピーク値Wpmaxは第2の曲線Fcの荷重ピーク値Wcmaxより低減する。
以上の構成は、本発明の実施例1と実施例2に共通に適用される。
本発明の実施例1の側部衝撃吸収装置10は、さらにつぎの構成を有する。
図5〜図8に示すように、衝撃吸収部材30に形成される切り込み36、38が互いにほぼ同じ深さとほぼ同じ幅を有する。入力部32の上端部は、一般部34の上端部より上方に突出している。
突出部40は衝撃吸収部材30の一般部34の車両前後方向前側の部分に設けられており、入力部32と車両前後方向に離れている。入力部32の室内側面および一般部34の室内側面は、同じ面内にあり、一般部34の車両左右方向外側面は入力部32の車両左右方向外側面より車両左右方向外側にある。突出部40の車両左右方向外側面は一般部34の車両左右方向外側面より車両左右方向外側にある。
本発明の実施例1の側部衝撃吸収装置10は、つぎの作用、効果を有する。
入力部32を設けたことによる作用、効果はつぎのとおりである。
図1、図2に示すように、側面から加害車両が衝突したきた際に、サイドエアバッグ50が乗員60の側部とドアトリム18間に展開する。サイドエアバッグ50は乗員の肩部または胸部からシートクッションの側部上面のすぐ上の位置まで展開する。サイドエアバッグ50はドアトリム18が室内側に変形する前に展開膨張を完了する。
ついで図3に示すように、加害車両のバンパ70がサイドドア12のアウタパネル14に当たってアウタパネル14を車室側に変形させ、バンパ70がアウタパネル14を介してインパクトバー20に衝突し、インパクトバー20を車室側に変形させる。加害車両のバンパ70がさらに進入すると、ドアトリム18内の衝撃吸収部材30を介してドアトリム18を室内側に押し込み、腰部62および腹下部64の横に展開したサイドエアバッグ50の下端部52に入力を与え、乗員の腰部62を拘束する。
この時、図14では、腰部62を拘束し終えた状態は第1の曲線Fpの第1の領域Fp1の上端にある。
加害車両のバンパ70がさらに進入し、バンパの乗員腰部に対するストロークSが増大していくと、乗員腰部に入る入力がさらに増大し、その反力としてサイドエアバッグ50からドアトリム18を介して衝撃吸収部材30の入力部32に入る荷重が増大していき、ついには、図4に示すように、入力部32がその下方の一般部34に対して大きく車両左右方向外側に変形し、破断する。
これを図14で説明すると、乗員腰部に入る入力Wは第1の曲線Fpの第2の領域Fp2に沿って荷重のピーク値Wpmaxまで上昇していく。この時、サイドエアバッグ50は腰部62および腹下部64からの反力をドアトリム18を介して衝撃吸収部材30に入力する。入力部32は少なくとも連結部32aにおいて一般部34の連結部下方部分34aよりも薄肉に設定されているので、サイドエアバッグ50から入力部32に加わる反力がバンパ70の進入につれて増加していくと、入力部32が一般部34に対して車両左右方向外側に倒れるように変形し、さらに増加すると連結部32aで亀裂が発生し、それが進展して破断する。亀裂は図14の交点PよりストロークS小側で発生し、荷重ピーク値Wpmax点近傍で破断が完了すると考えられる。入力部32が車両左右方向外側に変形または破断すると、入力部32の室内側のドアトリム部分も車両左右方向外側に撓み、乗員の腰上腸骨部62aおよび腹下部64への入力を減少させる。図14において、WcmaxとWpmaxの差の荷重分、乗員への入力が減少されるので、乗員の傷害値が低減する。
衝撃吸収部材30の入力部32が小柄な、たとえばAF05の乗員60の腰上腸骨62aおよび腹下部64の側方に対応する部位に設定された場合には、車両衝突において耐性上厳しい小柄な乗員を優先的に保護できる。
また、入力部32の車両前後方向前後の位置に切り込み36、38を設けたので、入力部32のみを確実に破断することができる。
突出部40を設けたことによる作用、効果はつぎのとおりである。
衝撃吸収部材30が突出部40を有するので、突出部40の先端とインパクトバー20との隙間を突出部40が無い比較衝撃吸収部材100の場合よりも小さくすることができる。その結果、図14において、突出部40が無い場合に比べて、側面衝突時にインパクトバー20が突出部40に突出部40の突出量Xに相当するストローク分早期に衝撃吸収部材30に当接し、ドアドリム18を室内側に早期に押し込み、サイドエアバッグ50を介して乗員腰部60を早期に拘束する。これによって、衝突初期のサイドエアバッグ50による腰部62の早期拘束性能が向上する。
また、突出部40が衝撃吸収部材30の入力部32下方の一般部部分34aより車両前後方向前方に設けられている場合、突出部40の位置が側面衝突時におけるインパクトバー20の変形の最大部であるインパクトバーの長手方向中央部に近づき、乗員腰部62を早期に拘束することに役立つ。
交点Pを第1の曲線Fpにおける第2の領域Fp2の中間部分に設定したことによる作用、効果はつぎのとおりである。
図14のグラフにおいて、第1の曲線Fpの第2の曲線Fcとの交点Pを第1の曲線Fpにおける第2の領域Fp2の中間部分に設定したことにより、衝撃吸収部材30によるエネルギ吸収量の、比較衝撃吸収部材100によるエネルギ吸収量からの増加分Eincと減少分Edecとがほぼ同じとなり、衝撃吸収部材30のエネルギ吸収効果を比較衝撃吸収部材100のエネルギ吸収効果とほぼ同等に維持できる。したがって、衝撃吸収部材30のエネルギ吸収効果を比較衝撃吸収部材100のエネルギ吸収効果とほとんど変えることなく、突出部40を設けたことにより側面衝突時に乗員腰部62を早期に拘束でき、入力部32を設けたことにより側面衝突時に乗員腰部62および腹下部64にかかる荷重を低減できる。
以上の作用、効果は、本発明の実施例1と実施例2の共通の作用、効果である。
本発明の実施例1ではさらにつぎの作用、効果が得られる。
入力部32の前後に設けられた切り込み36、38が入力部32の下端部近傍までしか延びておらず、また切り込み36、38の幅がほぼ同じであって前方の切り込み36の幅が後述する実施例2の場合に比べて狭いので、一般部34のうち突出部40を設けることができる領域が広くなり、突出部40の位置の選定において自由度が上がる。
つぎに、本発明の実施例2に係る側部衝撃吸収装置10を説明する。本発明の実施例2に係る側部衝撃吸収装置10は上記の実施例1の説明で実施例2にも適用されるとした部分の構成、作用、効果を有する他、さらに以下の構成、作用、効果を有する。
本発明の実施例2に係る側部衝撃吸収装置10の構成については、図9〜図11に示すように、入力部32の車両前後方向前後の切り込み36、38のうち前側の切り込み36が後側の切り込み38より車両前後方向幅が大に設定されている。前側の切り込み36は、車両がスピンして静止しているポールと斜めから衝突するポール衝突時に、前方に移動した乗員にポールからの荷重がかかることを防止するスペースを形成する。また、前側の切り込み36より前方の衝撃吸収部材部分は一般部34であり、入力部32の上端よりも上方に延びている。突出部40は、前側の切り込み36より前方の一般部部分に形成されている。突出部40の上端は前側の切り込み36の下端部より上方に位置し、突出部40の下端は前側の切り込み36の下端部より下方に位置する。
本発明の実施例2に係る側部衝撃吸収装置10の作用、効果については、入力部32の前側に設けられた切り込み36が幅広でかつ深さが深い切り込みとしてあるのでので、ポール衝突時にポール衝突荷重がシート上の前方位置に移動した乗員にかかることを防止することができる。
10 車両の側部衝撃吸収装置
12 サイドドア
14 アウタパネル
16 インナパネル
18 ドアトリム
20 インパクトバー
22 インナパネルに設けられた孔(サービスホール)
30 衝撃吸収部材
32 入力部
32a 入力部の一般部との連結部
34 一般部
34a 衝撃吸収部材の入力部下方部分
36 前側の切り込み
38 後側の切り込み
40 突出部
50 サイドエアバッグ
52 サイドエアバッグの下端部
60 乗員
62 腰部
62a 腰上腸骨
64 腹下部
70 加害車両のバンパ

Claims (7)

  1. サイドドアのアウタパネルに沿ってドア内に配置されたインパクトバーと、
    乗員の腰部および腹下部の側方でサイドドアのドアトリムの裏面に配置され車両側面視で前記インパクトバーとラップする部分を有する乗員腰部保護用の衝撃吸収部材と、
    側面衝突時に前記ドアトリムと乗員側部との間に展開膨張するサイドエアバッグと、
    を備えた車両の側部衝撃吸収装置であって、
    前記衝撃吸収部材は、展開したサイドエアバッグの下部と車両側面視でラップし展開したサイドエアバッグからの荷重が入る入力部と、該入力部を除いた部分からなる一般部とを有し、前記入力部は前記一般部との連結部を有し前記入力部は少なくとも前記一般部との連結部において前記一般部のうち前記入力部に下方から接続する部分よりも薄肉に設定されている車両の側部衝撃吸収装置。
  2. 前記衝撃吸収部材は、該衝撃吸収部材における車両側面視で前記インパクトバーとラップする部分の少なくとも一部に、サイドドアのインナパネルに設けられた孔を挿通して前記インパクトバー側に突出する突出部を有する請求項1項記載の車両の側部衝撃吸収装置。
  3. 前記衝撃吸収部材の前記入力部は着座した小柄な乗員の腰上腸骨および腹下部の側方に対応する部位に設定される請求項1または請求項2記載の車両の側部衝撃吸収装置。
  4. 前記衝撃吸収部材は、車両側面視で前記入力部の車両前後方向前後の位置に前記衝撃吸収部材の上端から前記入力部の下端部かそれより下方の位置まで延びる切り込みを有し、前記入力部の少なくとも連結部は前記入力部前後の前記切り込み間の車両前後方向全長にわたって前記一般部のうち前記入力部に下方から接続する部分よりも薄肉に設定されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両の側部衝撃吸収装置。
  5. 前記突出部は前記衝撃吸収部材の前記入力部より車両前後方向前方に設けられている請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の車両の側部衝撃吸収装置。
  6. 縦軸にサイドエアバッグから入力部に入る荷重をとり横軸に加害車バンパの乗員腰部に対するストロークをとったグラフ上で、前記突出部と前記入力部をもつ前記衝撃吸収部材は第1の曲線をえがき前記突出部と前記入力部をもたない比較衝撃吸収部材は第2の曲線をえがき、第1の曲線は第1の勾配で立ち上がる第1の領域と第1の勾配より小さい第2の勾配で荷重のピーク値まで上昇する第2の領域を有し、
    第1の曲線は第2の領域に第2の曲線との交点を有し、該交点が第1の曲線における第2の領域の中間部分に位置し、該交点より荷重小の領域では第1の曲線は第2の曲線より同じ荷重でストロークが小であり、該交点より荷重大で第1の曲線の荷重のピーク値までの領域では第1の曲線は第2の曲線より同じストロークで荷重が小であるように、前記入力部の少なくとも前記連結部の肉厚、前記入力部の上下方向高さ、前記突出部の一般部からの車両左右方向突出量が設定されている請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の車両の側部衝撃吸収装置。
  7. 前記入力部の車両前後方向前後の前記切り込みのうち前側の切り込みは後側の切り込みより車両前後方向幅が大に設定されており、前記前側の切り込みはポール衝突時に荷重が乗員にかかることを防止するスペースを形成する請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両の側部衝撃吸収装置。
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