図1は、本発明の車両追跡システムのクレーム対応図を示したものである。本発明の車両追跡システム10は、センサ11と、運動軌跡算出手段12と、誤検出割合登録手段13と、車両追跡解析手段14を備えている。ここで、センサ11は、道路上の予め定めた所定範囲の領域を複数に分割したそれぞれの単位領域における路上の物理状態を時間を追って順次検出する。運動軌跡算出手段12は、センサ11によって検出される前記した道路上の前記した単位領域のいずれかの物理状態が車両の存在の可能性を示す特定物理状態となっているとき、これら単位領域の時間的な位置の移動経路としての運動軌跡を算出する。誤検出割合登録手段13は、前記したそれぞれの単位領域ごとに前記した特定物理状態が定常的に発生する割合を登録する。車両追跡解析手段14は、運動軌跡算出手段12によって算出した前記した運動軌跡と誤検出割合登録手段13に登録した単位領域ごとの車両の誤検出の割合を用いて車両の走行の経路を解析する。
図2は、本発明の車両追跡方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の車両追跡方法20は、センサ検出ステップ21と、運動軌跡算出ステップ22と、誤検出割合登録ステップ23と、車両追跡解析ステップ24を備えている。ここで、センサ検出ステップ21では、道路上の予め定めた所定範囲の領域を複数に分割したそれぞれの単位領域における路上の物理状態をセンサを用いて時間を追って順次検出する。運動軌跡算出ステップ22では、センサ検出ステップ21によって検出される前記した単位領域のいずれかの物理状態が車両の存在の可能性を示す特定物理状態となっているとき、これら単位領域の時間的な位置の移動経路としての運動軌跡を算出する。誤検出割合登録ステップ23では、前記したそれぞれの単位領域ごとに前記した特定物理状態が定常的に発生する割合を登録する。車両追跡解析ステップ24では、運動軌跡算出ステップ22によって算出した前記した運動軌跡と誤検出割合登録ステップ23で登録した単位領域ごとの車両の誤検出の割合を用いて車両の走行の経路を解析する。
図3は、本発明の車両追跡プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の車両追跡プログラム30は、コンピュータに、車両追跡プログラムとして、センサ検出処理31と、運動軌跡算出処理32と、誤検出割合登録処理33と、車両追跡解析処理34を実行させるようにしている。ここで、センサ検出処理31では、道路上の予め定めた所定範囲の領域を複数に分割したそれぞれの単位領域における路上の物理状態をセンサを用いて時間を追って順次検出する。運動軌跡算出処理32では、センサ検出処理31によって検出される前記した単位領域のいずれかの物理状態が車両の存在の可能性を示す特定物理状態となっているとき、これら単位領域の時間的な位置の移動経路としての運動軌跡を算出する。誤検出割合登録処理33では、前記したそれぞれの単位領域ごとに前記した特定物理状態が定常的に発生する割合を登録する。車両追跡解析処理34では、運動軌跡算出処理32によって算出した前記した運動軌跡と前記した誤検出割合登録処理33で登録した単位領域ごとの車両の誤検出の割合を用いて車両の走行の経路を解析する。
<発明の第1の実施の形態>
次に本発明の第1の実施の形態を説明する。
図4は、本発明の第1の実施の形態による車両追跡システムを表わしたものである。本実施の形態の車両追跡システム100は、道路101をたとえば上方から所定範囲を見渡す位置に設置された車両位置検出センサ102を備えている。車両位置検出センサ102は、たとえばカメラ、超音波センサ、ループコイル、レーザレーダ、ミリ波レーダによって構成されている。このような車両位置検出センサ102は、所定幅の道路(図では3レーン)を予め定められた長さの範囲からなる追跡注目領域内で車両103の走行を検出する。車両位置検出センサ102は、単体のセンサである必要はなく、複数のセンサの集合であってもよい。車両位置検出センサ102の検出データ104は、追跡注目領域の車両の追跡を行うための車両追跡装置105に入力される。
車両追跡装置105は、CPU(Central Processing Unit)111と、メモリ112を備えた制御部113を有している。制御部113は、データバス等のバス114を介して、追跡軌跡算出部115、追跡軌跡比較部116、誤検出軌跡判別部117、誤検出定常発生領域判別部118および誤検出軌跡削除部119を制御する。制御部113はメモリ112に格納された制御プログラムを実行することで、追跡軌跡算出部115、追跡軌跡比較部116、誤検出軌跡判別部117、誤検出定常発生領域判別部118および誤検出軌跡削除部119の少なくとも一部をソフトウェアで実現することができる。
ここで、追跡軌跡算出部115は、追跡注目領域で道路101を走行する車両103の移動する位置を追跡するようになっている。追跡軌跡比較部116は、追跡軌跡算出部115の算出した複数の車両103の運動軌跡を比較する。誤検出軌跡判別部117は、車両103の誤検出とされる軌跡を判別する。誤検出定常発生領域判別部118は、追跡注目領域における誤検出が定常的に発生する領域を判別する。誤検出軌跡削除部119は、車両103の誤検出を示す時系列データから算出された軌跡を追跡処理の対象から除外する。
図5は、図4に示した車両位置検出センサが検出対象とする車両の追跡注目領域をハッチングを付して示したものである。本実施の形態で採り上げる例で、道路101は片道が3レーン(車線)からなっている。ここで追跡注目領域131は、車両(図示せず)の進行方向に道路101の第1の位置P1から第2の位置P2までの帯状の領域をいう。この追跡注目領域131で図4に示した車両103のそれぞれの位置を追跡し、この追跡過程で発生した誤検出のデータを排除することになる。
このために、本実施の形態では追跡注目領域131のどの位置で車両の検出信号が発生するかのデータを使用するようになっている。このデータは、追跡注目領域131を複数の単位領域に区分けして、それぞれの単位領域で車両検出頻度を表わしたものからなる。
図6は、追跡注目領域を単位領域に分割した例を示している。追跡注目領域131は、破線で示すように、それぞれのレーンを跨がないようにマトリックス状に分割する。これによる1つ1つの枡目が単位領域141を構成する。この例では、追跡注目領域131を、車両進行方向に10等分すると共に、それぞれのレーンを幅方向に2等分して、合計60個の単位領域141に区分する。
図7は、追跡注目領域におけるそれぞれの単位領域の予め定められた時間内における検出頻度を数値で表わした一例を示したものである。ここで、単位領域141のうち「0」として表わされた箇所では、車両の検出が一度もされていないことを意味する。これに対して、単位領域141のうちで「89」と示された箇所では、定められた時間内に車両が89回検出されたことを表わしている。
図8および図9は、本実施の形態での道路の追跡注目領域における車両の追跡の原理を説明するためのものである。このうち、図9が注目している時刻Tにおける各車両103の位置を表わしており、図8はこれよりも単位時間「1」だけ過去の各車両103の位置を表わしている。これらの図で各車両103は矢印145で示す方向を車両進行方向としている。図8および図9を用いて説明する。
図8の時刻T−1の状態を、まず説明する。道路101の第1レーン151には、追跡注目領域131内に車両10311と車両10312が、それぞれ表示された位置に検出されている。車両10311と車両10312のそれぞれに繋がる破線は、追跡注目領域131内でのこれらの車両10311、10312の運動軌跡16111、16112を表わしている。同様に、第2レーン152には、追跡注目領域131内に車両10321と車両10322が、それぞれ表示された位置に検出されている。同様に、第3レーン153には、追跡注目領域131内に車両10331が表示された位置に検出されている。他の車両10332は、追跡注目領域131の手前の位置に検出されている。各運動軌跡16111、16112、16121、16122、16131は、追跡注目領域131において確定したものとする。
図9に示す時刻T−1から単位時間「1」だけ経過した時刻Tにおける、図9に示す第1レーン151に注目する。ここには、追跡注目領域131から外れた位置に実際の車両10311が移動しており、他の車両10312は、図8に示した位置よりも図で上方にずれた位置に移動しているものとする。同様に、図9の第2レーン152と、第3レーン153には、車両10321、10322、10331、10332が位置している。
ただし、第1レーン151における車両10311は追跡注目領域131から外れており、検出の対象とはなっていないことに注意する必要がある。すなわち、時刻Tにおける図4に示した車両位置検出センサ102の検出結果からは、追跡注目領域131内に×印を付記した各車両10312、10321、10322、10331、10332の位置に、車両らしきものが検出されているに過ぎない。追跡注目領域131には、これ以外にも、同じく×印を示した箇所に、車両103の候補検出位置17111、17112、17131が検出されている。
したがって、車両追跡装置105は、これらの中から、各車両103の時刻Tにおける位置を確定させて、各運動軌跡16111、16112、16121、16122、16131を延長させる必要がある。また、新たに追跡注目領域131に登場する車両10332については、軌跡の追跡を開始すると共に、追跡注目領域131から外れる車両103があれば、この領域内における追跡を終了する必要がある。
そこで、時刻T−1までの各車両103の運動軌跡161を基にして、時刻Tにおける新たな運動軌跡を生成する。このために、図4に示した追跡軌跡比較部116は、比較対象とされた車両追跡軌跡を時刻Tにおいて比較する。同じく図4に示した誤検出軌跡判別部117は、車両103の位置を正しく検出して得られる車両位置の時系列データに基づいて、生成され得ない運動軌跡を、定常的な誤検出の時系列データから算出された軌跡であると判別する。このためには、車両位置検出センサ102で得られた車両検出結果を車両検出位置分布に反映し、その分布情報から定常的な誤検出発生領域を判別する。
図9に示した各運動軌跡16111、16112、16121、16122、16131の先端に記した○印は、時刻T−1における軌跡の先端位置である。これら○印を記した終端位置を基にして、時刻Tにおける各候補検出位置17111、17112、17131と、他の×印を付した車両103の各位置から正しい車両位置を対応付けることになる。ちなみに、図9に示す候補検出位置17111、17112、17131は、エラーとして最終的に判別される位置となる。
図10は、時刻Tの追跡注目領域に存在する1つのレーン内における時刻T−1までで得られた運動軌跡と候補検出位置の対応付けの一例を表わしたものである。この例では、運動軌跡161の○印で示した終端位置と、この付近に存在する3カ所の候補検出位置1711、1712、1713の対応付けが問題となる。
運動軌跡の終端位置との対応付け方法の例としては、運動軌跡の終端と検出位置までの距離をlとするとき、この距離lを用いて定義される次の(1)式を、対応スコアとして用いることができる。
DS=1/l ……(1)
この(1)を用いると、図10の例では、運動軌跡161の○印で示した終端位置から距離が最も短い候補検出位置1711が最も対応スコアDSが高くなる。また、終端位置から距離が最も遠い候補検出位置1713が最も対応スコアDSが低くなる。
このように、この対応付け方法では、運動軌跡の終端のそれぞれについて全候補検出位置171(図10で×印を記したすべての位置)との距離を用いてスコアを算出する。そして、対応スコアの昇順に1位、2位、…と順位付けを行い、対応スコアDSが1位に相当する候補検出位置1711を、注目する運動軌跡終端に対応したものと見なす。
候補検出位置171との対応付けに成功した運動軌跡については、その終端を対応する候補検出位置171まで延長する。これにより、現在の時刻Tにおける運動軌跡が算出される。時間の経過によって追跡注目領域131の内部から外部に移動した車両103(たとえば図9における車両10311)の運動軌跡161が時刻Tで消滅する。また、追跡注目領域131の外部から内部に移動した車両103(たとえば図9における車両10332)の運動軌跡161が新たに生成される。したがって、運動軌跡161の個数は、各時刻で変動することになる。
図4に示した追跡軌跡比較部116は、図9に示した時刻Tに追跡注目領域131内に存在する所定数の車両103の運動軌跡161の中で、同一レーン上で、この時刻Tにおける車両103の位置の検出を待つ2個の運動軌跡161を選択する。そして、有限な固定幅の時間レンジで、これらの運動軌跡161の比較を行う。
ここで、追跡軌跡比較部116の比較処理に固定幅の時間レンジを用いる理由を説明する。たとえば渋滞などの交通状況に依存して、追跡注目領域131における注目する車両103の出現から消滅までに要する時間は動的に変化する。したがって、車両103の出現から消滅に合わせて運動軌跡の比較に用いる時間レンジを動的に調整するのは困難だからである。このため、図5に示したように、道路101における車両103の進行方向における追跡注目領域131の上限位置をP1とし、下限位置をP2と設定する。また、車両103の進行方向を上向きとした車両位置を表わす軸を縦軸、時刻を横軸にとる。
図11は、この例における運動軌跡の解析が行われる領域を示したものである。たとえば図5に示す車両進行方向としての縦軸方向に、固定点としての第1の位置P1と第2の位置P2をとる。また、横軸には、時刻T1と時刻T2という固定された2つの時刻をとる。本実施の形態では、これらの位置P1、P2と、時刻T1、T2によって囲まれた矩形領域181としての固定レンジの中で運動軌跡の解析を行う。
図12は、車両検出結果に基づいて算出された運動軌跡の一例を示したものである。図4および図8と共に説明する。
車両位置検出センサ102が車両103を正常に検出しており、かつその車両103が、たとえば第1レーン151を矢印145で示す方向に走行しているものとする。この場合、その車両103の運動軌跡191は、基本的に図12に示す実線のように、一部に水平な部分を含む場合のある右肩上がりの折れ線となる。
この一方で、定常的に発生する車両誤検出の結果に基づいて算出された運動軌跡の場合には、たとえば第1レーン151上の同一箇所に車両検出結果が存在する。この結果として、車両が停止しているように観測される。したがって、運動軌跡192は図12中の破線で示すように車両103の停止位置PAを中心として所定幅で車両進行方向に進退する折れ線で構成される。
このように停止位置PAには破線で示す運動軌跡192に対応した車両は存在しない。これに対して、実線で示す運動軌跡191の場合には、車両103が実際に走行している様子を表わしている。このため、運動軌跡191の場合には、車両103が停止位置PAの手前で一度停止することなく第1レーン151を走行することになる。この結果、図12の円193の内部に示すように両運動軌跡191、192に交差が発生する。
図4に示した誤検出軌跡判別部117は、まず、図12に示す2個の運動軌跡191、192の交差の発生の有無を観測する。交差が存在する場合には、運動軌跡が水平と見なされる運動軌跡192に注目する。そして、2個の運動軌跡191、192の交差位置PAと、追跡開始位置とのずれDを算出する。ここで、追跡開始位置とは、運動軌跡192についてその追跡を開始した時刻における車両検出位置をいう。図12の場合には、運動軌跡192の追跡開始位置はPSであり、交差位置はPAとなる。したがってずれDは、図12に示したとおり、位置PSと位置PAの差となる。
図13は、追跡開始位置とずれ量の関係を説明するためのものである。この図13で運動軌跡191は図12と同一である。一方、時刻T1と時刻T2の間の運動軌跡が図12の運動軌跡192と非常によく似ている運動軌跡195は、実際の車両103の走行を表わしており、位置PBで所定時間だけその走行を停止させている。
運動軌跡195の場合には、時刻T1よりも手前の追跡開始時刻における追跡の開始位置PCと運動軌跡195との交差位置PBの間のずれDが、定常的に発生する誤検出結果に基づく運動軌跡191におけるずれ量Dを大きく超えている。したがって、運動軌跡195の場合には、実際の車両103の走行を表わしていると判別することができる。
しかも、図13の場合には、運動軌跡191と運動軌跡195が円193の内部に示すように、図12と同様に交差している。したがって、図13の場合には、運動軌跡191で示す車両103と運動軌跡195で示す他の車両103が円193の内部に示す位置で衝突しており、運動軌跡191で示す車両103がその後も進行方向に移動していることを表わしている。すなわち、図13の場合には、運動軌跡195は実際の車両103の検出結果を表わしていると判別すべきであって、誤検出による運動軌跡である点と判別するのは正しくない。
一方、図12に示した例では、運動軌跡192が時刻T1よりも十分時間的に遡った追跡開始時点でも交差位置PAとほぼ等しい位置にあるとすると、誤検出による運動軌跡であると判別する確率が高まる。
このように、ある運動軌跡が車両103の停止位置に相当する「水平とみなすことのできる軌跡」を含んでいるとき、追跡開始位置とこの停止位置とのずれDを測定し、その大きさから、誤検出による運動軌跡であるかどうかを判断することは有効である。なぜならば、定常的に発生する誤検出はレーン上における同一箇所に繰り返し観測される。そこで、このような誤検出による運動軌跡の場合には、停止位置に相当する他運動軌跡との交差位置と追跡開始位置がほぼ一致することになる。この一方で、走行していた車両が実際に停止した場合には、図13の運動軌跡195における追跡の開始位置PCと車両103の停止位置PBのように、停止するまでの車両103の走行に基づいて、有意な大きさのずれDが生じるからである。
図14は、ずれDが大きくなる例外的な場合を表わしている。この図14で示す追跡注目領域131における一例としての第2レーン152に、誤検出を定常的に行う誤検出定常発生領域2011〜2015が存在しているものとする。この場合には、追跡注目領域131における矢印145で示す車両進行方向の最初の誤検出定常発生領域2011内の○印が追跡開始位置202となる。また、車両進行方向の最後の誤検出定常発生領域2015内の○印が車両停止位置203となる。
この例の場合、追跡開始位置202と車両停止位置203を結ぶ破線で示す運動軌跡が算出されてしまう。これらは第2レーン152に沿っているので、結果的にずれDを大きくしてしまう。
そこで、図6で示したように追跡注目領域131を複数の単位領域141に分割しておく。そして、図4に示した誤検出軌跡判別部117は、車両位置検出センサ102から得られた車両103の検出位置を、これら複数の単位領域141にそれぞれ対応させて、検出頻度を求め、これを更新する。これにより、図7に示したような、検出頻度分布が得られる。
ところで、注目する運動軌跡における、時刻Tでの検出位置に対応した各単位領域141での検出頻度をCtとする。このとき、追跡開始時刻T0から車両が停止したと見なされる現時刻Tまでの検出位置における検出頻度の総和Cは、次の(2)式で表わすことができる。
図14のように複数の誤検出定常領域から算出された運動軌跡の場合には、総和Cが大きくなる。
以上のようなずれDおよび検出頻度の総和Cを入力とする関数Fは、次の(3)式で表わされる。
F(D,C) ……(3)
この(3)式を用いて、図4に示した誤検出軌跡判別部117は、注目する運動軌跡が誤検出の結果に基づいて算出されたものか否かを判定する。たとえば関数F(D,C)が、次の(4)式で表わされるものとする。
F(D,C)=W1×D+(W2/C) ……(4)
ここで、W1およびW2はパラメータである。
この(4)式で表わされる値が、予め設定した閾値より小さい場合には、注目した運動軌跡が定常的に発生する車両103の誤検出結果に基づいて得られた運動軌跡であると見なす。
図4に示した誤検出定常発生領域判別部118は、誤検出軌跡判別部117で算出された検出頻度分布に注目する。そして、検出頻度が閾値を上回る単位領域141のうちで追跡注目領域131の端部に近い領域を、誤検出定常発生領域として判別する。
図15は、誤検出定常発生領域を判別することが必要な理由を説明するためのものである。図9の候補検出位置17112のように、追跡注目領域131の端点で、定常的な誤検出から算出される運動軌跡が発生する場合がある。このような場合には、図15で示すように、運動軌跡が、その解析レンジの境界に張り付くことになる。この結果、図12あるいは図13で説明した運動軌跡の交差に基づく判別が不可能となる。
定常的な誤検出に対応した単位領域141では、車両検出頻度が当然高くなる。したがって、単位領域141ごとの車両103の検出頻度を組合わせることにより、追跡注目領域131の任意の場所で定常的な誤検出が発生しても、その判別が可能になる。誤検出軌跡削除部119は、誤検出軌跡判別部117で定常的に発生した車両誤検出結果に基づいて算出された運動軌跡を車両追跡処理から除外する。
図16は、図4の車両追跡装置内のメモリにおける主要な領域を示したものである。メモリ112には、CPU111の実行するプログラムを格納するプログラム格納領域211の他に、幾つかの領域が設定されている。検出データ格納バッファ212は、図4に示す車両位置検出センサ102から送られてくる検出データ104を一時的に格納する。観測データ保存領域213は、車両位置検出センサ102から送られてくる検出データ104のうち、図7で説明した誤検出定常発生領域に対応するものを除外したデータを保存する。誤検出定常発生登録領域214は、誤検出定常発生領域を登録する。リストGL215は、すべての運動軌跡の組合わせを格納している。リストErr216は、運動軌跡のうちの誤検出の軌跡を登録する。
図17は、車両追跡システムの動作を具体的に表わしたものである。図4、図6、図7、図12および図16と共に説明する。
まず、車両追跡装置105内の制御部113は、車両位置検出センサ102から現時刻Tにおける検出データ104を入力して、そのメモリ112の検出データ格納バッファ212に格納する。この検出データは、図6に示したように追跡注目領域131をマトリックス状に分割した所定個数の単位領域141の画像データからなる。図7で説明したように、これらの画像データの中には、誤検出の確率が高く、誤検出定常発生登録領域214に登録されているものも含まれている。制御部113は、これら誤検出定常発生領域に対応する単位領域141の画像データを除いたM個の画像データを、車両検出結果を示す現時刻Tの観測データとして、メモリ112の観測データ保存領域213に保存する(ステップS301)。
次に、追跡軌跡算出部115の処理に移る。追跡軌跡算出部115は現時刻Tよりも1段階前の時刻T−1で得られた観測データを呼び出して、現時刻TにおけるNT-1個の観測データとの対応付けを行う。そして、これから時刻Tにおける運動軌跡を算出する(ステップS302)。算出した運動軌跡の個数をNTとする。
次に、追跡軌跡比較部116の処理に移る。追跡軌跡比較部116は、道路101の注目レーン上において終端を持つ運動軌跡をリストGL215に登録する(ステップS303)。この登録した運動軌跡をGTとする。追跡軌跡比較部116は、次にリストGL215の中から任意の2個の運動軌跡の組合わせのうち、未選択のものを選択する(ステップS304)。
次に、誤検出軌跡判別部117の処理に移る。誤検出軌跡判別部117は、ステップS304で選択した2個の運動軌跡を比較する。すなわち、誤検出軌跡判別部117は、図12を用いて説明した運動軌跡191、192の交差が存在するか否かを判定する(ステップS305)。運動軌跡191、192に交差が存在する場合(Y)、誤検出軌跡判別部117は、停止車両の運動軌跡が存在するかをチェックする(ステップS306)。
図12で説明したような停止車両の運動軌跡が存在する場合(ステップS306:Y)、誤検出軌跡判別部117は、交差する2個の運動軌跡191、192のそれぞれに対して、検出位置のずれDを算出する(ステップS307)。そして、誤検出軌跡判別部117は、ずれDが小さい軌跡を停止車両に対応した運動軌跡と判定する。その後、誤検出軌跡判別部117は、車両103の検出位置に対応した単位領域の検出頻度を更新して(ステップS308)、前記した(3)式の関数Fを算出する(ステップS309)。
この結果、ステップS309で算出された関数Fが所定の閾値Thr1未満であった場合には(ステップS310:Y)、誤検出軌跡判別部117が、その運動軌跡のうちの誤検出の軌跡をリストErr216に登録する(ステップS311)。誤検出軌跡判別部117は、リストGL215にリストアップされた運動軌跡の組合わせのすべてを選択したかを判別する(ステップS312)。未選択の組合わせが存在する場合には(N)、ステップS304に戻って、残りの2個の運動軌跡の組合わせのうち、未選択のものを選択する。そして、ステップS305以降の処理を同様に繰り返すことになる。
ステップS310で関数Fが所定の閾値Thr1以上であると判別された場合には(N)、ステップS311のリストErr216への登録を行うことなく、ステップS312の処理に進む。また、ステップS306で誤検出軌跡判別部117が、停止車両の運動軌跡の存在を判別しなかった場合には(N)、その時点でステップS312の処理に進む。更に、ステップS305で2個の運動軌跡に交差が存在しないと判別した場合には(N)、同様に、その時点でステップS312の処理に進むことになる。
ステップS312の処理で追跡軌跡比較部116が運動軌跡の組合わせのすべてを選択したと判断した場合(Y)、追跡軌跡比較部116は、道路101のすべての車線(レーン)を注目したかを判別する(ステップS313)。まだ、注目していない車線(レーン)が存在する場合(N)、追跡軌跡比較部116は現在の注目レーンを残りのレーンの1つに変更する(ステップS314)。そして、ステップS303に戻って、先に説明したと同様の処理を開始する。
このようにして、道路101のすべての車線(レーン)についての処理が終了したら(ステップS313:Y)、所定の閾値以上の検出頻度で誤検出が生じる単位領域141を誤検出定常発生登録領域214に登録する(ステップS315)。そして、リストErr216に登録した運動軌跡を追跡対象から削除して(ステップS316)、処理を終了する(エンド)。
以上説明した本発明の第1の実施の形態の車両追跡システム100では、同一レーンで車両103同士が衝突するように判別する誤検出を防止し、衝突事故を正確に把握することができるという効果がある。また、誤検出の結果を用いて、誤検出定常発生領域の精度を高めることができるという効果もある。
なお、以上説明した第1の実施の形態で、誤検出軌跡判別部117は、注目する2個の運動軌跡が完全に交差することを誤検出か否かの判別の条件としたが、これに限るものではない。2個の運動軌跡が一定程度近接し、これが通常の車間距離として不自然な状態となった段階で、交差が発生したと見なしてもよい。
また、第1の実施の形態では、誤検出軌跡判別部117は、注目する運動軌跡が誤検出の結果に基づいて算出されたものか否かの判定を(3)式を用いて行っている。この(3)式で表わされる関数Fは、入力Dが小さくなれば小さく、入力Sが大きくなれば小さくなる関数であれば、どのような定義であってもよい。更に、誤検出定常発生領域判別部118は、第1の実施の形態で、それぞれの単位領域における検出頻度分布を用いることにしたが、これに限るものではない。たとえば、車両103の検出発生頻度を運動軌跡の比較に用いる時間レンジで割ることによる確率として与えるようにしてもよい。
<発明の第2の実施の形態>
次に本発明の第2の実施の形態を説明する。
図18は、本発明の第2の実施の形態における車両追跡システムを表わしたものである。図18で図4と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
第2の実施の形態の車両追跡システム100Aは、車両位置検出センサ102と、その検出データ104を入力する車両追跡装置105Aから構成されている。
車両追跡装置105Aは、CPU111と、メモリ112Aを備えた制御部113Aを有している。制御部113Aは、データバス等のバス114を介して、追跡軌跡算出部115、誤検出軌跡判別部117Aおよび誤検出軌跡削除部119を制御する。制御部113はメモリ112Aに格納された制御プログラムを実行することで、追跡軌跡算出部115、誤検出軌跡判別部117Aおよび誤検出軌跡削除部119の少なくとも一部をソフトウェアで実現することができる。
図19は、この第2の実施の形態における誤検出軌跡判別部の動作原理を説明するためのものである。図19で図9と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。図19では、×印を示した箇所に、車両103の候補検出位置17113、17123、17133が検出されている。ここで候補検出位置17113は、第1レーン151の位置q1にある。また、候補検出位置17133は、第3レーン153の位置q2にある。候補検出位置17123は、第2レーン152に存在し、その位置は位置q1と位置q2の間にある。第1〜第3レーン151〜153は、共に矢印145で示す方向に車両が走行するレーンである。
このように位置q1と位置q2の間のレンジに、第1レーン151から第3レーン153へと順に、候補検出位置17113、17123、17133が誤検出されたとする。このような場合、検出の時間順によっては、破線で示したような運動軌跡401が得られることになる。
今、位置q1と位置q2の間の距離がたとえば普通車両1台の車長程度とする。この場合、図19に示す破線の運動軌跡401は、車両が進行方向にたかだか車長分だけ進む間に車線変更を2回行ったことを意味する。このような車線変更は明らかに現実にはあり得ない。そこで、運動軌跡401は、誤検出結果に基づいて算出された運動軌跡であると判別することができる。
図18に示した誤検出軌跡判別部117Aは、以上のような原理を基にして、運動軌跡401の追跡開始位置と現時刻での終端位置のずれ(図19の場合には、位置q1と位置q2の間の距離)を算出する。そして、そのずれの値(距離)が予め定められた閾値より小さく、かつ車線変更の履歴が2回以上(またいだレーン数では3以上)の場合に、注目する運動軌跡401を誤検出結果から算出された運動軌跡であると判別する。
図20は、図18に示した車両追跡装置内のメモリにおける主要な領域を示したものである。メモリ112Aには、CPU111の実行するプログラムを格納するプログラム格納領域211Aの他に、幾つかの領域が設定されている。検出データ格納バッファ212は、図18に示す車両位置検出センサ102から送られてくる検出データ104を一時的に格納する。観測データ保存領域213は、車両位置検出センサ102から送られてくる検出データ104のうち、図7で説明した誤検出定常発生領域に対応するものを除外したデータを保存する。誤検出定常発生登録領域214は、誤検出定常発生領域を登録する。リストErr216は、運動軌跡のうちの誤検出の軌跡を登録する。
図21は、図17に対応するもので、第2の実施の形態における車両追跡システムの動作を具体的に表わしたものである。図21で図17と同一の処理が行われる部分については、同一のステップとして表わしており、これらの説明を適宜省略する。図6、図18〜図20と共に説明する。
まず、車両追跡装置105A内の制御部113Aは、車両位置検出センサ102から現時刻Tにおける検出データ104を入力して、そのメモリ112Aの検出データ格納バッファ212に格納する。この検出データは、図6に示したように追跡注目領域131をマトリックス状に分割した所定個数の単位領域141の画像データからなる。制御部113Aは、誤検出定常発生領域214に対応する単位領域141の画像データを除いたM個の画像データを、車両検出結果を示す現時刻Tの観測データとして、メモリ112の図示しない観測データ保存領域に保存する(ステップS301)。
次に、追跡軌跡算出部115は現時刻Tよりも1段階前の時刻T−1で得られた観測データを呼び出して、現時刻TにおけるNT-1個の観測データとの対応付けを行う。そして、これから時刻Tにおける運動軌跡を算出する(ステップS302)。算出した運動軌跡の個数をNTとする。
次に、誤検出軌跡判別部117Aは、未選択の運動軌跡の中から、注目する運動軌跡を1個選択する(ステップS501)。誤検出軌跡判別部117Aは、次にその選択した運動軌跡の車線変更履歴の確認を行い、2回以上の車線変更履歴があるかをチェックする(ステップS502)。2回以上の車線変更履歴がある場合には(Y)、その運動軌跡の追跡開始位置と現時刻Tでの軌跡終端位置のずれDが算出される(ステップS503)。
誤検出軌跡判別部117Aは、この算出したずれDが予め設定した閾値Thr2よりも小さいかを判別する(ステップS504)。小さい場合には、先に説明したように、この運動軌跡は誤検出によるものとなる。そこで、この場合には(ステップS504:Y)、誤検出軌跡判別部117Aがその運動軌跡を誤検出軌跡のリストとしてのリストErr216に登録する(ステップS311)。
誤検出軌跡判別部117Aは、ステップS311の登録を行ったら、すべての運動軌跡を注目し終えたかを判別する(ステップS505)。未処理の運動軌跡が存在する場合には(N)、ステップS501に戻って、同様の処理を行うことになる。なお、ステップS503で算出したずれDが閾値Thr2以上であった場合には(ステップS504:N)、ステップS311の処理を行わずにステップS505の判断を行う。また、ステップS502で、2回以上の車線変更履歴がないと判別された場合にも(N)、ステップS311の処理を行わずにステップS505の判断を行う。
以上のようにしてすべての運動軌跡のチェックが終了したら(ステップS505:Y)、誤検出軌跡削除部119はリストErr216に登録した運動軌跡を追跡対象から削除して(ステップS316)、処理を終了する(エンド)。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態で追跡軌跡比較部116が運動軌跡の登録に使用したリストGL215の使用を行わなかったが、リストGL215を同様に使用することにしてもよい。この場合には、リストGL215の登録のために追跡軌跡比較部116を設けてもよいし、誤検出軌跡判別部117Aがこの機能を兼用してもよい。
以上説明した本発明の第2の実施の形態の車両追跡システム100Aでは、異なった複数のレーンをまたぐように車両103が急速に移動する運動軌跡が発生したとき、これが誤検出であるかを判別することができるという効果がある。また、誤検出の結果を用いて、誤検出定常発生領域の精度を高めることができるという効果もある。
<発明の第3の実施の形態>
次に本発明の第3の実施の形態を説明する。
図22は、本発明の第3の実施の形態における車両追跡システムを表わしたものである。図22で図4と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
第3の実施の形態の車両追跡システム100Bは、車両位置検出センサ102と、その検出データ104を入力する車両追跡装置105Bから構成されている。
車両追跡装置105Bは、CPU111と、メモリ112Bを備えた制御部113Bを有している。制御部113Bは、データバス等のバス114を介して、追跡軌跡算出部115Bおよび誤検出定常発生領域判別部118Bを制御する。制御部113Bはメモリ112Bに格納された制御プログラムを実行することで、追跡軌跡算出部115Bおよび誤検出定常発生領域判別部118Bの少なくとも一部をソフトウェアで実現することができる。
図23は、第3の実施の形態における追跡軌跡算出部の動作原理を説明するためのものである。この図23は、一例としての第1のレーン151における時刻T′、時刻T′+1、時刻T′+2における車両103の検出状態を表わしたものである。車両103は、矢印145で示す車両進行方向に走行しており、その運動軌跡16115が時間の経過と共に追跡注目領域131内を進行方向に延長されている。図23に記した各運動軌跡16115の先端に記した○印は、時刻T′、時刻T′+1、時刻T′+2のそれぞれの時点よりも1段階だけ前の時刻における軌跡の先端位置である。また、車両103のそれぞれ後方に位置する×印6011、6012、6013は、それぞれの時刻T′、時刻T′+1、時刻T′+2における車両103の候補となる候補検出位置である。
この図23では、車両103の前方に車両103の他の候補検出位置17115が検出されている。候補検出位置17115は、各時刻T′、時刻T′+1、時刻T′+2で変化していない。
第1の実施の形態で説明した追跡軌跡算出部115の動作で説明した手順で、図23に示した車両103に対応した運動軌跡16115の各終端(○印)との位置関係で、×印6011、6012、6013で示す候補検出位置と候補検出位置17115の対応スコア順位を考える。すると、(1)式より、車両103に対応した運動軌跡16115の各終端(○印)との距離が短い×印6011、6012、6013で示す候補検出位置のスコアが1位となる。したがって、候補検出位置17115としての誤検出位置のスコアは、2位以下となる。
このように、車両103の運動軌跡16115と車両検出位置の対応付けを行う時間レンジの間で、常に誤検出位置の対応順位は2位以下となる。そこで、候補検出位置17115の発生頻度を図6で示した単位領域141に反映させることにより、定常的に誤検出が発生する単位領域141を同定することができる。
誤検出定常発生領域判別部118Bでは、追跡軌跡算出部115Bで運動軌跡との対応スコアが2位以下となる検出位置の発生頻度を予め道路上に設定した単位領域141ごとに確認する。そして、発生頻度が予め定めた閾値Thr3以上の場合には誤検出定常発生領域と判別する。
図24は、図22に示した車両追跡装置内のメモリにおける主要な領域を示したものである。メモリ112Bには、CPU111の実行するプログラムを格納するプログラム格納領域211Bの他に、幾つかの領域が設定されている。検出データ格納バッファ212は、図18に示す車両位置検出センサ102から送られてくる検出データ104を一時的に格納する。観測データ保存領域213は、車両位置検出センサ102から送られてくる検出データ104のうち、図7で説明した誤検出定常発生領域に対応するものを除外したデータを保存する。誤検出定常発生登録領域214Bは、閾値Thr3以上の単位領域を登録する。
図25は、図17に対応するもので、第3の実施の形態における車両追跡システムの動作を具体的に表わしたものである。図24で図17と同一の処理が行われる部分については、同一のステップとして表わしており、これらの説明を適宜省略する。図6、図22〜図24と共に説明する。
まず、車両追跡装置105B内の制御部113Bは、車両位置検出センサ102から現時刻Tにおける検出データ104を入力して、そのメモリ112の検出データ格納バッファ212に格納する。この検出データは、図6に示したように追跡注目領域131をマトリックス状に分割した所定個数の単位領域141の画像データからなる。制御部113Bは、誤検出定常発生領域214Bに対応する単位領域141の画像データを除いたM個の画像データを、車両検出結果を示す現時刻Tの観測データとして、メモリ112の観測データ保存領域213に保存する(ステップS301)。
次に、追跡軌跡算出部115は現時刻Tよりも1段階前の時刻T−1で得られた観測データを呼び出して、現時刻TにおけるNT-1個の観測データとの対応付けを行う。そして、これから時刻Tにおける運動軌跡を算出する(ステップS302)。算出した運動軌跡の個数をNTとする。
次に、誤検出定常発生領域判別部118Bは、運動軌跡との対応スコアが2位以下となる検出位置の発生頻度を予め道路上に設定した単位領域141ごとに更新する(ステップS701)。そして、閾値Thr3以上の検出頻度の単位領域141を誤検出定常発生登録領域214Bに登録して(ステップS702)、処理を終了する(エンド)。
以上説明した本発明の第3の実施の形態の車両追跡システム100Bでは、車両の運動軌跡の終端が存在するレーンに複数の候補検出位置が検出されたとき、誤検出の候補検出位置を容易に特定することができるという効果がある。また、誤検出の結果を用いて、誤検出定常発生領域の精度を高めることができるという効果もある。
<発明の第4の実施の形態>
図26は、本発明の第4の実施の形態における車両追跡システムを表わしたものである。図26で図4と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
第4の実施の形態の車両追跡システム100Cは、車両位置検出センサ102と、その検出データ104を入力する車両追跡装置105Cから構成されている。
車両追跡装置105Cは、CPU111と、メモリ112Cを備えた制御部113Cを有している。制御部113Cは、データバス等のバス114を介して、追跡軌跡算出部115、追跡開始判定部801、追跡軌跡比較部116、誤検出軌跡判別部117、誤検出軌跡特徴算出部802、誤検出定常発生領域判別部118および誤検出軌跡削除部119を制御する。制御部113Cはメモリ112Cに格納された制御プログラムを実行することで、追跡軌跡算出部115、追跡開始判定部801、追跡軌跡比較部116、誤検出軌跡判別部117、誤検出軌跡特徴算出部802、誤検出定常発生領域判別部118および誤検出軌跡削除部119の少なくとも一部をソフトウェアで実現することができる。
ここで、新たに設けられた追跡開始判定部801は、追跡軌跡算出部115で算出した運動軌跡のうち、追跡開始から短時間しか経過しない運動軌跡に対してその特徴量を算出する。そして、誤検出軌跡特徴算出部802で登録した誤検出軌跡特徴データベースと一致する場合には、追跡処理対象の運動軌跡から削除する。誤検出軌跡特徴算出部802は、誤検出軌跡判別部117で誤検出結果から算出した運動軌跡と判定されたものに対して、その特徴量を算出する。そしてこれらを、誤検出軌跡特徴データベースに登録する。
誤検出軌跡特徴算出部802が算出する特徴量は、運動軌跡が持つ追跡開始位置、検出位置変動幅、検出位置変動の周波数、検出位置から算出される平均速度、平均加速度等の運動軌跡の曲線形状の特徴を表わすものであれば、どのようなものでもよい。
図27は、図26に示した車両追跡装置内のメモリにおける主要な領域を示したものである。メモリ112Cには、CPU111の実行するプログラムを格納するプログラム格納領域211Cの他に、幾つかの領域が設定されている。第1の実施の形態における図16と比較すると、メモリ112Cには、新たに誤検出軌跡特徴データベース811が追加されている。
このようなメモリ112Cは、1個の物理的なメモリあるいは記憶装置である必要はなく、複数の記憶装置や記憶素子が組み合わされたものであってもよい。これは、すでに説明した実施の形態におけるメモリ112、112A、112Bにおいても同様である。
図28は、追跡開始判定部の処理の様子を表わしたものである。まず、追跡開始判定部801は、追跡開始からの経過時間が小さい追跡初期の運動軌跡を選択する(ステップS901)。次に、追跡開始判定部801は、その選択した運動軌跡の運動軌跡特徴量fを算出する(ステップS902)。
図29は、運動軌跡特徴量fの算出の原理を説明するためのものである。この図29で、縦軸は車両103(図26参照)の進行方向を表わしており、横軸は時間の経過を表わしている。
車両103の追跡開始位置をPSとし、検出位置の移動幅をvとする。時刻T1から時刻T2までの区間における車両103の検出位置が移動幅vで図示のように変動するものとする。この運動軌跡の曲線形状の特徴は、車両103の検出位置の変動周波数Fや、検出位置から算出される平均速度V(MV)あるいは平均化速度をα(MV)のような運動軌跡特徴量fとして算出することができる。
図28に戻って説明を続ける。ステップS902で、選択した運動軌跡の運動軌跡特徴量fを算出したら、次のステップS903では、類似度(Similarity)を算出する。類似度(Similarity)の算出には、ステップS302で算出した運動軌跡特徴量と、誤検出軌跡特徴データベース811に登録されているi番目の運動軌跡特徴量PS’(i)、v’(i)、F’(i)、平均速度V(MV)(i)、平均化速度をα(MV)(i)を用いる。類似度(Similarity)は、次の(5)式で算出される。ここで、α1〜α5はパラメータである。
Similarity=α1|PS(S)−PS’(i)|+α2|V(S)−V’(i)|+α3|F(S)−F’(i)|+α4|V(MV)(S)−V(MV)’(i)|+α5|α(MV)(S)−α(MV)’(i)| ……(5)
ステップS903では、この(5)式の値が閾値Thr4より小さくなるiが存在するかの判別が行われる。閾値Thr4より小さくなるiが存在する場合には(Y)、ステップS904に進んで、その注目運動軌跡を追跡対象から削除して、追跡開始判定部801の処理を終了する(エンド)。
(5)式の値が閾値Thr4より小さくなるiが存在しなかった場合には(ステップS903:N)、ステップS904の処理を経ることなく、追跡開始判定部801の処理が終了する(エンド)。
図30は、誤検出軌跡特徴算出部の処理の様子を表わしたものである。まず、誤検出軌跡特徴算出部802は、誤検出結果に基づいて算出された運動軌跡と判定された軌跡を選択する(ステップS921)。次に、誤検出軌跡特徴算出部802は、その選択した運動軌跡の運動軌跡特徴量fを算出する。これは、図28のステップS902と同様の処理である。
以上の処理が終わったら、誤検出軌跡特徴算出部802はステップS922で算出した運動軌跡特徴量を誤検出軌跡特徴データベース(DB)811に登録して(ステップS923)、その処理を終了する(エンド)。
以上説明した本発明の第4の実施の形態の車両追跡システム100Cでは、追跡開始から短時間しか経過しない運動軌跡の特徴量を算出し、誤検出軌跡特徴データベースと一致する場合には、追跡処理対象の運動軌跡から削除することにした。これにより、車両103の運動軌跡の追跡処理の負荷を軽減することができるという効果がある。
なお、以上説明した各実施の形態で、誤検出定常発生領域判別部118によって誤検出定常発生領域と判別された単位領域141は、その判別結果が長期間固定される必要はない。たとえば、一定時間が経過するたびに誤検出定常発生領域に該当するかの判別を行うようにしてもよい。この際に、過去の判別状況を加味したり、判別の際の日照等の気象条件を加味してもよい。
更に誤検出と判定された運動軌跡を誤検出パターンとして辞書に登録するようにして、同様の運動軌跡が登場したときに誤検出であるかどうかの判定に利用してもよい。辞書に登録する際には、誤検出と判定された運動軌跡の追跡開始位置、検出位置変動幅、検出位置変動の周波数、検出位置から算出される平均速度、平均加速度等の状況を併せて登録することが好適である。これにより、同様のパターンの運動軌跡が生じた際の運動軌跡の類似度の処理をより適切に行うことができる。
一例としては、注目する運動軌跡と辞書に登録された運動軌跡とのパターンの一致の有無を判別する。そして、両者のパターンが一致した場合、注目する運動軌跡が持つ追跡開始位置、検出位置変動幅、検出位置変動の周波数、検出位置から算出される平均速度、平均加速度のいずれかが辞書に登録された各種事項と一致するかを比較する。辞書に登録された各種事項とは、誤検出パターンの運動軌跡が持つ追跡開始位置、検出位置変動幅、検出位置変動の周波数、検出位置から算出される平均速度、平均加速度である。そして、辞書に登録されているこれらの事項のいずれかと一致する場合には、注目する車両の検出位置を追跡開始位置として用いない処理を行ってもよい。
注目する車両の運動軌跡と辞書に登録された誤検出パターンの運動軌跡の類似度を計算して、類似度が高かったような場合、今まで車両103の運動軌跡として追跡したものが誤検出の結果であると判別される可能性が高くなる。このような場合には、その運動軌跡の追跡を終了して、候補となる他の運動軌跡を車両103の運動軌跡として絞り込むことも車両103の追跡処理に有効である。
なお、以上説明した本発明は方法の技術思想として、次のように捉えることも可能である。
(第1の技術思想)
同一位置に繰り返し定常的に発生する誤検出の車両検出位置と真の車両検出位置とを判別する車両追跡方法において、車両検出位置を用いて算出される運動軌跡の形状特徴と、車両検出位置の道路面上での出現分布から算出される特徴量に基づいて前記した判別を実行することを特徴とする車両追跡方法。
(第2の技術思想)
第1の技術思想として示した車両追跡方法で、同一レーン上において2つの車両の運動軌跡が交差する際に一方の運動軌跡が一定の範囲内の位置に滞留している場合に、該滞留運動軌跡の追跡開始位置と滞留位置とのずれ量を運動軌跡形状特徴として用い、該運動軌跡を構成する車両検出位置における車両検出頻度の和を車両検出位置出現分布から算出される特徴量として用い、前記したずれ量と前記した検出頻度の和から計算される関数を判別関数としてその値に基づき、該滞留運動軌跡に対応した車両検出位置時系列データに対する誤検出判別を行うことを特徴とする車両追跡方法。
(第3の技術思想)
第2の技術思想として示した車両追跡方法で、前記したずれ量が減少し前記した検出頻度の和が増加すると単調増加する関数を判別関数として用い、該判別関数の値が閾値を上回った場合に前記した滞留運動軌跡に対応した車両検出位置時系列データに対する誤検出判別を行うことを特徴とする車両追跡方法。
(第4の技術思想)
第2の技術思想として示した車両追跡方法で、前記したずれ量が減少し前記した検出頻度の和が増加すると単調減少する関数を判別関数として用い、該判別関数の値が閾値を下回った場合に前記した滞留運動軌跡に対応した車両検出位置時系列データに対する誤検出判別を行うことを特徴とする車両追跡方法。
(第5の技術思想)
第1の技術思想として示した車両追跡方法で、車両検出位置出現分布として、道路領域を複数の部分領域に分割し、予め指定した計数開始時刻と計数終了時刻の範囲内で、各部分領域における車両検出位置の出現頻度を加算することを特徴とする車両追跡方法。
(第6の技術思想)
第5の技術思想として示した車両追跡方法で、車両検出位置出現分布の値が予め指定した閾値以上の場合に、対応した部分領域を車両位置の誤検出が定常的に発生する領域として判別することを特徴とする車両追跡方法。
(第7の技術思想)
第1の技術思想として示した車両追跡方法で、車両の運動軌跡が進行方向に一定の短い距離を進む際にまたぐレーン数を運動軌跡形状特徴として用い、該レーン数が3以上の場合に、該運動軌跡に対応した車両検出位置の時系列データを誤検出パターンと判別することを特徴とする車両追跡方法。
(第8の技術思想)
第1の技術思想として示した車両追跡方法で、現時刻までに算出された既算出運動軌跡と現時刻に得られた車両検出位置を対応付ける際に、道路領域を複数の部分領域に分割し、該対応づけに用いる対応スコアが2位以下の車両位置に対応した部分領域に出現頻度値を加算し、車両検出位置出現分布から算出される特徴量として用いることを特徴とする車両追跡方法。
(第9の技術思想)
第8の技術思想として示した車両追跡方法で、前記した対応スコアとして、前記した既算出運動軌跡の終端位置と現時刻車両検出位置との距離に逆数を用い、該対応スコアの降順にスコア順位を定めることを特徴とする車両追跡方法。
(第10の技術思想)
第8の技術思想として示した車両追跡方法で、車両検出位置出現分布の値が閾値以上となる前記した部分領域を、車両の誤検出が定常的に発生する領域として判別することを特徴とする車両追跡方法。
(第11の技術思想)
第1〜第10の技術思想のいずれかとして示した車両追跡方法で、誤検出発生領域と判別されてから一定時間経過ごとに、再度誤検出発生領域か否かの判定を行うことを特徴とする車両追跡方法。
(第12の技術思想)
第1〜第11の技術思想のいずれかとして示した車両追跡方法で、誤検出と判定された運動軌跡を誤検出パターンとして辞書に登録することを特徴とする車両追跡方法。
(第13の技術思想)
第12の技術思想として示した車両追跡方法で、誤検出と判定された運動軌跡の追跡開始位置、検出位置変動幅、検出位置変動の周波数、検出位置から算出される平均速度、平均加速度を辞書に登録することを特徴とする車両追跡方法。
(第14の技術思想)
第12または第13の技術思想として示した車両追跡方法で、注目する車両軌跡と辞書に登録された誤検出パターンの軌跡の類似度を計算し、該類似度が高い場合、該注目車両軌跡を誤検出パターンと判別して以後の追跡を終了することを特徴とする車両追跡方法。
(第15の技術思想)
第13の技術思想および第14の技術思想として示した車両追跡方法で、注目する運動軌跡が持つ追跡開始位置、検出位置変動幅、検出位置変動の周波数、検出位置から算出される平均速度、平均加速度のいずれかが辞書に登録された誤検出パターンの運動軌跡が持つ追跡開始位置、検出位置変動幅、検出位置変動の周波数、検出位置から算出される平均速度、平均加速度と同じ場合、該注目車両位置を追跡開始位置として用いないことを特徴とする車両追跡方法。