以下、本発明の一実施の形態に係る開閉機器1について、図面を参照しながら説明する。また、以下の説明において、図1〜図6および図10に示す矢示X1方向を「前」、矢示X2方向を「後(後ろ)」、X1方向とX2方向の両方向に対し水平方向で直交する方向となる矢示Y1方向を「左」、矢示Y2方向を「右」、XY平面と直交する矢示Z1方向を「上」および矢示Z2方向を「下」とそれぞれ規定する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る開閉装置2を有する開閉機器1を上方からその一部となる主要部を透過的に見た図である。図2は、図1に示す開閉機器1を下方からその主要部を透過的に見た図である。図3は、図1に示す開閉機器1を正面からその主要部を透過的に見た図である。図4は、図1に示す開閉機器1を背面からその主要部を透過的に見た図である。図5は、図1に示す開閉機器1を右方からその一部を透過的に見た図であり、かつ閉極状態を示す図である。図6は、図1に示す開閉機器1を右方からその一部を透過的に見た図であり、かつ開極状態を示す図である。
開閉機器1は、図1〜図6に示すように、開閉装置2を左右方向に向かって3つ並べて配置することにより構成されている。また、これら開閉装置2の外側にはハウジング3が設置されている。ハウジング3は、鉄板、鋼板などの金属製の板を正面方向から見て略四角枠状に形成したものである。具体的には、図1から図4に示すように、ハウジング3は、左右に対向配置される一対の長板状の絶縁サポート4a,4bと、上方に配置され絶縁サポート4a,4bをつなぐ長板状の絶縁サポート4cと、下方に配置される取付けベース4dとを有している。取付けベース4dは、皿状のものを逆にした形状とされ、左右端がそれぞれ絶縁サポート4a,4bに当接している。このような構成のため、ハウジング3には、図3および図4における紙面手前側および紙面奥側の双方の外部空間と連通する開放空間部5がその中央に設けられることとなる。この開放空間部5は、図3および図4に示すように、左右方向に向かって等間隔に配置される2枚の仕切り板6a,6bにより仕切られている。このため、ハウジング3の内部には、開閉装置2を配置させるための3つの立方体形状の空間部7が形成されている。
図5および図6に示すように、開閉装置2は、固定電極10と可動電極11を有するスイッチ部12と、可動電極11に繋がる可動軸部13と、可動電極11と固定電極10とが接触する閉極状態および可動電極11と固定電極10とが離間する開極状態を保持する保持機構14と、可動電極11と固定電極10とが接離するように可動軸部13を駆動させる駆動手段15と、を備えている。
スイッチ部12は、固定電極10および可動電極11の外側を囲う外形が円柱状の真空バルブ16の内部に配置されている。固定電極10および可動電極11はそれぞれ略円盤状となっている。固定電極10には固定軸17の一端(下端)が固定され、該固定軸17の他端(上端)には、電路に接続するための端子18が接続されている。スイッチ部12は、端子18を介して絶縁サポート4cに固定されている(図5、図6参照)。固定電極10に対し接離自在に動作する可動電極11には、可動軸部13を構成する第1のロッド19の他端が固定されている。該第1のロッド19の真空バルブ16より外側に突出した部分には、リード線21aが接続される板部材21bが取り付けられている。そして、この板部材21bには、電路に接続するための端子18が接続されている。
図5および図6に示すように、可動軸部13は、上述した第1のロッド19と、第1のロッド19の一端に固定される該第1のロッド19よりも小径の第1の可動軸20と、該第1の可動軸20の一端に固定される中間部材となる絶縁フランジ21と、該絶縁フランジ21の下端から突出する円柱状の第2の可動軸22と、第2の可動軸22の一端に接続される大径の円柱状の第2のロッド23と、駆動手段15を構成する反発板24の下端側に固定される円柱状の第3の可動軸25と、を有する。ここで、第1の可動軸20および第2の可動軸22は、別部材として、それぞれ絶縁フランジ21に接続されている。すなわち、絶縁フランジ21を介して第1の可動軸20と第2の可動軸22とが接続される。
第1のロッド19は大径の略円柱形状を呈しており、その他端となる上端は可動接点11に接続されている。第1の可動軸20は、第1のロッド19よりも小径の棒状の形態を有しており、その他端となる上端側は第1のロッド19の一端に設けられる穴部19aに入っている。絶縁フランジ21は、大径の略円盤状に形成される大径部26と、該大径部26よりも小径で大径部26の中央から下方に向かって突出する突出部27とを有している。大径部26の上端かつ中央部には下方に向かって円形状の円形穴28が形成されている。この円形穴28には第1の可動軸20の一端となる下端側が嵌め込まれている。また、小径部27にはその下端側から上方に向かって円柱状にくり抜かれた円柱溝30が設けられている。この円柱溝30には、後述するコイル部材43の他端側が嵌まり込む。また、小径部27において円柱溝30を構成する上端面の中央には円柱溝30よりも小径となる円形穴31が設けられている。第2の可動軸22は、小径の棒状の形態を有しており、その他端は円形穴31に入れられている。
第2のロッド23は、第1の可動軸20および第2の可動軸22よりも大径に形成されている。この第2のロッド23の他端側となる上端側に設けられる円形穴32には、第2の可動軸22の一端が接続されている。また、第2のロッド23の一端となる下端側はスイッチ12を開くための開極用コイル56の中央に挿入されて反発板24の上端に固定されている。第3の可動軸25は、小径の棒状の形態を有しており、その他端側となる上端側はスイッチ部12を閉じるための閉極用コイル57の中央に挿通されている。また、第3の可動軸25の外周には該第3の可動軸25の中央を筒状に覆うような反発コイル47が配置され、該反発コイル47の上側には略円筒状のナット48が配置されている。さらに、この第3の可動軸25の下端部近傍には第3の可動軸25を上下方向にガイドするためのロッドガイド49が設けられている。
保持機構14は、図3および図4に示すように、各仕切り板6a,6bを挟んで左右両側に2個ずつで合計4個設けられている。具体的には、左右の空間部7,7に配置される開閉装置2,2に対してはそれぞれ右側および左側の片側のみに設けられ、中央の空間部7に配置される開閉装置2に対しては左側および右側の両側に設けられている。
図5および図6に示すように、保持機構14は、リンク形状を呈しており、可動軸部13に連結する保持部材となるリンク部35と、リンク部35を回動可能に支持する支持体36と、ハウジング3の背面側(後ろ側)に設けられる当接部37と、リンク部35と当接部37との間に介在される弾性部材となるバネ部材38と、第2の可動軸22に対して相対移動可能であり、かつリンク部35に固定されて該リンク部35を上下方向に案内する略円柱状の柱状部材40と、第2の可動軸22が挿通され該柱状部材40の上端に当接可能な円盤状の受け板41と、第2の可動軸22が挿通され該柱状部材40の下端に当接可能な六角盤状のナット42と、その他端となる上端側が中間部材21に形成される円周溝30に入り込み、その一端となる下端が受け板41の上端側に当接するコイル部材43と、各リンク部35に一体に固定され、支持部36に支持される回転軸部44と、を有する。
リンク部35は、図2、図5および図6に示すように、略矩形状の平板を上方および下方から見て略U字状(図2参照)に折り曲げた第1リンク部45と、該第1リンク部45よりも長手方向において短い略矩形状の平板を上方および下方から見て略U字状(図2参照)に折り曲げた第2リンク部46と、を有する。図2に示すように、第2リンク部46は、第1リンク部45に隣接するように配置されている。また、第2リンク部46の厚みは、第1リンク部45の厚みよりも薄く形成されている。図2に示すように、第1リンク部45は、U字状の両突出部となる腕部45a,45bを有している。そして、第1リンク部45は、該腕部45a,45bが正面側から各仕切り板6a,6b(図1および図2において破線で示す。)を跨ぐ形態で配置されている。このため、右側(図2における左側)の空間部7には、図2において略L字状を呈する一方の腕部45aが仕切り板6bの右側(図2における左側)に配置される。また、中央の空間部7には、図2において略逆L字状を呈する他方の腕部45bが仕切り板6bの左側(図2における右側)に配置され、略L字状を呈する一方の腕部45aが仕切り板6aの右側(図2における左側)に配置される。また、左側(図2における右側)の空間部7には、図2において略逆L字状を呈する他方の腕部45bが仕切り板6aの左側(図2における右側)に配置される。
図2に示すように、第2リンク部46は、各空間7の左右方向略中央部に配置されている。このため、右側(図2における左側)の空間7に配置されるリンク部35は、第1リンク部45の腕部45aと第2リンク部46とで構成され、左側(図2における右側)の空間7に構成されるリンク部35は、第1リンク部45の腕部45bと第2リンク部46とで構成される。一方、中央の空間7の右方(図2における左方)に構成されるリンク部35は、第1リンク部45の腕部45bと、第2リンク部46において略L状を呈する一方の腕部46aとから構成される。また、中央の空間7の左方(図2における右方)に構成されるリンク部35は、第1リンク部45の腕部45aと、第2リンク部46において略逆L状を呈する他方の腕部46bとから構成される。このため、左側の空間7に配置されるリンク部35および右側の空間に配置されるリンク部35は左右対称形状を呈している。また、中央の空間7に配置される2つのリンク部35も左右対称形状を呈している。
図2、図5および図6に示すように、第1リンク部45の各腕部45a,45bおよび第2リンク部46の各腕部46a,46bには、円形の円形孔45cおよび円形孔46cがそれぞれ設けられている。そして、図2に示すように、左右の空間7,7に配置されるリンク部35の円形孔45c,46cには、左右方向に沿って柱状部材40が挿通されている。また、中央の空間7に配置されるリンク部35の円形孔45c,45cにも左右方向に沿って柱状部材40が挿通されている。また、各柱状部材40は円形孔45c,46cに挿通された状態で固定されている。この際、左右の空間7に配置されるリンク部35に関しては1つのリンク部35に対して1つの柱状部材40が用いられるのに対し、中央の空間7に配置されるリンク部35に関しては2つのリンク部35に対して、1つの柱状部材40が用いられる(図2参照)。このため、中央のリンク部35に用いられる柱状部材40は、左右のリンク部35に用いられる柱状部材40よりも若干長手方向の長さが大きく形成されている。
図3、図4および図5等に示すように、回転軸部44は、各リンク部35の正面側に、各リンク部35と一体に設けられている。具体的には、リンク部35の各U字状の第1リンク部45と第2リンク部46の各U字の底側に当たる部分と四角柱状の回転軸部44の一面とが半田付けにより固定されている。回転軸部44は、左右方向に伸びている。また、回転軸部44は、断面が四角形の角柱状の角状回転軸44aと、回転軸部44から左右両側に突出する略円柱状の柱状回転軸44bとを有する。図2に示すように、該柱状回転軸44bはハウジング3から左右方向外方に突出している。図2、図3、図5および図6に示すように、この柱状回転軸44bはハウジング3の絶縁サポート4a,4bの内側に隣接して配置される上述した支持体36によって支持される。
支持体36は、上述したように、絶縁サポート4a,4bの内側の左右に合計2つ配置される。図5および図6に示すように、支持体36は、四角柱の長手方向中央を短手方向に向かって曲面状に切り欠かれた凹部50を有する。図5および図6に示すように、この支持体36は開閉装置2の前方側に配置され、凹部50に回転軸部44の柱状回転軸44bが挿入される。このため、回転軸部44は、ハウジング3の左右両側において支持部36によって支持される。
また、リンク部35における第1リンク部45の各腕部45a,45bには、バネ部材38を受けるための受け部51が設けられている。図5および図6に示すように、受け部51は、略台形状の板部51aと、その長辺から立設する立設部52とを有する。この立設部52には、前側に向かって略V字状に折れ曲がった折り曲げ部52aが設けられている。これら立設部52は、リンク部35の腕部45a,45bの先端部近傍(後ろ側)に配置されている(図2、図5および図6参照)。
上述したように、リンク部35の円形孔45c,46cには、柱状部材40が挿通されている。この柱状部材40には上下方向に貫通する円孔53が設けられている。そして、この円孔53には隙間Hを有する形態で第2の可動軸22が挿入されている(図2、図5および図6参照)。このため、柱状部材40に対して第2の可動軸22は上下方向に相対移動可能となっている。この隙間Hは、リンク部35が揺動する際にも第2の可動軸22と柱状部材40とが接触しないような大きさとなっている。また、柱状部材40はリンク部35に固定されているため、柱状部材40は、リンク部35を第2の可動軸22に沿って上下方向に案内することになる。
図5および図6等に示すように、第2リンク部46の腕部46a,46bの間の空間でありかつ柱状部材40の上端には、第2の可動軸22を挿通するように受け板41が配設されている。また、受け板41の上方には第2の可動軸22が挿通するようにコイル部材43が配設されている。このコイル部材43の上端側は絶縁フランジ21の円柱溝30の内部に入り込んで、該円柱溝30の上端面30aに接触している。また、コイル部材43の下端側は受け板41と接触している。さらに、第2リンク部46の腕部46a,46bの間の空間でありかつ柱状部材40の下端には、第2の可動軸22を挿通するようにナット42が配設されている。このナット42は第2のロッド23の上端に当接している。また、ナット42の上端は柱状部材40の下端に対して接離可能となっている。このため、図6に示すように、スイッチ部12が開極し、リンク部35が下方に移動したとき、柱状部材40の下端はナット42に当接する。このため、リンク部35の下方への力は柱状部材40およびナット42を介して第2のロッド23に伝達される。すなわち、逆にいえば、図6の状態では、第2のロッド23や第3の可動軸25の上方への移動を柱状部材40が阻止することとなる。このような構成により、リンク部35は柱状部材40によって上下の軸線方向に案内されながら、回転軸部44を支点として周方向に揺動可能となっている。
当接部37は、ハウジング3の背面側に配置されており、後方に向かって略V字状に折れ曲がったV字部37aを有している。図5および図6に示すように、この当接部37は、ハウジング3内の後方側に配置される略箱型形状のホルダ部54の後方に取り付けられている。そして、当接部37とリンク部35の立設部52との間にバネ部材38が配設されている。このバネ部材38の付勢力により、スイッチ部12は、図6に示す開極状態と図5に示す閉極状態に位置保持される。
図7は、バネ部材38の構成を説明するための図であり、上段は2枚の平板状の板バネ55を対向配置させた側面図であり、下段は対向配置させた2枚の板バネ55を上下方向に撓ませた側面図である。図8は、バネ部材38の回動中心を支点としたストローク角を示す図であり、上段は閉極状態を示す図であり、下段は開極状態を示す図である。図9は、バネ部材38の状態と各状態における作用力との関係を示すための図であり、上段は閉極状態の場合を示す図であり、中段はデットポイントの場合を示す図であり、下段は開極状態の場合を示す図である。
図7に示すように、バネ部材38は、2枚の平板状の板バネ55,55から構成されている。本実施の形態では、各板バネ55,55の図7における左右の両端には傾斜状のテーパ面56が形成されている。このテーパ面56は、板バネ55を撓ませやすくするために形成されている。バネ部材38は、各板バネ55を重ね合わせて、左右両側から中央に向かって押圧し、各板バネ55,55を対向するように弓状に撓ませることにより形成される。この板バネ55を撓ませる行為は、該板バネ55を当接部37と立設部52との間に配設する際に行われる。具体的には、2枚の板バネ55,55の他端となる前端55aを立設部52における折り曲げ部52aに当接させる。そして、該板バネ55,55の一端となる後端55bをV字部37aに当接させつつ当接部37をホルダ部54に固定する。これにより、各板バネ55,55が弓状に撓み、撓んだ状態の板バネ55,55により構成されるバネ部材38が当接部37と立設部52との間に配置される。このバネ部材38の付勢力を利用してスイッチ部12は閉極状態および開極状態に位置保持される。
図5および図6に示すように、リンク部35が回転軸部44を支点として回動するに伴い、バネ部材38は、V字部37aに当接している後端55bを支点として回動する。具体的には、図8上段に示すように、スイッチ部12が閉極状態のとき、リンク部35はA−A線に沿って水平な状態となっている。このとき、バネ部材38の前端(作用点)55aはA−A線上に位置する(図8上段参照)。一方、バネ部材38の後端55bはA−A線よりも下方に位置し該後端55bを通過する水平線となるB−B線上に位置する(図8上段参照)。すなわち、バネ部材38は左斜め上方に傾くように配置されることになり、板バネ55の上方への付勢力によって閉極状態の位置保持がなされている。具体的には、このとき、図8上段および図9上段に示すように、バネ部材38の後端55bを支点とするストローク角はθaとなっており、バネ部材38の前端55aには、2つの板バネ55の付勢力の合計力となる上方に向かう保持力F1が作用している。この上方に向かう保持力F1によって閉極状態での位置保持がなされている。
閉極状態から開極状態へ移行するとき、バネ部材38は、バネ部材38の前端55aがA−A線上に位置する状態から、バネ部材38の前端55aおよび後端55bがB−B線上に位置する水平状態(デットポイント)を経て、図8下段に示すバネ部材38の前端55aがC−C線上に位置する状態へ移行する。
一方、スイッチ部12が開極状態のとき、リンク部35は回転軸部44を支点として後方かつ斜め下方に傾いた状態となっている。このとき、バネ部材38の前端(作用点)55aはB−B線上よりも低い位置となるC−C線上に存在する(図6および図8下段参照)。また、バネ部材38の後端55bはB−B線上に位置する。すなわち、バネ部材38は前方が斜め下方に傾くように配置されることになり、板バネ55の付勢力によって開極状態の位置保持がなされている。このときのバネ部材38の後端55bを支点とするストローク角はθaよりも大きな角度θcとなっており、バネ部材38の前端55aには、2つの板バネ55,55の付勢力の合計力となる下方に向かう保持力F2が作用している。この下方に向かう保持力F2によって開極状態での位置保持がなされている。
図9上段に示すように、開極状態からデットポイントまでの可動接点11のストロークの長さはS1となっている。一方、図9下段に示すように、デットポイントから開極状態までの可動接点11のストロークの長さはS2となっている。ここで、ストロークS2の長さはストロークS1の長さよりも大きくなっている。すなわち、S1<S2の関係が成立する。このため、S1=S2の関係の場合と比較して可動接点11の閉極状態から開極状態への移動速度は大きくなる。具体的には、ストローク角をθa<θcとすることで、θcに対応するストロークS2の前端55aには大きな力が作用することになり、その結果、S2間での移動速度はS1間よりも大きなものとなり、スイッチ部12は瞬断されることとなる。また、開極状態へ移動する際の固定接点11の全体のストロークS(=S1+S2)における移動速度も大きなものとなる。また、反発板24は駆動手段15によって生ずる駆動力Fによって動作するため、開極状態へ移行する際には、下方に向かって反発板24に反発力となる駆動力Fが作用し、閉極状態へ移行する際には、上方に向かって反発板24に反発力となる駆動力Fが作用する。このように、開極状態への移行時には、反発力となる駆動力Fに加えて保持力F2が作用するため、開極状態への移行速度は大きなものとなる。すなわち、開閉装置2における電気の遮断速度はより大きくなるように構成されている。
駆動手段15は、第2のロッド23の下端に固定され、該第2のロッド23とともに上下方向に移動する反発板24と、該反発板24に下方向に移動するような渦電流を誘起させる開極用コイル56と、反発板24に上方向に移動するような渦電流を誘起させる閉極用コイル57と、を有する。反発板24は、開極用コイル56と閉極用コイル57との間に配置され、たとえば銅からなる金属製の板材により形成される。上述したように、この駆動手段15の駆動力Fによって、スイッチ部12が開極状態および閉極状態に駆動される。
図10は、スイッチ部12のON/OFFを検知するための検知機器60の構成を示す図である。検知機器60は図3および図4に示すように、ハウジング3の左右外側であって柱状回転軸部44bが突出する位置近傍に配置される。図10に示すように、柱状回転軸部44bの切り欠かれた平坦部には平板状の板状部材61が固定されており、その先端部(図10の左側)にはピン部材62が取り付けられている。このピン部材62は検知機器60に配置されるシャフト部材63に接続されている。検知機器60は、左右方向から見て略四角形の形態を有する筐体64を備えている。筐体64内にはシャフト部材63等が配置される空間部65が形成されている。
図10に示すように、シャフト部材63の空間部65に入り込む部分は略角柱状に形成されている。この角柱状を案内する案内部から図10において水平方向に伸びるように第1の固定スイッチ部66が設けられている。シャフト部材63は第1の固定スイッチ部66に対して前後方向に相対移動可能である。第1の固定スイッチ部66の裏側(図10では下側)には各1つで計2つの固定接点66a,66aが設けられている。また、シャフト部材63の裏側部近傍には、上下方向(図10では左右方向)に向かって延出する第1の可動スイッチ部67が設けられており、該第1の可動スイッチ部67には、固定接点66a,66aと対向するように可動接点67a,67aが設けられている。
また、空間部65の後部(図10では下側)にはベース部材70が配置されている。このベース部材70を案内する案内部には、図10において水平方向に伸びる略板状の第2の固定スイッチ部71が設けられている。第2の固定スイッチ部71には、第1の固定スイッチ部66の場合と同様、2つの固定接点71a,71aが設けられている。また、ベース部材70の図10における上端側には、図10において水平方向に伸びる第2の可動スイッチ部72が設けられており、該第2の可動スイッチ部72には、固定接点71a,71aと対向するように可動接点72a,72aが設けられている。さらに、シャフト部材63の後端部とベース部材70の前端部とは弾性部材73によって連結されている。
図10に示す状態では、第1の可動スイッチ部67の可動接点67a,67aが第1の固定スイッチ部66の固定接点66a,66aに接触している。この状態では、リンク部35が下方向に移動し、柱状回転軸部44bが図10における時計回り方向に回動した状態である。この状態では、第1の可動スイッチ部67がONし、第2の可動スイッチ部72がOFFしている。開閉装置2の制御部は、ONとOFFのそれぞれの信号を検出し、スイッチ部12がOFFであることを検出する。一方、図10に示す状態から、リンク部35が上方向に向かって回動し、柱状回転軸部44bが図10に示す反時計回り方向に向かって回動するとピン部材62に押圧されてシャフト部材63が後方向(図10では下方向)に移動する。すると、第1の可動スイッチ部67がシャフト部材63とともに後方向(図10では下方向)に移動し、可動接点67a,67aが固定接点66a,66aから離れる。その動きとほとんど同時に、シャフト部材63からの押圧力が弾性部材73を介してベース部材70に伝達され、ベース部材70が後方(図10では下方向)に押圧されて移動する。すると、第2の可動スイッチ部72の可動接点72a,72aが第2の固定スイッチ部71の固定接点71a,71aと接触し、スイッチ部12がONであることが検出される。第1の可動スイッチ部67がOFFし、かつ第2の可動スイッチ部72がONすることで、開閉装置2の制御部はスイッチ部12がONしていると判断する。
図5に示すように、駆動手段15の左方には、該駆動手段15に対して開極用コイル56を駆動させる信号を送信するとともに閉極用コイル57を駆動させる信号を送信するための駆動手段制御装置74が設置されている(図6において不図示)。この駆動手段制御装置74は、開閉装置2の制御部となっている。具体的には、駆動手段制御装置74から駆動装置15に対して開極用コイル56を励磁する信号が送信される(以下、開極指令という。)と、開極用コイル56の上下両端にそれぞれN極、S極が発生し、一方、反発板24には対向した磁極と同極性の磁極が生じ、反発板24が反発力を受け下方向に移動してスイッチ部12がOFFとなり開極状態となる。一方、駆動手段制御装置74から駆動装置15に対して閉極用コイル57を励磁する信号が送信される(以下、閉極指令という。)と、閉極用コイル57の上下両端にそれぞれN極、S極が発生し、一方、反発板24には対向した磁極と同極性の磁極が生じ、反発板24が反発力を受け上方向に移動してスイッチ部12がONとなり閉極状態となる。
図11は、開極用コイル56、閉極用コイル57およびそれらにパルス電流を供給する電源とを電気的に接続した回路図である。
この回路では、開極用コイル56と、閉極用コイル57と、開極用コイル56および閉極用コイル57に電流を流すための電源となるDC電源75と、開極用コイル56に流すための電荷を蓄えるための開極用コンデンサ76と、閉極用コイル57に流すための電荷を蓄えるための閉極用コンデンサ77と、開極用コイル56に電流を流す際のスイッチとなる開極用サイリスタ78と、開極用サイリスタ78を導通可能とするための開極用ゲート点弧回路81と、開極側スイッチ82と、閉極用コイル57に電流を流す際のスイッチとなる閉極用サイリスタ83と、閉極用サイリスタ83を導通可能とするための閉極用ゲート点弧回路84と、閉極側スイッチ85を備えている。
この回路は、駆動手段制御装置74からの指令により、開極用コイル56および閉極用コイル57のいずれか一方に択一的に電流を流すために用いられる。開極用コイル56が配置される回路側に上述した開極指令が入力されると、開極側スイッチ82がONになり、さらに、開極用ゲート点弧回路81の指令により開極用サイリスタ78が導通可能な状態(ON状態)となる。すると、予め電荷が蓄えられていた開極用コンデンサ76から開極用サイリスタ78を通過して開極用コイル56に電流が流れる。
一方、閉極用コイル57が配置される回路側に上述した閉極指令が入力されると、閉極側スイッチ85がONになり、さらに、閉極用ゲート点弧回路84の指令により閉極用サイリスタ83が導通可能な状態(ON状態)となる。すると、電荷が蓄えられていた閉極用コンデンサ77から閉極用サイリスタ83を通過して閉極用コイル57に電流が流れる。
図12上段は、図11中の開極用コンデンサ76に蓄えられる電圧の推移を示す図であり、図12中段は、開極用コイル56に流れる電流の推移を示す図であり、図12下段は、スイッチ部12がOFFになるタイミングを示す図である。なお、閉極用コンデンサ77の閉極時の電圧は図12と同様となり、閉極用コイル57に流れる電流の推移も図12中段と同様となる。また、スイッチ部12がONとなるタイミングも図12下段と同様となる。
図12上段に示すように、開極用コンデンサ76に蓄えられた電荷は、約一定の割合で開極用コイル56に供給される。一方、開極用コイル56へ供給される電流は、開極用コンデンサ76における電圧の推移とは異なり、略曲線状に推移する。具体的には、曲線状に増加しながら所定時間後にピークに達し、その後、なだらかに減少しつつ、最後に急激に減少する。図12下段に示すように、開極用コイル56の3つのコイルに流れる電流は同時にOFFになるような設定となっている。具体的には、図12下段に示すように、開極用コイル57に電流が流れ始めて0.0007秒(0.7ms)後にスイッチ部12はOFFになるように設定されている。図12中段に示すように、開極用コイル56に流れる電流がピークに達するのが0.0015秒後なので、スイッチ部12は開極用コイル57に過電流が流れる前にOFFになる。このため、開極用コイル57に過電流が流れるのを防止でき、その結果、開極用コイル57が過度に加熱されるのを防止できる。
次に、開閉装置2のスイッチ部12の開極動作について説明する。
開閉装置2が図5に示す閉極状態であるときに、駆動手段制御装置74から、開極用ゲート点弧回路81に開極指令が入力され開極用サイリスタ78がONの状態になると、開極用コンデンサ76から開極用サイリスタ78を通過して開極用コイル56に電流が流れる。すると、開極用コイル56により誘起される渦電流によって反発板24には下方向に向かう反発力となる駆動力Fが作用し、反発板24が下方向に移動しようとする。反発板24の下方向への駆動力Fは、第2のロッド23および第2の可動軸22を介して絶縁フランジ21に伝達される。すると、絶縁フランジ21に伝達された反発力となる駆動力Fは該絶縁フランジ21の下方に配置されるコイル部材43および受け板41を介して柱状部材40の上端に伝達される。これにより、反発板24に作用する駆動力Fはリンク部35を下方に押圧するように伝達される。なお、駆動力Fは、反発板24と開極用コイル56の間の距離が長くなると急速に小さくなっていく。
また、開極状態では、コイル部材43は圧縮された状態となっているため、コイル部材43には図5に示す付勢力F3が作用している。この付勢力F3は受け板41を下方に押圧するため、該付勢力F3は、柱状部材40を介してリンク部35を下方向に押圧するように作用する。その結果、リンク部35には駆動力Fと付勢力F3の合計力が下方に向かって作用する。当該合計力は、閉極状態での位置保持を行っている保持力F1より大きな力となるため、該合計力が保持力F1に打ち勝ちリンク部35は回転軸部44を支点として下方(図5において時計回り方向)に回動していく。すると、バネ部材38は、図9に示すデットポイントを通過する。デットポイントを通過すると、バネ部材38は急速に回動し、その結果、リンク部35は急速に下方にさらに回動する。柱状部材40もリンク部35とともに下方に移動するため、柱状部材40の下端がナット42に当接する。この結果、柱状部材40は、ナット42、第2のロッド23および反発板24を押し下げるとともにそれらが上方に移動するのを阻止する。
このように反発板24が下方に移動すると、第2のロッド23、第2の可動軸22、絶縁フランジ21、第1の可動軸20および第1のロッド19を介して可動接点11が下方に急速に移動し、図6に示す開極状態となる。ここで、バネ部材38がデットポイントを通過した後は、反発力となる駆動力Fと付勢力F3の合計力に、保持力F1よりも大きな力となる保持力F2が加えられるため、より大きな力が可動軸部13に加わり、スイッチ部12の遮断速度も速いものとなる。
次に、開閉装置2のスイッチ部12の閉極動作について説明する。
開閉装置2が図6に示す開極状態であるときに、駆動手段制御装置74から、閉極用ゲート点弧回路84に閉極指令が入力され閉極用サイリスタ83がONの状態になると、閉極用コンデンサ77から閉極用サイリスタ83を通過して閉極用コイル57に電流が流れる。すると、閉極用コイル57により誘起される渦電流によって反発板24には上方向に向かう駆動力Fが作用し、反発板24が上方向に移動しようとする。反発板24の上方向への駆動力Fは、第2のロッド23および柱状部材40の下方に当接するナット42を介して柱状部材40に伝達される。すると、該駆動力Fは、柱状部材40を介してリンク部35を上方に押圧するように伝達される。なお、駆動力Fは、反発板24と閉極用コイル57との間の距離が長くなると急速に小さくなっていく。
また、リンク部35には受け板41および柱状部材40を介してコイル部材43からの図6に示す付勢力F4(付勢力F3に比べ小さい力)が作用しており、この付勢力F4はリンク部35を下方に押圧している。このため、リンク部35には反発力となる駆動力Fから付勢力F4を差し引いた合計力が上方向に向かって作用していることになる。当該合計力は、開極状態での位置保持を行っている保持力F2より大きな力となるため、該合計力が保持力F2に打ち勝ちリンク部35は回転軸部44を支点として上方(図6において反時計回り方向)に回動し始める。そして、バネ部材38が図9に示すデットポイントを通過する。その後、バネ部材38は急速に回動し、その結果、リンク部35は急速に上方にさらに回動する。すると、リンク部35とともに柱状部材40が上方に移動し、該柱状部材40に当接している受け板41がコイル部材43を押し縮める。押し縮められたコイル部材43の復元力も絶縁フランジ21を上方に押し上げるように作用する。
このように、最初はナット42を介してリンク部35が回動し始めるが、デットポイントを通過後は、リンク部35は、バネ部材38の付勢力によって回動していく。固定接点10に可動接点11が接触すると、反発板24、第3の可動軸25、第2のロッド23、第2の可動軸22、絶縁フランジ21、第1の可動軸20および第1のロッド19のいずれもがその動きを停止する。しかし、リンク部35はさらに回動するため、その力は受け板41に加えられ、コイル部材43を介して絶縁フランジ21に伝えられる。この力は第1の可動軸20および第1のロッド19を介してスイッチ部12に伝えられ、チャタリングを防止するように働く。
以上のように構成された開閉装置2では、弓状に撓ませた2枚の板バネ55から構成されるバネ部材38を可動軸部13の側方に設置し、該バネ部材38の付勢力を利用してスイッチ部12を閉極状態および開極状態に保持している。このため、弾性部材38を可動軸部13上に取り付ける必要がなくなる。したがって、軸方向でスペース上、有利なものとなる。加えて、弾性部材38を可動軸部13とは別体として設置することができるので、弾性部材38の取り付けおよび取り外し作業が容易となる。また、メンテナンスも容易に行うことが可能となる。さらに、弾性部材38を直接可動軸部13に取り付ける場合と比較して、高い位置精度が要求されることがなくなる。
また、バネ部材38は、リンク部35がすでに設置された状態において、立設部52と当接部37との間に配設可能である。すなわち、バネ部材38は、当接部37を固定部材として開閉装置2に対して後付けすることが可能である。このため、より容易に弾性部材を開閉装置2に設置することが可能となる。
また、バネ部材38は、2枚の板バネ55をリンク部35と当接部37の間に配置する構成とされている。このため、簡易な構成でスイッチ部11を閉極状態および開極状態に位置保持することが可能となる。また、板バネ55は、対向して弓状に撓んでいるため、安定した付勢力をリンク部35に作用させ続けることが可能となる。
また、開閉装置2では、開極動作においては、コイル部材43の付勢力F3を利用してリンク部35を絶縁フランジ21と一体的に押圧している。このため、より大きな力でリンク部35を下方に向かって押圧でき、開極動作の速度を向上させることが可能となる。なお、反発板24が下方向に動作したとき、絶縁フランジ21の下端がリンク部35の上端を押圧するようにすると、より一層、確実にリンク部35を回動させることができる。
また、閉極状態においては、コイル部材43の復元力が依然として可動接点11を上方に押圧するように作用する。このため、閉極状態をより安定した状態に維持することが可能となる。
また、開閉装置2では、デットポイントを境にしたバネ部材38のストローク角はθc>θaとなるように、θcとθaとを異なる角度としている。このため、開極動作において、バネ部材38がデットポイントを通過した後は、保持力F2が作用し、より大きな力が可動軸部13に加わることとなる。その結果、スイッチ部12の遮断速度を向上させることが可能となる。
また、開閉装置2では、リンク部35に柱状部材40が固定され、該柱状部材40の円孔53に隙間Hを有する形態で第2の可動軸22が挿通されている。このため、リンク部35が回転軸部44を支点として回動しても、リンク部35を可動軸部13の軸線方向となる上下方向に案内させることが可能となる。
また、柱状部材40の上端には、第2の可動軸22を挿通するように受け板41が配設され、該受け板41の上方にはコイル部材43が配設されている。このため、コイル部材43の付勢力を受け板41を介して柱状部材40に伝達することが可能となる。したがって、コイル部材43の付勢力をリンク部35に確実に伝達することが可能となる。
また、柱状部材40の下端には、第2の可動軸22を挿通するようにナット42が配設されている。このため、スイッチ部12が開極し、リンク部35が下方に移動したとき、柱状部材40はナット42に当接する。したがって、リンク部35の下方に移動する力を確実に第2のロッド23に伝達することが可能となる。
また、開閉装置2では、開極用コイル56に流れる電流がピークに達する前にスイッチ部12がOFFとなるような構成とされている。このため、開極用コイル56に過電流が流れるのを防止でき、その結果、開極用コイル56が過度に加熱されるのを防止できる。
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
上述の各実施の形態では、バネ部材38は2枚の板バネ55から構成されているが、たとえば、4枚の板バネ55から構成する等、バネ部材38を他の枚数の板バネ55から構成するようにしても良い。また、バネ部材38を異なる形状の板バネから構成するようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、絶縁フランジ21の下端はリンク部35に当接しない構成とされているが、絶縁フランジ21の下端をリンク部35もしくは受け板41に当接させるような構成としても良い。
また、上述の実施の形態では、コイル部材43が絶縁フランジ21と受け板41との間に介在されているが、コイル部材43を設けないようにしても良い。この場合、絶縁フランジ21の下端をリンク部35もしくは受け板41に当接させるような構成としても良い。また、上述の実施の形態では、ナット42が配設されているが、ナット42を配設することなく、柱状部材40の下端を直接第2のロッド23の上端に当接させるようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、開閉機器1には合計4つの保持機構14を配設させているが、保持機構14の数は、4つに限定されるものではなく、3つ以下にしても良いし、5つ以上としても良い。
また、上述の実施の形態では、デットポイントを境にしたバネ部材38のストローク角はθcとθaとで異なる角度とされているが、同じ角度としても良い。また、θcよりもθaを大きな角度としても良い。また、A−A線上に左端55aおよび右端55bが位置するようにバネ部材38を配置しても良い。
また、上述した実施の形態では、駆動手段15として、反発力を利用するものとしたが、吸引力を利用するものとしても良い。さらには、渦電流利用のものではなく、磁石利用のものとしても良い。また、スイッチ部12が真空バルブ内に配置されるものではなく、通常の大気中に配置されるものとしても良い。さらには、開閉機器1としては三相交流を対象としたものとしているが、他の交流電源を対象としたり、直流電源を対象とするものとしても良い。