以下、本実施形態では、樹脂シートを利用して製造するLEDユニットおよびその製造方法にてついて説明してから、樹脂シートのカット方法について説明する。
図4〜6に示すように、LEDユニットAは、LEDチップ10および当該LEDチップ10が一表面側に実装された実装基板20を有する複数の発光装置1と、各発光装置1における実装基板20の他表面側に配置され実装基板20が、フィラーを含有した熱硬化性樹脂層91,93を介して接合された金属製の放熱部材100とを備えている。
ここにおいて、放熱部材100は、円板状の形状であり、熱伝導率の高い金属(例えば、Al、Cuなど)により形成されている。なお、放熱部材100の形状は特に限定するものではなく、例えば、矩形板状でもよい。
上述の発光装置1は、LEDチップ10と、一表面側にLEDチップ10への給電用の導体パターン23,23を有しLEDチップ10が上記一表面側に実装された矩形板状の実装基板20とを備えている。また発光装置1は、LEDチップ10から放射された光の配光を制御するドーム状の光学部材60を備えている。この光学部材60は、透光性材料により形成されており、実装基板20との間にLEDチップ10を収納する形で実装基板20の上記一表面側に固着されている。また、発光装置1は、光学部材60と実装基板20とで囲まれた空間に充実されLEDチップ10および当該LEDチップ10に電気的に接続された複数本(本実施形態では、2本)のボンディングワイヤ14(図5参照)を封止した透光性封止材(例えば、シリコーン樹脂など)からなる封止部50を備えている。また、発光装置1は、LEDチップ10から放射され封止部50および光学部材60を透過した光によって励起されてLEDチップ10の発光色とは異なる色の光を放射する蛍光体および透光性材料により形成されたドーム状の色変換部材70を備えている。この色変換部材70は、実装基板20の上記一表面側において実装基板20との間にLEDチップ10などを囲む形で配設されている。ここにおいて、色変換部材70は、実装基板20の上記一表面側において光学部材60の光出射面60bとの間に空気層80が形成されるように配設されている。また、実装基板20は、上記一表面において光学部材60の外側に、光学部材60を実装基板20に固着する際に上記空間から溢れ出た透光性封止材を堰き止める環状の堰部27が突設されている。
LEDチップ10は、青色光を放射するGaN系青色LEDチップであり、結晶成長用基板としてサファイア基板に比べて格子定数や結晶構造がGaNに近く且つ導電性を有するn形のSiC基板を用いており、SiC基板の主表面側にGaN系化合物半導体材料により形成されて例えばダブルへテロ構造を有する積層構造部からなる発光部がエピタキシャル成長法(例えば、MOVPE法など)により成長されている。ここで、LEDチップ10は、一表面側(図5における上面側)にアノード電極(図示せず)が形成され、他表面側(図5における下面側)にカソード電極が形成されている。上記カソード電極および上記アノード電極は、Ni膜とAu膜との積層膜により構成してある。上記カソード電極および上記アノード電極の材料は特に限定するものではなく、良好なオーミック特性が得られる材料であればよく、例えば、Alなどを採用してもよい。LEDチップ10の構造は特に限定するものではなく、例えば、結晶成長用基板の主表面側に発光部などをエピタキシャル成長し、その後、発光部を支持する支持基板(例えば、Si基板など)を発光部に固着し、結晶成長用基板などを除去した構造でもよい。
実装基板20は、熱伝導性材料からなりLEDチップ10が搭載される矩形板状の伝熱板21と、伝熱板21の一面側(図5における上面側)に例えばポリオレフィン系の固着シート29(図6参照)を介して固着された矩形板状のフレキシブルプリント配線板からなる配線基板22とで構成されている。この実装基板20は、配線基板22の中央部に伝熱板21におけるLEDチップ10の実装面(上記一面の一部)を露出させる矩形状の窓孔24が形成されており、LEDチップ10が窓孔24の内側に配置された後述のサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されている。したがって、LEDチップ10で発生した熱が配線基板22を介さずにサブマウント部材30および伝熱板21に伝熱されるようになっている。ここにおいて、伝熱板21の上記一面には、サブマウント部材30の位置決め精度を高めるためのアライメントマーク21c(図6参照)が形成されている。
なお、伝熱板21の熱伝導性材料としてCuを採用しているが、Cuに限らず、例えば、Alなどを採用してもよい。また、LEDチップ10の発光部が結晶成長用基板よりも伝熱板21から離れた側となるように伝熱板21に搭載されているが、LEDチップ10の発光部が結晶成長用基板よりも伝熱板21に近い側となるように伝熱板21に搭載するようにしてもよい。光取り出し効率を考えた場合には、発光部を伝熱板21から離れた側に配置することが望ましいが、本実施形態では結晶成長用基板と発光部とが同程度の屈折率を有しているので、発光部を伝熱板21に近い側に配置しても光の取り出し損失が大きくなりすぎることはない。
上述の配線基板22は、ポリイミドフィルムからなる絶縁性基材22aの一表面側に、LEDチップ10への給電用の一対の導体パターン23,23が設けられるとともに、各導体パターン23,23および絶縁性基材22aにおいて導体パターン23,23が形成されていない部位を覆う白色系のレジスト(樹脂)からなる保護層26が積層されている。したがって、LEDチップ10の側面から放射され保護層26の表面に入射した光が保護層26の表面で反射されるので、LEDチップ10から放射された光が配線基板22に吸収されるのを防止することができ、外部への光取り出し効率の向上による光出力の向上を図れる。なお、各導体パターン23,23は、絶縁性基材22aの外周形状の半分よりもやや小さな外周形状に形成されている。また、絶縁性基材22aの材料としては、FR4、FR5、紙フェノールなどを採用してもよい。
保護層26は、配線基板22の窓孔24の近傍において各導体パターン23,23の2箇所が露出し、配線基板22の周部において各導体パターン23,23の1箇所が露出するようにパターニングされている。各導体パターン23,23は、配線基板22の窓孔24近傍において露出した2つの矩形状の部位が、ボンディングワイヤ14が接続される端子部23a,23a(図5および図6参照)を構成している。また、各導体パターン23,23は、配線基板22の周部において露出した円形状の部位が、外部接続用電極部23b,23b(図5および図6参照)を構成している。なお、配線基板22の導体パターン23,23は、Cu膜とNi膜とAu膜との積層膜により構成されている。また、2つの外部接続用電極部23bのうちLEDチップ10の上記アノード電極が電気的に接続される外部接続用電極部23b(図6における右側の外部接続用電極部23b)には「+」の表示が形成されている。一方、LEDチップ10の上記カソード電極が電気的に接続される外部接続用電極部23b(図6における左側の外部接続用電極部23b)には「−」の表示が形成されている。しかして、発光装置1における両外部接続用電極部23b,23bの極性を視認することができ、誤接続を防止することができる。
ところで、LEDチップ10は、LEDチップ10と伝熱板21との線膨張率の差に起因してLEDチップ10に働く応力を緩和する上述のサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されている。ここで、サブマウント部材30は、LEDチップ10のチップサイズよりも大きなサイズの矩形板状に形成されている。
サブマウント部材30は、上記応力を緩和する機能だけでなく、LEDチップ10で発生した熱を伝熱板21においてLEDチップ10のチップサイズよりも広い範囲に伝熱させる熱伝導機能を有している。したがって、発光装置1は、LEDチップ10がサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されているので、LEDチップ10で発生した熱をサブマウント部材30および伝熱板21を介して効率良く放熱させることができるとともに、LEDチップ10と伝熱板21との線膨張率差に起因してLEDチップ10に働く応力を緩和することができる。
サブマウント部材30の材料としては、熱伝導率が比較的高く且つ絶縁性を有するAlNを採用している。これに対し、LEDチップ10は、上記カソード電極がサブマウント部材30におけるLEDチップ10側の表面に設けられ上記カソード電極と接続される電極パターン(図示せず)および金属細線(例えば、金細線、アルミニウム細線など)からなるボンディングワイヤ14を介して一方の導体パターン23と電気的に接続され、上記アノード電極がボンディングワイヤ14を介して他方の導体パターン23と電気的に接続されている。なお、LEDチップ10とサブマウント部材30とは、例えば、SnPb、AuSn、SnAgCuなどの半田や、銀ペーストなどを用いて接合すればよいが、AuSn、SnAgCuなどの鉛フリー半田を用いて接合することが好ましく、サブマウント部材30がCuであって、AuSnを用いて接合する場合には、サブマウント部材30およびLEDチップ10における接合表面にあらかじめAuまたはAgからなる金属層を形成する前処理が必要である。また、サブマウント部材30と伝熱板21とは、例えば、AuSn、SnAgCuなどの鉛フリー半田を用いて接合することが好ましいが、AuSnを用いて接合する場合には、伝熱板21における接合表面にあらかじめAuまたはAgからなる金属層を形成する前処理が必要である。
サブマウント部材30の材料はAlNに限らず、線膨張率が結晶成長用基板の材料である6H−SiCに比較的近く且つ熱伝導率が比較的高い材料であればよく、例えば、複合SiC、Si、Cu、CuWなどを採用してもよい。なお、サブマウント部材30は、上述の熱伝導機能を有しており、伝熱板21におけるLEDチップ10側の表面の面積はLEDチップ10における伝熱板21側の表面の面積よりも十分に大きいことが望ましい。
また、発光装置1は、サブマウント部材30の厚み寸法を、当該サブマウント部材30の表面が配線基板22の保護層26の表面よりも伝熱板21から離れるように設定してあり、LEDチップ10から側方に放射された光が配線基板22の窓孔24の内周面を通して配線基板22に吸収されるのを防止することができる。なお、サブマウント部材30においてLEDチップ10が接合される側の表面においてLEDチップ10との接合部位の周囲に、LEDチップ10から放射された光を反射する反射膜を形成すれば、LEDチップ10の側面から放射された光がサブマウント部材30に吸収されるのを防止することができ、外部への光取出し効率をさらに高めることが可能となる。ここで、反射膜は、例えば、Ni膜とAg膜との積層膜により構成すればよい。
上述の封止部50の材料である透光性封止材としては、シリコーン樹脂を用いているが、シリコーン樹脂に限らず、例えばアクリル樹脂、ガラスなどを用いてもよい。
光学部材60は、透光性材料(例えば、シリコーン樹脂、ガラスなど)の成形品であってドーム状に形成されている。ここで、本実施形態では、光学部材60をシリコーン樹脂の成形品により構成しているので、光学部材60と封止部50との屈折率差および線膨張率差を小さくすることができる。
ところで、光学部材60は、光出射面60bが、光入射面60aから入射した光を光出射面60bと上述の空気層80との境界で全反射させない凸曲面状に形成されており、LEDチップ10と光軸が一致するように配置されている。したがって、LEDチップ10から放射され光学部材60の光入射面60aに入射された光が光出射面60bと空気層80との境界で全反射されることなく色変換部材70まで到達しやすくなり、全光束を高めることができる。なお、LEDチップ10の側面から放射された光は封止部50および光学部材60および空気層80を伝搬して色変換部材70まで到達し色変換部材70の蛍光体を励起したり蛍光体には衝突せずに色変換部材70を透過したりする。また、光学部材60は、位置によらず法線方向に沿って肉厚が一様となるように形成されている。
色変換部材70は、シリコーン樹脂のような透光性材料とLEDチップ10から放射された青色光によって励起されてブロードな黄色系の光を放射する粒子状の黄色蛍光体とを混合した混合物の成形品により構成されている(つまり、色変換部材70は、蛍光体を含有している)。したがって、発光装置1は、LEDチップ10から放射された青色光と黄色蛍光体から放射された光とが色変換部材70の外面70bを通して放射されることとなり、白色光を得ることができる。なお、色変換部材70の材料として用いる透光性材料は、シリコーン樹脂に限らず、例えば、アクリル樹脂、ガラス、有機成分と無機成分とがnmレベルもしくは分子レベルで混合、結合した有機・無機ハイブリッド材料などを採用してもよい。また、色変換部材70の材料として用いる透光性材料に混合する蛍光体も黄色蛍光体に限らず、例えば、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを混合しても白色光を得ることができる。
ここで、色変換部材70は、内面70aが光学部材60の光出射面60bに沿った形状に形成されている。したがって、光学部材60の光出射面60bの位置によらず法線方向における光出射面60bと色変換部材70の内面70aとの間の距離が略一定値となっている。なお、色変換部材70は、位置によらず法線方向に沿った肉厚が一様となるように成形されている。また、色変換部材70は、実装基板20側の端縁(開口部の周縁)を実装基板20に対して、例えば接着剤(例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)を用いて固着すればよい。
ところで、上述の発光装置1の製造方法にあたっては、例えば、LEDチップ10が接合されたサブマウント部材30を伝熱板21に共晶接合するサブマウント搭載工程を行い、その後、配線基板22を伝熱板21の上記一面側に固着する配線基板固着工程を行う。その後、LEDチップ10と各導体パターン23,23とをそれぞれ2本のボンディングワイヤ14を介して電気的に接続した後、配線基板22の窓孔24に連続して形成されている封止材注入孔28からサブマウント部材30と配線基板22との隙間に封止部50の一部となる液状の透光性封止材(例えば、シリコーン樹脂)を注入した後に硬化させ、その後、ドーム状の光学部材60の内側に上述の封止部50の残りの部分となる液状の透光性封止材(例えば、シリコーン樹脂)を注入してから、光学部材60を実装基板20における所定位置に配置して透光性封止材を硬化させることにより封止部50を形成するのと同時に光学部材60を実装基板20に固着し、その後、色変換部材70を実装基板20に固着するような製造方法が考えられるが、このような製造方法でも、製造過程において封止部50に気泡(ボイド)が発生する恐れがあるので、光学部材60に液状の透光性封止材を多めに注入する必要がある。
そこで、本実施形態における発光装置1では、上述のように、実装基板20の上記一表面において光学部材60の外側に、光学部材60を実装基板20に固着する際に上記空間(光学部材60と実装基板20とで囲まれた空間)から溢れ出た透光性封止材を堰き止める環状(本実施形態では、円環状)の堰部27を突設してある。ここにおいて、堰部27は、白色系のレジストにより形成されている。また、堰部27は、当該堰部27の内周面から内方へ延出し当該堰部27の中心と光学部材60の中心軸とをセンタリングする複数(本実施形態では、4つ)のセンタリング用爪部27bが周方向に離間して等間隔で設けられ、且つ、色変換部材70の位置決め部を兼ねている。ここで、上述のセンタリング用爪部27bの数は4つに限定するものではないが、少なくとも3つ設けることが望ましく、堰部27と光学部材60との間に溜めることが可能な封止樹脂の許容量を多くするためにセンタリング用爪部27bの幅寸法は小さいほうが望ましい。
しかして、本実施形態における発光装置1では、製造過程で封止部50にボイドが発生しにくくなり、信頼性が高く且つ光出力が大きな発光装置1を提供することができる。なお、図7において光学部材60と堰部27との間に介在している封止材部50bは、実装基板20の上記一表面側において光学部材60と堰部27と保護層26とで囲まれた空間に溜まった透光性封止材を硬化させることにより形成されている。
また、色変換部材70は、実装基板20側の端縁に、堰部27に係合する切欠部71が全周に亘って形成されている。したがって、本実施形態における発光装置1では、実装基板20に対する色変換部材70の位置決め精度を高めることができ、また、色変換部材70と光学部材60との間隔を短くすることができる。なお、切欠部71は、色変換部材70の端縁側と内面70a側とが開放されている。
以下、LEDユニットAの製造方法について、発光装置1の実装基板20と金属製放熱部材100とを接合する接合工程について図3を参照しながら説明する。
まず、図3(a)に示すように密封された包装容器110内に冷凍保存されている樹脂シート90(図3(b)参照)を結露しないように常温下において包装容器110内で自然解凍する解凍過程を行う。ここにおいて、樹脂シート90は、シリカやアルミナなどのフィラーを含有し且つ加熱時に低粘度化するとともに流動性が高くなる性質を有するエポキシ樹脂層からなる熱硬化性樹脂層91とPETフィルムからなるプラスチックフィルム92とが積層されたものである(有機グリーンシートとも呼ばれている)。熱硬化性樹脂層91は、フィラーとしてシリカが高密度(例えば、85wt%)に充填されたエポキシ樹脂層により構成してあるが、フィラーの材料やフィラーの密度は特に限定するものではない。また、フィラーを含有させる熱硬化性樹脂もエポキシ樹脂に限らず、例えば、特許文献1,2に開示された他の樹脂でもよい。また、包装容器110としては、ポリエステルフィルムとアルミニウム箔とポリエチレンフィルムとの3層構造を有し、防湿性、遮光性、および酸素バリヤ性に優れた密封チャック付きの袋であるアルミラミネートバッグを用いている。ここで、樹脂シート90を密封された包装容器110内で自然解凍しているのは、冷凍状態で包装容器110を開封して解凍すると、包装容器110内で結露が生じ、その水分が樹脂シート90に吸収されてしまい、後述のように樹脂シート90を加熱して熱硬化性樹脂層91を溶融させる際に、熱硬化性樹脂層91中の水分が突沸し、空隙の発生原因となってしまうからである。
上述の解凍過程の後、樹脂シート90のプラスチックフィルム92を放熱部材100に接する状態とする第1の重ね合わせ過程を行ってから、ホットプレート120上に放熱部材100を載置し放熱部材100と樹脂シート90とを熱硬化性樹脂層91を硬化温度(例えば、160℃)よりも低く且つ当該熱硬化性樹脂層91を低粘度化可能な第1の規定温度(例えば、110℃〜120℃)で第1の所定時間(例えば、1分程度)だけ加熱することで樹脂シート90の熱硬化性樹脂層91を溶融させて低粘度化する低粘度化過程を行う(図3(b))。
上述の低粘度化過程の後、樹脂シート90を裏返して熱硬化性樹脂層91と放熱部材100とが接する状態とする第2の重ね合わせ過程を行い、続いて、図3(c)に示すように、樹脂シート90のプラスチックフィルム92側において円柱状のゴムローラ130を樹脂シート90の中央部から端部に向かって徐々に移動させながら樹脂シート90を所定圧力(例えば、0.5MPa)で加圧するとともに上記硬化温度よりも低い第2の規定温度(例えば、110℃〜120℃)で加熱して樹脂シート90を放熱部材100に仮固着する仮固着過程(以下、第1の仮固着過程と称する)を行う。このようにゴムローラ130を樹脂シート90の中央部から端部に向かって徐々に移動(回転)させながら樹脂シート90を上記所定圧力で加圧するとともに上記第2の規定温度で加熱することにより、放熱部材100と熱硬化性樹脂層91との界面に空隙が発生するのを防止することができる。ここで、ゴムローラ130の材料としては、フッ素ゴムもしくはシリコーンゴムなどの耐熱性に優れた弾性材料を用いることが好ましく、このような弾性材料を採用することで、ゴムローラ130の熱劣化を防止することができる。なお、図3(c)中の矢印D1は、ゴムローラ130の移動方向を示している。
上述の第1の仮固着過程の後、樹脂シート90が仮固着されている放熱部材100を自然冷却する自然冷却過程を行い、続いて、熱硬化性樹脂層91からプラスチックフィルム92を剥離するフィルム剥離過程を行う(図3(d))。なお、図3(d)中の矢印E1は、プラスチックフィルム92を剥がす方向を示している。
上述のフィルム剥離過程の後、熱硬化性樹脂層91が仮固着されている放熱部材100を乾燥炉150内に投入し熱硬化性樹脂層91を上記硬化温度以上の温度(例えば、170℃)で第2の所定時間(例えば、1.5時間程度)だけ加熱して硬化させることで熱硬化性樹脂層91を放熱部材100に本固着する本固着過程(以下、第1の本固着過程と称する)を行う(図3(e))。以下では、放熱部材100に本固着された熱硬化性樹脂層91を第1の熱硬化性樹脂層91とも称する。
第1の本固着過程の後、上述の樹脂シート90(以下、第1の樹脂シート90とも称する)とは別途用意した第1の樹脂シート90と同じ組成の第2の樹脂シート(図示せず)の熱硬化性樹脂層93(以下、第2の熱硬化性樹脂層93とも称する)(図3(f)参照)からプラスチックフィルムを剥離し、第2の熱硬化性樹脂層93を加熱した状態で第1の熱硬化性樹脂層91上に載置してから、第2の熱硬化性樹脂層93上に発光装置1を載置し、実装基板20および放熱部材100を加熱した状態で色変換部材70や外部接続用電極部23b,23bなどを避けて加圧することで発光装置1を放熱部材100に仮固着する第2の仮固着過程を行う。その後、複数の発光装置1が仮固着された放熱部材100を乾燥炉150(図3(e)参照)内に投入し第2の熱硬化性樹脂層93を上記硬化温度以上の温度(例えば、170℃)で第3の所定時間(例えば、1.5時間程度)だけ加熱して硬化させることで各発光装置1と放熱部材100とを本固着する第2の本固着過程を行うことにより、図3(f)に示すLEDユニットAを得る。
以上説明したLEDユニットAの製造方法によれば、放熱部材100に熱硬化性樹脂層91を固着するにあたっては、樹脂シート90のプラスチックフィルム92を放熱部材100に接する状態としてから、放熱部材100と樹脂シート90とを上記第1の規定温度で加熱することで樹脂シート90の熱硬化性樹脂層91を溶融させて低粘度化し、その後、樹脂シート90を裏返して熱硬化性樹脂層91と放熱部材100とが接する状態としてから、樹脂シート90のプラスチックフィルム92側において円柱状のゴムローラ130を樹脂シート90の中央部から端部に向かって徐々に移動(回転)させながら樹脂シート90を加圧するとともに上記第2の規定温度で加熱して樹脂シート90を放熱部材100に仮固着し、その後、熱硬化性樹脂層91からプラスチックフィルム92を剥離し、その後、熱硬化性樹脂層91を上記硬化温度以上の温度で硬化させることで熱硬化性樹脂層91を放熱部材100に本固着するので、熱硬化性樹脂層91と放熱部材100との界面に空隙が発生するのを抑制することができ、実装基板20と放熱部材100との間の熱抵抗を低減できる。
ところで、樹脂シート90を放熱部材100に固着するにあたっては、図8のように、真空プレス機200を用い、真空炉中で放熱部材100および樹脂シート90を加熱するとともに加圧するようにしてもよい。この場合、樹脂シート90のプラスチックフィルム92の平面サイズを熱硬化性樹脂層91の平面サイズよりも一回り大きくしてあることにより、熱硬化性樹脂層91が真空プレス機200に付着するのを防止することができる。
また、LEDユニットAの発光装置1を照明器具の光源として用いる場合には、複数の発光装置1をリード線や回路基板などを利用して直列接続したり並列接続したりすればよい。
また、上述のLEDユニットAでは、LEDチップ10として、発光色が青色の青色LEDチップを採用しているが、LEDチップ10から放射される光は青色光に限らず、例えば、赤色光、緑色光、紫色光、紫外光などでもよい。また、上述のLEDユニットAでは、サブマウント部材30に1個のLEDチップ10を実装するようにした発光装置1について例示したが、サブマウント部材30に実装するLEDチップ10の数は特に限定するものではなく、複数個でもよく、また、1個のサブマウント部材30に複数個のLEDチップ10を実装する場合、発光色が同じ1種類のLEDチップ10を実装するようにしてもよいし、発光色の異なる複数種のLEDチップ10を実装するようにしてもよい。
以下、樹脂シートのカット方法について図1および図2を参照しながら説明する。
本実施形態の樹脂シートのカット方法は、フィラーを含有する熱硬化性樹脂層91が剥離可能なプラスチックフィルム92に積層された多数個取り用の樹脂シート(多数個取り可能な樹脂シート)900を複数個の個片の樹脂シート90にカットする樹脂シートのカット方法である。
多数個取り用の樹脂シート900としては、例えば、溶融シリカからなるフィラーの充填量を85wt%としたエポキシ樹脂層からなる熱硬化性樹脂層91の厚みを100μm、PETフィルムからなるプラスチックフィルム92の厚みを75μmに設定した樹脂シート(パナソニック電工製の有機グリーンシート)を採用する場合、定尺ものとして、平面サイズが245mm角のもの、平面サイズが340mm角のもの、ロール状(帯状)のものとして、幅が245mmのもの、幅が340mmのもの、などを用いることができる。なお、多数個取り用の樹脂シート900のサイズは特に限定するものではない。また、熱硬化性樹脂層91やプラスチックフィルム92の厚みも特に限定するものではない。
多数個取り用の樹脂シート900に対して第1のレーザ光LB1を個片の樹脂シート90の所定形状(ここでは、直径が58.5mmの円形)の熱硬化性樹脂層91(図1(c)参照)の外周に沿って走査することにより多数個取り用の樹脂シート900の熱硬化性樹脂層91のみをカットするハーフカットを行う(図1(a)および図2(a)参照)。なお、このハーフカットを行うことにより、多数個取り用の樹脂シート900に切り込み溝91aを形成する。
続いて、第2のレーザ光LB2を上記所定形状よりも一回り大きな形状(ここでは、直径が61mmの円形)に沿って走査することにより多数個取り用の樹脂シート900をフルカットする(図1(b)および図2(b)参照)。なお、このフルカットを行うことにより、多数個取り用の樹脂シート900に厚み方向に貫通する切断溝91bを形成する。
その後、個片となった樹脂シート90において上記所定形状の熱硬化性樹脂層91の外側にある余分な熱硬化性樹脂層91を個片となった樹脂シート90のプラスチックフィルム92から剥離する(図1(c)参照)。
なお、個片の樹脂シート90の所定形状は円形に限らず、放熱部材100や発光装置1(電子部品)などの形状に応じて適宜設定すればよく、また、所定形状の円形および一回り大きな円形それぞれの直径も特に限定するものではない。
第1のレーザ光LB1および第2のレーザ光LB2のレーザ光源160としては、赤外レーザの一種であり発振波長(中心波長)が1064nmのYVO4レーザを用い、各レーザ光LB1,LB2の走査速度を5mm/sとしたが、レーザ光源160や走査速度などは特に限定するものではない。また、第1のレーザ光LB1を照射するレーザ光源160と第2のレーザ光LB2を照射するレーザ光源160とで別々のレーザ光源160を用いてもよい。いずれにしても、第1のレーザ光LB1によりハーフカットを行うハーフカット工程と第2のレーザ光LB2によりフルカットを行うフルカット工程とは、同じステージ上で連続して行うことがタクトタイムを短縮する点で好ましい。
また、多数個取り用の樹脂シート900をハーフカットおよびフルカットするにあたっては、多数個取り用の樹脂シート900を、上述のレーザ光源160を備えたレーザ加工装置(レーザ切断装置)のステージ上にセットする。
レーザ加工装置は、ステージとして、3軸方向(X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向)に移動可能なステージを用いており、上記所定形状などに応じてステージの位置を制御する適宜のプログラムが搭載されたマイクロコンピュータなどからなる制御装置(図示せず)を備えている。また、多数個取り用の樹脂シート900は、プラスチックフィルム92をステージ側として、ステージに接着テープ(粘着性樹脂テープ)で固定する。また、上述のレーザ加工装置は、ステージ上の多数個取り用の樹脂シート900を撮像するCCDカメラからなる撮像装置(図示せず)を備えており、上記制御装置は、上記撮像装置の出力に基づいて、レーザ光LB1,LB2が所定位置に照射されるようにステージを各軸方向に適宜移動させる。ここにおいて、レーザ加工装置では、多数個取り用の樹脂シート900をハーフカットした後にフルカットすることにより多数の個片の樹脂シート90が千鳥状の配列となるように、ステージを適宜移動させる。
また、上記所定形状の熱硬化性樹脂層91の外側にある余分な熱硬化性樹脂層91を個片となった樹脂シート90のプラスチックフィルム92から剥離するにあたっては、例えば、ピンセットを用いて剥離しているが、ロボットにより剥離するようにしてもよい。
以上説明した本実施形態の樹脂シートのカット方法によれば、多数個取り用の樹脂シート900に対して第1のレーザ光LB1を個片の樹脂シート90の所定形状の熱硬化性樹脂層91の外周に沿って走査することにより多数個取り用の樹脂シート900の熱硬化性樹脂層91のみをカットするハーフカットを行い、続いて、第2のレーザ光LB2を上記所定形状よりも一回り大きな形状に沿って走査することにより多数個取り用の樹脂シート900をフルカットし、個片となった樹脂シート90において上記所定形状の熱硬化性樹脂層91の外側にある余分な熱硬化性樹脂層91(熱硬化性樹脂層91の余肉部分)を個片となった樹脂シート90のプラスチックフィルム92から剥離するようにしているので、従来の第1の工程〜第3の工程を含むカット方法に比べて、タクトタイムの短縮が可能となり、しかも、上記所定形状が円形の場合に、従来の比べて、熱硬化性樹脂層91の余肉部分を少なくすることができるとともに千鳥取りが可能となり、あらかじめ決められた寸法(定尺)の多数個取り用の樹脂シート900からの材料取りが向上し、材料歩留まりの向上を図れる。また、Bステージの熱硬化性樹脂層91は、常温(25℃)下での放置時間が1〜2時間程度でも表面が乾燥してしまい割れたり、欠けたりすることがあるが、樹脂シート900や樹脂シート90は、タクトタイムを短縮することができるので、多数個取り用の樹脂シート900や個片となった樹脂シート90に割れや欠けが発生するのを抑制することが可能となる。