以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、図1〜図5を用いて、油圧回路中の戻り側配管および出口配管の端部に繋がるとともに、オイルタンク内に装着されて作動油(リターンオイル)の濾過を行うオイルフィルタ1について概要説明する。
オイルフィルタ1は、図1に示すように、オイルタンク100のフィルタ収容部101内に配設されて使用に供されるようになっている。このフィルタ収容部101は、オイルタンク100の上面部に固設されたタンクフランジ102と、タンクフランジ102の底面側に固設された薄肉円筒状の収容筒体105と、収容筒体105の底面側を塞ぐ底板106と、タンクフランジ102の上面側に着脱自在に取り付けられるタンクカバー111とを備えて構成されており、これらタンクフランジ102、収容筒体105、底板106、およびタンクカバー111によって囲まれてオイルフィルタ1が着脱自在に取り付けられる円筒状のフィルタ配設空間S0が形成される。このフィルタ収容部101を構成するタンクフランジ102、収容筒体105、底板106、およびタンクカバー111は、例えばアルミ合金等の非鉄金属や鉄等の金属材料によって形成される。
底板106は、円盤状に形成されており、フィルタ収容部101(フィルタ配設空間S0)の円筒軸を中心軸として周方向等間隔に円形の戻り側配管挿入孔107および出口配管挿入孔108が開口形成されている。戻り側配管挿入孔107には戻り側配管109が上方に延びて嵌合接合されており、これによりオイルタンク100から戻り側配管109を通過するリターンオイルをフィルタ配設空間S0へ流入させることができる。一方、出口配管挿入孔108には出口配管110が上方に延びて(戻り側配管109と略並行して)嵌合接合されている。これらの戻り側配管109および出口配管110は、円筒軸方向に延びる小径部109a,110aと大径部109b,110bとを一体に有する段付きの円筒形状にそれぞれ形成されている。
タンクフランジ102は、円筒状に形成されており、その中心部にはオイルフィルタ1を上下方向に挿通可能なフィルタ挿入孔103が形成されている。また、タンクフランジ102においてフィルタ挿入孔103を形成する内周面には、その周方向に沿って段部104が凹設されている。
タンクカバー111は、円盤状に形成されており、その底面側にはシール部材としてのOリング112を配設可能なリング溝が形成されている。このタンクカバー111は複数のタンク固定ボルト113によりフィルタ挿入孔103を塞ぐようにしてタンクフランジ102の上方から着脱自在に取り付けられる。タンクカバー111に配設されたOリング112は、タンクカバー111をタンク固定ボルト113によってタンクフランジ102に取り付けた際に、タンクカバー111とタンクフランジ102との間で圧着され、フィルタ配設空間S0内を液密に保持するようになっている。
オイルフィルタ1は、内部に円筒状のエレメント配設空間S1を有するフィルタケース10と、このフィルタケース10のエレメント配設空間S1に着脱自在に取り付けられるフィルタエレメント80とを主体に構成される。
フィルタケース10は、内部に上記エレメント配設空間S1を区画形成する第1ケーシング20と、この第1ケーシング20の下端部に取り付けられる第2ケーシング50とを備えて構成されており、第2ケーシング50内に戻り側配管109と出口配管110とを挿入(接続)した状態でオイルタンク100のフィルタ収容部101に保持されるようになっている。
第1ケーシング20は、薄肉略円筒状のケース筒部21と、このケース筒部21の上部に設けられた上部保持体24と、上部保持体24の上面側に着脱自在に設けられたケース蓋27と、ケース筒部21の下部に設けられた下部保持体37とを備えて構成される。
ケース筒部21は、フィルタ収容部101における収容筒体105の内径よりも小さい外径で略円筒状に形成されており、このケース筒部21の内周面と各保持体24,37の外周面(リング溝)との間にはシール部材としてのOリング22,23が介装されている。上部保持体24は略円筒状に形成されており、その中心部にはフィルタエレメント80を上下方向に挿通可能なエレメント挿入孔25が形成されている。
ケース蓋27は、略円盤状に形成されており、図4に示すように、その上面側に突設された凸部28にエアプラグ29と螺合可能なネジ孔28aが形成されている。エアプラグ29は、頭部29aとネジ部29bと軸体29cとが一体に形成されて構成されている。エアプラグ29には、軸体29cの下端中央から上方に延びて更に外側へ屈曲して延びるエア開放孔29dが形成されている。凸部28の上面とエアプラグ29の頭部29aの下面との間には、シール部材としてのシールワッシャ30が介装されている。
また、ケース蓋27の上面側には、オイルフィルタ1を持ち運ぶ際の取っ手としてのハンドル36が設けられている。一方、ケース蓋27の底面側には下方に突出するスプリング支持部31が形成されており、スプリング支持部31にはセットスプリング32の一端部(上端部)が支持され、このセットスプリング32によってフィルタエレメント80はフィルタケース10内において下部保持体37側へ弾性的に押圧されるようになっている。このケース蓋27は、第1固定ボルト33および第2固定ボルト34を用いてエレメント挿入孔25を塞ぐようにして上部保持体24に着脱自在に取り付けられる。また、ケース蓋27の外周部には外方に突出する鍔部35が複数形成されており、オイルフィルタ1がフィルタ収容部101に収容されたときに、この鍔部35がタンクフランジ102の段部104に当接するようになっている。さらに、ケース蓋27の下面側にはリング溝が形成されており、このリング溝内にケース蓋27と上部保持体24との間をシールするためのOリング26が装着されている。
下部保持体37は、円筒状のスリーブ部38と、このスリーブ部38の内部を上下に略二分する円盤状の仕切部39と、仕切部39の中央部において上下方向に延びる管状部41とが一体に形成されて構成されている。仕切部39には円形の貫通孔40が形成されており、この貫通孔40を通してスリーブ部38の内周面と管状部41の外周面とに囲まれて上下方向に延びるオイルの流入通路42が形成される。一方、管状部41の内周面、スリーブ部38の内周面、および仕切部39の下面部に囲まれて略L字状に屈曲するオイルの流出通路43が形成されている。下部保持体37の下面部には、これら流入通路42および流出通路43の底縁部に沿って延びる底面溝が形成されており、この底面溝内に第1ケーシング20と第2ケーシング50との間をシールするためのOリング44が装着されている。
第2ケーシング50は、第1ケーシング20の下部保持体37に取り付けられる連結部材51と、連結部材51の下面側に設けられたオイルケース57と、オイルケース57の中心部に回転自在に設けられたシャフト65と、シャフト65を所定の回転方向に付勢する捻りコイルバネ69と、オイルケース57内においてシャフト65に回転自在に支持される回転盤70とを備えて構成される。
連結部材51は、円盤状に形成されており、複数のケーシング固定ボルト52によって第1ケーシング20の下部保持体37に取り付けられる。この連結部材51は、同一円周上(図6に示す円周P上)においてこの連結部材51の中央を中心として互いに点対称となる位置に(戻り側配管109および出口配管110に対応して)形成された連結孔53,54を有し、一方の連結孔(流入側連結孔)53には戻り側配管109が嵌挿可能であり、他方の連結孔(流出側連結孔)54には出口配管110が嵌挿可能に構成されている。これらの連結孔53,54における上下方向中間部にはリング溝が形成され、このリング溝内にシール部材としてのOリング53a,54aがそれぞれ装着されている。また、連結部材51の底面側には、上下方向に延びる中心軸を共通にして嵌合孔55aおよびネジ孔55bが形成されている。
オイルケース57は、円筒容器状のオイルカップ部58と、このオイルカップ部58の底面中心から上方に突出形成されたロッド部60と、オイルカップ部58の底面から上方に突出形成されたパイプ状の流入側連通菅63および流出側連通管64とを有して構成されている。オイルカップ部58の底面には上方に延びる棒状のバネ止め59(図5および図6を参照)が突出形成されている。ロッド部60は連結部材51の嵌合孔55aに嵌挿可能に構成されており、このロッド部60には連結ボルト62を挿入可能な上下方向に延びる挿通孔61が形成されている。そのため、オイルケース57は、ロッド部60を嵌合孔55aに嵌挿した状態で、挿通孔61内に挿入された連結ボルト62をネジ孔55bに螺合させて連結部材51に取り付けられる。一対の連通管63,64は、同一円周上(図6に示す円周P上)においてロッド部60を中心として互いに点対称となる位置に(戻り側配管109および出口配管110に対応して)形成されている。流入側連通管63の中心には戻り側配管109を挿通可能な流入口63aが形成され、流出側連通管64の中心には出口配管110を挿通可能な流出口64aが形成されている。
シャフト65は、オイルケース57のロッド部60を挿通可能な挿通孔を有する円筒状のシャフト本体66と、シャフト本体66の外周部から外方に突出形成された断面視L字状の一対の係止突起67,67(図5を参照)とを有しており、オイルケース57のロッド部60に挿入されてこのロッド部60を中心軸として回転自在に構成されている。
捻りコイルバネ69は、図5に示すように、線材を巻回成形した巻回部69aと、この巻回部69aの軸方向両端から延出した脚部69b,69cとを有して構成され、シャフト65に回転力を付与すべく設けられている。この捻りコイルバネ69は、巻回部69aの中心にシャフト本体66を挿入させた状態で、一方の脚部(不動端)69bがオイルケース57のバネ止め59に係止され、他方の脚部(可動端)69cがシャフト65の係止突起67に係止されて、圧縮された(両脚部が近接する方向に変位した)状態でオイルケース57内に保持されており、この捻りコイルバネ69に生じる付勢力(捻りトルク)を利用してシャフト65を図5に示す矢印R方向(以下においては正転方向Rと称する)に常時付勢している。
回転盤70は、円盤状の盤体71と、この盤体71に一体に形成された管状の流入側管部73および流出側管部74と、盤体71の中央に一体に形成された軸部75とを有して構成されている。盤体71の下面部には、図6(b)に示すように、下方に突出する一対のストッパ72が形成されており、このストッパ72にはオイルケース57における連通管63,64の外周面と当接可能な凹面72aが形成されている。
一対の管部73,74は、同一円周上(図6に示す円周P上)において軸部75に対して互いに点対称となる位置に(戻り側配管109および出口配管110に対応して)形成されており、オイルケース57の流入側連通管63および流出側連通管64にそれぞれ嵌挿可能に構成されている。各管部73,74の中心には上下方向に貫通する管挿入孔73a,74aがそれぞれ開口形成され、この管挿入孔73a,74aの大きさ(孔径)は、戻り側配管109および出口配管110の小径部109a,110aよりも若干大きく形成されているため小径部109a,110aを嵌挿可能であるが、大径部109b,110bよりは小径に形成されるため大径部109b,110bを嵌挿できず各管部73,74の下端と大径部109b,110bの上端とが当接接触するようになっている。
軸部75には、シャフト65を挿入可能な上下方向に延びる軸孔が形成されており、この軸孔にシャフト65が挿入されることより、回転盤70がシャフト65を中心軸として回転自在、且つ、シャフト65の外周面に沿って上下に摺動自在になっている。軸部75の下端には、図5および図6に示すように、下方に延びる一対の延設部76が形成されており、延設部76の側壁76aにはシャフト65の係止突起67と係脱可能な係止爪77が周方向に突出形成されている。
次に、リターンオイルを濾過するためにフィルタケース10のエレメント配設空間S1内に着脱自在に配設されるフィルタエレメント80について説明する。フィルタエレメント80は、外筒81と、この外筒81の内部に配設される内筒83と、この内筒83の外周に配設される濾材82と、外筒81の上端面に固着された上エンドプレート84と、外筒81の下端面に固着された下エンドプレート88と、上エンドプレート84に取り付けられた安全弁としてのリリーフバルブ90とを備えて構成される。外筒81、内筒83、上エンドプレート84、および下エンドプレート88は、プラスチック等の可燃性の樹脂材料によって焼却可能に形成されている。
外筒81は、ケース筒部21の内周面に対して所定の流入空間S2が形成されるように、ケース筒部21の内径よりも小さい外径で円筒状に形成されており、その側面には流入空間S2に流入したオイルを流通可能な多数の外筒流通孔(図示せず)が形成されている。
濾材82は、外筒81の内径よりも若干小さい外径で円筒状に形成され、且つ、その内周面が内筒83の外周面に当接接触するように装着されている。なお、この濾材82は、板状の濾紙を所定の幅でプリーツ状(菊花状)に形成したり、濾紙、グラスファイバー、不織布等によって所定の厚さを有して形成されている。
内筒83は、パンチングメタル等を用いて濾材82の内周面に沿って円筒状に形成されており、その側面に濾材82によって濾過されたオイルを流通可能な多数の内筒流通孔(図示せず)が形成されている。また、この内筒83の内周面に囲まれて所定の流出空間S3が形成されている。この内筒83と濾材82は、外筒81の円筒軸方向(上下方向)の両端にそれぞれ配設された両エンドプレート84,88で挟持されている。
上エンドプレート84は、下部中央にリリーフオイルを流通させるためのリリーフ孔85aが形成された基部85と、リリーフ孔85aの中央に設けられた円筒状のボルト受け部86と、ボルト受け部86の外周から放射状に延びて基部85とボルト受け部86とを連結する複数のリブ87とが一体に形成されて構成される。基部85の上部には、図4に示すように、フィルタエレメント80の内外を連通させるためのエア開放孔85bが形成されており、このエア開放孔85bに上述のエアプラグ29の軸部29cが嵌挿される。このエア開放孔85b内にはシール部材としてのOリング85cが装着されている。ボルト受け部86の中心には、後述するリリーフバルブ90の支持ボルト91を取り付けるための貫通孔が形成されている。複数のリブ87は、フィルタエレメント80がフィルタケース10内に取り付けられた状態で、フィルタケース10内での挙動を防止するための上記セットスプリング32の他端部(下端部)を受けるようになっている。
リリーフバルブ90は、上エンドプレート84のボルト受け部86に支持された支持ボルト91と、支持ボルト91の外周面に沿って上下に摺動自在に設けられた略円盤状の弁体92と、支持ボルト91の雄ネジに螺合するナット93と、ナット93に支持されたスプリング受け部94と、弁体92とスプリング受け部94との間に介装されて弁体92を上側(閉弁方向)に常時付勢するバルブ用スプリング95とを有して構成されている。
弁体92は、バルブ用スプリング95の弾性的な付勢力によって通常時にはリリーフ孔85aを閉塞し、このリリーフ孔85aが流出空間S3と連通しないように構成されている。一方、流入空間S2内の圧力が所定圧以上の異常圧となった場合には、弁体92がバルブ用スプリング95の付勢力に抗して開弁され(リリーフ孔85aが開放され)、リリーフ孔85aと流出空間S3とが連通することとなる。
下エンドプレート88は、下部保持体37における管状部41の外径よりも大径の貫通孔を有して円盤状に形成されるとともに、この貫通孔にはゴム等の弾性部材によって形成されたガスケット89が配設されている。このガスケット89の内側部には、下部保持体37の管状部41を挿抜可能な排出孔89aが形成されており、この排出孔89aに管状部41が挿入されると、ガスケット89の弾性力により管状部41が嵌合保持される。
このような構成のオイルフィルタ1において、フィルタエレメント80をフィルタケース10内に装着するには、まず、フィルタケース10において第1固定ボルト33および第2固定ボルト34を取り外して上部保持体24からケース蓋27を取り外しておく。ケース蓋27を取り外すと、上部保持体24の上部開口(エレメント挿入孔25)が開放されることとなる。そして、フィルタエレメント80をエレメント挿入孔25の上方からまっすぐ挿入すると、フィルタケース10における下部保持体37の管状部41をフィルタエレメント80の排出孔89aに挿入した状態で、フィルタエレメント80がフィルタケース10内に装着される。フィルタエレメント80が装着された後は、第1固定ボルト33および第2固定ボルト34を用いて、ケース蓋27を上部保持体24に再び取り付けることにより、セットスプリング32の付勢力によって、フィルタエレメント80がフィルタケース10内でしっかりと保持される。
フィルタケース10内にフィルタエレメント80が収容された後は、シールワッシャ30をケース蓋27における凸部28の上面に載置した上で、この凸部28に開口形成されたネジ孔28aにエアプラグ29のネジ部29bを螺合させていき、エアプラグ29の軸体29cをエア開放孔85b内に嵌挿することで、オイルフィルタ1外部とのエアの流通が防がれる。なお、フィルタエレメント80をフィルタケース10内に装着する際に、ネジ孔28aとエア開放孔85bとの位置合わせをするための凹凸構造等をフィルタケース10およびフィルタエレメント80に設けてもよい。
ここで、オイルタンク100のフィルタ収容部101に装着される前(未使用状態)のオイルフィルタ1においては、図2に示すように、第2ケーシング50の回転盤70を下降させて、回転盤70の管部73,74がオイルケース57の連通管63,64に挿入された状態にしておく。この状態では、図6に示すように、シャフト65の係止突起67は回転盤70の延設部76の側壁76a(上側の側壁76a)に当接しており、捻りコイルバネ69の付勢力によってシャフト65には正転方向Rへの回転力が付与されているが、回転盤70の管部73,74がオイルケース57の連通管63,64に嵌合していることによってシャフト65および回転盤70は回転を規制されて静止している。また、このように回転盤70の管部73,74が連通管63,64に嵌挿されることで、第2ケーシング50において、流入側管部73の軸心が流入側連結孔53および流入側連通管63の軸心と一致するとともに、流出側管部74の軸心が流出側連結孔54および流出側連通管64の軸心と一致して、これらに戻り側配管109および出口配管110を挿入できる状態になっている。
次に、以上のように構成されるオイルフィルタ1によってリターンオイルの濾過を行う場合について説明する。まず、オイルタンク100のフィルタ収容部101にオイルフィルタ1を装着する手順について、図7および図8を追加参照して説明する。フィルタ収容部101への装着は、タンクフランジ102の上部開口(フィルタ挿入孔103)から行われるため、前もってタンク固定ボルト113を外してタンクカバー111をタンクフランジ102から取り外しておく。タンクカバー111を取り外せば、タンクフランジ102の上部開口(フィルタ挿入孔103)が開放されることとなる。
オペレータがハンドル30をつかんでオイルフィルタ1を上方からまっすぐフィルタ収容部101内に挿入していくと、フィルタ収容部101内においてオイルフィルタ1の下端部と両配管109,110の先端部とが近接していく。そして、オイルケース57の両連通管63,64と両配管109,110とを位置合わせした状態でオイルフィルタ1を更に下方に挿入すると、オイルケース57の流入側連通管63内には戻り側配管109が挿入され、流出側連通管64内には出口配管110が挿入される。ここで、連通管63,64内には上方から回転盤70の対応する管部73,74が挿入されているため、連通管63,64内に配管109,110を挿入させていくと、各配管109,110の小径部109a,110aは連通管63,64内に挿入されるものの、連通管63,64の内径よりも大径に形成された大径部109b,110bは連通管63,64内に挿入されず連通管63,64の下端に突き当たって持ち上げられ、オイルケース57内で回転盤70が相対的に上方に移動する(押し上げられる)。このように回転盤70の管部73,74が連通管63,64から抜け出しても、図7に示すように、それに代わって配管109,110が回転盤70の管部73,74に嵌挿されるため、捻りコイルバネ69による回転盤70の回転は継続して規制されることになっている。
オイルケース57内において回転盤70が配管109,110によって押し上げられると、図8(a)に示すように、シャフト65の係止突起67が回転盤70の係止爪77に沿って摺動し、シャフト65が捻りコイルスプリング69の付勢力に抗して逆転方向(正転方向Rに対する逆転方向)にわずかに回転する。
そして、オイルフィルタ1が更に下方に挿入され、フィルタケース10の鍔部35がタンクフランジ102の段部104に突き当たった状態で、オイルフィルタ1がフィルタ収容部101内に装着される。このとき、回転盤70は連結部材51に近接する位置まで両配管109,110によって押し上げられており、これにより回転盤70の係止爪77がシャフト65の係止突起67を越えることで両者(係止突起67と係止爪77)の摺接が外れて、捻りコイルバネ69の付勢力によってシャフト65が正転方向Rにわずかに回転して元の位置に戻る。このシャフト65の回転は、図8(b)に示すように、係止突起67が係止爪77の下方において延設部76の側壁76a(下側の側壁76a)に突き当たることで停止する。また、この状態において、各配管109,110の先端部は連結部材51の連結孔53,54から上方に脱して下部保持体37内に位置しており、これにより戻り側配管109と流入通路42とが連通するとともに、出口配管110と流出通路43とが連通することになる。ここで、連結部材51の連結孔53,54内にはOリング53a,54aが装着されているため、各配管109,110が連結孔53,54内に嵌挿されると、このOリング53a,54aは配管109,110の外周面と連結孔53,54の内周面との間で圧着され、戻り側配管109と流入通路42が液密に保持されるとともに、出口配管110と流出通路43が液密に保持される。
このようにしてフィルタエレメント80が装着された後は、タンク固定ボルト113を用いてタンクカバー111を再びタンクフランジ102に取り付けることにより、タンクカバー111とタンクフランジ102との間でOリング112が弾性的に変形して両者に密着しシールされることとなる。
続いて、上記のようにオイルタンク100に装着されたオイルフィルタ1によって濾過されるリターンオイルの流れについて再び図1を参照しながら説明する。なお、図1において、オイルの流れは矢印Fによって表されている。オイルタンク100の外部から戻り側配管109を通って流入したオイルは、フィルタケース10内の流入通路42を経て、フィルタケース10の内周面とフィルタエレメント80の外周面との間に形成された流入空間S2内に順次流入する。
流入空間S2内に流入したオイルは、外筒81の外筒流通孔(図示しない)を通って濾材82の外側から内側に向かって流れるが、このときにオイル内に混入したゴミ等の不純物がこの濾材82によって濾過される。このように濾材82によって濾過されたオイルは、内筒83の内筒流通孔(図示しない)を通って流出空間S3内に流入する。なお、濾材82は、その内周が内筒83の外周と当接しているため、外周方向からオイルが流入しても変形することがない。流出空間S3内に流入したオイルは、この流出空間S3内を下方に流れていき、フィルタエレメント80下端の排出孔89aに嵌合された管状部41から流出通路43を通ってオイルフィルタ1外へ排出され、最終的には出口配管110を経てオイルタンク100内に流入する。
ここで、濾材82に目詰まりが生じると、流入空間S2に流入するオイルが濾材82をスムーズに流通することができなくなる。この場合には、流入空間S2内のオイルの圧力が高くなり、流入空間S2と流出空間S3との間の圧力差が所定圧以上となる。そのため、フィルタエレメント80の上方を流れるオイルによって弁体92に対してバルブ用スプリング95の付勢力以上の力が作用し、弁体92はバルブ用スプリング95の付勢力に抗して下方に押し下げられてリリーフ孔85aを開弁し、流入空間S2と流出空間S3とがリリーフ孔85aを介して連通することとなる。これにより、流入空間S2に流入するオイルは、濾材82を通過せずにリリーフ孔85aから流出空間S3内に直接流入し(このときのオイルの流れを図1において矢印F′で示す)、下端部の流出通路43からオイルフィルタ1外へ排出させて、オイルフィルタ1の損傷を防止することとしている。
上記のように構成されるオイルフィルタ1は、長時間の使用により濾材の性能が低下するため、定期的(所定の交換時期ごと)にフィルタエレメント80を交換する必要があるが、オイルフィルタ1の取り外しは、取り付けと逆の手順で行われる。このオイルフィルタ1を取り外す手順について図9および図10を追加参照して説明する。
オイルフィルタ1の交換のためにタンクカバー111を取り外すと、フィルタ収容部101内は大気に開放されて大気圧となるが、オイルフィルタ1内は密閉された状態に保持されている。ここで、エアプラグ29を回転させて螺合状態を緩めていくと、密閉状態であったオイルフィルタ1内がエアプラグ29のエア開放孔29d等を介して外気と連通し(流入空間S2および流出空間S3が大気に連通し)、オイルフィルタ1内も大気開放されて大気圧となる。そのため、フィルタケース10内に残留するオイルはオイルレベルL0まで下降していく。
その後、オイルフィルタ1のハンドル36をオペレータがつかんで持ち上げることにより、オイルフィルタ1は上方に引き上げられる。このようにオイルフィルタ1が引き上げられると、オイルケース57内において回転盤70は自重で下降しようとするが、図8(b)に示すように、回転盤70の係止爪77下端がシャフト65の係止突起67上端に突き当たっているため、この係止突起67によって回転盤70の下降が規制される。そのため、オイルフィルタ1が引き上げられた場合、シャフト65と一体になって回転盤70は配管109,110に対して相対的に上方に摺動していき、一定の高さに達したところで、回転盤70の管部73,74が配管109,110から抜け出る。ここで上述のように、シャフト65とともに回転盤70は捻りコイルバネ69によって正転方向Rへ付勢されているが、回転盤70の管部73,74に配管109,110の小径部109a,110aが嵌入されている状態にあっては、回転盤70およびシャフト65の回転は規制される。これに対して、回転盤70が一定の高さに達することで回転盤70の管部73,74が配管109,110から外れると、シャフト65および回転盤70の回転に対する規制がなくなるため、捻りコイルバネ69の付勢力によってシャフト65が正転方向Rへ回転するとともに、回転盤70も正転方向Rへシャフト65と一体となって回転を始める。
回転盤70は、図10に示すように、シャフト65と一体となって正転方向Rへ約90°回転したところで、この回転盤70に形成されたストッパ72の凹面72aがオイルケース57の連通管63,64の外周面に当接して回転を停止する。このとき、回転盤70の管部73,74とオイルケース57の連通管63,64とは互いに約90°ずれて位置するため、回転盤70の盤体71が連通管63,64に対する蓋となって、連通管63,64の流入口63aおよび流出口64aは回転盤70の盤体71によって塞がれた状態になる。そのため、オイルフィルタ1内に残留したオイルが下方に流れてきても、連通管63,64は回転盤70によって覆われているため、残留するオイルは回転盤70の上面や側面などを伝って最終的にはオイルケース57のオイルカップ部58内に落下して、このオイルカップ部58内に溜まるようになっている。よって、オイルフィルタ1をオイルタンク110のフィルタ収容部111から排出しても、オイルフィルタ1の内部に残留するオイルが流入口63aおよび流出口64aから外部に漏れ出すことがないため、このオイルフィルタ1の交換時に残留オイルによって周囲を汚してしまうことがない。また、フィルタ収容部101内においてはオイルフィルタ1の外周部はオイルの流通経路から遮断されてオイルに一切接触していないため、オイルフィルタ1の交換の際にハンドル36をつかんでもオペレータの手を汚すこともなく、また、このオイルフィルタ1の外周部からオイルが垂れ落ちて周囲を汚すこともない。
なお、このときオイルタンク100からオイルフィルタ1全体を取り外さずに交換品であるフィルタエレメント80のみを取り外すことを可能とした場合、フィルタエレメント80の粗悪な非純正品(模倣品)が機上で容易に交換される虞がある。そのため、フィルタケース10において、ケース蓋27と上部保持体24との締結を2種類の固定ボルト33,34により上下の2方向から締結する構成としている。これにより、フィルタ収容部101に装着されたオイルフィルタ1からフィルタエレメント80のみを排出しようとしても、第1固定ボルト33は上方から簡単に取り外すことができるが、第2固定ボルト34については、そのボルト頭部がケース蓋27等の裏面に隠れた位置に配されているとともに、この第2固定ボルト34を外すための工具等を侵入させるスペースもないため、この状態では第2固定ボルト34を外してケース蓋27を取り外すことができない。一方、第2固定ボルト34を外し易くするためにオイルフィルタ1を一旦上方に引き上げると、上記のように回転盤70が作動して流入口63aおよび流出口64aが塞がれてしまうため、再びオイルフィルタ1の装着を試みてもフィルタ収容部101に適正に取り付けることができない。したがって、フィルタエレメント80を交換する場合には、オイルフィルタ1全体をオイルタンク1のフィルタ収容部101から取り外して、メンテナンス工場等で回転盤70を初期状態に再セットする必要があるため、機上での交換が防止されてフィルタエレメント80の模倣品対策にも繋がる。
以上、このように構成されるオイルフィルタ1によれば、オイルフィルタ1と戻り側配管119および出口配管120とを直接接続する構造において、オイルフィルタ1を取り付けるときには、回転盤70の両管部73,74とオイルケース57の両連通管63,64とを嵌合させることで回転盤70は回転が規制されて静止し、配管109,110に対応する管部73a,74a等の軸心が上下一直線に並ぶため、オイルフィルタ1をフィルタ収容部101に挿入するだけで、オイルフィルタ1と配管109,110とを簡単に接続することができる。そして、オイルフィルタ1が配管109,110に取り付けられた状態においては、オイルケース57の両連通管63,64の代わりに両配管109,110が回転盤70の両管部73,74に嵌挿されることで、回転盤70の回転が引き続き規制されるとともに、各配管109,110とそれに対応するオイルの通路42,43とが連通し、戻り側配管109から導入したオイルを濾材82によって濾過して出口配管110に排出することが可能になる。
一方、オイルフィルタ1を取り外すときには、オイルフィルタ1をフィルタ収容部101から上方に引き上げるだけで、回転盤70の両管部73,74と両配管109,110とが外れて、回転盤70の回転規制がなくなる。これにより、捻りコイルバネ69の付勢力によって回転盤70が所定角度だけ回転して流入口63aおよび流出口64aを閉塞する位置で静止するため、オイルフィルタ1内部に残留するオイルが流入口63aおよび流出口64aから外部に漏れ出ることがない。また、オイルフィルタ1の外周部はフィルタ収容部101内でオイルに接触しないため、オイルの濾過を行った後でも、オイルフィルタ1の外周部にはオイルが一切付着していない。したがって、オイルフィルタ1の交換の際に、このオイルフィルタ1の内外からオイルが飛散して周囲を汚してしまうことがない。さらに、オペレータはオイルフィルタ1を取り外すために単に持ち上げる通常の動作を行うだけで(特別な操作を必要とせず)、オイルフィルタ1底部の流入口63aおよび流出口63bが回転盤70によって塞がれて残留オイルの漏れを防ぐことが可能になるため、メンテナンス等の作業効率が高められる。
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態においては、流体フィルタとして、油圧回路中の作動油の濾過を行うためのオイルフィルタ(リターンフィルタ)を適用した場合を例示したが、これに限定されるものではなく、水や燃料等の他の流体の濾過を行うフィルタに適用しても同様の効果を得ることができる。