JP5407144B2 - 疲労き裂進展抑制に優れる鋼材 - Google Patents

疲労き裂進展抑制に優れる鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、橋梁、船舶、建築物、海洋構造物、タンク、パイプなど構造安全性が強く求められる溶接構造物や建設、輸送、採掘、掘削などの機器・機械に好適な疲労き裂進展を抑制する鋼材、およびその製造方法に関する。
橋梁、船舶、建築物、海洋構造物、タンク、パイプなどの構造物や機器に使用される鋼材は、強度、靭性などの機械的性質や溶接性に優れていることに加え、常時稼動における繰返し荷重や風、地震等による震動に起因する繰返しに対して構造物の構造安全性を確保しなければならない。
繰返し荷重は疲労破壊をもたらすため、上記用途に用いられる構造用鋼に対しては疲労特性に優れていることが要求される。一般的に、疲労き裂は溶接部位の止端やルートあるいはスカラップなどの応力集中部から発生し、それが鋼材へと進展して、部材の終局的な破断へと至る。
疲労き裂の発生に対しては、応力集中を低減することが重要であり、そのような手法としては溶接止端形状の改善(付加溶接、ピーニング処理など)が効果的であることが広く知られている。
しかし、数百あるいは数千の溶接部にそのような処理を工業的な規模で実施することは施工時間やコストの観点から非現実的で、そのため、新設された溶接構造物は定期的に検査が行われ、疲労き裂が検出された際には、補修を繰り返して構造安全性を保持していくことが行われるが、このような検査や補修の手間、コストは莫大である。
そこで、疲労き裂が発生したとしてもそれが部材の破壊をもたらさぬように鋼材自身に疲労き裂進展を抑制する効果を持たせることが、検査や補修の観点からも極めて重要と考えられる。
一方、構造物の使用される環境には、風雨や飛来塩分に曝されたり、機器・機械の運転により温度上昇が生じることもある。例えば、前者は山間部や海岸付近で敷設された橋梁に相当し、後者はオイルサンドよりスチームインジェクション法によって原油を採取する機器・機械に相当する。
このような構造物および機器の構成部材は疲労き裂進展抵抗だけでなく、耐候性や耐熱性も具備していることが望ましい。
非特許文献1は限られた成分の鋼でラボスケールの特殊な熱処理を繰り返して製造した2種類の鋼材の疲労き裂伝播挙動を論じたものである。
軟質相(ビッカース硬度:148)中に硬質相(ビッカース硬度:565、分率:36.4%、平均サイズ:149μm)を均一分散させた鋼材:Aと硬質相(ビッカース硬度:546、分率:39.2%)で軟質相(ビッカース硬度:149)を網目状に取り囲んだ鋼材:Bの疲労き裂伝播特性を調べた結果、鋼材:Bの方が疲労き裂伝播速度が大きく低減することが詳細な考察とともに述べられている。
特許文献1にはミクロ組織を硬質部の素地とこの素地に分散した軟質部とで構成し、両者の硬度差がビッカース硬度で150以上であることを特徴とする疲労き裂進展抑制効果を有する鋼板が記載されている。
特許文献2にはミクロ組織が軟質相とそれを網目状に囲む硬質第二相からなり、軟質相はフェライト、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトの一種または二種以上で構成され、ビッカース硬度150以下であり、硬質第二相は、ベイナイト、マルテンサイト、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトの一種または二種以上で構成され、ビッカース硬度250以上であり、硬質第二相の粒界占有率(硬質第二相が占めている粒界長さの総和/総粒界長さ)が0.5以上であることを特徴とする耐疲労き裂伝播特性に優れた厚鋼材が記載されている。
特許文献3にはミクロ組織がフェライトと硬質第二相とを含む組織からなり、かつ、鋼板表面に平行な断面組織における硬質第二相が、面積分率:20〜80%、ビッカース硬度:250〜800、平均円相当径:10〜200μmで、且つ、硬質第二相間の最大間隔:500μm以下であることを特徴とする疲労強度に優れた厚鋼板が記載されている。
特許第2962134号公報 特許第3785392号公報 特許第3860763号公報 H.SUZUKI AND A.J.McEVILY Metallurgical Transactions A,Volume 10A,P475〜481,1979
しかしながら、非特許文献1に記載された鋼は5段階の熱処理を必要とするものであり、工場・製品規模で工程生産を行うにはコストや期間の観点から不可能に近い。また、疲労き裂伝播特性と相反して延性が低下しており、このような鋼を構造物へと適用することはできない。
特許文献1、2記載の発明は非特許文献1と類似する内容で、特許文献1には詳細な製造条件が記載されておらず、特許文献1記載の発明に係る鋼板を製造することは困難を伴う。特許文献2記載の発明に係る鋼の硬質相の粒界占有率は非特許文献1に記述のマルテンサイト組織の連結性(connectivity)と同意語で、非特許文献1記載の鋼と同様の問題を有している。
特許文献3は実施例で示しているように鋼材の板厚方向のみでの疲労き裂進展特性を抑制するものであり、鋼板長手方向や幅方向での疲労き裂進展特性の劣化が懸念される。
そこで、本発明は、上記課題を解決する、疲労き裂進展の抑制に優れる鋼およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、疲労き裂進展特性におよぼすミクロ組織形態の影響について鋭意詳細に検討した。
図1は、種々の成分および方法で製造した鋼材において、硬質相の平均ビッカース硬度が250以上の鋼材を抽出し、硬質相面積分率と圧延直角方向での疲労き裂伝播速度を示したものである(成分、製造方法、試験方法等の詳細については実施例にて記述)。図より、硬質相の硬度と面積分率では、疲労き裂伝播速度は一義的に整理されない。
図2に、さらに図1の試験結果より硬質相と軟質相の平均ビッカース硬度差が100以上の鋼材を抽出し、硬質相の面積分率で整理を試みた結果を示す。図より、伝播速度は硬質相分率で50%をピークに凹型の傾向を示すことが認められるが、同一の組織分率においても疲労き裂伝播速度は大きくばらつき、このような指標をもって工程製造することは品質保証の観点からも好ましくない。
そこで、本発明者等は、更に検討を進め、硬質相の面積分率[%]と硬質相/軟質相の硬度差:ΔHvとの積を用いた場合、疲労き裂伝播特性が整理されることを見出した。
更に、上記知見を満足する鋼は成分組成を調整した場合、耐候性や耐熱性を具備できること、工業規模で工程生産しうることを見いだした。
本発明は、得られた知見に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Cr:0.14〜2.25%、Mo:0.45〜0.75%,更に、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下の一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織が硬質相と軟質相から構成され、(1)式による組織分率パラメータ:VPと、(2)式による硬質相/軟質相の硬度差:ΔHvとの積が50以上であることを特徴とする疲労き裂進展抑制に優れる耐熱性鋼材。
VP=VFH/50 (1)
但し、(1)式は0<VFH≦50の場合で、50<VFH<100の場合は、
VP=(100−VFH)/50を(1)式とする。ここで、VFH:硬質相
の面積分率[%]。
ΔHv=HvH−HvS (2)
但し、HvH:硬質相の平均ビッカース硬度、HvS:軟質相の平均ビッカース硬度
2.更に、質量%で、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜5.0%の一種または二種を含有する1に記載の疲労き裂進展抑制に優れる耐熱性鋼材。
本発明によれば、疲労き裂進展を抑制した鋼材が得られ、構造物に用いて応力集中部や溶接部等から疲労き裂が発生したとしても、使用過程での疲労き裂進展を遅らせることが可能で、鋼構造物や機械・機器の寿命延伸や補修工程の省力化に繋がる点で、産業上極めて有用である。
また、鋼成分を適切に調整することで耐候性や耐熱性を付与することも可能であり、鋼構造物や機械・機器の安全性をさらに高めることができる。また、そのような鋼材を、加熱速度、冷却速度、冷却温度、焼戻し温度を適切に制御することで工業規模で生産できる点で、産業発展への寄与が大きい。
以下、本発明の鋼材の成分組成と組織形態について詳細に説明する。
1 成分組成(含有量%は質量%とする。)

Cは強度ならびに疲労特性を向上させるための硬質相の面積率を確保するため0.02%以上添加する。0.25%を超えて添加すると溶接性が阻害され、延性や曲げ加工性に劣る。好ましくは0.05%以上0.20%以下を添加する。
Si
Siは脱酸と強度を確保するため0.01%以上添加する。0.50%を超えて添加すると溶接性、靭性が劣化する。好ましくは0.05%以上0.40%以下を添加する。
Mn
Mnは焼入れ性の増加により、強度、靭性を確保するため、0.5%以上添加する。2.0%を超えると溶接性が劣化する。好ましくは0.5%以上1.8%以下を添加する。

Pは耐候性の向上に寄与する。しかし、極度の添加は靭性劣化に繋がるため、上限を0.1%とする。好ましくは0.05%以下とする。

Sは靭性を劣化させるため、上限を0.05%とする。好ましくは0.03%以下とする。
Cu
Cuは固溶を通じて強度を上昇させるとともに耐候性を向上させるので、0.01%以上添加する。1.0%を超えると溶接性が損なわれ、鋼材製造時に疵が生じやすくなる。好ましくは、0.01%以上0.8%以下を添加する。
Ni
Niは低温靭性や耐候性を向上させるとともに、Cuを添加した場合の熱間脆性を改善するため、0.01%以上添加する。添加量が5.0%を超えると溶接性が損なわれ、鋼材コストも上昇する。好ましくは、0.01%以上4.0%以下とする。
Cr
Crは焼入れ性の増加や焼戻し軟化抵抗を通じて強度を上昇させ、また耐候性や耐熱性を向上させるので、0.01%以上添加する。添加する場合、3.0%を超えると溶接性と靭性が損なわれる。好ましくは、0.01%以上2.5%以下とする。
Mo
Moは焼入れ性の増加や焼戻し軟化抵抗を通じて強度を上昇させ、耐候性、耐熱性を向上させるので、0.01%以上添加する。添加量が1.0%を超えると溶接性と靭性が損なわれる。好ましくは、0.01%以上0.8%以下とする。
以上が本発明に係る鋼の基本成分組成であるが、更に強度、靭性、溶接性の向上などの目的でNb,V,Ti,Bの一種または二種以上を添加する。
Nb
Nbは圧延・焼入れ時のオーステナイトの細粒化を図ると同時に、焼戻し時に析出し強度を上昇させるので、必要に応じて添加する。添加する場合、0.1%を超えると靭性が損なわれる。好ましくは0.05%以下とする。

Vは、圧延・焼入れ時のオーステナイトの細粒化を図るとともに、焼戻し時の析出を通じて強度上昇が図れるため、必要に応じて添加する。0.1%を超えて添加すると溶接性と靭性が損なわれる。好ましくは0.05%以下とする。
Ti
Tiは、強度を上昇させ、溶接部靭性を向上させるので、必要に応じて添加する。添加量が0.1%を超えると鋼材コストの上昇や靱性が劣化する。好ましくは0.05%以下とする。

Bは焼入れ性を高め、強度を上昇させるので、必要に応じて添加する。添加する場合、0.005%を超えると溶接性が低下する。好ましくは0.003%以下とする。
2.ミクロ組織形態
構成組織
鋼材のミクロ組織は、構成組織を硬質相と軟質相の複合組織とする。鋼材組織が硬質相単相あるいは軟質相単相の場合、疲労き裂進展を抑制することができない。
軟質相中に疲労き裂先端が存在し、その前方に硬質相が存在すると、塑性域の拘束などを通じ、疲労き裂が硬質相を避けて屈曲や分岐し進展するようになる。
このようなき裂の屈曲や分岐は破面粗さ誘起き裂閉口や応力遮蔽効果をもたらして疲労き裂進展駆動力を低下させる。
軟質相はフェライト、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトのうち一種または二種以上である。硬質相はパーライト、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、マルテンサイトのうち一種または二種以上である。
組織分率および硬質相/軟質相硬度差
本発明では、組織分率パラメータ:VPと硬質相/軟質相の硬度差:ΔHvとの積を50以上とする。
組織分率パラメータ:VPは、前出の図2の傾向を基に以下のように定義し、硬質相の面積分率が50%に近づくほど1に近づく。
VP=VFH/50・・・・・・・・・0<VFH≦50の場合
=(100−VFH)/50・・・50<VFH<100の場合
但し、VFH:硬質相の面積分率[%]
また、硬質相/軟質相の硬度差:ΔHvを次式で定義する。
ΔHv =HvH−HvS
但し、HvH:硬質相の平均ビッカース硬度
HvS:軟質相の平均ビッカース硬度
図3に、組織分率パラメータ:VPと硬質相/軟質相の硬度差:ΔHvとの積をとり、疲労き裂伝播速度を整理した結果を示す。試験データは前出の図1、図2のものを用いた。
図より、VP×ΔHvにて疲労き裂伝播速度は一義的に整理可能で、VP×ΔHvが50以上で安定的に疲労き裂伝播速度が低くなっていることが認められる。
上記指標で疲労き裂伝播速度が整理された原因としては、疲労き裂進展速度には(1)硬質相に遭遇する頻度と(2)硬質相に遭遇したときに局所的に伝播速度が低下する度合いが相乗的に関与していることが考えられる。
そして、それらの組織学的な特徴がそれぞれ(1)組織分率パラメータ:VPと(2)硬質相/軟質相の硬度差:ΔHvにより表現されたため、疲労き裂進展速度がこれまでにないほど整理できたものと考えられる。なお、鋼材組織が3相以上からなる場合、VFH、HvHは最も硬い相の分率と硬度、HvSは最も軟らかい相の硬度である。
2.製造方法
本発明に係る鋼材は上記に記載の成分の鋼を、熱間圧延や熱処理で調整し、前組織として、フェライトと、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトの1種もしくは2種以上からなる鋼材とした後、Ac点以上Ac点未満に加熱し、5℃/s以上でMs点以下まで冷却することにより得られる。
強度、靭性を調整する場合は、更に、冷却後、Ac点未満で焼戻す。なお、上記温度は鋼材表面温度とし、冷却速度は鋼材の厚さ方向での平均値とする。以下、それらの詳細について記述する。
前組織
前組織はフェライトと硬質相からなる組織とし、その硬質相はパーライト、ベイナイト、マルテンサイトの1種もしくは2種以上とする。
このような組織を有する鋼板を、Ac点以上Ac点未満に加熱することで、硬質相部分のみをオーステナイトへと逆変態させ、その後の冷却によって、フェライト部は残存したまま、オーステナイト部分のみをベイナイト、マルテンサイト等の硬質相へと変態させ、軟質相と硬質相との硬度差を大きくすることが可能となる。
なお、本発明では前組織を得るための製造条件は特に規定しない。常法の熱間圧延やノルマ等の熱処理によって調整される。
加熱・焼入れ
前記前組織を有する鋼をAc点以上Ac点未満に加熱した後に5℃/s以上でMs点以下まで冷却する。
前組織としてフェライトと硬質相からなる鋼材をAc点以上に加熱することによって、硬質相をオーステナイトへと変態させる。
加熱温度がAc点を超えると、組織全体がオーステナイトに変態するため、その後の冷却によって硬質相単一組織となる。加熱後にオーステナイト相を硬質相とするために5℃/s以上でMs点以下まで冷却する。
冷却速度が5℃/s未満の場合、フェライトなどの軟質相の生成が多くなるとともに、硬質相が低硬度となり、疲労進展抑制に対し十分な効果が得られない。
また、冷却停止温度がMs点を上回る場合、硬質相が低硬度となり、疲労進展抑制効果が得られない。
なお、Ac点、Ac点、Ms点は例えば、Ac(℃)=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Cr、Ac(℃)=723−14Mn+22Si−14.4Ni+23.3Cr、Ms(℃)=517−300C−33Mn−22Cr−17Ni−11Mo−11Si(但し、元素記号は鋼材中の各元素の質量%での含有量を表す)で表される関係式により鋼材の成分組成に基づいて導くことが出来る。
上記熱処理の後、鋼材の形状補正や延性、靱性の向上の観点から、必要に応じて、冷却後にAc点未満で焼戻すことができる。但し、焼戻し温度がAc点を超えると島状マルテンサイトが生成し、延性、靭性が劣化するためAc点以下とする。
表1に示す成分組成の鋼片にて、表2に示す条件にて板厚12〜100mmの供試鋼板を作成し、組織観察、硬さ試験、強度・靭性試験、疲労き裂伝播試験を実施した。尚、一部の供試鋼については耐候性試験、高温引張試験を実施した。
組織観察は任意の箇所から採取した試料を研磨したサンプルを用いて、2%ナイタール腐食液によりエッチングした圧延方向に平行な断面の板厚/4位置にて実施した。光学顕微鏡観察により硬質相の面積分率を求めた。面積分率は5視野で実施し、それら総視野での平均値として求めた。
硬さ試験は、軟質相と硬質相のビッカース硬度を、上記5視野の観察位置において、各相10点を荷重0.098N(10gf)にて測定した。それら測定値を平均して、軟質相および硬質相の平均ビッカース硬度とした。
強度は圧延方向に直角方向に採取したJIS Z2201 1A号の全厚試験片(板厚50mm以上は板厚/4位置でのJIS Z2201 4号丸棒試験片)により評価した。引張強度(σTS)で490MPa以上、かつ破断伸び(El)で15%以上を合格とした。
靭性は板厚/4位置(板厚25mm未満は板厚/2位置)で圧延方向と平行方向に採取したJIS Z 2202のVノッチシャルピー衝撃試験片により評価した。延性・脆性破面遷移温度(vTs)で−20℃以下を合格とした。
疲労き裂伝播速度はき裂が圧延直角方向および圧延方向に進展する全厚(板厚25mmを超えるものは25mmtまで片面減厚)のCT試験片を採取し、応力比0.1、周波数20Hz、室温大気中でASTM E647に準拠して行った。応力拡大係数範囲(ΔK)で20MPa√mの時の疲労き裂伝播速度が5.0×10−8m/Cycle以下の場合を合格とした。
また、板厚方向への疲労き裂進展速度は全厚(板厚25mmを超えるものは25mmtまで片面減厚)の三点曲げ試験片により、応力比0.1、周波数10Hz、室温大気中にて実施した。応力拡大係数範囲(ΔK)で20MPa√mの時の疲労き裂伝播速度が5.0×10−8m/Cycle以下の場合を合格とした。
また、耐候性を向上させることを狙いとして製造した鋼材については、川崎湾岸工業地帯にて大気暴露試験を行った。試験片は150mm角×全厚の板状とし、南向きに30°傾斜させて暴露した。暴露期間は2年とし、回収した試験片の腐食減量を調査した。腐食減量はSS400のそれを1とした時に0.5以下である場合を合格とした。
また、耐熱性を向上させることを狙いとして製造した鋼材については、600℃、大気中において引張試験を行い、耐力(0.2%オフセット耐力)を室温のそれと比較した。600℃の耐力/室温の耐力が0.5以上の場合を合格とした。
組織観察結果を表2、引張、靭性、疲労き裂伝播試験結果を表3に示す。また、大気暴露試験結果・高温引張試験結果を表3にそれぞれ示す。
成分、製造方法、組織を本発明規定範囲内とした板番No.1〜No.10の鋼板はいずれの方向においても優れた耐疲労き裂進展抵抗を示し、かつ、強度、延性、靭性にも優れていることが確認される。
また、No.3、4、9の鋼板については優れた耐候性を兼ね備えている。さらに、No.6、7、8、10の鋼板については耐熱性に優れていることがわかる。
これに対し、C、Cu、Ni、Crが本発明範囲を下回るNo.11の鋼板は、前組織、熱処理後の組織がともにフェライト単相組織となり、低強度、かつ疲労き裂伝播速度が高い。C、P、Sが本発明範囲を超えるNo.12の鋼板は延性、靱性が低い。
加熱温度がAc3点を超えるNo.13の鋼板は焼戻しベイナイト単相組織となり、疲労き裂進展抵抗が劣る。
加熱温度がAc1点を下回るNo.14の鋼板、焼入れ時の冷却速度が本発明下限値を下回るNo.15の鋼板、焼入れ時の停止温度が本発明上限値を上回るNo.16の鋼板は硬質相の硬度が低く、結果としてVP×ΔHvが50を下回る。このため、いずれも疲労き裂伝播速度が高い。
焼戻し温度が本発明上限値を上回るNo.17の鋼板は島状マルテンサイトが生じたため延性および靱性が低く、さらにはVP×ΔHvが50を下回るために疲労き裂進展抵抗性に劣る。加熱前の組織がベイナイト単相であるNo.18の鋼板は硬質相と軟質相の硬度差がほとんどなく、VP×ΔHvが50を下回るために疲労き裂伝播速度が高い。
Figure 0005407144
Figure 0005407144
Figure 0005407144
硬質相面積分率と疲労き裂伝播速度の関係(硬質相の平均ビッカース硬度:250以上)を示す図。 硬質相面積分率と疲労き裂伝播速度の関係(硬質相と軟質相の平均ビッカース硬度差:100以上)を示す図。 組織分率パラメータ(VP)×硬質相と軟質相の平均ビッカース硬度差(ΔHv)と疲労き裂伝播速度の関係を示す図。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Cr:0.14〜2.25%、Mo:0.45〜0.75%,更に、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下の一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織が硬質相と軟質相から構成され、(1)式による組織分率パラメータ:VPと、(2)式による硬質相/軟質相の硬度差:ΔHvとの積が50以上であることを特徴とする疲労き裂進展抑制に優れる耐熱性鋼材。
    VP=VFH/50 (1)
    但し、(1)式は0<VFH≦50の場合で、50<VFH<100の場合は、
    VP=(100−VFH)/50を(1)式とする。ここで、VFH:硬質相
    の面積分率[%]。
    ΔHv=HvH−HvS (2)
    但し、HvH:硬質相の平均ビッカース硬度、HvS:軟質相の平均ビッカース硬度
  2. 更に、質量%で、Cu:0.01〜1.0%、Ni:0.01〜5.0%の一種または二種を含有する請求項1に記載の疲労き裂進展抑制に優れる耐熱性鋼材。
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