JP5402885B2 - 補強部材 - Google Patents

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Description

本発明は、車両のボデーパネル等の補強部材に関する。
車両のボデーパネル等は、車両の軽量化のため、性能を満足する範囲で、薄板化を進めている。しかしながら、アウタパネルの薄板化は、デザインキャンバーが不足する部位において、張り剛性、耐バックリング性能を低下させてしまう。そのため、アウタパネルの性能低下した部位を、インナパネル側から支えることで、性能低下を補う構造が一般的である。例えば、アウタパネルの性能低下した部位を、補強部材(アウタリンホース)を介して、インナパネルと結合するようにしている(特許文献1)。なお、「バックリング」とは、アウタパネルに荷重を加えたときに、「べこっ」と凹むことを言う。
特開平10−44782号公報 特開2007−237953号公報
車両においては、テールゲート等も、上述した構造を用いている。そこで、図14、図15に従来のテールゲートを示し、これらの図を参照して、その問題点を説明する。テールゲート10は、インナパネル11とアウタパネル12とからなる閉断面構造のものであり、アウタパネル12の性能低下した部位を、アウタリンホース13を用いて、インナパネル11側から補強するようにしている。具体的には、アウタリンホース13は、アウタパネル12と結合して内側から補強する結合面13aと、結合面13aを左右の両側方から支持する支持面13bと、各支持面13bの端部に設けられ、インナパネル11の内側に固定される固定面13cとを有している。又、図14(a)のE−E線矢視断面図である図15に示すように、結合面13aは、複数のマスチック材14により、アウタパネル12と結合しており、固定面13cは、複数のスポット溶接sにより、インナパネル11に固定されている。
図14、図15に示すような構造のテールゲート10において、テールゲート10を閉じたときには、ラッチからの入力がインナパネル11とアウタパネル12を伝わり、アウタリンホース13に伝播する。具体的には、テールゲート10は、その上端部にヒンジが設けられており、このヒンジを回転中心として、テールゲート10が上下方向に開閉されるので、テールゲート10を閉じると、ラッチからの入力が伝わって、アウタリンホース13が上下方向に振れてしまう(図15中の符号13UP、13DOWN参照)。そして、開閉動作が繰り返し行われていくと、固定面13cでの固定点であるスポット溶接sに繰り返し応力が加わり、比較的強度が弱いスポット溶接sに亀裂が入ったり、破壊されたりするおそれがある。特に、軽量化のために小型のアウタリンホース13を配置した場合には、スポット溶接sの数が少ないため、その傾向が顕著になる。従って、固定点(スポット溶接s)の破壊を防ぐためには、固定面13cの拡大(リンホース大型化)や固定面13cへの接着剤塗布が必要になっていた。
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、固定点の応力を低減することができる補強部材を提供することを目的とする。
上記課題を解決する第1の発明に係る補強部材は、
インナパネルとアウタパネルとからなるボデーパネルを内側から補強する補強部材において、
前記インナパネルの内側に固定される固定面と、
前記アウタパネルの内側に結合される結合面と、
前記固定面から立設されて、前記結合面を支持する支持面と、
前記支持面の前記固定面側の端部に設けられ、前記インナパネルの内側に当接する当接部と、
前記支持面と前記固定面との間に前記当接部を挟むように1対で設けられ、任意の角度に折り曲げられた複数の折部から形成されて、外力により前記折部の角度が変わることで弾性変形可能な変形部とを有し、
前記結合面に垂直な力が働くときは、前記当接部及び前記支持面により前記結合面を支持して、当該補強部材の剛性を維持し、前記結合面に水平な力が働くときは、前記変形部が弾性変形して、前記結合面及び前記支持面の変位を吸収することを特徴とする。
上記課題を解決する第2の発明に係る補強部材は、
上記第1の発明に記載の補強部材において、
前記支持面を複数有し、各支持面に対応して前記当接部及び1対の前記変形部を設けたことを特徴とする。
上記課題を解決する第3の発明に係る補強部材は、
上記第1又は第2の発明に記載の補強部材において、
前記ボデーパネルは、1つの端部側に設けられた回転軸を回転中心として開閉可能な開閉部材であり、
前記当接部と前記当接部を挟む1対の前記変形部とを、前記回転軸の軸方向と交わる方向に、変形部、当接部、変形部の順に並ぶように配置したことを特徴とする。
折部の折り方向にもよるが、例えば、回転軸の軸方向と垂直に交わる方向に、変形部、当接部、変形部の順に並ぶように配置すれば、回転軸の軸方向と垂直に交わる方向へ、変形部の変位を許容することになり、又、回転軸の軸方向と斜めに交わる方向に、変形部、当接部、変形部の順に並ぶように配置すれば、回転軸の軸方向と斜めに交わる方向へ、変形部の変位を許容することになる。
上記課題を解決する第4の発明に係る補強部材は、
上記第1〜第3のいずれか1つの発明に記載の補強部材において、
前記当接部は、前記インナパネルの内側に当接する当接点であり、
1対に設けた前記変形部におけるそれぞれの前記折部は、前記当接点を共通の交点とする複数の折り線を折り曲げて形成されて、互いに点対称に配置されることを特徴とする。
上記課題を解決する第5の発明に係る補強部材は、
上記第1〜第3のいずれか1つの発明に記載の補強部材において、
前記当接部は、前記インナパネルの内側に当接する当接面と前記当接面から立設された1対の内側面からなり、
1対に設けた前記変形部におけるそれぞれの前記折部は、前記内側面に対面する外側に設けられると共に、前記固定面側から少なくとも2段以上ある階段形状からなることを特徴とする。
第1〜第2の発明によれば、支持面の固定面側の端部に、当接部を間にして、1対の変形部を設けているので、張り剛性、耐バックリング性能が必要な方向については、当接部により、その方向への変位を最小に抑えて、張り剛性、耐バックリング性能を維持することができ、一方、張り剛性、耐バックリング性能が不要な方向については、1対の変形部により、その方向への変位を可能とし、固定部における固定点(スポット溶接等)へかかる応力を分散し、低減することができる。
その結果、固定点の破壊、破損防止のために、固定面を大きくしたり(大型化したり)、固定面へ接着剤を塗布したり、固定点の点数を増やしたりする必要がなくなり、補強部材の小型化、軽量化が可能であり、小型化、軽量化のための最適な形状とすることが可能となる。
又、第3の発明によれば、開閉部材の回転軸の軸方向と交わる方向に、当接部及び1対の変形部を、変形部、当接部、変形部の順に並ぶように配置しているので、開閉部材の閉時に伴う補強部材の振れを1対の変形部が吸収して、固定部における固定点(スポット溶接等)へかかる応力を分散し、低減することができる。
又、第4の発明によれば、1対の変形部それぞれにおける折部が、当接点を共通の交点とする複数の折り線を折り曲げて形成されて、互いに点対称に配置されるので、即ち、当接点を中心に、1対の変形部が点対称に配置されるので、結合面に水平な方向であれば、どのような方向の力が働いても、その方向への変位を可能とし、固定部における固定点(スポット溶接等)へかかる応力を分散し、低減することができる。
又、第5の発明によれば、1対の変形部それぞれにおける折部が、当接部の内側面に対面する外側に設けられると共に、固定面側から少なくとも2段以上ある階段形状からなるので、結合面に水平な力が働くとき、変形部、当接部、変形部の順に並ぶように配置した方向への変位を可能とし、固定部における固定点(スポット溶接等)へかかる応力を分散し、低減することができる。
本発明に係る補強部材の実施形態の一例(実施例1)を示す斜視図である。 図1に示した補強部材の正面図である。 図1に示した補強部材の一部を展開した展開図である。 図1に示した補強部材をテールゲートに取り付けた状態において、テールゲート断面を上面視した図である。 図1に示した補強部材をテールゲートに取り付けた状態において、テールゲート断面を側面視した図である。 図1に示した補強部材の変形の様子を説明する側面図であり、(a)は変形前、(b)は上振れ時、(c)は下振れ時である。 図1に示した補強部材の変形の様子を説明するモデル図であり、(a)は変形前、(b)は上振れ時、(c)は下振れ時である。 本発明に係る補強部材の実施形態の他の一例(実施例2)を示す斜視図である。 図8に示した補強部材の正面図である。 図8に示した補強部材の一部を展開した展開図である。 図8に示した補強部材をテールゲートに取り付けた状態において、テールゲート断面を上面視した図である。 図8に示した補強部材をテールゲートに取り付けた状態において、テールゲート断面を側面視した図である。 図8に示した補強部材の変形の様子を説明するモデル図であり、(a)は変形前、(b)は上振れ時、(c)は下振れ時である。 従来のテールゲートを説明する図であり、(a)はテールゲートの外観を示す斜視図、(b)はアウタパネルを外したときのテールゲートの斜視図である。 図14に示したテールゲート断面を側面視した図である。
以下、本発明に係る補強部材の実施形態のいくつかを、図1〜図13を参照して説明を行う。なお、下記の実施例においては、インナパネルとアウタパネルとからなる閉断面構造のボデーパネルとして、車両のテールゲートを例示するが、本発明に係る補強部材は、繰り返し応力が働く開閉部材等のボデーパネルであれば、他のものでもよく、例えば、フロントフード、サイドドア、トランクリッド等に適用可能である。
[実施例1]
本実施例の補強部材は、一例として、図14、図15に示したようなテールゲートに適用するものである。従って、図14、図15に示した部材と同等のものには、同じ符号を付し、図1〜図7を参照して説明を行う。ここで、図1は、本実施例の補強部材単体の斜視図であり、図2は、その正面図であり、図3は、その一部を展開した展開図であり、図4は、本実施例の補強部材をテールゲートに取り付けた状態の断面上視図であり、図5は、その断面側視図であり、図6は、本実施例の補強部材が上下に振れたときの状態を説明する側視図であり、図7は、その断面モデル図である。なお、図1〜図7において、Xは、車両前後方向、Yは、車両左右方向、Zは、車両上下方向を示し、又、図5は、図14(a)のE−E線矢視断面図に相当する図である。
本実施例のアウタリンホース21(補強部材)は、上端部側に設けられたヒンジ(回転軸)を回転中心として、上下方向に開閉されるテールゲート10に適用するものである。テールゲート10は、インナパネル11とアウタパネル12とからなる閉断面構造のものであり、アウタリンホース21は、インナパネル11の内側に固定されて、アウタパネル12の内側から張り剛性の低下した部位を補強するものである。
アウタリンホース21は、アウタパネル12と結合して内側から補強する結合面21aと、後述の固定面21cから立設されて、結合面21aを左右の両側方から支持する支持面21bと、各支持面21bの端部に設けられ、インナパネル11の内側に固定される固定面21cとを有している。又、図4、図5に示すように、結合面21aは、複数箇所に配置したマスチック材14により、アウタパネル12と結合しており、固定面21cは、複数のスポット溶接sにより、インナパネル11に固定されている。
そして、本実施例のアウタリンホース21においては、固定面21cでの固定点であるスポット溶接sとの間に介在するように、変形部22、23、24、25を設けている。具体的には、図2を参照して説明すると、図中左側の固定面21cと支持面21bとの間であって、図中上側に変形部22を、図中下側に変形部23を設けており、図中右側の固定面21cと支持面21bとの間であって、図中上側に変形部24を、図中下側に変形部25を設けている。
次に、変形部22、23の構成を、図3と共に詳細に説明するが、変形部24、25は、変形部22、23と同等の構成であるので、ここでは、変形部24、25の詳細図及び説明は割愛する。なお、図3において、山折り線は一点鎖線で、谷折り線は二点鎖線で示している。
変形部22、23は、図3の展開図に示すように、共通の交点(後述する当接点c)で交わる、1つの山折り線M(折部)と山折りMを間に挟んだ2つの谷折り線V1、V2(折部)とを有しており、1つの平らな鋼板において、山折り線Mを直角に折り曲げ加工し、谷折り線V1、V2を所望の角度に折り曲げ加工を行うことで、形成される。他の部分、即ち、結合面21a及び支持面21bも、曲げ加工で形成可能であることから、本実施例のアウタリンホース21は、1つの平らな鋼板から形成可能であり、例えば、プレス加工機を用いて、一括成型すれば、その加工も容易である。なお、ここでは、山折り線Mを直角に折り曲げ加工したが、この角度は、後述する変形が可能な最低限の角度があれば、任意の角度でよく、この角度に対応して、谷折り線V1、V2の角度を決定すればよい。
このようにして形成された変形部22は、三角形状の第1三角面22aと三角形状の第2三角面22bとを有し、第1三角面22aと第2三角面22bとの間の山折り線Mが外側に突出した構成である。同様に、変形部23も、三角形状の第1三角面23aと三角形状の第2三角面23bとを有し、第1三角面23aと第2三角面23bとの間の山折り線Mが外側に突出した構成である。従って、支持面21bの固定面21c側の端部に、変形部22と変形部23との間に挟むように、インナパネル11の内側に当接する当接点c(当接部)が設けられることになり、又、変形部22及び変形部23(各折部)は、当接点cに対して、互いに点対称に配置されて、変形部22と変形部23とは、当接点cを挟んで、1対となる構成である。又、変形部22、変形部23及び当接点cは、テールゲート10のヒンジの軸方向と交わる方向に、変形部22、当接点c、変形部23の順に並ぶように配置されている。
上述した構成により、変形部22〜25の各々は、謂わば、蛇腹形状となっており、これにより、変形部22〜25が各々弾性変形をして、固定面21cの固定点(スポット溶接s)へかかる応力を低減することができる。
ここで、図6、図7を用いて、本実施例のアウタリンホース21が、固定点(スポット溶接s)へかかる応力を低減できる理由を説明する。ここでは、変形部22、23について、図6、図7と共に詳細に説明するが、変形部24、25は、変形部22、23と同等の構成であるので、ここでも、変形部24、25の詳細図及び説明は割愛する。なお、図6、図7の両方において、(a)は変形前を、(b)は上振れ時を、(c)は下振れ時を示している。又、図7において、上側の断面モデルは、図2におけるA−A線矢視断面に相当し、下側の断面モデルは、図2におけるB−B線矢視断面に相当する。
変形前、例えば、テールゲート10が閉まっているとき、変形部22、23は、図6(a)、図7(a)に示すように、初期状態の形状を保っており、第1三角面22aと第2三角面22bとの間の折部の内角、第1三角面23aと第2三角面23bとの間の折部の内角は、共に、直角である。このとき、アウタパネル12(図6、図7中では図示省略)に、X方向に外力が加わった場合、即ち、結合面21aに垂直な力が働いた場合、支持面21bの端部に当接点cがあり、この当接点cがインナパネル11に当接し、当接点c及び支持面21bにより結合面21aを支えるので、アウタリンホース21のX方向への変形を抑制し、アウタパネル12の内側から張り剛性を補強することになる。なお、テールゲート10が開いているときも同様であるが、上述した説明において、X方向をZ方向と読み替えるだけでよい。
一方、テールゲート10を閉じた後、上振れしたときには(結合面21aに水平なZ方向上方に力が働くときには)、結合面21a及び支持面21bは、図6(b)、図7(b)に示すように、当接点cを回転中心として(図2では、左右2つの当接点c間を通るラインCLを回転軸として)、Z方向上方に回転するように変位することになる。そして、このとき、この外力により、上側の変形部22が折り畳まれ(第1三角面22aと第2三角面22bとの間の折部の内角が狭まり)、下側の変形部23が広げられて(第1三角面23aと第2三角面23bとの間の折部の内角が広がり)、変形部22、23が弾性変形をして、結合面21a及び支持面21bによる回転変位を吸収することになる。つまり、蛇腹形状の変形部22、23がバネのように作用して、結合面21a及び支持面21bによる回転変位を吸収することになり、その結果、固定点(スポット溶接s)にかかる応力を低減することになる。
又、テールゲート10を閉じた後、下振れしたときには(結合面21aに水平なZ方向下方に力が働くときには)、結合面21a及び支持面21bは、図6(c)、図7(c)に示すように、当接点cを回転中心として(図2では、ラインCLを回転軸として)、Z方向下方に回転するように変位することになる。そして、このとき、この外力により、上側の変形部22が広げられて(第1三角面22aと第2三角面22bとの間の折部の内角が広がり)、下側の変形部23が折り畳まれ(第1三角面23aと第2三角面23bとの間の折部の内角が狭まり)、変形部22、23が弾性変形をして、結合面21a及び支持面21bによる回転変位を吸収することになる。つまり、蛇腹形状の変形部22、23がバネのように作用して、結合面21a及び支持面21bによる回転変位を吸収することになり、その結果、固定点(スポット溶接s)にかかる応力を低減することになる。
又、本実施例のアウタリンホース21の場合、結合面21aに水平なY方向の横揺れの場合にも、蛇腹形状の変形部22〜25がバネのように作用して、結合面21a及び支持面21bによる横方向変位を吸収することができ、その結果、固定点(スポット溶接s)にかかる応力を低減することもできる。
このように、本実施例のアウタリンホース21では、剛性を保つ箇所として、当接点cを設けると共に、剛性が低い箇所(弾性変形可能な箇所)として、変形部22〜25を設けている。
従って、アウタパネル12の張り剛性、耐バックリング性能が必要なX方向(車両前後方向)については、当接点cにより、X方向への変位を最小に抑えて、張り剛性、耐バックリング性能を維持することができ、一方、張り剛性、耐バックリング性能が不要なY、Z方向については、変形部22〜25により、Y、Z方向への変位を可能とし、テールゲート10閉時の際の変位を柔軟に吸収して、固定点(スポット溶接s)へかかる応力を分散し、低減している。
上述した構成とすることにより、本実施例のアウタリンホース21では、固定点(スポット溶接s)の破壊、破損防止のために、固定面21cを大きくしたり(大型化したり)、固定面21cへ接着剤を塗布したり、スポット溶接点数を増やしたりする必要がなくなり、アウタリンホース21の小型化、軽量化が可能であり、小型化、軽量化のための最適な形状とすることが可能となる。
なお、本実施例においては、各変形部の最も簡単な構成として、3箇所の折部からなる1段の蛇腹形状の構成を例示したが、多段の蛇腹形状(扇状)の構成としてもよい。
[実施例2]
本実施例の補強部材も、一例として、図14、図15に示したようなテールゲートに適用するものである。従って、ここでも、図14、図15に示した部材と同等のものには、同じ符号を付し、図8〜図13を参照して説明を行う。ここで、図8は、本実施例の補強部材単体の斜視図であり、図9は、その正面図であり、図10は、その一部を展開した展開図であり、図11は、本実施例の補強部材をテールゲートに取り付けた状態の断面上視図であり、図12は、その断面側視図であり、図13は、本実施例の補強部材が上下に振れたときの状態を説明する断面モデル図である。なお、図8〜図13においても、Xは、車両前後方向、Yは、車両左右方向、Zは、車両上下方向を示し、又、図12は、図14(a)のE−E線矢視断面図に相当する図である。
本実施例のアウタリンホース31(補強部材)も、上下方向に開閉されるテールゲート10に適用するものであり、アウタリンホース31は、インナパネル11の内側に固定されて、アウタパネル12の内側から張り剛性の低下した部位を補強するものである。
アウタリンホース31は、アウタパネル12と結合して内側から補強する結合面31aと、後述の固定面31cから立設されて、結合面31aを左右の両側方から支持する支持面31bと、各支持面31bの端部に設けられ、インナパネル11の内側に固定される固定面31c、31dとを有しており、固定面31c、31dは、上側と下側に互いに離れて配置されている。又、図11、図12に示すように、結合面31aは、複数箇所に配置したマスチック材14により、アウタパネル12と結合しており、固定面31c、31dは、複数のスポット溶接sにより、インナパネル11に固定されている。
そして、本実施例のアウタリンホース31においては、固定面31c及び固定面31dにおける固定点であるスポット溶接sとの間に介在するように、変形部32、33、34、35を設けている。具体的には、図9を参照して説明すると、図中左側の支持面31bの端部側であって、図中上側の固定面31c側に変形部32を、図中下側の固定面31d側に変形部33を設けており、図中右側の支持面31bの端部側であって、図中上側の固定面31c側に変形部34を、図中下側の固定面31d側に変形部35を設けている。
次に、変形部32、33の構成を、図10と共に詳細に説明するが、変形部34、35は、変形部32、33と同等の構成であるので、ここでは、変形部34、35の詳細図及び説明は割愛する。
変形部32、33は、図10の展開図に示すように、互いに平行な多数の山折り線、谷折り線を折り曲げ加工することにより、階段形状を設けている。なお、図10においても、山折り線は一点鎖線で、谷折り線は二点鎖線で示している。
具体的には、変形部32においては、谷折り線V11(折部)を直角に折り曲げることにより、その外側に固定面31cが形成され、山折り線M11(折部)を直角に折り曲げることにより、谷折り線V11と山折り線M11との間に第1外側面32aが形成され、谷折り線V12(折部)を直角に折り曲げることにより、山折り線M11と谷折り線V12との間に第1上面32bが形成され、山折り線M12(折部)を直角に折り曲げることにより、谷折り線V12と山折り線M12との間に第2外側面32cが形成され、山折り線M13(折部)を直角に折り曲げることにより、山折り線M12と山折り線M13との間に第2上面32dが形成され、谷折り線V13(折部)を直角に折り曲げることにより、山折り線M13と谷折り線V13との間に内側面32eが形成される。
このようにして、第1外側面32a、第1上面32b、第2外側面32c及び第1上面32dは、内側面32eに対面する外側に設けられると共に、固定面31c側から2段の階段形状として形成される。なお、第1外側面32a、第1上面32b、第2外側面32c及び第1上面32dは、後述するように、弾性変形可能となるためには、その段数が1段では不十分であるので、少なくとも2段以上ある必要がある。
同様に、変形部33においては、谷折り線V21(折部)を直角に折り曲げることにより、その外側に固定面31dが形成され、山折り線M21(折部)を直角に折り曲げることにより、谷折り線V21と山折り線M21との間に第1外側面33aが形成され、谷折り線V22(折部)を直角に折り曲げることにより、山折り線M21と谷折り線V22との間に第1上面33bが形成され、山折り線M22(折部)を直角に折り曲げることにより、谷折り線V22と山折り線M22との間に第2外側面33cが形成され、山折り線M23(折部)を直角に折り曲げることにより、山折り線M22と山折り線M23との間に第2上面33dが形成され、谷折り線V23(折部)を直角に折り曲げることにより、山折り線M23と谷折り線V23との間に内側面33eが形成される。
このようにして、第1外側面33a、第1上面33b、第2外側面33c及び第1上面33dは、内側面33eに対面する外側に設けられると共に、固定面31d側から2段の階段形状として形成される。なお、第1外側面33a、第1上面33b、第2外側面33c及び第1上面33dも、後述するように、弾性変形可能となるためには、その段数が1段では不十分であるので、少なくとも2段以上ある必要がある。
そして、谷折り線V13及び谷折り線V23が折り曲げられた結果、内側面32eと内側面33eとの間にインナパネル11の内側と当接する当接面31eが形成されることになる。その結果、支持面31bの固定面31c側の端部に、変形部32と変形部33との間に挟むように当接面31eが設けられることになり、又、変形部32及び変形部33(各折部)は、図13(a)に示すように、当接面31eを挟んで、上下対称に配置されて、変形部32と変形部33とは、当接面31eを挟んで、1対となる構成である。又、変形部32、変形部33及び当接面31eは、テールゲート10のヒンジの軸方向と垂直に交わる方向に、変形部32、当接面31e、変形部33の順に並ぶように配置されている。
なお、当接部の機能(張り剛性補強のため、支持面31bと共に結合面31aを支える機能)として、当接部自体が変形することは許容できないので、1対となる内側面32e及び内側面33eは、階段形状にはせず、当接面31eから立設されており、当接面31eと共に当接部として機能する。
このように、固定面31c、31d、当接面31e、変形部32、33は、1つの平らな鋼板を、山折り線M11〜M13、M21〜M23、谷折り線V11〜V13、V21〜V23に沿って折り曲げ加工を行うことで、形成される。他の部分、即ち、結合面31a及び支持面31bも、更には、結合面31a及び支持面31bを補強する縁部36、37も、曲げ加工で形成可能であることから、本実施例のアウタリンホース31は、1つの平らな鋼板から形成可能であり、例えば、プレス加工機を用いて、一括成型すれば、その加工も容易である。なお、本実施例においては、第2外側面32c、第2上面32d及び内側面32eが、そのまま延長するように、コの字断面の縁部36が形成されており、又、第2外側面33c、第2上面33d及び内側面33eも、そのまま延長するように、コの字断面の縁部37が形成されている。又、ここでは、山折り線M11〜M13、M21〜M23、谷折り線V11〜V13、V21〜V23を直角に折り曲げ加工したが、この角度は、後述する変形が可能な最低限の角度があれば、任意の角度でよい。
上述した構成により、変形部32〜35の各々は、それらの外側に階段形状を有し、これにより、変形部32〜35が各々弾性変形をして、固定面31c、31dの固定点(スポット溶接s)へかかる応力を低減することができる。
ここで、図13を用いて、本実施例のアウタリンホース31が、固定点(スポット溶接s)へかかる応力を低減できる理由を説明する。ここでは、変形部32、33について、図13と共に詳細に説明するが、変形部34、35は、変形部32、33と同等の構成であるので、ここでも、変形部34、35の詳細図及び説明は割愛する。なお、図13において、(a)は変形前を、(b)は上振れ時を、(c)は下振れ時を示しており、又、その断面モデルは、図9におけるD−D線矢視断面に該当する。
変形前、例えば、テールゲート10が閉まっているとき、変形部32、33は、図13(a)に示すように、初期状態の形状を保っており、第1外側面32aと第1上面32bとの間の折部の内角、第1上面32bと第2外側面32cとの間の折部の外角、第2外側面32cと第1上面32dとの間の折部の内角及び第1上面32dと内側面32eとの間の折部の内角は、共に、直角である。このとき、アウタパネル12(図13中では図示省略)に、X方向に外力が加わった場合、即ち、結合面31aに垂直な力が働いた場合、支持面31bの端部に当接面31eがあり、この当接面31eがインナパネル11に当接し、当接面31e及び支持面31bにより結合面31aを支えるので、アウタリンホース31のX方向への変形を抑制し、アウタパネル12の内側から張り剛性を補強することになる。なお、テールゲート10が開いているときも同様であるが、上述した説明において、X方向をZ方向と読み替えるだけでよい。
一方、テールゲート10を閉じた後、上振れしたときには(結合面31aに水平なZ方向上方に力が働くときには)、結合面31a及び支持面31bは、図中の回転中心Rを回転中心として(図9では、左右2つの回転中心R間を通るラインRLを回転軸として)、Z方向上方に回転するように変位することになる。そして、このとき、この外力により、上側の変形部32において、第1上面32b、第2外側面32c及び第2上面32dが凹むように変位し(各折部の角度が変化し)、下側の変形部33において、第1上面33b、第2外側面33c及び第2上面33dが飛び出るように変位し(各折部の角度が変化し)、変形部32、33が弾性変形をして、結合面31a及び支持面31bによる回転変位を吸収することになる。つまり、変形部32、33の階段形状の部分がバネのように作用して、結合面31a及び支持面31bによる回転変位を吸収することになり、その結果、固定点(スポット溶接s)にかかる応力を低減することになる。
又、テールゲート10を閉じた後、下振れしたときには(結合面31aに水平なZ方向下方に力が働くときには)、結合面31a及び支持面31bは、図中の回転中心Rを回転中心として(図9では、ラインRLを回転軸として)、Z方向下方に回転するように変位することになる。そして、このとき、この外力により、上側の変形部32において、第1上面32b、第2外側面32c及び第2上面32dが飛び出るように変位し(各折部の角度が変化し)、下側の変形部33において、第1上面33b、第2外側面33c及び第2上面33dが凹むように変位し(各折部の角度が変化し)、変形部32、33が弾性変形をして、結合面31a及び支持面31bによる回転変位を吸収することになる。つまり、変形部32、33の階段形状の部分がバネのように作用して、結合面31a及び支持面31bによる回転変位を吸収することになり、その結果、固定点(スポット溶接s)にかかる応力を低減することになる。
このように、本実施例のアウタリンホース31では、剛性を保つ箇所として、当接面31eを設けると共に、剛性が低い箇所(弾性変形可能な箇所)として、変形部32〜35を設けている。
従って、アウタパネル12の張り剛性、耐バックリング性能が必要なX方向(車両前後方向)については、当接面31eにより、X方向への変位を最小に抑えて、張り剛性、耐バックリング性能を維持することができ、一方、張り剛性、耐バックリング性能が不要なZ方向については、変形部32〜35により、Z方向への変位を可能とし、テールゲート10閉時の際の変位を柔軟に吸収して、固定点(スポット溶接s)へかかる応力を分散し、低減している。なお、本実施例は実施例1と相違し、横(Y)方向については、剛性が高く、バネのようには作用しない構造である。
上述した構成とすることにより、本実施例のアウタリンホース31では、固定点(スポット溶接s)の破壊、破損防止のために、固定面31c、31dを大きくしたり(大型化したり)、固定面31c、31dへ接着剤を塗布したり、スポット溶接点数を増やしたりする必要がなくなり、アウタリンホース31の小型化、軽量化が可能であり、小型化、軽量化のための最適な形状とすることが可能となる。
なお、本実施例においては、各変形部の最も簡単な構成として、2段の階段形状の構成を例示したが、多段の階段形状の構成としてもよい。
又、上記実施例1、2に示したアウタリンホース21、31においては、発明を理解しやすいように、軽量化のための肉抜き穴は図示していないが、軽量化のために、肉抜き穴を設けるようにしてもよいし、軽量化に伴い、アウタリンホース21、31自体の剛性を維持するため、実施例2で示したコの字断面の縁部36、37のような補強構造を設けてもよい。
又、上記実施例1、2に示したアウタリンホース21、31においては、各々、2つの支持面21b、31bを有する構成であるが、所望の張り剛性、耐バックリング性能があれば、1つでもよいし、更に増やしてもよい。
又、上記実施例1、2では、テールゲートの補強部材であるアウタリンホースを例示したが、前述したように、フロントフード、サイドドア、トランクリッド等の補強部材にも適用可能であり、例えば、サイドドアであれば、サッシュブラケットを上述した構成とすることで、同様な効果が期待できる。
本発明は、開閉動作が行われるテールゲートやフロントフード等に好適なものである。
10 テールゲート
11 インナパネル
12 アウタパネル
21 アウタリンホース
21a 結合面
21b 支持面
21c 固定面
22〜25 変形部
31 アウタリンホース
31a 結合面
31b 支持面
31c 固定面
32〜35 変形部

Claims (5)

  1. インナパネルとアウタパネルとからなるボデーパネルを内側から補強する補強部材において、
    前記インナパネルの内側に固定される固定面と、
    前記アウタパネルの内側に結合される結合面と、
    前記固定面から立設されて、前記結合面を支持する支持面と、
    前記支持面の前記固定面側の端部に設けられ、前記インナパネルの内側に当接する当接部と、
    前記支持面と前記固定面との間に前記当接部を挟むように1対で設けられ、任意の角度に折り曲げられた複数の折部から形成されて、外力により前記折部の角度が変わることで弾性変形可能な変形部とを有し、
    前記結合面に垂直な力が働くときは、前記当接部及び前記支持面により前記結合面を支持して、当該補強部材の剛性を維持し、前記結合面に水平な力が働くときは、前記変形部が弾性変形して、前記結合面及び前記支持面の変位を吸収することを特徴とする補強部材。
  2. 請求項1に記載の補強部材において、
    前記支持面を複数有し、各支持面に対応して前記当接部及び1対の前記変形部を設けたことを特徴とする補強部材。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の補強部材において、
    前記ボデーパネルは、1つの端部側に設けられた回転軸を回転中心として開閉可能な開閉部材であり、
    前記当接部と前記当接部を挟む1対の前記変形部とを、前記回転軸の軸方向と交わる方向に、変形部、当接部、変形部の順に並ぶように配置したことを特徴とする補強部材。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の補強部材において、
    前記当接部は、前記インナパネルの内側に当接する当接点であり、
    1対に設けた前記変形部におけるそれぞれの前記折部は、前記当接点を共通の交点とする複数の折り線を折り曲げて形成されて、互いに点対称に配置されることを特徴とする補強部材。
  5. 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の補強部材において、
    前記当接部は、前記インナパネルの内側に当接する当接面と前記当接面から立設された1対の内側面からなり、
    1対に設けた前記変形部におけるそれぞれの前記折部は、前記内側面に対面する外側に設けられると共に、前記固定面側から少なくとも2段以上ある階段形状からなることを特徴とする補強部材。
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