図1はこの発明にかかる薄膜形成システムの一実施形態を示す図である。より詳しくは、この薄膜形成システムを上部から見たレイアウト図である。また、図2はこの薄膜形成システムによる薄膜形成プロセスを示すフローチャートである。以下の説明においては、このシステムの奥行き方向(図1において左右方向)をX方向、幅方向(図1において上下方向)をY方向、高さ方向(図1紙面に直交する方向)をZ方向とする。
この薄膜形成システムは、半導体基板の表面に例えば絶縁膜としてのSOG(Spin-On-Glass)による薄膜を形成するためのシステムであり、より具体的には、樹脂製のシートフィルム上に薄膜材料を含む塗布液を塗布して薄膜を形成し、シートフィルムに担持された薄膜を基板表面に密着させて転写した後にシートフィルムを剥離除去することにより、基板表面に薄膜のみを残存させるものである。
すなわち、この薄膜形成システムにより実行される薄膜形成プロセスでは、図2に示すように、まずシートフィルムを収容したフィルムカセット、基板を収容した基板カセットおよびシートフィルムから取り外されたリングを収容するためのリングカセットが搬入される(ステップS10)。これに続いて、以下の各工程:フィルムカセットから取り出されたシートフィルムに薄膜材料を含む塗布液を塗布する塗布工程(ステップS20);これを乾燥させてシートフィルム上に薄膜を形成する乾燥工程(ステップS30);こうしてシートフィルム上に形成された薄膜を、基板カセットから取り出された基板に転写する転写工程(ステップS40);基板からシートフィルムのみを剥離して回収する剥離・回収工程(ステップS50)、を処理すべき基板の全数について行い(ステップS60)、処理済み基板を収容したカセットを搬出することで(ステップS70)、処理が完結する。
このシステムでは、図1に示すように一方側(図1のX方向左側)に、未処理の基板Wを収納した基板カセット11を外部から受け取るインデクサ部1が設けられている。一方、インデクサ部1の他方側(図1のX方向右側)には、Y方向に往復移動する基板搬送ロボット2が設置された第1搬送部TP1が設けられている。また、第1搬送部TP1を挟んでインデクサ部1とは反対側に、基板Wに対し後述する所定の処理を行ってその表面に薄膜を形成する薄膜形成部3が設けられている。この薄膜形成システムでは、当該システムを構成する上記各部が制御ユニット4からの制御指令に基づいて動作する。
薄膜形成部3では、X方向に沿って延びる第2搬送部TP2が設けられており、その両側には、上記した薄膜形成プロセスを実行するための種々の処理ユニット、すなわち、転写ユニット35、乾燥ユニット36、剥離ユニット10、回収ユニット50、反転ユニット31、塗布ユニット34、薬液キャビネット37、フィルムカセット載置台33およびリングカセット載置台32が配設されている。このような、搬送空間を挟んで複数の処理ユニットを並べて配置した薄膜形成システムは、処理ユニットの並べ替えや新たな処理ユニットの追加が容易であり、例えば特許文献2に記載のクラスターシステムと比較して、システムとしての柔軟性・拡張性に優れている。
第2搬送部TP2には、X方向に往復移動して基板Wや後述するリング体RFなどを各処理ユニット間で受け渡す主搬送ロボット70が設けられている。なお、第2搬送部TP2の天井部には例えばファンフィルタユニットによる送気ユニット39が設けられており、第2搬送部TP2内に清浄な空気のダウンフローを作り出している。すなわち、第2搬送部TP2内は送気ユニット39により雰囲気管理されている。
以下、上記各部の構造や動作について説明するが、これらの各ユニットのうち、反転ユニット31、塗布ユニット34、転写ユニット35および乾燥ユニット36としては、例えば前述した特許文献1(特開2003−100727号公報)に記載されたものと同一構造のものを用いることができるので、これらのユニットの構造については詳しい説明を省略する。
この薄膜形成システムでは、柔軟なシートフィルムをその形状を保ちながら搬送するために、前述した従来技術でも行われているようにリング状の保持枠を装着したリング体の状態でシステム内を移動させる。この実施形態では、従来技術の装置と同様に、シートフィルムがリングを装着された状態の「リング体」としてリングカセットに収容されて外部から搬入されてくる。
図3はリング体の構造を示す分解組立斜視図である。このリング体RFは、上部リングRupと下部リングRdwとで樹脂製のシートフィルムFの周縁部を挟み込むことによってシートフィルムFを保持したものである。上部リングRupおよび下部リングRdwは例えばアルミニウムにより同一径に形成された円環であり、このうち上部リングRup上面の一部には4枚の磁性体(例えば鉄または鉄系合金)材料からなるプレート91が取り付けられている。
また、上部リングRupには上記プレート91とは異なる位置に複数の永久磁石92が埋め込まれる一方、下部リングRdwにも同数の永久磁石93が埋め込まれている。永久磁石92と永久磁石93とは、上部リングRupと下部リングRdwとを重ね合わせたときに互いに相対する位置に取り付けられるとともに、互いに引き合う極性となっている。このため、上部リングRupおよび下部リングRdwが直接またはシートフィルムFを挟んで重ね合わせられると、永久磁石の吸着力によって上下リングが一体化される。
上部リングRupおよび下部リングRdwの外周面の各1箇所に、位置決め用の切り込み部94,95が設けられている。また、上部リングRupには複数の貫通孔96が穿設される一方、下部リングRdwにも複数の貫通孔97が設けられている。上部リングRupの貫通孔96と、下部リングRdwの貫通孔97とは互いに異なる位置に設けられており、上部リングRupと下部リングRdwとを一体化させたときにそれぞれの貫通孔が重なり合うことがないようになっている。これらの貫通孔96,97の機能については後の説明で明らかにする。
図4は主搬送ロボットの構造を示す図である。より詳しくは、同図(a)は主搬送ロボット70を上方より見た平面図であり、同図(b)はその側面図である。この主搬送ロボット70は多関節ロボットであり、ロボット本体701と、そのロボット本体701の頂部に取り付けられた2本の多関節アーム702,703とを備えている。このロボット本体701は、ベース部710に対し、回転軸AX1回りに回転自在で、かつZ方向に伸縮自在に取り付けられている。ベース部710は、第2搬送部TP2内にX方向に沿って敷設されたガイドレール720に沿ってX方向に往復移動自在となっている。
また、多関節アーム702の先端部には基板Wをその周縁で保持するための基板ハンド704が取り付けられている。基板ハンド704の上面には基板Wの外周部を把持するための把持爪704aが設けられている。すなわち、基板ハンド704は、その上面側に基板Wを載置して基板Wを保持することができる。また、もう一方の多関節アーム703の先端部には上部リングRupを磁気吸着して保持するためのリングハンド705が取り付けられている。
図5はリングハンドのより詳細な構造を示す図である。このリングハンド705には、図4および図5(a)に示すように、上部リングRupに取り付けられた4つのプレート91に対応して4つの電磁石706が固設されている。制御ユニット4からの制御指令に応じて電磁石706が励磁されると、上部リングRupのプレート91を電磁吸着して上部リングRupまたは上部リングRupに下部リングRdwやシートフィルムFが一体化されたリング体RFを保持することができる。また電磁石706の励磁を停止することで、上部リングRupまたはリング体RFの保持を解除することができる。
また、上部リングRupに穿設された貫通孔96に対応する位置には、上下リングを分離させるための突き出し機構707が設けられている。図5(b)は図5(a)のA−A’線断面図である。図5(b)に示すように、突き出し機構707は内部に突き出しピン708を収容しており、制御ユニット4からの制御指令に応じてリングハンド705下面から下向きに突き出しピン708を突出させることができる。図5(c)に示すように、突き出しピン708が下向きに突き出された状態では、突き出しピン708の先端が上部リングRupに設けられた貫通孔96を通して下部リングRdwの上面を下向きに押し出す。これにより、永久磁石92,93によって電磁吸着されている上部リングRupと下部リングRdwとが分離される。
このとき、上部リングRupがリングハンド705に保持された状態で下部リングRdwのみを分離するために必要な条件は、プレート91に対する電磁石706の電磁吸引力の合計をF1、突き出しピン708が下部リングRdwを押す力の合計をF2、永久磁石92,93間の電磁吸引力の合計をF3としたとき、
F1 >F2 > F3
の関係が成立することである。なお、プレート91に対する電磁石706の電磁吸引力F1については、上部リングRup、下部リングRdw、薄膜を形成されたシートフィルムFおよび基板Wの総重量よりも大きくなければならない。電磁吸着に代えて、真空吸着、すなわちバキュームチャックを用いてもよい。
ここで、この薄膜形成システムによる薄膜形成プロセス(図2)のうち、最初から転写工程まで(ステップS10〜S40)の動作について説明する。剥離ユニット10および回収ユニット50の構造と、これらを用いた剥離・回収工程(ステップS50)以降のプロセスについては後に詳述する。
まず最初に、外部からフィルムカセットおよび基板カセットが搬入される(ステップS10)。基板カセットはインデクサ部1に設置される一方、フィルムカセットはフィルムカセット載置台33に設置される。前記したように、フィルムカセットにはシートフィルムFと上下リングRup、Rdwとを一体化したリング体RFが複数組収容されている。続いて塗布工程(ステップS20)が実行される。
図6は塗布工程における処理を示すフローチャートである。また、図7および図8は塗布工程における動作を模式的に示す図である。まず、塗布ユニット34内に1組のリング体RFを設置する(ステップS201)。より具体的には、主搬送ロボット70が、リングカセットに収容されたリング体RFの1組を吸着保持して取り出し、これを塗布ユニット34内に搬入し、図7(a)に示すように、塗布ユニット34内に設けられた円筒形のステージ341に載置する。次いで、突き出し機構707を作動させて上下リングの結合を切り離し、図7(b)に示すように、上部リングRupのみを塗布ユニット34の外部へ搬出する(ステップS202)。その結果、下部リングRdwとシートフィルムFが塗布ユニット34のステージ341上に設置された状態となる。なお、リングハンド705は上部リングRupを吸着保持した状態で待機している。
ステージ341は略鉛直軸周りに回転自在となっており、その中央部341aの上面は平坦に仕上げられている。中央部341aは周縁部341bの上面に対して下部リングRdwの厚み分だけ盛り上がっており、その直径は下部リングRdwの内径とほぼ等しくなっている。そのため、ステージ341上に下部リングRdwが設置された状態では、ステージ341の中央部341aと下部リングRdwの上面とが揃ってほぼ単一の平面をなす。また、ステージ341の中央部341aおよび周縁部341bには真空吸着機能が備えられており、載置された物体を真空吸着することができる。さらに、中央部341aと周縁部341bとでそれぞれ独立して吸着をオン・オフすることができる。リング体RFがステージ341に設置されると吸着をオンにすることで、シートフィルムFおよび下部リングRdwをステージ341上に固定する。ステージ341の中央部341aと下部リングRdwとは上面の高さが揃っているので、シートフィルムFは平らな状態でステージ341上に吸着保持される。
続いてスピンコート法によりシートフィルムFに薄膜材料を含む塗布液を塗布する(ステップS203)。すなわち、図7(c)に示すように、ステージ341に連結された回転軸342を図示しない駆動機構により回転駆動することで、ステージ341を回転させる。そして、その回転中心上方に設けた塗布ノズル343から、薄膜材料としてのSOGを含み薬液供給キャビネット37から供給される塗布液を所定量シートフィルムF上に供給することにより、シートフィルムF上に薄く均一な塗布液の層を形成する。
薄膜材料の塗布後、続いてエッジリンス処理を行う(ステップS204)。すなわち、ステージ341を回転させながらシートフィルムFの周縁部に向けて設置されたエッジリンスノズル344から洗浄液を供給することにより、シートフィルムFの周縁部に付着した塗布液を洗い流す。これにより、シートフィルムFには、その周縁部を除く表面に薄膜Rが担持されることとなる。
次に、上部リングRupを塗布ユニット34内に戻し入れ、下部リングRdwと結合させてリング体RFを再形成する(ステップS205)。すなわち、図8(a)および(b)に示すように、リングハンド705に保持された状態で塗布ユニット34外に待機させていた上部リングRupを再び塗布ユニット34内に搬入し、ステージ341上の下部リングRdwに重ね合わせて一体化させる。これにより、薄膜Rを担持したシートフィルムFを上部リングRupと下部リングRdwとで挟持したリング体RFが再形成される。
こうして形成されたリング体RFについては、図8(c)に示すように、リングハンド705により保持したまま塗布ユニット34から搬出し(ステップS206)、乾燥ユニット36に搬入してシートフィルムF上の薄膜Rを完全に乾燥させる(ステップS70)。乾燥ユニット36の構成およびそれにより実行される乾燥工程については特許文献1(特開2003−100727号公報)に詳しく記載されているのでここでは説明を省略する。
図9は転写工程における処理を示すフローチャートである。また、図10は転写工程における動作を模式的に示す図である。転写ユニット35の構造は特許文献1(特開2003−100727号公報)に記載されたものと同一である。転写工程では、まずリング体RFを転写ユニット35に搬入する(ステップS401)。すなわち、図10(a)に示すように、主搬送ロボット70がリングハンド705により乾燥ユニット36から取り出した乾燥処理後のリング体RFを転写ユニット35内のステージ(第2のステージ)352に設置する。
続いて、基板Wをフェースダウン状態で搬入し、シートフィルムF上の薄膜Rに密着させる(ステップS402)。基板カセット11内では、基板Wは薄膜を形成すべき表面Wfを上向きにして、すなわちフェースアップ状態で保管されている。この基板Wは基板搬送ロボット2により基板カセット11から1枚ずつ取り出され反転ユニット31に受け渡される。反転ユニット31により表面Wfを下向き、裏面Wbを上向きのフェースダウン状態に反転された基板Wを、主搬送ロボット70が基板ハンド704の上面で受け取り、図10(b)に示すように、これを第2のステージ352の上方に設けられた大1のステージ351の直下に搬送しその下面に保持させる。
さらに、図10(c)に示すように、第2のステージ352と、第1のステージ351とでシートフィルムFと基板Wとを挟み込んで加圧するとともに、それぞれのステージに設けたヒータ353,354により加熱する。これにより、シートフィルムF上に担持された薄膜Rが基板Wの表面Wfに転写される(ステップS403)。そして、第1および第2のステージ351,352を離間させた後、図10(d)に示すように、リング体RFに基板Wが一体化されてなる構造体をリングハンド705により転写ユニット35から取り出し(ステップS404)、続いてこれを剥離ユニット10に搬入し、基板WからシートフィルムFを剥離する。
次に、剥離ユニット10および回収ユニット50の構造と、それらにより実行される剥離・回収工程(図2のステップS50)について詳しく説明する。なお、これらのユニットは上記した転写工程までを実行することにより形成されるリング体RFと基板Wとが一体化された構造体を処理対象物としており、以下の説明においては、この構造体をワークWkと称することとする。
図11は剥離ユニットおよび回収ユニットの構造を示す図である。より詳しくは、図11(a)は剥離ユニット10および回収ユニット50の外観上面図、図11(b)はその側面図である。この剥離ユニット10および回収ユニット50は、シートフィルムを貼付された状態で外部から搬入される基板をワークとして受け入れて、該シートフィルムを基板から剥離・回収する。基板からシートフィルムを剥離するための剥離ユニット10および剥離されたシートフィルムを回収するための回収ユニット50は、フレーム90に固定されている。
剥離ユニット10は、基板をその上方から吸着保持するための吸着ステージブロック100、こうして吸着保持された基板の下方を移動しながらシートフィルムを巻き取り剥離するための巻き取りブロック200、巻き取りブロック200を略水平方向(Y方向)に移動させるためのガイドレールブロック300、および、外部から基板を受け入れて吸着ステージブロック100に受け渡すための仮置きステージブロック400を備えている。
ガイドレールブロック300は、巻き取りブロック200を水平移動させる際のガイドとなるガイドレール303、巻き取りブロック200を駆動するボールねじ機構を構成するボールねじ302、ボールねじ駆動部304およびこれらを保持するベース部301を備えている。
また、仮置きステージブロック400は、処理対象である基板WおよびシートフィルムFを含むワークWkを受け入れて一時的に支持する仮置きステージ410を備えている。仮置きステージ410の上面には、ワークを構成するリング体RFを支持するためのリング支持ピン411と、シートフィルムが剥離された後の基板を支持する基板支持ピン412とが突設されている。リング支持ピン411および基板支持ピン412はそれぞれ3個以上設けられている。リング支持ピン411それぞれの先端には、ワークを構成する下部リングRdwに設けられた貫通孔97(図3)と嵌合する先端突起部が設けられている。また、仮置きステージの下部には鉛直下向きにシャフト420が延びており、該シャフト420を保持するとともにこれを上下方向(Z軸方向)に駆動するステージ昇降機構430に取り付けられている。すなわち、この仮置きステージブロック400では、仮置きステージ410がステージ昇降機構430により昇降自在に保持されている。
また、回収ユニット50は、基板から剥離されたシートフィルムを後方(図11において右方)に搬送する搬送ブロック500と、搬送ブロック500により搬送されてきた剥離後のシートフィルムを回収・貯留する回収ボックス600とを備えている。搬送ブロック500は、ハウジング昇降機構540により昇降自在に保持されたハウジング501に取り付けられた、シート剥がし機構510、上側搬送機構520および下側搬送機構530などを備えている。また、回収ボックス600は内部にシートフィルムを貯留可能な中空の筐体であり、その一部には貯留されたシートフィルムを取り出すための扉601が設けられている。
上側搬送機構520と下側搬送機構530とに挟まれた領域は、基板から剥離されたシートフィルムを回収ボックス600に向けて搬送するための搬送経路となっている。上側搬送機構520は、基板から剥離されたシートフィルムを搬送経路に案内するためのシートガイド521、524と、これらに回転自在に軸着された複数の従動ローラ522と、シートガイド521を昇降させて搬送経路を開閉するガイド開閉機構523とを備えている。また下側搬送機構530は搬送ローラ駆動部(図示省略)により回転駆動される複数の搬送ローラ531を備えている。従動ローラ522と搬送ローラ531とは互いに当接してニップ部を形成しており、搬送経路はこのニップ部を含んでいる。
吸着ステージブロック100は第1プレート(トッププレート)101、第2プレート102および第3プレート103を重ね合わせた構造を有している。第3プレート103は基板Wとほぼ同じ直径を有する円板状をなしており、その下面は基板Wの上面(裏面Wb)と対向する対向平面となっている。また、第3プレート103の周縁部近傍には、基板Wを真空吸着するための基板吸着器が複数設けられている。
また、第2プレート102は上部リングRupの外径とほぼ同じ直径を有する円板状をなしており、その周縁部には上部リングRupを真空吸着するためのリング吸着器が複数設けられている。また、リング吸着器より内側に、シートフィルムFを吸着するためのシート吸着器が複数設けられている。また、第1および第2プレート101、102を貫通して突き出しピン用孔114が設けられており、シート吸着器のうち突き出しピン用孔114に隣接する位置に設けた2つの吸着器と、それ以外の吸着器とは、互いに独立してオン・オフすることができる。
各吸着器は制御ユニット4により制御されており、制御ユニット4は基板W、上部リングRupおよびシートフィルムFの吸着・解除をそれぞれ独立に行うことができる。さらにシートフィルムFに関しては、突き出しピン用孔114の近傍とそれ以外の領域とで独立に吸着・解除を行うことができる。
第1プレート101の上部には突き出し機構140が設けられている。突き出し機構140はシリンダ141とその内部に上下動自在に設けられた突き出しピン142とを備えており、制御ユニット4からの制御指令に応じて突き出しピン142が上下動する。突き出し機構140の直下には第1プレート101および第2プレート102を貫通して突き出しピン用孔114が穿設されているので、突き出し機構140が作動すると突き出しピン142が突き出しピン用孔114を通して下方へ突出する。
突き出しピン142の位置は、基板Wの中心軸からみてその外周部よりも外側かつ上部リングRupの内周部よりも内側に設けられているので、下方へ突出した突き出しピン142は、基板Wよりも外側に延びるシートフィルムFに当接してこれを下方に突き出す機能を有することになる。なお、詳しくは後述するが、この実施形態ではワークWkから下部リングRdwを取り外したものを吸着ステージブロック100に保持させるので、突き出し機構140の動作により突き出されたシートフィルムFの周縁部は下向きに垂れ下がることとなる。
巻き取りブロック200は、ガイドレール303に沿ってY方向に移動するベースフレーム211と、ベースフレーム211に対し回転自在に軸着されたローラ状の巻き取りローラ220とを備えている。
次に、上記のように構成された剥離および回収ユニットの動作について説明する。この剥離装置の動作は、(1)ワークを搬入する(搬入動作)、(2)基板からシートフィルムを剥離する(剥離動作)、(3)剥離したシートフィルムを回収する(回収動作)、(4)基板およびリングを搬出する(搬出動作)、という一連の動作を繰り返すことによって、多数のワークを連続的に処理するように構成されている。以下では、1つのワークWkに対する処理の流れについて、図12ないし図18を参照しながら説明する。
図12は剥離・回収工程における処理を示すフローチャートである。また、図13はワークの搬入動作を説明するための模式図である。また、図14および図15は剥離動作を説明するための模式図である。また、図16ないし図18は回収動作を説明するための模式図である。
まず最初に、ワークWkを搬入する搬入動作(ステップS501ないしS504)が行われる。すなわち、ハウジング昇降機構540を作動させて、搬送ブロック500を収めたハウジング501を下方に移動させ、これによってできたスペース(右方)に巻き取りブロック200を退避させる(ステップS501)。また、ステージ昇降機構430を作動させて仮置きステージ410を下降させ、吸着ステージブロック100との間隔を広くする。この状態で、主搬送ロボット70のリングハンド705に保持されながら図13(a)の矢印方向に沿って搬入されてくるワークWkを受け入れる。搬入されたワークWkは仮置きステージ410に載置される(ステップS502)。ワークWkは仮置きステージ410の上面に設置されたリング支持ピン411によって下部リングRdwの下方から支持される(図13(a))。
このとき、外部からのワーク搬入は単なる水平移動と上下移動との組み合わせによって行うことができるので、従来から公知の搬送機構を用いることができる。また、ガイドレールブロック300は上から見ると図11(a)の左方側が開口する略コの字型をしており、巻き取りブロック200は右端位置に退避しているので、いずれも左側からのワーク搬入の妨げとなることはない。
こうして仮置きステージ410にワークWkが載置されると、ステージ昇降機構430により仮置きステージ410を吸着ステージブロック100に向けて上昇させる。そして、仮置きステージ410上のワークWkが吸着ステージブロック100の直下まで来ると、吸着器によりワークWkを吸着保持する(ステップS503)。このとき、リング吸着器はワークWkのうち上部リングRupを吸着する。また、シート吸着器はシートフィルムFを吸着する。また、基板吸着器は基板Wの裏面Wbを吸着する(図13(b))。
次に、ワークWkから下部リングRdwのみを取り外す。この実施形態では、下部リングRdwを支持する仮置きステージ410を基板Wの回転軸J周りに回転させることにより上部リングRupとの磁気的な結合を切り離し、下部リングRdwを載せたまま仮置きステージ410を下降させることにより、下部リングRdwを下方へ退避させる(ステップS504、図13(c))。このときリング支持ピン411の先端突起部と下部リングRdwの貫通孔97との嵌合が下部リングRdwの回り止めとして機能する。取り外した下部リングRdwについては仮置きステージ410と共に下方に退避させた状態としておくが、この時点で外部へ搬出してもよい。
次いで剥離動作を行う。この時点では、図14(a)に示すように、吸着ステージブロック100の下部に上部リングRup、基板WおよびシートフィルムFが一体的に吸着保持される一方、巻き取りブロック200が右方に退避した状態となっている。そこで、図14(b)に示すように巻き取りブロック200を左端に移動させるとともに、下方に退避させていた搬送ブロック500を元の位置に戻しておく(ステップS505)。そして、巻き取りローラ220の一部を切り欠いて設けられた切り欠き部221に取り付けられたシートクランプ223を開く。
この状態で、突き出しピン用孔114に隣接するシート吸着器のみ吸着を解除する(ステップS506)。これにより、シートフィルムFのうち突き出しピン用孔114に隣接する領域のみが吸着されない一方、その他の領域は吸着された状態となる。ここで突き出し機構140を作動させ突き出しピン142を下方に突き出すと(ステップS507)、シートフィルムFの周縁の一部が下方に垂れ下がる。図14(c)に示すように、突き出し機構140は左端に位置決めされた巻き取りブロック200の真上に設けられて、垂れ下がったシートフィルムFの端部Fsが巻き取りローラ220にかかる位置関係となっている。ここでシートクランプ223を閉じると(ステップS508)、図14(d)に示すように、垂れ下がったシートフィルムFの端部Fsがシートクランプ223によりクランプされ巻き取りローラ220に固定される。シートフィルムFの端部Fsがクランプされても残りのシート吸着器による吸着については解除しない。
このように、この実施形態では、重力によって垂れ下がるシートフィルムFの端部をクランプし、これを巻き取るようにしている。ここで基板が下側、シートフィルムが上側になるよう設置してシートフィルムを上向きに引き剥がそうとすると、柔軟なシートフィルムの端部をクランプするための構成が複雑となり得るが、本実施形態のようにシートフィルムを下側に配置して下向きに引き剥がす構成とすれば、シートフィルムFの端部は重力によって垂れ下がるのでクランプしやすくなる。さらにこの実施形態では、基板Wの外周部よりも外側に延びたシートフィルムFのうち、突き出しピン142により突き出される領域の近傍のみを吸着解除する一方、その他の領域を吸着しておく。これにより、シートフィルムFの垂れ下がり箇所やその形状を制御することができ、シートクランプ223によるクランプを容易にしかも確実に行うことができる。
続いて、巻き取りローラ220を図15(a)の矢印D1方向に回転させながら基板Wの下方でY方向に移動させると(ステップS509)、シートフィルムFはクランプされた端部Fs側から順に基板Wから引き剥がされ巻き取りローラ220に巻き取られてゆく(図15(b))。このとき、巻き取りローラ220の位置にかかわりなく基板WからのシートフィルムFの引っ張り方向はガイドローラ214により一定に制御されており、基板表面Wfに均一な薄膜を残すことができる。
このときシート吸着器による吸着は解除されていないため、巻き取りローラ220が吸着を強制的に解除しながら基板WからシートフィルムFを引き剥がすこととなる。そして、巻き取りブロック200が後述する終了位置(図15(c)の位置)に達するとシート吸着器による吸引が解除される。こうすることで剥離動作中にシートフィルムFが垂れ下がることを防止する。なお、この際、シートフィルムFが引き剥がされることに起因する部分的な真空破壊が全体に広がらないようにするために、各シート吸着器には図示しないニードル弁が設けられている。
巻き取りブロック200が基板の下部を通過し所定の終了位置(図11、図15(c)に示す位置)まで到達すると(ステップS510)、図15(c)に示すように、シートフィルムFは基板Wから完全に剥離され巻き取りローラ220に巻き取られた状態となる。
なお、巻き取りブロック200が移動する間の巻き取りローラ220の回転量は約3/4回転(270度)である。このように、シートフィルムFを巻き取る際の巻き取りローラ220の回転量を1回転未満とすることにより、シートフィルムFの巻き取り開始位置(端部Fs)が巻回されたシートフィルムによって覆われることがない。このため、次に説明する回収動作において巻き取りローラ220からシートフィルムFを引き剥がす際、その巻き取り開始位置(端部Fs)から引き剥がすことができる。このことは、巻き取りローラ220からシートフィルムFを確実に除去するという目的の達成のために大きな意味を持っている。
こうして基板WとシートフィルムFが分離されると、回収動作によってシートフィルムFが回収ボックス600に回収される一方、搬出動作によって基板Wが外部に搬出される。
まず、剥離されたシートフィルムFを回収するための回収動作(ステップS521ないしS524)について説明する。剥離動作の終了後には、図16(a)に示すように、巻き取りローラ220にシートフィルムFが巻き取られた状態で巻き取りブロック200が搬送ブロック500のすぐ左隣の終了位置に位置している。このとき、巻き取りローラ220上におけるシートフィルムFの巻き始め位置が搬送ブロック500側(同図において右側)に向くようにしておく。
搬送ブロック500に設けられたシート剥がし機構510は、その本体511に対しY方向に摺動自在に装着されたシート剥がし爪512を備えている。巻き取りローラ220上のシートクランプ223がクランプを解除するのとほぼ同時にシート剥がし爪512が巻き取りローラ220方向に伸びて、シートフィルムFの端部を引っ掛ける。そのままシート剥がし爪512が後退し(図16(b))、元の位置に戻ってくると(図16(c))、シート剥がし機構510はシートフィルムFの端部Fsを保持することとなる(ステップS521)。
このときシート剥がし爪512により引き出されるシートフィルムFの端部は、巻き取りローラ220により最初に巻き取られる巻き始めの端部Fsである。基板Wから薄いシート状のシートフィルムFを剥離し巻き取ったとき、その終端部が反り返ったり湾曲したり、甚だしい場合には筒状に丸まってしまうことがあり、このように様々な形状を取り得る終端部を把持することは極めて困難である。これに対し、巻き始めの端部Fsにおいてはシートクランプ223によって巻き取りローラ220の切り欠き部221に押し付けられた状態となっているためこのような問題が少ない。このように、シートフィルムFのうち、巻き取りローラ220による巻き取り始め側の端部Fsをシート剥がし爪512により引き出すことにより、この実施形態では、巻き取りローラ220からシート剥がし機構510へのシートフィルムFの受け渡しをスムーズにかつ確実に行うことができる。
シートフィルムFの端部がシート剥がし機構510に把持されると、図17(a)に示すように、上側搬送ローラ機構520のうち巻き取りブロック200に近い側に設けられたガイドローラ521を従動ローラ522とともにガイド開閉機構523により上昇させる。これにより、上側搬送機構520と下側搬送機構530とにより挟まれた搬送経路Pが巻き取りローラ220側に向けて大きく開口する。シート剥がし機構510によるシートフィルムFの把持よりも先に開口させておいてもよい。
シート剥がし機構510は、その本体511を図17(a)の矢印D2方向に沿って斜め下方に移動させる斜行機構513を備えており、該斜行機構513の作動によりシート剥がし機構本体511およびシート剥がし爪512はシートフィルムFの端部Fsを把持したまま矢印D2方向に下降移動する(ステップS522)。これにより、図17(b)に示すように、巻き取りローラ220に巻き取られていたシートフィルムが引っ張られて次第に剥がされてゆく。
図17(c)に示すように、シート剥がし機構510が最下端にまで移動してくると、ガイド開閉機構523によりシートガイド521が下降され搬送経路が閉じられる。このため、シート剥がし機構510とともに下降してきたシートフィルムFの端部Fsが上下ローラ522、531によりクランプされる(ステップS523、図18(a))。この状態でシート剥がし爪512によるシートフィルムの保持を解除し、搬送ローラ531を図18(a)の矢印D3方向に回転駆動することにより、シートフィルムFはさらに巻き取りローラ220から引き剥がされて、搬送経路Pに沿って矢印D4方向に搬送されてゆく(図18(b))。搬送されたシートフィルムについては、最終的に回収ボックス600に回収する(ステップS524、図18(c))。
次に、基板Wの搬出動作について説明する。基板Wの搬出に先立って、仮置きステージ410の昇降動作や外部の搬送機構の動作と干渉しないようにするためのスペースを創出する。すなわち、ワーク搬入時と同様に、搬送ブロック500を収めたハウジング501を下方へ退避させるとともに、これによって生じたスペース(右方)に巻き取りブロック200を退避させる(ステップS525)。
剥離動作が完了した時点では、シートフィルムが剥離された後の基板Wと上部リングRupとは互いに切り離されてそれぞれが個別に吸着ステージブロック100に吸着された状態となっている。そこで、これらを受け取るべく仮置きステージ410を上昇させる(ステップS526)。具体的には、仮置きステージ410上に退避されていた下部リングRdwが上部リングRupに近接し永久磁石により両者が結合すると、吸着ステージブロック100はリング吸着器による吸着を解除する。これにより、上部リングRupと下部リングRdwとが結合してなるリング体が仮置きステージ410のリング支持ピン411により支持された状態となる。また、基板吸着器による吸着を解除することにより、基板Wが仮置きステージ410の基板支持ピン412により支持された状態となる。この状態で仮置きステージ410を下降させ、基板W、リング体を主搬送ロボット70によりそれぞれ個別に外部に搬出することができる(ステップS527)。
なお、ここでは仮置きステージ410に基板Wとリング体とを載せてこれらを同時に下降させるようにしているが、基板Wとリング体とをそれぞれ別のタイミングで吸着ステージブロック100から取り外し搬出するようにしてもよい。基板吸着器とリング吸着器とを個別に制御することにより、いずれにも対応することができる。
これにより、1つのワークWkについて、基板WからのシートフィルムFの剥離および回収が完了する。上記一連の動作をワークごとに繰り返すことで多数のワークについての処理を連続的に行うことができる。こうして回収ボックス600に回収・貯留されたシートフィルムについては、オペレータが必要なタイミングで扉601から取り出し、再利用または廃棄することができる。
主搬送ロボット70は、薄膜Rが転写された基板Wを基板ハンド704によって、また上部リングRupと下部リングRdwとを一体的にリングハンド705によって、剥離ユニット10からそれぞれ搬出する。このとき基板Wはフェースダウン状態であり、主搬送ロボット70は、基板支持ピン412による仮置きステージ410と基板Wとの隙間から基板Wを基板ハンド704ですくい上げ反転ユニット31に受け渡す。反転ユニット31が基板Wをフェースアップ状態に反転させると、基板搬送ロボット2がこれを受け取って基板カセット11に収容する。この間、主搬送ロボット70は、リング体をリングカセット載置台32に載置されたリングカセットに使用済みのリングRup、Rdwを収容する。これにより1枚の基板Wに対する一連の処理が完結する。
図19はこの薄膜形成システムにおける資材の流れを示す図である。フィルムカセットから取り出されたリング体RFは塗布ユニット34に搬入されてシートフィルムFに塗布液が塗布され、再形成されたリング体RFは乾燥ユニット36を経て転写ユニット35に送られる。一方、基板Wは基板カセット11から取り出された後、反転ユニット31でフェースダウン状態に反転されて転写ユニット35に搬入される。そして、転写ユニット35内で基板Wとリング体RFとが一体化されてワークWkが形成される。
ワークWkは剥離ユニット10に送られて、基板W、シートフィルムF、上部リングRupおよび下部リングRdwに分離される。このうち基板Wは反転ユニット31に送り返されてフェースアップ状態に戻され、元の基板カセット11に収容される。また使用済みのシートフィルムFは回収ユニット50により回収される。一方、上部リングRupおよび下部リングRdwは再び一体化されてリングカセットに収容される。
以上のように構成された薄膜形成システムにおいては、次のような問題に対応することができるように、そのレイアウトが工夫されている。
まず、塗布ユニット34においてシートフィルムFに塗布される塗布液は薄膜材料および溶媒を含むものであるが、溶媒として可燃性および揮発性を有するもの(例えば有機溶媒)が用いられることがある。一方、剥離ユニット10においては、基板に密着させた樹脂製のシートフィルムFを機械的に引き剥がしているため、シートフィルムFに静電気が発生することがある。このため、塗布ユニット34で発生した可燃性の溶媒蒸気が静電気に起因する放電により引火する可能性がある。特に、プロセスの流れのみに着目して塗布ユニットと剥離ユニットとを近接配置した場合にその可能性が高い。
これに対し、この実施形態では、単に塗布ユニット34と剥離ユニット10とを離隔配置するというだけでなく、間に第2搬送部TP2を挟んで互いに反対側位置となるように設置している。すなわち、塗布ユニット34と剥離ユニット10とは第2搬送部TP2によって隔離されている。第2搬送部TP2は送気ユニット39からのダウンフローにより雰囲気管理されているため、塗布ユニット34で発生した溶媒蒸気が剥離ユニット10にまで到達する可能性は極めて低い。これにより、この実施形態では、溶媒の引火の問題を解消している。
その結果として、この実施形態では、溶媒蒸気を排気するための特別の機構や処理時間を必要とせず、薄膜形成処理を効率よく行うことが可能となる。
また、剥離後のシートフィルムFは薄膜材料の断片が残存してこれが剥落したり、静電気を帯びていることから周囲のゴミ等を引き寄せやすいため、剥離後のシートフィルムFを収容する回収ユニット50の近傍にはゴミが集まりやすい。薄膜材料塗布前のシートフィルムFや薄膜転写前の基板Wの表面にこのようなゴミが付着すると薄膜に欠陥を生じさせてしまう可能性がある。この実施形態では、回収ユニット50と第2搬送部TP2との間に剥離ユニット10を介在させる、言い換えれば第2搬送部TP2からみたときに回収ユニット50が剥離ユニット10の向こう側になるような配置とすることによって、回収ユニット50近傍のゴミ等が第2搬送部TP2に回り込みシートフィルムF等に付着するのを防止している。
また、回収ユニット50を、リングカセット載置台32およびフィルムカセット載置台33とともにシステムの外周部に配置したことによって、オペレータによるリングおよびシートフィルムの搬入・搬出作業の利便性も向上させることができる。
また、システム全体のレイアウトにおいて、薄膜転写前の基板Wが一時的に保持されるインデクサ部1から最も遠い位置に回収ユニット50を設けることにより、回収ユニット50からのゴミが基板Wに付着するのを防止している。これに加えて、薄膜を転写されない状態の基板Wを取り扱う転写ユニット35および反転ユニット31についても、回収ユニット50からできるだけ遠い位置となるようにしている。この場合、転写ユニット35と反転ユニット31との位置関係については、基板Wをフェースアップ状態で扱う反転ユニット31を、第2搬送部TP2に対して回収ユニット50の反対側、つまり塗布ユニット34と同じ側に配置することによって、基板表面へのゴミの付着をより効果的に防止することができる。
さらに、塗布液を塗布される前のシートフィルムFを収容したフィルムカセットの載置台33についても、第2搬送部TP2に対して回収ユニット50の反対側、つまり塗布ユニット34と同じ側に配置することによって、シートフィルムF表面へのゴミの付着も効果的に防止することができる。
以上説明したように、この実施形態では、塗布ユニット34、転写ユニット35および剥離ユニット10がそれぞれ本発明の「塗布ユニット」、「転写ユニット」および「剥離ユニット」として機能している。また、主搬送ロボット70が本発明の「受渡手段」として機能しており、第2搬送部TP2が本発明の「搬送空間」に相当している。また、回収ユニット50および反転ユニット31がそれぞれ本発明の「回収部」および「反転ユニット」として機能している。
また、この実施形態では、シートフィルムFが本発明の「薄膜担持体」として機能しており、フィルムカセット載置台33が本発明の「担持体保持部」として機能している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、柔軟な樹脂製のシートフィルムを本発明の「薄膜担持体」として機能させているが、薄膜担持体としてはこのような樹脂製のものあるいはシート状のものに限定されるものではなく、例えば円板状のものを用いてもよい。
また、例えば上記実施形態では、一対の円環状リングを永久磁石で吸着して互いに結合することによりシートフィルムを挟持しているが、リングの形状や結合方式はこれに限定されるものではない。例えば矩形のリングや、完全なリングではなくコの字型またはC型のようにその一部が開いたものを用いてもよい。また、リングハンド705によるリングの保持および基板ハンド704による基板の保持についても、上記したものに限定されない。また薄膜担持体を平らな状態に維持できれば、リングを使用しなくてもよい。
また、上記実施形態は、半導体基板上にSOG絶縁膜を形成する薄膜形成システムであるが、薄膜の形成対象および薄膜材料についてはこれらに限定されるものではない。例えば、薄膜の形成対象となる基板としては、半導体ウエハの他に液晶パネル用ガラス基板やフォトマスク用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板や光ディスク用基板などを用いることができる。また、薄膜材料としては、SOGの他にSOD(Spin-On-Dielectric)材料やフォトレジスト材料などを用いることができる。
また、上記実施形態では、スピンコート法によってシートフィルム上に薄膜材料を塗布しているが、塗布方式はこれに限定されるものではなく例えばノズルスキャン法など任意の方式を用いることが可能である。また上記実施形態では塗布工程の後に乾燥工程を設けているが、薄膜材料または塗布液の性質によっては乾燥工程を省いてもよい。またシートフィルムに対して親水性の表面処理を施す親水処理ユニットなど他の処理ユニットを有するシステムにも本発明を適用することが可能である。