JP5400317B2 - インプラント材料 - Google Patents
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Description
歯科用インプラント材料としては、主として、チタン等の金属材料が使用されてきた。しかし、チタン製のインプラント材料と、金合金製の上部構造物との間で生じるガルバニック作用により、チタンが溶出し、この溶出したチタンがインプラント材料の周囲組織に分布することが報告されている。この現象は、体内に蓄積された金属イオンによって引き起こされるアレルギーの一因となるものと考えられる。
平均結晶粒子径が0.3μm以下である部分安定化ジルコニアを主成分する基材と、
セラミックスを主成分とし、中心気孔径が10〜100μmの範囲にある多孔質である被覆層と
を備え、
前記被覆層は、5〜10重量%のカルシウムを含むことを特徴とするインプラント材料を要旨とする。
これは、以下の現象が生じているためであると推測できる。すなわち、生体にセラミックスから成るインプラント材料を移植すると、通常は、インプラント材料の周囲におけるpHが3〜4.5になり、生体組織の増殖が阻害されるが、本発明のインプラント材料を用いれば、被覆層から溶出したカルシウムイオンが、pHを中性にする。pHが中性である条件は、生体組織(例えば骨組織)の増殖が進みやすい条件であるので、結果として、本発明のインプラント材料を用いれば、インプラント材料と生体組織との結合が短時間で行われる。
前記部分安定化ジルコニアとしては、例えば、イットリアを添加することによりジルコニアを部分安定化したものが挙げられる。イットリアの添加量は2〜4モルが好適であり、特に、3モルが好適である。
本発明のインプラント材料は、例えば、歯科、整形外科、形成外科、口腔外科等の分野において、人工歯、人工骨として用いることができる。
(2)請求項2の発明は、
前記被覆層よりも上層に、ハイドロキシアパタイドを含むハイドロキアパタイト層を備えることを特徴とする請求項1記載のインプラント材料を要旨とする。
前記被覆層を構成するセラミックスが、ジルコニアであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプラント材料を要旨とする。
図1及び図2に基づいて、歯科用インプラントボディ1の構成を説明する。図1はインプラントボディ1の正面図であり、図2は、図1のA−A断面における縦断面図である。
(i) 埋設部1aの製造方法
円筒状の3molイットリア安定ジルコニアセラミックス成形体を粉末プレス法により作成した。次に、この成形体を炉の中で1300℃にて焼成し、セラミックス焼結体を得た。このセラミックス焼結体を、ダイヤモンドツールを研削治具として有するマシニングセンターにより、図1及び図2に示す形状に機械加工し、基材3を得た。基材3におけるジルコニアの平均結晶粒子径は0.3μmであった。
埋設部1aにおける基材3の製造方法と同様にして、露出部1bを製造した。すなわち、円筒状の3molイットリア安定ジルコニアセラミックス成形体を粉末プレス法により作成し、この成形体を炉の中で1300℃にて焼成したセラミックス焼結体を、ダイヤモンドツールを研削治具として有するマシニングセンターにより、図1及び図2に示す露出部1bの形状に機械加工した。
露出部1bの下端を埋設部1aにおける孔部9に挿入し、インプラントボディ1を完成した。
基本的には前記実施例1と同様であるが、一部を変更した比較例1〜16のインプラントボディ1を製造した。それらの構成を表2に示す。
また、基本的には前記実施例5と同様であるが、一部を変更した実験例1のインプラントボディ1を製造した。その構成を表2に示す。実験例1では、基材3を構成する、イットリアを3モル含む部分安定化ジルコニアの平均結晶粒子径を0.009μmとした。
(発明の効果を確かめるための試験)
各実施例、比較例、及び実験例で製造したインプラントボディ1、又はそれらと同様に製造されたが、形状のみ異なるものを試験体とし、次の試験を行った。
(i)曲げ強度及び耐乳酸性の試験
各実施例及び比較例のインプラントボディ1における埋設部1aと同様に製造した、幅5mm、長さ30mm、肉厚1mmの試験体を用意した。この試験体の曲げ強度を、万能試験機(INSTORON5882、インストロン製)を用い、クロスヘッドの速度0.5mm/min、支点間距離20mmの条件で測定した。曲げ強度の値に応じて、以下の基準で曲げ強度を評価した。
○:600〜800MPa
△:300〜600MPa
×:300MPa未満
(ii)耐乳酸性の試験
前記(i)で曲げ強度を測定した試験体を、濃度1%の乳酸溶液中に5ヶ月間浸漬してか
ら、再び、同様の方法で曲げ試験を行った。浸漬前の曲げ強度を100としたときにおける浸漬後の曲げ強度に応じて、以下の基準で耐乳酸性を評価した。
△:浸漬後の曲げ強度が60〜94の範囲にある
×:浸漬後の曲げ強度が60未満である
(iii)溶出性試験
各実施例及び比較例で製造したインプラントボディ1のうち、埋設部1aを、濃度1%の乳酸溶液70ml中に5ヶ月間浸漬した。このとき、溶液中に溶出した基材3の成分(ジルコニア、アルミナ、チタン)をプラズマ発光分析装置(ICPS−7510、島津製作所)にて検出した。そして、溶出量に応じて、以下の基準で、溶出性を評価した。
○:溶出濃度が0.5〜1.0ppm
△:溶出濃度が1.0〜10ppm
×:溶出濃度が10ppmを超える
(iv)生体親和性試験
ラット脛骨に埋設部1aを埋入し、4週間が経過した時点で、埋設部1aと骨との接触具合を測定した。そして、以下の基準で、生体親和性を評価した。
○:骨と70〜90%接触
△:骨と50〜70%接触
×:骨との接触は50%未満
試験結果を上記表1及び表2に示す。表1及び表2から明らかなように、実施例1〜6のインプラントボディは、いずれの試験においても優れていた。
また、比較例3、6、12では、多孔質の被覆層を有しないことにより、曲げ強度が低い。
また、比較例8では、被覆層におけるカルシウム含有量が少なく、且つハイドロキシアパタイト層が形成されていないため、生体親和性において劣っている。
また、比較例10では、被覆層における中心気孔径が大きすぎるため、曲げ強度が低い。
また、比較例13〜15では、基材がアルミナ又はチタンであることにより、耐乳酸性及び溶出性において劣っている。さらに、比較例15では、カルシウムを含有する被覆層も、ハイドロキシアパタイト層も形成されていないため、生体親和性において劣っている。
実験例1では、基材3を構成する、イットリアを3モル含む部分安定化ジルコニアの平均結晶粒子径が0.009μmであるため、耐乳酸性、曲げ強度においてやや劣っている。
例えば、インプラントボディ1は、埋設部1aと露出1bとが一体に形成されたものであってもよい。この場合、被覆層5及びハイドロキシアパタイト層は、インプラントボディ1の外周面全体に形成してもよいし、あるいは、埋設部1aに相当する領域にのみ形成してもよい。
1a・・・埋設部
1b・・・露出部
3・・・基材
5・・・被覆層
7・・・ハイドロキシアパタイト層
9・・・孔部
11・・・ネジ溝
13・・・ナット部
Claims (3)
- 平均結晶粒子径が0.3μm以下である部分安定化ジルコニアを主成分する基材と、
セラミックスを主成分とし、中心気孔径が10〜100μmの範囲にある多孔質である被覆層と
を備え、
前記被覆層は、5〜10重量%のカルシウムを含むことを特徴とするインプラント材料。 - 前記被覆層よりも上層に、ハイドロキシアパタイドを含むハイドロキアパタイト層を備えることを特徴とする請求項1記載のインプラント材料。
- 前記被覆層を構成するセラミックスが、ジルコニアであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプラント材料。
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