JP5403332B2 - バニラ豆のリパーゼ阻害活性増強方法、およびリパーゼ阻害剤 - Google Patents

バニラ豆のリパーゼ阻害活性増強方法、およびリパーゼ阻害剤 Download PDF

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Description

本発明は、酵素処理によりバニラ豆のリパーゼ阻害活性を増強する方法、および該方法によって増強されたリパーゼ阻害剤に関する。
糖尿病などに代表される生活習慣病は、遺伝因子と環境因子の相乗作用により発症する。生活習慣病は動脈硬化症等の深刻な疾患に進行することが多い。このような状況下、生活習慣病の前症状であるメタボリックシンドローム段階での予防が注目されている。そのため、副作用が現れやすい合成または高純度に精製された治療薬を用いない方法で、メタボリックシンドロームの予防を目指すことが求められている。
メタボリックシンドロームの予防として重要なのが肥満対策である。問題となる内臓脂肪型肥満の主たる要因は、栄養脂肪の過剰摂取である。また、脂肪の過剰摂取は、肥満のみならず、肥満に起因する糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化等を発症させることが知られている。
肥満を予防するためには、食事制限により摂取カロリーを減らすことが有効な手段ではあるものの、日常生活において実行することは困難である場合が多い。そこで、食事由来の脂肪が体内に吸収されることを安全かつ健康的に抑制することは、肥満及びそれに関連する疾患の治療あるいは健康増進の目的で、現実的で有用な方策であると考えられる。
食餌中の脂肪分は、膵臓が分泌するリパーゼの作用により分解され、小腸から吸収される。そのため、膵臓リパーゼの酵素活性を阻害するリパーゼ阻害剤を用いて肥満等の病態を予防あるいは改善する種々の提案が行われてきた。
特許文献1には、茶に含まれる種々のポリフェノールのリパーゼ阻害活性を評価した結果、プロアントシアニジン類、特にガレート基を有するプロアントシアニジン類が強いリパーゼ阻害活性を有すると記載されている。特許文献2には、茶に含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)の二量体がリパーゼ阻害活性を有すると記載されている。特許文献3にはクルクミンが開示されている。
さらに、特許文献4には、精製ポリフェノールを酸化重合することにより合成されるポリフェノール重合物を含有するリパーゼ阻害剤が記載されている。具体例としては、ナリンギン、αG−ヘスペリジン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、フロリジン、レスベラトロール、ロスマリン酸、それらを含有する抽出物の重合体が、一定のリパーゼ阻害活性を有することが特許文献4に示されている。
しかしながら、食品等として利用するには精製物よりも常食される天然物を原料としたほうが一般消費者に好まれる場合も考えられる。
天然物としては、特許文献5、特許文献6に各種植物抽出物のリパーゼ阻害活性が開示されている。
しかしながら、これらの植物抽出物の中には安定的かつ安価に大量に調達することが困難なものが多く、また食経験等ヒトへの使用経験が不十分で安全性に問題があるものが多い。さらに、これら植物抽出物はほとんどが独特の苦味・渋味等好ましからざる風味を有し、飲食品等への添加量が制限され十分効果が期待できる製品を作ることが難しい。そのため、風味を改良するために加工すると、コストの増大を招く問題もある。
特開2006−1909号公報 特開2006−16367号公報 特開2004−137190号公報 特開2008−253256号公報 特開2003−192605号公報 特開2005−8572号公報
本発明者らは、先に、ヒトに対する使用経験が豊富で安全性が高く、安定的に大量に入手可能であり、優れた風味を有するバニラ豆(vanilla beans)がリパーゼを阻害するという新たな事実を見出した。
本発明は、バニラ豆が有するリパーゼ阻害活性をより増強させる方法、ならびに当該作用が増強されたバニラ豆を配合して得られるリパーゼ阻害剤、特にリパーゼ阻害活性が増強された飲食品、医薬品、化粧料、香料、動物用飼料を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、酸化酵素としてオキシダーゼおよびペルオキシダーゼを用いてバニラ豆を処理することにより、高いリパーゼ阻害活性を有する酵素処理物が得られるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るバニラ豆のリパーゼ阻害活性増強方法は、バニラ豆をオキシダーゼまたはペルオキシダーゼにて酵素処理し、リパーゼ阻害活性が増強された酵素処理物を得ることを特徴とする。
また、本発明は、オキシダーゼまたはペルオキシダーゼを用いて酵素処理したバニラ豆を含有するリパーゼ阻害剤、ならびに当該酵素処理したバニラ豆を含有する脂質吸収阻害剤、抗肥満剤、皮膚保全剤を提供するものである。さらに、本発明は、オキシダーゼまたはペルオキシダーゼを用いて酵素処理したバニラ豆を含有する食品、医薬製剤、香料、動物飼料および化粧用剤を提供するものである。
本発明のリパーゼ阻害剤は、強いリパーゼ阻害活性を有するので、これを食品(飲食料等)、香料、医薬組成物、動物用飼料などに含有させることにより、脂質吸収阻害作用、抗肥満作用が発揮され、メタボリックシンドローム予防の手段として、特に肥満対策に有用であり、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化および動脈硬化を原因とした脳血管障害、心臓病等を予防する効果が期待される。また、本発明のリパーゼ阻害剤は皮膚保全作用をも有するので、皮膚の保全を目的とする、化粧料または外用薬としても有用である。
また、本発明におけるリパーゼ阻害剤は、食品等として使用経験が豊富な天然物であるため安全性が高いという効果がある。入手が容易であり、香料や香辛料抽出物を製造後に発生する残渣を利用することもできるので安価に調達できる利点が挙げられる。香料等に用いられる素材であるので、他の天然物にくらべ風味がマイルドである点も有用である。
本発明のリパーゼ阻害剤はバニラ属植物(Vanilla spp.)が結実して得られるバニラ豆(vanilla beans)を有効成分とする。本発明に用いられる原料バニラ豆としては、採取されたバニラ豆、あるいはこれをキュアリング(熟成)処理したバニラ豆もしくは当該バニラ豆から香料製剤または香辛料抽出物を抽出したのちの残渣が用いられる。
キュアリング処理とは、通常、摘果したバニラ豆を加温して熟成を促進させた後、乾燥処理することであり、これにより独特の芳香を持つバニラ豆が得られる。また、本発明で使用するバニラ豆は、キュアリングが不十分であってもよく、また、香料原料として用いるには香質が不十分なものであってもよい。さらに、バニラ豆から香料または香辛料抽出物を製造後に発生する残渣を使用することもできる。このような残渣は、現状では廃棄されているが、未利用資源の有効利用という観点およびコストの面から残渣を使用するのが有利である。
本発明の原料に用いられるキュアリング処理したバニラ豆としては、とくに限定されないが、前記したように摘果後キュアリングと呼ばれる熟成過程を経たのち、緑色が褪色して緑色から茶色等へ変色したものが用いられる。キュアリングの度合いは、とくに限定されず、緑色が残った状態(熟成の途上)のバニラ豆でもかまわない。キュアリングして得られたバニラ豆を粉砕するなどして、そのまま酵素処理に使用してもよく、とくに限定されないが、バニラ豆に含まれるリパーゼ阻害活性を増強させる物質を効率よく取り出す、又は物理・化学的性質、風味等を改善するため、抽出・精製等の加工を加えたバニラ豆を使用することも考えられる。キュアリングしていないバニラ豆も同様の処理を加えるのがよい。
上記抽出操作は、特に制限されるものではなく、通常用いられる方法により製造することができる。また、抽出条件も特に制約はなく、原料をそのまま、または裁断、粉砕もしくは細紛した後、搾取または溶媒で抽出することにより製造される。
このうち、溶媒を用いた抽出は、一般に使用する溶媒に合わせて常圧〜加圧下で低温〜溶媒の沸点の温度条件下で10分〜1週間程度行えばよい。抽出に使用する溶媒としては、目的とする製品の形状や処理工程にあわせて通常用いられる溶媒を適宜選択して用いればよく、例えば、水やアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、又はプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール)、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類、その他キシレン、ベンゼン、クロロホルム等の有機溶媒が挙げられる。なお、食品として用いる場合のように、有機溶媒の残留が好ましくない場合は、特に水、エタノール、含水エタノール等を使用することが好ましい。これらの溶媒は単独で用いることもできるが、2種類以上を任意に組み合わせて使用することもできる。抽出方法としては、特に制限はなく、常温ホモジナイズ抽出、還流抽出、超臨界流体抽出、過熱水蒸気を用いる抽出等が使用可能である。
具体的には、例えば以下の方法が使用できる。すなわち、バニラ豆に抽出溶媒を1〜20倍量加え、常圧下、室温で1週間程度静置、又は40〜50℃にて数時間攪拌、又は抽出溶媒の沸点付近で10〜30分程抽出してから濾過して得られた濾液を減圧乾固あるいは凍結乾燥して抽出物を得る。
上記のようにして得られた抽出物はそのままの状態で酵素処理することもできるが、必要に応じ、その効力に影響のない範囲で更に脱臭、脱色等の精製処理を加えても良い。このような精製処理としては、通常の手段を任意に選択して行えば良く、例えば濾過又はイオン交換樹脂や活性炭カラム等を用い、吸着・脱色・精製等を行なえば良い。更に、凍結乾燥又は濃縮処理等により溶液状、ペースト状、ゲル状、又は粉末状の精製物を得ることができる。
また、本発明では、バニラ豆が香料あるいは香辛料抽出物を抽出したのちの残渣を原料に、オキシダーゼまたはペルオキシダーゼ処理して得られる酵素処理物を有効成分として用いることができる。この残渣は、上記と同様にして、そのまま、または裁断、粉砕もしくは細紛した後、搾取または溶媒で抽出し、酵素処理することにより、本発明のリパーゼ阻害剤として使用される。抽出処理などは上記と同様であり、その使用量も上記と同様でよい。香料あるいは香辛料抽出物の抽出処理は、通常、各種有機溶媒で行われ、バニラエキストラクト等の形で市場に供給されている。
本発明において、抽出処理に使用される溶媒としては、食品、医薬品、化粧品、香料、動物用飼料等に用いられるものであれば特に限定されないが、好ましくは水または含水エタノール抽出物が挙げられる。
本発明で使用される酵素触媒としては、十分な酸化能を有するものであれば特に制限はないが、オキシダーゼまたはペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.7)を使用するのが好ましい。オキシダーゼとしては、例えばラッカーゼ(EC 1.10.3.2)、カテコールオキシダーゼ(EC 1.10.3.1)、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)、ビリルビンオキシダーゼ(EC 1.3.3.5)などが挙げられる。これらの酵素は種々の起源のものが使用でき、特に制限はなく、例えば植物由来、細菌由来、坦子菌類由来のものを使用することができる。これらの中で、ラッカーゼは酸化能が高く、しかも酸化剤として空気中の酸素(分子状酸素)が利用できるために、特に好適である。ラッカーゼの例としては、漆の木から得られるラッカーゼ、またはTrametes属、Pycnoporus属、Pyricularia属、Pleurotus属、Polystictus属、Myceliophthora属もしくはNeurospora属の微生物ラッカーゼを挙げることができる。特にTrametes属、Myceliophthora属のラッカーゼを好ましく使用できる。
また、ペルオキシダーゼは酸化剤が必要であるが、酸化能が非常に高いという特質がある。ペルオキシダーゼの例としては、西洋ワサビおよび大豆ペルオキシダーゼが挙げられ、これらは酸化能が高く、しかも量産されて安価であるため、本発明では好ましく使用することができる。
使用する触媒は、精製・未精製を問わない。触媒量は原料モノマー1gに対して通常1〜1,000,000ユニット、好ましくは3〜500,000ユニット、さらに好ましくは5〜200,000ユニットである。
ペルオキシダーゼを用いて酵素処理する際に用いる前記酸化剤としては、酸化反応を開始させる酸化剤であればよく、一般的には過酸化物が用いられる。過酸化物は有機過酸化物および無機過酸化物のいずれでも良い。この中で特に好ましいものとして、過酸化水素を挙げることができる。過酸化水素の濃度は、特に限定されない。
酸化剤である過酸化物や酸素は、原料の合計量に対して0.1〜10倍量が好ましく、より好ましくは0.5〜3倍量が特に好ましい。
酵素反応を行うために、原料にオキシダーゼまたはペルオキシダーゼを接触させる方法はとくに限定されないが、例えば該酸化酵素を含む液体を原料に噴霧する等の方法が考えられる。好ましくは、原料を溶媒に懸濁または溶解し、該酸化酵素を添加して、撹拌・酵素反応させるのがよい。
酵素反応に使用される溶媒としては、原料と触媒が共に懸濁分散または溶解するものが好ましく、水または有機溶媒と水の混合溶媒が挙げられる。水は蒸留水や脱イオン水でもよいが、水の代わりに緩衝液を用いてもよい。緩衝液を用いる場合はpH2〜12の範囲が望ましい。緩衝液の種類としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
混合溶媒を用いる場合の有機溶媒は水と相溶する溶媒がより好ましい。水と相溶する有機溶媒として、メタノール、エタノール、エチレングリコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ピリジン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは単独あるいは混合物として使用される。また、有機溶媒−水の混合比はモノマーと酵素触媒が共に溶解する任意の量を用いることができる。好ましくは1:99〜90:10、特に好ましくは1:99〜70:30の範囲が望ましい。
反応温度は、酵素触媒が不活性化しない温度が望ましい。好ましくは0〜100℃の範囲であり、より好ましくは10〜60℃の範囲である。反応温度が高い場合は、一般に酵素は失活するが、混合溶媒系によっては酵素を安定化するので、その場合は高い反応温度も採用可能となる。
次に本発明にかかるリパーゼ阻害剤を説明する。このリパーゼ阻害剤は、バニラ豆をオキシダーゼまたはペルオキシダーゼ処理して得られる酵素処理物を有効成分とする。
これら酵素処理したバニラ豆は、処理する前の原料に比べて高いリパーゼ阻害活性を有する。
従来報告された純度の高いポリフェノール原料を酸化酵素処理して得られる重合体に比べて、本発明で見出されたバニラを原料に酸化酵素処理した場合は、複数成分による相乗効果、あるいは未知成分の反応により、はるかに強いリパーゼ阻害活性を持つ生成物が得られることに加え、風味がよいので、前述した安全性、価格面も合わせてより汎用性が高いといえる。
本発明に係る前記リパーゼ阻害剤は、あらゆる飲食料に添加することができる。本発明に係る食品の具体例としては、ジュース等の清涼飲料、コーヒー、紅茶、リキュール、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料、キャンデー、チューインガム、チョコレート、ビスケット、飴、グミ、ヨーグルト、アイスクリーム、プディング等が挙げられる。前記リパーゼ阻害剤は微量でも有効であり、香料としても利用できるので、食品への含有量は、0.01〜100mg/gの範囲が適当であるが、この範囲よりも多量に配合しても安全性や効果に問題はない。
本発明に係る前記リパーゼ阻害剤は、動物飼料にも含有させることができる。動物飼料の具体例としては、家畜用飼料、キャットフード、ドッグフード等のペットフード等が挙げられる。前記重合体の動物飼料への配合量は0.01〜100mg/gの範囲が適当であるが、この範囲よりも多量に配合しても安全性や効果に問題はない。
本発明に係る前記リパーゼ阻害剤は、あらゆる香料に添加することができる。本発明に係る香料の具体例としては、バニラのアイスクリーム、乳製品、チョコレート、ココア、コーヒー、プディング、ワイン等バニラ香の付与が好まれる食品に用いられる香料のほか、オリエンタル調調合香料等、香粧品香料にも含有することができる。
本発明に係る前記リパーゼ阻害剤は医薬品の形態で使用することもできる。医薬品として使用する際には、治療及び予防に有効な量の前記リパーゼ阻害剤が製薬学的に許容できる担体または希釈剤とともに製剤化されるとよい。製剤中の有効成分の量も限定されるものではないし、本発明の効果を損なわない範囲内で他の薬剤と併用することも可能である。
また、当該医薬品は経口または非経口のいずれでも投与できる。非経口投与として胃カテーテル、経皮吸収等の投与経路が挙げられる。投与量は年齢、個人差、病状等に依るので特に限定されないが、0.01〜500mg/kg(体重)、好ましくは0.1〜50mg/kg(体重)で、通常、一日量を1回又は数回に分けて投与する
本発明に係る前記リパーゼ阻害剤は、そのリパーゼ阻害機能に基づき、例えば微生物性のリパーゼを阻害してニキビ,皮膚炎,フケなどを抑制または予防する外用薬または化粧料として用いるのに好適である。すなわち、皮脂腺の肥大増殖や毛嚢孔の角化亢進等が原因となって皮脂が溜まると、毛嚢の毛漏斗に存在する皮膚常在菌のニキビ桿菌や皮膚ブドウ状球菌が増加し、これらの菌のリパーゼが皮脂を構成している皮質成分の内のトリグリセリドを分解して遊離脂肪酸に変え、この遊離脂肪酸が上皮に作用し、各種の酵素を産生して、ニキビ,皮膚炎,フケ等の要因になり得る。本発明のリパーゼ阻害用外用薬または化粧料は、局所適用等で微生物性リパーゼに対する阻害効果を有効に発揮し得る。
本発明に係る前記リパーゼ阻害剤を外用薬または化粧料として用いる場合、当該リパーゼ阻害剤に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常の外用薬や化粧品に用いられる他の成分、例えば油性成分、界面活性剤、アルコール類、水、保湿剤、美白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
また、外用薬や化粧料の形態は特に限定されるものではなく、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、軟膏、ゲル等の任意の形態が適用される。具体的には、例えば化粧水、乳液、クリーム、パック、ファンデーション、毛髪用化粧料等に適用することができるが、これらに限定されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
なお、各実施例における測定値は以下の方法にて求めた。
1.官能評価
パネラー3名がそれぞれ試料3mgを口に入れて風味を評価した。甘味、塩味、苦味、酸味、辛味、旨味の各要素に対して官能強度を点数化した。また、風味上の特徴を記述してもらい、原料と重合化物とで比較した。
2.リパーゼ阻害活性の評価
リパーゼ活性の測定は、基質に蛍光性の4−メチルウンベリフェロンのオレイン酸エステル(4-UMO)を使用し、反応によって生成した4−メチルウンベリフェロンの蛍光を測定することにより実施した。測定にあたり、緩衝液は、150 mM NaCl、1.36 mM CaCl2を含む 13 mM Tris-HCl (pH 8.0) を用いた。基質である4-UMO(Sigma社製)は0.1 MのDMSO(ジメチルスルホキシド)溶液として調製し上記緩衝液で1000倍希釈したものを、また、リパーゼ(ブタ膵由来;TypeII; Sigma社製)は上記緩衝液を用い400 U/ml溶液として調製したものを酵素測定に供した。
酵素反応は、25 ℃条件下において、75 μlのリパーゼ溶液に75 μl の30 % DMSO(あるいは試料溶液)を添加し混合、25 ℃下5分間プレインキュベートした。150 μlの4-UMO溶液を添加し、30分間反応を行った。300 μlの0.1 M クエン酸緩衝液(pH 4.2)を添加して反応を停止させ、生成した4−メチルウンベリフェロンの蛍光(励起波長360 nm、蛍光波長460 nm)をJASCO社製 FP-777 Spectrofluorometerを用いて測定した。
被験試料の阻害活性は、IC50(対照〔30 % DMSO〕の活性に対して50%阻害を与える試料量)として求めた。
[原料の調製]
マダガスカル産バニラ、および工業的にバニラ香料の製造に用いられたレユニオン産バニラ豆の残渣を原料として、それぞれ500g5Lの30%エチルアルコールで2時間還流を行い、室温まで冷却後ろ過した。得られたろ液を減圧濃縮し、さらに凍結乾燥して各抽出物を得た。
[実施例1]
(マダガスカル産バニラ豆のラッカーゼ処理)
マダガスカル産バニラ豆抽出物500 mgに50 mlの酢酸緩衝液(pH=5)を加えて溶液を調製した。この溶液に5 mgのTrametes sp.由来ラッカーゼ(大和化成製)を加え、空気下、室温で撹拌した。24時間後、排除分子量1000の透析チューブを用いて、反応混合物の透析を行った。透析後、透析チューブ内の溶液を凍結乾燥しラッカーゼ処理物を得た。
[実施例2]
(マダガスカル産バニラ豆のラッカーゼ処理)
マダガスカル産バニラ豆抽出物500 mgに50 mlの酢酸緩衝液(pH=5)を加えて溶液を調製した。この溶液に15 mgのTrametes sp.由来ラッカーゼ(大和化成製)を加え、空気下、室温で撹拌した。24時間後、排除分子量1000の透析チューブを用いて、反応混合物の透析を行った。透析後、透析チューブ内の溶液を凍結乾燥しラッカーゼ処理物を得た。
[実施例3]
(マダガスカル産バニラ豆のラッカーゼ処理)
マダガスカル産バニラ豆抽出物500 mgに50 mlの酢酸緩衝液(pH=5)を加えて溶液を調製した。この溶液に50 mgのTrametes sp.由来ラッカーゼ(大和化成製)を加え、空気下、室温で撹拌した。24時間後、排除分子量1000の透析チューブを用いて、反応混合物の透析を行った。透析後、透析チューブ内の溶液を凍結乾燥しラッカーゼ処理物を得た。
[実施例4]
(マダガスカル産バニラ豆のペルオキシダーゼ処理)
マダガスカル産バニラ豆抽出物500 mgに50 mlのリン酸緩衝液(pH=7)を加えて溶液を調製した。この溶液に1 mlのリン酸緩衝液に溶かした西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼ(和光純薬工業製)(10 mg、1000 unit)溶液を加えた。その後、過酸化水素水(30 %、62.5 μl)を2分おきに4回加え、室温で撹拌した。3時間後、排除分子量1000の透析チューブを用いて、反応混合物の透析を行った。透析チューブ内の溶液を凍結乾燥し、ペルオキシダーゼ処理物を得た。
[実施例5]
(残渣を原料とした残渣再抽出物のラッカーゼ処理)
工業的にバニラ香料の製造に用いられたレユニオン産バニラ豆の残渣抽出物500 mgに50 mlの酢酸緩衝液(pH=5)を加えて溶液を調製した。この溶液に5 mgのTrametes sp.由来ラッカーゼ(大和化成製)を加え、空気下、室温で撹拌した。24時間後、排除分子量1000の透析チューブを用いて、反応混合物の透析を行った。透析後、透析チューブ内の溶液を凍結乾燥しラッカーゼ処理物を得た。
[実施例6]
(残渣を原料とした残渣再抽出物のラッカーゼ処理)
工業的にバニラ香料の製造に用いられたレユニオン産バニラ豆の残渣抽出物500 mgに50 mlの酢酸緩衝液(pH=5)を加えて溶液を調製した。この溶液に15 mgのTrametes sp.由来ラッカーゼ(大和化成製)を加え、空気下、室温で撹拌した。24時間後、排除分子量1000の透析チューブを用いて、反応混合物の透析を行った。透析後、透析チューブ内の溶液を凍結乾燥しラッカーゼ処理物を得た。
[実施例7]
(残渣を原料とした残渣再抽出物のラッカーゼ処理)
工業的にバニラ香料の製造に用いられたレユニオン産バニラ豆の残渣抽出物500 mgに50 mlの酢酸緩衝液(pH=5)を加えて溶液を調製した。この溶液に50 mgのTrametes sp.由来ラッカーゼ(大和化成製)を加え、空気下、室温で撹拌した。24時間後、排除分子量1000の透析チューブを用いて、反応混合物の透析を行った。透析後、透析チューブ内の溶液を凍結乾燥しラッカーゼ処理物を得た。
[実施例8]
(残渣を原料とした残渣再抽出物のペルオキシダーゼ処理)
工業的にバニラ香料の製造に用いられたレユニオン産バニラ豆500 mgに50 mlのリン酸緩衝液(pH=7)を加えて溶液を調製した。この溶液に1 mlのリン酸緩衝液に溶かした西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼ(和光純薬工業製)(10 mg、1000 unit)溶液を加えた。その後、過酸化水素水(30 %、62.5 μl)を2分おきに4回加え、室温で撹拌した。3時間後、排除分子量1000の透析チューブを用いて、反応混合物の透析を行った。透析チューブ内の溶液を凍結乾燥し、ペルオキシダーゼ処理物を得た。
これらの実施例の処理条件を表1に示す。また、各実施例で得たリパーゼ阻害剤のIC50および官能評価の結果を表2に示す。また、比較のため、それぞれのラッカーゼおよびペルオキシダーゼ未処理原料(対照)についても同様の評価を行ったので、その結果も併せて表2に示す。
Figure 0005403332
Figure 0005403332
表2から明らかなように、実施例1〜8で得た酵素処理物は、その由来する原料バニラ豆に比べて、リパーゼ阻害活性が著しく増強されている。しかも、風味が原料よりも改善されていることがわかる。
このことから本発明のリパーゼ阻害剤は、メタボリックシンドローム予防食品、香料、医薬品、動物用飼料、または皮膚の保全作用が期待される化粧用素材として、幅広く利用することが期待される。

Claims (3)

  1. オキシダーゼまたはペルオキシダーゼを用いて酵素処理したバニラ豆を含有するリパーゼ阻害剤。
  2. オキシダーゼまたはペルオキシダーゼを用いて酵素処理したバニラ豆を含有する脂質吸収阻害剤。
  3. オキシダーゼまたはペルオキシダーゼを用いて酵素処理したバニラ豆を含有する抗肥満剤。
JP2009055944A 2009-03-10 2009-03-10 バニラ豆のリパーゼ阻害活性増強方法、およびリパーゼ阻害剤 Active JP5403332B2 (ja)

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