JP5394138B2 - 貯水施設運用支援システム、貯水施設運用支援方法およびプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、貯水施設運用支援システム、貯水施設運用支援方法およびプログラムに関する。
水力発電を効率的に行うために、コンピュータによる運用支援システムが用いられている。例えば、特許文献1では、1日の放水水量に基づいて自動計算した発電機運転計画及び水位計画や、過去の発電機運転計画及び水位計画の実績データなどを表示し、必要に応じて修正を受け付けて発電運用計画を作成している。
特開2006−39838号公報
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、貯水池における1日の放水水量や実績に応じて水位を計画しているものの、無効放流量については何ら着目していない。
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、無効放流を減らすことができるように貯水施設の運用を支援するシステム、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明のうち主たる発明は、水力発電のための貯水施設の運用を支援するシステムであって、所定の運用期間を構成する各単位期間における前記貯水施設への流入量の発生確率の分布を求めるための確率分布を取得する確率分布取得部と、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間における前記流入量に基づいて、前記水力発電により前記単位期間に発電される電力量を算出するための電力量モデルと、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間における前記流入量および前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位に基づいて、前記水力発電のために用いられずに放流される無効放流量を算出するための無効放流モデルとを記憶するモデル記憶部と、前記各単位期間について、前記単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間の終了時点における水位を変化させ、前記単位期間における前記流入量を変化させていき、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記電力量モデルに適用して前記電力量を算出し、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記無効放流モデルに適用して前記無効放流量を算出し、前記確率分布から求められる流入量の発生確率を前記電力量に乗じた値を算出し、各前記流入量について、前記発生確率を前記電力量に乗じた値を合計したものから、前記無効放流量に所定の係数を乗じた値を減じて、前記電力量の評価値を算出していき、前記評価値の合計が最大となる前記水位の組合せを決定する最適水位決定部と、を備えることとする。
本発明の貯水施設運用支援システムによれば、無効放流量が少なくなるように考慮しつつ、発電電力量が大きくなるように貯水施設の最適な計画水位を求めることができる。無効放流量が多くなると貯水施設より下流の地域に増水等が発生するおそれがあるため、無効放流量が少なくなるように計画水位を調節することにより、貯水施設より下流の地域における安全を確保し、河川などの保安業務の負荷を軽減することができる。
また、本発明の貯水施設運用支援システムでは、前記最適水位決定部は、前記単位期間の開始時点における水位を、所定の最低水位から所定の最高水位まで所定のステップごとに変化させるようにしてもよい。
また、本発明の貯水施設運用支援システムでは、前記最適水位決定部は、前記単位期間における前記流入量を、所定の最小量から所定の最大量まで所定の単位量ごとに変化させるようにしてもよい。
また、本発明の貯水施設運用支援システムでは、前記最適水位決定部は、確率論的動的計画法により、前記評価値の合計が最大となる前記水位の組合せを決定するようにしてもよい。
また、本発明の貯水施設運用支援システムでは、貯水施設運用支援システムは、前記貯水施設において水力発電に利用する水量である取水量の最大値である最大取水量、前記取水量の最小値である最小取水量および維持流量を含む、前記貯水施設の諸元を記憶する諸元記憶部を備え、前記モデル記憶部に記憶されているモデルは、水位をH、貯水量をV、前記貯水施設において貯水量を水位に変換するための定数をa、時点tから時点t+1までの間に増加する貯水量の差である貯水量差をΔV、前記維持流量をS0、流入量をR、前記取水量をQ、前記最小取水量をQmin、前記最大取水量をQmax、前記無効放流量をSとして、式
Figure 0005394138
Figure 0005394138
Figure 0005394138
Figure 0005394138
および
Figure 0005394138
により表されることとしてもよい。
また、本発明の貯水施設運用支援システムでは、前記モデル記憶部は、前記無効放流量を算出するためのモデルである第1のモデルに加えて、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位、前記単位期間における前記流入量に基づいて、前記水力発電により前記単位期間に発電される電力量を算出するための第2のモデルを記憶しており、前記各単位期間における前記貯水施設への流入量の発生確率の分布を求めるための確率分布を取得する確率分布取得部と、前記運用期間における単位期間m(m=1,...,n)のそれぞれについて、単位期間mの開始時点における水位をHm、単位期間における流入量をRmとし、HmおよびHm+1を変化させ、変化させたHmおよびHm+1の各組合せにつき、Rmを変化させ、Hm、Hm+1、Rmを前記モデルに適用して前記電力量を算出し、前記確率分布から求められるRmの発生確率を前記電力量に乗じた値を算出していき、各Rmについて算出した前記発生確率を前記電力量に乗じた値を合計して、HmおよびHm+1に応じた前記電力量の期待値E(Hm,Hm+1)を算出し、単位期間m(m=1,...,n)のそれぞれについて、Hmを変化させ、変化させた各Hmにつき、Hi(i=m,...,n)の組合せのうち、全てのiについてのE(Hi,Hi+1)の合計が最大となるものに含まれるHm+1を、前記Hmに対応する前記最適水位として決定し、m、Hm、および前記決定した最適水位を対応付けて前記最適水位記憶部に登録する最適水位決定部と、を備えることとしてもよい。
また、本発明の他の態様は、水力発電のための貯水施設の運用を支援する方法であって、コンピュータが、所定の運用期間を構成する各単位期間における前記貯水施設への流入量の発生確率の分布を求めるための確率分布を取得し、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間における前記流入量に基づいて、前記水力発電により前記単位期間に発電される電力量を算出するための電力量モデルと、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間における前記流入量および前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位に基づいて、前記水力発電のために用いられずに放流される無効放流量を算出するための無効放流モデルとをメモリに記憶し、前記各単位期間について、前記単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間の終了時点における水位を変化させ、前記単位期間における前記流入量を変化させていき、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記電力量モデルに適用して前記電力量を算出し、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記無効放流モデルに適用して前記無効放流量を算出し、前記確率分布から求められる流入量の発生確率を前記電力量に乗じた値を算出し、各前記流入量について、前記発生確率を前記電力量に乗じた値を合計したものから、前記無効放流量に所定の係数を乗じた値を減じて、前記電力量の評価値を算出していき、前記評価値の合計が最大となる前記水位の組合せを決定することとする。
また、本発明の他の態様は、コンピュータに、所定の運用期間を構成する各単位期間における前記貯水施設への流入量の発生確率の分布を求めるための確率分布を取得するステップと、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間における前記流入量に基づいて、前記水力発電により前記単位期間に発電される電力量を算出するための電力量モデルと、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間における前記流入量および前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位に基づいて、前記水力発電のために用いられずに放流される無効放流量を算出するための無効放流モデルとをメモリに記憶するステップと、前記各単位期間について、前記単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間の終了時点における水位を変化させ、前記単位期間における前記流入量を変化させていき、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記電力量モデルに適用して前記電力量を算出し、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記無効放流モデルに適用して前記無効放流量を算出し、前記確率分布から求められる流入量の発生確率を前記電力量に乗じた値を算出し、各前記流入量について、前記発生確率を前記電力量に乗じた値を合計したものから、前記無効放流量に所定の係数を乗じた値を減じて、前記電力量の評価値を算出していき、前記評価値の合計が最大となる前記水位の組合せを決定するステップと、を実行させることとする。
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄および図面により明らかにされる。
本発明によれば、無効放流を減らすことができる。
運用支援システム30のハードウェア構成を示す図である。 運用支援システム30のソフトウェア構成を示す図である。 計画水位データベース334の構成例を示す図である。 最適水位の登録処理の流れを示す図である。 計画水位の登録処理の流れを示す図である。 計画水位の算出処理の流れを示す図である。 計画水位の調整処理の流れを示す図である。
==システム構成==
以下、本発明の一実施形態に係る貯水施設の運用支援システム30について説明する。本実施形態の運用支援システム30は、ダムなどの貯水施設における水位を適切に運用するための支援を行う。
本実施形態の運用支援システム30では、発電電力量の期待値を最大化する水位を最適な水位としてデータベースに記憶しておき、運用時に、発電に用いられない放流(無効放流)を最小化するように水位計画の調整を行うようにしている。具体的には、運用支援システム30は、長期の運用計画の対象となる期間(以下、長期運用期間という。本実施形態では1年とする。)における発電電力量が最大となるように、中期の運用計画の対象となる期間(以下、中期運用期間という。本実施形態では、1ヶ月とする。)ごとの最適な水位についてのシミュレーションを行い、その後、中期運用期間における最適な水位を求める。なお、以下の説明において、貯水施設における水位は、所定の単位量(例えば、1メートルや5メートルなどである。以下、単位水位という。)ごとの離散値であるものとする。長期運用期間における発電電力量が最大となるような中期運用期間での水位は、確率論的動的計画法(Stochastic Dynamic Programming; SDP)により求める。
図1は、運用支援システム30のハードウェア構成を示す図である。同図に示すように、運用計画システム30は、CPU301、メモリ302、記憶装置303、通信インタフェース304、入力装置305、および出力装置306を備えている。記憶装置303は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ、CD−ROMドライブなどである。CPU301は、記憶装置303に記憶されているプログラムをメモリ302に読み出して実行することにより各種の機能を実現する。通信インタフェース304は、通信ネットワーク40に接続するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタや、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための通信器などである。入力装置305は、データの入力を受け付ける、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル、マイクロフォンなどである。出力装置306は、データを出力する、例えば、ディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。
図2は、運用計画システム30のソフトウェア構成を示す図である。同図に示すように、運用計画システム30は、諸元入力部311、流入量分布取得部312、中期計画部313、予測流入量取得部315、無効放流調整部317、諸元記憶部331、モデル記憶部332、最適水位データベース333、計画水位データベース334を備えている。なお、諸元入力部311、流入量分布取得部312、中期計画部313、予測流入量取得部315、および無効放流調整部317は、運用計画システム30が備えるCPU201が、記憶装置303に記憶されているプログラムをメモリ302に読み出して実行することにより実現される。また、諸元記憶部331、最適水位データベース333、および計画水位データベース334は、運用計画システム30が備えるメモリ302や記憶装置303が提供する記憶領域として実現される。なお、諸元記憶部331、モデル記憶部332、および最適水位データベース333は、運用計画システム30とは異なるデータベースサーバが管理し、運用計画システム30がそのデータベースサーバにアクセスするようにしてもよい。
諸元記憶部331は、貯水施設、河川、発電設備などの各種の諸元の設定値を含む情報(以下、諸元情報という。)を記憶する。
諸元入力部311は、諸元情報の入力を受け付け、受け付けた諸元情報を諸元記憶部331に登録する。諸元入力部311は、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置205から諸元情報の各項目の入力を受け付けるようにしてもよいし、例えば、電力会社のホストコンピュータにアクセスして諸元情報を取得するようにしてもよい。
なお、諸元入力部311は予め、貯水施設に係る諸元として、水位の最高値(最高運用水位;以下、Hmaxと表記する。単位はmである。)、および水位の最低値(最低運用水位;以下、Hminと表記する。単位はmである。)の入力を受け付け、受け付けた最高運用水位を含む諸元情報と、最低運用水位を含む諸元情報とを作成して諸元記憶部331に登録し、河川に係る諸元として、維持流量(以下、S0と表記する。単位はm/sである。)の入力を受け付け、受け付けた維持流量を含む諸元情報を作成して諸元記憶部331に登録し、発電設備に係る諸元として、発電に利用する可能な最大の水量(最大取水量;以下、Qmaxと表記する。単位はm/sである。)、発電に利用可能な最低の水量(最小取水量;以下、Qminと表記する。単位はm/sである。)、発電した後に放水する高さ(放水位;以下、Houtと表記する。単位はmである。)、および損失落差(以下、Hlosと表記する。単位はmである。)の入力を受け付けて、受け付けた最大取水量を含む諸元情報、最小取水量を含む諸元情報、放水位を含む諸元情報、および損失落差を含む諸元情報を作成して諸元記憶部331に登録しているものとする。
最適水位データベース333は、月と、当該月の開始時点における水位と、当該月における流入量とに対応する、最適な中期運用期間後の水位を記憶する。
計画水位データベース334は、所定の計画期間における、各月の最適な水位(以下、計画水位という。)を記憶する。計画水位データベース334に記憶される水位は、最適水位データベース333から読み出されたものであり、実際の貯水施設の運用前に登録されることを想定する。図3は、計画水位データベース334の構成例を示す図である。同図に示すように、開始月、終了月および開始水位に対応付けて、各月の水位が登録される。開始月は、ある計画期間における最初の月であり、終了月は、計画期間の最後の月である。開始水位は、開始月の月初における水位である。
流入量分布取得部312は、流入量の発生確率分布(以下、流入量分布という。)を取得する。本実施形態では、流入量分布取得部312は、ユーザから流入量分布の入力を受け付けるものとする。なお、流入量分布は、例えば、次のようにして求めるようにしてもよい。すなわち、過去30年間の月毎の流入量の実績値の平均値(以下、実績流入量という。)をメモリ302や記憶装置303に記憶しておく。流入量Rが取り得る最小値(以下、最小流入量といい、Rminと表す。)から、流入量Rが取り得る最大値(以下、最大流入量といい、Rmaxと表す。)までの所定の単位量(以下、単位流入量という。)ごとの流入量について、当該流入量の±単位流入量/2の実績流入量をカウントし、カウントした数を30で割った商を流入量の発生確率として算出するようにする。
中期計画部313は、中期運用期間ごとの最適な水位の計画を作成する。中期計画部313は、流入量分布と、後述するモデル記憶部332に記憶されている統計モデルとを用いて、確率論的動的計画法により最適な水位の計画を作成して、最適水位データベース333に登録する。また、中期計画部313は、最適水位データベース333に登録されている水位に基づいて、計画水位を計画水位データベース334に登録する。なお、中期計画部313による処理の詳細については後述する。
予測流入量取得部315は、各日についての流入量Rの予測値(予測流入量)を取得する。予測流入量取得部315は、例えば、キーボードやマウスなどから、予測流入量の入力を受け付けるようにすることができる。また、予測流入量取得部315は、例えば、流入量の予測を行う他のコンピュータにアクセスして予測流入量を取得するようにしてもよいし、実績流入量をメモリ302や記憶装置303に記憶しておいて、例えば、前年同月同曜日などの実績流入量を予測流入量としてもよい。また、実績流入量を用いたシミュレーションにより予測流入量を算出するようにしてもよい。 モデル記憶部332には、以下のモデルB1〜B10が記憶されている。
モデルB1は、貯水量Vに基づいて運用水位Hを算出するためのもの(水位算出モデル)であり、次式により表される。なお、aは貯水施設に固有の定数である。
Figure 0005394138
モデルB2は、最高運用水位Hmaxに基づいて貯水量の上限(以下、上限貯水量といい、Vmaxと表記する。)を算出するためのものであり、次式により表される。
Figure 0005394138
モデルB3は、最低運用水位Hminに基づいて貯水量の下限(以下、下限貯水量といい、Vminと表記する。)を算出するためのものであり、次式により表される。
Figure 0005394138
モデルB4は、1日の0時から24時(すなわち次の日の0時)の貯水量に基づいて、単位期間の開始時点から終了時点までの貯水量の差(以下、貯水量差といい、ΔVと表記する。)を算出するものであり、ある日付tの0時における貯水量をVとして、次式により表される。
Figure 0005394138
モデルB5は、流入量Rから維持流量S0および貯水量差ΔVを引いた水量(R0)を算出するためのものであり、次式により表される。
Figure 0005394138
モデルB6は、最小取水量Qmin、最大取水量Qmax、最低運転出力Q0minおよびR0に基づいて、取水量Qを決定するためのもの(取水量算出モデル)であり、次式により表される。
Figure 0005394138
すなわち、R0が、最小取水量Qmin以上であり、かつ、最大取水量Qmax以下である場合には、R0が取水量Qとなり、R0が最小取水量Qminよりも小さい場合には最小取水量Qminが取水量Qとなり、R0が最大取水量よりも大きい場合には最大取水量Qmaxが取水量Qとなる。ただし、R0が最低運転出力Q0minよりも小さい場合は、取水量Qは0となる。
モデルB7は、R0および取水量Qに基づいて、1日に貯水施設において放流される水量(以下、普通放流量または無効放流量といい、Sと表記する。)を算出するためのものであり、次式により表される。
Figure 0005394138
モデルB8は、1日の終了時点における運用水位、放水位Houtおよび損失落差Hlosに基づいて、有効落差hnを算出するためのものであり、日付tの0時における運用水位をHとし、水位を海抜高さに変換するための所定の定数をbとして、次式により表される。
Figure 0005394138
モデルB9は、取水量Qおよび有効落差hnに基づいて1日に発電される発電電力Pnを算出するためのものであり、発電の変換効率に係る係数をc、重力加速度をgとして、次式により表される。
Figure 0005394138
モデルB10は、発電電力Pnに基づいて1日に発電される発電電力量Enを算出するためのもの(電力量算出モデル)であり、次式により表される。
Figure 0005394138
==最適水位の登録処理==
中期計画部313は、無効放流量を考慮しつつ、発電電力量の期待値が最大になるような水位を決定し、最適水位データベース333に登録する。図4は、最適水位の登録処理の流れを示す図である。なお、図4の例では、長期運用期間はn個の中期運用期間により構成されているものとしている。つまり、本実施形態では、n=12である。
中期計画部313は、計算処理のステージを示すSTに0を設定する(S3601)。中期計画部313は、STをインクリメントし(S3602)、n月からm月までの発電電力量の累計値(以下、累計発電電力量という。)をFとして、水位Hが取りうる全ての値、すなわちHminからHmaxまでの単位水位ごとの値と、流入量Rが取りうる全ての値、すなわちRminからRmaxまでの単位流入量ごとの値とについて、当該ステージ、水位H、および流入量Rに対応する、n+1(13)月の累計発電電力量Fn+1(ST,H,R)を0に設定する(S3603)。中期計画部313は、mにn(12)を設定する(S3604)。
中期計画部313は、m月の水位Hに最低水位Hminを設定し(S3605)、m月の流入量Rに最低流入量Rminを設定する(S3606)。流入量分布取得部312は、翌月m+1の流入量Rm+1が取り得る全ての値について、m月の流入量がRであった場合の条件付き確率P(Rm+1|R)を取得する(S3607)。
中期計画部313は、流入量Rm+1を変化させて合計した、m+1月までの累計発電電力量Fm+1の期待値の合計ΣP(Rm+1|R)Fm+1(ST,Hm+1,Rm+1)と、m月の水位H、その翌月の水位Hm+1、および当月の流入量Rに基づいて算出されるm月における発電電力量B(H,R,Hm+1)とを足した値から、m月の無効放流量Sの2乗に所定の係数(以下、ペナルティ係数という。)aを乗じた値を減じて、算出累積値を算出する。すなわち、中期計画部313は、B(H,R,Hm+1)−a(S+ΣP(Rm+1|R)Fm+1(ST,Hm+1,Rm+1)が最大となるHm+1を決定し、最大の算出累積値をF(ST,H,R)とする(S3608)。
中期計画部313は、流入量Rに単位流入量を加算し(S3609)、Rが最大流入量Rmaxを越えていなければ(S3610:NO)、ステップS3607からの処理を繰り返し、越えていれば(S3610:YES)、Hに単位水位を加算する(S3611)。中期計画部313は、Hが最高運用水位Hmaxを越えていなければ(S3612:NO)、ステップS3606からの処理を繰り返し、越えていれば(S3612:YES)、mをデクリメントする(S3613)。
中期計画部313は、mが1より大きければ(S3614:NO)、ステップS3605からの処理を繰り返す。中期計画部313は、mが1になれば(S3614:YES)、当該ステージにおける年間の累計発電電力量、すなわち、n(12)月から1月までの累計発電電力量F1(ST,H,R)を合計した値F(ST)と、直前のステージにおける年間の累計発電電力量F(ST−1,H,R)を合計した値F(ST−1)とを算出し、F(ST)からF(ST−1)を減じた値をF(ST−1)で割った値の絶対値が所定の閾値を下回っているか否かにより、上記処理による累計発電電力量が定常化したか否かを判定する(S3615)。累計発電電力量が定常化した場合(S3615:YES)、中期計画部313は、全てのm、H、Rの組み合わせについて、m、H、Rに対応付けて、当該ステージのステップS3608で決定したHm+1を最適化データベース333に登録する(S3616)。
以上のようにして、最適な水位の組み合わせが最適水位データベース333に登録される。
==計画水位の登録処理==
図5は、中期計画部313による計画水位の登録処理の流れを説明する図である。
中期計画部313は、計画期間の最初の月(開始月)の入力を受け付けてtsとし(S4001)、計画期間の最後の月(終了月)の入力を受け付けてteとする(S4002)。また、中期計画部313は、開始月の月初における水位の入力を受け付けてHtsとする(S4003)。
次に、予測流入量取得部315は、開始月tsから終了月teまでの各月の流入量Rの予測値を取得する(S4004)。中期計画部313は、図6に示す計画水位の登録処理を行う(S4005)。すなわち、中期計画部313は、tsをmとして(S4201)、最適水位データベース333に記憶されている、翌月m+1月の水位を読み出して、読みだした水位をHm+1とする(S4202)。そして、mをインクリントする(S4203)。mがteよりも後になった場合には(S4204)、処理を終了する。
中期計画部313は、変数mに開始月tsを設定し(S4006)、開始月tsから終了月teの差をnとし(S4007)、HおよびRを上述した各種モデルに適用してR0および取水量Qを算出し、算出したR0および取水量QをモデルB7に適用して、無効放流量Sを算出し(S4008)、Sが0でなければ(S4009:NO)、図7に示す計画水位の調整処理を行う(S4010)。
中期計画部313は、変数tにmを設定し(S4401)、tがtsと等しくなった場合(S4402:YES)には処理を終了する。中期計画部313は、tがtsと等しくなく(S4402:NO)、tにおける水位Htが、最低運用水位Hminよりも小さくなければ(S4403:NO)、Hから単位水位を引いた上で(S4404)、HおよびRを上述した各種モデルに適用してR0および取水量Qを算出し、算出したR0および取水量QをモデルB7に適用して、無効放流量Sを算出し(S4405)、Sが0にならなければ(S4406:NO)、ステップS4403からの処理を繰り返す。
無効放流量Sが0になった場合(S4406:YES)には、中期計画部313は、tをデクリメントし(S4407)、RtおよびHtを上述した各種のモデルに適用して、
R0および取水量QをモデルB7に適用して、無効放流量Sを算出してR0および取水量Qを算出し、算出したR0および取水量QをモデルB7に適用して、無効放流量Sを算出し(S4408)。中期計画部313は、無効放流量Sが0になれば(S4409:YES)、処理を終了する。
中期計画部313は、mをインクリメントし(S4011)、mがnを越えていなければ(S4012:NO)、ステップS4008からの処理を繰り返し、mがnを越えていれば(S4012:YES)、HtsからHte+1までを計画水位記憶部235に登録する(S4013)。
本実施形態の運用計画システム30によれば、将来の流入量の予測値を用いて、長期運用期間における発電電力量の期待値を大きくする、中期運用期間の開始時点および終了時点の水位の組合せを求めることができる。したがって、貯水施設の運用者は、中期運用期間の開始時点に、最適水位データベース333を参考にして、その時点での水位に対応する1ヶ月後の水位を目標の水位として貯水施設を運用することにより、1年間の発電電力量を大きくすることが可能となる。よって、貯水施設の運用者の経験が浅い場合であっても容易に最適な水位に調整することができる。
また、本実施形態の運用計画システム30によれば、貯水施設の運用者の勘と経験によって水位を計画する場合に比べ、客観的なデータに基づいて、水位の計画を策定することができる。また、本実施形態の運用計画システム30では、確率論的動的計画法を用いることにより、将来の流入量の予測値を確率分布として求めた場合でも、貯水施設における発電電力量の期待値を大きくする最適な水位の計画を容易に導出することができる。
また、本実施形態の運用計画システム30によれば、無効放流量Sの2乗にペナルティ係数を乗じた値を減じて算出累積値を算出しているので、無効放流量を消極的に評価した上で発電電力量を最大化するように最適な水位の組合せを決定することができる。つまり、無効放流量Sが少なくなるような最適水位を決定することができる。
また、本実施形態の運用計画システム30によれば、最適化された貯水施設の計画水位を、無効放流が最小(本実施形態では「0」)になるように調整することができる。無効放流が多くなると貯水施設の下流地域に増水等が発生するおそれがあるため、無効放流量が少なくなるように計画水位を調整することにより、下流地域における安全を確保することができるとともに、保安業務等の増加を抑制することができる。
また、本実施形態の運用計画システム30では、事前に発電電力量の期待値が最大となるように水位を最適化しておき、運用時に無効放流を最小化するように調整を行った上で貯水施設の運用を行うことができる。流入量などの予測値は、予測日が近いほど予測精度が高くなることが知られており、運用時に調整を行うことで確実に下流地域の安全を確保することができる。一方で、水位の最適化を事前に行っておくことにより、運用時にはその最適化された水位を読み出すのみで水位の計画を立てることができるので、運用時点における手間が軽減される。
なお、本実施形態では、運用計画システム30は、1台のコンピュータにより実現されるものとしたが、複数台のコンピュータにより実現するようにすることもできる。
また、本実施形態の運用計画システム30では、長期運用期間は1年であり、中期運用期間は1ヶ月であるものとしたが、これに限らず、任意の長さを設定することができる。例えば、長期運用期間を半年や3ヶ月などとしてもよいし、中期運用期間を3ヶ月や旬(10日)、1週間としてもよい。
また、本実施形態では、無効放流量Sの2乗にペナルティ係数aを乗じた値を、累計発電電力量Fm+1の期待値の合計とm月の発電電力量Bとの和から減じるものとしたが、無効放流量Sは負の値にはならないので、Sの2乗ではなくSにaを乗じた値を減じるようにしてもよい。
また、ペナルティ係数aを、所定の最小のペナルティ係数から、所定の最大のパネルティ係数まで、所定の単位量ずつ増加させて上記算出累積値を求めていき、最も累計発電電力量Fが大きくなる場合の水位を最適水位データベース333に登録するようにしてもよい。
また、本実施形態では、計画水位の登録処理においても、図5のステップS4008〜S4012のように、無効放流量Sを考慮して最適水位を調整した上で計画水位として登録するものとしたが、計画水位の登録処理においては無効放流量Sを考慮しないようにしてもよい。すなわち、図5に示す計画水位の登録処理においては、月mにおける水位Hmに対応する次月のHm+1を、開始月tsから終了月teまでの各mについて読み出していき、読み出した水位を計画水位として計画水位データベース334に登録するようにするようにしてもよい。
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
30 運用計画システム
40 通信ネットワーク
301 CPU
302 メモリ
303 記憶装置
304 通信インタフェース
305 入力装置
306 出力装置
311 諸元入力部
312 流入量分布取得部
313 中期計画部
315 予測流入量取得部
331 諸元記憶部
332 モデル記憶部
333 最適水位データベース
334 計画水位データベース
335 計画水位データベース

Claims (7)

  1. 水力発電のための貯水施設の運用を支援するシステムであって、
    所定の運用期間を構成する各単位期間における前記貯水施設への流入量の発生確率の分布を求めるための確率分布を取得する確率分布取得部と、
    前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間における前記流入量に基づいて、前記水力発電により前記単位期間に発電される電力量を算出するための電力量モデルと、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間における前記流入量および前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位に基づいて、前記水力発電のために用いられずに放流される無効放流量を算出するための無効放流モデルとを記憶するモデル記憶部と、
    前記各単位期間について、前記単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間の終了時点における水位を変化させ、前記単位期間における前記流入量を変化させていき、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記電力量モデルに適用して前記電力量を算出し、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記無効放流モデルに適用して前記無効放流量を算出し、前記確率分布から求められる流入量の発生確率を前記電力量に乗じた値を算出し、各前記流入量について、前記発生確率を前記電力量に乗じた値を合計したものから、前記無効放流量に所定の係数を乗じた値を減じて、前記電力量の評価値を算出していき、前記評価値の合計が最大となる前記水位の組合せを決定する最適水位決定部と、
    を備えることを特徴とする貯水施設運用支援システム。
  2. 請求項1に記載の貯水施設運用支援システムであって、
    前記最適水位決定部は、前記単位期間の開始時点における水位を、所定の最低水位から所定の最高水位まで所定のステップごとに変化させること、
    を特徴とする貯水施設運用支援システム。
  3. 請求項2に記載の貯水施設運用支援システムであって、
    前記最適水位決定部は、前記単位期間における前記流入量を、所定の最小量から所定の最大量まで所定の単位量ごとに変化させること、
    を特徴とする貯水施設運用支援システム。
  4. 請求項3に記載の貯水施設運用支援システムであって、
    前記最適水位決定部は、確率論的動的計画法により、前記評価値の合計が最大となる前記水位の組合せを決定すること、
    を特徴とする貯水施設運用支援システム。
  5. 請求項1に記載の貯水施設運用支援システムであって、
    前記貯水施設において水力発電に利用する水量である取水量の最大値である最大取水量、前記取水量の最小値である最小取水量および維持流量を含む、前記貯水施設の諸元を記憶する諸元記憶部を備え、
    前記モデル記憶部に記憶されている前記電力量モデルおよび前記無効放流モデルは、水位をH、貯水量をV、前記貯水施設において貯水量を水位に変換するための定数をa、時点tから時点t+1までの間に増加する貯水量の差である貯水量差をΔV、前記維持流量をS0、流入量をR、前記取水量をQ、前記最小取水量をQmin、前記最大取水量をQmax、前記無効放流量をSとして、式
    Figure 0005394138
    Figure 0005394138
    Figure 0005394138
    Figure 0005394138
    および
    Figure 0005394138
    により表されること、
    を特徴とする貯水施設運用支援システム。
  6. 水力発電のための貯水施設の運用を支援する方法であって、
    コンピュータが、
    所定の運用期間を構成する各単位期間における前記貯水施設への流入量の発生確率の分布を求めるための確率分布を取得し、
    前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間における前記流入量に基づいて、前記水力発電により前記単位期間に発電される電力量を算出するための電力量モデルと、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間における前記流入量および前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位に基づいて、前記水力発電のために用いられずに放流される無効放流量を算出するための無効放流モデルとをメモリに記憶し、
    前記各単位期間について、前記単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間の終了時点における水位を変化させ、前記単位期間における前記流入量を変化させていき、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記電力量モデルに適用して前記電力量を算出し、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記無効放流モデルに適用して前記無効放流量を算出し、前記確率分布から求められる流入量の発生確率を前記電力量に乗じた値を算出し、各前記流入量について、前記発生確率を前記電力量に乗じた値を合計したものから、前記無効放流量に所定の係数を乗じた値を減じて、前記電力量の評価値を算出していき、前記評価値の合計が最大となる前記水位の組合せを決定すること、
    を特徴とする貯水施設運用支援方法。
  7. 水力発電のための貯水施設の運用を支援するためのプログラムであって、
    コンピュータに、
    所定の運用期間を構成する各単位期間における前記貯水施設への流入量の発生確率の分布を求めるための確率分布を取得するステップと、
    前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間における前記流入量に基づいて、前記水力発電により前記単位期間に発電される電力量を算出するための電力量モデルと、前記単位期間の開始時点における前記貯水施設の水位、前記単位期間における前記流入量および前記単位期間の次の単位期間の開始時点における水位に基づいて、前記水力発電のために用いられずに放流される無効放流量を算出するための無効放流モデルとをメモリに記憶するステップと、
    前記各単位期間について、前記単位期間の開始時点における水位、および前記単位期間の終了時点における水位を変化させ、前記単位期間における前記流入量を変化させていき、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記電力量モデルに適用して前記電力量を算出し、前記変化させた水位および前記変化させた流入量を前記無効放流モデルに適用して前記無効放流量を算出し、前記確率分布から求められる流入量の発生確率を前記電力量に乗じた値を算出し、各前記流入量について、前記発生確率を前記電力量に乗じた値を合計したものから、前記無効放流量に所定の係数を乗じた値を減じて、前記電力量の評価値を算出していき、前記評価値の合計が最大となる前記水位の組合せを決定するステップと、
    を実行させるためのプログラム。
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