JP5408413B2 - ダイカストマシンの電動射出装置 - Google Patents
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Description
ダイカストマシン(鋳造装置)100は、金型装置101と、射出装置102とを具備している。金型装置101には、対向する一対の固定プラテン120と可動プラテン121との間に、固定金型118と可動金型119が取付けられている。固定金型118と可動金型119は、固定プラテン120と可動プラテン121などで構成される型締装置によって閉じられることにより、その間にキャビティ(空洞)122を形成する。型締力が負荷された状態において、キャビティ122内にアルミニウム(AL)などの溶湯(高温で溶融状態)が射出充填され、冷却固化後に金型が開かれて取り出すことにより、鋳造成形品を製造できる。アルミ溶湯を射出充填するために、射出装置102が設けられている。また、固定プラテン120には、アルミ溶湯が貯められるスリーブ117が設けられており、固定プラテン120及び固定金型118を貫通して、キャビティ122に流体連絡する。
図9の実施の形態においては、射出装置102は油圧式であるので、図示せぬ油圧装置により、作動油をシリンダー本体116のヘッド側に供給して、ピストンヘッド115及びピストンロッド114を駆動する。そして、スリーブ117に貯められたアルミ(AL)溶湯をプランジャーチップ111で押して、固定金型118、可動金型119から形成されるキャビティ(空洞)122に射出充填して鋳造成形する。
一般的な鋳造の射出速度パターンを、図10を用いて説明する。
射出充填工程が開始される前の給湯工程において、図示せぬ給湯装置により溶湯がスリーブ117内に注湯され、射出開始状態となる。この時のプランジャーチップ111の先端位置はAである。(図10の上の図を参照)
高速射出工程では、プランジャーチップ111等を一機に加速し、高速(Vh)でキャビティ122内に溶湯を射出充填する。これは、溶湯が低温であるキャビティ122の表面に接触すると瞬時に凝固するためであり、できるだけ短時間で凝固する前に充填することが、良品の鋳造のためには望ましい。特に、キャビティ122(鋳造品)が大型化、複雑化すると、より高速化が求められる。
そして、キャビティ122内に溶湯が完全に充填する直前なると、溶湯圧力によってプランジャーチップ111が後方に押されて減速していく。プランジャーチップ111がC位置に達しキャビティ122内に溶湯が充満(フル充填)すると、射出圧力(射出シリンダーのヘッド側圧力)が上昇するので、圧力センサの測定値が設定切換え圧力になった時に、次の昇圧保持工程に切換える。(図10の上から3番目の図を参照)
昇圧保持工程では、あまり早く圧力を上昇させるとバリが発生し、また遅いと引け巣が発生するので、適切な昇圧速度で上昇させる。そして、設定された保持圧力まで達すると一定の時間溶湯圧力を保持制御し、溶湯が凝固冷却して収縮する分、プランジャーチップ111を前進させる。(図10の下の図を参照)
しかし、この電動駆動方式においては、電動モータの回転軸、ボールねじ軸、回転軸とボールねじ軸をつなぐカップリングなどの回転体の慣性モーメントが大きくなる。また、高速射出に応じて回転体が高速で回転することにより、運動エネルギーは大きくなる。すると、溶湯が金型キャビティ内にフル充填した後も回転が直ちに止まらず、プランジャーは前進を続けてしまう。図8に示すよう、溶湯のフル充填後もプランジャーが前進すると、金型キャビティ内の溶湯は過度に圧縮され、瞬間的に大きな圧力(サージ圧)が発生する。サージ圧が発生すると、金型パーティング面が開いてバリが生じたり、ひどい場合には金型を損傷するという問題を起こす。
さらに、プランジャーチップがサージ圧によって大きな反力を受けるため、それまで高速で回転していた回転体に衝撃的な減速力が作用し、ボールねじやスラスト軸受け、カップリングなどが損傷してしまう問題もある。
また、特許文献2の方法では、大容量のサーボモータが必要な高速高圧用の射出装置においては、サーボモータの軸など回転体の慣性モーメントが大きくなるため、サージ圧を防止するための湯だまりを大きくする必要が生じ、1回の鋳造に多量の溶湯を使うといった無駄が生じる。また、充填途中に減速をかけると、キャビティ内で湯先が飛んでエアーを巻き込み、製品の中に空隙欠陥が生じて不良品となる。
ダイカストマシンの射出装置において、サーボモータと、サーボモータの回転運動を直線運動に変換する運動変換装置と、スリーブ内の溶湯を金型キャビティ内に射出充填するプランジャーと、運動変換装置の直線運動部分とプランジャーとの間に接続されたサージ圧防止装置を備え、
サージ圧防止装置は、油圧シリンダーの形状をしており、本体部分のシリンダー本体と、可動部分のピストンロッドおよびピストンヘッドからなり、可動部分のピストンロッドがプランジャーと連結されると共に、シリンダー本体のヘッド室には、ピストンロッドの可動方向に、圧縮状態のばねが内蔵される構成とする。
第2の発明では、
サーボモータと、サーボモータの回転運動を直線運動に変換する運動変換装置と、スリーブ内の溶湯を金型キャビティ内に射出充填するプランジャーと、運動変換装置の直線運動部分とプランジャーとの間に接続されたサージ圧防止装置と、を備え、
サージ圧防止装置は、ピストンロッドおよびピストンヘッドを有する油圧シリンダーからなり、油圧シリンダーの前記ピストンロッドが前記プランジャーと連結される構成とする。
第3の発明では、
サージ圧防止装置は、油圧シリンダー内のヘッド室とロッド室を連通する流路がピストンヘッドおよびピストンロッドの内部に設けられ、流路の途中にはオリフィスが形成され、ヘッド室には、前記ピストンロッドの可動方向に、圧縮状態のばねを備える構成とする。
第4の発明では、
サージ圧防止装置は、油圧シリンダー内のヘッド室とロッド室に通ずる流路が、外部流路によって途中で交わり、さらにアキュムレータに繋がっている構成とする。
第5の発明では、
サージ圧防止装置の油圧シリンダーは、径が等しい両ロッド式であって、油圧シリンダーの片側のピストンロッドがプランジャーと連結され、油圧シリンダー内のプランジャー側ロッド室と反プランジャー側ロッド室に通ずる流路は並列に接続されたチェック弁とリリーフ弁を介して回路接続され、ピストンヘッドがプランジャー側に動く際はプランジャー側ロッド室の作動油はチェック弁を介して反プランジャー側ロッド室に無抵抗で流れることができ、またピストンヘッドがプランジャーと反対側に動く際は反プランジャー側ロッド室の作動油はリリーフ弁を介して抵抗を受けながら反プランジャー側ロッド室に流れる構成とする。
第6の発明では、
サージ圧防止装置は、油圧シリンダー内のヘッド室がサージ圧吸収用油圧シリンダーのヘッド室と回路接続され、サージ圧吸収用油圧シリンダーのピストンロッドはサーボモータとボールねじによって前後進運動可能である構成とする。
第7の発明では、
サージ圧防止装置は、油圧シリンダー内のヘッド室が連続的に流量を調整できる流量調整弁を介してタンクと回路接続されている構成とする。
(2)フル充填あるいはその直前まで高速射出充填が可能で、湯先の飛びが回避されることや充填時間が短縮されることにより、鋳造品の品質が向上する。
(3)サージ圧の反力としてサーボモータやボールねじ、カップリング、軸受けに発生する衝撃力が緩和され、機械的な損傷や故障を回避できる。
サーボモータ15は、モータカップリング16を介してボールねじ軸18と連結されている。ボールねじ軸18は、軸受けボックス17に内蔵された軸受けによって、回転可能であるが軸方向には拘束された状態で支持されている。ボールねじ軸18と螺合するボールねじナット19は、移動部材14に固定されている。さらに、移動部材14にはサージ圧防止装置20が固定されており、サージ圧防止装置20の可動部分は、プランジャーカップリング13によってプランジャーロッド12と結合されている。プランジャーロッド12の先端にはプランジャーチップ11が固着し、一体となってプランジャー10が構成される。軸受けボックス17は、金型を保持する固定プラテンに対して固定されているので、射出力を金型キャビティ内の溶湯に伝えることができる。また、移動部材14は、図示せぬリニアスライドによって摺動自在に支持されている。ここでは、ボールねじなどが、回転運動を直線運動に変換する運動変換装置の機能を果たす。
Fc=(π/4)・Dp2
となる。よって、衝撃緩衝ばね24はFcと同等か少し大きい(例えば1.05〜1.1倍)圧縮力(Fs)を負荷されて内蔵される。そのため、射出充填途中に衝撃緩衝ばね24が縮むことはない。
まず、サーボモータ15が回転を開始し低速射出速度となる。この時の加速時においては、サーボモータ15のモータ軸やカップリング16、ボールねじ軸18などの慣性モーメントの大きい回転体を回転加速するため、大きなモータトルクを要する。所定のストローク前進すると、次に高速射出速度となるが、短時間に高速まで加速する必要があるため、その時のモータトルクも大きくなる。低速および高速射出の間は、モータ回転速度と射出速度は比例関係にある。
これらのことにより、回転体の運動エネルギーは衝撃緩衝ばね24によって吸収される。よって、金型キャビティ内の溶湯は過度に圧縮されることが無いので、サージ圧の発生を防止することができ、バリの発生は回避され、さらに衝撃力も防げる。
シリンダーの内径をDs、ロッド径をDrとし、アキュムレータ圧力をPsaとすると、
Fs=(π/4)・Dr2・Psa
より、Psaを算出できる。
よって、プランジャーが後方(図の右側)に動く時は、リリーフ弁51の設定圧力の抵抗が働き、一方前方(図の左側)に動く時は、チェック弁52の作用により無抵抗で動くことができる。また、リリーフ弁の設定圧をPsbとすると、
Fs=(π/4)・(Ds2−Dr2)・Psb
より、Psbを換算できる。
Pscは、シリンダーの内径をDs、圧力をPscとすると、
Fs=(π/4)・Ds2・Psc
を満たす圧力である。また、ばね式アキュムレータ64は、内部のピストンが圧力Pscによって受ける力とつり合うように、ばね力は設定されている。
射出圧力が大きくなり射出力がFsになると、ピストンヘッド23は後方(図の右側)に動き出す。この時、ヘッド室62の圧力は、サーボモータ72が後退方向に回転しながらもトルク制御することによって、Pscに保たれている。ピストンヘッド23の動き出しが早く、サージ圧吸収用油圧シリンダー67のピストンロッド等の慣性によってピストンロッド等の後退が遅れる場合は、ばね式アキュムレータ64のピストンが後退(図の下側)し、圧力はほぼPscに維持される。ピストンヘッド23がシリンダーエンドまで動く間に、ボールねじ軸18などの回転体の回転は、回転速度がほぼ0まで徐々に減速されるので、溶湯にはサージ圧が発生しない。
プランジャーにFcを超える射出力が作用すると、ヘッド室82内の作動油は圧力が上がるので、その圧力を圧力センサー9で検知し、圧力がPscを超えないよう流量調整弁91の開度を調整し、作動油をタンク93に逃がす。流量調整弁91の応答遅れがある時は、ばね式アキュムレータ84のピストンが動き、圧力はほぼPscに保たれる。
このような作用により、実施例5と同様、溶湯にはサージ圧が発生しない。
11 プランジャーチップ
12 プランジャーロッド
13 プランジャーカップリング
14 移動部材
15 サーボモータ
16 モータカップリング
17 軸受けボックス
18 ボールねじ軸
19 ボールねじナット
20 サージ圧防止装置(油圧シリンダー)
21 シリンダー本体
22 ピストンロッド
23 ピストンヘッド
24 衝撃緩和ばね
25 エアーブリーザ
31 突起物
32 皿ばね
33 流路
34 オリフィス
35 タンク
36 ヘッド室
37 ロッド室
41 アキュムレータ
42 アキュムレータ側絞り弁
43 ロッド側絞り弁
44 ヘッド室
45 ロッド室
51 リリーフ弁
52 チェック弁
53 反プランジャー側ロッド室
54 プランジャー側ロッド室
61 エアーブリーザ
62 ヘッド室
63 ロッド室
64 ばね式アキュムレータ
65 切換え弁
66 タンク
67 サージ圧吸収用油圧シリンダー
68 ナットホルダー
69 ボールねじナット
70 ボールねじ軸
71 カップリング
72 サーボモータ
81 エアーブリーザ
82 ヘッド室
83 ロッド室
84 ばね式アキュムレータ
85 チェック弁
86 ポンプ
87 電気モータ
88 タンク
89 リリーフ弁
90 圧力センサー
91 流量調整弁
92 サーボモータ
93 タンク
100 ダイカストマシン(鋳造装置)
101 金型装置
102 射出装置
103 ピストン
111 プランジャーチップ
112 プランジャーロッド
113 カップリング
114 ピストンロッド
115 ピストンヘッド
116 射出シリンダー本体
117 スリーブ
118 固定金型
119 可動金型
120 固定プラテン
121 可動プラテン
122 キャビティ(空洞)
Claims (7)
- サーボモータと、前記サーボモータの回転運動を直線運動に変換する運動変換装置と、スリーブ内の溶湯を金型キャビティ内に射出充填するプランジャーと、前記運動変換装置の直線運動部分と前記プランジャーとの間に接続されたサージ圧防止装置と、を備え、
前記サージ圧防止装置は、油圧シリンダーの形状をしており、本体部分のシリンダー本体と、可動部分のピストンロッドおよびピストンヘッドからなり、前記可動部分の前記ピストンロッドが前記プランジャーと連結されると共に、前記シリンダー本体のヘッド室には、前記ピストンロッドの可動方向に、圧縮状態のばねが内蔵されることを特徴とするダイカストマシンの電動射出装置。 - サーボモータと、前記サーボモータの回転運動を直線運動に変換する運動変換装置と、スリーブ内の溶湯を金型キャビティ内に射出充填するプランジャーと、前記運動変換装置の直線運動部分と前記プランジャーとの間に接続されたサージ圧防止装置と、を備え、
前記サージ圧防止装置は、ピストンロッドおよびピストンヘッドを有する油圧シリンダーからなり、前記油圧シリンダーの前記ピストンロッドが前記プランジャーと連結されることを特徴とするダイカストマシンの電動射出装置。 - 前記サージ圧防止装置は、前記油圧シリンダー内のヘッド室とロッド室を連通する流路が前記ピストンヘッドおよび前記ピストンロッドの内部に設けられ、前記流路の途中にはオリフィスが形成され、前記ヘッド室には、前記ピストンロッドの可動方向に、圧縮状態のばねが備えられていることを特徴とする、請求項2記載のダイカストマシンの電動射出装置。
- 前記サージ圧防止装置は、前記油圧シリンダー内のヘッド室とロッド室に通ずる流路が、外部流路によって途中で交わり、さらにアキュムレータに繋がっていることを特徴とする、請求項2記載のダイカストマシンの電動射出装置。
- 前記サージ圧防止装置の前記油圧シリンダーは、径が等しい両ロッド式であって、前記油圧シリンダーの片側のピストンロッドが前記プランジャーと連結され、前記油圧シリンダー内の前記プランジャー側ロッド室と反前記プランジャー側ロッド室に通ずる流路は並列に接続されたチェック弁とリリーフ弁を介して回路接続され、前記ピストンヘッドが前記プランジャー側に動く際は前記プランジャー側ロッド室の作動油はチェック弁を介して反前記プランジャー側ロッド室に無抵抗で流れることができ、また前記ピストンヘッドが前記プランジャーと反対側に動く際は反前記プランジャー側ロッド室の作動油は前記リリーフ弁を介して抵抗を受けながら反前記プランジャー側ロッド室に流れることを特徴とする、請求項2記載のダイカストマシンの電動射出装置。
- 前記サージ圧防止装置は、前記油圧シリンダー内のヘッド室がサージ圧吸収用油圧シリンダーのヘッド室と回路接続され、前記サージ圧吸収用油圧シリンダーのピストンロッドはサーボモータとボールねじによって前後進運動可能であることを特徴とする、請求項2記載のダイカストマシンの電動射出装置。
- 前記サージ圧防止装置は、前記油圧シリンダー内のヘッド室が連続的に流量を調整できる流量調整弁を介してタンクと回路接続されていることを特徴とする、請求項2記載のダイカストマシンの電動射出装置。
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