以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は無段変速機のスケルトン図を、図2は第1実施の形態に係る無段変速機の制御装置の油圧回路図を、図3(a),(b)は図2のプライマリ圧調整弁の詳細構造および動作特性を説明する説明図を、図4(a),(b)は図2のセカンダリ圧調整弁の詳細構造および動作特性を説明する説明図を、図5はトランスミッション制御ユニットの内部構造を説明するブロック図を、図6は制御装置の動作を示すフローチャートをそれぞれ表している。
図1に示す無段変速機10は、自動車等の車両(図示せず)に搭載され、エンジン11に駆動されるプライマリ軸12と、プライマリ軸12と平行に設けられるセカンダリ軸13とを備えている。プライマリ軸12とセカンダリ軸13との間には変速機構14が設けられ、プライマリ軸12の回転は変速機構14を介してセカンダリ軸13に伝達され、セカンダリ軸13の回転は減速機構15およびディファレンシャル機構16を介して左右の駆動輪17に伝達される。
プライマリ軸12にはプライマリプーリ20が設けられている。プライマリプーリ20は、プライマリ軸12に一体回転可能に設けられた固定シーブ20aと、固定シーブ20aと対向してプライマリ軸12に対して軸方向に摺動する可動シーブ20bとを備えている。セカンダリ軸13にはセカンダリプーリ21が設けられている。セカンダリプーリ21は、セカンダリ軸13に一体回転可能に設けられた固定シーブ21aと、固定シーブ21aと対向してセカンダリ軸13に対して軸方向に摺動する可動シーブ21bとを備えている。
プライマリプーリ20およびセカンダリプーリ21には、駆動ベルト(動力伝達要素)22が巻き付けられている。そして、各固定シーブ20a,21aに対して各可動シーブ20b,21bをそれぞれ近接または離間させることにより、プライマリプーリ20およびセカンダリプーリ21の溝幅を変化させ、駆動ベルト22の巻き付け径を無段階で変化(変速比を無段階で変化)できるようにしている。ここで、駆動ベルト22のプライマリプーリ20に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ21に対する巻き付け径をRsとすると、変速機構14の変速比はRs/Rpとなる。
プライマリプーリ20は、プライマリ軸12に固定されるプランジャ23と、可動シーブ20bに固定されるシリンダ24とを備えている。プランジャ23の外周面にはシリンダ24の内周面が摺接し、プランジャ23およびシリンダ24は、作動油が出入りするプライマリ室25を画成している。プライマリ室25の内側でかつ可動シーブ20bの内側には、受圧面積がS1に設定された第1受圧部25aが形成されている。第1受圧部25aは、プライマリ室25内の作動油の圧力(プライマリ圧Pp)を受けて可動シーブ20bを固定シーブ20aに対して移動させ、これによりプライマリプーリ20の溝幅が制御される。
セカンダリプーリ21は、セカンダリ軸13に固定されるプランジャ26と、可動シーブ21bに固定されるシリンダ27とを備えている。プランジャ26の外周面にはシリンダ27の内周面が摺接し、プランジャ26およびシリンダ27は、作動油が出入りするセカンダリ室28を画成している。セカンダリ室28の内側でかつ可動シーブ21bの内側には、第1受圧部25aの受圧面積S1よりも小さい受圧面積S2に設定された第2受圧部28aが形成されている(S2<S1)。第2受圧部28aは、セカンダリ室28内の作動油の圧力(セカンダリ圧Ps)を受けて可動シーブ21bを固定シーブ21aに対して移動させ、これによりセカンダリプーリ21の溝幅が制御される。
エンジン11のクランク軸11aとプライマリ軸12との間には、トルクコンバータ30および前後進切換機構31が設けられている。トルクコンバータ30は、クランク軸11aに連結されるポンプインペラ30aと、ポンプインペラ30aと対向するタービンランナ30bとを備え、タービンランナ30bにはタービン軸32が連結されている。トルクコンバータ30内には、車両の走行状態に応じてクランク軸11aとタービン軸32とを締結するロックアップクラッチ33が設けられている。
前後進切換機構31は、ダブルピニオン式の遊星歯車列34,前進用クラッチ35および後退用ブレーキ36を備え、前進用クラッチ35や後退用ブレーキ36を作動させてエンジン11の動力の伝達経路を切り換えるようにしている。前進用クラッチ35および後退用ブレーキ36の双方を開放すると、タービン軸32とプライマリ軸12とが切り離されて、前後進切換機構31はプライマリ軸12に動力を伝達しないニュートラル状態に切り換えられる。また、後退用ブレーキ36を開放して前進用クラッチ35を締結すると、タービン軸32の回転がそのままプライマリプーリ20に伝達され、前進用クラッチ35を開放して後退用ブレーキ36を締結すると、逆転されたタービン軸32の回転がプライマリプーリ20に伝達される。
図2に示すように無段変速機10の変速比制御を行う制御装置40は、プライマリプーリ20およびセカンダリプーリ21を形成するプライマリ室25およびセカンダリ室28に対して、作動油の給排を行う油圧回路を形成している。
制御装置40の図中左側には、エンジン11(図1参照)により駆動されるオイルポンプ(作動油供給源)41が設けられている。オイルポンプ41は、制御装置40の図中右側に設けられたプライマリプーリ20およびセカンダリプーリ21に向けて作動油を吐出するようになっている。
オイルポンプ41の吸入側には作動油を貯留するオイルパン42が設けられ、オイルパン42に貯留された作動油は、ストレーナ(濾過器)43を介してオイルポンプ41の吸込口(図示せず)から吸い込まれる。オイルポンプ41の吐出側にはライン管路44の一端側が接続され、ライン管路44の他端側はその他の回路(図示しない油圧作動機器等)に接続されている。ライン管路44の途中には循環管路45の他端側が接続され、循環管路45の一端側はオイルポンプ41の吸入側に接続されている。
循環管路45にはライン圧調整弁50が設けられている。ライン圧調整弁50は、可変絞り機能を有する2ポート弁により形成され、駆動電流の大きさに比例して駆動される第1ソレノイド(電磁駆動部)51を備えている。ライン圧調整弁50は、開状態となる位置(a)および閉状態となる位置(b)に制御され、さらに位置(a)と位置(b)との間で連続的に開閉制御可能となっている。
ライン圧調整弁50は、第1ソレノイド51への指示信号がゼロ(駆動電流ゼロ)のときに位置(b)とするスプリング52を備え、指示信号がゼロのときに循環管路45は閉じた状態となる。また、ライン圧調整弁50はパイロット管路53を備え、ライン圧調整弁50は、第1ソレノイド51への指示信号の有無に関わらずライン管路44の圧力(ライン圧PL)が所定値以上のときに、当該圧力を循環管路45に開放するようになっている。つまりライン圧調整弁50はリリーフ弁としての機能を備えている。
第1ソレノイド51は、トランスミッション制御ユニット80に電気的に接続され、トランスミッション制御ユニット80からの指示信号により所定のロジックで制御される。これによりライン圧調整弁50は、オイルポンプ41から吐出されたライン管路44の作動油の一部をオイルパン42に戻し、オイルポンプ41の吐出圧を調圧して制御装置40の基準圧となるライン圧PLを生成するようになっている。なお、ライン圧PLは、ライン圧調整弁50のリリーフ機能により最大ライン圧PLmaxが上限値となっている。
ライン管路44にはプライマリ管路46の一端側が接続され、プライマリ管路46の他端側はプライマリプーリ20のプライマリ室25に接続されている。プライマリ管路46は、ライン管路44および循環管路45を介してライン圧調整弁50とプライマリ室25との間に設けられ、プライマリ管路46には、ライン圧調整弁50により調圧されたライン圧PLの作動油が流通可能となっている。
プライマリ管路46にはプライマリ圧調整弁(減圧弁)60が設けられている。プライマリ圧調整弁60は、可変絞り機能を有する3ポート弁により形成され、駆動電流の大きさに比例して駆動される第2ソレノイド(電磁駆動部)61を備えている。つまりプライマリ圧調整弁60は電子制御式となっている。プライマリ圧調整弁60は、供給状態となる位置(a)および排出状態となる位置(b)に制御され、さらに位置(a)と位置(b)との間で連続的に開閉制御可能となっている。
プライマリ圧調整弁60は、図3(a)に示すようにケーシング62と、ケーシング62内をスライドするスプール63とを備えている。ケーシング62には、供給ポート62a,給排ポート62b,排出ポート62cおよびパイロットポート62dが形成されている。供給ポート62aにはプライマリ管路46の上流側が接続され、ライン圧PLの作動油が流通するようになっている。給排ポート62bにはプライマリ管路46の下流側が接続され、プライマリ圧Ppの作動油が流通するようになっている。排出ポート62cにはオイルパン42に向かう排出管路47の一端側が接続され、プライマリ室25からの作動油が流通するようになっている。
パイロットポート62dとプライマリ管路46の下流側との間には、パイロット管路64(図中破線)が設けられ、パイロット管路64は、プライマリ管路46の作動油の一部(プライマリ圧Ppの一部)を、ケーシング62内のパイロット室62eに導くようになっている。
スプール63は、略円筒形状に形成された第1ランド63aおよび第2ランド63bを備え、第1ランド63aおよび第2ランド63bはスプール本体63cを介して一体となっている。第1ランド63aは、供給ポート62aおよび給排ポート62bを連通状態または遮断状態とし、第2ランド63bは、給排ポート62bおよび排出ポート62cを連通状態または遮断状態とする。
第1ランド63aはパイロット室62e側に配置され、第1ランド63aの受圧面積、つまりスプール本体63cの断面積を除した環状部分の面積は、A1に設定されている。これによりスプール63には、図中右側に向けて、式(1)に基づくパイロット力Fp1が作用するようになっている。
Fp1=Pp・A1 (1)
第2ランド63b側には、スプール本体63cを図中左側に向けて所定圧で押圧するスプリング65が設けられている。スプリング65のスプリング力Fsp1は、プライマリ圧Ppが最大プライマリ圧Ppmaxを呈するときの最大パイロット力Fp1maxよりも大きくなるよう設定されている(Fsp1>Fp1max)。
第2ランド63b側には、第2ソレノイド61(図2参照)が設けられ、第2ソレノイド61は、スプール本体63cを図中右側に引っ張るプル型ソレノイドとなっている。第2ソレノイド61は、図2に示すようにトランスミッション制御ユニット80に電気的に接続され、トランスミッション制御ユニット80からの指示信号により所定のロジックで制御される。第2ソレノイド61のソレノイド力をFsol1とすると、プライマリ圧調整弁60は、式(2)の左辺および右辺の大小バランスにより駆動される。
Fp1=Fsp1−Fsol1 (2)
例えば、トランスミッション制御ユニット80からの指示信号によりソレノイド力Fsol1を大きくなるよう制御することで、スプール63は図中右側へ移動する。つまり第1ランド63aは供給ポート62aおよび給排ポート62bを遮断する方向に移動し、第2ランド63bは給排ポート62bおよび排出ポート62cを連通する方向に移動する。これによりプライマリ圧Ppを小さくできる。このとき、ソレノイド力Fsol1の作用する方向およびパイロット力Fp1の作用する方向は同一の方向(図中右側)であるため、第2ソレノイド61への駆動電流の大きさは小さくて済み、ひいては省電力化を実現できる。
第2ソレノイド61を制御しているときにプライマリ圧Ppが所定値以上になると、パイロット力Fp1が大きくなってスプール63が図中右側へ移動する。これにより、第1ランド63aは供給ポート62aおよび給排ポート62bを遮断し、第2ランド63bは給排ポート62bおよび排出ポート62cを連通させ、プライマリ圧Ppを減圧させることができる。このように、プライマリ圧調整弁60は、プライマリ管路46の下流側の圧力(プライマリ圧Pp)が所定値以上のときに減圧し、第2ソレノイド61への指示信号の大きさに比例した所定のプライマリ圧Ppを生成するようになっている。
プライマリ圧調整弁60は、図3(b)に示す特性を備えている。例えば、第1ソレノイド51(図2参照)への指示信号がゼロで、かつ第2ソレノイド61への指示信号もゼロのときは、ライン圧PLは最大ライン圧PLmaxとなり、オイルポンプ41の吐出圧とライン圧PLとが等しくなる。このときのプライマリ圧Ppは、最大プライマリ圧Ppmaxとなる。
トランスミッション制御ユニット80により第2ソレノイド61への指示信号を大きくしていくと、駆動電流の増加に比例してプライマリ圧調整弁60の減圧値が変化してプライマリ圧Ppは減少していく。ここで、第2ソレノイド61への指示信号が図3(b)「I」の状態で第1ソレノイド51への指示信号を制御することにより、図3(b)の網掛け部分、つまり最大プライマリ圧Ppmaxと必要プライマリ圧Ppとの間でプライマリ圧Ppを調整することができる。このように、必要プライマリ圧Ppはライン圧PLを超えて調圧されることが無く、その分、オイルポンプ41の動力損失を抑制することができる。
プライマリ圧調整弁60は、指示信号がゼロのときに最大プライマリ圧Ppmaxとして、プライマリ室25内の圧力を高めて可動シーブ20bを固定シーブ20aに近接移動させる。これによりプライマリプーリ20に対する駆動ベルト22の巻き付け径Rpが大径化して変速比がOD側となり、例えば、車両が高速で巡航中の場合において省電力化を実現できる。また、車両の走行中において第2ソレノイド61が断線する等、電源を失うタイプのフェイルが発生したとしても急激なダウンシフトの発生を防止することができる。
図2に示すように、ライン管路44にはセカンダリ管路48の一端側が接続され、セカンダリ管路48の他端側はセカンダリプーリ21のセカンダリ室28に接続されている。セカンダリ管路48は、ライン管路44および循環管路45を介してライン圧調整弁50とセカンダリ室28との間に設けられ、セカンダリ管路48には、ライン圧調整弁50により調圧されたライン圧PLの作動油が流通可能となっている。
セカンダリ管路48にはセカンダリ圧調整弁(差圧制御弁)70が設けられている。セカンダリ圧調整弁70は、可変絞り機能を有する3ポート弁により形成され、駆動電流の大きさに比例して駆動される第3ソレノイド(電磁駆動部)71を備えている。つまりセカンダリ圧調整弁70は電子制御式となっている。セカンダリ圧調整弁70は、排出状態となる位置(a)および供給状態となる位置(b)に制御され、さらに位置(a)と位置(b)との間で連続的に開閉制御可能となっている。
セカンダリ圧調整弁70は、図4(a)に示すようにケーシング72と、ケーシング72内をスライドするスプール73とを備えている。ケーシング72には、供給ポート72a,給排ポート72b,排出ポート72c,第1パイロットポート72dおよび第2パイロットポート72eが形成されている。供給ポート72aにはセカンダリ管路48の上流側が接続され、ライン圧PLの作動油が流通するようになっている。給排ポート72bにはセカンダリ管路48の下流側が接続され、セカンダリ圧Psの作動油が流通するようになっている。排出ポート72cにはオイルパン42に向かう排出管路49の一端側が接続され、セカンダリ室28からの作動油が流通するようになっている。
第1パイロットポート72dとセカンダリ管路48の上流側との間には、第1パイロット管路74が設けられ、第1パイロット管路74は、セカンダリ管路48の作動油の一部(ライン圧PLの一部)を、ケーシング72内の第1パイロット室72fに導くようになっている。また、第2パイロットポート72eとセカンダリ管路48の下流側との間には、第2パイロット管路75が設けられ、第2パイロット管路75は、セカンダリ管路48の作動油の一部(セカンダリ圧Psの一部)を、ケーシング72内の第2パイロット室72gに導くようになっている。
スプール73は、略円筒形状に形成された第1ランド73aおよび第2ランド73bを備え、第1ランド73aおよび第2ランド73bはスプール本体73cを介して一体となっている。第1ランド73aは、給排ポート72bおよび排出ポート72cを連通状態または遮断状態とし、第2ランド73bは、供給ポート72aおよび給排ポート72bを連通状態または遮断状態とする。
第1ランド73aは第1パイロット室72f側に配置され、第1ランド73aの受圧面積、つまりスプール本体73cの断面積を除した環状部分の面積は、A2に設定されている。これによりスプール73には、図中右側に向けて、式(3)に基づくパイロット力Fp2が作用するようになっている。
Fp2=PL・A2 (3)
第1ランド73a側には、スプール本体73cを図中右側に向けて所定圧で押圧するスプリング76が設けられ、スプリング76のスプリング力はFsp2に設定されている。これによりスプール73には、図中右側に向けて、式(4)に示すようにパイロット力Fp2にスプリング76のスプリング力Fsp2を加えた押圧力Frが作用するようになっている。
Fr=Fp2+Fsp2 (4)
第2ランド73bは第2パイロット室72g側に配置され、第2ランド73bの受圧面積は第1ランド73aと同様にA2に設定されている。これによりスプール73には、図中左側に向けて、式(5)に基づくパイロット力Fp3が作用するようになっている。
Fp3=Ps・A2 (5)
第2ランド73b側には、第3ソレノイド71(図2参照)が設けられ、第3ソレノイド71は、スプール本体73cを図中左側に向けて押圧するようになっている。第3ソレノイド71は、図2に示すようにトランスミッション制御ユニット80に電気的に接続され、トランスミッション制御ユニット80により所定のロジックで制御される。第3ソレノイド71のソレノイド力をFsol2とすると、スプール73には、図中左側に向けて、式(6)に示すようにパイロット力Fp3にソレノイド力Fsol2を加えた押圧力Flが作用するようになっている。
Fl=Fp3+Fsol2 (6)
このように、セカンダリ圧調整弁70は、式(5)および式(6)に基づいて、式(7)の左辺および右辺の大小バランスにより駆動される。
Fp2+Fsp2=Fp3+Fsol2 (7)
ここで、セカンダリ圧調整弁70の上流側および下流側の差圧値ΔPを、ライン圧PL−セカンダリ圧Psとして整理すると、式(8)が得られる。つまりセカンダリ圧調整弁70は、セカンダリ管路48の上流側の圧力(ライン圧PL)と下流側の圧力(セカンダリ圧Ps)との差圧値ΔPにより制御され、これにより所定のセカンダリ圧Psを生成するようになっている。
ΔP=(Fsol2/A2)−(Fsp2/A2) (8)
したがって、第3ソレノイド71への指示信号がゼロの場合には、第3ソレノイド71のソレノイド力Fsol2がゼロとなるため、図4(b)の特性に示すように、スプール73がバランスする差圧値ΔPは負となる。このとき、スプール73はスプリング76のスプリング力Fsp2により、ライン圧PLとセカンダリ圧Psとが等しくなるよう駆動、つまりスプール73の第2ランド73bが供給ポート72aおよび給排ポート72bを連通状態とする。これにより、ライン圧調整弁50によるセカンダリ圧Psの制御が許容されるとともに、第3ソレノイド71が断線する等、電源を失うタイプのフェイルが発生したとしてもセカンダリ圧Psを確保でき、駆動ベルト22のスリップ等を防止することができる。
トランスミッション制御ユニット80により第3ソレノイド71への指示信号を大きくしていくと、駆動電流の増加に比例してセカンダリ圧調整弁70の差圧値ΔPが変化してセカンダリ圧Psは減少していく。このように、必要セカンダリ圧Psはライン圧PLを超えて調圧されることが無く、その分、オイルポンプ41の動力損失を抑制することができる。
図2に示すように制御装置40は、車室内のグローブボックス等(図示せず)に設置されるトランスミッション制御ユニット(コントローラ)80を備えている。トランスミッション制御ユニット80は、ライン圧調整弁50の第1ソレノイド51,プライマリ圧調整弁60の第2ソレノイド61,セカンダリ圧調整弁70の第3ソレノイド71を、それぞれ所定のロジックに基づき制御するようになっている。
図5においてトランスミッション制御ユニット80には、図示しないインターフェイスを介してエンジン制御ユニット81,スロットル開度センサ82,プライマリ回転数センサ83およびセカンダリ回転数センサ84がそれぞれ電気的に接続されている。トランスミッション制御ユニット80は、エンジン制御ユニット81,スロットル開度センサ82,プライマリ回転数センサ83およびセカンダリ回転数センサ84からの車両状態信号に基づいて、予め格納された制御マップ(図示せず)を参照して目標変速比を設定し、当該目標変速比が得られる目標プライマリ圧Ppおよび目標セカンダリ圧Psをそれぞれ算出するようになっている。
ここで、エンジン制御ユニット81,スロットル開度センサ82,プライマリ回転数センサ83およびセカンダリ回転数センサ84は、本発明における車両状態検出手段を構成している。なお、車両状態検出手段としてはこれらに限らず、車速センサ(図示せず)等の車両状態信号を出力し得るセンサも含まれる。
図5に示すようにトランスミッション制御ユニット80は、目標プーリ比演算部80a,プーリ比演算部80b,トルク比演算部80c,目標プライマリ圧演算部80d,目標セカンダリ圧演算部80eおよび制御信号発生部80fを備えている。
目標プーリ比演算部80aには、アクセルペダルの操作等に基づくスロットル開度センサ82からの検出信号と、駆動輪17(図1参照)側の回転に基づくセカンダリ回転数センサ84からの検出信号とが入力される。目標プーリ比演算部80aは、これらの検出信号に基づき目標プーリ比(目標変速比)を算出する。
プーリ比演算部80bには、セカンダリ回転数センサ84からの検出信号と、エンジン11(図1参照)側の回転に基づくプライマリ回転数センサ83からの検出信号とが入力される。プーリ比演算部80bは、これらの検出信号に基づき現在のプーリ比(現在プーリ比)を算出する。
トルク比演算部80cには、プライマリ回転数センサ83からの検出信号と、エンジン制御ユニット81に設けられたエンジン回転数センサ81aからの検出信号とが入力される。トルク比演算部80cは、これらの検出信号に基づきトルクコンバータ30や前後進切換機構31(図1参照)によるトルク変化の状態を算出する。
目標プライマリ圧演算部80dには、目標プーリ比演算部80aの算出結果(目標プーリ比)と、エンジン制御ユニット81に設けられたエンジントルクセンサ81bからの検出信号とが入力される。目標プライマリ圧演算部80dは、これらの入力に基づき目標プライマリ圧Ppを算出する。目標セカンダリ圧演算部80eには、プーリ比演算部80bの算出結果(現在プーリ比)と、トルク比演算部80cの算出結果(トルク変化状態)と、エンジントルクセンサ81bからの検出信号とが入力される。目標セカンダリ圧演算部80eは、これらの入力に基づき目標セカンダリ圧Psを算出する。なお、エンジントルクセンサ81bの信号は、それぞれのセンサ類により算出される推定信号に置き換えることも可能である。
制御信号発生部80fには、目標プライマリ圧演算部80dの算出結果(目標プライマリ圧Pp)と、目標セカンダリ圧演算部80eの算出結果(目標セカンダリ圧Ps)とが入力される。制御信号発生部80fは、各目標圧力Pp,Psに基づき、第1ソレノイド51,第2ソレノイド61および第3ソレノイド71に対して最適となる指示信号をそれぞれ設定する。なお、各ソレノイド51,61,71は、それぞれ所定のデューティ比で制御される。
以下、制御信号発生部80fの動作について図6を用いて詳細に説明する。ステップS1では、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン操作等をトリガとして制御信号発生部80fの処理がスタートする。ステップS2では、制御信号発生部80fが目標プライマリ圧Ppと目標セカンダリ圧Psとを読み込む。
ステップS3では、ステップS2で読み込んだ目標プライマリ圧Ppと目標セカンダリ圧Psのうちの高い方の圧力(MAX(Pp,Ps))をライン圧PLとし、当該ライン圧PLが得られるようライン圧調整弁50の第1ソレノイド51に指示信号を送出する。これにより第1ソレノイド51が制御され、ライン管路44の圧力が目標プライマリ圧Ppまたは目標セカンダリ圧Psのうちの高い方の圧力となる。
ステップS4では、目標プライマリ圧Ppの大きさが目標セカンダリ圧Psの大きさ以上か否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS5に進み、noと判定した場合にはステップS6に進む。
ここで、目標プライマリ圧Ppの大きさが目標セカンダリ圧Psの大きさ以上である場合(yes判定)とは、変速比を小さくする(OD側にする)場合のことである。具体的には、図2の矢印Mpに示すように可動シーブ20bを固定シーブ20aに近接させ、駆動ベルト22のプライマリプーリ20に対する巻き付け径Rpを大きくし、図2の矢印Msに示すように可動シーブ21bを固定シーブ21aから離間させ、駆動ベルト22のセカンダリプーリ21に対する巻き付け径Rsを小さくする場合のことである。また、目標プライマリ圧Ppの大きさが目標セカンダリ圧Psの大きさ未満である場合(no判定)とは、変速比を大きくする(Low側にする)場合のことである。具体的には、上記とは逆に、駆動ベルト22のプライマリプーリ20に対する巻き付け径Rpを小さくし、駆動ベルト22のセカンダリプーリ21に対する巻き付け径Rsを大きくする場合のことである。
ステップS5では、ライン圧PLを目標プライマリ圧Ppとした状態のもとで、変速比Rs/Rpを小さくするために、第2ソレノイド61には指示信号を送出しない(駆動電流ゼロ)。一方、第3ソレノイド71には指示信号を送出し、差圧値ΔPが目標プライマリ圧Pp(=ライン圧PL)−目標セカンダリ圧Psとなるようにする。これにより、変速比Rs/Rpが小さくなり車両は高速巡航可能となる。続くステップS7では、リターン処理が実行されて再度ステップS2以降の処理が実行される。なお、制御信号発生部80fの処理は、イグニッションスイッチのオフ操作等をトリガとして停止される。
ステップS6では、ライン圧PLを目標セカンダリ圧Psとした状態のもとで、変速比Rs/Rpを大きくするために、第3ソレノイド71には指示信号を送出しない(駆動電流ゼロ)。一方、第2ソレノイド61には指示信号を送出し、目標プライマリ圧Ppとなるようにする。これにより、変速比Rs/Rpが大きくなり車両は停車状態から加速可能(低車速から再加速可能)となる。その後、ステップS7に進んでリターン処理が実行される。
次に、制御装置40の動作について具体的な数値データを用いて説明する。図7(a),(b),(c),(d)は変速機構の数値特性,プライマリ圧Ppおよびセカンダリ圧Psの計算例,ライン圧PLと各圧力Pp,Psとの差圧値の計算例,各圧力Pp,Psの制御範囲の比較結果を表している。
図7(a)は、検討に用いた変速機構14(図1参照)の数値特性であり、プライマリプーリ20の受圧面積S1をセカンダリプーリ21の受圧面積S2よりも大きく設定している。これは、走行頻度の高いオーバードライブ走行(OD走行)において、ライン圧PLを低く設定するためである。つまりプライマリプーリ20の受圧面積S1を大きくすることで、低いライン圧PLであってもプライマリプーリ20の可動シーブ20bを移動または固定できるようにしている。なお、図7(a)のCFsはセカンダリクランプ力、つまりセカンダリプーリ21による駆動ベルト22の挟持力を、CFpはプライマリクランプ力、つまりプライマリプーリ20による駆動ベルト22の挟持力をそれぞれ示している。
図7(b)は、変速機構14に入力される種々の大きさの伝達トルクと、そのときの変速比(プーリ比)について、必要となるプライマリ圧Ppおよびセカンダリ圧Ps(必要プライマリ圧Ppおよび必要セカンダリ圧Ps)を計算した例である。ここで、伝達トルクがマイナスとなる場合(図中右側)があるが、これは、エンジンブレーキ等により逆のトルクが負荷される場合であり、所謂コーストトルクが負荷される場合を示している。
例えば、伝達トルクが「1」で変速比が「LOW側」である場合は、図7(a)を参照し、(イ)セカンダリクランプ力CFs=2,(ロ)必要セカンダリ圧Ps=2(CFs)/1(S2)=2.0,(ハ)プライマリクランプ力CFp=2(CFs)・0.5(CFp/CFs)=1,(ニ)必要プライマリ圧Pp=1(CFp)/2(S1)=0.5のように計算される。
図7(b)において、伝達トルクが「5」で変速比が「LOW側」である場合とは、シフトレバー(図示せず)がドライブ位置にある状態で車両が停車中等の場合であり、所謂トルコンストール状態の場合である。このようなトルコンストールも考慮、つまりトルクコンバータ30(図1参照)の動作も考慮すると、プライマリ圧Ppの制御範囲は最低値0.5〜最大値3.3,セカンダリ圧Psの制御範囲は最小値1.0〜最大値10.0となり、セカンダリ圧Psの制御範囲の方が圧力差「9.0」となって広くなる。
図7(c)は、図7(b)に基づいて、必要プライマリ圧Ppおよび必要セカンダリ圧Psのうち、高い側の圧力(図7(b)の網掛部分)をライン圧PLとし、この状態のもとで必要圧が低い側の圧力を生成するのにどれくらいの差圧値(ΔP)とすれば良いかを計算したものである。なお、図7(c)の網掛部分は、ライン圧PL(上流側)がプライマリ圧Ppまたはセカンダリ圧Ps(下流側)と等しい状態(差圧値ゼロ)を表している。
図7(c)によると、プライマリプーリ20側の差圧値の制御範囲は最小値0〜最大値7.5となり、セカンダリプーリ21側の差圧値の制御範囲は最小値0〜最大値0.3となる。したがって、プライマリプーリ20側の制御範囲の方が、差圧値「7.5」となって広くなる。
図7(d)は、図7(b)および図7(c)の検討結果を制御範囲の観点から纏めたものである。上段(絶対圧)は、背景技術で挙げた特許文献2(一対の減圧弁を備えたもの)による制御範囲を示し、下段(差圧値)は、背景技術で挙げた特許文献1(一対の差圧制御弁を備えたもの)による制御範囲を示している。図7(d)の網掛部分に示すように、プライマリ圧Ppの制御範囲については減圧弁を用いることで制御範囲を「2.8」に抑えられ、セカンダリ圧Psの制御範囲については差圧制御弁を用いることで制御範囲を「0.3」に抑えられることが判った。
以上詳述したように、第1実施の形態に係る制御装置40によれば、オイルポンプ41の吐出圧を調圧してライン圧PLを生成するライン圧調整弁50と、プライマリ管路46の下流側の圧力が所定値以上のときに減圧してプライマリ圧Ppを生成するプライマリ圧調整弁60と、セカンダリ管路48の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧により制御されてセカンダリ圧Psを生成するセカンダリ圧調整弁70と、ライン圧調整弁50の開度,プライマリ圧調整弁60の減圧値およびセカンダリ圧調整弁70の差圧値を制御するトランスミッション制御ユニット80とを備え、トランスミッション制御ユニット80は、車両状態信号に基づいて目標プライマリ圧Ppおよび目標セカンダリ圧Psを設定し、当該各目標圧力Pp,Psのうちの何れか高い方の圧力をライン圧PLとするようライン圧調整弁50を制御する。
したがって、各目標圧力Pp,Psのうちの高い方の圧力以上にライン圧PLを設定する必要が無く、オイルポンプ41の動力損失を抑制して車両の燃費向上を図ることができる。また、プライマリ圧調整弁60とセカンダリ圧調整弁70とを組み合わせることで、一対の減圧弁および一対の差圧制御弁を用いるもの(特許文献2および特許文献1の技術)に比して制御範囲を狭くすることができ、ひいては指示信号の範囲を狭くして安価なトランスミッション制御ユニットを用いることができる。
また、第1実施の形態に係る制御装置40によれば、トランスミッション制御ユニット80は、各目標圧力Pp,Psのうちの何れか高い方の圧力を生成するプライマリ圧調整弁60またはセカンダリ圧調整弁70への指示信号をゼロ(駆動電流ゼロ)とするので、制御装置40の消費電力を抑制することができる。
さらに、第1実施の形態に係る制御装置40によれば、プライマリ圧調整弁60は第2ソレノイド61を有する電子制御式減圧弁であり、トランスミッション制御ユニット80は、第2ソレノイド61に駆動電流を供給して減圧値を制御するので、応答性を向上させて充分な制御精度を確保することができる。
また、第1実施の形態に係る制御装置40によれば、セカンダリ圧調整弁70は第3ソレノイド71を有する電子制御式差圧制御弁であり、トランスミッション制御ユニット80は、第3ソレノイド71に駆動電流を供給して差圧値を制御するので、応答性を向上させて充分な制御精度を確保することができる。
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図8(a),(b)は第2実施の形態に係る無段変速機の制御装置における制御圧発生回路図および制御圧調整弁の特性図を、図9はスイッチ弁,ライン圧調整弁およびプライマリ圧調整弁を示す油圧回路図を、図10(a),(b)はスイッチ弁の詳細構造を説明する説明図を、図11(a),(b)はライン圧調整弁の特性図およびプライマリ圧調整弁の特性図を、図12はセカンダリ圧調整弁の詳細構造を説明する説明図を、図13はトランスミッション制御ユニットの内部構造を説明するブロック図をそれぞれ表している。
第2実施の形態に係る無段変速機の制御装置90は、第1実施の形態に係る無段変速機の制御装置40に比して、ライン圧調整弁100,プライマリ圧調整弁110およびセカンダリ圧調整弁120をそれぞれ所定の油圧(制御圧)で制御するようにした点が異なっている。つまり第1実施の形態では各ソレノイド51,61,71(図2参照)への駆動電流を指示信号としていたが、第2実施の形態ではライン圧調整弁100,プライマリ圧調整弁110およびセカンダリ圧調整弁120への制御圧を指示信号としている。
図8(a)に示すように制御装置90は、ライン圧PLに基づいて第1制御圧(指示信号)CP1および第2制御圧(指示信号)CP2を生成する制御圧発生回路91を備えている。
制御圧発生回路91には、ライン圧PLを一定の低い圧力に調圧してこれをパイロット圧PPとするパイロット圧調整弁92が設けられている。パイロット圧調整弁92は、可変絞り機能を有する3ポート弁により形成され、パイロット管路92aからの圧力(パイロット圧PP)の大きさに応じて開閉制御される。パイロット圧調整弁92は、供給状態となる位置(a)と排出状態となる位置(b)とを有し、スプリング92bのスプリング力により位置(a)とされ、パイロット圧PPがスプリング92bのスプリング力を超えたときに位置(b)とされる。したがって、パイロット圧調整弁92はリリーフ弁としての機能を備え、ライン圧PLの大きさに関わらずパイロット圧PPを所定の一定値に保持できる。
パイロット圧調整弁92の下流側には、他端側が3系統に分岐(図9参照)された第1制御圧管路93の一端側が接続されている。分岐した第1制御圧管路93の他端側には、第1制御圧調整弁94および第2制御圧調整弁95がそれぞれ設けられている。各制御圧調整弁94,95は、いずれも電子制御式の3ポート弁により形成され、第4ソレノイド94a,第5ソレノイド95aを備えている。各ソレノイド94a,95aは、それぞれトランスミッション制御ユニット140に電気的に接続されている。
各制御圧調整弁94,95は、それぞれ供給状態となる位置(a)と排出状態となる位置(b)とを有し、各スプリング94b,95bのスプリング力により位置(a)とされ、各ソレノイド94a,95aのソレノイド力により位置(b)とされる。各ソレノイド94a,95aは、トランスミッション制御ユニット140により所定のロジックで制御され、これにより各制御圧調整弁94,95は、それぞれパイロット圧PPを調圧して、第1制御圧CP1および第2制御圧CP2を生成するようになっている。なお、各制御圧調整弁94,95においても、位置(a)と位置(b)との間で連続的に開閉制御可能となっている。
第1制御圧調整弁94および第2制御圧調整弁95はいずれもデューティ制御され、図8(b)に示すような特性を有している。つまり第4ソレノイド94aおよび第5ソレノイド95aを、デューティ比を大きくするよう駆動することで、第1制御圧CP1および第2制御圧CP2を徐々に小さくすることができる。なお、デューティ比がゼロ、つまり駆動電流がゼロの場合には、各制御圧調整弁94,95は各スプリング94b,95bにより位置(a)とされ、各制御圧CP1,CP2はパイロット圧PPと等しくなる(CP1,CP2=PP)。
図9に示す油圧回路は、3系統に分岐された第1制御圧管路93を介して制御圧発生回路91(図8参照)に接続される。この油圧回路は、第1制御圧CP1および第2制御圧CP2の大きさのバランスにより駆動され、可変絞り機能を有するパイロット制御式のスイッチ弁130を備えている。スイッチ弁130は、第1制御圧CP1および第2制御圧CP2の大小バランスにより位置(a)または位置(b)に制御され、さらに位置(a)と位置(b)との間で連続的に開閉制御可能となっている。
スイッチ弁130は、図10に示すようにケーシング131と、ケーシング131内をスライドするスプール132とを備えている。ケーシング131の上流側(図中下側)には、パイロット圧導入ポート131a,第1制御圧導入ポート131b,排出ポート131cおよび第2制御圧導入ポート131dが形成されている。ケーシング131の下流側(図中上側)には、第1給排ポート131e,第2給排ポート131fおよび第3給排ポート131gが形成されている。ケーシング131の長手方向両側(図中左右側)には、それぞれ第1制御圧CP1が流通する第1パイロット管路133,第2制御圧CP2が流通する第2パイロット管路134が接続されている。
スプール132は、第1ランド132a,第2ランド132b,第3ランド132c,第4ランド132d,第5ランド132eおよび第6ランド132fを備えている。各ランド132a〜132fは、それぞれスプール本体132gを介して一体となっている。
図10(a)に示すように、第2ランド132bは、パイロット圧導入ポート131aと第1給排ポート131eとを遮断状態としたときに、第1制御圧導入ポート131bと第1給排ポート131eとを連通状態とする。第3ランド132cは、第1制御圧導入ポート131bと第2給排ポート131fとを遮断状態としたときに、排出ポート131cと第2給排ポート131fとを連通状態とする。第4ランド132dは、排出ポート131cと第3給排ポート131gとを遮断状態としたときに、第2制御圧導入ポート131dと第3給排ポート131gとを連通状態とする。なお、各ランド132b〜132dは、図10(b)の状態においては、上記とは逆の遮断状態,連通状態とする。
第1ランド132aは、ケーシング131の図中左側に形成された第1パイロット室135に面しており、第1ランド132aの受圧面積はA3に設定されている。これによりスプール132には、図中右側に向けて、式(9)に基づくパイロット力Fp4が作用するようになっている。
Fp4=CP1・A3 (9)
第6ランド132fは、ケーシング131の図中右側に形成された第2パイロット室136に面しており、第6ランド132fの受圧面積は、第1ランド132aの受圧面積A3よりも大きな受圧面積A4に設定されている(A4>A3)。これによりスプール132には、図中左側に向けて、式(10)に基づくパイロット力Fp5が作用するようになっている。ここで、第2パイロット室136内に設けられたスプリング137のスプリング力は、スプール132のケーシング131内でのがたつきを抑える程度の極弱いスプリング力に設定されるため無視している。
Fp5=CP2・A4 (10)
このように、スイッチ弁130は、式(9)および式(10)に基づいて、各パイロット力Fp4,Fp5の大小バランスにより駆動される。
図9に示すように、スイッチ弁130の第2給排ポート131fとライン圧調整弁100との間には、第2制御圧管路96が設けられている。第2制御圧管路96には第1制御圧CP1の作動油が流通し、第1制御圧CP1はライン圧調整弁100を位置(b)の閉じた状態とする方向に作用する。
スイッチ弁130の第3給排ポート131gとライン圧調整弁100との間には、第3制御圧管路97が設けられている。第3制御圧管路97には第2制御圧CP2の作動油が流通し、第2制御圧CP2はライン圧調整弁100を位置(b)の閉じた状態とする方向に作用する。このように、ライン圧調整弁100には、スイッチ弁130のスイッチング(位置(a)または位置(b)への切り替え)により、第1制御圧CP1または第2制御圧CP2が選択的に作用するようになっている。
ライン圧調整弁100は、図11(a)に示す特性を有している。つまり第1制御圧調整弁94,第2制御圧調整弁95をそれぞれ制御し、スイッチ弁130を位置(b)(図10(b)参照)に制御すると、ライン圧調整弁100には第1制御圧CP1が作用し、ライン圧PLが目標プライマリ圧Ppに設定される。第1制御圧CP1を大きくなるよう調整していくと、ライン圧PLは最大プライマリ圧Ppmaxとなる。一方、スイッチ弁130を位置(a)(図10(a)参照)に制御すると、ライン圧調整弁100には第2制御圧CP2が作用し、ライン圧PLが目標セカンダリ圧Psに設定される。第2制御圧CP2を大きくなるよう調整していくと、ライン圧PLは最大セカンダリ圧Psmaxとなる。
図9に示すように、スイッチ弁130の第1給排ポート131eとプライマリ圧調整弁110との間には、第4制御圧管路98が設けられている。第4制御圧管路98には、スイッチ弁130のスイッチングにより、第1制御圧CP1またはパイロット圧PPの作動油が流通し、第1制御圧CP1またはパイロット圧PPは、プライマリ圧調整弁110を位置(a)の供給状態とする方向に作用する。
ここで、プライマリ圧調整弁(減圧弁)110は図11(b)に示す特性を有している。つまり第1制御圧調整弁94,第2制御圧調整弁95をそれぞれ制御し、スイッチ弁130を位置(a)に制御すると、ライン圧PLがセカンダリ圧Psに設定され、プライマリ圧調整弁110には第1制御圧CP1が作用する。第1制御圧CP1を大きくなるよう調整していくと、プライマリ圧Ppは最大プライマリ圧Ppmaxとなる。
このように、スイッチ弁130を位置(a)に制御することで、ライン圧PLが目標セカンダリ圧Psに設定され、プライマリ圧調整弁110が第1制御圧CP1により制御される。このとき、ライン圧PLはセカンダリ圧Psに設定されているので、プライマリ圧Ppはセカンダリ圧Ps以上に制御されない。一方、スイッチ弁130を位置(b)に制御することで、ライン圧PLが目標プライマリ圧Ppに設定され、プライマリ圧調整弁110にはパイロット圧PPが作用する。このとき、パイロット圧PPは第1制御圧CP1よりも高いので(PP>CP1)、プライマリ圧Ppはライン圧PLの状態で固定される。
セカンダリ圧調整弁(差圧制御弁)120は、図12に示すようにケーシング121と、ケーシング121内をスライドするスプール122とを備えている。ケーシング121の上流側(図中下側)には、第3制御圧管路97に接続される第2制御圧導入ポート121a,ライン管路44に接続されるライン圧導入ポート121b,排出ポート121cおよび第2制御圧管路96に接続される第1制御圧導入ポート121dが形成されている。
ケーシング121の下流側(図中上側)には、セカンダリ管路48に接続される給排ポート121eが形成されている。ケーシング121の長手方向一方側(図中右側)には、セカンダリ圧Psをスプール122に作用させるためのパイロット管路123が接続され、ケーシング121の長手方向他方側(図中左側)にはスプール122のがたつきを抑えるスプリング124が設けられている。スプリング124のスプリング力は、スプール122のケーシング121内でのがたつきを抑える程度の極弱いスプリング力に設定される。
スプール122は、第1ランド122a,第2ランド122b,第3ランド122cおよび第4ランド122dを備えている。各ランド122a〜122dは、それぞれスプール本体122eを介して一体となっている。
第1ランド122aの受圧面積はA5に設定され、これによりスプール122には、図中右側に向けて、式(11)に基づくパイロット力Fp6が作用するようになっている。
Fp6=CP2・A5 (11)
第2ランド122bの受圧面積はA6に設定され(A6>A5)、これによりスプール122には、図中右側に向けて、式(12)に基づくパイロット力Fp7が作用するようになっている。第2ランド122bは、ライン圧導入ポート121bおよび給排ポート121eを遮断状態としたときに、給排ポート121eおよび排出ポート121cを連通状態とする。
Fp7=PL・A6 (12)
第3ランド122cの受圧面積はA7に設定され、これによりスプール122には、図中左側に向けて、式(13)に基づくパイロット力Fp8が作用するようになっている。
Fp8=CP1・A7 (13)
第4ランド122dの受圧面積はA8に設定され(A8<A7)、これによりスプール122には、図中左側に向けて、式(14)に基づくパイロット力Fp9が作用するようになっている。
Fp9=Ps・A8 (14)
このように、セカンダリ圧調整弁120は、式(11)〜式(14)に基づいて、式(15)の左辺および右辺の大小バランスにより駆動される。
Fp6+Fp7=Fp8+Fp9 (15)
つまり第1制御圧調整弁94,第2制御圧調整弁95をそれぞれ制御し、スイッチ弁130を位置(a)に制御すると、ライン圧調整弁100には第2制御圧CP2が作用し、ライン圧PLが目標セカンダリ圧Psに設定される。すると、第3制御圧管路97およびライン管路44の増圧によりスプール122が図中右側に移動し、第2ランド122bは、ライン圧導入ポート121bおよび給排ポート121eを連通状態とする。これにより、セカンダリ圧Psはライン圧PLと等しくなって目標セカンダリ圧Psとなる。なお、第1制御圧CP1は、スイッチ弁130が位置(a)にあることからゼロ(図9参照)となる。
一方、スイッチ弁130を位置(b)に制御すると、第2制御圧CP2はゼロ(図9参照)となり第2制御圧管路96が増圧され、第3ランド122cに第1制御圧CP1が作用するようになる。これにより、第1制御圧CP1を制御することにより、セカンダリ圧Psが制御される。このとき、ライン圧PLはプライマリ圧Ppに設定されているので、セカンダリ圧Psはプライマリ圧Pp以上に制御されない。
以上詳述したように、第2実施の形態に係る無段変速機の制御装置90においても、上述した第1実施の形態と同様の動作を行うことができる。これに加え、第2実施の形態においては、制御装置90をコントロールするトランスミッション制御ユニット140は、図13に示すように第1実施の形態に係るトランスミッション制御ユニット80(図5参照)に比して制御信号発生部80fを備えていない。つまり、第2実施の形態においては目標プライマリ圧演算部80dおよび目標セカンダリ圧演算部80eが、第1制御圧調整弁94の第4ソレノイド94aおよび第2制御圧調整弁95の第5ソレノイド95aを直接駆動する。これにより、3つのソレノイド51〜71(図5参照)を駆動する第1実施の形態に比して、トランスミッション制御ユニット140を簡略化することができ、ひいては低コスト化を実現することができる。
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、ライン圧調整弁50,プライマリ圧調整弁60,セカンダリ圧調整弁70,第1制御圧調整弁94および第2制御圧調整弁95を、それぞれ所定のデューティ比で制御するデューティ制御弁としたものを示したが、本発明はこれに限らず、駆動電流の大きさに比例した駆動量が得られる電磁比例弁とすることもできる。