JP5396761B2 - 微小構造体と微小構造体を有する光制御素子 - Google Patents

微小構造体と微小構造体を有する光制御素子 Download PDF

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本発明は、プラズモニック材料(例えば、プラズモニック結晶)としての機能あるいはメタマテリアル(例えば、負の屈折率効果を示す材料)として機能を発現するナノメートル乃至マイクロメートルサイズの微小構造体と、この微小構造体を基板上に担持した高性能な光制御素子に関する。
ナノメートルからマイクロメートルスケールの大きさの構造体(以下、「微小構造体」と呼称する)はナノフォト二クス、高密度記録媒体、光学素子、バイオチップなど多くの分野で研究が進んでいる。
微小構造体の有する光学的特性あるいは電磁気学的特性、例えば、表面プラズモンは、光が特定の条件を満たして物質に入射された場合に、自由電子が起こす集団的な振動(プラズマ振動)によって生じる電場が大きく増強する現象である。数十ナノメートルオーダーのサイズで、プラズモンを生じさせる貴金属などの材料からなる特徴のある形状の微小構造体を規則配列させて新たな光学現象を生み出す分野にメタマテリアルの分野がある。メタマテリアルとは、電磁気学的および光学的性質において自然界にない特性を持った人工の物質を指し、特に負の屈折率を持った物質を指して用いられる。例えば、人工媒質を伝わる電磁波に対する有効的な誘電率(ε)と透磁率(μ)の値が共に負であると、負の屈折率を生じる。
例えば、負の屈折率を有するロッド状の微小構造体を複数規則配列させ構造によって、波長1.5μmの光照射において反射率の向上と透過率の低下を示す現象が見い出されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、金(Au)からなるドットを2個隣接して配置し、それらを規則配列させた構造によって、TE波とTM波の偏光依存性に違いが生じることが見い出されている(例えば、非特許文献2参照)。つまり、近接した2個のドット方向に振動する光は、特定の波長域で反射率が高くなり、この現象を光制御素子へ応用することが考えられている。
微細孔(あるいは、微小孔)を形成する材料は、滑らかな内径を形成できる材料である必要がある。一方、微細孔中に磁性材料や貴金属を充填させる技術は、スパッタリング法、蒸着法、微粒子の充填、交流電析法などの電気化学プロセス、ゾルゲル法などがある。
例えば、Alの陽極酸化による規則ナノホールアレーを形成した後に、交流電析法などの電気化学プロセスによって強磁性金属Coを微細孔内に析出させる方法を用いて高密度磁気記録媒体を形成する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この手法では、微細孔形成箇所を厳密に制御できという課題がある。しかも製造プロセスも複雑で安価な手法とは言えない。
また、ジブロック共重合体による海・島構造を利用して微細構造を形成する手法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この手法では、微細孔の形状や形成位置を規則的に形成できないという課題がある。しかも微細構造の品質安定性が確保し難く、製造プロセスとして簡便、安価な手法とは言えない。
なお、微細なポアや、セル内に機能材料(例えば、磁性、記録材料)が配置された記録媒体などが知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
特開2006−277844号公報 特開2002−334414号公報 特開2006−277844号公報 特開2006−252712号公報 V.M.Shalaev, et al., Optics Letters, Vol.30, No.24, p3356-3358, 2005、「Negative index of refraction in opticalmetamaterials」 A.N.Grigorenko, et al., Nature, Vol.438, p335-338, 2005
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、少なくとも一つの微細孔を備えたナノメートル乃至マイクロメートルスケールサイズ(サイズ=スケール)に構成され、プラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとして機能を発現する微小構造体と、前記微小構造体を基板上に担持し光制御可能とした高性能な光制御素子を提供すると共に、微小構造体および光制御素子の簡易で安価な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔13〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
〔1〕:上記課題は、ナノメートル乃至マイクロメートルサイズに構成された微小構造体であって、
前記微小構造体は基板上に略垂直方向に形成され、該微小構造体は内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造からなると共に、前記外壁は少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素を含む混合材料からなり、前記微細孔内に、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料が充填されてなることを特徴とする微小構造体により解決される。
〔2〕:上記〔1〕に記載の微小構造体において、前記内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造が、前記基板面に対して凸形状であることを特徴とする。
〔3〕:上記〔1〕に記載の微小構造体において、前記内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造における該外壁が、少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素を含有する混合材料からなる薄膜に接合して囲まれ、該薄膜上面と前記外壁上面が平坦に連続していることを特徴とする。
〔4〕:上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の微小構造体において、前記微細孔内に充填されるAu、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料が、絶縁材料を介して積層構成で充填されていることを特徴とする。
〔5〕:上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の微小構造体において、前記微小構造体の外壁が円筒形状であり、内側の微細孔が同心円構造であることを特徴とする。
〔6〕:上記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の微小構造体において、前記硫黄化合物が硫化亜鉛であることを特徴とする。
〔7〕:上記〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載の微小構造体において、前記硫黄化合物および酸化ケイ素を含む混合材料に光吸収増幅材料を添加することを特徴とする。
〔8〕:上記〔7〕に記載の微小構造体において、前記光吸収増幅材料が、Al、Ag、Au、Cu、Zn、Pt、Sb、Te、Ge、Si、Bi、Mn、W、Nb、Co、Sr、Fe、In、Sn、Ni、Mo、Mg及びCaから選ばれる少なくとも1種の元素からなるものであることを特徴とする。
〔9〕:上記〔8〕に記載の微小構造体において、前記光吸収増幅材料が、Al、Ag、Au、Cu、Zn、Pt、Sb、Te、Ge、Si、Bi、Mn、W、Nb、Co、Sr、Fe、In、Sn、Ni、Mo、Mg及びCaから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含むことを特徴とする。
〔10〕:上記課題は、〔1〕乃至〔9〕のいずれかに記載の微小構造体を基板上に担持し、光制御可能としたことを特徴とする光制御素子により解決される。
〔11〕:上記〔10〕に記載の光制御素子において、前記光制御が微小構造体の有する表面プラズモンに依るものであることを特徴とする。
〔12〕:上記〔10〕に記載の光制御素子において、前記光制御が、微小構造体の有する屈折率に依るものであることを特徴とする。
〔13〕:上記〔10〕乃至〔12〕のいずれかに記載の光制御素子において、前記微小構造体が、基板上に複数少なくとも1方向に規則配列していることを特徴とする。
本発明の微小構造体によれば、内側に少なくとも一つの微細孔を有し外側に外壁を備えたナノメートル乃至マイクロメートルサイズの構造が厳密に構成されるため、特異な光学的特性あるいは電磁気学的特性を発現し、例えば、プラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとしての機能を発揮する。この機能を利用することにより、高性能な光制御素子を提供することができる。
本発明の微小構造体の製造方法における工程フロー(1a)〜(1d)によれば、微細孔にAu、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料が充填された凸形状の微小構造体が厳密に制御され、簡易かつ安価に作製される。また、工程フロー(1A)〜(1C)によれば、上記所望の成分が充填された微細孔の外壁上面と周囲を囲う薄膜上面が平坦に連続し、周囲の薄膜に内包された微小構造体が厳密に制御され、簡易かつ安価に作製される。いずれの製造方法においても、ナノメートル乃至マイクロメートルスケールサイズに微小構造体が規則正しく形成されるため、プラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとして機能を発揮することが可能となる。
本発明の微小構造体を基板上に担持した光制御素子の製造方法、工程フロー(2a)〜(2d)、および工程フロー(2A)〜(2C)によれば、いずれも上記微小構造体の製造方法が反映されるために簡易かつ安価に作製され、プラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとしての機能が発揮されて光制御が可能となり、高性能な光制御素子が得られる。
前述のように本発明における微小構造体は、ナノメートル乃至マイクロメートルサイズに構成された微小構造体であって、
前記微小構造体は基板上に略垂直方向に形成され、該微小構造体は内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造からなると共に、前記外壁は少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料からなり、前記微細孔内に、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料が充填されてなることを特徴とするものである。
なお、本発明においては、二酸化珪素(SiO2)を酸化珪素(SiO2)と呼称することとする。
また、本発明における上記微小構造体は、基板上に微小構造体が設けられてなる微小構造物の概念も含むものである。
上記構成とされた微小構造体は、後述の製造方法により簡易かつ安価に作製され、ナノメートル乃至マイクロメートルスケールサイズでありながら厳密に制御された滑らかで規則性のある構造を有する。微細孔にAu、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる所望の材料が充填された構成により、微小構造体は特異な光学的特性あるいは電磁気学的特性を発現する。
微小構造体の外壁は少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料により形成されるが、例えば、硫化亜鉛(ZnS)と酸化珪素(SiO2)を含む混合材料はパルスレーザ光を照射することでレーザスポット中央部に滑らかな微細孔を形成することができる。硫化亜鉛単体をスパッタリング成膜すると結晶成長が進み結晶化してしまうが、酸化珪素を組成比にして約50〜85%含ませると硫化亜鉛の結晶化を妨げ、薄膜全体としてアモルファス状態になる。アモルファス状態の薄膜にパルスレーザ光を照射して微細孔を形成すると共に、微細孔を囲う外壁を構成する領域を変質(結晶化)させ外壁とする。その際、後述するように、光吸収層を介するか、もしくは硫化亜鉛と酸化珪素(SiO2)を含む混合材料中に光吸収材料を含ませることで、レーザスポット中央部に滑らかな微細孔を形成することができる。
上記内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造が、基板面に対して凸形状の構造とすることができる。
Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる材料を微細孔に充填することにより、微小構造体がプラズモニック材料(例えば、プラズモニック結晶)としての機能あるいはメタマテリアル(例えば、負の屈折率効果を示す材料)としての機能を発揮する。特に、Au、Ag、Cuを微細孔に充填したものはプラズモン励起に優れた特性を示す。例えば、プラズモニック材料(局在表面プラズモンを持つプラズモニック結晶)に、偏光方向の異なる光を入射すれば、波長依存性を伴う異なる光学特性が現れ、これを利用することによって磁気光学素子などの高性能な光制御素子を提供することができる。
また、上記内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造における該外壁が、少なくとも硫黄化合物および酸化珪素(SiO2)を含有する混合材料からなる薄膜に接合して囲まれ、該薄膜上面と前記外壁上面が平坦に連続している構造とすることもできる。
薄膜上面と前記外壁上面が平坦に連続した構造の微小構造体とすれば、後述の製造方法により簡易かつ安価に作製され、ナノメートル乃至マイクロメートルサイズでありながら厳密に制御された滑らかで規則性のある構造を有し、1個の微細孔に前記材料が充填された構成であってもプラズモニック材料(局在表面プラズモンをもつプラズモニック結晶)としての機能が発揮され、偏光方向の異なる光が入射した際に異なる光学特性が現れ、これを利用することによって高性能な光制御素子を提供することができる。
ここで、前記微細孔内に充填される材料は、積層構成であってもよく、例えば、絶縁材料を介して積層構成(例えば、金属/絶縁体/金属)で充填されていても構わない。
前記凸形状、あるいは薄膜上面と前記外壁上面が平坦に連続している構造のいずれの場合にもメタマテリアルとして機能する微小構造体が形成される。メタマテリアルとして機能する構成の微小構造体を形成することで、高性能な光制御機能を持つ光制御素子を提供することができる。
前記微小構造体において、外壁を円筒形状とし、内側の微細孔を同心円構造とすることができる。このような微細孔形状は基板面に対してほぼ垂直な円柱構造である。
微小構造体の外壁を円筒形状とし、内側の微細孔を同心円構造とすることで製造も簡易かつ安価となり、微小構造体が規則正しく形成される。このような微小構造体は、プラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとして機能を発現することができる。
すなわち、プラズモニック材料(局在表面プラズモンをもつプラズモニック結晶)として機能する構成の微小構造体、あるいはメタマテリアルとして機能する構成の微小構造体を形成することで、高性能な光制御機能を持つ光制御素子を提供することができる。
本発明の微小構造体に形成される微細孔の外壁を構成する材料は、少なくとも硫黄化合物および酸化珪素(SiO2)を含む混合材料であるが、硫黄化合物として硫化亜鉛が好ましく用いられる。
硫黄化合物として硫化亜鉛を用いて酸化珪素(SiO2)との混合材料をアモルファス状態としておき、調整されたレーザ照射条件(レーザパワー、時間からなるストラテジを設定)によって、微細孔を形成すると共に、微細孔を囲う外壁を構成するための領域を変質(結晶化)させる(例えば、凸形状の場合には後で化学的なエッチング処理を施す)ことにより微細な外壁が精度よく形成され滑らかな微小構造体が得られる。これにより、プラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとしての機能が一層向上し、これを利用することによって光制御素子としての性能をさらに向上させることができる。
また、前記硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料に光吸収増幅材料を添加することが好ましい。
前述のように光吸収増幅材料を添加することで、レーザ照射によって微細孔の形成、および微細孔を囲う外壁の形成(結晶化)を行う際に、効率良く光吸収が行われて容易に微小構造体が規則的かつ滑らかに形成される。
ここで、前記光吸収増幅材料が、Al、Ag、Au、Cu、Zn、Pt、Sb、Te、Ge、Si、Bi、Mn、W、Nb、Co、Sr、Fe、In、Sn、Ni、Mo、Mg及びCaから選ばれる少なくとも1種の元素からなるものであることが好ましい。これによって、さらに熱の吸収が効果的に行われて短時間で微細孔の形成、および微細孔を囲う外壁の形成(結晶化)が行われる。なお、前記元素からなるものにはそれらの酸化物を一部含むことができる。つまり、一部その酸化物を含むことで、光透過性のよい微小構造体が得られる。
前述のように本発明の微小構造体はプラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとして機能を発現できる。このような微小構造体を基板上に担持すれば、表面プラズモンに依る光制御あるいは屈折率(例えば、負の屈折率)に依る光制御等が可能な高性能の光制御素子が簡易かつ安価に得られる。
本発明の光制御素子においては、微小構造体を基板上に複数少なくとも1方向に規則配列した構成とすることができる。つまり、基板上に微小構造体を、周期性をもって1方向あるいは二次元方向に配置した構成などが適用できる。
例えば、凸形状の微小構造体を複数規則的に配置することにより発現される、プラズモニック材料としての機能(局在表面プラズモンを利用したプラズモニック結晶)あるいはメタマテリアルとしての機能を用いて信号を強めた高性能な光制御素子が得られる。
また、前記薄膜上面と前記外壁上面が平坦に連続している構造の微小構造体を基板上に複数規則的に配置することにより、信号として取り出す光学特性を強めることができ(プラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとして機能)、このような機能を用いて高性能な光制御素子が得られる。
本発明の微小構造体の製造方法について説明する。
まず、前記内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造が、基板面に対して凸形状であるナノメートル乃至マイクロメートルサイズに構成された微小構造体の製造方法は以下の工程により行われる。
すなわち;
(1a)基板上に、少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料からなる薄膜層を形成する工程
(1b)該基板上に形成された薄膜層上にレーザ光を照射して微細孔を形成すると共に、該微細孔を囲う外壁を構成する領域を変質させる工程
(1c)形成された微細孔内に、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料を充填する工程
(1d)前記(1b)工程においてレーザ光を照射し変質させた領域以外の薄膜層を選択的にエッチングして微細孔を囲う外壁を残し、凸状構造体に形成する工程
上記製造方法により、基板上に微小構造体が略垂直方向に形成されると共に、微小構造体の内側に少なくとも一つの微細孔が形成され、微細孔の外側には少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料からなる外壁が形成され、微細孔内に、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料が充填された凸形状で、各微小構造体同士が完全に区切られた構造体が作製される。上記製造方法によれば、簡易かつ安価に作製されると共に、微小構造体が精密に形成されるため、前述のようなプラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとしての機能を発揮する。
次に、前記内側に少なくとも一つの微細孔を有し外側に外壁を備えた構造が、外壁上面と周囲を囲う薄膜上面が平坦に連続し、周囲の薄膜に内包され、ナノメートル乃至マイクロメートルサイズに構成された微小構造体の製造方法は以下の工程により行われる。
すなわち;
(1A)基板上に、少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料からなる薄膜層を形成する工程
(1B)該基板上に形成された薄膜層上にレーザ光を照射して微細孔を形成すると共に、該微細孔を囲う外壁を構成する領域を変質させる工程
(1C)形成された微細孔内に、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料を充填し、微細孔と該微細孔を囲う外壁の各上面が平坦に連続した構造体とする工程
上記製造方法により、基板上に微小構造体が略垂直方向に形成されると共に、微小構造体の内側に少なくとも一つの微細孔が形成され、微細孔の外側には少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料からなる外壁が形成され、微細孔内に、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料が充填され、微細孔の外壁上面と周囲を囲う薄膜(外壁と同じ成分)上面が平坦に連続して周囲の薄膜に内包され、各微小構造体同士が完全に区切られた構造体が作製される。上記製造方法によれば、簡易かつ安価に作製されると共に、微小構造体が精密に形成されるため、前述のようなプラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとしての機能を発揮する。
本発明の微小構造体を基板上に担持した光制御素子の製造方法について説明する。
まず、前記内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造が、基板面に対して凸形状であるナノメートル乃至マイクロメートルサイズに構成された微小構造体を基板上に担持した光制御素子製造方法は以下の工程により行われる。
すなわち;
(2a)基板上に、少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料からなる薄膜層を形成する工程
(2b)該基板上に形成された薄膜層上にレーザ光を照射して微細孔を形成すると共に、該微細孔を囲う外壁を構成する領域を変質させる工程
(2c)形成された微細孔内に、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料を充填する工程
(2d)前記(2b)工程においてレーザ光を照射し変質させた領域以外の薄膜層を選択的にエッチングして微細孔を囲う外壁を残し、凸状構造体に形成する工程
上記光制御素子の製造方法(2a)〜(2d)においては、前記微小構造体の製造方法(a1)〜(d4)が適用されるため、プラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとして機能が発現して光制御が可能となり、高性能な光制御素子が簡便かつ安価に得られる。
次に、前記内側に少なくとも一つの微細孔を有し外側に外壁を備えた構造が、外壁上面と周囲を囲う薄膜上面が平坦に連続し、周囲の薄膜に内包され、ナノメートル乃至マイクロメートルサイズに構成された基板上に担持した光制御素子の製造方法は以下の工程により行われる。
すなわち;
(2A)基板上に、少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料からなる薄膜層を形成する工程
(2B)該基板上に形成された薄膜層上にレーザ光を照射して微細孔を形成すると共に、該微細孔を囲う外壁を構成する領域を変質させる工程
(2C)形成された微細孔内に、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料を充填し、微細孔と該微細孔を囲う外壁の各上面が平坦に連続した構造体とする工程
上記光制御素子の製造方法(2A)〜(2C)においては、前記微小構造体の製造方法(1A)〜(1C)が適用されるため、プラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとして機能が発現して光制御が可能となり、高性能な光制御素子が簡便かつ安価に得られる。
以下、実施例に示す図を引用して、微小構造体を基板上に担持した光制御素子、およびその製造方法を説明する。
<凸形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子>
〔外壁:連なった円筒形状、微細孔:2個、微細孔の充填材:単層構成〕
上記構成の光制御素子の断面および上面模式図を図1示す。
図1において、符号1は基板、2は微小構造体、3は微細孔、4は外壁を示す。
例えば、基板1としてガラス基板が用いられ、外壁4はZnS・SiO2・Znにより形成されている。微細孔3には直径約100nm、高さ70nmで金(Au)が充填され、約160nmの間隔で2個の微細孔が設けられてている。微小構造体は数百nmスケールで基板上に規則的に配置されている。
なお図1のように複数の微小構造体を複数配列させた場合には光制御素子としての機能は強まり、周期構造による効果も加わって、例えば、散乱光が強まる。単一の微小構造体の場合には光制御素子としての機能は果たすが、弱い。
図1において、硫黄化合物として硫化亜鉛を用いれば、滑らかな微小構造体が形成され、その結果、光制御素子としての性能を向上させることができる。
また、硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む材料に、光吸収機能材料として、例えば、亜鉛(Zn)を加えれば、レーザ光照射時に光吸収機能を向上させて容易(簡易)に微小構造体の形成ができ、光制御素子を作製可能である。この際、光吸収能を向上させる材料として亜鉛(Zn)を用いた場合、レーザ照射部は一部酸化してZnOに変化するため、光透過性が向上し、また薄膜に用いるZnSと微小構造体内部で結合しやすく好都合である。さらに、本発明の製造工程において、エッチングを利用することにより微小構造体同士を完全に区切った構成とすることを可能とし、その結果、高性能な微小構造体、光制御素子が得られる。
後述の実施例の光制御素子では、局在表面プラズモンの効果を利用している。100nm程度のサイズの微細孔(ドット)同士が近接した構成に光が入射した場合にはドットの配列方向にTM波が電場増強を受け、反射光強度が強まっていると考えられる。
ドットの直径・高さ、ドット同士の間隔、充填材料の種類、外壁(硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料からなる外壁(ZnS・SiO2構造体)の組成比および光吸収材料として添加される材料の特性などにより、光制御素子の反射波長や、反射強度、偏光依存性などの光学特性のほか、試料作製条件も異なる。
しかしながら、本発明に係る光制御素子、およびその作製方法では効果が多少異なっても原理は同じである。
微細孔(ドット)に充填する金属はAuのほか、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geなどの金属もしくはこれらの合金材料であると、プラズモン励起を生じさせることができる。
目的の反射波長など特性により材料の選定を行う必要がある。硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む混合材料からなる外壁(ZnS・SiO2構造体)はZnS・SiO2材料内に光吸収材料を含めてもよいし、光吸収層としてZnS・SiO2材料層の下(基板の上)に一層設けてZnS・SiO2層へ熱を伝導させてもよい。
ZnS・SiO2材料内に光吸収材料を含める場合には、光吸収材料としてはAl、Ag、Au、Cu、Zn、Pt、Sb、Te、Ge、Si、Bi、Mn、W、Nb、Co、Sr、Fe、In、Sn、Ni、Mo、Mg、Caなどの元素からなるものや、それらの合金などの材料が挙げられる。材料によって熱伝導率が異なるため、材料によりレーザ照射を行うパワーを調整する必要がある。
ZnS・SiO2材料層の下に光吸収層を一層設ける場合には、光吸収層として前述のAl、Ag、Au、Cu、Zn、Pt、Sb、Te、Ge、Si、Bi、Mn、W、Nb、Co、Sr、Fe、In、Sn、Ni、Mo、Mg、Caなどの元素からなるものや、それらの合金から選定される。微小孔(ドット)の大きさ、高さ、間隔に関しては、入射光波長の4分の1程度の大きさ・高さであり、2つのドット同士の間隔は波長の8分の1程度が好ましいが、それに限定されない。
上記のように構成された微小構造体はプラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとして機能を発現して光制御が可能になり、高性能な光制御素子として用いることができる。
〈図1示す光制御素子の製造方法〉
図1示す凸形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子は、図2の工程フロー図2(a)〜(e)に従って製造することができる。
図2(a):基板(ガラス基板)上に薄膜(ZnS・SiO2・Zn層)を形成する。
図2(b):レーザ光照射により、微細孔(2個)を形成すると共に、微細孔を囲う外壁を形成(外壁を構成する領域を変質(結晶化))する。
図2(c):2個の微細孔内にAuを充填(スパッタリング装置によりAu層を成膜)する。
図2(d):被覆したAuの除去(化学機械研磨(CMP)による平坦化処理)する。
図2(e):周囲にZnS・SiO2・Zn膜が残存した微小構造体を化学処理(フッ化水素酸溶液)する。
図2(f):レーザ照射されなかったZnS・SiO2・Zn膜、およびレーザ照射はされたが結晶化されなかった部分が除去されて、凸形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子が得られる。
<凸形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子>
〔外壁:円筒形状、微細孔:1個、微細孔の充填材:単層構成〕
上記構成の光制御素子の断面および上面模式図を図5に示す。
図5において、符号51は基板、52は微小構造体、53は微細孔、54は外壁を示す。
例えば、基板51としてガラス基板が用いられ、外壁54はZnS・SiO2・Auにより形成されている。微細孔53には直径約100nm、高さ70nmで金(Au)が充填され、約160nmの間隔で2個の微細孔が設けられている。微小構造体は数百nmスケールで基板上に規則的に配置されている。
上記構成の光制御素子においては、Auの金属ドット同士が近接配置されて連結することができるため、その間にプラズモン励起による電場の増強が生じて散乱光強度が強くなる。すなわち、上記ZnS・SiO2・Au構造体(円筒状の外壁)内の微細孔(外壁に対して同心円位置で円柱状)にAuが充填された構造は、プラズモニック結晶としての効果が引き出され、微小構造体の有する機能によって光制御が可能となる。
〈図5示す光制御素子の製造方法〉
上記光制御素子の製造方法は図2の工程フロー図の場合とほぼ同じであるが、スパッタリング成膜する材料にZnS・SiO2・Auを用いることやレーザ照射条件が異なる。
参考として、図3に単一周期に配置された、円筒状(リング状)のZnS・SiO2・Zn構造体(一部Znは酸化されZnOとなっている)の電子顕微鏡写真を示す。
図3(a)ではレーザパワー3.5mW、ウェットエッチングなし、図3(b)ではレーザパワー3.5mW、ウェットエッチング後であり、円筒構造が作製できていることがわかる。円筒状の構造体の大きさは、レーザパワーを変化させることにより制御できる。光情報記録媒体で利用されるポリカーボネイト基板(トラック方向での記録周期400nm、トラック間平均距離440nm)を利用した。
ZnS・SiO2・Zn構造体の場合には、Znが含まれるため吸熱性を有する。このため、ZnS・SiO2・Zn構造体を形成するための薄膜材料として光反応層と熱反応層の両方の機能を備えた材料と言える。レーザ照射後には、レーザスポット中心近傍部にはZnの酸化を伴いながらZnSが結晶化し、微細孔を囲う外壁を構成する領域を変質させる。そのため、基板上に端部が滑らかな形状の微小構造体を、光リソグラフィよって簡易かつ低コストで作製できる。このZnS・SiO2・Zn薄膜は加熱工程もしくは光照射工程を加えない場合にはエッチング液に対してエッチング性を示すが、加えた後にはエッチング耐性を示す材料である。
<凸形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子>
〔外壁:矩形形状、微細孔:1個、微細孔の充填材:積層構成〕
上記構成の光制御素子の断面および上面模式図を図4に示す。
図4において、符号41は基板、42は微小構造体、43は微細孔、44は外壁を示す。
例えば、基板41としてガラス基板が用いられ、外壁44はZnS・SiO2・Znにより形成されている。横幅約150nm、縦幅約300nmの矩形の微細孔43には金(Au)、二酸化珪素(SiO2)、Auの積層構成で各成分が充填されている。微小構造体は数百nmスケールで基板上に規則的に配置されている。
上記のような構成とすれば、例えば、電磁波(光)の反射率・透過率の光学特性に違いが見られ、メタマテリアルで見られる負の屈折率効果が生じているものと考えられる。このような微小構造体の有する光学的特性あるいは電磁気学的特性を利用すれば、光制御が可能となり高性能の光制御素子を作製することができる。
上記のように複数の微小構造体を複数配列させた場合には光制御素子としての機能が顕著となり、周期構造による効果も加わって散乱光が強まる。一方、単一の微小構造体だけであると、光制御素子としての機能は果たすが効果は弱い。
図4において、硫黄化合物として硫化亜鉛を用いれば、滑らかな微小構造体が形成され、その結果、光制御素子としての性能を向上させることができる。また、硫黄化合物および酸化ケイ素(SiO2)を含む材料に、光吸収機能材料として、例えば、亜鉛(Zn)を加えれば、レーザ光照射時に光吸収機能を向上させて容易(簡易)に微小構造体の形成ができ、光制御素子を作製可能である。この際、光吸収能を向上させる材料として亜鉛(Zn)を用いた場合、レーザ照射部は一部酸化してZnOに変化するため、光透過性が向上し、また薄膜に用いるZnSと微小構造体内部で結合しやすく好都合である。さらに、本発明の製造工程において、エッチングを利用することにより微小構造体同士を完全に区切った構成とすることを可能とし、その結果、高性能な微小構造体、光制御素子が得られる。
〈図4示す光制御素子の製造方法〉
上記光制御素子の製造方法は図2の工程フロー図の場合とほぼ同じであるが、レーザ照射(パルス光照射)の条件をパルス光照射時間が長くなるように調整し、円筒状の微細孔ではなく、矩形状の微細孔が形成されるように制御することが異なっている。
<凸形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子>
〔外壁:連なった円筒形状、微細孔:2個、微細孔の充填材:単層構成〕
上記構成の光制御素子の断面および上面模式図を図8に示す。
図8において、符号81は基板、82は微小構造体、83は微細孔、84は外壁、87は光吸収層を示す。
例えば、基板81としてポリカーボネイト基板が用いられ、光吸収層87としてGe層が設けられ、外壁84はZnS・SiO2により形成されている。2個の微細孔83には銀(Ag)が充填されている。微小構造体は前記図1で説明したものと同様の形状であり、各微小構造体は数百nmスケールで基板に設けられたGe層上に規則的に配置されている。
上記構成の光制御素子は、2個の微細孔に充填されたAgの金属ドット同士が近接配置されて連結するため、その間にプラズモン励起による電場の増強が生じて散乱光強度が強くなる。すなわち、微小構造体の有する光学的特性あるいは電磁気学的特性によって光制御が可能となる。
〈図8示す光制御素子の製造方法〉
図8示す凸形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子は、図9の工程フロー図9(a)〜(e)に従って製造することができる。
図9(a):基板(ポリカーボネイト基板)上にGe膜と、ZnS・SiO2(薄膜)を順次それぞれスパッタリング法により成膜する。
図9(b):レーザ光照射により、微細孔(2個)を形成すると共に、微細孔を囲う外壁を形成(外壁を構成する領域を変質(結晶化))する。
図9(c):2個の微細孔内にAgを充填(スパッタリング装置によりAu層を成膜)する。
図9(d):被覆したAgを除去(化学機械研磨(CMP)による平坦化処理)する。
図9(e):周囲にZnS・SiO2膜が残存した微小構造体を化学処理(フッ化水素酸溶液)する。
図9(f):レーザ照射されなかったZnS・SiO2膜、およびレーザ照射はされたが結晶化されなかった部分が除去されて、凸形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子が得られる。
図9(d)の工程でフッ化水素酸溶液によるエッチング工程を行わない場合には、微小構造体上面とこれを囲う薄膜上面が平坦に連続した構造の光制御素子を作製することができる。また、微細孔内に、例えば、Au/SiO2/Auなどの積層構成からなる材料を充填することもできる。あるいは、レーザ照射時にパルス光出力を調整し、微小構造体の形状を連なった円柱状ではなく円柱状そのものの形状とすることもできる。
<外壁上面と薄膜上面が平坦な形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子>
〔外壁:矩形形状、微細孔:1個、微細孔の充填材:積層構成〕
上記構成の光制御素子の断面および上面模式図を図4に示す。
図6において、符号61は基板、62は微小構造体、63は微細孔、64は外壁を示す。
例えば、基板61としてガラス基板が用いられ、外壁64はZnS・SiO2・Znにより形成されている。横幅約150nm、縦幅約300nmの矩形の微細孔63には金(Au)、二酸化珪素(SiO2)、Auの積層構成で各成分が充填されている。微小構造体は数百nmスケールで基板上に規則的に配置されている。なお、外壁64はZnS・SiO2・Zn薄膜に接合して囲まれ、薄膜65上面と外壁64上面が平坦に連続している。
上記のような構成とすれば、図4で説明したのと同様に電磁波(光)の反射率・透過率の光学特性に違いが見られ、メタマテリアルで見られる負の屈折率効果が生じているものと考えられる。このような微小構造体の有する光学的特性あるいは電磁気学的特性を利用すれば、光制御が可能となり高性能の光制御素子を作製することができる
〈図6示す光制御素子の製造方法〉
図6示す外壁上面と薄膜上面が平坦な形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子は、図7の工程フロー図7(a)〜(d)に従って製造することができる。
図7(a):基板(ガラス基板)上に薄膜(ZnS・SiO2・Zn)を形成。
図7(b):レーザ光照射により、微細孔(1個)を形成すると共に、微細孔を囲う外壁を形成(外壁を構成する領域を変質(結晶化))する。
図7(c):1個の微細孔内にAu/SiO2/Auを充填(スパッタリング装置によりAu/SiO2/Auを積層)する。
図7(d):被覆したAu/SiO2/Auの除去(化学機械研磨(CMP)による平坦化処理)する。微小構造体上面とこれを囲う薄膜上面が平坦に連続した構造の光制御素子が容易かつ安価に作製される。
前記図1〜図9においては、一つの微小構造体内に1個または2個の微細孔を有する例を示したが、3個以上の微細孔を有するものであってもよい。また、微細孔内への材料充填方法としては、スパッタリング法によるものを示したが、蒸着法やゾルゲル法、あるいは数ナノ〜数十ナノメートルの微粒子やハイブリッド微粒子を充填する方法でも構わない。特に、Auのように微粒子を比較的形成しやすい材料の場合には微粒子を充填させる方法も効果的である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制約を受けるものではない。
[実施例1]
図1の断面および上面模式図に示す構成の微小構造体を基板上に担持した光制御素子を作製した。
図1において、基板1はガラス基板であり、微小構造体2の外壁4が硫黄化合物および酸化ケイ素を含む混合材料からなり、微細孔3には金(Au)が充填されている。以降、「微細孔」を「ドット」と呼称することがある。なお、図1は模式図であり、実際のドットの数や周期間隔などは異なり正確なものではない。
微小構造体2の外壁4は、硫化亜鉛、二酸化珪素、亜鉛から形成されており、微小構造体2の内側には2個の微細孔(ドット)3が設けられている。微小構造体2の外壁4は具体的には、ZnS・SiO2・Znを用いてスパッタ成膜(スパッタ成膜時の組成モル比54:13:33、構造体の形状時にはZnがほぼ酸化されZnOとなっている)された薄膜を後述のような製造プロセスで凸形状(図では円筒状のものが連なった形)に形成される。そして、2個のドットに金(Au)が充填されている。
本実施例における微細孔(ドット)、すなわち充填されるAuなどの具体的な大きさ(サイズ)は図1に示す通りであり、Auの直径は約100nm、高さは70nm、Auドット同士の中心間距離は約160nm、微小構造体の外壁(ZnS・SiO2・Zn構造体)の長軸長さは380nm、短軸長さは220nmである。図1(b)のようにXY方向を定義すると、
ZnS・SiO2・Zn構造体のX方向の周期は500nm、Y方向の周期は400nmである。
上記構成の光制御素子にTM偏光を入射したところ、可視光領域の光に対して散乱が見られ、TE偏光入射に対する散乱光強度は弱かった。例えば、波長600nmの光に対して、TM偏光の場合には散乱光強度が8%であり、TE偏光に対しては約2%であった。これは、AUの金属ドット同士が近接配置されて連結するとその間にプラズモン励起による電場の増強が生じて散乱光強度が強くなることが主要因となっている。すなわち、微小構造体の有する光学的特性あるいは電磁気学的特性、いわゆるプラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとして機能によって光制御が可能となる。
なお、上記2個の微細孔(ドット)有する微小構造体(内部にAuが充填されたZnS・SiO2・Zn構造体)を図1に示すような複数個から1個のみ基板上に形成した場合にも同様の効果は見られた。しかしながら、得られた散乱光強度はTM偏光の場合に約0.5%であり、TE偏光の場合に約0.1%であり、微小構造体を複数個形成したものに較べて微弱なものであった。
上記光制御素子の製造方法を図2の工程フロー図に模式的に示す。
まず、図2(a)に示すように、基板として平坦性の良いガラス基板を用意し、スパッタリング法により(スパッタ装置;芝浦メカトロニクス製、CFS-8EP)、ガラス基板上にZnS・SiO2・Zn層(薄膜)を厚み70nmに成膜した。なお、スパッタ成膜時におけるZnS・SiO2・Znの組成モル比は54:13:33である。
次に、図2(b)に示すように、X−Y方向の移動機構をもつレーザ光照射装置により、対物レンズ(レンズNA:0.85)により集光された青色波長レーザ光(波長:405nm)を、基板成膜面にフォーカスしながらパルス光照射を行った。この際には、前記図1に示したような内側に2個の微細孔3が設けられ、微細孔を囲う外壁4を構成するための領域を変質(結晶化)させて微小構造体の形状となるような熱分布計算からレーザ照射条件(レーザパワー、時間からなるストラテジを設定)を調整した。レーザ照射により、微細孔(深さ70nm)の中心間距離が160nmとなる2個の微細孔を有するZnS・SiO2・Zn構造体がX方向に500nmの周期、Y方向に400nmの周期で規則的に形成された。
次いで、図2(c)に示すように、2個の微細孔を有するZnS・SiO2・Zn構造体(周囲にはZnS・SiO2・Zn膜が残存)が形成されたガラス基板上にスパッタリング装置を用いてAu層を成膜した。その結果、2個の微細孔内にAuが充填されると共に、図2(c)のように、Auが充填された2個の微細孔を有するZnS・SiO2・Zn構造体および周囲を囲むZnS・SiO2・Zn膜全体の上面をAuが覆う状態となる。
次に、図2(d)に示すように、上記被覆したAuを除去するために、化学機械研磨(CMP)による平坦化処理を行った。
次に、図2(e)に示すように、平坦化された微小構造体〔2個の微細孔にAuが充填されたZnS・SiO2・Zn構造体(周囲にはZnS・SiO2・Zn膜が残存)〕を担持したガラス基板をフッ化水素酸溶液(HF濃度:2wt%)に10秒間浸した後、乾燥させた。
その結果、図2(f)に示すように、レーザ照射されなかったZnS・SiO2・Zn膜、およびレーザ照射はされたが結晶化されなかった部分が除去された。
すなわち、図2(a)でスパッタ成膜したZnS・SiO2・Zn膜の中で、レーザ照射されることによってZnSが結晶化し構造体(外壁)として残り、内側の微細孔にAuが充填された、いわゆる凸形状の微小構造体が得られた。
[実施例2]
図4の断面および上面模式図に示す構成の微小構造体を基板上に担持した光制御素子を作製した。
図4において、基板41はガラス基板であり、微小構造体42の外壁44が硫黄化合物および酸化ケイ素を含む混合材料からなり、微細孔43には絶縁材料(SiO2)を介して金(Au)が2層構成で充填されている。なお、図4は模式図であり、実際の微小構造体の数や周期間隔などは異なり正確なものではない。
図4に示す微小構造体42の外壁44は、硫化亜鉛、二酸化珪素、亜鉛から形成されており、外壁44の内側には1個の微細孔43が設けられている。微小構造体42の外壁44は具体的には、ZnS・SiO2・Znを用いてスパッタ成膜された薄膜を後述のような製造プロセスで凸形状(図では矩形の柱状体)に形成される。スパッタ成膜時のZnS・SiO2・Znの組成モル比は各々、54:13:33である。構造体の形状時にはZnがほぼ酸化されZnOとなっている。
微細孔中には、金(Au)、二酸化珪素(SiO2)、Auの積層構成で各成分が充填されている。各々の厚みは、図面下側からAu:30nm、SiO2:10nm、Au:30nmである。本実施例における微小構造体の具体的な大きさは図4に示す通りであり、微小構造体のX方向の周期は450nm、Y方向の周期は300nmである。
上記構成の光制御素子に波長800nmの光を入射したところ、反射率は約50%であり、透過率は約20%であった。また、波長500nmの光を入射したところ、反射率は約25%であり、透過率は約30%であった。このように波長によって反射率、透過率に違いが生じるのは光制御素子として機能を持つことを示している。構成や利用波長域を最適化することによって、より高性能な光制御素子を作製できる。このような機能が見られるのは本発明の微小構造体がメタマテリアルで見られる負の屈折率効果が生じているためと推測される。メタマテリアルで見られる負の屈折率効果を利用すれば、例えば、前記のように電磁波(光)の反射率・透過率の光学特性に違いが見られ、このように微小構造体の有する光学的特性あるいは電磁気学的特性によって光制御が可能となる。
なお、上記微小構造体における1個の微細孔を、2個の微細孔(微細孔内部にAu/SiO2/Auの積層構成で充填)とした場合にも同様の効果が見られた。波長800nmの光を入射したところ、反射率は約5%であり、透過率は約80%であった。反射率を増加させる効果は生じたが弱かった。
上記光制御素子の製造方法は実施例1で示した図2の工程フロー図の場合とほぼ同様である。違いはレーザ照射(パルス光照射)の条件をパルス光照射時間が長くなるように調整し、実施例1のような円筒状の微細孔ではなく、矩形状の微細孔が形成されるように制御したことである。図4では、Au:30nm、SiO2:10nm、Au:30nmが充填されている微細孔内が長方形状に記載されているが実際には端部は若干丸くなっている。
すなわち、図2の工程フロー図の場合と同様にレーザ照射による微細孔形成後、スパッタリング装置を用いてAu:30nm、SiO2:10nm、Au:30nmにて成膜して微細孔に充填し、この際ZnS・SiO2・Zn構造体および周囲を囲むZnS・SiO2・Zn膜全体の上面を被覆したAu/SiO2/Au膜を化学機械研磨(CMP)により平坦化処理した後、フッ化水素酸溶液(HF濃度:2wt%)による10秒間の浸透後、レーザ照射されなかったZnS・SiO2・Zn膜、およびレーザ照射はされたが結晶化されなかった部分を除去した。
これによって、スパッタ成膜したZnS・SiO2・Zn膜の中で、レーザ照射されることによってZnSが結晶化し構造体(外壁)として残り、内側の微細孔に絶縁材料(SiO2)を介して金(Au)が2層構成で充填された、いわゆる凸形状の微小構造体が得られた。
[実施例3]
図5の断面および上面模式図に示す構成の微小構造体を基板上に担持した光制御素子を作製した。
図5において、基板51はガラス基板であり、微小構造体52の外壁54が硫黄化合物および酸化ケイ素を含む混合材料からなり、微細孔53には金(Au)が充填されている。
なお、図5は模式図であり、実際の微小構造体の数や周期間隔などは異なり正確なものではない。
図5に示す微小構造体52の外壁54は、硫化亜鉛、二酸化珪素、金から形成されており、外壁54の内側には1個の微細孔53が設けられている。微小構造体52の外壁54は具体的には、ZnS・SiO2・Auを用いてスパッタ成膜された薄膜を後述のような製造プロセスで円筒状(ZnS・SiO2・Au構造体)に形成される。スパッタ成膜時のZnS・SiO2・Auの組成モル比は各々、73:18:9である。微細孔中に金(Au)が充填された微小構造体は円柱状で、凸形状である。
ZnS・SiO2・Au構造体は、直径:180nm、内径:80nm、高さ:70nmである。充填されているAuはほぼ円柱状になっており、直径:80nm、高さ:70nmである。隣り合う微小構造体同士の中心間距離は210nmであり、間隔は30nmである。図5(b)のようにXY方向を定義すると、ZnS・SiO2・Au構造体のX方向の周期は500nm、Y方向の周期は400nmである。
上記構成の光制御素子にTM偏光を入射したところ、可視光領域の光に対して散乱が見られ、TE偏光入射に対する散乱光強度は弱かった。例えば、波長600nmの光に対して、TM偏光の場合には散乱光強度が8%であり、TE偏光に対しては約2%であった。これは、Auの金属ドット同士が近接配置されて連結するとその間にプラズモン励起による電場の増強が生じて散乱光強度が強くなることが主要因となっている。
すなわち、上記ZnS・SiO2・Au構造体(円筒状の外壁)の内側に設けられた微細孔(外壁に対して同心円位置で円柱状)にAuが充填された構造は、微小構造体同士が区切られてプラズモニック結晶としての効果を引き出すには充分であり、このような微小構造体の有する機能によって光制御が可能となる。
上記光制御素子の製造方法は実施例1で示した図2の工程フロー図の場合とほぼ同じであるが、スパッタリング成膜する材料にZnS・SiO2・Auを用いることやレーザ照射条件が異なる。
図5(b)に示すように、2つの微小構造体の間隔は約30nmと極めて狭い。このような狭い間隔であっても本発明の製造方法によれば、微小構造体の外壁(構造物)同士が繋がらずに作製できる。つまり、少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素を含む混合材料を用いて薄膜層とし、これにレーザ光を照射してZnSの結晶化により外壁部分を形成し、これ以外の薄膜層を選択的にエッチングするプロセスを用いていることによる。
[実施例4]
図に光制御素子の模式図を示す。
図6の断面および上面模式図に示す構成の微小構造体を基板上に担持した光制御素子を作製した。
図6に示す光制御素子における基板61上の微小構造体62は内側に1個の微細孔63を有し、外側に外壁64を備えている。本実施例の場合には、微小構造体の外壁64が、少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素を含有する混合材料からなる薄膜65に接合して囲まれ、薄膜65上面と外壁64上面が平坦に連続している。
図6に示す微小構造体62の外壁64は、硫化亜鉛、二酸化珪素、亜鉛から形成されており、外壁64の内側には1個の微細孔63が設けられている。微小構造体62の外壁64は具体的には、ZnS・SiO2・Znを用いてスパッタ成膜された薄膜を後述のような製造プロセスで薄膜65上面と外壁64上面が平坦に連続するように形成される。すなわち、光制御素子は、矩形(直方体状)である微小構造体が膜内(厚み70nm)に複数周期的に内包された状態で基板上に形成された構造になっている。スパッタ成膜時のZnS・SiO2・Znの組成モル比は各々、64:13:33である(レーザ照射部は一部酸化されてZnOとなっている)。
微細孔中には、金(Au)、二酸化珪素(SiO2)、Auの積層構成で各成分が充填されている。各々の厚みは、図面下側からAu:30nm、SiO2:10nm、Au:30nmである。本実施例における微小構造体のX方向の周期は450nm、Y方向の周期は300nmである。
上記構成の光制御素子に波長800nmの光を入射したところ、反射率は約60%であり、透過率は約10%であった。また、波長500nmの光を入射したところ、反射率は約35%であり、透過率は約20%であった。
このように波長によって反射率、透過率に違いが生じるのは光制御素子として機能を持つことを示している。構成や利用波長域を最適化することによって、より高性能な光制御素子を作製できる。このような機能が見られるのは本発明の微小構造体がメタマテリアルで見られる負の屈折率効果が生じているためと推測される。メタマテリアルで見られる負の屈折率効果を利用すれば、例えば、前記のように電磁波(光)の反射率・透過率の光学特性に違いが見られ、このように微小構造体の有する機能(光学的特性あるいは電磁気学的特性)によって光制御が可能となる。
上記光制御素子の製造方法を図7の工程フロー図に模式的に示す。
まず、図7(a)に示すように、基板として平坦性の良いガラス基板を用意し、スパッタリング法により(スパッタ装置;芝浦メカトロニクス製、CFS-8EP)、ガラス基板上にZnS・SiO2・Zn層を厚み70nmに成膜した。なお、スパッタ成膜時におけるZnS・SiO2・Znの組成モル比は54:13:33である。
次に、図7(b)に示すように、X−Y方向の移動機構をもつレーザ光照射装置により、対物レンズ(レンズNA:0.85)により集光された青色波長レーザ光(波長:405nm)を、基板成膜面にフォーカスしながらパルス光照射を行った。この際には、前記図6に示したような内側に1個の矩形型をした微細孔63が設けられ外壁64を有する微小構造体の形状となるような熱分布計算からレーザ照射条件(レーザパワー、時間からなるストラテジを設定)を調整した。その結果、レーザ照射部のZnS・SiO2・Znが除去され微細孔63が形成され、同時に微細孔を囲う外壁を構成するための領域が変質(結晶化)された。
次いで、図7(c)に示すように、1個の微細孔を有するZnS・SiO2・Zn構造体(周囲にはZnS・SiO2・Zn膜が残存)が形成されたガラス基板上にスパッタリング装置を用いて、Au:30nm、SiO2:10nm、Au:30nmを成膜した。その結果、微細孔内にAu:30nm、SiO2:10nm、Au:30nmからなる積層構成で材料が充填された。ここで図7(c)のように、ZnS・SiO2・Zn膜面上には全体にAu/SiO2/Auが覆う状態となる。
次に、図7(d)に示すように、上記被覆したAu/SiO2/Auを除去するために、化学機械研磨(CMP)による平坦化処理を行った。
上記工程フローにより、1個の微細孔にAu/SiO2/Auが充填された矩形の微小構造体が膜内(厚み70nm)に複数周期的に埋め込まれた(内包された)構造の光制御素子が作製された。つまり、光制御素子は、微細孔の外壁が少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素を含有する混合材料からなる薄膜に接合して囲まれ、薄膜上面と外壁上面が平坦に連続した構造を有している。
[実施例5]
図8の断面および上面模式図に示す構成の微小構造体を基板上に担持した光制御素子を作製した。
図8において、基板81はガラス基板であり、ガラス基板上にGe層が設けられ、その上に微小構造体82が形成されている。微小構造体82の外壁84は硫黄化合物および酸化ケイ素を含む混合材料からなる。なお、図8は模式図であり、実際の微小構造体の数や周期間隔などは異なり正確なものではない。
微小構造体82の外壁84は、ZnS・SiO2から形成されており、微小構造体82の内側には2個の微細孔83が設けられている。微小構造体82の外壁84は具体的には、ZnS・SiO2を用いてスパッタ成膜(スパッタ成膜時の組成モル比80:20)された薄膜を後述のような製造プロセスで凸形状(図では円筒状のものが連なった形)に形成される。そして、2個の微細孔に金(Ag)が充填されている。ガラス基板上に設けられるGe層は膜厚が10nmで成膜されている。
上記光制御素子の製造方法を図9に示す模式的な工程フロー図に基づいて説明する。
まず、図9(a)に示すように、基板として平坦性の良いポリカーボネイト基板を用意し、Ge膜(厚み10nm)と、ZnS・SiO2(モル比80:20)薄膜(厚み50nm)をそれぞれスパッタリング法により成膜した(装置:芝浦メカトロニクス製、CFS-8EP)。
次に、図9(b)に示すように、X−Y方向の移動機構をもつレーザ光照射装置により、対物レンズ(レンズNA:0.85)により集光された青色波長レーザ光(波長:405nm)を、基板成膜面にフォーカスしながらパルス光照射を行った。この際には、前記図8に示したような内側に2個の微細孔83が設けられ、微細孔を囲う外壁84を構成するための領域を変質(結晶化)させて微小構造体の形状となるような熱分布計算からレーザ照射条件(レーザパワー、時間からなるストラテジを設定)を調整した。その結果、レーザ照射部のZnS・SiO2が除去され微細孔83が形成されると共に、微細孔を囲う外壁84部分が変質・形成された。
次に、図9(c)に示すように、2個の微細孔を有するZnS・SiO2構造体(周囲にはZnS・SiO2膜が残存)が形成されたGe層付きガラス基板上にスパッタリング装置を用いてAg層を50nm成膜した。その結果、2個の微細孔内にAgが充填されると共に、図9(c)のように、Agが充填された2個の微細孔を有するZnS・SiO2構造体および周囲を囲むZnS・SiO2膜全体の上面をAgが覆う状態となる。
次に、図9(d)に示すように、上記被覆したAgを除去するために、化学機械研磨(CMP)による平坦化処理を行った。その結果、ZnS・SiO2膜に囲まれたZnS・SiO2外壁の内側にAgが埋め込まれた構造を形成した。
次に、図9(e)に示すように、平坦化された微小構造体〔2個の微細孔にAgが充填されたZnS・SiO2構造体(周囲にはZnS・SiO2・Zn膜が残存)〕を担持したGe層付きガラス基板をフッ化水素酸溶液(HF濃度:2wt%)に10秒間浸した後、乾燥させた。
その結果、図9(f)に示すように、レーザ照射されなかったZnS・SiO2膜、およびレーザ照射はされたが結晶化されなかった部分が除去された。
すなわち、図9(a)でスパッタ成膜したZnS・SiO2膜の中で、レーザ照射されることによってZnSが結晶化し構造体(外壁)として残り、内側の微細孔にAgが充填された、いわゆる凸形状の微小構造体が得られた。
なお、本作製方法では、ZnS・SiO2膜が可視光領域にてほぼ透明であるために、光吸収層としてGe層を設けている。つまり、Ge層でレーザ光を吸収し、発熱して、ZnS・SiO2膜内に微細孔が生じる現象を利用している。
実施例5で作製した光制御素子に関して実験したところ、実施例1と同様に可視光領域の光に対して散乱(波長依存性があり、TE偏光およびTE偏光により異なる)が見られた。すなわち、2個の微細孔に充填されたAgの金属ドット同士が近接配置されて連結するとその間にプラズモン励起による電場の増強が生じて散乱光強度が強くなることが主要因となっている。すなわち、微小構造体の有する光学的特性あるいは電磁気学的特性によって光制御が可能となる。
上記実施例1〜実施例5により本発明を具体的に示したが、実施例において記載した数値や材料に限定されないことは言うまでもない。例えば、一つの微小構造体に形成される微細孔は3個以上であっても構わないし、微小構造体の大きさ、配置間隔、配置形状などが異なっても構わない。微細孔内の充填材料はAu、Agが好ましいが、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geなどの金属やこれらの合金材料においても効果はある。プラズモン励起の効果としては、Au、Ag、Cuが好ましい。微細孔内への材料充填方法としては、本実施例ではスパッタリング成膜を行ったが、蒸着法やゾルゲル法、あるいは数ナノ〜数十ナノメートルの微粒子や、ハイブリッド微粒子を充填しても構わない。特に、Auのように微粒子を比較的形成しやすい材料の場合には微粒子を充填させる方法も効果的である。レーザ照射による微小構造体作製時のレーザ光波長は405nmを用いたが、他の短波長レーザや赤色レーザでも構わない。
実施例から理解されるように、本発明の微小構造体はプラズモニック材料としての機能あるいはメタマテリアルとしての機能を発現し、小構造体を基板上に担持すれば高性能な光制御素子が提供される。また本発明の製造方法によれば微小構造体および光制御素子が簡易かつ安価に作製される。
実施例1において作製した本発明の微小構造体を基板上に担持した光制御素子の断面および上面模式図である。 図1に示す光制御素子の製造方法を模式的に示す工程フロー図である。 本発明における凸形状の微小構造体を基板上に担持した光制御素子において参考として示した円筒状ZnS・SiO2・Zn構造体の電子顕微鏡写真である。 実施例2において作製した本発明の微小構造体を基板上に担持した光制御素子の断面および上面模式図である。 実施例3において作製した本発明の微小構造体を基板上に担持した光制御素子の断面および上面模式図である。 実施例4において作製した本発明の微小構造体を基板上に担持した光制御素子の断面および上面模式図である。 図4に示す光制御素子の製造方法を模式的に示す工程フロー図である。 実施例5において作製した本発明の微小構造体を基板上に担持した光制御素子の断面および上面模式図である。 図8に示す光制御素子の製造方法を模式的に示す工程フロー図である。
符号の説明
1 基板(ガラス基板)
2 微小構造体
3 微細孔(Au充填)
4 外壁(ZnS・SiO2・Zn)
5 薄膜(ZnS・SiO2・Zn薄膜)
6 (Au)
41 基板(ガラス基板)
42 微小構造体
43 微細孔(Au/SiO2/Au充填)
44 外壁(ZnS・SiO2・Zn)
51 基板(ガラス基板)
52 微小構造体
53 微細孔(Au充填)
54 外壁(ZnS・SiO2・Au)
61 基板(ガラス基板)
62 微小構造体
63 微細孔(Au/SiO2/Au充填)
64 外壁(ZnS・SiO2・Zn)
65 薄膜(ZnS・SiO2・Zn薄膜)
81 基板(ポリカーボネイト基板)
82 微小構造体
83 微細孔(Ag充填)
84 外壁(ZnS・SiO2
85 薄膜(ZnS・SiO2薄膜)
87 光吸収層(Ge層)

Claims (13)

  1. ナノメートル乃至マイクロメートルサイズに構成された微小構造体であって、
    前記微小構造体は基板上に略垂直方向に形成され、該微小構造体は内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造からなると共に、前記外壁は少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素を含む混合材料からなり、前記微細孔内に、Au、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料が充填されてなることを特徴とする微小構造体。
  2. 前記内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造が、前記基板面に対して凸形状であることを特徴とする請求項1に記載の微小構造体。
  3. 前記内側に少なくとも一つの微細孔を有し、外側に外壁を備えた構造における該外壁が、少なくとも硫黄化合物および酸化ケイ素を含有する混合材料からなる薄膜に接合して囲まれ、該薄膜上面と前記外壁上面が平坦に連続していることを特徴とする請求項1に記載の微小構造体。
  4. 前記微細孔内に充填されるAu、Ag、Cu、Al、Ti、Cr、Si、Geもしくは前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の材料が、絶縁材料を介して積層構成で充填されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の微小構造体。
  5. 前記微小構造体の外壁が円筒形状であり、内側の微細孔が同心円構造であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の微小構造体。
  6. 前記硫黄化合物が硫化亜鉛であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の微小構造体。
  7. 前記硫黄化合物および酸化ケイ素を含む混合材料に光吸収増幅材料を添加することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の微小構造体。
  8. 前記光吸収増幅材料が、Al、Ag、Au、Cu、Zn、Pt、Sb、Te、Ge、Si、Bi、Mn、W、Nb、Co、Sr、Fe、In、Sn、Ni、Mo、Mg及びCaから選ばれる少なくとも1種の元素からなるものであることを特徴とする請求項7に記載の微小構造体。
  9. 前記光吸収増幅材料が、Al、Ag、Au、Cu、Zn、Pt、Sb、Te、Ge、Si、Bi、Mn、W、Nb、Co、Sr、Fe、In、Sn、Ni、Mo、Mg及びCaから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含むことを特徴とする請求項8に記載の微小構造体。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の微小構造体を基板上に担持し、光制御可能としたことを特徴とする光制御素子。
  11. 前記光制御が微小構造体の有する表面プラズモンに依るものであることを特徴とする請求項10に記載の光制御素子。
  12. 前記光制御が、微小構造体の有する屈折率に依るものであることを特徴とする請求項10に記載の光制御素子。
  13. 前記微小構造体が、基板上に複数少なくとも1方向に規則配列していることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の光制御素子。
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