図1は、本発明の一実施形態に係る光学装置を搭載したカメラ3の全体ブロック図である。カメラ3は、カメラボディ5とレンズ鏡筒7を有している。レンズ鏡筒7は、カメラボディ5に対して着脱自在に装着される。なお、カメラ3の説明においては、図1および図2等に示すように、光軸αと略平行な方向であって、レンズ鏡筒7からカメラボディ5に向かう方向をZ軸の負方向、Z軸に直交する方向をX軸方向およびY軸方向として説明を行う。
本発明に係る光学装置を搭載したカメラとしては、図1に示すようなレンズ交換式カメラに限定されず、レンズ鏡筒7とカメラボディ5とが一体のカメラであってもよく、カメラの種類は特に限定されない。また、本発明に係る光学装置は、スチルカメラに限らず、ビデオカメラ、顕微鏡、携帯電話などの光学機器にも適用できる。
カメラボディ5およびレンズ鏡筒7の内部には、撮影光学系光軸αに沿って、複数の光学部品が配置されている。図1に示すカメラボディ5における後方側(Z軸負方向側)には撮像素子周辺部15が配置されており、撮像素子周辺部15の光軸α方向の前方側(Z軸正方向側)には、シャッタ68が配置してある。シャッタ68の光軸α方向の前方側には、ミラー70が配置してあり、その前方側には、レンズ鏡筒7に内蔵してある絞り部78および光学レンズ群24が配置してある。
カメラボディ5には、ボディCPU50が内蔵してあり、レンズ接点62を介してレンズCPU80に接続してある。ボディCPU50は、レンズ鏡筒7との通信機能と、カメラボディ5の制御機能を有している。レンズ接点62は、ボディCPU50と、レンズCPU80とを電気的に接続する。ボディCPU50には、カメラボディ5およびレンズ鏡筒7に備えられた電子部品に電力を供給するための電源58が接続してある。
ボディCPU50には、レリーズスイッチ52、ストロボ54、表示部56、EEPROM(メモリ)26、画像処理コントローラ66、AFセンサ60、電圧信号出力回路28などが接続してある。画像処理コントローラ66には、インターフェース回路64を介して、撮像素子周辺部15の撮像素子ユニット16が接続してある。画像処理コントローラ66およびインターフェース回路64は、ボディCPU50からの信号に基づき、撮像素子ユニット16によって撮像された画像の画像処理を制御する。撮像素子ユニット16は、たとえばCCDやCMOS等の固体撮像素子を有する。
表示部56は、主として液晶表示装置などで構成され、出力結果やメニューなどを表示する。レリーズスイッチ52は、撮影のタイミングを操作するスイッチである。レリーズスイッチ52は、ボディCPU50に対して、半押し信号および全押し信号を出力する。ボディCPU50は、レリーズスイッチ52から半押し信号が入力されると、AF制御、AE制御等の撮影準備動作を制御し、レリーズスイッチ52から全押し信号が入力されると、ミラーアップ、シャッタ駆動等の露光動作を制御する。
クイックリターンミラー70は、構図決定の際にファインダーに像を映し出すためのもので、露光中は光路から退避する。クイックリターンミラー70は、不図示のミラー駆動部(例えばDCモータ)により駆動される。
クイックリターンミラー70には、AFセンサ60に光を導くサブミラー70aが連結してある。このサブミラー70aも、露光中は光路から退避する。
シャッタ68は、露光時間を制御する。シャッタ68は、ボディCPU50からの制御に基づき、不図示のシャッタ駆動部(例えばDCモータ)によって駆動される。
AFセンサ60は、オートフォーカス(AF)を行うためのセンサである。このAFセンサ60としては、通常CCDが用いられる。EEPROM26は、ボディCPU50による制御に必要なパラメータ等を記憶しており、必要に応じてボディCPU50に出力する。
図1に示すレンズ鏡筒7には、焦点距離エンコーダ74、距離エンコーダ72、絞り部78、絞り部78を駆動する駆動モータ76、レンズCPU80、レンズ接点62及び光学レンズ群24が具備してある。
レンズCPU80は、ボディCPU50との通信機能と、レンズ鏡筒7に搭載された電子部品の制御機能とを有している。例えば、レンズCPU80は、焦点距離情報、被写体距離情報等を、レンズ接点62を介してボディCPU50に出力する。また、レンズCPU80には、ボディCPU50から、レリーズ情報、AF情報が入力される。レンズCPU80は、これらの情報に基づき、絞り78の駆動モータ76等を制御することができる。
焦点距離エンコーダ74は、不図示のズームレンズ群の位置情報から、焦点距離を算出し、レンズCPU80に出力する。距離エンコーダ72は、フォーカシングレンズ群の位置情報より被写体距離を算出し、レンズCPU80に出力する。
図1に示すように、カメラボディ5には、電圧信号出力回路28が備えられている。電圧信号出力回路28は、ボディCPU50からの制御信号に基づき、撮像素子周辺部15におけるフィルタ部18に備えられる複数の電極に電圧を出力する。
図2は、図1に示すカメラに搭載された撮像素子周辺部15の平面図である。撮像素子周辺部15は、ユニット固定基板14と、ケース12と、フィルタ部18と、撮像素子ユニット16とを有する。また、撮像素子周辺部15は、フィルタ部18に取り付けられた配線部38を有する。撮像素子周辺部15の断面図である図3に示すように、矩形平板形状を有するユニット固定基板14のZ軸正方向側の表面には、撮像素子ユニット16とケース12とが設置されている。撮像素子ユニット16は、受光面16aをZ軸正方向側に向けた状態で配置される。ケース12は、額縁形状を有しており、撮像素子ユニット16の周辺を取り囲むように配置される。ケース12は、例えば合成樹脂またはセラミック等の絶縁性の材料を用いて形成される。
ケース12の内周面には、フィルタ部18を取り付けるための取付部12aが形成されている。フィルタ部18は、矩形平板形状を有しており、フィルタ部18の周辺部が、取付部12aに接触するように設計されている。フィルタ部18は、ケース12に対して、例えば接着剤等によって取り付けられる。撮像素子ユニット16は、フィルタ部18に対向して設けられ、フィルタ部18を透過した光は、撮像素子ユニット16の受光面16aに入射する。
図3に示すように、撮像素子ユニット16の周囲は、ユニット固定基板14、ケース12、およびフィルタ部18によって封止されており、図3に示す撮像素子周辺部15は、撮像素子ユニット16が収納される封止空間に、塵埃等が浸入することを防止している。なお、図3に示す撮像素子周辺部15は、後述のように、フィルタ部18を振動させることなく、当該フィルタ部18に付着した塵埃を除去することができる。したがって、フィルタ部18は、ケース12に対して非可動的に固定されており、フィルタ部18のケース12に対する取り付け構造が単純である。また、撮像素子ユニット16が収納される封止空間は、フィルタ部18、ケース12およびユニット固定基板14によって、確実に封止される。
フィルタ部18は、防塵フィルタ36と、赤外線吸収ガラス板32と、水晶波長板34と第2複屈折板30からなる4枚のフィルタを積層した積層構造を有している。積層方法としては、接着剤による積層、あるいはその他の積層方法でも良い。
図4(A)に示すように、本実施形態に係るフィルタ部18は、略同一の面積を有する4枚のフィルタを積層することによって形成されているが、フィルタ部18の形状としては、これに限定されない。例えば図4(B)に示す第1変形例に係るフィルタ部18では、一枚のフィルタ(第2複屈折板30)の面積が、他の3枚のフィルタ36,32,34より大きい。また、図4(C)に示す第2変形例に係るフィルタ部18では、一枚のフィルタ(防塵フィルタ36)が、他の3枚のフィルタ32,34,30と別体となっている。
図3に示す水晶波長板34は、直線偏光を円偏向に変えることができる光学板であり、赤外線吸収ガラス板32は、赤外線を吸収する機能を有する。また、第1実施形態において、防塵フィルタ36は、複屈折板(第1複屈折板)である基材部40(図6(a))を有している。防塵フィルタ36の基材部40は、第2複屈折板30に対して、相互に複屈折の方向(分離方向)が90度異なる。防塵フィルタ36に備えられる基材部40と、第2複屈折板30は、一方が90度方向(短辺方向)の複屈折を有する複屈折板であれば、他方の複屈折板は、0度方向(長辺方向)の複屈折を有する複屈折板である。本実施形態では、防塵フィルタ36に備えられる基材部40が、0°方向(長辺方向(X軸方向))の複屈折を有する複屈折板であり、第2複屈折板30が90°方向(短辺方向(Y軸方向))の複屈折を有する複屈折板であるが、逆でも良い。
本実施形態では、フィルタ部18における防塵フィルタ36および第2複屈折板30により、基本的には、光学ローパスフィルタ(OLPF)を構成している。なお、一般的には、光学ローパスフィルタは、二つの複屈折板36および30の間に、赤外線吸収ガラス板32および水晶波長板34が積層されて光学ローパスフィルタ(OLPF)を構成している。
防塵フィルタ36の基材部40および第2複屈折板30は、例えば水晶を特定の角度で切り出した水晶板を用いて作成される。原材料となる水晶は、人工の水晶でもよいし天然水晶でもよい。
図6は、図3に示す撮像素子周辺部15に備えられる防塵フィルタ36の断面図(図6(a))および平面図(図6(b))である。図6(a)に示すように、防塵フィルタ36は、基材部40と、複数の電極42と、表面層44とを有する。基材部40は、矩形平板状の形状を有しており、Z軸負方向側に設けられた撮像素子ユニット16に向かう光を透過させる光透過領域40c(図2)を有する。防塵フィルタ36における基材部40は、複屈折性を有する複屈折板である。
例えば、電極42及び表面層44は、基材部40と同程度の透過率を有することが好ましい。例えば、電極42、表面層44及び基材部40は、入射した可視光の全域(例えば、波長が0.38μm以上、0.75μm以下の光)において、80%以上100%以下の透過率を有することが好ましい。透過率が80%以上100%以下であれば、静止画、動画等の撮影画像を取得するのに十分な光学特性が得られるからである。更に好ましくは、電極42、表面層44及び基材部40は、入射した可視光の全域において、90%以上100%以下の透過率を有することが好ましい。透過率が90%以上100%以下であれば、高精細な静止画の撮影画像を取得するのに十分な光学特性が得られるからである。
また、電極42、表面層44及び基材部40を光が透過することにより撮像素子ユニット16に到達する光の光量が低下する場合には、撮像素子ユニット16で得られる信号を処理(アナログ処理又はデジタル処理)して撮影画像の光量を実質的に増加させてもよい。
図6(a)に示すように、基材部40のZ軸正方向側の表面には、複数の電極42が形成されている。電極42は、例えばITO(酸化インジウムスズ)やZnO(酸化亜鉛)等の光を透過し、導電性を有する材料を用いて形成される。電極42は、光透過領域40cを含む基材部40の全体表面に形成されており、後述のように、防塵フィルタ36の表面に付着する塵埃を除去する電界を発生させる。
電極42は、図6(b)に示すように、基材部40の表面に沿って帯状に形成されている。本実施形態における防塵フィルタ36において、電極42は、基材部40の短辺40bに略平行な方向に延在するように形成されている。なお、電極42は、図3に示す撮像素子ユニット16の受光面16aに対して、略平行に備えられている。電極42を受光面16aに対して略平行に配置することによって、後述のように、電極42による電界が光透過領域40c(図2)を効率的にカバーできる。
複数の電極42は、基材部40の長辺40aに沿って、例えばピッチが所定の長さd1であって、互いの間隔が長さd2となるように、間隔を空けて配置される(図6(a))。図6(b)に示すように、各電極42の一方の端部(本実施形態ではY軸正方向側の端部)には、配線部38が取り付けられており、電極42は、配線部38を介して、図1に示す電圧信号出力回路28に対して電気的に接続されている。本実施形態に係る配線部38はFPCであるが、電極42に電圧信号を伝えるものであれば特に限定されない。
また、複数の電極42は、互いに異なる位相を有する交流電圧を印加される複数のグループによって構成される。すなわち、本実施形態における複数の電極42は、第1の電圧信号が入力される第1グループの電極42aと、第2の電圧信号が入力される第2グループの電極42bと、第3の電圧信号が入力される第3グループの電極42cと、第4の電圧信号が入力される第4グループの電極42dによって構成される。
各グループの電極42a,42b,42c,42dは、電極42が延在する方向であるY軸方向とは垂直なX軸方向に沿って、第1グループの電極42a、第2グループの電極42b、第3グループの電極42c、第4グループの電極42dの順番に、所定の間隔を隔てて周期的に配置される。すなわち、1つの第1グループの電極42a1と、これと同位相の電圧信号が印加される他の1つの第1グループの電極42a2との間には、第1グループの電極42aとは異なる位相の電圧信号が印加される1つの第2グループの電極42bと、1つの第3グループの電極42cと、1つの第4グループの電極42dとが、互いに間隔を隔てて備えられる。第2グループの電極42b、第3グループの電極42c、第4グループの電極42dについても、第1グループの電極42a1,42a2と同様である。
本実施形態に係る防塵フィルタ36は、電極42の表面を覆うように、防塵フィルタ36のZ軸負方向側の表面に設けられた表面層44を有する(図6(a))。表面層44は、基材部40との間に、電極42を挟むように備えられる。表面層44は、絶縁性を有し光を透過する材料によって形成される。
表面層44の屈折率は、電極42の屈折率と略等しいことが好ましい。また、表面層44における光の分散(屈折率の光の波長による変化)は、電極42における光の分散と略等しいことが好ましい。電極42と光学的な特性が略等しい表面層44を有する防塵フィルタ36は、撮像素子ユニット16によって撮像される像に、電極42の影が写りこむことを防止することができる。また、表面層44は撥水性を有していてもよく、表面層44が撥水性を有する場合は、防塵フィルタ36に対する塵埃37の付着力を低減することができる。また、表面層44は微細な凹凸を有していてもよく、表面層44が微細な凹凸を有する場合は、防塵フィルタ36に対する塵埃37の付着力(分子間力)を低減することができる
図7は、図3に示すフィルタ部18を透過する撮影光110の分離状態を表す模式断面図である。撮影時において、図1に示す光学レンズ群24等によって導かれた撮影光110は、光軸αに沿ってフィルタ部18に入射する。撮影光110は、Z軸正方向側から防塵フィルタ36に入射するため、表面層44および複数の電極42を透過したのち、基材部40に入射する。
基材部40は、基材部40に入射する撮影光110を、X軸方向に分離して透過する複屈折板である。したがって、図7に示すように、基材部40に入射した撮影光110は、基材部40を透過する間に、第1撮影光110aと第2撮影光110bに分離され、電極42が配置される物体側の表面40eとは反対側の表面40fから出射される。基材部40のZ軸負方向側の表面40fを出射した第1撮影光110aおよび第2撮影光110bは、フィルタ部18を構成する他のフィルタ32,34,30を透過した後に、撮像素子ユニット16の受光面16aに入射する。なお、基材部40における物体側の表面40eとは、基材部40の表面のうち、撮像素子ユニット16側の表面40fとは反対側の表面を意味する。
ここで、電極42と表面層44とは、互いに等しい光学特性(透過率,屈折率,分散など)を持つことが好ましいが、電極42と表面層44の光学特性を完全に一致させることが難しい場合がある。なぜなら、電極42と表面層44は、導電率等については互いに異なる必要があり、同一の材料で構成することはできないからである。したがって、電極42および表面層44を透過した撮影光が、複屈折性を有するフィルタを透過することなく撮像素子ユニット16の受光面16aに入射した場合は、図10に示すように、受光面16aに電極42の影140aが発生する場合がある。さらに、電極42の影140aが、撮影される画像に写り込み、撮影画像の品質を劣化させる恐れがある。
しかし、本実施形態に係る防塵フィルタ36では、図7に示すように、電極42と撮像素子ユニット16の間に、複屈折性を有する基材部40を配置している。したがって、たとえ電極42の影が発生する場合であっても、電極42の影を形成する光も基材部40によって分離される。これにより、本実施形態に係る防塵フィルタ36は、図9に示すように、受光面16aに発生する電極42の影140を薄くすることができる。
また、防塵フィルタ36において、電極42はY軸方向に延在するように帯状に形成されているため、電極42の影140も、図10に示すように、Y軸方向に沿って帯状に形成される傾向にある。しかし、本実施形態に係る防塵フィルタ36では、図6(a)および図6(b)に示すように、電極42が備えられる方向(Y軸方向)と、電極42を出射した光を分離させて透過する基材部40の分離方向(X軸方向)とが、互いに略直交する。したがって、たとえ電極42の影が発生する場合であっても、図7に示すように、電極の影はX軸方向に分離される。これにより、本実施形態に係る防塵フィルタ36は、図9に示すように、受光面16aに発生する電極の影140をさらに効果的に薄くすることができる。
また、図8(a)に示すように、本実施形態に係る電極42の延在方向(Y軸方向)に直交する断面は、略矩形形状を有する。電極42によって光軸(Z軸)方向の段差が形成される電極42の縁部42eは、撮影画像に写り込む影を発生させ易い。また、電極の影は、電極42の縁部42eに対応する部分で目立ちやすい傾向にある。
しかし、本実施形態に係る防塵フィルタ36では、図6(a)および図6(b)に示すように、電極42が備えられる方向(Y軸方向)と、電極42を出射した光を分離させて透過する基材部40の分離方向(X軸方向)とが、互いに略直交する。したがって、たとえ電極42および電極の縁部42eの影が発生する場合であっても、図7に示すように、これらの影はX軸方向に分離される。これにより、本実施形態に係る防塵フィルタ36は、図9に示すように、受光面16aに発生する電極の影140をさらに効果的に薄くし、目立たなくすることができる。また、電極42の影140aが撮影画像に写り込み、撮影画像の品質を劣化させることを防止できる。
電極42の断面形状としては、図8(a)に示すものに限られず、フィルタ部18に備えられる防塵フィルタとしては、図8(b)から図8(c)に示すものであってもよい。図8(b)は、第3変形例に係る防塵フィルタ118の断面図である。防塵フィルタ118は、電極120の断面形状のみが、図8(a)に示す防塵フィルタ36とは異なる。防塵フィルタ118に備えられる電極120は、撮影光の入射側(Z軸正方向側)表面である入射側表面120cが、凸型の湾曲形状を有する。なお、撮影光の出射側(Z軸負方向側)表面である出射側表面120dは、基材部40に密着しており、平面形状を有する。
また、電極120は、互いに厚みが異なる第1部分120aと、第2部分120bとを有する。第2部分120bは、基材部40の分離方向であるX軸方向でみて、第1部分120aよりも、電極120の縁である縁部120e側に備えられており、第1部分120aの厚みは、第2部分120bの厚みより厚い。なお、電極120の厚みは、電極120が撮影光を透過する方向(Z軸方向)に沿う電極の長さを意味する。特に、図8(b)〜図8(e)に示す例では、電極が撮影光を透過する方向(Z軸方向)に沿う電極の平均長さを意味する。
電極120は、互いに厚みが異なる第1部分120aと、第2部分120bを有しているため、たとえ電極120の影が発生したとしても、電極120の影は濃淡を有する。したがって、電極120の影はエッジが目立ちにくい。また、第2部分120bは、電極120の縁部120eに備えられており、電極120は、縁部120eの厚みが薄い。これにより、電極120の縁部120eにおける段差が小さくなり、縁部120eの影を薄くすることができる。このように、第3変形例に係る防塵フィルタ118は、受光面16aに発生する電極120の影をさらに目立たなくすることができる。また、電極120の影が撮影画像に写り込み、撮影画像の品質を劣化させることを防止できる。
図8(c)は、第4変形例に係る防塵フィルタ122の断面図である。防塵フィルタ122は、電極124の断面形状とピッチが、図8(b)に示す防塵フィルタ118とは異なるが、その他は防塵フィルタ118と同様である。防塵フィルタ122に備えられる電極124は、撮影光の入射側(Z軸正方向側)表面である入射側表面124cが、円柱曲面形状を有する。
また、電極124は、図8(b)に示す電極120と同様に、互いに厚みが異なる第1部分124aと、第2部分124bとを有する。第2部分124bは、基材部40の分離方向であるX軸方向でみて、第1部分124aよりも、電極124の縁である縁部124e側に備えられており、第1部分124aの厚みは、第2部分124bの厚みより厚い。第4変形例に係る防塵フィルタ122は、第3変形例に係る防塵フィルタ118と同様の効果を有する。
図8(d)は、第5変形例に係る防塵フィルタ126の断面図である。防塵フィルタ126は、電極128の断面形状が、図8(b)に示す防塵フィルタ118とは異なるが、その他は防塵フィルタ118と同様である。防塵フィルタ126に備えられる電極128は、その入射側表面128cが、撮影光の入射側(Z軸正方向側)に向かって突出する楔形状を有する。
また、電極128は、図8(b)に示す電極120と同様に、互いに厚みが異なる第1部分128aと、第2部分128bとを有する。第2部分128bは、基材部40の分離方向であるX軸方向でみて、第1部分128aよりも、電極128の縁側(縁部128e側)に備えられており、第1部分128aの厚みは、第2部分128bの厚みより厚い。第5変形例に係る防塵フィルタ126は、第3変形例に係る防塵フィルタ118と同様の効果を有する。
図8(e)は、第6変形例に係る防塵フィルタ129の断面図である。防塵フィルタ129は、電極130の断面形状が、図8(b)に示す防塵フィルタ118とは異なるが、その他は防塵フィルタ118と同様である。
防塵フィルタ129に備えられる電極130は、図8(b)に示す電極120と同様に、互いに厚みが異なる第1部分130aと、第2部分130bとを有する。第1部分130aにおける入射側表面130cは、基材部40の表面と略平行である平面形状を有している。それに対して、第2部分130bにおける入射側表面130cは、電極130の縁部130eに向かって徐々に基材部40に接近する湾曲形状を有している。また、第1部分130aの厚みは、第2部分130bの厚みより厚い。第6変形例に係る防塵フィルタ129は、第3変形例に係る防塵フィルタ118と同様の効果を有する。
図7に示すように、第1実施形態に係るフィルタ部18では、防塵フィルタ36の基材部40は、電極42の延在方向であるY軸方向に直交するX軸方向の分離方向を有している。しかし、本実施形態に係る撮像素子周辺部15に備えられるフィルタ部18としては、これに限定されない。図11は、第1実施形態の第7変形例に係るフィルタ部18bを透過する撮影光110の分離状態を表す模式断面図である。
フィルタ部18bでは、防塵フィルタ106の基材部30aが、電極42の延在方向(Y軸方向)と略同一方向の分離方向を有する第2複屈折板30aによって構成されている。また、第1複屈折板40dは、防塵フィルタ106と、撮像素子16との間に配置される。第1複屈折板40dは、図7に示す基材部40と同様に、撮影光110を、電極42の延在方向であるY軸方向に略直交するX軸方向に分離する。このようにフィルタ部18bでは、防塵フィルタ106の基材部30a、第1複屈折板40d、赤外線吸収ガラス板32および水晶波長板34によって、光学ローパスフィルタを構成している。
図11に示すフィルタ部18bも、図7に示すフィルタ部18と同様に、電極42が備えられる方向(Y軸方向)と、電極42を出射した光を分離させて透過する第1複屈折板40dの分離方向(X軸方向)とが、互いに略直交する。したがって、たとえ電極42の影が発生する場合であっても、図11に示すように、電極の影140はX軸方向に分離される。したがって、第7変形例に係るフィルタ部18bも、図9に示すように、受光面16aに発生する電極の影140をさらに効果的に薄くすることができる。このように、電極42が備えられる方向(Y軸方向)に対して略直交する方向に撮影光110を分離する第1複屈折板40dは、防塵フィルタ106より撮像素子ユニット16側に、防塵フィルタ106と対向して備えられてもよい。これにより、第7変形例に係るフィルタ部18bは、図7に示すフィルタ部18と同様の効果を有する。
図12は、第1実施形態の第8変形例に係るフィルタ部18cを透過する撮影光110の分離状態を表す模式断面図である。フィルタ部18cでは、防塵フィルタ114の基材部が、複屈折性を有しないカバーガラス116によって構成されている。また、第1複屈折板40dは、防塵フィルタ114と、撮像素子ユニット16との間に配置される。第1複屈折板40dは、図7に示す基材部40と同様に、撮影光110を、電極42の延在方向であるY軸方向に略直交するX軸方向に分離する。このように、フィルタ部18cにおいては、防塵フィルタ114は光学ローパスフィルタの一部ではなく、当該防塵フィルタ114に対向して備えられる第1複屈折板40d、第2複屈折板30、赤外線吸収ガラス板32および水晶波長板34によって、光学ローパスフィルタを構成している。なお、防塵フィルタ114と第1複屈折板40dとの間の空間は、不図示の封止部材によって封止される。
図12に示すフィルタ部18cも、図7に示すフィルタ部18と同様に、電極42が備えられる方向(Y軸方向)と、電極42を出射した光を分離させて透過する第1複屈折板40dの分離方向(X軸方向)とが、互いに略直交する。したがって、たとえ電極42の影が発生する場合であっても、図12に示すように、電極の影はX軸方向に分離される。したがって、第8変形例に係るフィルタ部18cも、図12に示すように、受光面16aに発生する電極の影140をさらに効果的に薄くすることができる。このように、第8変形例に係るフィルタ部18cも、図7に示すフィルタ部18と同様の効果を有する。
図13は、防塵フィルタ36を用いた除塵動作を説明するための模式図である。電圧信号出力回路28は、信号生成部82と、位相調整部84と、増幅部86とを有する。信号生成部82は、所定の周期を有する交流電圧信号を生成し、位相調整部に出力する。位相調整部84は、交流電圧信号の位相を調整し、互いに異なる位相を有する4つの交流電圧信号を生成し、増幅部86に出力する。
増幅部86は、4つの交流電圧信号を、所定の振幅に増幅した後、駆動電圧信号として出力する。増幅部86は、配線部38を介して、防塵フィルタ36に備えられる電極42に、駆動電圧信号を出力する。したがって、電圧信号出力回路28は、互いに位相の異なる第1駆動電圧信号ch1、第2駆動電圧信号ch2、第3駆動電圧信号ch3および第4駆動電圧信号ch4を、防塵フィルタ36に備えられる電極42に出力することができる。
配線部38は、第1駆動電圧信号ch1を第1グループの電極42aに伝える第1配線部38aと、第2駆動電圧信号ch2を第2グループの電極42bに伝える第2配線部38bと、第3駆動電圧信号ch3を第3グループの電極42cに伝える第3配線部38cと、第4駆動電圧信号ch4を第4グループの電極42dに伝える第4配線部38dとを有する。
第1〜第4駆動電圧信号ch1〜ch4は、互いに位相が4分の1周期ずつずれた方形波の信号であるが、電極42に出力される電圧信号としてこれに限定されず、正弦波や三角波等の信号であってもよい。第1〜第4駆動電圧信号ch1〜ch4の駆動周波数は、特に限定されないが、例えば1Hz〜500hzとすることによって、塵埃を効率的に移動させることができる。
電圧信号出力回路28は、防塵フィルタ36の表面に備えられた複数の電極42に電圧を印加することによって、防塵フィルタ36の表面の電界を変化させることができる。本実施形態に係る防塵フィルタ36は、光を透過する電極42が縞状に配置されており、電極42に4相の交流電圧が印加されるため、進行波状の電界を防塵フィルタ36の表面に発生させることができる。
すなわち、防塵フィルタ36の表面には、各グループの電極42a,42b,42c,42dが、X軸方向に沿って周期的に配置されており、各グループの電極42a,42b,42c,42dに対して、それぞれに対応する駆動電圧信号ch1,ch2,ch3,ch4が印加される。これによって防塵フィルタ36の表面には、X軸方向に沿って移動する進行波状の電界が発生し、防塵フィルタ36の表面に存在する塵埃37は、電界から与えられる静電気力によって移動させられ、除去される。例えば、防塵フィルタ36の表面に付着した塵埃37は、例えば矢印39で示すように、進行波状の電界が移動する方向に沿う方向に移動させられ、防塵フィルタ36の表面から除去される。
本実施形態に係る電極42には、4相の駆動電圧信号が印加されるが、本発明に係る電極42に印加される駆動電圧信号は、単相であってもよく、2相であってもよい。単相の場合であっても、防塵フィルタ36の表面の電界を変化させて、防塵フィルタ36の表面に存在する塵埃を移動させることができる。また、2相以上であれば、防塵フィルタ36の表面の電界を移動させて、防塵フィルタ36の表面に存在する塵埃を移動させることができる。
しかし、電極42に印加させる駆動電圧信号は、3相以上であることが好ましい。周期的に配置された3以上のグループによって構成される電極42に、各グループに対応する交流電圧信号を印加することによって、防塵フィルタ36の表面に、進行波状の電界を容易に発生させることができる。防塵フィルタ36の表面に進行波状の電界を発生させることによって、塵埃37の移動方向の制御が容易となり、また、比較的小さな電圧によって、塵埃37を大きく移動させることが可能となる。なお、図示の実施例では、4グループの電極を用いた場合を例にして説明したが、電極グループは、2グループでもよいし、3グループでもよいし、5グループ以上であってもよい。
図5は、本実施形態に係る光学装置の製造工程の一例を説明したフローチャートである。図5に示すステップS001では、図6(a)に示す基材部40を準備する。図6(a)に示す基材部40は、複屈折性を有する複屈折板であるが、防塵フィルタ36における基材部40としてはこれに限定されない。たとえば、防塵フィルタ36を、光学ローパスフィルタとは別の光学部材とする場合には、基材部40は、ガラス板等の他の透光部材であってもよい。また、基材部40の形状も、矩形平板形状に限定されず、例えば円形平板形状等の他の形状であってもよい。
ステップS002では、基材部40の表面に電極42を形成する。電極42の形成方法としては、特に限定されないが、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、スピンコート法等を用いることができる。基材部40の表面に形成される電極42のピッチd1(図6(a))は、防塵フィルタ36に付着する可能性の高い塵埃37の性質に応じて適切に設計されればよく、例えば200μm〜1000μm(1mm)程度とすることができる。また、隣接する電極間の隙間d2についても、特に限定されないが、例えば200μm〜1000μm(1mm)とすることができる。
また、ステップS002では、基材部40の表面のうち、電極42が形成された側の表面に、表面層44を形成する。さらに、ステップS002では、必要に応じて、基材部40または表面層44に、振動素子20(図16)を配置してもよい。振動素子20は、接着剤等によって基材部40または表面層44に固定される。
さらに、ステップS003では、図6(b)に示す配線部38を取り付け、当該配線部38によって、電極42と電圧信号出力回路28(図1)とを電気的に接続する。なお、ステップS002において、基材部40に振動素子20(図16)を配置した場合は、ステップS003において、図14に示す振動素子駆動回路29を、振動素子20に接続する。ステップS004では、図6に示す電極42に周期的な電圧が出力されるように、電圧信号出力回路28(図1)を調整する。電極42に出力される電圧の振幅は、防塵フィルタ36に付着する可能性の高い塵埃37の性質や、電極42のピッチd1等に応じて適切に設計されればよく、例えば100Vp−p〜2kVp−pとすることができる。なお、ステップS002において、基材部40または表面層44に振動素子20(図16)を配置した場合は、ステップS004において、電極42の少なくとも一部の近傍に、振動の節99(図18)が生じるように振動素子駆動回路29を調整してもよい。
本実施形態に係る光学装置は、電界を変化させることによって、防塵フィルタ36の表面に付着した塵埃を移動させて除去する。電界が塵埃に与えることができる力は、所定の条件下では塵埃の帯電量に比例するため、本実施形態に係る光学装置は、物理的な振動を防塵フィルタに発生させる方式では除去することが困難であった帯電量が大きい塵埃を除去することができる。
また、本実施形態に係る光学装置は、電気的な力によって塵埃を移動させるため、物理的な振動を防塵フィルタに発生させる方式では除去することが困難であった質量の小さい塵埃を除去することができる。また、本実施形態に係る光学装置は、物理的な振動を発生させることなく塵埃を除去することができるため、静粛性に優れている。また、防塵フィルタ36自体が発塵する恐れも少ない。
本実施形態に係る光学装置は、電気的な力によって塵埃を移動させるため、物理的な振動を発生させて塵埃を除去する従来技術とは異なり、防塵フィルタ36を振動可能な状態に取り付ける必要がない。したがって、防塵フィルタ36を含むフィルタ部18を、ケース12に対して非可動的に取り付けることができるため、フィルタ部18とケース12の隙間から、封止空間内に塵埃が浸入することを効果的に防止できる。また、防塵フィルタ36を、弾性部材等を介在させてケース12に取り付ける必要がないため、弾性部材の経年変化等によってゴミ除去性能が変化する恐れもない。
また、本実施形態に係る光学装置は、電極42を出射した光を、電極が備えられる方向とは略直交する方向に分離させて透過する基材部40または第1複屈折板40dを有する。これにより、本実施形態に係る光学装置は、受光面16aに発生する電極42の影140を薄くし、目立たなくすることができる。また、電極42の影140が撮影画像に写り込み、撮影画像の品質を劣化させることを防止できる。
第2実施形態
図14は、本発明の第2実施形態に係る光学装置を搭載したカメラ3aの全体ブロック図である。カメラ3aは、カメラボディ5aに振動素子駆動回路29が備えられており、カメラボディ5aに備えられる撮像素子周辺部15aが、図1に示す撮像素子周辺部15と異なる他は、図1に示すカメラ3と同様である。
カメラボディ5aには、振動素子駆動回路29が備えられている。振動素子駆動回路29は、ボディCPU50と撮像素子周辺部15aとに、電気的に接続されている。振動素子駆動回路29は、ボディCPU50からの制御を受けて、撮像素子周辺部15aに備えられる振動素子20(図15)を駆動することができる。
図15は、図14に示すカメラ3aに備えられる撮像素子周辺部15aの平面図である。撮像素子周辺部15aは、ユニット固定基板14と、ケース12と、フィルタ部18aと、撮像素子ユニット16とを有する。また、撮像素子周辺部15aは、防塵フィルタ36b(図16)をケース12に対して取り付けるための加圧部材10と、フィルタ部18aに取り付けられた配線部38と、振動素子20とを有する。
撮像素子周辺部15aの断面図である図16に示すように、矩形平板形状を有するユニット固定基板14のZ軸正方向側の表面には、撮像素子ユニット16とケース12とが配置されている。ケース12は、額縁形状を有しており、撮像素子ユニット16の周辺を取り囲むように配置される。ケース12は、例えば合成樹脂またはセラミック等の絶縁性の材料を用いて形成される。
ケース12の内周面には、フィルタ部18を取り付けるための取付部12aが形成されている。本実施形態のおけるフィルタ部18aは、防塵フィルタ36bが、他の3枚のフィルタである赤外線吸収ガラス板32,水晶波長板34および第2複屈折板30と別体となっている。ケース12の取付部12aには、防塵フィルタ36b以外の3枚のフィルタ32,34,30が取り付けられる。3枚のフィルタ32,34,30は、ケース12に対して、例えば接着剤等によって取り付けられる。
撮像素子ユニット16の周囲は、ユニット固定基板14、ケース12、およびフィルタ部18aによって密封されており、撮像素子ユニット16が収納されている密封空間に、塵埃等が浸入することを防止している。
防塵フィルタ36bは、赤外線吸収ガラス板32のZ軸負方向側に、当該赤外線吸収ガラス板32との間に封止部材17を挟んで配置される。封止部材17は、例えば合成樹脂あるいはゴムなどの弾性部材で構成され、防塵フィルタ36bと赤外線吸収ガラス板32の間を封止している。
防塵フィルタ36bは、板バネ形状を有する加圧部材10によって、ケース12に対して、振動可能な状態に取り付けられている。すなわち、加圧部材10は、防塵フィルタ36bを、Z軸正方向側から赤外線吸収ガラス板32に向かって加圧し、封止部材17との間に防塵フィルタ36bを挟んで保持する。なお、加圧部材10の両端部は、図15および図16に示すように、ケース12に対して螺旋止めされている。
図17は、図15に示す撮像素子周辺部15aに備えられる防塵フィルタ36bの断面図(図17(a))および平面図(図17(b))である。図17(a)に示すように、防塵フィルタ36bは、基材部40と、複数の電極42と、表面層44とを有する。また、防塵フィルタ36bにおけるZ軸正方向側の表面には、振動素子20が取り付けられている。
振動素子20は、例えば圧電素子および圧電素子に電圧を印加するための電極等を有しており、図14に示す振動素子駆動回路29によって駆動される。振動素子駆動回路29は、防塵フィルタ36bに振動の節が生じるように、振動素子20を駆動することができる。本実施形態に係る振動素子駆動回路29は、図18に示すように、例えば防塵フィルタ36bが3次の屈曲振動を起こすように、振動素子20を駆動することができる。
第3実施形態に係る基材部40のZ軸正方向側の表面には、図6に示す防塵フィルタ36と同様に、複数の電極42が形成されている。電極42は、図17(b)に示すように、基材部40の表面に沿って帯状に形成されている。本実施形態における防塵フィルタ36bでは、電極42は、基材部40の短辺40bに略平行な方向に延在するように形成されている。また、電極42は、図18に示す振動の節99と略平行に備えられている。
電極42を、振動の節99と略平行に備えることによって、振動の節99に略垂直な方向に勾配を有する電界を発生させることができるため、防塵フィルタ36bは、振動の節と略垂直な方向(X軸方向)に塵埃37を移動させることができる。したがって、防塵フィルタ36bを有する光学装置は、振動の節99の周辺に残留した塵埃37を、振動の節99から遠ざかる方向(振動の節と略垂直な方向)に移動させて、単一モードの屈曲振動のみで、防塵フィルタ36bの表面全体の塵埃を除去することができる。
また、防塵フィルタ36bにおける振動素子20も、基材部40の短辺40bに略平行に備えられているため、本実施形態における光学装置において、振動素子20と電極42は、略平行に備えられる。振動の節は、振動素子20と略平行な方向や、基材部40の辺と略平行な方向に発生しやすいため、電極42を基材部40の辺または振動素子20と略平行に配置することが、防塵フィルタ36bの表面全体の塵埃を除去する上で好ましい。
各電極42のY軸正方向側の端部には、配線部38が取り付けられており、電極42は配線部38を介して、図14に示す電圧信号出力回路28に電気的に接続されている。また、本実施形態における複数の電極42は、図13に示す第1実施形態と同様に、第1の電圧信号が入力される第1グループの電極42aと、第2の電圧信号が入力される第2グループの電極42bと、第3の電圧信号が入力される第3グループの電極42cと、第4の電圧信号が入力される第4グループの電極42dによって構成される。
各グループの電極42a,42b,42c,42dは、電極42が延在する方向であるY軸方向とは垂直なX軸方向に沿って、第1グループの電極42a、第2グループの電極42b、第3グループの電極42c、第4グループの電極42dの順番に、所定の間隔を隔てて周期的に配置される。
図21は、図17に示す防塵フィルタ36bを有するカメラ3a(図9)による除塵動作の一例を説明したフローチャートである。図21に示すステップS101では、防塵フィルタ36bに付着した塵埃37を除去する除塵動作を開始する。除塵動作は、例えば図14に示すカメラ3aの電源がONされた時や、カメラボディ5aに備えられる不図示の入力部より、ボディCPU50に清掃開始信号が入力された時に開始される。
ステップS102では、図14に示すボディCPU50から振動素子駆動回路29に制御信号が出力され、振動素子駆動回路29は、振動素子20を駆動し、防塵フィルタ36bを振動させる。図18は、図17に示す防塵フィルタ36bによる除塵動作における第1の段階(ステップS102)を説明した模式図である。
ステップS102において、振動素子駆動回路29は、防塵フィルタ36bが3次の屈曲振動を起こすように、振動素子20を駆動する。ステップS102では、防塵フィルタ36bに付着している塵埃のうち、振動の節99の周辺以外に付着している塵埃37を除去することができる。しかし、屈曲振動における振動の節99の周辺101は、振動の振幅が小さいため、図18に示すように、振動の節99の周辺に付着した塵埃37は、十分に除去されない場合がある。
図21に示すステップS103では、図14に示すボディCPU50から電圧信号出力回路28に制御信号が出力され、電圧信号出力回路28は、電極42に電圧信号を出力し、防塵フィルタ36bの表面に進行波状の電界を発生させる。図19は、図17に示す防塵フィルタ36bによる除塵動作における第2の段階(ステップS103)を説明した模式図である。
ステップS103において、電圧信号出力回路28は、防塵フィルタ36bの表面に備えられた複数の電極に電圧を印加することによって、防塵フィルタ36bの表面の電界を変化させる。電圧信号出力回路28は、図13に示すのと同様に、縞状に配置された電極42に4相の交流電圧信号ch1〜ch4を印加し、X軸方向に沿って移動する進行波状の電界を、防塵フィルタ36bの表面に発生させる(図19)。
防塵フィルタ36bの表面のうち、ステップS102における屈曲振動において振動の節99が発生する位置の周辺部に残存する塵埃37は、図19(b)に示すように、電界から与えられる静電気力によって、矢印105に示すように、X軸方向に沿って移動させられる。電圧信号出力回路28は、振動の節99の発生位置周辺部に残存する塵埃37が、振動の節99から離れた位置に移動するまで、電極42に電圧を印加することができる。なお、ステップS102において振動の節99の発生位置周辺部101に残存した塵埃の一部は、矢印106に示すように、ステップS103において防塵フィルタ36bの表面から除去される。
ステップS104では、ステップS102と同様に、図14に示すボディCPU50から振動素子駆動回路29に制御信号が出力され、振動素子駆動回路29は、防塵フィルタ36bを振動させるように振動素子20を駆動する。図20は、図17に示す防塵フィルタ36bによる除塵動作における第3の段階(ステップS104)を説明した模式図である。
ステップS104において、振動素子駆動回路29は、防塵フィルタ36bが3次の屈曲振動を起こすように、振動素子20を駆動する。ステップS103によって、防塵フィルタ36bの表面に残存する塵埃37は、振動の節99から離れた位置に移動されているため、ステップS104における屈曲振動によって除去される。防塵フィルタ36bの表面に残存する塵埃37は、図20において矢印で示すように、重力方向に移動して除去される。
図20に示すステップS105では、除塵動作を終了する。ボディCPU50は、ステップS105において、電圧信号出力回路28および振動素子駆動回路29の制御を停止する。
このように、本実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36bを屈曲振動させる除塵動作と、防塵フィルタ36bの表面の電界を変化させる除塵動作の両方を行うことができるため、防塵フィルタ36bの表面に付着した塵埃37を効率的に除去することができる。すなわち、屈曲振動による除塵動作によって、質量の比較的大きい塵埃や、振動の節の周辺以外の部分に付着した塵埃を除去することができる。また、進行性電界による除塵動作によって、質量の比較的小さい塵埃や、振動の節の周辺に付着した塵埃や、帯電量の大きい塵埃等を除去することができる。
電圧信号出力回路28は、振動素子駆動回路29が振動素子20を駆動した後に、防塵フィルタ36bに生じる電界が移動するように、電極42に電圧を出力することによって、振動の節99の発生位置周辺に残存する塵埃37を、振動の節99から離れた位置に移動させることができる。したがって、本実施形態に係る光学装置は、屈曲振動させる除塵動作と、電界を変化させる除塵動作の両方を組み合わせることによって、単一モードの屈曲振動のみで、防塵フィルタ36bの表面全体の塵埃を除去することができる。
なお、図21に示す除塵動作の例では、屈曲振動させる除塵動作と、電界を変化させる除塵動作を、時間をずらして行うが、除塵動作としてはこれに限定されず、例えば屈曲振動させる除塵動作と、電界を変化させる除塵動作を同時に行ってもよい。すなわち、電圧信号出力回路28は、振動素子駆動回路29が振動素子20を駆動しているとき、防塵フィルタ36bに生じる電界が移動するように、電極42に電圧を出力することができる。これによって、本実施形態に係る光学装置は、防塵フィルタ36bの表面全体の塵埃を短時間で除去することができる。
また、本実施形態に係る防塵フィルタ36bでは、図18等に示すように、防塵フィルタ36bの表面全体に電極42が形成されているが、電極42の配置はこれに限定されず、振動の節99の発生位置の周辺部にのみ電極42が形成されていてもよい。振動の節99の発生位置の周辺部にのみ電極42を有する防塵フィルタは、電界を変化させる除塵動作によって、振動の節99の発生位置周辺に付着している塵埃37を、振動の節99から離れた位置に確実に移動させ、その場所に留まらせることができる。
その他の実施形態
上述の実施形態では、複数の電極42は、基材部40の短辺40bに沿って備えられるが、電極42の配置としてはこれに限定されない。例えば、電極42は、基材部40の長辺40aに沿って備えられても良い。また、この場合、電極42と撮像素子ユニット16との間に、撮影光を基材部40の短辺方向に分離する複屈折板を配置することで、電極42の影が撮影画像に写り込む減少を防止できる。
また、図1および図14に示す画像処理コントローラ66は、撮像素子ユニット16によって撮影された画像に電極42の影が写り込んだ場合、画像処理によって電極42の影を低減してもよい。これにより、電極42が撮像措置の光学性能に与える影響をさらに抑制することができる。