JP5413287B2 - プラスチッククラッド光ファイバ - Google Patents

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Description

本発明は、石英ガラスからなるコア層の外周に、硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成されたクラッド層を設けたプラスチッククラッド光ファイバに関する。
光ファイバの一種に、プラスチッククラッド光ファイバと呼ばれるものがある(例えば、特許文献1参照)。このプラスチッククラッド光ファイバは、例えば純シリカなどの石英系ガラスからなるコア層と、該コアガラスを中心としてその外周上に設けられたプラスチックからなるクラッド層を有する。かかる構造のプラスチッククラッド光ファイバは、通常、線引機で石英系ガラス母材を溶融線引きして光ファイバのコア層を形成した後、該コア層の外周にコーティングダイス等によってクラッド層となる硬化性樹脂を塗布し、硬化させることにより形成される。
特開2008−208225号公報
プラスチッククラッド光ファイバは、クラッド層が上記の通りプラスチックから構成されているため、湿熱環境下に置かれると、伝送損失増加が引き起こされることがある。
本発明は、従来のプラスチッククラッド光ファイバにおける上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、湿熱環境下でも伝送損失増加が抑制されたプラスチッククラッド光ファイバを提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、プラスチッククラッド光ファイバのクラッド層の弾性率と架橋密度との関係に着目し、該クラッド層の平衡弾性率を30MPa以上35MPa以下とすることで、湿熱環境下でも伝送損失増加を抑制できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明のプラスチッククラッド光ファイバは、石英ガラスからなるコア層の外周に、硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成されたクラッド層を設けたプラスチッククラッド光ファイバであって、前記クラッド層の平衡弾性率が30MPa以上35MPa以下であることを特徴とする(請求項1)。
また、本発明のプラスチッククラッド光ファイバの別の好適形態は、前記クラッド層を形成する硬化性樹脂組成物が3官能以上のモノマーを、該3官能以上のモノマー以外を含むベース樹脂100重量部に対して0.5〜13重量部で含むことを特徴とする(請求項2)。
また、本発明のプラスチッククラッド光ファイバの別の好適形態は、前記3官能以上のモノマーが下記式で表される基を分子中に3〜6基有するモノマーであることを特徴とする(請求項3)。
また、本発明のプラスチッククラッド光ファイバの別の好適形態は、前記コア層の径が50μm〜200μm、前記クラッド層の厚さが15μm〜25μmであることを特徴とする(請求項4)。
本発明によれば、湿熱環境下でも伝送損失増加が抑制されたプラスチッククラッド光ファイバを提供することができる。
本発明のプラスチッククラッド光ファイバの一例を示す概略断面図である。 平衡弾性率を説明する概略図である。
以下、本発明のプラスチッククラッド光ファイバについて、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のプラスチッククラッド光ファイバの一例を示す概略断面図である。
プラスチッククラッド光ファイバ1は、純シリカなどの石英系ガラスからなるコア層2の外周に紫外線硬化型樹脂などを硬化させてなるクラッド層3を有する。
例えば、該コア層2の外径は50μm〜200μm、該クラッド層3の厚さは15μm〜25μmとすることができるが、家庭用光複合USBケーブルやHDMIケーブルに用いる場合は、最小許容曲げ半径を小さくして取扱易くするために、該コア層2の外径を50μm〜80μm、該クラッド層3の厚さを15μm〜22.5μmとして、比較的、細径にすることが好ましい。
クラッド層3は、その平衡弾性率が30MPa以上である。平衡弾性率は、動的粘弾性における貯蔵弾性率測定の結果から算出できる。
貯蔵弾性率測定においては、所定の厚みの樹脂シートを試料として作成する。樹脂シートは、硬化性樹脂組成物を紫外線照射により硬化させることにより形成される。次いで、動的粘弾性測定装置を用いて、温度を変えながら、試料の長軸方向に一定周期で振動を与えつつ、貯蔵弾性率の測定を行なう。貯蔵弾性率と温度との関係から、所定温度における貯蔵弾性率を求め、平衡状態(T1(℃))における平衡弾性率G1が求められる(図2参照)。
貯蔵弾性率は、材料に与えられた歪みに対し、弾性的にエネルギーを貯蔵する能力に関係し、力学的物性の一種であり、材料(硬化性樹脂組成物)の弾性的性質を表わす指標となるものである。ガラス領域からゴム領域への転移を表わすガラス転移温度(図2に示すTg(℃))以上(即ち、ゴム状弾性領域)においては、樹脂の高分子セグメントが緩和しきった状態であり、そのときの貯蔵弾性率成分は、結合部分である架橋点に起因する。したがって、ゴム状弾性領域の貯蔵弾性率である平衡弾性率は、その樹脂の架橋密度と関係する。
プラスチッククラッド光ファイバが湿熱環境下に置かれると伝送損失増加が引き起こされる原因は下記のように考えられる。
プラスチッククラッド光ファイバが湿熱環境下に置かれると、クラッド層を構成する樹脂が化学変化によって分解したり、あるいは樹脂中に含まれるフッ素原子が凝集して凝集体を生成する。そして、クラッド層の屈折率が不均一化されることで、伝送損失の増加が引き起こされるものと考えられる。
樹脂の分解や凝集体生成を引き起こす原因としては、熱、紫外線、放射線、水分、可塑剤等の各種添加剤、塩分、微生物または金属触媒などがあり、特に水分や可塑剤によるところが大きい。これらは、通常クラッド層自体には含有されず、例えばクラッド層の外周に形成される熱可塑性樹脂層や、あるいは外環境によってもたらされるものである。
そして、クラッド層に流入した水分や可塑剤によって、コア層との界面付近で散乱体が生成され、これが光を拡散させることで伝送損失が増加する。水分や可塑剤(およびその分解物)はそれ自体が散乱体となる他、水分は樹脂を加水分解させてクラッド層の屈折率を不均一化させる原因ともなり、この部分が散乱体となることで伝送損失増加が引き起こされる。
一方、フッ素原子を含む樹脂は外部から熱などのエネルギーが加わると、よりエネルギーに有利な状態であるフッ素凝集体を生成し易い。この時、可塑剤が存在することでクラッド層に含まれるフッ素原子はより凝集し易くなり、生成された凝集体によりクラッド層の屈折率が不均一化されることで、伝送損失の増加が引き起こされる。
本発明のポリマークラッド光ファイバ1のクラッド層3は、その平衡弾性率が30MPa以上であり、35MPa以下である。平衡弾性率が30MPa以上とすることで、樹脂網目構造の微小化が達成でき、即ち、水分や可塑剤等の分子サイズよりも小さい樹脂網目構造を形成できる。これによって、伝送損失増加の原因となる物質のクラッド層3への流入を防止することができる。こうして、湿熱環境下に置かれても伝送損失の増加が少ない。
一方、平衡弾性率が35MPaよりも大きい場合、硬化収縮によってクラック(微小な亀裂)が生じ、これにより湿熱環境下での伝送損失の増加につながる虞がある。
上記平衡弾性率は、硬化性樹脂組成物に3官能以上のモノマーを含有させることで得られるが、その含有量が多すぎると、樹脂の可撓性が確保できずに破断強度が悪化するとともに、紫外線照射による硬化の際に硬化収縮が生じ易くなる。このため、硬化性樹脂組成物に3官能以上のモノマーを、該3官能以上のモノマー以外を含むベース樹脂100重量部に対して0.5〜13重量部含有させることが望ましい。反応性基が3官能以上のモノマーを上記範囲で含有させることで、樹脂の可撓性を確保できるとともに、硬化収縮によるコア層2への影響を極力抑えながら、所望の架橋密度を達成することができる。
3官能以上のモノマーとしては、利便性の観点から、下記式で表される基を分子中に3〜6基有するものが望ましい。
このようなモノマーには、次のものがある。
3官能モノマーにはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートがある。4官能モノマーには、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(PETA)、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートがある。6官能モノマーには、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)がある。
次にクラッド層3のベース樹脂について説明する。ベース樹脂を構成する材料は、特に限定はされないが、例えば下記の材料を挙げることができる。
クラッド層3はフッ素系紫外線硬化型樹脂を含有する硬化性組成物を硬化することで形成される。フッ素系紫外線硬化型樹脂としては、コア層2をなす石英ガラス対して屈折率が低く、紫外線等の活性エネルギー線で硬化することが可能であり、さらにはこの樹脂を含む硬化性組成物を硬化することによって機械的強度があり、可撓性を有し、かつ透明性に優れた硬化物が得られる樹脂であることが好ましい。このような樹脂には、フッ素原子含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物、フッ素化されたポリエーテルを構造中に有する(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート化されたフッ素原子含有ビニル重合体が挙げられる。
中でも、クラッド層3のベース樹脂は、低い屈折率と安定した透明性、良好な塗布性、コア層との密着性、強度・柔軟性の観点から、下記の(A)〜(C)を含有することが好ましく、さらに必要に応じて(D)を含有することが好ましい。
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体。
(B)下記式で表される化合物、
CH2=CR8COO(CH2x(CF2y
[式中、R8は水素原子またはメチル基を示し、Xは水素原子またはフッ素原子を示し、xは1〜2を示し、yは2〜8を示す]。
(C)(A)成分および(B)成分以外であって、芳香族構造および極性基を有さず、1官能または2官能のエチレン性不飽和基を有する化合物。
(D)(メタ)アクリル酸またはその2量体。
以下、各成分について説明する。
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体:
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体(A)は、エチレン性不飽和基とフッ素原子を有する重合体であれば、特に限定されないが、側鎖にエチレン性不飽和基を有する含フッ素オレフィン系共重合体が好ましい。(A)成分により硬化性樹脂組成物は低屈折率、高い機械強度、ガラスや石英等のコア層への密着性等のポリマークラッド光ファイバのクラッド形成用材料としての基本性能を発現する。
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、以下に述べる、エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物と、水酸基含有含フッ素重合体の水酸基とを反応させて得られる。
(1)エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物:
エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物としては、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基と少なくとも1個のイソシアネート基とを含有している化合物であれば特に制限されるものではない。
また、上記エチレン性不飽和基として、後述する硬化性樹脂組成物をより容易に硬化させることができることから、(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
このような化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロライド、無水(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートの一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
尚、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば昭和電工社製、商品名 カレンズMOI、AOI、BEI等が挙げられる。
また、このような化合物は、ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて合成することもできる。
ジイソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレートの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
尚、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、大阪有機化学社製、商品名 HEA;日本化薬社製、商品名 KAYARAD DPHA、PET−30;東亞合成社製、商品名 アロニックス M−215、M−233、M−305、M−400等として入手することができる。
(2)水酸基含有含フッ素重合体:
水酸基含有含フッ素重合体は、好ましくは、下記構造単位(a)、(b)及び(c')を含んでなる。
(a)下記式(1)で表される構造単位。
(b)下記式(2)で表される構造単位。
(c')下記式(6)で表される構造単位。
構造単位(a):
[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、mは1〜8を示し、nは1〜20を示す]
構造単位(b):
[式(2)中、R2は水素原子またはメチル基を示し、R3は脂環構造を有する1価の有機基を示す]
構造単位(c’)
[式(6)中、R7は水素原子またはメチル基を示し、vは1〜20の数を示す]
(i)構造単位(a):
上記式(1)において、mは1〜8であり、好ましくは1〜4であり、更に好ましくは2である。nは1〜20であり、好ましくは3〜12であり、更に好ましくは4〜8であり、最も好ましくは8である。
構造単位(a)は、下記式(7)で表される化合物を重合成分として用いることにより導入することができる。このような化合物の典型例としては、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
[式(7)中、R1、mおよびnは、式(1)中のR1、mおよびnとそれぞれ同一である]
水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位(a)の含有量は、構造単位(a)、(b)及び(c')の合計量を100モル%として、20〜70モル%であり、好ましくは、30〜60モル%であり、更に好ましくは、35〜60モル%である。構造単位(a)の含有量が70モル%を越えると、水酸基含有含フッ素重合体の溶解性が低下して重合反応中に析出したり、重合体が溶媒に不溶となったりする場合がある。一方、20モル%未満では、水酸基含有含フッ素重合体のフッ素含有量(重合対中に占めるフッ素原子の重量比率)が低下して、水酸基含有含フッ素重合体の屈折率が増大する。
(ii)構造単位(b):
上記式(2)中のR3は、脂環式構造を有する1価の有機基である。R3が脂肪族構造を有する場合には硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物のヤング率が過少となり、R3が芳香族構造を有する場合には該硬化物の屈折率が過大となって、いずれの場合も、クラッド層の特性としては不適となる。R3が脂環式構造を有する1価の有機基であることにより、硬化物のヤング率と屈折率のバランスが好適となる。ここで脂環式構造には、複素環構造を含むものとする。
構造単位(b)は、下記式(8)で表される化合物を重合成分として用いることにより導入することができる。このような化合物としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
[式(8)中、R2およびR3は、式(2)中のR2およびR3とそれぞれ同一である。]
水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位(b)の含有量は、構造単位(a)、(b)及び(c')の合計量を100モル%として、10〜70モル%であり、好ましくは、20〜60モル%であり、更に好ましくは、20〜55モル%である。構造単位(b)の含有量が70モル%を越えると、フッ素重合体の屈折率が増大する副作用がある。一方、20モル%未満では、フッ素重合体の溶解性低下の副作用がある。
(iii)構造単位(c'):
構造単位(c')は、下記式(9)で表される化合物を重合成分として用いることにより導入することができる。このような化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を用いることができる。
[式(9)中、R7およびvは、式(6)中のR7およびvとそれぞれ同一である。]
水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位(c')の含有量は、構造単位(a)、(b)及び(c')の合計量を100モル%として、5〜70モル%であり、好ましくは、10〜40モル%であり、更に好ましくは、10〜20モル%である。構造単位(c')の含有量が70モル%を越えると、フッ素重合体の屈折率が増大する副作用がある。一方、5モル%未満では、エチレン性不飽和基が十分に導入されない可能性が生じるという副作用がある。
(3)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体:
(A)成分であるエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、水酸基含有含フッ素重合体の構造単位(c')が有する水酸基と、エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物が有するイソシアネート基等の反応性基とが反応することにより得られる。なお、この場合、エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物が有するイソシアネート基のモル数が、水酸基含有含フッ素重合体が有する水酸基のモル数の0.5〜1.0倍であることが好ましい。
したがって、(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、水酸基含有含フッ素重合体由来の構造単位(a)および構造単位(b)に加えて、水酸基含有含フッ素重合体の構造単位(c')が、エチレン性不飽和基とイソシアネート基とを含有する化合物と反応して生成する下記構造単位(c)を有する。
構造単位(c);
[式(3)中、R4は水素原子またはメチル基を示し、R5は下記式(4)又は(5)で表わされる基を示し、vは1〜20を示す。
(式(4)及び(5)中、R6は水素原子またはメチル基を示す)]
エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体中の構造単位(a)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体の場合と同様の理由から、構造単位(a)、(b)及び(c)の合計量を100モル%として、20〜70モル%であり、好ましくは、30〜60モル%であり、更に好ましくは、35〜60モル%である。
エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体中の構造単位(b)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体の場合と同様の理由から、構造単位(a)、(b)及び(c)の合計量を100モル%として、10〜70モル%であり、好ましくは、20〜60モル%であり、更に好ましくは、20〜55モル%である。
エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体中の構造単位(c)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体の場合と同様の理由から、構造単位(a)、(b)及び(c)の合計量を100モル%として、25〜70モル%であり、好ましくは、5〜40モル%であり、更に好ましくは、5〜20モル%である。構造単位(c)の含有量が70モル%を越えると、フッ素重合体の屈折率が増大する副作用がある。一方、5モル%未満では、硬化物の物理的強度が低下する傾向がある。
エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、テトラヒドロフランを溶剤として測定したポリスチレン換算数平均分子量として5,000〜500,000であることが好ましい。この理由は、数平均分子量が5,000未満になると、硬化物の機械的強度が低下する場合があるためであり、一方、数平均分子量が500,000を超えると、硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、コーティングが困難となる場合があるためである。
また、このような理由により、エチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体のポリスチレン換算数平均分子量を10,000〜300,000とするのがより好ましく、10,000〜100,000とするのがさらに好ましい。
これら(A)成分であるエチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体は、(A)(B)(C)および(D)の総和に対して、通常20〜65質量%配合されることが望ましく、より好ましくは20〜50質量%配合され、特に好ましくは30〜40質量%配合される。20質量%未満では硬化性樹脂組成物の粘度が過小となるため光ファイバ製造時の塗布性が低下する傾向があり、65質量%を超えると(B)成分および(C)成分の配合量が圧迫される結果、(A)成分の溶解性が低下し、透明性の高い硬化物が得られにくくなる場合がある。
(B)成分:
(B)成分は、下記式(10)で表される化合物である。
CH2=CR8COO(CH2x(CF2yX (10)
[式中、R8は水素原子またはメチル基を示し、Xは水素原子またはフッ素原子を示し、xは1〜2を示し、yは2〜8を示す]
(B)成分は、後述する(C)成分と共に、(A)成分の溶解性を確保する目的の他、硬化物の屈折率を低減するために配合される。(B)成分の具体例としては、上記式(10)に該当する化合物であれば特に限定されないが、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等をあげることができる。これらの市販品としては、ビスコート17F,4F,8F等(大阪有機化学工業社製)等を挙げることができる。これらの中でも、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートが、(A)成分を溶解するために好適であり、また入手も容易である点で好ましい。
(B)成分は、(A)(B)(C)および(D)の総和に対して、通常20〜60質量%配合されることが望ましく、より好ましくは20〜50質量%であり、特に好ましくは20〜45質量%である。20質量%未満であると(A)成分の溶解性が損なわれる他、硬化物の屈折率が上昇する可能性があり、70質量%を越えると硬化性樹脂組成物の粘度が低下して、塗布性が損なわれる。
(A)成分であるエチレン性不飽和基含有含フッ素共重合体と(メタ)アクリレートモノマーとの相溶性は、多くの場合限定的であるが、(B)成分及び後述の(C)成分の組み合わせと混合することにより、溶解性が改善されて、均一な硬化性樹脂組成物を得ることができる。特に、(B)成分と(C)成分の配合比が、質量比として2:3〜5:1であることが好ましく、2:3〜4:1がさらに好ましい。
(C)芳香族構造および極性基を有さず、1官能または2官能のエチレン性不飽和基を有する化合物:
硬化性樹脂組成物に配合される(C)成分は、(A)成分および(B)成分以外であって、芳香族構造および極性基を有さず、1官能または2官能のエチレン性不飽和基を有する化合物である。(C)成分は、極性基を有しないため、(B)成分と併用することにより、(A)成分の溶解性を高めて均一な硬化性樹脂組成物を与える。また、(C)成分が芳香族構造を有さないことにより、低い屈折率を有する硬化物を与える。
ここで、極性基とは、カルボキシル基やアミノ基等の解離性基のほか、カルボニル基や炭素数3以下のアルキレンオキシド基等の分極性基が含まれるが、水酸基は除かれる。(C)成分は、前記要件を満たす構造であれば特に限定されない。
また(C)成分の具体例としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム;
ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドt−オクチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;
イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族構造含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
以上に挙げた(C)成分の中では、単官能又は2官能の脂肪族構造含有(メタ)アクリレートが好ましく、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート又はネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。(C)成分は、1種類単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
(C)成分は、(A)(B)(C)および(D)の総和に対して、通常10〜35質量%配合されることが望ましく、より好ましくは15〜35質量%であり、特に好ましくは15〜30質量%である。10質量%未満であると(A)成分の溶解性が損なわれる可能性があり、35質量%を越えると(A)成分及び(B)成分の配合量が圧迫される結果、硬化物の屈折率が増大し、コア層への密着性が損なわれる。
(D)(メタ)アクリル酸またはその2量体
(D)成分を配合することにより、コア層、特にガラス又は石英からなるコア層とクラッド層との密着性を改善することができる。(D)成分は、(A)(B)(C)および(D)の総和に対して、通常0〜10質量%配合されるが、好ましくは1〜7質量%である。10質量%を越えると硬化性樹脂組成物の保存安定性を損なう場合がある。
また、硬化性樹脂組成物はベース樹脂となる成分以外に(E)光重合開始剤を配合することが望ましい。
(E)光重合開始剤の具体例としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61;Darocure1116、1173(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製);LucirinTPO(BASF社製);ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
(E)光重合開始剤を用いる場合には、さらに光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。(E)重合開始剤は、硬化性樹脂組成物全量に対して、0.1〜10質量%、特に0.3〜7質量%配合するのが好ましい。
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を配合することができる。
以下、本発明に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔プラスチッククラッド光ファイバコードの作成〕
コア層2の外径が80μm、クラッド層3の外径が125μm、ETFEからなるオーバークラッド層の外径が250μmのプラスチッククラッド光ファイバと、コア層2の外径が200μm、クラッド層3の外径が230μm、ETFEからなるオーバークラッド層の外径が500μmのプラスチッククラッド光ファイバを作製した。作成したプラスチッククラッド光ファイバに、それぞれさらに熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニルからなる外径2mmの最外層を被覆形成し、プラスチッククラッド光ファイバコードを作成した。
クラッド層3構成するための硬化性組成物は、下記に示す各材料を表1に示す配合で混合することにより調整した。
(ベース樹脂;各例で共通)
エチレン性不飽和基含有フッ素重合体 35重量部
2−パーフルオロオクチルエチルメタアクリレート 45重量部
ネオペンチルグリコールジアクリレート 16重量部
アクリル酸 4重量部
(3官能以上のモノマー)
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(3官能)、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)(4官能)
または
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(6官能)
(添加剤;各例で共通)
光重合開始剤
酸化防止剤
シランカップリング剤
熱重合禁止剤
尚、添加剤は、ベース樹脂100重量部に対して合計して数重量部含まれるように調整した。
〔平衡弾性率の測定〕
得られた実施例および比較例の各クラッド材の平衡弾性率を下記の方法により評価した。
平衡弾性率の動的粘弾性の測定用の試料の作製は、以下のようにして行なった。
40〜42℃に温度制御された、表面が平坦なステンレス板を金型とし、該金型面に40〜42℃に調整した各樹脂組成物を厚さが200μmになるように塗布した。メタルハライドタイプの紫外線ランプを用い、積算光量2000mJ/cm、ピーク照度250mW/cmの条件で照射を行なって、樹脂組成物を硬化させた後、硬化物を剥離して、測定用試料を得た。
得られた試料を30mm×3mm×0.2mmの短冊状に成形し、動的粘弾性測定装置を用いて、試料に0.05%の負荷歪みを与えて、貯蔵弾性率の測定を行った。周波数は3.5Hzとし、温度範囲は、−100〜180℃とした(3℃/minの昇温速度)。この測定により、貯蔵弾性率の温度依存性曲線を得た。貯蔵弾性率の値が温度によらずほぼ一定となったときの値を平衡弾性率とした。
〔伝送損失増加量の測定〕
得られた実施例および比較例の各プラスチッククラッド光ファイバコードについて、伝送損失増加量を下記の方法により評価した。
まず、実施例および比較例の各プラスチッククラッド光ファイバコードを85℃85%RH下で1500時間放置後、室温にて650nmにおける伝送損失増加量を測定した。+5.0dB/km以下を合格とした。
各実施例、比較例ともコア径80μmの細径ファイバとコア径200μmの通常ファイバのそれぞれを測定した。いずれの径のファイバにおいても、結果は同様であった。結果をまとめて表1に示す
実施例1〜5は良好であった。ポリ塩化ビニル樹脂には可塑剤が含まれていたが、湿熱環境下でもクラッド層の光路まで可塑剤は到達せず、光を拡散する散乱体が形成されなかったものと考えられる。
比較例1は3官能以上のモノマーが添加されていずクラッド層の平衡弾性率が小さい。そして、伝送損失増加量が大きい。光コードの最外層のPVCから可塑剤がETFE層を通過してクラッド層に到達し、クラッド層を分解したりフッ素原子を凝集させることによりクラッド層の屈折率が不均一になったことが原因と考えられる。
比較例2は3官能以上のモノマーが添加され過ぎてクラッド層の平衡弾性率が大き過ぎる。そして、湿熱試験後に伝送損失の増加が著しく大きく、信号が測定できず、ロス値が求まらなかった。3官能以上のモノマーが添加され過ぎた結果クラッド層の硬化収縮が大きくクラッド層に微少な割れが入ったことがロス増の原因と考えられる。
1…プラスチッククラッド光ファイバ、2…コア層、3…クラッド層、Tg…ガラス転移温度、T1…平衡温度、G1…平衡弾性率

Claims (3)

  1. 石英ガラスからなるコア層の外周に、硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成されたクラッド層を設けたプラスチッククラッド光ファイバであって、前記クラッド層を形成する硬化性樹脂組成物が3官能以上のモノマーを、該3官能以上のモノマー以外からなるベース樹脂100重量部に対して0.5〜13重量部含み、前記クラッド層の平衡弾性率が30MPa以上35MPa以下であることを特徴とするプラスチッククラッド光ファイバ
  2. 前記3官能以上のモノマーが下記式で表される官能基を分子中に3〜6基有することを特徴とする、請求項記載のプラスチッククラッド光ファイバ。
  3. 前記コア層の径が50μm〜200μm、前記クラッド層の厚さが15μm〜25μmであることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチッククラッド光ファイバ。
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