JP5398046B2 - 減圧沸騰形海水淡水化装置、及び方法 - Google Patents
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Description
海水の淡水化には、蒸留法、逆浸透法、電気透析法、凍結法など種々の方法が提案されているが、現在、その約60%が蒸発法で、約30%が逆浸透法で実現されている。
しかし、実際には、それぞれ装置の建設コストが高い、運転コストが高いなど種々の問題があり、これら課題を解決できる省エネルギーで、運転コストが安く、しかも構造が簡単で、新規な海水淡水化装置の実用化が望まれている。
図4の淡水化装置70は、上下2段の蒸発缶71,72で構成され、各蒸発缶内部は真空ポンプ88により、減圧状態に保持され、また、海水供給管80,81により海水78,79が供給されている。
下段蒸発缶72には加熱手段73が設けられ、海水79は加熱されて水分を蒸発させる。
下段蒸発缶72の天井板と上段蒸発缶71の底面板は共通の伝熱板75で構成されており、下段蒸発缶内72で蒸発する水蒸気は、上段蒸発缶71の底面であり且つ、下段蒸発缶72の天井でもある伝熱板75で冷却、凝縮される。
凝縮水はトラップ76,77の上面で受けられ、トラップ76,77の傾斜によって蒸発缶71,72の内壁面に沿う部分に淡水82,83として溜められる。
図4の減圧蒸発缶による方法は、3段以上とすることで、熱効率を更に向上させることは可能であるが、凝縮水溜め容器86,87に溜められた淡水を連続的に回収することは困難である。
一方図5に示す、製塩工場で採用されている多重効用真空式蒸発缶は、製塩を目的とする塩分濃度の高い鹹水の製造装置であるが、鹹水製造過程でも淡水を作ることができる。
この4号缶96の水蒸気を冷却部98において、海水で冷却することで淡水を得ることができる。真空ポンプ97はメンテナンスなどで運転を停止した後、再開する時だけ使用する。多重効用真空式蒸発缶90は製塩を目的とする装置であるので、淡水を得ることを目的とする減圧蒸留装置としては、装置が大型で複雑である。
海水の淡水化では、エネルギーコストの低減に有効な原理として、一般には次の2つの物理原理が利用されている。
一方、蒸留に必要とされるエネルギーは、室温に近い程少いので、減圧させて沸騰温度を室温近くまで低下させる方法が採られている。具体的には海水を沸騰させる容器内を、真空ポンプを用いて減圧させる減圧蒸留法が採用されている。
このうち、海水塔は、海水の満たされた海水槽中に大気と遮断されて立設される長尺の気密容器であって、上方端が封止され、下方端が海水中に解放された気密容器である。
また、淡水塔は、淡水の満たされた淡水槽中に立設される長尺の気密容器であって、上方端が封止され、下方端が淡水中に解放される。容器内は上部を除き淡水で満たされている。淡水が存在しない上部空間は、トリチェリ真空が形成されていて、空気は殆ど存在せず、淡水の飽和蒸気で満たされている。淡水塔内部液面の淡水槽水面からの高さは、大気圧と釣合っており、約10mである。
と海水塔との接続部は気密構造を採り、連通管と淡水塔との接続部も気密に接続されてい
る。また、海水塔の上部空間には、一部連通管にまたがり冷却手段が設置される。冷却手
段はフィンチューブ型熱交換器(凝縮器)と、凝縮水受け皿とで構成され、フィンチュ
ーブ型熱交換器は折り曲げられて形成される通水配管に多数の放熱フィンが一体に取り付
けられている。フィンチューブ型熱交換器は海水を冷却媒体として、海水塔の上部空間に
蒸発する水蒸気を冷却して連通管内に流下させる。
冷却手段は冷却水の海水を通水でき、効率よく冷却できるものであればよい。
また、冷却手段を流れる冷却用海水は海水塔の上部位置に排出される。
まお、加熱手段はヒータに限定されることなく、太陽熱を吸収する太陽熱吸収装置などであってよく、或いはまた、これらを組み合わせであっても良い。ただし太陽熱吸収装置の設置位置は、海水塔の断熱材が設置されない箇所に限られる。
これにより、水蒸気を冷却されて得られる淡水が、淡水塔中に自然に流下する。
淡水塔内の液面高さは、淡水塔内の淡水温度で決まる水蒸気圧力が一定であるので、大気圧と釣り合いながら一定高さに保たれる。従って水蒸気の凝縮により新たに作られる淡水と同量の淡水塔内の淡水が、下部の解放端部から淡水槽内に押し出される。
このとき押し出される淡水量が、本減圧沸騰形海水淡水化装置により作られる淡水量になる。
一方、放熱フィンの表面では減圧蒸留により気化した水分が凝縮潜熱を放出しながら凝縮し、放熱フィンから直下の受け皿に滴下する。滴下した凝縮水は、集合して淡水になり、受け皿から連通管に自然流下する。
なお、海中より汲み上げられる海水は、凝縮潜熱を吸収しながらフィンチューブ型熱交換器の通水配管を通過し、海水塔の上部に排出される。
従って、冷却用海水はフィンチューブ型熱交換器の排出部に於いて最も高温になる。
また、冷却用海水の汲み上げポンプは海水を海水塔上部まで汲み上げるが、実際の負荷(水圧)は、フィンチューブ型熱交換器通水配管の排出口の海水塔内部に於ける液面からの水深であり、極めて僅かな負荷でしかない。
次いで、海水塔の頂部から海水を、淡水塔の頂部から淡水を投入する。
従って、これらの上部空間の真空度は海水温度で決まる蒸気圧まで下げることができる。
例えば、海水塔上部の海水温を室温並みに設定すれば、海水の蒸発に必要とされる加熱エネルギーを最小限に止めることができる。
一方、海中から汲み上げられる海水温度は、室温に比べ十分低く、また、フィンチューブ型熱交換器により凝縮されて作られる淡水の温度は、海中から汲み上げられた海水温より若干高温になる。
海水塔の上部外壁と、連通管外壁と、淡水塔の外壁を断熱材で包囲することにより、水蒸気温度とフィンチューブ型熱交換器表面温度との温度差を容易に維持することができる。
上に加温して、真空中で水分を蒸発させ、該蒸発させた水分を冷却して淡水として回収す
る減圧沸騰形海水淡水化方法である。
具体的には、大気と遮断されて海水槽内の海水中に立設され、底部が前記海水中に開放さ
れる海水塔と、大気と遮断されて淡水槽内の淡水中に立設され、底部が前記淡水中に開放
される淡水塔と、一方が、前記海水塔の上部に気密を維持して連通し、他方が前記淡水塔
に気密を維持して連通する連通管とで構成される減圧沸騰形海水淡水化装置を用いる。
本装置の海水塔の上部には、海水を蒸発させる加熱手段と、海水塔上部で作られる水蒸気
を冷却して淡水に凝縮させ、連通管内に流下させるフィンチューブ型熱交換器が設置され
ており、加熱手段で蒸発させた蒸気をフィンチューブ型熱交換器で冷却して淡水を作成す
る。なおフィンチューブ型熱交換器には、冷却媒体として海中より汲み上げた海水を流入さ
せ、海水塔上部の加熱手段設置位置の近傍に冷却後の海水を流出させる。
また、水蒸気の凝縮にフィンチューブ型の熱交換器を用い、海水塔の上部外壁と、前記連通管外壁と、前記淡水塔の外壁を断熱材で包囲する構成としているので、外部からの熱の流入と流出を遮断でき、水蒸気温度とフィンチューブ型熱交換器表面温度との温度差を大きく維持できる。これにより、効率よく水蒸気の淡水化ができ、淡水の製造能力の確保が容易である。
本発明のフィンチューブ型の熱交換器では、フィンとチューブ間の接続部にロウ付け、溶接などの方法を用い、フィンとチューブ間の熱伝道を良好な状態に保持しているので、フィン表面で凝縮する水蒸気が放出する凝縮潜熱を冷却水まで確実に熱伝道させることができる。これにより、水蒸気が放出する凝縮潜熱を冷却水の加熱熱源として確実に回収することができる。
また、このとき、凝縮潜熱を吸収する冷却水は沸騰温度まで加熱されるので、蒸発に必要とされる加熱手段が供給する蒸発潜熱を最小限に減らすことができる。
また、海水塔上部に真空排気ポンプが接続され、海水塔の底部と、淡水塔の底部にそれぞれ遮断弁が付設されているので、装置の立ち上げ時や、メンテ時の復帰立ち上げ作業が容易である。
以上により本発明による減圧沸騰形海水淡水化装置により、省エネルギーで、且つ、安定的に淡水を製造することができる。
減圧沸騰形海水淡水化装置10は、海水槽16に収容される海水34中に立設される海水塔11と、淡水槽17に収容される淡水51中に立設される淡水塔12と、これら、海水塔11と淡水塔12とを気密に連結する連通管13から構成される。海水塔11の上部には海水温度を一定に維持するための加熱手段19が設置され、また海水塔11の上部空間27には、冷却手段14が配置される。更に、海水塔11の上部外壁部と、連通管13の外壁と、淡水塔12の外壁には、これら外壁を包囲して断熱する断熱材18が取付けられている。
海水塔11の上下及び側方に配置されたバルブ21、22、29、31を開にし、バルブ32を閉じ、ポンプ24を作動させ、配管33を通して海中より海水を汲み上げ、海水塔11内部に海水を投入する。海水槽16が海水で満たされた時点でポンプ24を停止させ、バルブ21を閉じる。ポンプ24を再稼働させ海水塔内に海水を注入し、液面26の高さH1が10mになった時バルブ31を閉じ、ポンプ24を停止させる。
バルブ22,43を閉じバルブ21,51を開にすると海水塔11の頂部空間27、淡水塔12の頂部空間44及び連通パイプ13内の圧力は水頭H1、H2に依存して低下し、真空に近いものとなる。
トリチェリ真空が形成されるに至った時点で、バルブ20を閉じ、真空ポンプ15を停止させる。この時、海水塔11内の液面26の高さは、海水槽16の液面35からH1の高さとなり、H1は約10mになる。また淡水塔12内の液面42の高さは、淡水槽17の液面53からH2の高さとなり、H2は約10mになる。
連通管13の液面を覆うフロート部材60は、連通管13の上部より吊下げる方法で保持されており、淡水が上部空間27に再蒸発するのを抑制する。
フィン61表面に凝結する水分は、直下の受け皿63に滴下して、淡水になり連通管内13内部に流下する。連通管内の液面高さは一定に保持されるので、流下する淡水は逐次淡水塔12内を下方に押し出され、淡水槽17に至り、淡水槽17の堰54を乗り越え、回収槽55に至る。
なお、ポンプ24から供給される海水量は流量計56で確認可能であるが、海水塔11の上部空間で蒸発する海水量より多い場合、過剰分の海水は、海水塔11を逐次下方に押しやられて海水槽16に至り、堰40を乗り越えてサブ貯留槽37から外部に排出される。
本実施文献は4連の真空式蒸発缶であって、各蒸発缶の直径は5m、高さは15mである。また、稼働時における各缶の温度(℃)、圧力(mmHg)、単位時間当たりの蒸発重量(t/h)について、表1の関係が測定されている。
図2は表1の温度(℃)と、単位時間当たりの蒸発重量(t/h)との関係を直行座標にプロットし、回帰式を求めたものである。図中に示す回帰式を用い35℃における単位時間当たりの蒸発量を推定すると、約37t/hになる。
なお、上記内径5mの蒸発缶での淡水の製造能力37t/hを、単位面積当たりの製造能力に換算すると、1分間当たりの製造量は31.4Kg/m2minとなる。
従って、内直径Dを適宜な数値に設定することで、要求製造能力に応じた減圧蒸留装置を設計することができる。
また、本装置より排出される高塩分濃度の海水から食塩、その他ミネラル成分を取り出すこともできる。
11 海水塔
12 淡水塔
13 連通管
14 冷却手段
15 真空ポンプ
16 海水槽
17 淡水槽
18 断熱材
19 加熱手段
Claims (7)
- 海中より汲み上げた海水を、前記海中温度以上に加温して、真空中で水分を蒸発させ、該蒸発させた水分を冷却して淡水として回収する減圧沸騰形海水淡水化装置であって、
大気と遮断されて海水槽内の海水中に立設され、底部が前記海水中に開放される海水塔と、
大気と遮断されて淡水槽内の淡水中に立設され、底部が前記淡水中に開放される淡水塔と、
一方が、前記海水塔の上部に気密を維持して連通し、他方が前記淡水塔に気密を維持して連通する連通管と、
前記海水を蒸発させる加熱手段と、
前記海水塔上部で作られる前記水蒸気を冷却して淡水に凝縮させ、前記連通管内に流下させる冷却手段と、で構成され、
前記冷却手段がフィンチューブ型熱交換器(凝縮器)と、凝縮水受け皿とから構成されて、前記海水塔の上部空間に配置されており、
前記海水塔内の液面高さが、前記海水塔と前記連通管との連通位置より低いことを特徴とする減圧沸騰形海水淡水化装置。 - 前記海中より汲み上げた前記海水を冷却媒体として前記フィンチューブ型熱交換器のチューブ内に流入させて熱交換させた後、前記海水塔内の上部に流出させ、
前記フィンチューブ型熱交換器のフィン表面で凝縮する凝縮水を、前記凝縮水受け皿に滴下させて淡水を作ることを特徴とする請求項1に記載の減圧沸騰形海水淡水化装置。 - 前記海水塔上部が、真空排気ポンプに接続され、真空排気自在であることを特徴とする
請求項1又は2の何れか一項に記載の減圧沸騰形海水淡水化装置。 - 前記海水塔の底部と、前記淡水塔の底部にそれぞれ遮断弁が付設されることを特長とす
る請求項1乃至3の何れか一項に記載の減圧沸騰形海水淡水化装置。 - 前記海水塔の上部外壁と、前記連通管の外壁と、前記淡水塔の外壁が断熱材で包囲され
ることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の減圧沸騰形海水淡水化装置。 - 前記連通管内の前記淡水表面に、複数のフロートが浮遊していることを特徴とする請求
項1乃至5の何れか一項に記載の減圧沸騰形海水淡水化装置。 - 海中より汲み上げた海水を、前記海中温度以上に加温して、真空中で水分を蒸発させ該
蒸発させた水分を冷却して淡水として回収する減圧沸騰形海水淡水化方法であって、
大気と遮断されて海水槽内の海水中に立設され、底部が前記海水中に開放される海水塔と、
大気と遮断されて淡水槽内の淡水中に立設され、底部が前記淡水中に開放される淡水塔と、
一方が、前記海水塔の上部に気密を維持して連通し、他方が前記淡水塔に気密を維持して
連通する連通管と、
前記海水を蒸発させる加熱手段と、
前記海水塔上部で作られる前記水蒸気をフィンチューブ型熱交換器(凝縮器)で冷却して淡水
に凝縮させ、前記連通管内に流下させるフィンチューブ型熱交換器と、で構成されており、
前記海中より汲み上げた海水を冷却媒体として、前記フィンチューブ型熱交換器に流入させ、
前記海水塔上部の加熱手段設置位置の近傍に流出させ、
前記加熱手段で蒸発させた蒸気を前記フィンチューブ型熱交換器で冷却して淡水を作成する
減圧沸騰形海水淡水化方法。
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