JP5410739B2 - 多焦点眼内レンズの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、患者眼の眼内に設置する眼内レンズに複数の焦点を持たせた多焦点眼内レンズの製造方法に関する。
従来、白内障の手術方法の一つとして水晶体を摘出した後、水晶体の代わりとして屈折力を持った光学部と光学部を眼内で支える(固定する)支持部を持つ眼内レンズを挿入する手法が一般的に用いられている。このような眼内レンズには、通常、光学部が単焦点レンズで構成されており、このような眼内レンズを埋植した患者眼は調節力失ってしまう。これに対して、光学部に複数の屈折力を持たせ、患者眼に複数の焦点を待たせ、擬似的に調節力を得る技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特表平6−508279号公報
特許文献1に示された多焦点眼内レンズは、光学部に同心円状に屈折力の異なる光学領域を順次設けている。このため、患者眼の瞳孔径が小さくなると、虹彩に覆われる光学部の透光部分の面積が小さくなり屈折力の異なる光学領域が隠されて、多焦点の効果が低くなってしまう問題があった。
上記従来技術の問題点に鑑み、瞳孔径に依らず好適に多焦点効果を得ることができる多焦点眼内レンズを提供することを技術課題とする。また、そのような多焦点眼内レンズを簡単に作製する製造方法を提供することを技術課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のようなステップで構成される方法を持つことを特徴とする。また、以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 第1の屈折力を持つ第1光学領域と該第1の屈折力と異なる第2の屈折力を持つ第2光学領域とが形成された光学部を有する多焦点眼内レンズの作製方法において、前記光学部となる平板形状又はレンズ形状の基板の面を周辺から幾何中心に向けて延びる境界線により複数の領域に分割し,該分割した複数の領域のうち所定の領域全体が全て同じ屈折力となる前記第1光学領域を形成するために微小な溝を第1パターンにて複数掘り込む第1ステップと、前記第1光学領域に隣接する他の領域に第2光学領域を形成する第2ステップであって,前記第1ステップとは異なる屈折力であり前記他の領域全体が全て同じ屈折力となる前記第2光学領域として前記第1パターンとは異なる第2パターンにて微小な溝を複数掘り込む第2ステップと、を有することを特徴とする。
(2) (1)の多焦点眼内レンズの製造方法において、前記第1及び第2ステップでは前記第1及び第2光学領域は前記光学部の前面に形成し、さらに前記光学部の後面に所定の曲面を形成するために切削加工をする第3ステップを有することを特徴とする。
本発明によれば、瞳孔径に依らず好適に多焦点効果を得ることができる。また、このような多焦点眼内レンズを簡単に得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態で用いる眼内レンズ(多焦点眼内レンズ)の概略図である。本実施形態の図面は説明の簡便のため、模式図とし、各部材の縮尺等は実物とは異なっている。
図1に示す眼内レンズ1は、異なる屈折力を持つ複数の光学領域を有し、網膜に光を集束(集光)させる光学部100と、光学部100に接合され眼内にて光学部100を固定支持するための支持部200とから構成される。本実施形態の眼内レンズ1は、光学部100と支持部200とを別々に形成しておき、その後一体化する3ピースタイプの眼内レンズを示している。
光学部100は従来眼内レンズの材料(基材)として用いられているものが使用できる。例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等の硬い材料や、シリコーン、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)等の単体、又は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの複合材料からなる折り曲げ可能な材料が挙げられる。また、支持部200も従来眼内レンズの支持部材料として用いられているものが使用できる。支持部形成用の基材としては、例えば、PMMA、ポリプロピレン、ポリイミド等が挙げられる。
光学部100は図1(b)に示すように、前面101(眼内に置いたときに前側(角膜側)となる面)が平板形状、後面102が所定の曲面(例えば、所定の曲率を持つ球面又は非球面)を持った凸状のレンズ形状であり、水晶体の代替として眼内に設置される形状を有している。前面101は、屈折力(度数)がそれぞれ異なる光学領域を有し、眼内レンズ1が患者眼に埋植された際に、近方視力を得るための近用光学領域(第1光学領域)110、遠方視力を得るための遠用光学領域(第2光学領域)120、近方・遠方の中間の視力を得るための中用光学領域(第3光学領域)130を有する。ここで、上記前面101の光学領域は、後面102の球面度数と合さって、光学部100にそれぞれの屈折力を持たせるものとする。
また、各光学領域は、前面101上で互いの光学領域が隣接し、光学部100を分割するように形成され、それぞれの光学領域が光学部100の光軸L(光学部100の幾何中心)に接するように形成される。言い換えれば、光学部100の周辺(外周)から幾何中心に向けて延びる境界線によって光学部100の前面が複数に分割(ここでは、3等分)された状態となっている。さらに言えば、3等分された光学部100のある領域に近用光学領域110が形成され、近用光学領域110と隣接する他の領域の少なくとも1つに遠用光学領域120が形成され、残りの領域に中用光学領域130が形成される。従って、本実施形態では、各光学領域は円状の前面101を光軸Lを中心に3等分するように形成され、各光学領域が扇形(この場合、中心角120度の扇形)とされる。
次に、各光学領域の屈折力を発生させる構成について説明する。図2は前面101の中心付近(光軸L付近)での拡大断面図である。図2では、光軸Lを挟んで近用光学領域110、遠用光学領域120が形成されている。近用光学領域110では、微小なV字状の溝が複数掘り込まれる(形成される)ことにより形成される複数の微小プリズム111によって微小プリズム群が形成される。近用光学領域110の微小プリズム群は、後述する第1パターンにて形成される。ここで、微小な溝は後述する製造(加工)方法にて形成される。同様に、遠用光学領域120では、微小なV字状の溝が複数掘り込まれることにより形成される複数の微小プリズム121によって微小プリズム群が形成される。遠用光学領域120の微小プリズム群は、後述する第2パターンにて形成される。なお、説明の簡便のため、微小プリズム111、121を模式的に示した。同様に、中用光学領域130(図1参照)の微小プリズムは、第3パターンにて形成される。
本実施形態では、微小プリズムによる光の屈折を利用して各光学領域に所定の屈折力を持たせる構成とする。微小プリズム111、121のそれぞれの形状、具体的には、高さ(深さ)、傾き(斜辺の角度)が異なることで微小プリズム群が備える屈折力が変えられる。従って、第1パターンにて各々形成された微小プリズム111による微小プリズム群が近用の屈折力を備える近用光学領域110となる。同様に、微小プリズム(群)のパターンが、第2パターンの場合は遠用光学領域120が形成され、第3パターンの場合は中用光学領域130形成されることとなる。
以下に、本実施形態である微小プリズムの屈折力を用いた各光学領域の構成について一例を挙げて説明する。ここでは、微小プリズムの底面(光軸Lに直交する平面)に対する傾き(傾斜角度)によって、微小プリズム111、121の屈折力がそれぞれ調整される。図2に示すように、微小プリズム111、121は光軸Lに向かって入射光を偏向するように光軸Lを中心に対向して形成される。なお、図1(a)に示されるように、微小プリズム111、121は、光軸Lを中心として円弧状に形成される。微小プリズム111、121のそれぞれのピッチ(幅、間隔)は同じとされる。なお、ここで言うピッチとは、隣合う同種の微小プリズム(微小プリズム111同士)の先端の間隔を指し、光軸Lを通る直線と微小プリズムの先端とのそれぞれの交点の間の距離を指す。図2に示すように、微小プリズム111、121のそれぞれの傾きが、所定の屈折力を持つよう調整されている。ここでは、光学部100の周辺に向かうに従って(光軸Lから離れるに従って)微小プリズム111、121の傾き(光軸Lに直交する平面に対する角度)が大きくなる。なお、微小プリズム111、121のそれぞれのピッチが同じであるため、微小プリズム111、121の深さ(V字状の溝の深さ)は、光学部100の周辺に向かうに従って大きくなっている。これにより、光学部100に入射した光を光軸Lに向かって集光される。
微小プリズム111の傾きは、微小プリズム121の傾きより総じて大きくなるように形成される。これにより、微小プリズム111により形成される近用光学領域110の屈折力が他の光学領域と比較して大きくなる。このような、微小プリズム111の形状のパターン(ここでは、傾き)が第1パターンとなる。同様に、微小プリズム111と比較して総じて傾きの小さい微小プリズム121の形状のパターンが第2パターンとなる。なお、中用光学領域130の微小プリズムの傾きは、微小プリズム111、121の傾きの中間程度の傾きとされ、この形状のパターンが第3パターンとなる。このようにして、微小プリズムの形状のパターンにて屈折力の異なる光学領域が形成される。
なお、微小プリズム111、121のピッチは必ずしも等しくされなくともよい。例えば、近用光学領域110と遠用光学領域120とで、所定の屈折力が得られればよく、各光学領域毎にピッチが異なる構成とされてもよい。なお、微小プリズム111、121は、屈折力を有する形状であればよく、微小プリズムの斜辺に曲率が付けられていてもよい。
なお、本実施形態では、微小プリズム111、121の先端部は、いずれの微小プリズムでも一定の高さとされ、前面101の稜線から突出しない構成とされる。これにより、各光学領域の境界で、光学的なエッジが立ちにくくでき、患者眼の視力低下が抑制できる。また、眼内レンズ1の埋植において、前面101の稜線から突出する部分がないため、挿入等が好適に操作できる。
このような微小プリズム111、121(さらに、中用光学領域の微小プリズムを含めて)は光軸Lを中心としてそれぞれ円弧状に複数形成される(図1(a)では点線で模式的に同心円で示した)。これにより、各光学領域は光軸Lに向かう所定の屈折力をそれぞれ有することとなる。このとき、各光学領域の境界線は、光学部100の周辺から中心である光軸Lに向かって略直線とされる。
以上のようにして、光学部100に異なる屈折力を持つ光学領域が複数備えられると共に、各光学領域が光学部100の中心である光軸Lに接するように形成される。従って、光学部100の周辺領域から光軸L付近に至るまで、各光学領域が形成されることとなる。これにより、眼内レンズ1が埋植された患者眼の瞳孔径に依らず好適に多焦点効果が得られる。具体的には、患者眼の瞳孔径が小さくなった場合でも、その瞳孔径の中に各光学領域が含まれるため、患者は、近方、遠方、中間にあるもの(像、物点)をそれぞれ視認できるようになる。また、光学部100(前面101)が平板形状でありながら屈折力を有する構成とできるため、光学部100の厚みを薄くでき、眼内レンズ1の眼内への挿入等がし易くなると共に、挿入用の切開創を小さくできる。
ここで、前面101に微小プリズム111、121等を形成し、後面102に屈折力を得るための曲面を形成することにより、以下のような利点がある。前面101と後面102とで合わせて各光学領域の屈折力を構成できるため、微小プリズム111等の深さ等が、後面102の屈折力に応じて小さくできる。これにより、加工が容易になると共に加工時間が短縮できる。また、後面102に曲面を持たせることで、後面102と後嚢との密着性が向上される。このため、光学部100が後嚢の中央に位置しやすくなる。また、後面102と後嚢との間に細胞等が入りにくくなり、後発白内障の発生が抑制される。また、後面102側に微小プリズム111等を形成しないことで、後嚢と光学部100との隙間が少なくなり、先の場合と同様に後発白内障の発生が抑制される。
なお、各光学領域は光学部において、等分に形成される必要はなく、各光学領域の一部が中心部付近(光軸L付近)にかかる構成であればよい。具体的には、患者眼の瞳孔径が小さくなった場合にその瞳孔径内に複数の光学領域が入っている構成であればよい。例えば、遠用光学領域が光学部の半分を占め、残りの1/4ずつを近用光学領域、中用光学領域としてもよい。この場合、遠方を重視する患者にとって好ましい構成となる。
なお、以上説明した本実施形態では、光学部100の前面101に微小プリズム群を形成し、光面102を曲面として、各光学領域を備える構成としたがこれに限るものではない。光学部に前述のような各光学領域がそれぞれ形成される構成であればよい。例えば、前面をレンズ形状とし、後面を平板形状として微小プリズム群を形成し、光学部に各光学領域を持たせる構成としてもよい。また、以上説明した本実施形態では、後面102を曲面(レンズ形状)としたがこれに限るものではない。後面を平板形状としてもよい。この場合、後面102のレンズ形状で所期していた屈折力を、前面の微小プリズム群(各光学領域)に付与する構成とすればよい。これにより、後面がレンズ形状である場合と比べて光学部をさらに薄くできる。このため、折り畳んだ眼内レンズも小さくなり、眼内レンズの挿入において眼球に設ける切開創を小さくできる。また、前面を平板形状とし、後面に微小プリズム群を形成する構成としてもよいし、前面及び後面にそれぞれ微小プリズム群を構成してもよい。
次に、本実施形態の眼内レンズ1の作製方法を説明する。図3は、眼内レンズ1及び眼内レンズ1を作製するための金型(鋳型)を加工する加工装置300の構成を示す模式図である。図4は、加工装置300を用いて眼内レンズ1そ作製するステップを説明する図であり、図5は眼内レンズ1作製用金型を作製するステップを説明する図である。
図3に示される加工装置300は、ワークに置かれた物体を所定の形状とするために、予め設定した数値データに基づいて切削加工(旋削加工)、引き切り加工等を加えるNC工作機械である。加工装置300は、ワーク311を備え、ワーク311をX軸方向に移動させる機構とワーク311を矢印Bの方向(ワーク311の中心を軸に水平方向)に回転させる機構を持つワークユニット310と、工具を取り付けるホルダ321を矢印C方向(ホルダ321の中心を軸に垂直方向)に回転させる機構と、ホルダ321をY軸方向及びZ軸方向に移動させる機構を持つ工具ユニット320から構成される。なお、図示は略したが、加工装置300に加工データ、数値データの入力、処理を行う制御ユニットが備えられる。ワーク311には被加工物330が固定され、工具ホルダ321には引き切り工具であるバイト322が固定される。
図3(b)は、バイト322と被加工物330の関係を示す図である。図示するように、先端が鋭利なバイト322が被加工物330に所定の角度を持って接触されている。この状態で、ワーク311、工具ホルダ321が相対的に移動することで、被加工物330に引き切り加工が施され、所定の形状のV字状の微小な溝が掘り込まれる(形成される)。なお、バイト322の傾きは工具ホルダ321の回転(矢印Cに示す方向)により制御され、Y軸制御により溝の深さが変更される。このとき、ワーク311の回転(矢印Bに示す方向)、X軸制御、バイト322のZ軸制御を合わせた5軸制御により、被加工物330に所定の形状、ピッチを持つ微小な溝が複数掘り込まれる。
次に、図4を用いて基材に溝掘り(引き切り)加工を施して眼内レンズ1を作製するステップを説明する。図4において、はじめに光学部100の基となる平板形状の基板10を用意する。基板10は前述の素材を平板形状(円盤形状も含む)に加工して得る(図4(a)参照)。次に、基板10を加工装置300のワーク311に固定し、加工装置300のバイト322により前述の微小な溝を複数掘り込む(図4(b)参照)。このとき、バイト322の傾き等により、微小な溝の形状が変えられる。所定のパターン(第1、第2パターン等)にて複数の微小な溝に対応して形成された微小プリズム群(微小プリズム111、121等)がそれぞれ近用光学領域110、遠用光学領域120等を形成することとなる。また、各光学領域の境界線が光学部100の周辺から中心に向かう線で光学部100を3等分するように、微小な溝が引き切り加工により掘り込まれる。また、光学部100の中心(光軸L)に対して各微小プリズム111、121等がそれぞれの光学領域毎に略円弧状となるように引き切り加工を行う。このようにして、微小な溝を複数形成することにより微小プリズム111、121等が微小プリズム群として形成され、前面101が作製される。このとき、前述のように境界線にて光学部100に各領域が分割された形成される。次に、基板10を上下反対にワーク311に取り付け、前面101と反対側を切削加工用工具(図示を略す)で加工し、所定の曲面形状とする(図4(c)参照)。これにより、光学部100の後面102が作製される。なお、曲面形状を形成できる加工方法であれば、切削に限らず研削加工等を用いてもよい。以上のようにして、光学部100が作製され、この光学部100の側面に孔をあけ、支持部200を取り付けることで、眼内レンズ1が作製される。このようにして、簡単な加工ステップで、前述した多焦点の眼内レンズ1が得られる。
なお、以上の説明では、平板形状の基板10を用いる作製方法としたが、これに限るものではない。曲面を持つ基板(レンズ形状の基板)としてもよい。また、基板10に微小な溝を掘り込んだ後に反対の面に曲面を形成する作製方法としたが、逆であってもよい。また、光学部100を作製した後に、別個に作製した支持部200を取り付ける作製方法としたが、これに限るものではなく、基板10から光学部100を作製しつつ、支持部を削り出す作製方法としてもよい。この場合、眼内レンズ1は1ピースタイプとなる。
次に、金型(鋳型)を用いる眼内レンズ1の作製方法を説明する。図5において、はじめに金型となる金属等で構成された鋳型基材を用意し、基材を流し込む際の側壁を座繰り加工等で形成して、ベース400を得る(図5(a)参照)。ベース400をワーク311に固定し、前述の光学部100の作製方法と同様に、バイト322に微小な溝を掘り込む(近用光学領域110用の微小な溝、遠用光学領域120用の微小な溝等を掘り込む)。このとき、近用光学領域対応パターン(第1光学領域対応パターン)にて微小な溝をベース400に複数掘り込み、近用光学領域用鋳型(第1光学領域用鋳型)を得る。同様に、遠用光学領域対応パターン(第2光学領域対応パターン)110aにて微小な溝をベース400に複数掘り込み、遠用光学領域用鋳型(第2光学領域用鋳型)120aを得る。各光学領域対応パターンは、前述の微小プリズム111、121に対応した形状、ピッチとされる。なお、微小な溝の底面が水平となるようにする。これにより、後述するモールド加工で光学部100を作製すると、前面101の微小プリズム111、121等の先端の位置が揃う。このような微小な溝が、微小プリズム111、121等となり、掘りこんだ微小な溝の形状が微小プリズム111等の形状と対応する。このとき、光学部100に相当する金型401の幾何中心に対して、微小な溝がそれぞれの光学領域毎に略円弧状に形成される。このようにして、近用光学領域用金型110a及び遠用光学領域用金型120aが形成された金型401が作製される(図5(b)参照)。このとき、金型401には、各光学領域を光学部100に形成するための鋳型が形成される。金型401により形成される光学部100の周辺から中心に向かう線(境界線)が、光学部100を3等分するように形成される。また、金型401を3分割して形成された領域に近用光学領域用金型110aが形成され、近用光学領域用金型110aに隣接する他の領域の1つに遠用光学領域用金型120aが形成される。また、図示は略したが、残りの領域に中用光学領域用金型が形成されることなる。
このようにして作製した金型401を用いて、モールド加工(モールディング)により眼内レンズ1を作製するステップを説明する(図示を略す)。金型401に前述の基材を流し込み、金型401の形状をした基板を得る。この基板は、微小プリズム111、121等が複数形成され、微小プリズム群により各光学領域(近用光学領域110等)を持つ前面101が得られる。次に、切削加工により、基板のバリ等を取り除き、前面101の反対面に所定の曲面を形成する後面102を形成する)。これにより、光学部100を作製する。この後、前述の場合と同様にして光学部100に支持部200を取り付けて、眼内レンズ1を作製する。このようにして、簡単な加工ステップで、前述した多焦点の眼内レンズ1が得られる。
なお、以上の説明では、前面101を金型にて作製し、後面102を切削加工で形成する作製方法としたが、これに限るものではない。後面102の曲面を持つ後面102用の金型を作製し、前述の金型401と合わせ、モールド加工により光学部100を作製する方法としてもよい。また、以上の説明では、光学部100を作製した後に、別個に作製した支持部200を取り付ける作製方法としたが、これに限るものではなく、金型にて成型した光学部100を含む基板から支持部200を削り出す作製方法としてもよい。この場合、眼内レンズ1は1ピースタイプとなる。
次に、本発明の眼内レンズの変容例を説明する。図6は、変容例である眼内レンズ2の構成を示した図である。眼内レンズ1との差異を中心に説明する。光学部150には、遠用光学領域160、近用光学領域170、中用光学領域180が形成され、遠用光学領域160が光学部150の中心部に広く形成されている。具体的にいうと、眼内レンズ2は、眼内レンズ1の中心部に所定の大きさの円で、遠用の屈折力を持つ円領域161を設けた構成とされる。なお、説明の簡便のため、円領域161は点線の円で示し、各光学領域にハッチング処理をした)。このとき、円領域161の径は、患者眼の瞳孔径が小さくなった場合でも、円領域161の周縁に患者眼の虹彩が掛らない程度とされる。また、円領域161の径が大きすぎると、瞳孔径が小さくなった場合に、近用光学領域170等が虹彩に覆われてしまう。また、円領域161の径が小さすぎると遠用光学領域を光学部150の中心部に設ける利点が少ない。このため、円領域161の径は、縮瞳した瞳孔径よりも小さい2mm程度とされる。
このような構成により、患者眼の瞳孔径が小さくなっても、遠用光学領域が確保され、患者には遠い位置のものが視認し易い状態とされ、さらに、近い位置等のものも視認できるようになる。なお、円領域161には、埋植される患者眼によって重要度の高い光学領域が当てられる構成であればよく、近用光学領域等を当ててもよい。
なお、以上説明した本実施形態では、光学部に近用光学領域、遠用光学領域、中用光学領域の3つを設ける構成としたが、これに限るものではない。患者眼の瞳孔径に依らず少なくとも2つの多焦点効果を得られるように光学領域を設ける構成であればよい。例えば、光学部の光軸で光学部を等分に分割するように、近用光学領域と遠用光学領域の2つの光学領域を形成する構成としてもよい。この場合、光学部の周辺から幾何中心に向かう境界線にて光学部を2つに分割し、分割した一方の領域に近用光学領域を形成し、近用光学領域と隣接する他の領域に遠用光学領域を形成する構成なる。
なお、以上説明した本実施形態では、各々屈折力を備えた微小プリズムを所定のパターンにて形成して各光学領域を得る構成としたが、これに限るものではない。屈折力の異なる複数の光学領域を、患者眼の瞳孔径に依らず好適に多焦点効果が得られるように眼内レンズの光学部に形成する構成であればよい。例えば、回折効果を用いた光学領域を複数形成する構成としてもよい。具体的には、微小な溝を所定のパターンにて形成して所定の屈折力を持つ光学領域を形成し、このような光学領域を前述のように眼内レンズの光学部に複数形成する。なお、各光学領域が持つ屈折力は、微小な溝の深さ(眼内レンズの光軸Lと平行に形成された微小な溝の長さ)、ピッチを変えることで変更する。
本実施形態における眼内レンズ1の構成を示した図である。 眼内レンズ1の拡大断面図である。 眼内レンズ1の作製に用いられる加工装置300の構成を説明する図である。 本実施例の眼内レンズ1の製造方法を示した図である。 本実施例の眼内レンズ1の金型の製造方法を示した図である。 本発明の変容例である眼内レンズ2を説明する図である。
符号の説明
1、2 眼内レンズ
100、150 光学部
101 前面
102 後面
110、120、130、150、160、170 光学領域
111、121 微小プリズム
200 支持部
300 加工装置

Claims (2)

  1. 第1の屈折力を持つ第1光学領域と該第1の屈折力と異なる第2の屈折力を持つ第2光学領域とが形成された光学部を有する多焦点眼内レンズの作製方法において、前記光学部となる平板形状又はレンズ形状の基板の面を周辺から幾何中心に向けて延びる境界線により複数の領域に分割し,該分割した複数の領域のうち所定の領域全体が全て同じ屈折力となる前記第1光学領域を形成するために微小な溝を第1パターンにて複数掘り込む第1ステップと、前記第1光学領域に隣接する他の領域に第2光学領域を形成する第2ステップであって,前記第1ステップとは異なる屈折力であり前記他の領域全体が全て同じ屈折力となる前記第2光学領域として前記第1パターンとは異なる第2パターンにて微小な溝を複数掘り込む第2ステップと、を有することを特徴とする多焦点眼内レンズの製造方法。
  2. 請求項1の多焦点眼内レンズの製造方法において、前記第1及び第2ステップでは前記第1及び第2光学領域は前記光学部の前面に形成し、さらに前記光学部の後面に所定の曲面を形成するために切削加工をする第3ステップを有することを特徴とする多焦点眼内レンズの製造方法。
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